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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/14 20060101AFI20240221BHJP
   B60N 2/10 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A47C7/14 Z
B60N2/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019184753
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021058421
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高平 尚伸
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 精
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0062153(US,A1)
【文献】特開昭62-053614(JP,A)
【文献】特開2012-116218(JP,A)
【文献】実開昭59-044359(JP,U)
【文献】特表2010-516380(JP,A)
【文献】特表2005-503879(JP,A)
【文献】特開2009-273585(JP,A)
【文献】特開2006-068223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/14
B60N 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部と、座面部と、を具備する椅子であって、
前記座面部は、前傾変位可能に構成され、
前記背もたれ部は、前記座面部の前傾変位の度合いにかかわらず、接地面に対する傾斜角度が一定となるように構成されており、
前記座面部は、座面において凹形状に形成された面を有し、
前記凹形状は、座面の前後方向における中心より後方側にのみ設けられる、
前記座面部は、前方側の先端の高さが固定され、当該先端を回転軸として後方側が持ち上がる構成とされることで、前傾変位可能とされる、
椅子。
【請求項2】
前記座面部は、着座者の左右方向に延びる回転軸を有し、当該回転軸線周りの回動により、前傾変位可能とされている
請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記座面部は、着座者の腰椎を支えるランバーサポートと一体に前傾変位可能とされている
請求項1または請求項2に記載の椅子。
【請求項4】
前記座面部は、さらに、後傾変位可能に構成されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項5】
前記座面部の前傾変位を所望の度合いで固定可能なストッパーをさらに備えている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項6】
前記座面部が前傾変位可能な構成において、ロッキング機構が適用されている
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の椅子。
【請求項7】
着座者の腰椎を支えるランバーサポートをさらに備え、
前記ランバーサポートは、前記座面部の前傾変位の度合いに応じて、前記背もたれ部に沿って高さ方向の位置を調節可能な構成とされている
請求項1に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、離座する際のサポートとして、座面の前傾および後傾を可能とするシートクッションが実現された車両用シートが開示されている。個々に開示されているシートは、主に脚部の傾倒により座面から背もたれにかけた椅子本体が前傾する構成となっている。
【0003】
特許文献2には、着座者の種々の姿勢変化に対応してリクライニング可能な劇場用座席が開示されている。こちらも、座面が前傾する構成が開示されているが、特許文献2の図2(a)~(c)等を見ればわかるように、座面の前傾は背もたれの傾倒と連動しており、仰臥位(仰向けに寝た姿勢)を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-131101号公報
【文献】再公表WO2017/155069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、座位による腰痛や肩こり、内科的疾患の発症や高齢者における運動器不安定症(ロコモティブシンドローム)などの健康障害との関連が多く報告され、座位に関する社会の関心が高まっている。腰痛による経済負担は米国で約100億ドル、オランダで約3.5億ユーロとの報告があり、その経済に及ぼす影響は莫大である。一方で我々の生活において座位は必要不可欠な要素であり、座位が身体に与える負担をいかに軽減していくかが現在解決すべき課題である。
