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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】伸縮配線部材
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240221BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240221BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240221BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H05K1/03 670
A61B5/256 200
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020527704
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025973
(87)【国際公開番号】W WO2020004660
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018122745
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】木本 貴也
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-193267(JP,A)
【文献】特開2016-040793(JP,A)
【文献】特開2018-042665(JP,A)
【文献】特開2002-143110(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114298(WO,A1)
【文献】特開2013-145842(JP,A)
【文献】特開2011-249376(JP,A)
【文献】特開2008-112849(JP,A)
【文献】特開2018-060841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/03
A61B 5/256
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性のある柔軟基材と、
前記柔軟基材に沿って設けられ前記柔軟基材の伸縮変形とともに伸縮変形可能な伸縮配線と 、
前記柔軟基材よりも硬質な硬質部材とを備える伸縮配線部材であって、
前記柔軟基材は、前記硬質部材と前記伸縮配線との間に介在する延長積層部を有しており、
前記硬質部材の外縁からその外側に延びる前記伸縮配線が前記硬質部材を中心として前記伸縮配線部材の両端に有する接点部材に向けて反対方向に延びる2方向の伸縮配線である伸縮配線部材。
【請求項2】
伸縮性のある柔軟基材と、
前記柔軟基材に沿って設けられ前記柔軟基材の伸縮変形とともに伸縮変形可能な伸縮配線と 、
前記柔軟基材よりも硬質な硬質部材とを備える伸縮配線部材であって、
前記伸縮配線は、熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマに導電性フィラーを分散させた柔軟導電性樹脂の印刷体として形成されているものであり、
前記柔軟基材は、前記硬質部材と前記伸縮配線との間に介在する延長積層部を有しており、
前記延長積層部は、前記柔軟基材の一部が前記伸縮配線に沿って前記硬質部材側に突出する突出部分であり、
前記柔軟基材は、前記延長積層部を含めて前記硬質部材と一体成形されており、前記硬質部材と一体成形されている前記柔軟基材の表面に前記伸縮配線が積層配置されており、
前記硬質部材が絶縁性部材である伸縮配線部材。
【請求項3】
前記硬質部材が、前記伸縮配線との間に前記延長積層部が配置される凹部を有する
請求項1又は請求項2記載の伸縮配線部材。
【請求項4】
前記硬質部材が導電性部材である
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項5】
前記硬質部材が電極部である
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項6】
前記硬質部材と前記伸縮配線とが導通接続している
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項7】
前記硬質部材が、少なくとも熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマの何れかに導電性フィラーを分散した導電ゴムからなる
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項8】
前記伸縮配線と前記硬質部材とが前記柔軟基材の厚み方向で離間しており、前記伸縮配線と前記硬質部材とを隔てる隔離部を備える
請求項1~請求項5何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項9】
前記硬質部材が絶縁性部材である
請求項1記載の伸縮配線部材。
【請求項10】
前記延長積層部は、平面視で前記硬質部材の中心側よりも外側の厚みを厚く形成した部位を有する
請求項1~請求項9何れか1項記載の伸縮配線部材。
【請求項11】
