(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電磁ノイズ対策部材
(51)【国際特許分類】
H01F 27/06 20060101AFI20240221BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20240221BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20240221BHJP
H01F 27/36 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01F27/06 101
H05K9/00 G
H05K9/00 L
H01F17/06 K
H01F27/36 101
(21)【出願番号】P 2020061762
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】青山 寛
(72)【発明者】
【氏名】谷水 友和
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-017885(JP,A)
【文献】特開2017-070104(JP,A)
【文献】特開平06-310340(JP,A)
【文献】特開2017-037914(JP,A)
【文献】特開平09-022821(JP,A)
【文献】特開2011-178324(JP,A)
【文献】特開2016-178861(JP,A)
【文献】特開平07-142105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0312595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00- 7/02
H01B 7/38- 7/40
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30
H01F 27/32-27/42
H01F 38/42
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆導線の一部が電磁シールド部材によって覆われていない電線のうち、前記電磁シールド部材によって覆われていない部分の絶縁被覆導線の周囲を囲む磁性体コアと、
非導電性材料により形成されており、前記磁性体コアを自身の内面に保持するための保持部材と、
前記保持部材を所定箇所に取付けるための
導電性材料により形成された取付部材であって、前記電磁シールド部材と電気的接続するための接続部を有する取付部材と、
前記電磁シールド部材を前記保持部材との間に挾持し、かつ、前記取付部材と電気的接続可能な挾持部材と、を備え
たことを特徴とする電磁ノイズ対策部材。
【請求項2】
前記磁性体コアには、
前記電磁シールド部材によって覆われていない部分の絶縁被覆導線が挿通された状態とするための貫通孔が形成されており、
前
記接続部が、前記取付部材のうち、前記貫通孔の開口部の周辺に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁ノイズ対策部材。
【請求項3】
前記取付部材には、
前記保持部材を固定するための固定部と、
前記固定部から第1の方向に形成されており、前記取付部材を第1の接地箇所に取付けるための第1の取付部と、
前記固定部から前記第1の方向とは異なる第2の方向に形成されており、前記取付部材を前記第1の接地箇所とは異なる第2の接地箇所に取付けるための第2の取付部と、が設けられていることを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の電磁ノイズ対策部材。
【請求項4】
前記固定部には、
相互に離間した第1の突出部および第2の突出部がそれぞれ突出形成されており、
前記保持部材のうち、
前記保持部材の内面に保持された前記磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部には、前記第1の突出部を挿入するための第1の挿入孔と、
前記第1の挿入孔に挿入された前記第1の突出部を係止するための第1の係止部材と、が設けられており、
前記両端部の他方の端部には、前記第2の突出部を挿入するための第2の挿入孔と、
前記第2の挿入孔に挿入された前記第2の突出部を係止するための第2の係止部材と、が設けられていることを特徴とする請求項
3に記載の電磁ノイズ対策部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電線に伝播する電磁ノイズを低減させるための電磁ノイズ対策部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電磁ノイズ対策部材として、磁性体コアと、この磁性体コアを収容するケースと、このケースを支持する支持具とを備えたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車などの車両では、多数の電線が配線されているため、電線に伝播する電磁ノイズ、あるいは、電線から放射される電磁ノイズを低減することが、車両の誤作動を防止する上で重要な課題となっている。
特に、電気自動車(EV:Electric Vehicle)では、電磁ノイズが発生し易い環境にある。例えば、電気自動車には、バッテリから供給される直流電流を交流電流に変換するインバータが搭載されている。インバータはスイッチング電源であり、直流電流を断続する箇所にて高周波エネルギーが発生し、これが電磁ノイズとなって、インバータとモータとを接続するワイヤーハーネスから放射されるおそれがある。
そこで、従来は、電磁シールド部材によってワイヤーハーネスを覆うことにより、ワイヤーハーネスから放射される電磁ノイズを低減させている。
また、車両の自動運転技術の導入が進む中、車両の誤作動は、人命にかかわる問題であるため、電磁ノイズ対策がとりわけ重要な課題となっている。
【0005】
ところで、上記のワイヤーハーネスは、電磁シールド部材によって覆われているため、ワイヤーハーネスから放射される電磁ノイズを低減することはできるが、ワイヤーハーネスに伝播するノイズを低減することは困難であった。
そこで、本願発明者らは、ワイヤーハーネスの周囲を磁性体コアによって囲むことができる電磁ノイズ対策部材を開発し、ワイヤーハーネスに伝播する電磁ノイズを磁性体コアに吸収させる技術を開発した。
しかし、その後の研究により、車両の振動が電磁ノイズ対策部材に伝導すると、ワイヤーハーネスに取付けられた電磁ノイズ対策部材の振動の振幅が大きくなり、電磁ノイズ対策部材に何らかの影響を与え得ると推測するに至った。
そこで、本願発明者らは、電磁ノイズ対策部材を車体に固定することにより、電磁ノイズ対策部材の振動の振幅を小さくする技術を開発した。
【0006】
ところで、電磁シールド部材によって覆われたワイヤーハーネスは、電磁シールド部材を車体に接地させるために、ワイヤーハーネスの端部に設けられたコネクタを接続側の端子に接続する必要がある。
つまり、電磁ノイズ対策部材をワイヤーハーネスに装着する技術を用いようとすると、ワイヤーハーネスのコネクタを接続側に固定する作業の他に、電磁ノイズ対策部材を車体に取付ける作業が増えるため、ワイヤーハーネスに電磁対策を施すための作業効率が低下するという新たな課題が発生した。
【0007】