【0006】
座位が身体に与える影響を軽減する手段として、従来から現状までは座位中や座位後の運動が推奨されている。本発明は着座者による意識や努力を要さずとも、脊柱に負担の少ない健康的な姿勢の維持を可能にすることで、不良姿勢が原因で生じる腰痛や肩こりなどの身体的負担を予防する特徴を有する。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、着座者による意識や努力を要さずとも、脊柱への負担が少ない姿勢を維持できる椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本発明の第1の態様に係る椅子は、背もたれ部と、座面部と、を具備する椅子であって、前記座面部は、前傾変位可能に構成され、前記背もたれ部は、前記座面部の前傾変位の度合いにかかわらず、接地面に対する傾斜角度が一定となるように構成されている。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る椅子によれば、前記座面部は、着座者の左右方向に延びる回転軸を有し、当該回転軸線周りの回動により、前傾変位可能とされている。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る椅子によれば、前記座面部は、座面において凹形状に形成された面を有する。
【0011】
また、本発明の第4の態様に係る椅子によれば、前記座面部は、着座者の腰椎を支えるランバーサポートと一体に前傾変位可能とされている。
【0012】
また、本発明の第5の態様に係る椅子は、着座者の腰椎を支えるランバーサポートをさらに備え、前記ランバーサポートは、前記座面部の前傾変位の度合いが増すにつれて、前記傾斜角度に沿って前記接地面から離れる方向に並進移動が可能な構成とされている。
【0013】
また、本発明の第6の態様に係る椅子によれば、前記座面部は、さらに、後傾変位可能に構成されている。
【0014】
また、本発明の第7の態様に係る椅子は、前記座面部の前傾変位を所望の度合いで固定可能なストッパーをさらに備えている。
【発明の効果】
【0015】
上述の少なくとも一の態様に係る椅子によれば、着座者による意識や努力を要さずとも、脊柱への負担が少ない姿勢を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図4】第1の実施形態の第1変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図5】第1の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図6】第1の実施形態の第3変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図7】第1の実施形態の第3変形例に係る椅子の機能を説明するための図である。
図8】第2の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図11】第2の実施形態の変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図12】第2の実施形態の変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図13】第2の実施形態の変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図14】第3の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図15】第3の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図16】第3の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
図17】第3の実施形態の第1変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図18】第3の実施形態の第1変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図19】第3の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図20】第3の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図21】第3の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図22】第3の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態およびその変形例に係る椅子について、図1図7を参照しながら説明する。
