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特許7440894サーカディアンリズム変化判定装置および方法
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  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図1
  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図2
  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図3
  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図4
  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図5
  • 特許-サーカディアンリズム変化判定装置および方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】サーカディアンリズム変化判定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240221BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240221BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240221BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20240221BHJP
【FI】
G06Q50/06
G08B25/04 K
G08B21/00 Z
G16Y10/35
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020025780
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131650
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】316013437
【氏名又は名称】エッセンシャルエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 喜保
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-081673(JP,A)
【文献】特開2016-048503(JP,A)
【文献】特開2019-061465(JP,A)
【文献】特開2017-220047(JP,A)
【文献】特開2006-072443(JP,A)
【文献】特開2016-085532(JP,A)
【文献】特開2019-074806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
G08B19/00-31/00
G16Y10/35
H03J9/00-9/06
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信する受信手段,
上記受信手段によって受信される使用電力量データを記憶する記憶手段,
所定期間の間に上記記憶手段に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出する時間帯別平均使用電力量算出手段,ならびに
算出される時間帯別平均使用電力量と過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量とを比較して,サーカディアンリズムの変化を判定する第1の判定手段,
を備えている,
サーカディアンリズム変化判定装置。
【請求項2】
上記第1の判定手段は,所定期間において算出される時間帯別平均使用電力量の全体の時間帯のなかで最大の値を持つ使用時間帯が,過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量の全体の使用時間帯のなかで最大の値を持つ使用時間帯よりも所定時間遅い時間にシフトしている場合に,サーカディアンリズムの変化を判定するものである,
請求項1に記載のサーカディアンリズム変化判定装置。
【請求項3】
所定期間において算出される時間帯別平均使用電力量のうち使用電力量が低い時間帯のなかで出現する突出したの存在に基づいて,サーカディアンリズムの異常を判定する第2の判定手段を備えている,
請求項1または2に記載のサーカディアンリズム変化判定装置。
【請求項4】
受信手段によって,スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信し,
受信した使用電力量データを記憶装置に記憶し,
時間帯別平均使用電力量算出手段によって,所定期間の間に上記記憶装置に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出し,
判定手段によって,算出される時間帯別平均使用電力量と過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量とを比較してサーカディアンリズムの変化を判定する,
サーカディアンリズム変化判定方法。
【請求項5】
スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信する受信手段,
上記受信手段によって受信される使用電力量データを記憶する記憶手段,
所定期間の間に上記記憶手段に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出する時間帯別平均使用電力量算出手段,ならびに
算出される時間帯別平均使用電力量のグラフと過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量のグラフとを重ね合わせて表示装置の表示画面に表示するためのデータを作成する表示データ作成手段,
を備えている,
サーカディアンリズム変化判定装置。
【請求項6】