そこで、本願に開示の技術は、上記の問題を解決するために創出されたものであって、電線に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本願に開示される技術に係る電磁ノイズ対策部材は、絶縁被覆導線の一部が電磁シールド部材によって覆われていない電線のうち、電磁シールド部材によって覆われていない部分の絶縁被覆導線の周囲を囲む磁性体コアと、非導電性材料により形成されており、磁性体コアを自身の内面に保持するための保持部材と、保持部材を接地箇所に取付けるための導電性材料により形成された取付部材であって、電磁シールド部材と電気的接続するための接続部を有する取付部材と、電磁シールド部材を保持部材との間に挾持し、かつ、取付部材と電気的接続可能な挾持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
取付部材は、導電性材料により形成されており、かつ、電磁シールド部材と電気的接続するための接続部を有するため、電磁シールド部材が電気的接続された取付部材を接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材が接地された状態になるので、電磁シールド部材を接地する作業を削減することができる。
電磁シールド部材を保持部材との間に挾持することにより、電磁シールド部材を取付部材と電気的接続することができる。
また、電磁シールド部材を接地するために必要な固有の部材を電線および接地側に設けなくても良いため、その分、電磁シールド部材を接地するための自由度を高めることができる。
【0010】
さらに、本願に開示される技術に係る電磁ノイズ対策部材は、磁性体コアには、電磁シールド部材によって覆われていない部分の絶縁被覆導線が挿通された状態とするための貫通孔が形成されており、接続部が、保持部材が取付けられた取付部材のうち、貫通孔の開口部の周辺に設けられていることを特徴とする。
【0011】
絶縁被覆導線を覆う電磁シールド部材と電気的接続するための接続部が、保持部材が固定された取付部材のうち、貫通孔の開口部の周辺に設けられているため、電磁シールド部材を接続部に比較的容易に電気的接続することができる。
【0014】
さらに、本願に開示される技術に係る電磁ノイズ対策部材は、取付部材には、保持部材を固定するための固定部と、固定部から第1の方向に形成されており、取付部材を第1の接地箇所に取付けるための第1の取付部と、固定部から第1の方向とは異なる第2の方向に形成されており、取付部材を第1の接地箇所とは異なる第2の接地箇所に取付けるための第2の取付部と、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
取付部材の接地箇所が、保持部材が固定される固定部から第1の方向に存在する場合でも、第1の方向とは異なる第2の方向に存在する場合でも取付部材を接地箇所に取付けることができる。
従って、接地箇所が存在する向きに応じて取付部材を2数種類製造する必要がないため、取付部材の製造コストを低減することができる。
【0016】
さらに、本願に開示される技術に係る電磁ノイズ対策部材は、固定部には、相互に離間した第1の突出部および第2の突出部がそれぞれ突出形成されており、保持部材のうち、保持部材の内面に保持された磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部には、第1の突出部を挿入するための第1の挿入孔と、第1の挿入孔に挿入された第1の突出部を係止するための第1の係止部材と、が設けられており、両端部の他方の端部には、第2の突出部を挿入するための第2の挿入孔と、第2の挿入孔に挿入された第2の突出部を係止するための第2の係止部材と、が設けられていることを特徴とする。
【0017】
保持部材を両端部において固定部に係止することができるため、保持部材の取付強度を高めることができる。
従って、保持部材が取付けられた箇所が振動した場合であっても、保持部材の振動の振幅を小さくすることができるため、保持部材に保持された磁性体コアに振動による影響が及ばないようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願に開示される技術に係る電磁ノイズ対策部材によれば、電線に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材の斜視図である。
【
図2】
図1に示す電磁ノイズ対策部材の6面図である。
【
図4】
図1に示す電磁ノイズ対策部材を構成する本体の6面図である。
【
図5】(A)は
図4のA-A矢視断面図、(B)は
図4において符号Bで示す範囲を2倍に拡大して示す拡大図、(C)は
図4において符号Cで示す範囲を2倍に拡大して内部の一部が見えるようにした拡大一部断面図、(D)は
図4(C)において第1の係止突起44aが第1の突出部52に係止された状態の内部の一部が見えるようにした参考図である。
【
図6】
図1に示す電磁ノイズ対策部材を構成する取付部材の斜視図である。
【
図7】
図6に示す取付部材の6面図およびA-A矢視断面図である。
【
図8】
図1に示す電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図1に示す電磁ノイズ対策部材の変更例の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材の斜視図である。
【
図13】
図10に示す電磁ノイズ対策部材を構成する取付部材の斜視図である。
【
図14】
図13に示す取付部材の6面図およびA-A矢視断面図である。
【
図15】
図10に示す電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材の斜視図である。
【
図19】
図16に示す電磁ノイズ対策部材を構成する挾持取付部材の斜視図である。
【
図20】
図19に示す挾持取付部材の6面図およびB-B矢視断面図である。
【
図21】
図16に示す電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図22】本発明の第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材の斜視図である。
【
図25】
図22に示す電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図26】
図22に示す電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図27】
図24の一部を拡大して示す説明図であり、(A)はボルトによって固定する前の状態を示す説明図、(B)はボルトによって固定した後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材について図を参照しつつ説明する。
図1から
図3までに示すように、本実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1は、電磁ノイズ対策部材本体(以下、本体という)10と、この本体10を車両の所定箇所に取付けるための取付部材50とを備えている。取付部材50は、車両の接地可能な箇所に取付けられる。車両の接地可能な箇所とは、ボディ、シャーシの他、インバータユニット、モータユニットなどの電気機器である。
【0021】
[本体の主要構造]
最初に、本体10を装着する対象であるワイヤーハーネスの構造について
図8を参照しつつ説明する。
図8に示すように、ワイヤーハーネス60は、絶縁被覆導線61,61と、各絶縁被覆導線61,61を覆う電磁シールド部材62とを有する。また、絶縁被覆導線61,61の一部が、電磁シールド部材62によって覆われていない状態となっている。