前記柔軟基材と前記伸縮配線とは、熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマを含む請求項1~請求項10何れか1項記載の伸縮配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟基材に伸縮配線を備える伸縮配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脈拍などの身体の状態又は歩数などの身体の動きを計測するためのセンサが搭載されたスマートウォッチ、活動量計、又は脈拍計などのウェアラブルデバイスの開発が盛んになっている。従来のウェアラブルデバイスでは、半導体素子がフレキシブル基板又は硬いリジッド基板に配置されたユニットが用いられており身体の動きに追従しないため、快適な装着感が得られなかった。そこで、伸縮性のある弾性体又は衣類に伸縮性のある導電配線を形成した伸縮配線部材を用いることでフレキシブルなウェアラブルデバイスを得る技術が開発されている。
【0003】
しかしながら、ウェアラブルデバイスに用いる伸縮配線部材では、接点となる電極が硬質である。そのため、伸縮配線部材を伸長したときに、接点と柔軟基材との境界に応力が集中して、その箇所が剥離するおそれがあった。また剥離箇所に伸縮性のある導電配線が積層していれば、剥離と同時にその伸縮配線が断線するおそれがあった。そこで従来の技術では、例えば特開2012-033597号公報(特許文献1)又は特開2016-145725号公報(特許文献2)に記載されているような補強部材が設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-033597号公報
【文献】特開2016-145725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2012-033597号公報(特許文献1)又は特開2016-145725号公報(特許文献2)に記載されたような補強部材を設けるためには、補強部材を取付けるための面積が必要であり、小型化の観点からは好ましいものではなかった。そこで本発明は、接点等の硬質部分を備える伸縮配線部材について、硬質部分と伸縮性のある柔軟部分との境界に生じる応力を原因として発生する問題を、別の観点から解決することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の一態様である伸縮配線部材は以下のとおり構成される。即ち、本発明は、伸縮性のある柔軟基材と、前記柔軟基材に沿って設けられ前記柔軟基材の伸縮変形とともに伸縮変形可能な伸縮配線と、前記柔軟基材よりも硬質な硬質部材とを備える伸縮配線部材であって、前記柔軟基材は、前記硬質部材と前記伸縮配線との間に介在する延長積層部を有する。
【0007】
前記伸縮配線部材は、前記硬質部材と前記伸縮配線との間に介在する延長積層部を有するため、伸縮配線の破断を生じ難くすることができる。
【0008】
柔軟基材が電極部のような硬質部材を備え、この電極部に伸縮配線が接続する構造では、伸縮配線が電極部との境界部分で断線し易いという課題がある。しかしながら、硬質部材と伸縮配線との間に前記延長積層部を設けることで、柔軟基材は硬質部材に積層する延長積層部から伸び始めることになる。このように柔軟基材の伸長の起点を硬質部材との積層位置とすることで、柔軟基材が硬質部材の外縁から急激に伸び始めることが無いため、境界部分で伸縮配線に集中する応力を緩和することができる。このため、前記伸縮配線部材によれば伸縮配線を破断し難くすることができる。したがって、従来技術で示す補強部材を用いないため、補強部材を設けることによる厚み及び面積の増加によるスペース増加の問題又は外観が悪化する問題を解決できる。
【0009】
前記硬質部材は、前記伸縮配線との間に前記延長積層部が配置される凹部を有するように構成できる。前記硬質部材が前記凹部を有することで、延長積層部は凹部を埋める塊として形成することができる。したがって延長積層部は、単に硬質部材と伸縮配線との間に薄層として設ける場合と比較すると、より柔軟に伸長させることができる。よって、伸縮配線部材の柔軟基材と硬質部材との境界面が剥離しようとしても、延長積層部が緩衝層となり、伸縮配線の断線を防止することができる。
【0010】
前記硬質部材は、導電性部材として構成できる。前記硬質部材が導電性部材であるため、前記伸縮配線部材は、伸縮配線を硬質部材に導通接続させる構成を採用することができる。
【0011】
前記硬質部材は、電極部として構成できる。前記硬質部材が電極部であるため、電極部を有する伸縮配線部材に、延長積層部を形成することができる。そして、柔軟基材と電極部との間に延長積層部を設けることで、前記伸縮配線部材は、補強部材を有していなくても、柔軟基材と電極部との境界に生じる応力を緩和し、伸縮配線を破断し難くすることができる。
【0012】
前記硬質部材と前記伸縮配線とは、導通接続するように構成できる。前記硬質部材と前記伸縮配線とが導通接続しているため、前記伸縮配線部材は、伸縮配線と硬質部材との境界に延長積層部を有する構成を採用することができる。そのため、前記伸縮配線部材は、硬質部材と伸縮配線とが接続する境界付近で伸縮配線の断線を生じ難くすることができる。
【0013】
前記硬質部材は、少なくとも熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマの何れかに導電性フィラーを分散した導電ゴムにより構成できる。前記伸縮配線部材は、硬質部材を硬質樹脂又は金属等で構成した場合と比較して、柔軟基材と硬質部材の境界に生じる応力の一部を導電ゴムの変形により緩和することができる。したがって、前記伸縮配線部材は、よりいっそう硬質部材と伸縮配線とが接続する境界付近で伸縮配線の断線を生じ難くすることができる。
【0014】
前記硬質部材の外延からその外側に延びる前記伸縮配線は、前記硬質部材を中心として反対方向に延びる2方向の伸縮配線として構成できる。これによれば、前記伸縮配線部材は、伸縮配線の途中に硬質部材を設けることができる。
【0015】
前記伸縮配線と前記硬質部材とが柔軟基材の厚み方向で離間しており、さらに伸縮配線部材は、前記伸縮配線と前記硬質部材とを隔てる隔離部を備えるものとして構成できる。前記伸縮配線と前記硬質部材とが離間しており、互いに接触部位を有しない非接触構造の隔離部を備えるため、硬質部材が導電性の部材であっても伸縮配線と硬質部材とを導通接続することなく、両者を積層配置することができる。そのため、前記伸縮配線部材は、狭いスペースにおいて複数の伸縮配線をコンパクトに配置することができる。
