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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】マクラギ交換補助具
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/10 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
E01B29/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021186364
(22)【出願日】2021-11-16
(65)【公開番号】P2023073726
(43)【公開日】2023-05-26
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】396011211
【氏名又は名称】菅原興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 長雲
(72)【発明者】
【氏名】大仁田 勉
(72)【発明者】
【氏名】三戸 敬守
(72)【発明者】
【氏名】鯉淵 啓太
(72)【発明者】
【氏名】須藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】中井 守
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-204808(JP,A)
【文献】実開昭60-040503(JP,U)
【文献】実開昭55-024304(JP,U)
【文献】特開2016-089503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0245921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール頭部を跨ぐように被せられ、レール頭部の上方となる位置に雌ネジ孔が設けられたマクラギ交換補助具本体と、
前記マクラギ交換補助具本体の外側に設けられ、下端部にマクラギ底面を引掛けるマクラギ底面引掛部が設けられたマクラギ底面引掛体と、
前記マクラギ交換補助具本体の前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部が設けられ、下端部がレール頭部を押した状態で回転することにより前記マクラギ交換補助具本体およびマクラギ底面引掛体を上昇させ、前記マクラギ底面引掛部で引掛けたマクラギを引上げるレール引上げ体とを有することを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項2】
請求項1記載のマクラギ交換補助具において、
前記マクラギ交換補助具本体の外側には、上下方向に貫通した貫通孔が設けられた筒部が設けられている一方、
前記マクラギ底面引掛体は、
前記筒部の貫通孔に通され、下端部にはマクラギ底面を引掛ける前記マクラギ底面引掛部が設けられたマクラギ底面引掛軸部と、
前記マクラギ底面引掛軸部の上部の雄ネジ部に着脱可能に螺合し、前記筒部の貫通孔の内径より外径が大きい抜止め部とを備えることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項3】
請求項2記載のマクラギ交換補助具において、
前記筒部は、前記マクラギ交換補助具本体の四隅に設けられていることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のマクラギ交換補助具において、
前記マクラギ底面引掛軸部の上部の外周面には、雄ネジ部が設けられている一方、
前記抜止め部は、前記マクラギ底面引掛部の前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有するナットであり、
当該ナットの回転により前記マクラギ底面引掛軸部の下部に設けた前記マクラギ底面引掛部の高さを調整できるように構成されていることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか一の請求項に記載のマクラギ交換補助具において、
前記マクラギ底面引掛軸部における前記マクラギ底面引掛部よりも上方には、前記筒部の外側面よりも外側に突出した突出案内棒が設けられている一方、
前記筒部には、その下端から上方に向かった後、水平方向へ前記突出案内棒を案内して前記マクラギ底面引掛部が外側を向いてマクラギに干渉しない退避状態を保持する引掛部退避状態保持溝部が設けられていることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項6】
請求項5記載のマクラギ交換補助具において、
前記突出案内棒は、前記マクラギ底面引掛軸部において前記マクラギ底面引掛部とは反対方向に突出して設けられていることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一の請求項に記載のマクラギ交換補助具において、