図8において、網目状のハッチングが施された部分が電磁シールド部材62である。例えば、電磁シールド部材62は、導電性の金属材料により形成された金属線を網目状に編んだ構造である。また、ワイヤーハーネス60として、導電性膜により被覆されたコルゲートチューブなどにより電磁シールド部材62が被覆された構造のものを用いることもできる。本体10は、ワイヤーハーネス60のうち、電磁シールド部材62によって覆われていない部分の絶縁被覆導線61,61に装着される。
次に、本体10の主要構造について図を参照しつつ説明する。
図5(A)に示すように、本体10は、2分割された磁性体コア部品11,11と、これらの磁性体コア部品11,11を保持するための保持部材20とを備えている。保持部材20は、一方(図では上側)の磁性体コア部品11を自身の内面に保持するための第1の保持部材30と、他方(図では下側)の磁性体コア部品11を自身の内面に保持するための第2の保持部材40とを備えている。第1の保持部材30および第2の保持部材40の開口縁同士が相互に係止されている。磁性体コア部品11,11は、相互に当接しており、磁性体コア部品11間には、ワイヤーハーネス60のうち、電磁シールド部材62によって覆われていない部分の絶縁被覆導線(
図8)が挿通された状態とするための貫通孔12が前後方向に形成されている。相互に当接することにより貫通孔12が形成された磁性体コア部品11,11が磁性体コアを形成している。
【0022】
図4および
図5に示すように、第2の保持部材40のうち、内面に保持された磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部(
図5(A)では右端)には、第1の端部43が形成されており、他方の端部(
図5(A)では左端)には、第2の端部46が形成されている。第1の端部43には、外側に配置された第1の外壁43aと、この第1の外壁43aと対向して内側に配置された第1の係止片44とが備えられている。第1の外壁43aと第1の係止片44との間には、取付部材50に設けられた第1の突出部52(
図6)を下から挿入するための第1の挿入孔45が形成されている。第1の係止片44には、第1の挿入孔45に挿入された第1の突出部52の第1の係止孔52a(
図6)に係止するための第1の係止突起44aが外方に突出形成されている。
【0023】
第2の端部46には、外側に配置された第2の外壁46aと、この第2の外壁46aと対向して内側に配置された第2の係止片47とが備えられている。第2の外壁46aと第2の係止片47との間には、取付部材50に設けられた第2の突出部53(
図6)を下から挿入するための第2の挿入孔48が形成されている。第2の係止片47には、第2の挿入孔48に挿入された第2の突出部53の第2の係止孔53a(
図6)に係止するための第2の係止突起47aが外方に突出形成されている。第1の係止片44は本発明の第1の係止部材の一例であり、第2の係止片47は本発明の第2の係止部材の一例である。
【0024】
第2の保持部材40のうち、第1の端部43の方の外壁には係止突起41が外方に突出形成されており、第1の保持部材30のうち、第1の端部43の方の外壁には、係止突起41に係止するための係止部材31が形成されている。第1の保持部材30のうち、第2の端部46側の外壁には、係止突起32が外方に突出形成されており、第2の保持部材40のうち、第2の端部46の方の外壁には、係止突起32に係止するための係止部材42が形成されている。係止部材31が係止突起41に係止され、かつ、係止部材42が係止突起32に係止されることにより、第1の保持部材30および第2の保持部材40が相互に係止されて保持部材20が形成される。また、これにより、磁性体コア部品11,11から成る磁性体コアが保持部材20の内面に保持された状態になる。
【0025】
また、第1の保持部材30の上壁の内面と、上部の磁性体コア部品11の上面との間には、磁性体コア部品11を押圧するための板バネ13が介在されている。また、第2の保持部材40の下壁の内面と、下部の磁性体コア部品11の下面との間には、磁性体コア部品11を押圧するための板バネ13が介在されている。各板バネ13により、各磁性体コア部品11が相互に押圧され、相互に当接した状態が維持される。各磁性体コア部品11は、それぞれマンガン系フェライトなどの磁性材料により形成することができ、保持部材20は、合成樹脂などの非導電性材料により形成することができる。
【0026】
[取付部材の主要構造]
取付部材50の主要構造について図を参照しつつ説明する。
図6および
図7に示すように、取付部材50には、保持部材20を固定するための固定部51と、固定部51から上方に突出した第1の突出部52および第2の突出部53と、固定部51の前端51bから前方に突出した第1の取付部54と、固定部51の後方の端縁51aから立上がり形成された第2の取付部55と、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62(
図8)を接続するための接続部56とを備えている。固定部51の前端51bから前方は、本発明の第1の方向の一例であり、固定部51の後方の端縁51aから上方は、本発明の第2の方向の一例である。つまり、本実施形態では、第1の方向および第2の方向は、相互に直交した方向である。
【0027】
本実施形態では、固定部51は板状に形成されており、その上部の板面には、相互に離間した第1の突出部52および第2の突出部53がそれぞれ上方に突出形成されている。第1の突出部52および第2の突出部53は相対向して配置されており、第2の保持部材40に設けられた第1の挿入孔45および第2の挿入孔48に対応する位置に配置されている。第1の突出部52には、第1の係止突起44a(
図5(A))を係止するための第1の係止孔52aが開口形成されている。第2の突出部53には、第2の係止突起47a(
図5(A))を係止するための第2の係止孔53aが開口形成されている。本実施形態では、第1の突出部52および第2の突出部53は、それぞれ矩形の板状に形成されている。
【0028】
第1の取付部54には、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔54aが上下方向に貫通形成されている。本実施形態では、第1の取付部54は、平面視略三角形に形成されている。また、第2の取付部55の右上角部には、ボルト挿通孔55aが、左上角部には、ボルト挿通孔55bが、それぞれ前後方向に貫通形成されている。つまり、第1の取付部54は、固定部51の前方に配置されており、第2の取付部55は、固定部51の上方であって第1の取付部54よりも後方に配置されている。換言すると、固定部51および第2の取付部55は相互に直交しており、その直交する方向に第1の取付部54および第2の取付部55がそれぞれ配置されている。
このように第1の取付部54および第2の取付部55をそれぞれ直交する方向に配置することにより、取付部材50の取付箇所の向きが90度変更になった場合でも、取付部材50の取付けが可能となる。また、直交する2面にそれぞれ取付箇所を有する場合は、一方の面に第1の取付部54を取付け、他方の面に第2の取付部55を取付けることにより、取付強度を高めることもできる。第1の取付部54が取付けられる接地箇所が、本発明の第1の接地箇所の一例であり、第2の取付部55が取付けられる接地箇所が、本発明の第2の接地箇所の一例である。
【0029】