受信手段によって,スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信し,
受信した使用電力量データを記憶装置に記憶し,
所定期間の間に上記記憶装置に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出し,
表示データ作成手段によって,算出される時間帯別平均使用電力量のグラフと過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量のグラフとを重ね合わせて表示装置の表示画面に表示するためのデータを作成する,
サーカディアンリズム変化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,サーカディアンリズム変化判定装置および方法に関する。サーカディアンリズム(概日リズム)は,脳内の視床下部の視交叉上核に統括されるもので,体内時計または生物時計とも呼ばれ,体内に内在する約24時間の周期で体内環境を変化させる生理現象を言う。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は,健康維持状態,認知病ケース,寝たきりケース,頻尿ケースのそれぞれについての一日の使用電力量パターン図を用意しておき,計測された一日の使用電力量パターンがそれらのいずれに近似しているかどうかに基づいて健康障害発生状態を推定する健康維持状態推定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-128502号公報
【0004】
特許文献1では,一日の電力使用量パターン図(グラフ形状)が用いられて健康維持状態,認知病,寝たきり,または頻尿が判定される。一日単位の使用電力量パターンが用いられるので,上述したサーカディアンリズムまたは生活パターンの変化または異常(たとえば生活時間帯が夜型に移行している,就寝時間帯に突然に起床しているなど)を把握するのには向いていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は,比較的長期,たとえばひと月,半年,1年等にわたる電力使用量データを用いてサーカディアンリズムの変化または異常を判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるサーカディアンリズム変化判定装置は,スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される計測日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信する受信手段,上記受信手段によって受信される使用電力量データを記憶する記憶手段,所定期間の間に上記記憶手段に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出する時間帯別平均使用電力量算出手段,ならびに算出される時間帯別平均使用電力量と,過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量とを比較してサーカディアンリズムの変化を判定する第1の判定手段を備えている。
【0007】
この発明によるサーカディアンリズム変化判定方法は,受信手段によって,スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信し,受信した使用電力量データを記憶装置に記憶し,時間帯別平均使用電力量算出手段によって,所定期間の間に上記記憶装置に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別平均使用電力量を算出し,判定手段によって,算出される時間帯別平均使用電力量と,過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量とを比較してサーカディアンリズムの変化を判定するものである。
【0008】
スマートメータにおいて計測される使用電力量データは,計測日付および使用時間帯識別符号を伴って,一定時間間隔ごとにサーカディアンリズム変化判定装置に送信される。たとえば,使用電力量データは30分間隔でサーカディアンリズム変化判定装置に送信され,その場合には,使用時間帯識別符号は48種類に区別され,使用電力量データには48種類の使用時間帯識別符号のいずれかが付随する。
【0009】
所定期間の間に記憶手段に記憶される複数の使用電力量データが用いられて,所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量が算出される。平均使用電力量を算出する所定期間は任意に設定することができ,たとえばひと月とすることができる。この場合には,ひと月の間にスマートメータから一定時間間隔ごとに送信される複数の使用電力量データが用いられて使用時間帯別の平均使用電力量が算出される。たとえば30分間隔に使用電力量データがスマートメータから送信される場合であれば,一日に48回使用電力量データが送信されるので,48×30日=144個の使用電力量データが用いられて,30分ごとの使用時間帯別平均使用電力量が算出される。
【0010】
平均使用電力量を算出する使用時間帯の間隔は,基本的にはスマートメータから使用電力量データが送信される時間間隔に依存する。スマートメータから使用電力量データが30分間隔で送信される場合であれば,平均使用電力量を算出する時間帯間隔も30分ごと,たとえば00:00~00:30,00:30~01:00などとすることができる。もっとも,完全に一致させる必要は必ずしもなく,たとえば,スマートメータから使用電力量データが30分間隔で送信される場合に,使用時間帯別平均使用電力量については1時間単位で算出してもよい。
【0011】
この発明によると,所定期間(典型的には直近の所定期間)の時間帯別平均使用電力量と,過去の所定期間の時間帯別平均使用電力量とが比較されることで,サーカディアンリズムの変化が判定される。たとえばひと月程度の比較的長い期間を単位にして,電力使用時間帯の変化を把握することができ,これによってサーカディアンリズムの変化を知ることができる。もちろんより長い期間,たとえば半年や1年を単位(所定期間)にして,電力使用時間帯の変化を把握することも可能である。