前記レール引上げ体の上端部には、電動回転工具のソケットが嵌合する電動回転工具ソケット嵌合部が設けられていることを特徴とするマクラギ交換補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクラギ交換作業の際にマクラギ上面をレール底面に近付ける作業を行うマクラギ交換補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マクラギ交換作業において、道床を掘り、旧マクラギを抜いて新マクラギを挿入する際、新マクラギを宙に浮いているレール底面まで引き上げて密着させるため、例えば、ジャッキや、特許文献1に記載された枕木吊上げ器等を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3429235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、マクラギ交換作業において新マクラギの底面にジャッキを設置し、新マクラギを宙に浮いているレール底面まで引き上げて密着させる場合、ジャッキをマクラギの下に設置するためジャッキの分だけ道床を掘下げる必要があり、作業員の負担が非常に大きいという問題があった。
【0005】
また、特許文献1に記載の枕木吊上げ器を使用して新マクラギを宙に浮いているレール底面まで引き上げて密着させる場合、道床を掘下げる作業は不要になるもの、チェーンブロック下端のフックをマクラギに固定されたパンドロール等のレール締結装置やタイプレートをマクラギに固定している犬釘等に引掛ける必要があるため、レール締結装置やタイプレート等が予め固定されていない分岐区間等のマクラギには使用できないという問題があった。
【0006】
特に、特許文献1に記載の枕木吊上げ器は、所定の軌間のレール上を走行して使用するため、直線区間や曲線区間の軌間が一定のレール間のマクラギの交換は問題ないが、レールが分岐する分岐区間においては、新マクラギには予めレール締結装置やタイプレート等が装着されてなく、レールの通る位置が定まっていないので、枕木吊上げ器を使用できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、新旧マクラギ交換の際に新マクラギにレール締結装置やタイプレート等が固定されていない状態でも、新マクラギを宙に浮いているレール底面まで容易に引き上げることができるマクラギ交換補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るマクラギ交換補助具は、レール頭部を跨ぐように被せられ、レール頭部の上方となる位置に雌ネジ孔が設けられたマクラギ交換補助具本体と、前記マクラギ交換補助具本体の外側に設けられ、下端部にマクラギ底面を引掛けるマクラギ底面引掛部が設けられたマクラギ底面引掛体と、前記マクラギ交換補助具本体の前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部が設けられ、下端部がレール頭部を押した状態で回転することにより前記マクラギ交換補助具本体およびマクラギ底面引掛体を上昇させ、前記マクラギ底面引掛部で引掛けたマクラギを引上げるレール引上げ体とを有することを特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記マクラギ交換補助具本体の外側には、上下方向に貫通した貫通孔が設けられた筒部が設けられている一方、前記マクラギ底面引掛体は、前記筒部の貫通孔に通され、下端部にはマクラギ底面を引掛ける前記マクラギ底面引掛部が設けられたマクラギ底面引掛軸部と、前記マクラギ底面引掛軸部の上部の雄ネジ部に着脱可能に螺合し、前記筒部の貫通孔の内径より外径が大きい抜止め部とを備えることも特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記筒部は、前記マクラギ交換補助具本体の四隅に設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記マクラギ底面引掛軸部の上部の外周面には、雄ネジ部が設けられている一方、前記抜止め部は、前記マクラギ底面引掛部の前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有するナットであり、当該ナットの回転により前記マクラギ底面引掛軸部の下部に設けた前記マクラギ底面引掛部の高さを調整できるように構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記マクラギ底面引掛軸部における前記マクラギ底面引掛部よりも上方には、前記筒部の外側面よりも外側に突出した突出案内棒が設けられている一方、前記筒部には、その下端から上方に向かった後、水平方向へ前記突出案内棒を案内して前記マクラギ底面引掛部が外側を向いてマクラギに干渉しない退避状態を保持する引掛部退避状態保持溝部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