第2の取付部55には開口部56eが開口形成されており、接続部56が、開口部56eから後方に突出している。接続部56は、開口部56eの開口縁の下端から立上がり形成された支持部56aと、この支持部56aの上端から後方に屈曲した平坦部56dと、この平坦部56dの左端から立上がり形成された側壁56bと、平坦部56dの右端から立上がり形成された側壁56cとを備えている。
【0030】
図8(B)に示すように、ワイヤーハーネス60のうち、電磁シールド部材62によって覆われていない部分の絶縁被覆導線61,61は、本体10に挿通されている。また、ワイヤーハーネス60のうち、電磁シールド部材62によって覆われた状態の絶縁被覆導線61,61は、開口部56eから後方に突出しており、電磁シールド部材62の下面および両側面が、接続部56の平坦部56dおよび側壁56b、56cによって支持されている。つまり、接続部56は、保持部材20が取付けられた取付部材50のうち、磁性体コア部品11,11間に形成された貫通孔12の開口部12aの周辺に設けられているため、電磁シールド部材62を接続部56に比較的容易に接続することができる。電磁シールド部材62は、平坦部56dおよび側壁56b、56cにそれぞれ電気的接続されている。これにより、電磁シールド部材62が、接続部56を通じて取付部材50と電気的接続されるため、取付部材50を車両の接地箇所に取付けることにより、取付部材50を通じて電磁シールド部材62を車両の接地箇所に接地することができる。ワイヤーハーネス60は、本発明の電線の一例である。
【0031】
また、電磁シールド部材62のうち、平坦部56dおよび側壁56b、56cによって支持されている部分は、固定バンド63によって、平坦部56dおよび側壁56b、56cに締結されている。これにより、電磁シールド部材62と取付部材50との電気的接続状態がより一層確実なものとなるため、電磁ノイズ対策部材1が振動した場合であっても、電磁シールド部材62の接地箇所への接地状態が解除され難くなるようにすることができる。取付部材50は、鉄、アルミなどの導電性材料により形成されており、プレス成型により製造することができる。また、固定バンド63は、鉄やアルミニウムなどの導電性材料、あるいは、合成樹脂などの非導電性材料により形成することができる。また、固定バンド63は、ゴムなどの弾性材料によって形成することもできる。また、金属製の線材によって電磁シールド部材62および接続部56の周囲を捲回し、捲回した線材の両端を結んで固定する手法でも良い。
【0032】
[変更例]
次に、第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1の変更例について
図9を参照しつつ説明する。
図9に示すように、接続部56が、第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1と同様に、固定部51の後方の端縁51aの側に設けられている他、前端51bの側にも設けられている。つまり、本変更例に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた取付部材50は、接続部56を前後方向にそれぞれ1つずつ設けた特徴を有する。前端51bの側にも設けられた接続部56は、後方の端縁51aの側に設けられた接続部と同じ構造であり、保持部材20から見て前方に突出している。図示の例では、保持部材20から見て前方に突出した接続部56にワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62が接続されている。
【0033】
例えば、第2の取付部55を車両の所定箇所200(
図26)に取付けるとすると、その所定箇所200よりも前方の位置において、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62を接続部56に接続することができる。つまり、ワイヤーハーネス60を所定箇所200に配置された端子に接続し、第2の取付部55を所定箇所200に固定した後でも、電磁シールド部材62を接続部56に接続することができるため、作業性を高めることができる。また、電磁シールド部材62を後方の接続部56に接続した方が作業性を高めることができる場合は、電磁シールド部材62を後方の接続部56に接続することもできる。また、後方に配置された接続部56を無くし、前方に配置された接続部56のみの構造にすることもできる。
【0034】
また、固定部51の前端51bからは、第1の取付部57と、第3の取付部58とがそれぞれ前方に突出形成されている。第1の取付部57にはボルト挿通孔57aが、第3の取付部58にはボルト挿通孔58aがそれぞれ上下方向に貫通形成されている。このように、固定部51の前端51bには、2つの取付部がそれぞれ前方に突出形成されているため、取付部材50を固定部51の前端51b側にて車両の所定箇所に固定する場合は、1つの取付部を用いて取付ける構造よりも取付強度を高めることができる。
【0035】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を車両の所定箇所に取付けるための取付部材50は、導電性材料により形成されており、かつ、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続可能に構成されているため、電磁シールド部材62が電気的接続された取付部材50を車両の接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材62が接地された状態になるので、電磁シールド部材62を接地する作業を削減することができる。
【0036】
(2)しかも、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続するための接続部56が、保持部材20が固定された取付部材50のうち、貫通孔12の開口部12aの周辺に設けられているため、電磁シールド部材62を接続部56に比較的容易に電気的接続することができる。
従って、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することができる。
【0037】
(3)さらに、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、電磁シールド部材62を接地するために必要な固有の部材をワイヤーハーネス60および接地側に設けなくても良いため、その分、電磁シールド部材62を接地するための自由度を高めることができる。
【0038】
(4)さらに、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、取付部材50には、保持部材20を固定するための固定部51と、固定部51の前端51bから前方に配置された第1の取付部54と、固定部51の後方の端縁51aから立上がり形成された第2の取付部55とが設けられているため、取付部材50の取付箇所が90度変更になった場合でも、取付部材50の取付けが可能となる。また、直交する2面にそれぞれ取付箇所を有する場合は、一方の面に第1の取付部54を取付け、他方の面に第2の取付部55を取付けることにより、取付強度を高めることもできる。
【0039】
