(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】車載用物品保持具およびその取付構造
(51)【国際特許分類】
B60N 3/10 20060101AFI20240221BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B60R7/06 Z
(21)【出願番号】P 2020019380
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114709
【氏名又は名称】槌屋ヤック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩生
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-111209(JP,U)
【文献】特開平08-127278(JP,A)
【文献】実開平01-175917(JP,U)
【文献】特開平10-264711(JP,A)
【文献】実開平05-046562(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
B60R 7/06
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン吹出部の通気口にルーバーが配設されており、前記通気口の下側開口縁部には、リブが車室内側に向けて突設されているとともに、該リブを覆い隠すようにして化粧モールが取り付けられており、前記通気口
の天井面と前記ルーバーとの間の隙間および前記リブを利用して前記エアコン吹出部に取り付けられる
車載用物品保持具であって、
車載用物品を収容する物品収容空間を有
し、その前面側と背面側とが大きく開口してエアコンの送風の通風路となっている車載用物品保持具本体、
前記車載用物品保持具本体の背面側上部に配設され、前記通気口
の天井面と前記ルーバーとの間の隙間に挿入される挿入部材、
前記リブに装着されるとともに、前記リブと前記化粧モールとで挟持固定される挿入部と、前記挿入部の先端から上方に向けて延設された立ち上がり部とを有し、該立ち上がり部に係止孔が形成されている取付金具、および
前記車載用物品保持具本体の背面側下部に設けられ、その先端の係止爪が前記取付金具の係止孔に係止される係止部材を有することを特徴とする車載用物品保持具。
【請求項2】
前記通気口の天井面が下向きに突出する突湾曲部となっており、
前記挿入部材の上面には、該突湾曲部が嵌まり込む嵌合凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の
車載用物品保持具。
【請求項3】
エアコン吹出部の通気口にルーバーが配設されており、前記通気口の下側開口縁部には、リブが車室内側に向けて突設されているとともに、該リブを覆い隠すようにして化粧モールが取り付けられており、前記通気口
の天井面と前記ルーバーとの間の隙間および前記リブを利用して前記エアコン吹出部に取り付けられる車載用物品保持具の取付構造であって、
前記通気口
の天井面と前記ルーバーとの間の隙間には、車載用物品保持具本体の背面側上部に配設された挿入部材が挿入されており、
前記リブには、取付金具の下端部に形成された挿入部が装着されており、
該挿入部は、前記化粧モールと前記リブとで挟持されており、
前記車載用物品保持具本体の背面側下部に設けられている係止部材の係止爪が前記挿入部から上方に向けて延設された立ち上がり部の係止孔に係止されて
おり、
前記車載用物品保持具本体は、その前面側と背面側とが大きく開口してエアコンの送風の通風路となっていることを特徴とする車載用物品保持具の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内のエアコン吹出部にルーバー機能を損なうことなく取り付けることが可能な車載用物品保持具とその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料容器やスマートフォンといった車載用物品を車室内にて保持するための車載用物品保持具には様々なものがあり、その一例として、例えば特許文献1に示すようなドリンクホルダが知られている。
【0003】
この従来のドリンクホルダは、ドリンクホルダ本体の背部に取り付けられているクリップをエアコン吹出部のルーバーに引っ掛けて固定するもので、エアコンの送風を利用して飲料容器を保温・保冷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドリンクホルダは、上述したように、ドリンクホルダ本体の背部に取り付けられているフックをルーバーに引っ掛けることでエアコン吹出部に取り付けるようにしたものであるため、ドリンクホルダの使用中は、ルーバーの向きを変更することができない(風向調整ができない)という問題があった。この問題は、ドリンクホルダに限られず、スマートフォンホルダなど、他の車載用物品保持具においても同様である。