記突出案内棒は、前記マクラギ底面引掛軸部において前記マクラギ底面引掛部とは反対方向に突出して設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るマクラギ交換補助具では、前記レール引上げ体の上端部には、電動回転工具のソケットが嵌合する電動回転工具ソケット嵌合部が設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るマクラギ交換補助具は、レール頭部を跨ぐように被せられ、レール頭部の上方となる位置に雌ネジ孔が設けられたマクラギ交換補助具本体と、マクラギ交換補助具本体の外側に設けられ、下端部にマクラギ底面を引掛けるマクラギ底面引掛部が設けられたマクラギ底面引掛体とを備え、マクラギ交換補助具本体の雌ネジ孔には、外周面に雌ネジ部に螺合する雄ネジ部が設けられており、回転することによりマクラギ交換補助具本体およびマクラギ底面引掛体を上昇させ、マクラギ底面引掛部で引掛けたマクラギを引上げるレール引上げ体を螺合させて設けている。
そのため、新旧マクラギ交換の際に新マクラギにレール締結装置やタイプレート等が固定されていない状態でも、本発明に係るマクラギ交換補助具を使用してレール引上げ体を回転させることにより、新マクラギを宙に浮いているレール底面まで容易に引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の使用状態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の使用状態を示す図1とは別角度の斜視図である。
図3】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の正面図である。
図4】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の左側面図である。
図5】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の平面図である。
図6】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具を構成するマクラギ交換補助具本体の正面図である。
図7】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具を構成するマクラギ交換補助具本体の左側面図である。
図8】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具を構成するマクラギ交換補助具本体の平面図である。
図9】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具を構成するレール引上げ体の正面図、平面図である。
図10】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具を構成するマクラギ底面引掛部の正面図、側面図、平面図である。
図11】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の使用方法を説明する説明図であって、旧合成マクラギを抜き取った状態を示す説明図である。
図12】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の使用方法を説明する説明図であって、新合成マクラギおよびタイプレートを挿入した後、実施形態のマクラギ交換補助具を設置する作業を示す説明図である。
図13】本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の使用方法を説明する説明図であって、実施形態のマクラギ交換補助具および電動回転工具を使用してレール底面にマクラギ上面を近付ける作業を示す説明図である。
図14】(a)~(c)それぞれ本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の筒部におけるマクラギ底面引掛体のセット位置の一例を示す図である。
図15】分岐区間の新マクラギに対する本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具の筒部におけるマクラギ底面引掛体のセット位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<本発明に係る実施の形態のマクラギ交換補助具1の構成>
本発明に係る実施の形態のマクラギ交換補助具1は、図1図2に示すように新・旧のマクラギの交換作業の際に新マクラギMの上面を宙に浮いているレールR底面に近付ける作業を行う治具であって、図1図5に示すようにマクラギ交換補助具本体11と、レール引上げ体12と、マクラギ底面引掛体13等を備えて構成される。尚、実施の形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ交換補助具1毎に2本のマクラギ底面引掛体13を使用するものとする。