【0018】
図1図3は、第1の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
本実施形態に係る椅子1は、例えば、オフィスチェアなどであってよい。
【0019】
(椅子の全体構成)
椅子1の全体構成について、図1を参照しながら詳しく説明する。
図1(a)は、椅子1の正面図であり、図1(b)は、椅子1の側面図である。また、図1(c)は、座面部10の斜視図である。図1(a)~(c)に示すように、椅子1は、座面部10と、背もたれ部11と、肘掛部12とを有してなる。
【0020】
(座面部)
座面部10は、座面クッション100と、回転軸101とを備えている。
【0021】
座面クッション100は、椅子1の座面を形成する部材である。座面クッション100は、その内部に設けられた回転軸101の軸線周りに回動可能とされている。これにより、座面クッション100は、着座者Aの前後方向(各図の±X方向)の重心移動に追随するように回動する。
回転軸101は、左右方向(各図の±Y方向)に延びる部材であって、肘掛部12の肘掛支柱12bによって両端が固定支持されている。
【0022】
(背もたれ部)
背もたれ部11は、背もたれクッション11aと、背もたれ支柱11bとを備えている。
【0023】
背もたれクッション11aは、着座者Aの背中が接する部材である。
図1(b)に示すように、背もたれクッション11a及び背もたれ支柱11bは、接地面Gに対し、所定の傾斜角度θで傾斜するように設けられる。この傾斜角度θは、座面クッション100の回動に連動して変位することはない。つまり、座面クッション100の回動位置にかかわらず、背もたれ部11が接地面Gとなす傾斜角度θは固定されている。
【0024】
(肘掛部)
肘掛部12は、肘掛部材12aと、肘掛支柱12bとを備えている。
【0025】
肘掛部材12aは、着座者Aの肘が掛けられる部材である。
肘掛支柱12bは、肘掛部材12aを支持するとともに、左右方向から座面部10をはさむように構成される。肘掛支柱12bは、回転軸101の両端を固定支持することで、座面部10の座面クッション100を回動可能に支持する。
【0026】
(ストッパーの構成)
ストッパーSの構成について、図2を参照しながら詳しく説明する。
ストッパーSは、着座者Aが所望する回動角度で座面クッション100を固定するための機構である。
図2(a)~(d)に示すように、ストッパーSは、ビス受け手SaおよびビスSbからなる。
ビス受け手Saは、座面クッション100の一方側の側面(+Y方向側の面)に設けられる。ビス受け手Saは、複数の穴部を有している。この穴部は、ビスSbを差込可能に形成されている。
ビスSbは、肘掛支柱12bに設けられる(図2(a)~(d)では、肘掛支柱12bの図示が省略されている。)ビスSbは、椅子1の右方向(-Y方向)に付勢力を有しながら肘掛支柱12bに取り付けられている。これにより、ビスSbの先端が、ビス受け手Saのいずれかの穴部に差し込まれる。ビスSbの先端が、ビス受け手Saの穴部に差し込まれることで座面クッション100の回動が抑止される。
図2(a)~(d)に示すように、着座者Aは、ビスSbの先端をビス受け手Saのいずれの穴部に差し込こむかによって所望の回動角度で座面クッション100を固定することができる。例えば、図2(c)は、座面クッション100を前傾させた状態で固定させた場合のストッパーSの状態を示しており、図2(d)は、座面クッション100を後傾させた状態で固定させた場合のストッパーSの状態を示している。
【0027】
(作用、効果)
第1の実施形態に係る椅子1によって得られる作用、効果について、図3を参照しながら詳しく説明する。
図3(a)、(b)に示すように、座面部10は、着座者Aの重心移動に追随しながら回転軸101の軸線周りに回転することで前傾変位および後傾変位を可能とする。
図3(a)に示すように、座面部10が前傾変位している場合、傾斜角度θが固定された背もたれ部11により着座者Aの背中の姿勢を維持しながら、股関節屈曲角δが開く方向に変位する。これにより、着座者Aの骨盤が垂直方向に立つ姿勢となり、なおかつ、股関節屈曲角δは座面部10が前傾変位しない場合よりも開かれる。したがって、着座者Aは、股関節が過度に屈曲することを避けつつ、着座者Aの骨盤が垂直に立つ姿勢を得られる。これにより、着座者Aは、股関節が過度に屈曲することで生じる負担を課せられることなく、骨盤を垂直に立たせる姿勢を維持し続けることができる。
【0028】