【0016】
従来は、複数の接点部材が配置された柔軟基材に、スクリーン印刷等で伸縮配線をパターニングするとき、一の接点部材に接続する伸縮配線は、他の接点部材を避けてパターニングする必要があった。このため、例えばベルト状の柔軟基材では、ベルトの端に伸縮配線を配置する必要があり、ベルトの幅全体に亘った電極部を形成することが困難であった。見方を変えれば、電極部を避けて伸縮配線を配線する余分な面積が必要となるため、ベルト幅が広くならざるを得ないという課題があった。しかしながら、前記伸縮配線部材では、延長積層部を設けることで、互いに導通させることができない電極部と伸縮配線とを積層配置することができる。
【0017】
前記硬質部材は、絶縁性部材により構成できる。前記硬質部材を絶縁性部材にしても延長積層部を設ければ、伸縮配線が切断し難くすることができる。即ち、電極部のような導電性部材に代えて絶縁性部材を設けた伸縮配線であっても切断し難くすることができる。したがって、電極部のような導電性部材と伸縮配線の接続部だけでなく、導電性を有しないボタン等として形成した部材に伸縮配線を接続せざるを得ないような場合にも、これらの絶縁性部材と伸縮配線とが接続する境界付近で伸縮配線の断線を生じ難くすることができる。
【0018】
前記延長積層部は、前記硬質部材の投影領域内における内側よりも外側に厚みを厚く形成した部位を有するものとして構成できる。また、前記延長積層部は、平面視で前記硬質部材の中心側よりも外側の厚みを厚く形成した部位を有するものとして構成できる。前記延長積層部は、前記投影領域内における内側よりも外側に厚みを厚く形成した部位を有する。また、前記延長積層部は、平面視で前記硬質部材の中心側よりも外側の厚みを厚く形成した部位を有する。このため厚みを同等に形成した場合に比べて延長積層部の体積を少なくすることも可能であり、そうした場合であっても伸縮配線を効果的に切断し難くすることができる。また、前記延長積層部に前記投影領域内における内側よりも外側に厚みを厚く形成した部位を設けること、又は、前記延長積層部に平面視で前記硬質部材の中心側よりも外側の厚みを厚く形成した部位を設けることは、硬質基材の形状を変えることで容易に得られるため、製造が容易である。
【0019】
前記柔軟基材と前記伸縮配線は、シリコーンゴム成分を含むものとして構成できる。前記柔軟基材と前記伸縮配線はシリコーンゴム成分を含むものとしたため、柔軟基材と伸縮配線の接着性が高まり、伸縮配線の切断を生じ難くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、伸縮配線の断線を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態である伸縮配線部材の柔軟基材を透明であるものとして示した模式平面図である。
図2図1の伸縮配線部材のII-II線断面図である。
図3図1の伸縮配線部材の製造方法を説明する説明図である。
図4】変形例1-1の伸縮配線部材の一部であり、分図4Aは、図1の部分拡大領域R2に相当する一部拡大平面図であり、分図4Bは、図2の部分拡大領域R5に相当する一部拡大断面図である。
図5】第2実施形態である伸縮配線部材の柔軟基材を透明であるものとして示した模式平面図である。
図6図5の伸縮配線部材の断面図であり、分図6Aは、図5のVIA-VIA線断面図であり、分図6B図5のVIB-VIB線断面図である。
図7】第3実施形態である伸縮配線部材の柔軟基材を透明であるものとして示した模式平面図である。
図8図7の伸縮配線部材の断面図であり、分図8Aは、図7のVIIIA-VIIIA線断面図であり、分図8B図7のVIIIB-VIIIB線断面図である。
図9図7の伸縮配線部材の断面図であり、分図9Aは、図7のIXA-IXA線断面図であり、分図9B図7のIXB-IXB線断面図である。
図10】第4実施形態である伸縮配線部材の図2相当の断面図である。
図11】変形例4-1の伸縮配線部材の図10の部分拡大領域R14に相当する一部拡大断面図である。
図12】第5実施形態の伸縮配線部材の一部であり、分図12Aはその要部底面図であり、分図12Bは、分図12AのXIIB-XIIB線断面図である。
図13】延長積層部の変形形態を説明する断面図であり、分図13A~分図13Cの何れも図2の部分拡大領域R5に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の例を図面に基づき説明する。各実施形態において同一の材質、組成、製法、作用、効果等については重複説明を省略する。また、本明細書及び特許請求の範囲に「第1」、「第2」、「第3」と記載する場合、それらは、発明の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。
【0023】
第1実施形態[図1図3
【0024】
本実施形態の伸縮配線部材11について説明する。図1は、後述する柔軟基材20を透明に描いた伸縮配線部材11の平面図を、図2は、その伸縮配線部材11の断面図を示す。伸縮配線部材11は、伸縮可能な柔軟基材20と、柔軟基材20に積層している伸縮配線30を備える。さらに伸縮配線部材11は、伸縮配線30に電気的に接続される導電ゴムコネクタ部50と生体検出部60と第2コネクタ部70とを含む接点部材40を備えている。本実施形態の接点部材40は、柔軟基材20よりも硬質な硬質部材となっている。次に伸縮配線部材11を構成する各部位について説明する。
【0025】