(5)さらに、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、固定部51には、相互に離間した第1の突出部52および第2の突出部53がそれぞれ上方に突出形成されており、保持部材20のうち、保持部材20の内面に保持された磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部(第1の端部43)には、第1の突出部52を挿入するための第1の挿入孔45と、第1の挿入孔45に挿入された第1の突出部52を係止するための第1の係止片44と、が設けられており、両端部の他方の端部(第2の端部46)には、第2の突出部53を挿入するための第2の挿入孔48と、第2の挿入孔48に挿入された第2の突出部53を係止するための第2の係止片47と、が設けられている。
つまり、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を両端部において固定部51に係止することができるため、保持部材20の取付強度を高めることができる。
従って、取付部材50を取付けた接地箇所が振動した場合であっても、保持部材20の振動の振幅を小さくすることができるため、保持部材20に保持された磁性体コアに振動による影響が及ばないようにすることができる。
また、振動により、磁性体コア部品11の欠けやヒビなどの破損が生じ難くすることもできる。
【0040】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材について図を参照しつつ説明する。なお、本第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材に備えられた本体は、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた本体10と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0041】
図10から
図12に示すように、本第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1は、本体10および取付部材70を備えている。
図13および
図14に示すように、本第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた取付部材70は、保持部材20を固定するための固定部71と、固定部71から上方に突出した第1の突出部72および第2の突出部73と、固定部71の前端71bから前方に突出した第1の取付部74と、固定部71の後方の端縁71aから立上がり形成された第2の取付部75と、固定部71の左端縁71cから立上がり形成された左側壁77と、固定部71の右端縁71dから立上がり形成された右側壁78と、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62(
図15)を接続するための接続部76とを備えている。
【0042】
本実施形態では、固定部71は板状に形成されており、その上部の板面には、相互に離間した第1の突出部72および第2の突出部73がそれぞれ上方に突出形成されている。第1の突出部72は右側壁78よりも内側に配置されており、右側壁78と相対向している。第2の突出部73は左側壁77よりも内側に配置されており、左側壁77と相対向している。第1の突出部72および第2の突出部73は相対向して配置されており、第2の保持部材40に設けられた第1の挿入孔45および第2の挿入孔48(
図12)に対応する位置に配置されている。第1の突出部72には、第1の係止突起44a(
図12)を係止するための第1の係止孔72aが開口形成されている。第2の突出部73には、第2の係止突起47a(
図12)を係止するための第2の係止孔73aが開口形成されている。本実施形態では、第1の突出部72および第2の突出部73は、それぞれ矩形の板状の形成されている。
【0043】
第1の取付部74には、ボルトを挿通するためのボルト挿通孔74aが上下方向に貫通形成されている。本実施形態では、第1の取付部74は、平面視略三角形に形成されている。第2の取付部75からは、接続部76が後方に突出形成されている。接続部76は、第2の取付部75から後方に突出した平坦部76aと、この平坦部76aの左端から立上がり形成された側壁76bと、平坦部76aの右端から立上がり形成された側壁76cとを備えている。
【0044】
図15(A)に示すように、本体10に挿通されたワイヤーハーネス60は、第2の取付部75の上方に位置しており、後方に突出している。電磁シールド部材62の下面および両側面が接続部76によって支持されている。つまり、接続部76は、保持部材20が取付けられた取付部材70のうち、磁性体コア部品11,11間に形成された貫通孔12から突出したワイヤーハーネス60の周辺に設けられているため、電磁シールド部材62を接続部76に比較的容易に接続することができる。電磁シールド部材62は、接続部76に電気的接続されている。これにより、電磁シールド部材62と取付部材70とが電気的接続されるため、取付部材70を車体の接地箇所に取付けることにより、取付部材70を通じて電磁シールド部材62を車体に接地することができる。
【0045】
また、電磁シールド部材62のうち、接続部76によって支持されている部分は、固定バンド63によって、接続部76に締結されている。これにより、電磁シールド部材62と取付部材70との電気的接続状態がより一層確実なものとなるため、電磁ノイズ対策部材1が振動した場合であっても、電磁シールド部材62の車体への接地状態が解除され難くなるようにすることができる。取付部材70は、鉄、アルミなどの導電性材料により形成されており、ダイカスト(ダイキャスト)により製造することができる。
【0046】
[第2実施形態の効果]
(1)上述した第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を車両の所定箇所に取付けるための取付部材70は、導電性材料により形成されており、かつ、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続可能に構成されているため、電磁シールド部材62が電気的接続された取付部材70を車両の接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材62が接地された状態になるので、電磁シールド部材62を接地する作業を削減することができる。
【0047】
(2)しかも、前述した第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続するための接続部76が、保持部材20が固定された取付部材70のうち、貫通孔12の開口部12aの周辺に設けられているため、電磁シールド部材62を接続部76に比較的容易に電気的接続することができる。
従って、第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することができる。
【0048】
(3)さらに、前述した第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、電磁シールド部材62を接地するために必要な固有の部材をワイヤーハーネス60および接地側に設けなくても良いため、その分、電磁シールド部材62を接地するための自由度を高めることができる。
【0049】