以上より、第1の実施形態に係る椅子1によれば、着座者による意識や努力を要さずとも、脊柱への負担が少ない姿勢を維持できる。
【0029】
また、図3(b)に示すように、座面部10が後傾変位している場合、着座者Aの体重が背もたれ部11に預けられる形となり、リラックスした姿勢となる。これにより、長時間の同一姿勢による不快感、疲労を抑制することができる。
【0030】
また、図2で説明したように、座面部10の前傾変位を所望の度合いで固定可能なストッパーをさらに備えている。これにより、例えば着座者Aが座面部10に腰掛けている際に、意図せずに座面部10の前傾変位の度合いが変化してしまうことを防止することができる。
【0031】
(第1の実施形態の第1変形例)
図4は、第1の実施形態の第1変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図4(a)は、椅子1の側面図である。また、図4(b)は、座面部10の斜視図である。図4(a)、(b)に示すように、第1の実施形態の第1変形例に係る椅子1は、座面クッション100の上面奥側(+Z方向側の面における-X方向)の領域に凹形状面Dが設けられている。
【0032】
このような構成によれば、着座者Aの坐骨が座面クッション100のくぼみ(凹面形状D)で支持される構成となるので、座面クッション100を前傾変位させた場合に、着座者Aの臀部の前滑りを抑制することができる。
【0033】
(第1の実施形態の第2変形例)
図5は、第1の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図5(a)は、椅子1の側面図である。また、図5(b)は、座面部10の斜視図である。図5(a)、(b)に示すように、第1の実施形態の第2変形例に係る座面部10は、座面クッション100のミート内にアンカー102が設けられている。このアンカー102は、硬質な素材からなり、アンカー102の上面には凹形状面Dが設けられている。
【0034】
このような構成によっても、第1変形例と同等の作用、効果を奏することができる。
【0035】
(第1の実施形態の第3変形例)
図6図7は、第1の実施形態の第3変形例に係る椅子の構成を示す図である。
図6(a)は、椅子1の側面図である。また、図6(b)は、座面部10の斜視図である。図6(a)、(b)に示すように、第1の実施形態の第3変形例に係る座面部10は、さらに、着座者Aの腰椎を支えるランバーサポート103を備えている。このランバーサポート103は、座面クッション100と一体形成されており、座面クッション100と一体に前傾変位(回動)可能とされている。
【0036】
ランバーサポート103の作用、効果について図7を参照しながら説明する。
図7(a)に示すように、座面クッション100の前傾時には、骨盤の前傾に伴う腰椎の前弯をサポートする形となる。これにより、骨盤を垂直に維持しようとする着座者Aの負担を一層軽減することができる。
また、図7(b)に示すように、座面クッション100の後傾時には、ランバーサポート103が背もたれ部11の後側(-X方向)に逃げる構成となる。これにより、骨盤の後傾に伴う腰椎の後弯を妨げず、着座者Aに楽な姿勢を取らせることができる。
【0037】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態およびその変形例に係る椅子について、図8図13を参照しながら説明する。第2の実施形態およびその変形例に係る椅子は、座面部が前傾変位可能とされる構成において、ロッキング機構が適用されることを特徴とする。
【0038】
図8図10は、第2の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
本実施形態に係る椅子1は、オフィスチェアである。
【0039】
(椅子の全体構成)
図8は、椅子1の側面図である。図9は、図8の側面図のうちロッキング機構3周りの構成を詳しく図示したものである。また、図10(a)は、椅子1の正面図であってロッキング機構3周りの構成を詳しく図示したものであり、図10(b)は、座面部10の底面図(-Z方向側から見た図)である。
図8図9図10(a)、(b)に示すように、第2の実施形態に係る椅子1は、座面部10と、背もたれ部11と、肘掛部12と、を有してなる。これらの各構成は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。なお、図9では、図が煩雑になるのを防ぐため、肘掛部12の図示を省略している。
【0040】
また、第2の実施形態に係る椅子1は、さらに、座面支柱連結ピン20、座面受部21、固定フレーム22、座面支柱23、固定フレーム24、26、27、支柱25およびロッキング機構3を備えている。
なお、本実施形態に係る椅子1は、第1の実施形態で説明したストッパーSを有していない。
【0041】