【0012】
直近の所定期間の時間帯別平均使用電力量と,過去の所定期間の時間帯別平均使用電力量とを比較してサーカディアンリズムの変化を判定するアルゴリズムには,さまざまなアルゴリズムが考えられる。一実施態様では,上記第1の判定手段は,直近の所定期間の時間帯別平均使用電力量のピーク値を持つ時間帯が,過去の所定期間の時間帯別平均使用電力量のピーク値を持つ時間帯よりも所定時間遅い時間にシフトしている場合に,サーカディアンリズムの変化を判定する。一般家庭における使用電力量のピーク値を示す時間帯は午後6時~11時頃であり,使用電力量がピークをとる時間帯が所定時間遅い時間にシフトしている場合,サーカディアンリズムが夜型に変化している可能性が高く,サーカディアンリズムの変化が判定される。たとえば認知症患者はその初期症状において生活リズムが夜型に変化することが多い。サーカディアンリズムの変化の判定を認知症の初期症状の診断にも役立てることができる。
【0013】
他の実施態様では,サーカディアンリズム変化判定装置は,算出される時間帯別平均使用電力量における低使用電力量時間帯に出現するピーク値に基づいて,サーカディアンリズムの異常を判定する第2の判定手段を備えている。第2の判定手段では,上述した第1の判定手段と異なり,過去の時間帯別平均使用電力量を用いた比較ではなく,直近の所定期間の時間帯別平均使用電力量が用いられる。たとえば,うつ病患者は真夜中に突然に行動をとる傾向がある。低使用電力量時間帯(典型的には午前0時~3時頃)にピーク値が出現している場合に,サーカディアンリズムの異常が判定され,これをうつ病の発症の診断に役立てることができる。
【0014】
所定期間(典型的には直近の所定期間)の時間帯別平均使用電力量のグラフと,過去の所定期間の時間帯別平均使用電力量のグラフを重ね合わせて表示することで,サーカディアンリズムの変化または異常を分かりやすく示すことができる。この発明は,スマートメータから一定時間間隔ごとに送信される測定日付および使用時間帯識別符号を含む使用電力量データを受信する受信手段,上記受信手段によって受信される使用電力量データを記憶する記憶手段,所定期間の間に上記記憶手段に記憶される複数の使用電力量データを用いて,上記所定期間における使用時間帯別の平均使用電力量を算出する時間帯別平均使用電力量算出手段,ならびに算出される時間帯別平均使用電力量のグラフと過去の所定期間における時間帯別平均使用電力量のグラフとを重ね合わせて表示装置の表示画面に表示するためのデータを作成する表示データ作成手段を備えるサーカディアンリズム変化判定装置,およびこれに対応するサーカディアンリズム変化判定方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】サーカディアンリズム変化判定装置を含む判定システムのハードウエア構成を概略的に示している。
図2】使用電力量データの一例を示す。
図3】30分間隔の時間帯ごとの使用電力量を示すグラフである。
図4】30分間隔の時間帯ごとの使用電力量の月次平均値を含む月次データを示す。
図5】サーカディアンリズム変化判定装置の処理を示すフローチャートである。
図6】(A)は一般的な朝型生活リズムの需要者の使用電力量のグラフを,(B)は夜型生活リズムの需要者の使用電力量のグラフを,(C)は就寝時間帯に起床する需要者の使用電力量のグラフを,それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1はサーカディアンリズム変化判定装置を含む判定システムを概略的に示している。
【0017】
サーカディアンリズム変化判定システムは,各家庭に設置される複数台のスマートメータ1,各スマートメータ1から送信される使用電力量データを受信するコンセントレータ2,コンセントレータ2からネットワーク(広域送電網など)3を通じて送信される使用電力量データを受信し,後述するサーカディアンリズム変化判定処理を実行するサーカディアンリズム変化判定装置4を含む。
【0018】
スマートメータ1は各家庭(各需要者)における使用電力量を計測(積分)し,30分間間隔でコンセントレータ2に送信する。各スマートメータ1とコンセントレータ2との間の通信にはたとえば無線マルチポップ方式が採用され,無線マルチホップ方式では,スマートメータ1からコンセントレータ2への直接ルートに加えて,他のスマートメータ1を経由するルートによってもコンセントレータ2に使用電力量を表すデータが送信される。コンセントレータ2は多数の需要者の使用電力量データをサーカディアンリズム変化判定装置4に送信する。無線マルチポップ方式に代えて,たとえば携帯電話で用いられている基地局を経由して使用電力量データをサーカディアンリズム変化判定装置4に送信してもよいし(携帯方式),電力線を利用して使用電力量データをサーカディアンリズム変化判定装置4に送信してもよい(PLC(Power Line Communication)方式)。
【0019】
サーカディアンリズム変化判定装置4は,CPU(中央演算処理装置),メモリ,記憶装置,通信装置等を備えるコンピュータ・システムであり,記憶装置にあらかじめインストールされるサーカディアンリズム変化判定プログラムが実行されることで,コンピュータ・システムがサーカディアンリズム変化判定装置4として機能する。サーカディアンリズム変化判定装置4の動作の詳細は後述する。
【0020】
サーカディアンリズム変化判定装置4にはデータベース5が接続されており,このデータベース5に各需要者の使用電力量データが記憶される。データベース5に記憶される使用電力量データが用いられて,以下に説明するように,サーカディアンリズム変化判定処理は実行される。
【0021】
図2はデータベース5に記憶される使用電力量データの一例を示している。図3図2に示す使用電力量データをグラフ(ヒストグラム)によって示している。
【0022】
