(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】卵パックの移載ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B65B 23/08 20060101AFI20240221BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20240221BHJP
B65G 57/03 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B65B23/08
B25J9/10 Z
B65G57/03 G
(21)【出願番号】P 2020107082
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 隆彦
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004198(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3209255(JP,U)
【文献】登録実用新案第3047577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 23/08
B65G 57/03
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵パックを保持する保持部を備えたロボットヘッドと、
前記ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なロボットアームと、
前記ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する制御部とを備え、移動式のラックの棚板に前記保持部で保持した卵パックを移動させるものであって、
前記棚板は、棚板の一層目の卵パックの前方への落下を防止する前枠と、棚板の一層目の卵パックの後方への落下を防止する後ろ枠とを備え、
前記制御部は、前記棚板の一層目の卵パックの上に積み重ねられる卵パックを、前記前枠または後ろ枠の上方の空間まで突出させて配置する、卵パックの移載ロボットシステム。
【請求項2】
前記移動式のラックは、前記棚板を支える左右の側フレームを備え、
前記制御部は、一の卵パックのテープ留めまたは溶着されたフランジが一方の側フレームに隣り合うように卵パックを配置し、他の卵パックのテープ留めまたは溶着されたフランジが他方の側フレームに隣り合うように卵パックを配置する、請求項1記載の卵パックの移載ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵パックを移動式のラックに移載する卵パックの移載ロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPセンターにて卵がパック詰めされた卵パックは、段ボール箱やコンテナに箱詰めされたり、ロールインナーと呼ばれる専用の移動式のラックに載せられたりする。
【0003】
ロールインナーは、下記特許文献1及び2に示すように、複数の棚を備え、各棚に卵パックが積み重ねられる。この状態で、ロールインナーは移動され、そのまま売り場に陳列が可能である。
【0004】
卵パックは、ロールインナーに複数段に積まれた状態で、GPセンターから売り場へと移動させられる。複数段に積まれた状態での移動に耐えられるように、ロールインナーには以下のような特徴がある。まず、ロールインナーは、側面の3方向がフレームで囲まれている。また、ロールインナーは、棚板を複数枚備え、棚一段あたり4~6個(4~6段)の卵パックが積み上げられる。各棚板は、棚板の一層目に載せられた卵パックの前方への落下を防止する前枠と、棚板の一層目に載せられた卵パックの後方への落下を防止する後ろ枠とを備える。そして、卵パック自体も、上下に積まれた卵パック同士のずれを抑制できる形状になっている。
【0005】
また、輸送効率を上げるために、以下のような特徴がある。1つ目は、ロールインナーの1段あたり、できるだけ多くの卵パックを積みたい。言い換えれば、フレームの内側ギリギリの場所まで、また、棚板の下方ギリギリの場所まで卵パックを置きたいという要望がある。これには、卵パックを棚に詰めて置き、卵パック同士で拘束し合って卵パックが所定位置から大きく動かないようにすることで、輸送時の卵の割れを防止するという理由もある。さらに、2つ目の特徴は、非使用時にコンパクトに収容できるように、棚板やフレームが折り畳み式になっている点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3209255号
【文献】特許第6684511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6に、ロールインナーに手作業で卵パックを詰め込む際の卵パックの配置方法の一例を示す。
図6では、棚板の奥側は卵パックが横向きに並べられるとともに、棚板の手前側は卵パックが縦向きに並べられ、二層目が一層目と同じ配置で重ねられる。このような配置により、棚一段あたりの積載パック数をできるだけ多くしつつ、ロールインナーが移動した際に棚板の手前側から卵パックがこぼれ落ちることも抑制できる。
【0008】