座面受部21は、座面クッション100の裏面(-Z方向側を向く面)中央位置に設けられる(図10(b)参照)。
【0042】
固定フレーム22は、座面部10と座面支柱23とを連結するための部材であって、回転軸101の中央位置に設けられる(図10(b)参照)。固定フレーム22と座面支柱23とは、座面支柱連結ピン20によって連結される。固定フレーム22および座面支柱連結ピン20は、座面クッション100が回転軸101の軸線周りに回動する際に、その動きを阻害しないような構成とされている。例えば、固定フレーム22には前後方向(±X方向)に延びる長穴(図示せず)が設けられ、座面支柱連結ピン20が当該長穴に通される構成とされてもよい。
【0043】
固定フレーム26は、座面クッション100の裏面後方側(-X方向側)に設けられる。固定フレーム26は、後述するロッキング機構3との連結に用いられる。
【0044】
座面支柱23は、下方から座面部10を支持する支柱である。座面支柱23は、固定フレーム22および座面受部21を介して座面部10と連結される。
【0045】
固定フレーム24は、座面支柱23と支柱25とを連結するための部材であって、支柱25の上面に設けられる。また、固定フレーム24は、後述するロッキング機構3との連結にも用いられる。
【0046】
支柱25は、椅子1(座面部10、背もたれ部11、肘掛部12)の全体を支える支柱である。
【0047】
ロッキング機構3は、一端が支柱25の固定フレーム24に連結され、他方が座面クッション100の固定フレーム26に連結される。
図9に示すように、ロッキング機構3は、スプリング30と、ピストン31と、連結ピン32a、32bとを有してなる。ロッキング機構3は、座面クッション100の回動に応じて伸縮自在とされる。
【0048】
(作用、効果)
このようなロッキング機構3によれば、着座者Aが重心を前方(+X方向)に移すと、座面クッション100の前側に荷重がかかり、前傾変位する。この前傾変位に応じて、ロッキング機構3のスプリング30及びピストン31が伸び、元の位置(座面が水平となる位置)に戻ろうとする反発力を与える。一方、着座者Aが重心を後方(-X方向)に移すと、座面クッション100の後側に荷重がかかり、後傾変位する。この後傾変位に応じて、ロッキング機構3のスプリング30およびピストン31が縮み、元の位置に戻ろうとする反発力を与える。
【0049】
第2の実施形態に係る椅子1によれば、ロッキング機構3により、前後方向の重心移動に応じて、ほどよい反発力を与えながら座面部10が前傾および後傾する構成となる。したがって、着座者は、椅子1に着座している際に適度に重心位置を前後方向に調節するだけで、座面部10を所望の角度に調節することができる。
【0050】
なお、着座前の座面クッション100の角度(座面の基本角度)は水平位とする他、前傾位もしくは後傾位とすることも可能である。
座面の基本角度を前傾位とした場合、着座者Aが重心を後方(-X方向)に移すと座面クッション100の後方に荷重がかかり、後傾変位する。この後傾変位に応じて、ロッキング機構3のスプリング30およびピストン31が縮み、元の位置(座面が前傾となる位置)に戻ろうとする反発力を与える。このように、座面の基本角度を前傾位とすることで、着座者が脊柱に負担の少ない姿勢をとることが容易となる。
また、座面の基本角度を後傾位とした場合、着座者Aが重心を前方(-X方向)に移すと座面クッション100の前方に荷重がかかり、前傾変位する。この前傾変位に応じて、ロッキング機構3のスプリング30およびピストン31が伸び、元の位置(座面が後傾となる位置)に戻ろうとする反発力を与える。このように、座面の基本角度を後傾位とした場合は、着座者がリラックスした姿勢をとることが容易となる。
【0051】
(第2の実施形態の変形例)
図11図13は、第2の実施形態の変形例に係る椅子の構成を示す図である。
本変形例に係る椅子1は、映画館などに設置される劇場用椅子である。
【0052】
(椅子の全体構成)
図11は、椅子1の側面図である。図12は、図11の側面図のうちロッキング機構3周りの構成を詳しく図示したものである。また、図13(a)は、椅子1の正面図であってロッキング機構3周りの構成を詳しく図示したものであり、図13(b)は、座面部10の底面図(-Z方向側から見た図)である。
図11図12図13(a)、(b)に示すように、第2の実施形態の変形例に係る椅子1は、第2の実施形態と同様に、座面部10と、背もたれ部11と、肘掛部12と、を有してなる。これらの各構成は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。なお、図12では、図が煩雑になるのを防ぐため、肘掛部12の図示を省略している。
【0053】
また、第2の実施形態の変形例に係る椅子1は、さらに、座面受部21、固定フレーム27、28、29およびロッキング機構3を備えている。