(4)さらに、前述した第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、固定部71には、相互に離間した第1の突出部72および第2の突出部73がそれぞれ上方に突出形成されており、保持部材20のうち、保持部材20の内面に保持された磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部(第1の端部43)には、第1の突出部72を挿入するための第1の挿入孔45と、第1の挿入孔45に挿入された第1の突出部72を係止するための第1の係止片44と、が設けられており、両端部の他方の端部(第2の端部46)には、第2の突出部73を挿入するための第2の挿入孔48と、第2の挿入孔48に挿入された第2の突出部73を係止するための第2の係止片47と、が設けられている。
つまり、前述した第2実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を両端部において固定部71に係止することができるため、保持部材20の取付強度を高めることができる。
従って、取付部材70を取付けた接地箇所が振動した場合であっても、保持部材20の振動の振幅を小さくすることができるため、保持部材20に保持された磁性体コアに振動による影響が及ばないようにすることができる。
また、振動により、磁性体コア部品11の欠けやヒビなどの破損が生じ難くすることもできる。
(5)さらに、保持部材20の両端の外側には、左側壁77および右側壁78が配置されているため、保持部材20の両端を外部からの衝突などから保護することができる。
【0050】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材について図を参照しつつ説明する。なお、本第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材に備えられた本体は、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた本体10と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0051】
図16から
図20に示すように、本第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた挾持取付部材100は、挾持部材80と、一対の取付部材90とを備えている。
図21に示すように、挾持部材80は、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62を第1の保持部材30に挾持するものである。一対の取付部材90は、保持部材20を車両の所定箇所に取付けるものであり、挾持部材80と電気的接続される。
図19および
図20に示すように、挾持部材80は、帯状に形成されている。また、
図18に示すように、挾持部材80は、保持部材20のうち、貫通孔12に挿通されたワイヤーハーネス60の軸方向と直交する外周面に対応した形状に形成されている。挾持部材80および各取付部材90は、それぞれ鉄、アルミなどの導電性材料により形成されており、プレス成型により製造することができる。
【0052】
図19(B)および
図20に示すように、挾持部材80は、板状の平坦部81と、この平坦部81の長手方向の左端から左斜め下方に延びた板状の左傾斜部82と、この左傾斜部82の先端から垂下した板状の左垂下部83と、平坦部81の長手方向の右端から右斜め下方に延びた板状の右傾斜部84と、この右傾斜部84の先端から垂下した板状の右垂下部85とを備えている。また、平坦部81および左傾斜部82の境界と、左傾斜部82および左垂下部83の境界と、平坦部81および右傾斜部84の境界と、右傾斜部84および右垂下部85の境界とには、屈曲部86がそれぞれ形成されている。各屈曲部86は、外方に膨らんだ断面円弧状に形成されており、各境界における強度を高めるリブの役割をしている。左垂下部83には、第2の係止片47の第2の係止突起47a(
図18)を係止するための係止孔83aが開口形成されており、右垂下部85には、第1の係止片44の第1の係止突起44aを係止するための係止孔85aが開口形成されている。
【0053】
図19(C),(D)および
図20に示すように、取付部材90は、相対向する第1の係止部材91および第2の係止部材92を有する断面U字状の係止部材95と、第2の係止部材92に結合されたベース部材94とを有する。ベース部材94には、ボルト110(
図26)を挿通するボルト挿通孔94aが形成されている。第1の係止部材91、第2の係止部材92およびベース部材94は、それぞれ板状に形成されている。第1の係止部材91および第2の係止部材92の上端間は上壁93により結合されている。第2の係止部材92の板面の下端には、ベース部材94の一端が結合されている。図では、係止部材95は、U字を上下逆にした断面形状を呈しており、上壁93がU字の底部に相当する。また、第1の係止部材91には、第1の係止片44の第1の係止突起44a(
図18)、または、第2の係止片47の第2の係止突起47aを係止するための係止孔91aが開口形成されている。また、ベース部材94の先端(他端)には、斜め上方に傾斜した傾斜部94bが形成されている。
【0054】
図18に示すように、挾持部材80の右垂下部85は、第2の保持部材40の第1の端部43に形成された第1の挿入孔45に上方から挿入され、右垂下部85の係止孔85aには、第1の係止片44の第1の係止突起44aが係止される。また、挾持部材80の左垂下部83は、第2の保持部材40の第2の端部46に形成された第2の挿入孔48に上方から挿入され、左垂下部83の係止孔83aには、第2の係止片47の第2の係止突起47aが係止される。
【0055】
また、一方の取付部材90の第1の係止部材91は、第1の挿入孔45のうち、第1の外壁43aと、右垂下部85との間に上方から挿入され、第1の係止部材91の係止孔91a(
図19)には、第1の係止片44の第1の係止突起44aが係止される。第1の挿入孔45に挿入された右垂下部85の係止孔85aと、第1の係止部材91の係止孔91aとは相互に重なった状態となり、右垂下部85の係止孔85aに係止された第1の係止突起44aは、係止孔85aから突出し、第1の係止部材91の係止孔91aに係止される。つまり、第1の係止突起44aは、右垂下部85の係止孔85aおよび第1の係止部材91の係止孔91aに係止される。これにより、右垂下部85および第1の係止部材91の第1の挿入孔45からの抜け止めが図られ、かつ、右垂下部85および第1の係止部材91が相互に電気的接続される。
【0056】
また、他方の取付部材90の第1の係止部材91は、第2の挿入孔48のうち、第2の外壁46aと、左垂下部83との間に上方から挿入され、第1の係止部材91の係止孔91a(
図19)には、第2の係止片47の第2の係止突起47aが係止される。第2の挿入孔48に挿入された左垂下部83の係止孔83aと、第1の係止部材91の係止孔91aとは相互に重なった状態となり、左垂下部83の係止孔83aに係止された第2の係止突起47aは、係止孔83aから突出し、第1の係止部材91の係止孔91aに係止される。つまり、第2の係止突起47aは、左垂下部83の係止孔83aおよび第1の係止部材91の係止孔91aに係止される。これにより、左垂下部83および第1の係止部材91の第2の挿入孔48からの抜け止めが図られ、かつ、左垂下部83および第1の係止部材91が相互に電気的接続される。
【0057】
図21に示すように、本体10に挿通されたワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62は、第1の保持部材30の上面と、その上面に連続する両側の傾斜面とを覆っており、その覆った部分が挾持部材80および第1の保持部材30によって挾持されている。電磁シールド部材62は、挾持部材80を通じて両側の取付部材90と電気的接続されている。このため、各取付部材90を車体の接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材62が車体に接地される。