【0013】
(マクラギ交換補助具本体11)
マクラギ交換補助具本体11は、図6図8等に示すように棒鋼等をU字形状および逆U字形状に繰り返し折り曲げてレールRの頭部RHに被せるもので、外側に作業員が左右の手でそれぞれ掴む把持部11a1,11a1が30~60cm程度の間隔を空けてそれぞれ設けられると共に、その把持部11a1,11a1の間に10~20cm程度の間隔を空けてボルト支持板受け部11a2,11a2が設けられ、レールRの頭部RHを跨ぐようにレールRの頭部RHに被せた際には、把持部11a1,11a1およびボルト支持板受け部11a2,11a2がレールRの頭部RHの上方に位置するように構成されたマクラギ交換補助具本体フレーム11aと、ボルト支持板受け部11a2,11a2に溶接等して設けられ、その中央であるレール頭部RHの上方となる位置にはレール引上げ体12が通るレール引上げ体通し孔に雌ネジ孔11b11が設けられたナット11b1が溶接等して設けたボルト支持板11bとを備えて構成されている。
【0014】
マクラギ交換補助具本体フレーム11aの四隅には、図8等に示すように、それぞれ、筒部取付板11cを介してマクラギ底面引掛体13のマクラギ底面引掛軸部としてのマクラギ底面引掛棒13aを通す上下方向に貫通した貫通孔11d1が設けられた筒部11dが溶接等されて設けられている。
【0015】
筒部11dには、図6等に示すようにその下端から上方に向かった後、水平方向(横方向)へマクラギ底面引掛体13の後述する突出案内棒13dを案内して当該筒部11dに対してマクラギ底面引掛部13bが外側を向き新マクラギMに干渉しない退避状態を保持する引掛部退避状態保持溝部11d2を設けている。
【0016】
尚、マクラギ交換補助具本体フレーム11aには、同じ棒鋼であるマクラギ交換補助具補助バー11e,11f等を適宜、水平方向にマクラギ交換補助具本体フレーム11aや筒部取付板11c等に溶接して補強している。
【0017】
(レール引上げ体12)
レール引上げ体12は、図9(a),(b)等に示すようにマクラギ交換補助具本体11のボルト支持板11bのナット11b1の雌ネジ孔11b11(図8参照。)に螺合する雄ネジ部12a1が外周面に設けられたネジ棒12aと、そのネジ棒12aの上端部に固定され、電動回転工具2のソケット21が嵌合する6角形等のナットを使用した電動回転工具ソケット嵌合部12bと、ネジ棒12aの下端部に設けられ、レールRの頭部RHを押えるレール頭部押え部12cとから構成されている。
【0018】
(マクラギ底面引掛体13)
マクラギ底面引掛体13は、図3図5等に示すようにマクラギ交換補助具本体11aの四隅に設けられた筒部11dの貫通孔11d1に回転可能に通して使用するもので、図10(a)~(d)に示すように上端部に雄ネジ部13a1が設けられたマクラギ底面引掛棒13aと、マクラギ底面引掛棒13aの下端部に溶接等されて設けられ、新マクラギM底面を引掛けるマクラギ底面引掛部13bと、マクラギ底面引掛棒13aの上端部の雄ネジ部13a1に螺合する抜止め部13cと、マクラギ底面引掛棒13aのマクラギ底面引掛部13bよりも上方に筒部11dの外側面よりも外側に突出して設けられ、筒部11dの引掛部退避状態保持溝部11d2(図6参照。)に嵌合して案内され、マクラギ底面引掛体13が新マクラギMに引っ掛からない退避状態を保持する突出案内棒13dとで構成されている。
【0019】
マクラギ底面引掛部13bの上面には、新マクラギMを滑らずに確実に引き上げることができるよう図10(c)に示すよう凹凸形状の滑り止めが設けられている。
【0020】
抜止め部13cは、貫通孔11d1の内径より外径が大きい2つのナットで構成されている。
【0021】
突出案内棒13dは、マクラギ底面引掛棒13aに対しマクラギ底面引掛部13bとは反対方向に突出して設けている。
【0022】
<本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1の使用方法>
次に、新旧マクラギの交換作業の際における本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1の使用方法について説明する。
【0023】
新旧マクラギの交換作業を行う場合、まずは、図11に示すようにレールRの下に設置された旧マクラギM’を取り除くため、旧マクラギM’周囲の道床砕石Gを掘って旧マクラギM’を取り除く。尚、旧マクラギM’を取り除くと、図11に示すように旧マクラギM’が有った場所は、大きく窪むことになる。
【0024】
次に、図12に示すように旧マクラギM’が有った箇所に新マクラギMを挿入すると共に、レールRの下方の位置に例えばタイプレートTを設置する。
【0025】
ここで、旧マクラギM’を取り除くため旧マクラギM’周囲の道床砕石Gを掘下げたため、図12に示すように新マクラギMを挿入してタイプレートTを設置しても、レールR底面と新マクラギM上面またはタイプレートT上面との間には隙間が空く。
【0026】