なお、本変形例に係る椅子1は、第1の実施形態で説明したストッパーSを有していない。
【0054】
座面受部21は、座面クッション100の裏面(-Z方向側を向く面)の後方側(-X方向側)一帯に設けられる(図13(b)参照)。
【0055】
図13(a)、(b)に示すように、本変形例に係る椅子1は、左右方向(±Y方向)の両側に2つのロッキング機構3が設けられている。各ロッキング機構3は、一端が固定フレーム27、28と連結され、もう一端が固定フレーム29に連結される。
【0056】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態およびその変形例に係る椅子について、図14図22を参照しながら説明する。第3の実施形態およびその変形例に係る椅子は、座面部の前方側の先端の高さが固定され、当該先端を回転軸として後方側が持ち上がる構成とされることを特徴とする。
【0057】
図14図16は、第3の実施形態に係る椅子の構成を示す図である。
本実施形態に係る椅子1は、映画館などに設置される劇場用椅子である。
【0058】
(椅子の全体構成)
図14(a)、(b)は、椅子1の側面図である。図14(a)は、肘掛部12の図示を省略している。図15は、椅子1の正面図であって、ストッパーS周りの構成を詳しく図示したものである。また、図16は、ストッパーSの構成部材を詳しく図示したものである。
図14(a)、(b)、図15に示すように、第3の実施形態に係る椅子1は、座面部10と、背もたれ部11と、肘掛部12とを有してなる。これらの各構成は、第1の実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0059】
また、第3の実施形態に係る椅子1は、さらに、座面受部21、ヒンジ40及びスプリング41を備えている。また、本実施形態に係る椅子1は、第1の実施形態で説明したストッパーSと同様のストッパーSを有している。
【0060】
本実施形態に係る座面受部21は、後方側に進むにつれ低くなる傾斜面を有して形成される。座面受部21は、ヒンジ40及びスプリング41を介して座面部10を支持する。
【0061】
ヒンジ40は、座面受部21および座面クッション100の前方側(+X方向側)の先端で、両者を回動可能に連結する部材である。
【0062】
スプリング41は、座面受部21および座面クッション100の後方側(-X方向側)に設けられ、座面クッション100を上方(+Z方向)に持ち上げようとする付勢力を与える。
【0063】
ストッパーSのビス受け手Saは、複数の穴部Vを有し、ビスSbの突出部Tが差し込まれる(図16(a)、(b)参照)。
【0064】
図15に示すように、肘掛支柱12bにはストッパー保持部12cが設けられている。ストッパー保持部12cの内部には、ストッパースプリングScが取り付けられており、ビスSbに左方向(-Y方向)の付勢力を与える。
【0065】
(作用、効果)
以上の通り、第3の実施形態に係る椅子1は、座面部10の下部後方側にスプリング41が備えられており、着座者Aが座れば圧縮され、立ち上がるように荷重を軽くすれば座面部10は持ち上がる。着座者Aは、その途中の所望な高さでビスSbを差し込んでロックをかけることができる。
【0066】
また、第3の実施形態に係る椅子1は、座面部10の足側(前方側)は固定されているが角度が変えられるヒンジ40で固定されている。このような構成によれば、着座者Aの膝の高さを変化させずに、座面部10を前傾変位させることができる。特に、劇場や映画館では、前列に配置された椅子が足を前方にずらそうとする動作を阻害し得るが、本実施形態に係る椅子1によれば、着座者Aは、座面部10を前傾変位させる際に足(つま先)の位置を前方にずらす動作を要さなくて済む。
【0067】
(第3の実施形態の第1変形例)
図17図18は、第3の実施形態の第1変形例に係る椅子の構成を示す図である。
本変形例に係る椅子1は、第3の実施形態と同様の劇場用椅子である。
【0068】
図17(a)、(b)は、椅子1の側面図である。図17(a)は、肘掛部12の図示を省略している。図18は、ランバーサポート50の構成部材を詳しく図示したものである。
【0069】
図17(a)、(b)および図18に示すように、本変形例に係る椅子1は、第3の実施形態の構成に加え、更に、ランバーサポート50を有することを特徴とする。このランバーサポート50は、座面部10の前傾変位の度合いに応じて、背もたれ部11に沿って高さ方向(±Z方向)の位置を調節可能とする。
【0070】
具体的には、ランバーサポート50は、ランバーサポートクッション500と、ビス受け手501とを備えている。