ところで、特許文献2には、アーム先端に吸着部を備えるロボットアームを用いて、複数の卵パックの上面を吸着保持し、棚板上に移送して積んでいくとの記載がある。卵パックをロールインナーに収納しようとした場合、ロボットアームが障害物にあたらないように特殊な動作が必要となったり、棚板への卵パックの並べ方に制約が生じたりするが、特許文献2にはこのような問題点に対する解決策の開示は一切なく、特許文献2に記載の内容では、
図6に示すような手作業で行っていた卵パックの配置の再現も実施不可能であると言わざるを得ない。
【0009】
そこで、本発明は、手作業で行っていた卵パックの配置を代替可能な卵パックの移載ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の卵パックの移載ロボットシステムは、移動式のラックの棚板に保持部で保持した卵パックを移動させる。棚板は、棚板の一層目の卵パックの前方への落下を防止する前枠と、棚板の一層目の卵パックの後方への落下を防止する後ろ枠とを備える。卵パックの移載ロボットシステムは、ロボットヘッドと、ロボットアームと、制御部とを備える。ロボットヘッドは、卵パックを保持する保持部を備える。ロボットアームは、ロボットヘッドの位置姿勢を変更可能なものである。制御部は、ロボットヘッドとロボットアームの動きを制御する。制御部は、棚板の一層目の卵パックの上に積み重ねられる卵パックを、前枠または後ろ枠の上方の空間まで突出させて配置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動で卵パックを移動式のラックに移載する卵パックの移載ロボットシステムを提供できる。
【0012】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる卵パックの移載ロボットシステムを示す側面図である。
【
図2】同実施形態の卵パックの移載ロボットシステムを用いて収納された卵パックを示す側面図である。
【
図3】同実施形態の卵パックの移載ロボットシステムを用いた収納方法を説明するために拡大して示した側面図である。
【
図4】同実施形態の卵パックの移載ロボットシステムを用いた収納方法を説明するための平面図である。
【
図5】同実施形態の卵パックの移載ロボットシステムを用いて収納された卵パックを示す平面図である。
【
図6】従来の卵パックの収納方法を説明するための平面図である。
【
図7】本発明の変形例にかかる卵パックの移載ロボットシステムを用いて収納された卵パックを示す側面図である。
【
図8】同変形例にかかる卵パックの移載ロボットシステムの使用例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態にかかる卵パックの移載ロボットシステム10の一例について、
図1~
図5を用いて説明する。卵パックの移載ロボットシステム10は、搬送されてきた複数の卵パックPを移動式のラック(以下、「ロールインナーR」と記す。)に移載する。
【0015】
ロールインナーRは、複数枚の棚板R1と、後部フレームR2と、一対の側フレームR3と、キャスターR4を主体に構成される。
【0016】
各棚板R1は、折り畳み式のもので、前後二枚の板R5からなる。二枚の板R5は、左右方向に延びる軸を有するヒンジR6を介して組み付けられており、二枚の板R5の相対的な移動により、山型に折り畳まれる。
【0017】
各棚板R1は、前枠R7と、後ろ枠R8とを備える。前枠R7は、棚板R1の一層目の卵パックPの前方への落下を防止する。前枠R7は、棚板R1の前縁から上方に向かって湾曲しており、その高さは、卵パックPの半分程度である。後ろ枠R8は、棚板R1の一層目の卵パックPの後方への落下を防止する。後ろ枠R8は、棚板R1の後縁から上方に向かって湾曲しており、その高さは、卵パックPの半分程度である。
【0018】
各棚板R1は、棚板R1の上面に、位置ずれ防止用の突起R9を備える。位置ずれ防止用の突起R9は、棚板R1の一層目の前端に配置される卵パックPの位置ずれを防止するためのものと、後端に配置される卵パックPの位置ずれを防止するためのものを備える。位置ずれ防止用の突起R9は、棚板R1の2箇所に設けられている。位置ずれ防止用の突起R9は、左右方向に延びており、前枠R7及び後ろ枠R8から卵1個分内側に、当該前枠R7及び後ろ枠R8と平行に設けられている。
【0019】
棚板R1は、手前側に引き出された使用状態と折り畳まれて奥側に位置する収納状態との間で状態変更可能である。使用状態の各棚板R1の上方には、卵パックPが収納される収納空間R10が形成される。収納空間R10には、卵パックPが上下に積み重ねられる。
【0020】
後部フレームR2は、複数の縦材が横材で連結されたものである。後部フレームR2は、前方に突出するフックR11を備える。フックR11は、棚板R1の後ろ枠R8を引っ掛けておくフック部R12と、棚板R1を折り畳んだ際に前枠R7を引っ掛けておくフック部R13とを備える。
【0021】
側フレームR3は、後部フレームR2にヒンジを介して連結されたもので、後部フレームR2の左右に設けられる。側フレームR3は、複数の縦材が横材で連結されたものである。左右の側フレームR3は、棚板R1を支える。側フレームR3は、内側に棚板受け(図示しない)と、フック(図示しない)とを備える。フックは、棚板受けの前端に設けられるもので、このフックに前枠R7を引っ掛けることにより、棚板R1が平らとなった状態が保持される。
【0022】