【0006】
本願発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ルーバーの風向調整機能を損なうことなく、エアコン吹出部にドリンクホルダ等の車載用物品保持具を取り付けることが可能な車載用物品保持具ならびにその取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明は、「エアコン吹出部100の通気口110にルーバー104が配設されており、通気口110の下側開口縁部には、リブ114が車室内側に向けて突設されているとともに、該リブ114を覆い隠すようにして化粧モール108が取り付けられており、通気口110の天井面110aとルーバー104との間の隙間Xおよびリブ114を利用してエアコン吹出部100に取り付けられる車載用物品保持具10であって、
車載用物品Bを収容する物品収容空間16を有し、その前面側と背面側とが大きく開口してエアコンの送風の通風路となっている車載用物品保持具本体12、
車載用物品保持具本体12の背面側上部に配設され、通気口110の天井面110aとルーバー104との間の隙間Xに挿入される挿入部材22、
リブ114に装着されるとともに、リブ114と化粧モール108とで挟持固定される挿入部26aと、挿入部26aの先端から上方に向けて延設された立ち上がり部26bとを有し、該立ち上がり部26bに係止孔26cが形成されている取付金具26、および
車載用物品保持具本体12の背面側下部に設けられ、その先端の係止爪24aが取付金具26の係止孔26cに係止される係止部材24を有する」ことを特徴とする車載用物品保持具10である。
【0008】
請求項2に記載した発明は、「通気口110の天井面110aには、下向きに突出する突湾曲部110cが形成されており、
挿入部材22の上面22aには、該突湾曲部110cが嵌まり込む嵌合凹部22cが形成されている」ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、
「エアコン吹出部100の通気口110にルーバー104が配設されており、通気口110の下側開口縁部には、リブ114が車室内側に向けて突設されているとともに、該リブ114を覆い隠すようにして化粧モール108が取り付けられており、通気口110の天井面110aとルーバー104との間の隙間Xおよびリブ114を利用してエアコン吹出部100に取り付けられる車載用物品保持具10の取付構造であって、
通気口110の天井面110aとルーバー104との間の隙間Xには、車載用物品保持具本体12の背面側上部に配設された挿入部材22が挿入されており、
リブ114には、取付金具26の下端部に形成された挿入部26aが装着されており、
該挿入部26aは、化粧モール108とリブ114とで挟持されており、
車載用物品保持具本体12の背面側下部に設けられている係止部材24の係止爪24aが挿入部26aの先端から上方に向けて延設された立ち上がり部26bの係止孔26cに係止されており、
車載用物品保持具本体12は、その前面側と背面側とが大きく開口してエアコンの送風の通風路となっている」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ルーバーの動きを損なうことなく、エアコン吹出部にドリンクホルダをはじめとする車載用物品保持具を取り付けることができる。その取り付けに際して、車載に特別な加工を施したり傷付けたりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施例の車載用物品保持具(ドリンクホルダ)を示す斜視図である。
【
図5】車載用物品保持具(ドリンクホルダ)の取り付け対象となるエアコン吹出部を示す図である。
【
図6】化粧モールを取り外して取付金具を挿着する様子を示す図である。
【
図7】エアコン吹出部に取付金具が取り付けられた状態を示す図である。
【
図8】ドリンクホルダをエアコン吹出部に取り付ける様子を示す図である。
【
図9】ドリンクホルダをエアコン吹出部に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に従って説明する。
図1~
図3を参照して、本発明の適用された車載用物品保持具(ここでは、その一例としてドリンクホルダを取り上げて説明する)10は、車室内のエアコン吹出部100に取り付けて飲料容器Bを保持するものであり(
図10参照)、車載用物品保持具本体(ここでは、ドリンクホルダ本体)12と、その背面側に設けられた取付部14とで大略構成されている。
【0013】
車載用物品保持具本体としてのドリンクホルダ本体12は、車載用物品(ここでは、飲料容器)Bを保持する部分で、底板12aと、天板12bと、これらを接続する側板12cとで大略構成されており、その前面側と背面側は大きく開口している(この前面側と背面側の開口部が、エアコンの送風の通風路となる)。