ビス受け手501は、ランバーサポートクッション500の側面に設けられ、高さ方向(±Z方向)に複数の穴部Vが配列されている(図18参照)。肘掛支柱12bに設けられたビスB(図17(b)参照)が複数の穴部Vのいずれに差し込まれるかによって、ランバーサポート50の高さを調節することができる。これにより、ランバーサポート50を、座面部10の前傾変位の度合いに応じた適切な高さに調節することができる。
【0071】
(第3の実施形態の第2変形例)
図19図22は、第3の実施形態の第2変形例に係る椅子の構成を示す図である。
本変形例に係る椅子1は、第3の実施形態と同様の劇場用椅子である。
【0072】
図19は、椅子1の側面図である。図19は、肘掛部12の図示を省略している。図20は、背もたれ部11の正面図である。図21は、背もたれ部11の側面図であって、ランバーサポート50周りの構成を詳しく図示したものである。図22は、ランバーサポート50の構成部材を詳しく図示したものである。
【0073】
本変形例に係る椅子1は、第3の実施形態の第1変形例と同様に、ランバーサポート50を有することを特徴とする。このランバーサポート50は、座面部10の前傾変位の度合いに応じて、背もたれ部11に沿って高さ方向(±Z方向)の位置を調節可能とする。
【0074】
図19に示すように、本変形例に係るランバーサポート50は、ヒンジ502をさらに備える。このヒンジ502は、ランバーサポートクッション500と座面クッション100の後方端(-X方向側の端部)との間を回動可能に連結する。
また、図22に示すように、本変形例に係るランバーサポート50は、ランバーサポートクッション500の背面側の面(背もたれ部11と接する面)に、2つの鋲503を備えている。この鋲503は、背もたれ支柱11bの高さ方向に延びる溝11c(図20参照)に嵌め込まれる。この鋲503及び溝11cの構成により、ランバーサポート50は、背もたれ支柱11bの斜面に沿って高さ方向の位置を調節可能となる。
【0075】
以上のような構成によれば、例えば、座面部10が前傾変位した場合、座面部10の後方端がスプリング41によって持ち上げられるにつれ、ランバーサポート50も背もたれ支柱11bの斜面に沿って上方に移動する。また、座面部10が後傾変位した場合、荷重によって座面部10の後方端が沈むにつれ、ランバーサポート50の位置も背もたれ支柱11bの斜面に沿って下方に移動する。この際、ランバーサポート50と座面部10とがなす角度は、ヒンジ502によって、ランバーサポート50の高さ方向の位置に応じた角度に適宜調整される。
これにより、ランバーサポート50の位置調整と座面部10の傾斜調整とを個別に行わなくて済み、着座者の負担を軽減することができる。
【0076】
以上の実施形態において、椅子1は、オフィスチェア等の個人用椅子、コンサートホールや映画館等の劇場用椅子である例で説明したが、これに限られず、競技場の座席、講堂や講義室等の学校用椅子、新幹線や飛行機等の公共交通機関用椅子への応用、さらに人工股関節全置換術後の患者専用椅子にも適用可能である。これらの分野への応用により長時間座位時の身体的負担を軽減することで着座者の健康増進、健康寿命の延伸だけでなく、健康障害の発生予防による医療費の削減等の経済効果が期待できる。特に、人工股関節全置換術後の患者専用椅子については、着座者の意識や努力を要さずとも骨盤を垂直に立たせることを可能にすることや、股関節の屈曲角度を緩和させる特徴を有していることから、股関節の過度な屈曲が脱臼リスクとなる人工股関節全置換術術後の患者へも長時間に安全かつ快適な座位を可能にする術後専用椅子として実用でき、患者の生活の質の向上も期待できる。
【0077】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 椅子
10 座面部
100 座面クッション
101 回転軸
102 アンカー
103 ランバーサポート
11 背もたれ部
11a 背もたれクッション
11b 背もたれ支柱
11c 溝
12 肘掛部
12a 肘掛部材
12b 肘掛支柱
12c ストッパー保持部
20 座面支柱連結ピン
21 座面受部
22 固定フレーム
23 座面支柱
24 固定フレーム
25 支柱
26 固定フレーム
27 固定フレーム
28 固定フレーム
29 固定フレーム
3 ロッキング機構
30 スプリング
31 ピストン
32a、32b 連結ピン
40 ヒンジ
41 スプリング
50 ランバーサポート
500 ランバーサポートクッション
501 ビス受け手
502 ヒンジ
503 鋲
S ストッパー
Sa ビス受け手
Sb ビス
Sc ストッパースプリング
D 凹形状面
V 穴部
T 突出部
B ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図19
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