柔軟基材20: 柔軟基材20は、伸縮配線30を保持する伸縮性を有するベース部材(伸縮基材)である。柔軟基材20は、絶縁性の柔軟材料、例えば熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマなどにより形成されている。柔軟基材20の伸縮性としては、少なくとも初期の長さの120%以上の長さ、より好ましくは150%以上の長さまで伸びた後、初期の長さに戻ることのできる伸縮性材料を用いる。
【0026】
熱硬化性ゴム及び熱可塑性エラストマの硬度は、JIS K6253規定のA硬度で90(以後A90と記載する)以下であることが好ましい。ゴム硬度がA90を超えると、伸長したときの応力が必要以上に大きくなり、高い伸長率まで伸長することが難しくなるためである。また、ゴム硬度は、伸縮性が良好な点でA0~A70がより好ましく、伸縮性と取扱い性の両立の観点からA20~A50がさらに好ましい。
【0027】
柔軟基材20の形状は、ベルト状又は棒状とすることができる。また、柔軟基材20は、接点部材40と固着する近傍部分を幅広形状に形成することができる。接点部材40との近傍部分を幅広形状に形成することで、伸縮配線30と接点部材40との境界近傍部分における柔軟基材20の伸長率を低くすることができる。
【0028】
伸縮配線30: 伸縮配線30は、柔軟基材20に配置されておりこの柔軟基材20の伸縮にともなって伸縮することができる。伸縮配線部材11では、柔軟基材20の両側に設けた導電ゴムコネクタ部50又は第2コネクタ部70と、柔軟基材20の中央に設けた生体検出部60とが、伸縮配線30を通じて電気的に接続される。これにより導電ゴムコネクタ部50と生体検出部60との間隔(長さ)、又は、第2コネクタ部70と生体検出部60との間隔(長さ)が変化しても、両者の導電接続状態を保持することができる。伸縮配線30は、柔軟基材20の表面に形成することもできるが、柔軟基材20の内部に埋設して設ける方が好ましい。伸縮配線30の保護のためである。
【0029】
伸縮配線30には、伸縮性を有する導電材料を用いる。具体的には、熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマに、銀フィラーなどの導電性フィラーを分散させた柔軟導電性樹脂を用いることができる。また、柔軟基材20として熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマを用いたときは、同種の樹脂に銀又は炭素の粉末を分散させた柔軟導電性樹脂を用いて伸縮配線30を形成することが好ましい。柔軟基材20と伸縮配線30との固着性が高まるからである。
【0030】
伸縮配線30も柔軟基材20も柔軟な材質で形成されるため、その両者の硬度は同一とすることもできる。しかしながら、伸縮配線30の硬度を柔軟基材20の硬度よりも高硬度とすることができる。こうした硬さの関係性で伸縮配線部材11を構成すると、伸縮配線部材11が圧縮されたときでも、柔軟基材20は圧縮変形し易いが、伸縮配線30は圧縮変形し難い。したがって、圧縮時の伸縮配線30の体積変化を生じさせ難いため、伸縮方向以外にも圧力を受ける用途で、安定した抵抗値を示すことができる。
【0031】
伸縮配線30と柔軟基材20との固着力は、伸縮配線30の引張り破断力よりも大きいものとすることが好ましい。反対に伸縮配線30と柔軟基材20の固着力に対して伸縮配線30の引張り破断力が大きいと、伸縮配線部材11を、200%を超えて大きく伸長したような場合に柔軟基材20から伸縮配線30が剥離するおそれがある。この場合は伸縮配線30自体の縮径方向の変形が大きくなり、柔軟基材20との間に応力が生じることから剥離が起こり易くなるものと考えられる。
【0032】
こうした懸念に対して、伸縮配線30と柔軟基材20の固着力よりも伸縮配線30の引張り破断力を小さくすることで、剥離する前に、伸縮配線30に部分的な亀裂が生じるようにすることができる。こうした亀裂は、小さな亀裂が細かく生じ、抵抗値は上昇するものの、伸縮配線30を切断するほど大きな亀裂にはなり難い。したがって、伸縮配線30の剥離を抑制しながら、伸縮配線30の断線も抑制することができ、さらに、伸縮配線30の抵抗値上昇をモニタリングすることで、伸縮配線30の伸長の限界を検知することもできる。
【0033】
なお、前述した固着力と引張り破断力との関係は、伸縮配線部材11の伸長試験を行い、伸縮配線30が剥離する前に伸縮配線30に亀裂が生じるか否かで判断することができる。すなわち、伸長試験で伸縮配線30に亀裂が生じる前に伸縮配線30が剥離した場合には、伸縮配線30と柔軟基材20の固着力に対して伸縮配線30の引張り破断力が大きいと判断できる。反対に、伸縮配線30が剥離する前に部分的な伸縮配線30に亀裂が生じた場合は、伸縮配線30と柔軟基材20との固着力は伸縮配線30の引張り破断力よりも大きいと判断することできる。
【0034】
接点部材40: 接点部材40は、基板などの電子部品又は電子機器、人体などの接続対象物Pと伸縮配線30とを導通可能に接続するコネクタ部である。接点部材40の導電性部位を構成する素材は、金属、炭素材料、導電性樹脂、導電ゴム、導電性素材等を用いることができる。このうち導電性樹脂は、樹脂に導電性フィラーを分散したものである。導電ゴムは、熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマに導電性フィラーを分散したものである。導電性素材は、絶縁性の樹脂等を金属で被覆したものである。また、前記金属及び導電性フィラーとしては、伸縮配線部材11から露出しても充分な耐候性、耐久性を備えるために、耐腐食性の高い安定な材質とすることが好ましく、例えば、金などの貴金属又はステンレスなどの合金、炭素の粉末を用いることができる。
【0035】
接点部材40として、本実施形態の伸縮配線部材11では、導電ゴムコネクタ部50と、生体検出部60と、第2コネクタ部70との3種類の接点部材40が設けられている。これらの部位は何れも柔軟基材20よりは硬質な部分を有している。