そのため、図12の左側のレールRで示すように、当該レールRの上から実施形態のマクラギ交換補助具1を降下させてレールRの頭部RHに被せ、レール引上げ体12下端のレール頭部押え部12cをレールRの頭部RHに当接させる。
【0027】
尚、実施形態のマクラギ交換補助具1を降下させてレールRの頭部RHに被せる際は、マクラギ交換を行う作業場所に応じて、後述する図14(a)~(c)や図15等に示すように、マクラギ交換補助具本体11の四隅に設けた4箇所の筒部11dの内、最適な2箇所の筒部11dを選択し、選択した2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13を挿入して使用する。
【0028】
次に、図12の右側のレールRで示すように、マクラギ交換補助具本体11aの筒部11dに通したマクラギ底面引掛棒13aを回転させ、マクラギ底面引掛棒13aの下端部のマクラギ底面引掛部13bを新マクラギMの底面に挿入させる。
【0029】
また、マクラギ交換補助具本体11の四隅に設けた4箇所の筒部11dの内、通常は図14(a),(b)に示すように対角線上の2箇所の筒部11dを選択してその対角線上の2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13を挿入して使用すると、2本のマクラギ底面引掛体13でもバランス良く新マクラギMを吊り上げることができる。
【0030】
しかし、分岐区間において使用される木製または合成樹脂(プラスチック)製の軽めのマクラギであって、予めタイプレートTや締結ボルト41および締結ナット42等が設けられていない新マクラギMであって、かつ、片側にガードレールGR(図15等参照。)等がある新マクラギMを吊り上げる場合は、図14(c)等に示すようにマクラギ交換補助具本体11の四隅の筒部11dの内、ガードレールGRを避けるようにガードレールGRとは反対側の2本の筒部11dにマクラギ底面引掛棒13aを通して使用する。
【0031】
また、マクラギ交換補助具本体11aの筒部11dに通したマクラギ底面引掛棒13aを回転させて、マクラギ底面引掛棒13a下端部のマクラギ底面引掛部13bを新マクラギMの底面に挿入させる際、作業員はマクラギ底面引掛部13b上方の突出案内棒13dを摘まんで外側に向けることにより、マクラギ底面引掛部13bを新マクラギM底面に挿入することができる。
【0032】
図12の右側のレールRで示すようにマクラギ底面引掛棒13a下端部のマクラギ底面引掛部13bを新マクラギMの底面に挿入が完了すると、次は、図13の左側のレールRで示すように、レール引上げ体12のネジ棒12a上端部の電動回転工具ソケット嵌合部12bに、電動回転工具2のソケット21を嵌合させて電動回転工具2によってレール引上げ体12のネジ棒12aを回転させる。
【0033】
すると、レール引上げ体12のネジ棒12a下端部に設けられたレール頭部押え部12cがレールRの頭部RH上面に当接しており、レールR自体は基本的に上下動しないため、電動回転工具2によってレール引上げ体12のネジ棒12aを回転させると、マクラギ交換補助具本体11が上昇し、マクラギ交換補助具本体11の四隅に設けられた筒部11dに挿入されたマクラギ底面引掛棒13aも引き上げられ、マクラギ底面引掛棒13aの下端部に設けたマクラギ底面引掛部13bも上昇して、新マクラギMを上昇させる。
【0034】
そして、図13の右側のレールRで示すように、電動回転工具2によって新マクラギMが引き上げられ、新マクラギM上面のタイプレートTが新レールR底面に密着するまで電動回転工具2によってレール引上げ体12のネジ棒12aを回転させて締め付け、その後、タイプレートTと新マクラギMとを犬クギ(ねじクギ)3で固定し、タイプレートTと新レールRとは締結ボルト41および締結ナット42等で固定する。
【0035】
尚、この箇所での新マクラギMへのレールRの締結が完了すると、作業員はマクラギ交換補助具1を取り外すため、突出案内棒13d等を掴んで内側に回転する。
【0036】
すると、突出案内棒13d下端部のマクラギ底面引掛部13bが新マクラギM底面から外れ、突出案内棒13dを筒部11dの引掛部退避状態保持溝部11d2に沿って移動させ引掛部退避状態保持溝部11d2の水平部分に位置させることにより、マクラギ底面引掛部13bが新マクラギMに引っ掛からない退避位置に移動させることができると共に、その退避位置に保持することが可能となる。
【0037】
<マクラギ交換補助具1の四隅に筒部11dにおけるマクラギ底面引掛体13のセット位置>
本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ交換補助具本体11の四隅に筒部11dを設けているため、例えば、図14(a)~(c)等に示すように、四隅の筒部11dの内、作業現場に応じて最適な2箇所の筒部11dを選択し、選択した2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13を挿入して使用する。つまり、図14(a),(b)に示すように対角線上にある2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13をセットして使用しても良いし、図14(c)に示すように片側の2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13をセットして使用しても良い。尚、筒部11dにマクラギ底面引掛体13をセットしたり、取り外す場合には、マクラギ底面引掛棒13aの上端部の雄ネジ部13a1に螺合する抜止め部13cを取り外して行う。