【0058】
[第3実施形態の効果]
(1)上述した第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を車両の所定箇所に取付けるための挾持部材80および各取付部材90は、それぞれ導電性材料により形成されており、かつ、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続可能に構成されているため、電磁シールド部材62が電気的接続された各取付部材90を車体の接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材62が車体に接地された状態になるので、電磁シールド部材62を接地する作業を削減することができる。
【0059】
(2)しかも、前述した第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、電磁シールド部材62を挾持部材80および保持部材20によって挾持することにより、電磁シールド部材62を各取付部材90と電気的接続することができるため、電磁シールド部材62を接地するための作業効率を高めることができる。
従って、第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することができる。
【0060】
(3)さらに、前述した第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、電磁シールド部材62を接地するために必要な固有の部材をワイヤーハーネス60および接地側に設けなくても良いため、その分、電磁シールド部材62を接地するための自由度を高めることができる。
【0061】
(4)さらに、前述した第3実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、一対の取付部材90,90によって保持部材20の両端(保持部材20に挿通されたワイヤーハーネス60の軸方向と直交する両端)を接地箇所に取付けることができるため、保持部材20の一端のみを接地箇所に取付ける構造よりも、保持部材20の取付強度を高めることができる。
従って、各取付部材90を取付けた接地箇所が振動した場合であっても、保持部材20の振動の振幅を小さくすることができるため、保持部材20に保持された磁性体コアに振動による影響が及ばないようにすることができる。
また、振動により、磁性体コア部品11の欠けやヒビなどの破損が生じ難くすることもできる。
【0062】
〈第4実施形態〉
次に、本発明の第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材について図を参照しつつ説明する。なお、本第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材に備えられた一対の取付部材は、前述した第1実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた一対の取付部材90と同じ構成であるため、それらの説明を省略する。
【0063】
図22に示すように、本第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1に備えられた保持部材20は、前方に第3の端部49を備えている。第3の端部49には、取付部材90の第1の係止部材91を上方から挿入するための第3の挿入孔49aが形成されており、その第3の挿入孔49aには、第1の係止部材91の係止孔91a(
図19)に係止される第3の係止片49bが設けられている。つまり、保持部材20は、左右両側に設けられた第1の端部43および第2の端部46の他に前方に設けられた第3の端部49を有し、取付部材90によって左右両側を係止する他に前方を係止することができる構造になっている。
【0064】
図22から
図24に示す使用例では、一方の取付部材90の第1の係止部材91は、第1の挿入孔45に上方から挿入され、第1の係止部材91の係止孔91a(
図19)には、第1の係止片44の第1の係止突起44aが係止される。また、他方の取付部材90の第1の係止部材91は、第2の挿入孔48に上方から挿入され、第1の係止部材91の係止孔91a(
図19)には、第2の係止片47の第2の係止突起47aが係止される。
【0065】
図25に示す使用例では、保持部材20の外周面および前面がワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62によって覆われている。保持部材20の外周面および前面を覆った電磁シールド部材62のうち、保持部材20の第1の端部43(
図24)側に位置する側面を覆った部分は、取付部材90の第1の係止部材91(
図19,
図24)と、第1の係止片44とによって挾持されており、その挾持された部分は、第1の係止突起44aによって係止孔91aの内部に圧入されている(図示省略)。これにより、電磁シールド部材62と取付部材90とが電気的接続され、かつ、挾持された電磁シールド部材62が上方に抜け難くなる。
【0066】
また、保持部材20の外周面を覆った電磁シールド部材62のうち、保持部材20の第2の端部46(
図24)側に位置する側面を覆った部分は、取付部材90の第1の係止部材91(
図19,
図24)と、第2の係止片47とによって挾持されており、その挾持された部分は、第2の係止突起47aによって係止孔91aの内部に圧入されている(図示省略)。これにより、電磁シールド部材62と取付部材90とが電気的接続され、かつ、挾持された電磁シールド部材62が上方に抜け難くなる。
電磁シールド部材62を接地する場合は、保持部材20を覆った電磁シールド部材62のうち、保持部材20の両側面を覆っている部分を、取付部材90の第1の係止部材91と共に第1の挿入孔45および第2の挿入孔48にそれぞれ挿入すれば、電磁シールド部材62と各取付部材90とをそれぞれ電気的接続することができる。保持部材20を係止した各取付部材90が車両の接地箇所に取付けられた場合に、保持部材20が車両と接触している部分は、接地可能な箇所でも良いし、接地不可能な箇所でも良い。
【0067】
[第4実施形態の効果]
(1)上述した第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を車両の所定箇所に取付けるための各取付部材90は、それぞれ導電性材料により形成されており、かつ、ワイヤーハーネス60の電磁シールド部材62と電気的接続可能に構成されているため、電磁シールド部材62が電気的接続された各取付部材90を車両の接地箇所に取付けることにより、電磁シールド部材62が車両に接地された状態になるので、電磁シールド部材62を接地する作業を削減することができる。
【0068】
(2)しかも、前述した第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、保持部材20を覆った電磁シールド部材62の一部を、取付部材90の第1の係止部材91と共に第1の挿入孔45および第2の挿入孔48にそれぞれ挿入すれば、電磁シールド部材62と各取付部材90とをそれぞれ電気的接続することができるため、電磁シールド部材62を接地するための作業効率を高めることができる。