【0036】
導電ゴムコネクタ部50: 導電ゴムコネクタ部50は、伸縮配線部材11において基板などの接続対象物Pと導電接続するためのコネクタ部のうち、ゴム状の高分子材料に導電性フィラーが分散した導電性ゴム組成物からなる電極部51を含む部位である。
【0037】
導電ゴムコネクタ部50は、接続対象物Pに導通接続する第1の接続端51aと、伸縮配線30に導通接続する第2の接続端51bとを有する。導電ゴムコネクタ部50は、第1の接続端51aと第2の接続端51bとの間に形成される電極部51を通じて、接続対象物Pと伸縮配線30とを電気的に接続している。そしてこの導電ゴムコネクタ部50は、第1の接続端51aから第2の接続端51bへ向かう電極部51の形成方向に沿って圧縮変形することができる。導電ゴムコネクタ部50は、基本的には伸縮配線部材11が導通接続される基板などの一方側の接続対象物Pと、筐体W等との間に挟持、押圧されて保持される。本実施形態の伸縮配線部材11では、導電ゴムコネクタ部50の周囲に柔軟基材20を表面20a側に突出させた防水リブ20cを備えている。柔軟基材20の表面20aの反対側は、柔軟基材20の裏面20bとなっている。
【0038】
導電ゴムコネクタ部50を形成する導電性ゴム組成物には、液状の高分子組成物中に導電性フィラーが分散した組成物を、磁場内で導電性フィラーを導通方向に配向(又は配列)させた後、液状の高分子組成物を固体に硬化させたものを用いることができる。この導電性ゴム組成物は、高分子組成物が硬化した絶縁性の被覆部52に包囲された中に導電性フィラーが連続した電極部51を有する。電極部51を巨視的に観察すれば導電性フィラーのみが存在するように見える。しかしながら、電極部51を微視的に観察すれば、ゴム状弾性体の内部に導電性フィラーが配向しており、導電性フィラーの充てん量が少なくても電気抵抗を低く抑えることができ、また電極部51自体にも適度な柔軟性を備えることができる。ゴム状の高分子材料に導電性フィラーが分散した導電性ゴム組成物は、こうした態様の他、柔軟な高分子材料に導電性フィラーを均一に分散させた導電ゴムとすることもできる。
【0039】
電極部51を構成する導電性フィラーの隙間を埋めるゴム状弾性体は、被覆部52を構成する材料と同じである。また、導電性フィラーとしては、粒子状、繊維状、細片状、細線状の金属粒子が挙げられる。より具体的には、ニッケル、コバルト、鉄、フェライト、又はそれらを多く含有する合金、良電性の金、銀、白金、アルミ、銅、鉄、パラジウム、クロム等の金属類又はステンレス等の合金類、樹脂、セラミック等からなる粉末又は細線を磁性導電体でめっきしたもの、あるいは逆に磁性導電体に良導電体の金属をめっきしたものを用いることができる。金属粒子の大きさは、平均粒径が1~200μm程度の大きさのものであれば、成形金型内に作用させる磁場中で効率よく磁力線方向に沿って連鎖状態を形成することができる。
【0040】
被覆部52は、導電接点となる電極部51の露出部分以外を被覆して電極部51の周囲を保護し電極部51と一体化している。被覆部52は絶縁性のゴム状弾性体からなり、材質としては、天然ゴム又はシリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン-プロプレンゴム、クロロスルホンゴム、ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマ、オレフィン系熱可塑性エラストマ、エステル系熱可塑性エラストマ、ウレタン系熱可塑性エラストマ、アミド系熱可塑性エラストマ、塩化ビニル熱可塑性エラストマ、フッ化系樹脂熱可塑性エラストマ、イオン架橋系熱可塑性エラストマなどが挙げられる。なかでも、電気絶縁性、及び環境特性に優れるシリコーンゴムが好ましい。また、金型中で加熱硬化して導電ゴムコネクタ部50を製造する場合は熱硬化性ゴムであることが好ましく、なかでも耐熱性の高いシリコーンゴム又はフッ素ゴムがより好ましい。
【0041】
被覆部52の硬度は、JISK6253に準じてA硬度で5~70の範囲が好ましく、15~50の範囲がより好ましい。A硬度が25を超えると、導電ゴムコネクタ部50を圧縮した際の圧縮荷重が上昇し、接続対象物P及び筐体Wにかかる負荷が大きくなる。A硬度が5.0を下回ると、導電ゴムコネクタ部50を圧縮した際に、導電ゴムコネクタ部50が潰れ易くなり、容易に座屈して粒子どうしが離れ易くなり、安定した導電性を確保できないおそれがある。
【0042】
防水リブ20cは、柔軟基材20と接続対象物Pとの間にあって、伸縮配線部材11を押圧し接続対象物Pと圧接した際の電極部51を外部から隔絶し、防水リブ20cの外部から電極部51への水の浸入を防ぐための部位である。本実施形態では、柔軟基材20の表面20aから平面視で無端環状に突出した突起物として設けている。ここでは導電ゴムコネクタ部50の周囲に防水リブ20cを備えるものとしたため、水の飛散があるような場合でも水の影響を抑止でき、伸縮配線部材11の用途を広げることができる。
【0043】
第2コネクタ部70: 伸縮配線部材11には基板などの接続対象物Pと導電接続するためのコネクタ部が設けられている。第2コネクタ部70は、フレキシブルケーブルP1等の端子部P2に対して押さえ部材71を通じて直接固着接続している部位である。
【0044】
伸縮配線部材11の伸縮配線30は、接続対象物Pに備わる端子部P2の配線P3に対して導通接触している。その導通接触状態を保持すべく、押さえ部材71が伸縮配線部材11と接続対象物Pとを固着している。端子部P2は、樹脂フィルム等からなり、配線P3は銅箔等の金属箔で形成されている。押さえ部材71は、シリコーンゴム等の柔軟性のあるゴム素材からなり伸縮配線部材11の柔軟基材20と接続対象物Pの端子部P2とに固着している。
【0045】