【0038】
例えば、図15に示すような分岐区間では、ガードレールGRが設けられていない箇所で新マクラギMを設置する場合は、図14(a),(b)に示すようにマクラギ交換補助具1において対角線方向に並ぶ2箇所の筒部11dにマクラギ底面引掛体13を挿入して新マクラギMを引き上げる。
【0039】
これに対し、ガードレールGRが設けられた箇所の新マクラギMを設置する場合は、図14(c)に示すようにガードレールGRにマクラギ底面引掛体13等が干渉しないようにガードレールGRの反対側に並ぶ2箇所の筒部11dにマクラギ底面引掛体13を挿入して新マクラギMを引き上げる。
【0040】
<本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、レールRの頭部を跨ぐようにレールRの頭部に被せられ、レール頭部RHの上方となる位置に雌ネジ孔11b11が設けられたマクラギ交換補助具本体11と、マクラギ交換補助具本体11の外側に設けられ、下端部にマクラギ底面を引掛けるマクラギ底面引掛部13bが設けられたマクラギ底面引掛体13とを備え、マクラギ交換補助具本体11の雌ネジ孔11b11には、外周面に雌ネジ部11b11に螺合する雄ネジ部12a1が設けられており、下端部のレール頭部押え部12cでレールRの頭部を押した状態で回転することによりマクラギ交換補助具本体11およびマクラギ底面引掛体13を上昇させ、マクラギ底面引掛部13bで引掛けた新マクラギMを引上げるレール引上げ体12を設けている。
【0041】
そのため、新旧マクラギM,M’交換の際に新マクラギMにレール締結装置やタイプレートT等が固定されていない状態でも、実施形態のマクラギ交換補助具1を使用してレール引上げ体12を回転させることにより、宙に浮いているレールR底面まで新マクラギMを引き上げて容易に密着させることができるため、新旧マクラギM,M’交換の作業効率を向上させることができる。
【0042】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、レールRの頭部RHの上からセットすることができるので、従来のようにジャッキの挿入や砕石掘りが不要になると共に、電動回転工具2で素早い上げ下げが可能となるので、調整が速やかにできるなど作業効率が大幅にUPする。
【0043】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、レールR毎にセットするため、片側のレールR毎にセットすることも可能であり、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0044】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ底面引掛体13は、マクラギ交換補助具本体11の四隅に上下方向に貫通した貫通孔11d1が設けられた筒部11dを設ける一方、マクラギ底面引掛体11は、筒部11dの貫通孔11d1に回転可能に通され、下端部には新マクラギM底面を引掛けるマクラギ底面引掛部13bが設けられたマクラギ底面引掛棒13aと、マクラギ底面引掛棒13a上部の雄ネジ部13a1に着脱可能に螺合し、筒部11dの貫通孔11d1の内径より外径が大きい抜止め部13cとを備える。
【0045】
そのため、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、マクラギ底面引掛体13は、抜止め部13cをマクラギ底面引掛棒13a上部の雄ネジ部13a1から取り外すことにより、マクラギ交換補助具本体11の筒部11dに対し着脱自在に装着することができるので、作業現場に応じて筒部11dにマクラギ底面引掛体13を装着してレール交換作業を行うことが可能となり、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ交換補助具本体11の四隅にマクラギ底面引掛棒13aを通す筒部11dを設けている。
【0047】
そのため、図14(a)~(c)や図15等に示すように、四隅の筒部11dの内、作業現場に応じて最適な2箇所の筒部11dを選択して、選択した2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13を挿入して使用することにより、分岐区間におけるガイドレールGRを避ける等、作業現場に最適な筒部11dにマクラギ底面引掛体13を通すことも可能となるので、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0048】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ底面引掛棒13aの上部には、雄ネジ部13a1が設けられている一方、抜止め部13cは、マクラギ底面引掛棒13aの雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する2つのナットである。