上述したように,スマートメータ1は30分間隔で使用電力量を計測する。図2を参照して,計測された使用電力量を表すデータは,需要者番号(顧客番号),日付および計測時間帯ならびにコマ番号とともに,上述したようにしてコンセントレータ2およびネットワーク3を経由してサーカディアンリズム変化判定装置4に送信される。
【0023】
コマ番号は,一日を30分ごとに48分割した時間帯のそれぞれを特定する番号(識別符号)である。たとえば00:00~00:30の時間帯はコマ番号1,23:30~00:00の時間帯はコマ番号48である。
【0024】
図3を参照して,30分間隔の時間帯(コマ)ごとの使用電力量をヒストグラムによって表すことで,時間帯ごとの使用電力量を分かりやすく示すことができる。もっとも,図3に示すヒストグラムを表すデータは,サーカディアンリズム変化判定装置4における処理では特段必要とされず,図2に示す使用電力量データがあれば十分である。
【0025】
図4は,時間帯ごとの使用電力量の月次平均値を含む月次データを示している。月次データは,需要者番号(顧客番号),始期(年月日),終期(年月日),コマ番号および平均使用電力量のデータを含む。
【0026】
ひと月分の使用電力量データ(図2)が揃うことで,時間帯別(コマ番号ごと)に使用電力量の平均が算出され,これによって図4に示す月次データを作成することができる。以下に説明するように,サーカディアンリズム変化判定装置4は,一日における時間帯ごとの使用電力量データ(図2)ではなく,ひと月分の時間帯ごとの平均使用電力量データ(図4)を用いた処理を実行する。
【0027】
図5は,サーカディアンリズム変化判定装置4の処理を示すフローチャートである。
【0028】
上述したように,需要者ごとに,30分ごと(コマごと)の使用電力量を表すデータがスマートメータ1からサーカディアンリズム変化判定装置4に逐次送信され,データベース5に記憶される(ステップ11,図2)。
【0029】
ひと月分の使用電力量を表すデータがデータベース5に記憶されると,月次のコマごとの平均使用電力量が算出される(ステップ12,図4)。月次のコマごとの平均使用電力量を表すデータ(図4)は毎月算出されてデータベース5に記憶される。
【0030】
過去,たとえば3カ月前の月次のコマごとの平均使用電力量を表すデータがデータベース5から読み出され,新たに算出された当月(直近)の平均使用電力量を表すデータと比較される(ステップ13)。
【0031】
図6(A)を参照して,図6(A)は一般的な朝型の生活リズムの需要者のひと月の平均使用電力量のグラフ21(上述したヒストグラム(図3)の頂部を結ぶことによって描かれるグラフ)を示している。朝6時頃に起床をすることから朝6時頃に使用電力量が増加し,夜22時頃に就寝することから夜22頃に使用電力量が減少する傾向を持つ。
【0032】
図6(B)は夜型の生活リズムの需要者のひと月の平均使用電力量のグラフ22を示している。朝10時頃に起床し,夜は午前2時頃に就寝するリズムで生活が送られている。
【0033】
図6(A)に示す朝型生活リズムが,図6(B)に示す夜型生活リズムに変化しているとすると,その需要者は,生活リズムが夜型に変化していることがわかる。たとえば認知症の初期症状では生活リズムが夜型に変化することが多く,図6(A)から図6(B)への変化は,認知症の初期症状の診断に役立つ。
【0034】
サーカディアンリズム変化判定装置4は,3カ月前の月次のコマごとの平均使用電力量のピーク値と,新たに算出された当月の平均使用電力量のピーク値とを抽出し,ピーク使用電力量を示すコマ(時間帯)が,Nコマ以上,たとえば5コマ(5×30分= 150分)以上遅い時間帯にシフトしているかどうかを判断する(ステップ14)。ピーク使用電力量のコマが5コマ以上遅い時間帯にシフトしている場合,サーカディアンリズム変化判定装置4は需要者のサーカディアンリズムの変化を判定する(ステップ14でYES ,ステップ15)。
【0035】
たとえば,当該需要者に認知症の初期症状が発症している可能性があること,または認知症の症状が悪化している可能性があることが,医療関係者に電子メール等で連絡される。認知症の初期症状の発症等の可能性を,生活パターンの変化から把握することができる。
【0036】
さらにサーカディアンリズム変化判定装置4は,低使用電力量のコマにピーク値が出現しているかどうかを判断する(ステップ16)。図6(C)のグラフ23には,比較的低い使用電力量のコマ中に突如として使用電力量が増加しているコマが存在する。その需要者は,就寝時間帯に目を覚まして活動していることが考えられ,これはうつ病の患者にありがちな行動パターンである。新たに算出された当月の平均使用電力量のデータにおいて,低使用電力量のコマ中にピーク値が表れている場合,サーカディアンリズム変化判定装置4はサーカディアンリズムの異常を判定する(ステップ16でYES ,ステップ17)。うつ病発症の診断に役立てることができる。
【0037】
このようにサーカディアンリズム変化判定装置4は,認知症またはうつ病といった生活パターンの変化を伴いやすい疾病の発見または診断に効果的である。
【0038】
上述した実施態様では,月次のコマごとの平均使用電力量のデータ(図4)を利用して,サーカディアンリズム変化判定装置4がサーカディアンリズムの変化または異常を判定している(図5のステップ14,16)。もちろん,サーカディアンリズムの変化または異常は,医師等の医療従事者が判定してもよい。たとえば,図6(A)に示すグラフ21と図6(B)に示すグラフ22,または図6(A)に示すグラフ21と図6(C)に示すグラフ23を表示装置の表示画面上で重ね合わせて表示することで,サーカディアンリズムの変化や異常を分かりやすく示すことができる。この場合,サーカディアンリズム変化判定装置4によって,新たに算出された当月(直近)の平均使用電力量のグラフと過去の平均使用電力量のグラフとを表示装置の表示画面に重ね合わせて表示するためのデータが作成される。
【符号の説明】
【0039】
1 スマートメータ
2 コンセントレータ
3 ネットワーク
4 サーカディアンリズム変化判定装置
5 データベース
6 使用電力量データ
7 月次平均使用電力量データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6