生体検出部60: 生体検出部60は、伸縮配線部材11において基板などの接続対象物Pと導電接続するためのコネクタ部のうち、皮膚の表面等に当てる部位である。生体検出部60の電極部61は、導電ゴムコネクタ部50よりも外形がやや大きく、皮膚などの接触対象との接触面が広く設計された電極となっており、体電位を測定する用途に伸縮配線部材11を用いる場合等に備えることができる。本実施形態の電極部61は、本発明の「硬質部材」を構成する。接触面積を広くしているのは、電極部61を人体の皮膚に密着させて表面電位を検知する場合に、皮膚の一部への応力集中を緩和することに加え、接触の安定性を高めるためである。反対に金属ピンのような狭い面積とするとそこに応力が集中して快適な装着感が得られないことから、電極部61はある程度の広い面積を有するとすることが求められる。
【0046】
電極部61には凹部61aが形成されている。凹部61aは、電極部61における伸縮配線30側の角部を欠如する部分として形成されている。したがって凹部61aは、柔軟基材20の厚み方向に向かう電極部61の投影領域内に形成されている。後述する柔軟基材20の延長積層部80は、この凹部61aを埋める凹部充填部として形成されている。また、生体検出部60には、接点部31が形成されている。接点部31は、伸縮配線30と同一材質で伸縮配線30の端部を伸縮配線30の幅方向に広げた形状であり、伸縮配線30と広い面積で導電接触するように構成している。
【0047】
生体検出部60における電極部61は、導電ゴムコネクタ部50における電極部51と次のように相違している。即ち、生体検出部60の電極部61は、導電性フィラーとして炭素粉末を用いた接点部材40となっており、耐食性及び耐候性等に優れる。他方、電極部61は、導電ゴムコネクタ部50の電極部51と比べてやや硬く、また伸縮配線30よりも高抵抗となっている。電極部61は、導電部位に炭素材料を用いているため、伸縮配線30よりも高抵抗である。電極部61のどの部分が皮膚と接触しても、伸縮配線30との間の抵抗値を一定とするために、電極部61と皮膚との接触面から伸縮配線30までの距離を一定にすることが好ましく、なるべく広い範囲で生体検出部60と伸縮配線30とが積層する形態としている。そのため、伸縮配線30に広い面積の接点部31を形成している。
【0048】
延長積層部80: 延長積層部80は、柔軟基材20と接点部材40における電極部61のような硬質部位との接続面を剥離し難くするために設けた部位である。図2の部分拡大領域R5又はR6で示すように、延長積層部80は、電極部61の凹部61aの内側を埋める厚肉充填部として形成されている。延長積層部80は、凹部61aの内面と伸縮配線30における凹部61a側の面とに接触するように形成されている。したがって、延長積層部80は、柔軟基材20の厚み方向に向かう電極部61の投影領域内に、換言すれば、平面視における電極部61の外縁(外周面)より内側に位置している。さらに換言すれば、延長積層部80は、電極部61の上面(凹部61aの内面)に積層する積層部として形成されている。また、延長積層部80の上面は、伸縮配線30との接触面を形成している。伸縮配線部材11は、電極部61の凹部61aに柔軟基材20の一部が伸縮配線30に沿って突出する突出部分(延長積層部80)を有する。したがって延長積層部80は、電極部61の外周面を境界面(前記投影領域の外縁)Dとして、この境界面Dよりも電極部61側に突出する突出部分として形成されている。
【0049】
延長積層部80は、柔軟基材20の一部としているが、電極部61よりも柔軟な材質であれば柔軟基材20と異なる材質で形成することも可能である。また、延長積層部80は、柔軟基材20と電極部61との間に設けているが、電極部61以外の「硬質部材」と伸縮配線30との間に設けることも可能である。したがって、導電ゴムコネクタ部50及び第2コネクタ部70を「硬質部材」とし、それらに「凹部」を設け、その「凹部」を充填するように「延長積層部80」を設けることもできる。
【0050】
伸縮配線30と電極部61とが接触する接触部の境界は、平面視で電極部61の外縁よりも内側に位置する。即ち伸縮配線30の接点部31は、電極部61の上面の面内(電極部61の上面の外縁よりも内側)に位置する。このため、伸縮配線部材11を伸ばした際に、延長積層部80は、柔軟基材20と電極部61の境界面に及ぼす応力の影響を緩和することができ、伸縮配線30の断線を防止することができる。
【0051】
延長積層部80を配置する箇所における生体検出部60(電極部61)には凹部61aが形成されている。換言すれば、生体検出部60に設けた凹部61aに入り込んだ柔軟基材20の部分が延長積層部80となっている。このように、生体検出部60に凹部61aを設け、この凹部61aに柔軟基材20が入り込むようにして、柔軟基材20表面と生体検出部60表面とを面一に形成すれば、その上に伸縮配線30を印刷等により形成することができ、製造が容易である。
【0052】
次に、伸縮配線部材11の製造方法を説明する。伸縮配線部材11を製造するには、種々の方法を採用することができるが、ここではその一例を説明する。図3で示すように、厚みが半分の柔軟基材20に生体検出部60の電極部61を一体成形した柔軟基材20の第1の分割体を製造する。そして、第1の分割体の表面にスクリーン印刷等で伸縮配線30と接点部31を形成する。また、厚みが半分の柔軟基材20に導電ゴムコネクタ部50をインサート成形等により一体形成した柔軟基材20の第2の分割体を製造する。そして、第1の分割体の表面に、第2の分割体を貼り合わせる。第2コネクタ部70は、第1の分割体と第2の分割体とを貼り合わせる際に、フレキシブルケーブルP1の端子部P2を両者の間に挿入して押さえ部材71で一体化する。これにより伸縮配線部材11を製造することができる。この製造方法によれば、電極部61と導電ゴムコネクタ部50とが柔軟基材20に対して成形によって一体化される。このため電極部61と導電ゴムコネクタ部50とを柔軟基材20と強固に一体化することができ、柔軟基材20が繰り返し伸縮変形することによる電極部61と導電ゴムコネクタ部50の脱離を抑制することができる。