【0049】
そのため、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、抜止め部13cによって筒部11dからのマクラギ底面引掛棒13aの抜け止めを図ることが出来ると共に、新マクラギM底面とマクラギ底面引掛部13b上面との間隔を調整することができるので、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0050】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ底面引掛棒13aのマクラギ底面引掛部13bよりも上方には、筒部11dの外側面よりも外側に突出した突出案内棒13dを設ける一方、筒部11dには、その下端から上方に向かった後、横方向へ突出案内棒13dを案内して当該筒部11dに対してマクラギ底面引掛部13bが外側を向いて新マクラギMに干渉しない退避状態を保持する引掛部退避状態保持溝部11d2を設けている。
【0051】
そのため、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1は、マクラギ交換作業終了後にレールRから実施形態のマクラギ交換補助具1を引き上げる際に引掛部退避状態保持溝部11d2にマクラギ底面引掛棒13aの突出案内棒13dを案内させて引掛部退避状態保持溝部11d2の水平部分にセットしておくことにより、新マクラギMにマクラギ底面引掛部13bが引っ掛かり邪魔になることを防止することができるので、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0052】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ底面引掛棒13aの突出案内棒13dは、マクラギ底面引掛棒13aにおいてマクラギ底面引掛部13bに対し反対方向に突出して設けている。
【0053】
そのため、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、マクラギ交換作業時に、突出案内棒13dを外側に回転させることにより、マクラギ底面引掛部13bを新マクラギMの底面に挿入することが可能となるので、この点でも新旧マクラギM,M’の交換作業の作業効率を向上させることができる。
【0054】
また、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1では、レール引上げ体12の上端部には、電動回転工具2のソケット21が嵌合する電動回転工具ソケット嵌合部12bを設けている。
【0055】
そのため、本発明に係る実施形態のマクラギ交換補助具1によれば、電動回転工具2を使用してレール引上げ体12のネジ棒12aを回転させてレールR底面と新マクラギM上面とを密着させることができるので、新旧マクラギM,M’交換の作業効率を向上させることができる。
【0056】
尚、上記実施形態の説明では、マクラギ交換補助具本体11の四隅の筒部11dの内、作業現場に応じて最適な2箇所の筒部11dを選択し、選択した2箇所の筒部11dそれぞれにマクラギ底面引掛体13を挿入して新マクラギMを引き上げるように説明したが、本発明では、これに限らず、四隅の筒部11d全てにマクラギ底面引掛体13を挿入して新マクラギMを引き上げても良いし、マクラギ交換補助具本体11の左右いずれかの片側にのみ複数の筒部11dを設けてマクラギ底面引掛体13を通すように構成しても勿論良い。
【符号の説明】
【0057】
1 マクラギ交換補助具
11 マクラギ交換補助具本体
11a マクラギ交換補助具本体フレーム
11a1 把持部
11a2 ボルト支持板受け部
11b ボルト支持板
11b1 ナット
11b11 雌ネジ孔
11c 筒部取付板
11d 筒部
11d1 貫通孔
11d2 引掛部退避状態保持溝部
11e,11f マクラギ交換補助具補助バー
12 レール引上げ体
12a ネジ棒
12a1 雄ネジ部
12b 電動回転工具ソケット嵌合部
12c レール頭部押え部
13 マクラギ底面引掛体
13a マクラギ底面引掛棒(マクラギ底面引掛軸部)
13a1 雄ネジ部
13b マクラギ底面引掛部
13c 抜止め部
13d 突出案内棒
2 電動回転工具
21 ソケット
3 犬クギ(ねじクギ)
41 締結ボルト
42 締結ナット
R レール
RH 頭部
M 新マクラギ
M’ 旧マクラギ
T タイプレート

図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
図12
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図15