【0014】
側板12cは、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付けた状態において、側面から見たときにダッシュボードDBとの間に隙間が生じることがないよう、ダッシュボードDBの外面形状に合わせて、上方に向かうにしたがって背方(ダッシュボードDB側)に突出している。
【0015】
天板12bには、略円形状の飲料容器収容孔12dと略矩形状の通風孔12eとが前後に並んで形成されており、飲料容器収容孔12d、側板12cおよび底板12aで囲まれた空間が、車載用物品である飲料容器Bを収容するための物品収容空間(ここでは、飲料容器収容空間)16として機能する。飲料容器収容孔12dの孔縁には、スペーサー18が起倒可能に配設されている。
【0016】
車載用物品保持具本体としてのドリンクホルダ本体12の背面側には、取付部14が設けられている。取付部14は、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付ける部分で、取付部本体20、挿入部材22、係止部材24および取付金具26を有する。
【0017】
取付部本体20は、ドリンクホルダ本体12の背面部に設けられた板状の部分で、その上部には、通風用の開口20aが設けられている。
【0018】
取付部本体20の上端部には、挿入部材22が背方に向かって延設されている。挿入部材22は、背面側から見たときに下向き略コ字状となるよう薄板状の部材が折曲形成されており(
図3参照)、エアコン吹出部100の通気口110とルーバー104との間の隙間Xに挿入したときには、その上面22aが通気口110の天井面110aと当接し、左右両側面22bが通気口110の側面110bと当接するよう、その大きさが適宜設定されている(
図8参照)。
【0019】
挿入部材22の上面22aには、通気口110の天井面110aの突湾曲部110c(後述)が嵌まり込む嵌合凹部22cが形成されている。
【0020】
取付部本体20の下端部には、係止部材24がエアコン吹出部100に設けられているリブ114(後述)と対応する位置にて、背方に向かって突設されており、その先端の係止爪24aが取付金具26に係止されている。
【0021】
取付金具26は、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付けるためのもので、略U字状に屈曲形成された挿入部26aと、挿入部26aから上方に立ち上がる立ち上がり部26bとを有し、これらが薄い金属板(本実施例ではステンレス板)により一体的に折曲形成されている。立ち上がり部26bには、横長矩形状の係止孔26cが形成されており、この係止孔26cに係止部材24の係止爪24aが係止されている。
【0022】
次に、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10の取付対象であるエアコン吹出部100の構造について簡単に説明する(
図5~
図8参照)。エアコン吹出部100は、図示しない熱交換器で冷やされた(あるいは温められた)空気を車室内へと導入する部分で、フレーム102、ルーバー104、風向調整ダイヤル106および化粧モール108を有する。
【0023】
フレーム102には、通気口110が形成されており、この通気口110内に風向調整用のルーバー104が上下方向に角度調整可能に取り付けられている。ルーバー104と通気口110の天井面110aとの間およびルーバー104と通気口110の内側面110bとの間には、それぞれ隙間Xが設けられている。通気口110の天井面110aは、その断面が
図8に示すように下向きに突湾曲している(この下向きに突湾曲した部分が突湾曲部110cである)。
【0024】
ルーバー104の脇には、風向調整ダイヤル106が上下方向に回転可能に取り付けられている。風向調整ダイヤル106は、ルーバー104と同軸的に接続されており、風向調整ダイヤル106を上下方向に回すことでルーバー104の上下方向の角度を調整することができるようになっている。
【0025】
フレーム102の下端縁には、被係止部材112と、リブ114とが配設されている。本実施例では、3つの被係止部材112と2つのリブ114とが交互に所定間隔を隔てて配設されているが、その数や配置位置は特段限定されるものではなく適宜設定される。
【0026】
被係止部材112は、化粧モール108をフレーム102に取り付けるためのもので、横長の係止孔112aが形成されている。
【0027】
リブ114は、化粧モール108が撓むのを防止するために補強的に設けられるもので、下端部が車室内側を向くように略く字状に折曲形成されている。化粧モール108がフレーム102に取り付けられている状態において、リブ114は、化粧モール108で完全に覆い隠されている。
【0028】