【0053】
導電ゴムコネクタ部50については、例えば、導電性フィラーを配合した液状の高分子を成形金型に注入し、成形金型内に配置した磁極によって導電性フィラーを配向させて導電経路を形成した後、液状の高分子を硬化させて電極部51と被覆部52とが一体となった導電ゴムコネクタ部50を予め製造しておく。そして、前述のように柔軟基材20の第2の分割体と一体化することができる。あるいは、柔軟基材20の第2の分割体の成形時に、導電ゴムコネクタ部50を同時に形成するようにしても良い。さらに、予め所定の電気抵抗を備える導電性ゴムを電極部51の形状に成形しておいても良い。
【0054】
こうして得られた伸縮配線部材11は、電極部61から外に延びる伸縮配線30の電極部61との境界に延長積層部80が形成されているため、伸縮配線部材11を伸ばした際に、この境界付近に集中する応力を延長積層部80が緩和して、この境界近傍部分で伸縮配線30が破断し難くすることができる。
【0055】
変形例1-1[図4
【0056】
本実施形態の伸縮配線部材12は、第1実施形態の伸縮配線部材11と比較して、延長積層部80とその周囲の構成が異なる。即ち図4の生体検出部60の拡大図で示すように、延長積層部80は生体検出部60における電極部61の平坦な上面に積層されている。そして伸縮配線30は、電極部61と導電接触している接点部31から延長積層部80を登るように斜め上方に伸長して形成されている。このような伸縮配線部材12においても、延長積層部80が電極部61と伸縮配線30との境界における応力を緩和してこの境界近傍における伸縮配線30の破断を生じ難くすることができる。
【0057】
第2実施形態[図5図6
【0058】
図5には柔軟基材20を透明であるものとして示した伸縮配線部材13の平面図を、図6にはその断面図を示す。本実施形態の伸縮配線部材13では、第1実施形態の伸縮配線部材11と比較して、生体検出部60近傍の構成が異なり、第1の生体検出部60に重なる位置に、別の第2の生体検出部60から伸長する伸縮配線30が設けられている。即ち、本実施形態では、この第1の生体検出部60と第2の生体検出部60から伸長する伸縮配線30との重なる位置に延長積層部85が設けられている。この延長積層部85により、第2の生体検出部60に繋がる伸縮配線30を第1の生体検出部60の電極部61に対して電気的に接触させずに配置することができる。
【0059】
伸縮配線部材11については、小型化の要望があり、限られた面積の中に、生体検出部60等の接点部材40を設ける必要がある。また、伸縮配線30を低コストで製造し、反りの問題等を生じさせないためには多層に配線することは困難であった。そのため、こうした伸縮配線30を平面的に配置せざるを得ないという制約のもとで、第1実施形態で説明した伸縮配線部材11のように、遠方にある電極部61に接続する伸縮配線30は、手前の電極部61を避けて巻き回すように配線をレイアウトする必要があった。しかしながら、本実施形態の構成を採用することにより、伸縮配線30を迂回させる必要を無くすことができる。
【0060】
より具体的には図6Bで示すように、生体検出部60の電極部61が平坦な上面を有しており、この上面に設けた凹部61aの内側を埋めるように延長積層部85を形成しており、その上に伸縮配線30が配置されることで、電極部61と伸縮配線30とが延長積層部85によって絶縁されている。柔軟基材20にそのような延長積層部85を形成することで、伸縮配線30と電極部61とが厚み方向で離間しており、伸縮配線30と電極部61とが接触部位を有しない非接触構造の隔離部88を構成することができる。そして隔離部88を設けることで、伸縮配線部材13は、伸縮配線30を迂回させずに配置できるだけでなく、この伸縮配線30の断線を抑制する効果が得られる。なお、第1実施形態で説明した伸縮配線部材11では、その一方端のみに導電ゴムコネクタ部50を設けているが、本実施形態の伸縮配線部材13では、一方端だけでなく他方端にも導電ゴムコネクタ部50を設けている点でも異なる。また、導電ゴムコネクタ部50の下方には導通路形状保持部90を設けている点でも、これを設けていない伸縮配線部材11と異なる。
【0061】
導通路形状保持部90は、伸縮配線部材13の厚み方向で電極部51と重なる位置に設けることで、伸縮配線部材13の伸長に伴ってその伸長方向に変形し易い電極部51の変形を抑えることができる。導通路形状保持部90は板状に形成されている。導通路形状保持部90の材質としては、導通路形状保持部90の板面方向で伸縮しない剛性を備えた部材を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリイミドフィルムなどの樹脂フィルム、硬質樹脂基板等の硬質樹脂成形体、セラミック基板又は金属フィルム等を用いることができる。また、柔軟基材20と同等程度以上の硬さがあれば良く、柔軟基材20よりも硬質の熱硬化性ゴム又は熱可塑性エラストマを用いることもできる。
【0062】
伸縮配線部材13の製造方法は、第1実施形態で説明した製造方法と同様に、柔軟基材20の厚み半分の第1の分割体と第2の分割体とを重ね合わせる製法を採用することができる。生体検出部60側となる伸縮配線部材13の第1の分割体は、生体検出部60の上面と面一になる部分まで延長積層部80を含めて、柔軟基材20を生体検出部60と一体形成する。そして、その上に伸縮配線30を印刷形成する。また、柔軟基材20側となる伸縮配線部材13の第2の分割体を第1の分割体と貼り合わせる。こうして伸縮配線部材13を製造することができる。
【0063】