従って、第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、ワイヤーハーネス60に電磁対策を施すための作業効率を高めることができる電磁ノイズ対策部材を提供することができる。
【0069】
(3)さらに、前述した第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、電磁シールド部材62を接地するために必要な固有の部材をワイヤーハーネス60および接地側に設けなくても良いため、その分、電磁シールド部材62を接地するための自由度を高めることができる。
【0070】
(4)さらに、前述した第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1によれば、一対の取付部材90,90によって保持部材20の両端(保持部材20に挿通されたワイヤーハーネス60の軸方向と直交する両端)を接地箇所に取付けることができる。また、保持部材20の両端に加えて前端を接地箇所に取付けることもできる。
つまり、保持部材20の一端のみを接地箇所に取付ける構造よりも、保持部材20の取付強度を高めることができる。
従って、各取付部材90を取付けた接地箇所が振動した場合であっても、保持部材20の振動の振幅を小さくすることができるため、保持部材20に保持された磁性体コアに振動による影響が及ばないようにすることができる。
また、振動により、磁性体コア部品11の欠けやヒビなどの破損が生じ難くすることもできる。
【0071】
[取付部材90の特徴]
次に、取付部材90の特徴について図を参照しつつ説明する。
図26は、第4実施形態に係る電磁ノイズ対策部材の使用状態の一例を示す斜視図である。同図では、電磁シールド部材62を省略して示している。同図に示すように、保持部材20の両端には、取付部材90がそれぞれ係止されており、各取付部材90は、ベース部材94に挿通されたボルト110によって車両の所定箇所200に取付けられている。所定箇所200は導電性材料によって形成されており、接地箇所でもある。
【0072】
図27(A)に示すように、取付部材90の第1の係止部材91は、第2の保持部材40の端部に形成された第2の挿入孔48に挿入されており、第2の係止片47の第2の係止突起47aが、第1の係止部材91の係止孔91aに係止されている。この状態では、第1の係止部材91の両側には隙間が形成されており、第1の係止部材91が左右方向に微少移動可能な状態、いわゆるガタが発生するおそれのある状態になっている。
取付部材90を構成するベース部材94は、傾斜部94b側を一端とすると、他端側、つまり、ベース部材94と第2の係止部材92との境界側が上方に持ち上がった状態に形成されている。図示の例では、ベース部材94は左上方に反っている(傾斜している)。また、第1の係止部材91の先端91bは、車両の所定箇所200の上面200aから浮いた状態になっている。また、第2の保持部材40に設けられた第2の外壁46aの上端と、取付部材90の上壁93との間には隙間Sが形成されている。また、第1の係止部材91の先端91bと車両の所定箇所200の上面200aとの距離は、隙間Sの上下方向の距離よりも長い。
【0073】
図27(B)に示すように、ボルト110をベース部材94のボルト挿通孔94aに挿通し、車両の所定箇所200に締結すると、ボルト110がベース部材94を押圧するため、ベース部材94の反りが直り、平坦になる。ベース部材94が平坦になると、ベース部材94の他端が下がるため、その分、上壁93が下がり、上壁93が第2の外壁46aの上端を押圧する。また、ベース部材94の他端が下がることにより、第1の係止部材91および第2の係止部材92がそれぞれ内側に傾倒する。これにより、第1の係止部材91の外面上端が第2の係止片47の上端を押圧し、第1の係止部材91の内面下端が第2の外壁46aの内面下端を押圧した状態になる。つまり、第1の係止部材91は、第2の挿入孔48の内部において左右方向に移動できない状態になり、いわゆるガタが発生するおそれがなくなる。また、第2の係止部材92は、第2の外壁46aの外面上端を押圧した状態になるため、第2の係止部材92のガタが発生するおそれがなくなる。
【0074】
上述したように、取付部材90によって保持部材20を車両の所定箇所200に取付けると、車体が振動した場合であっても取付部材90および保持部材20間にガタが発生しないため、ボルト110が緩み難い。また、ガタによる異音の発生を抑制することができる。
【0075】
[一対の取付部材90を備えた電磁ノイズ対策部材の技術的特徴]
上述した一対の取付部材90を備えた電磁ノイズ対策部材は、次に記載する技術的特徴を有する。
電磁シールド部材によって覆われた電線の周囲を囲む磁性体コアと、
非導電性材料により形成されており、前記磁性体コアを自身の内面に保持するための保持部材と、
前記保持部材を所定箇所に取付けるための取付部材と、を備えた電磁ノイズ対策部材であって、
前記取付部材には、第1の取付部材および第2の取付部材が備えられており、
前記第1の取付部材および第2の取付部材は、それぞれ導電性材料により形成されており、かつ、前記電磁シールド部材と電気的接続可能に構成されており、
さらに、相対向する第1の係止部材および第2の係止部材を有する断面U字状の係止部材と、
前記第2の係止部材に結合されており、前記所定箇所に固定するための固定部材を挿通する挿通孔が形成されたベース部材と、をそれぞれ有し、
前記保持部材のうち、
前記保持部材の内面に保持された前記磁性体コアの軸方向と直交する両端部の一方の端部には、前記第1の取付部材の前記第1の係止部材が先端から挿入されて挾持される第1の挾持部が設けられており、
前記両端部の他方の端部には、前記第2の取付部材の前記第1の係止部材が先端から挿入されて挾持される第2の挾持部が設けられている。
【0076】
〈他の実施形態〉
(1)前述した各実施形態に係る電磁ノイズ対策部材1は、ワイヤーハーネス以外の電線にも適用することができ、車両に用いる電線の他、電気機器などに用いる電線にも適用することができる。
(2)第1の取付部54(57,74)を配置する箇所または数は変更することができる。例えば、第1の取付部54を固定部51の左右の両端または一方の端部に配置することができる。また、第2の取付部55(75)を配置する箇所または数も変更することができる。例えば、固定部51の左右の端部の一方または両方から第2の取付部55を立上がり形成することができる。この構成を備えた電磁ノイズ対策部材によれば、本体10の両端部の方向に所定箇所200が存在する場合でも、本体10を取付けることができる。
(3)取付部材50(
図1)または取付部材70(
図10)を箱状に形成することもできる。この構成を備えた電磁ノイズ対策部材によれば、本体10の上側および両側を外部からの衝突などから保護することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 電磁ノイズ対策部材
10 本体
11 磁性体コア部品
12 貫通孔
20 保持部材
30 第1の保持部材
40 第2の保持部材
43 第1の端部
44 第1の係止片
45 第1の挿入孔
46 第2の端部
47 第2の係止片
48 第2の挿入孔
50 取付部材
51 固定部
54 第1の取付部
55 第2の取付部
56 接続部
52 第1の突出部
52a 第1の係止孔
53 第2の突出部
53a 第2の係止孔
60 ワイヤーハーネス
61 絶縁被覆導線
62 電磁シールド部材
80 挾持部材
90 取付部材
100 挾持取付部材
200 所定箇所