化粧モール108は、エアコン吹出部100を装飾するもので、モール本体108aと係止爪108bとを有する。モール本体108aは、通気口110の下側縁と風向調整ダイヤル106の側方に沿って延びる形状をなしており、その断面形状は、車室内側に向かって突湾曲している(
図6参照)。
【0029】
モール本体108aの内側面(エアコン吹出部100に装着される側の面)には、係止爪108bが被係止部材112と対応する位置にそれぞれ形成されており、被係止部材112の係止孔112aに係止爪108bの先端が挿入されることによって化粧モール108がフレーム102に取り付けられている。
【0030】
次に、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付ける方法について
図5~
図10を参照して説明する。
【0031】
まず、
図6に示すように、エアコン吹出部100に取り付けられている化粧モール108を取り外し、リブ114を露出させる(このリブ114が取付金具26の取り付け対象となる)。
【0032】
然る後、取付金具26の挿入部26a内にリブ114の先端が嵌まり込むように取付金具26をリブ114に装着する。このとき、取付金具26とリブ114とを粘着テープで仮固定しておくと、後述する化粧モール108の取り付け作業が行いやすくなる。
【0033】
リブ114に取付金具26を装着(仮固定)した状態で化粧モール108を元通りに取り付ける。具体的には、化粧モール108の係止爪108bの先端を被係止部材112の係止孔112aに係止させて化粧モール108をフレーム102に取り付ける。これにより、取付金具26が化粧モール108とリブ114とで挟持固定され、リブ114からの脱落を防止できる。
【0034】
なお、化粧モール108が元通りにフレーム102に取り付けられた状態では、
図7に示すように、取付金具26の立ち上がり部26bが表に露出した状態となっており、この立ち上がり部26bを利用して車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付けることになる。
【0035】
取付金具26のエアコン吹出部100への取り付け作業が完了すると、いよいよドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付ける。具体的には、ドリンクホルダ10の背面側に設けられている係止部材24の係止爪24aを取付金具26の係止孔26cに挿入して係止させるとともに、挿入部材22を通気口110の天井面110aや側面110bとルーバー104との間の隙間Xに挿入するだけでドリンクホルダ10のエアコン吹出部100への取り付けが完了する(
図10参照)。
【0036】
なお、挿入部材22を奥まで押し込むと、天井面110aの下向きに突湾曲している突湾曲部110cが挿入部材22の上面22aの嵌合凹部22cに嵌まり込む(
図9参照)。これにより、車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10がエアコン吹出部100にガタツキなく取り付けられることとなる。
【0037】
本実施例によれば、取付金具26を化粧モール108とリブ114とで挟持固定するとともに、エアコン吹出部100の通気口110とルーバー104との間の隙間Xに挿入部材22を挿入することで車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10をエアコン吹出部100に取り付けるようにしているので、その取り付けにおいて従来のようにルーバー104を必要としない。したがって、ルーバー104の機能を損なうことなく、エアコン吹出部100に車載用物品保持具としてのドリンクホルダ10を取り付けることができる。
【0038】
なお、上述実施例では、車載用物品保持具10の代表例としてドリンクホルダ10を取り上げて説明したが、車載用物品をエアコン吹出口100に保持するものであればどのようなものであってもよく、例えば、スマートフォンホルダなどであってもよい(この場合、スマートフォンが車載用物品Bとなる)。
【符号の説明】
【0039】
10:車載用物品保持具(ドリンクホルダ)、12:車載用物品保持具本体(ドリンクホルダ本体)、12a:底板、12b:天板、12c:側板、12d:飲料容器収容孔、12e:通風孔、14:取付部、16:物品収容空間(飲料容器収容空間)、18:スペーサー、20:取付部本体、20a:開口、22:挿入部材、22a:上面、22b:側面、22c:嵌合凹部、24:係止部材、24a:係止爪、26:取付金具、26a:挿入部、26b:立ち上がり部、26c:係止孔、100:エアコン吹出部、102:フレーム、104:ルーバー、106:風向調整ダイヤル、108:化粧モール、108a:モール本体、108b:係止爪、110:通気口、110a:天井面、110b:側面、110c:突湾曲部、112:被係止部材、112a:係止孔、114:リブ、B:車載用物品(飲料容器)、DB:ダッシュボード、X:隙間