伸縮配線部材13では、第1の電極部61と第2の電極部61に導通する伸縮配線30とが、延長積層部80を介して伸縮配線部材13の厚み方向に積層させている。即ち、絶縁性の延長積層部85を介することで、第1の電極部61と第2の電極部61に導通する伸縮配線30とを互いに離間させることができるため、この両者を導通させずに積層配置することができ、伸縮配線部材13の幅方向の長さを短くすることができる。
【0064】
第3実施形態[図7図9
【0065】
第3実施形態として示す伸縮配線部材14は、第2実施形態と第1実施形態の両方の特徴を備えた構成としたものである。即ち、図7で示す4つの生体検出部60のうち、図7の部分拡大領域R12で示すような両外側の2つの生体検出部60には、延長積層部80と延長積層部85の2種類の延長積層部80,85を備えている(図9)。より具体的には、図9Aの部分拡大領域R13で示すように、第1実施形態の伸縮配線部材11に備わる延長積層部80と同様の延長積層部80を備えるとともに、図9Bで示すように、第2実施形態の伸縮配線部材13に備わる延長積層部85と同様の延長積層部85を備える隔離部88を有している。
【0066】
伸縮配線部材14では、図7で示す4つの生体検出部60にそれぞれ延長積層部80を有するため、これらの生体検出部60から外に延伸する伸縮配線30の生体検出部60との境界部分での破断を防止することができる。また、図7で示す両外側の2つの生体検出部60のそれぞれに延長積層部85を有するため、これらの生体検出部60に重ねて設けた伸縮配線30が生体検出部60の重なり部分から外に出る境界部分での破断を防止することができる。
【0067】
第4実施形態[図10
【0068】
第4実施形態として示す伸縮配線部材15は、その端部に設けた第2コネクタ部70に延長積層部80を設けている。第1実施形態の伸縮配線部材11に設けた第2コネクタ部70では、フレキシブルケーブルP1の端子部P2を固着する押さえ部材71を柔軟基材20とは別部材で形成し、柔軟基材20にフレキシブルケーブルP1を固着していたが、伸縮配線部材15では、柔軟基材20の一部が押さえ部材71となっている。
【0069】
伸縮配線部材15は、図10で示すように、フレキシブルケーブルP1の端部が切り欠いた凹部61aを有する形状をしており、この凹部61aに柔軟基材20が入り込んで延長積層部80を形成している。伸縮配線部材15では延長積層部80が形成しているため、フレキシブルケーブルP1との接続部位から外方に延びる伸縮配線30のフレキシブルケーブルP1との接続境界部分での破断を防止することができる。
【0070】
変形例4-1[図11
【0071】
本実施形態の伸縮配線部材16では、第2コネクタ部70において、フレキシブルケーブルP1のような硬質部材からなる接続対象物Pを、図11で示すように、柔軟基材20の一部に取り込んだ構成としたものである。延長積層部80を有する点で第4実施形態の伸縮配線部材15と同様であり、こうした態様としても伸縮配線30のフレキシブルケーブルP1との境界付近の切断がし難い伸縮配線部材16とすることができる。
【0072】
第5実施形態[図12
【0073】
本実施形態の伸縮配線部材17は、伸縮配線部材17の一部に、これまで説明した接点部材40とは別の絶縁性の硬質部材100を設けており、伸縮配線部材17の厚み方向で、硬質部材100の投影領域内に柔軟基材20と伸縮配線30との接触面を有する延長積層部80を形成している。
【0074】
硬質部材100は、絶縁性硬質材料からなり柔軟基材20の伸縮方向には伸縮しない程度の剛性を備えた部材である。硬質部材100は、図12では平面視円形のものを例示するが、それ以外の形状でもよい。絶縁性硬質材料としては、例えば、可撓性樹脂フィルム又は硬質樹脂基板、セラミック基板等の薄板状の部材、図12で示したボタン形状のような塊状部材等を用いることができる。ポリイミド又はフェノール樹脂、エポキシ樹脂からなる硬質部材100は好ましい一態様である。図12では塊状(ボタン形状)の硬質部材100を示しているが、硬質部材100として誘電体材料を用いフィルム状(薄片状)に形成した場合には、硬質部材100自体をタッチセンサとして構成することができる。
【0075】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態の変更又は公知技術の付加、組合せ等を行い得るものであり、それらの技術もまた本発明の範囲に含まれるものである。
【0076】
例えば、延長積層部80は電極部61の凹部61aの形状に応じて、図2で示す第1実施形態の伸縮配線部材11における延長積層部80の形状に変えて、様々な形状とすることができる。例えば、図13Aで示すように電極部61の凹部61aの形状が、伸縮配線30との接触端から伸縮配線30と離れるように傾斜する傾斜面である場合、延長積層部80は、当該傾斜面と伸縮配線30との間を埋める形状とすることができる。また、図13Bで示すように、電極部61の凹部61aの形状が角形の段差面である場合、延長積層部80は、角形の段差面と伸縮配線30との間を埋める直方体形状とすることができる。さらに、図13Cで示すように、電極部61の凹部61aの形状が湾曲面である場合、延長積層部80は当該湾曲面と伸縮配線30との間を埋める形状とすることができる。
【符号の説明】
【0077】
11~17伸縮配線部材、20 柔軟基材、20a 表面、20b 背面、20c 防水リブ、30 伸縮配線、31 接点部、40 接点部材、50 導電ゴムコネクタ部、51 電極部、51a 第1の接続端、51b 第2の接続端、52 被覆部、60 生体検出部、61 電極部(硬質部材)、61a 凹部、70 第2コネクタ部、71 押さえ部材、80,85 延長積層部、88 隔離部、90 導通路形状保持部、100 硬質部材、D 境界面、P 接続対象物、P1 フレキシブルケーブル、P2 端子部、P3 配線、R1~R13 部分拡大領域
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13