卵パックPは、種々の大きさ、形状のものがある。図では、10個入りのもので、「フラットパック」と呼ばれる蓋P1の天面が平坦な卵パックPを示している。卵パックPは、上面側に突起P2を有する。突起P2は、例えば、天面の各コーナー部分に設けられている。突起P2は、上に積まれた卵パックPの位置ずれを防止する。卵パックPは、ヒンジ部分P3に対向するフランジP4がテープ留めまたは溶着されて封緘されている。
図5では、テープ留め部分を太線で示す。
【0023】
卵パックの移載ロボットシステム10は、ロールインナーRの棚板R1に保持部4で保持した卵パックPを移動させるものであって、ロボットヘッド1と、ロボットアーム2と、制御部3とを備える。
【0024】
ロボットヘッド1は、保持部4を備える。保持部4は、複数の卵パックPを保持する。保持部4は、例えば、横方向に隣接する3つの卵パックPを保持することができる。保持部4は、1つまたは2つの卵パックPを保持する場合もある。保持部4は、複数の吸着部材5によって構成される。各吸着部材5は、蓋P1が閉じられた卵パックPの天面側を吸着する。各吸着部材5は、真空機構(図示しない)に接続されている。各吸着部材5は、上下方向に伸縮可能な蛇腹構造である。1つの卵パックPにつき、複数個(例えば6つ)の吸着部材5で保持する。なお、吸着部材5の個数や配置方法はどのようなものであってもよい。
【0025】
ロボットアーム2は、ロボットヘッド1の位置姿勢を変更可能なものである。ロボットアーム2は、一時待機領域6とロールインナーRとの間でロボットヘッド1を移動させる。ロボットアーム2は、例えば、6軸垂直多関節ロボット等の、任意に作動する慣用の多関節ロボットが適用される。この他に、ロボットアーム2は、ロボットヘッド1をX軸、Y軸およびZ軸に対して、任意に移動させることができるロボットまたは装置など種々のものを採用できる。なお、一時待機領域6は、搬送装置7の下流側に設けられており、搬送装置7の上流側には、卵をパックに収容する包装装置(図示せず)が配置されている。
【0026】
制御部3は、保持部4を制御する。制御部3は、保持部4を備えたロボットヘッド1と、ロボットヘッド1の位置姿勢を変更可能なロボットアーム2の動きを制御する。制御部3は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部などの専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータによって構成される。内部メモリに格納されたプログラムにしたがって、CPUおよびその周辺機器が協働することによって、制御部3としての機能が発揮される。
【0027】
制御部3は、棚板R1の一層目の卵パックPの上に積み重ねられる卵パックPを、前枠R7または後ろ枠R8の上方の空間まで突出させて配置する。制御部3は、一層目の上に積み重ねられる二層目の前端に配置される卵パックPを、一層目の前端に配置される卵パックPの前方に突出させるように配置する。また、二層目の後端に配置される卵パックPを、一層目の後端に配置される卵パックPの後方に突出させるように配置する。言い換えれば、制御部3は、棚板R1上に直接置かれる一層目の卵パックPの上方に積み重ねられる二層目以降の卵パックPの端部を、棚板R1の後端よりも外へはみ出して配置する。
【0028】
また、制御部3は、一の卵パックPのフランジP4が一方の側フレームR3に隣り合うように卵パックPを配置する。制御部3は、他の卵パックPのフランジP4が他方の側フレームR3に隣り合うように卵パックPを配置する。制御部3は、卵パックP内の卵が割れないように、側フレームR3に隣接する卵パックPはヒンジ部分P3を内側に向ける。言い換えれば、制御部3は、卵パックPのフランジP4を棚板R1の外側に向けて配置する。
【0029】
制御部3は、ロールインナーRに設けられた折り畳み式の棚板R1の下方の空間に、保持部4で保持した卵パックPを移動させる。制御部3は、棚板R1の下方の空間に卵パックPを移動させる際に、卵パックPの重心よりも長手方向一端側にずれた場所にロボットアーム2の先端を位置させて、卵パックPを保持部4で保持する。制御部3は、ロボットヘッド1で保持した卵パックPと障害物との干渉を避けるように卵パックPを移動させる。ここで「障害物」とは、例えば、ロールインナーRに先に積まれた卵パックPや、その卵パックPに設けられた突起P2や、複数個の卵パックPが積み上げられる空間の上方に存在する折り畳まれた状態の棚板R1などである。
【0030】
また、制御部3は、保持部4によって卵パックPを一時待機領域6から持ち上げ、保持部4に保持された卵パックPをロールインナーR上で解放し、卵パックPを保持していない保持部4をロールインナーR上で移動させ、卵パックPを再び保持部4によって持ち上げて、ロールインナーRに設けられた折り畳み式の棚板R1の下方の空間に卵パックPを移動させる。また、別の言い方をすれば、制御部3は、保持部4によって一時待機領域6の卵パックPを第一の態様で保持し、保持部4に保持された卵パックPをロールインナーR上で解放し、第一の態様とは異なる第二の態様で保持部4によって卵パックPを保持して、ロールインナーRに設けられた折り畳み式の棚板R1の下方の空間に卵パックPを移動させる。
【0031】
第一の態様は、例えば、保持部4が有する全ての吸着部材5を利用する、保持部4で6個分の卵に対応する部分を吸着する態様である。第一の態様は、例えば、1回の動作で1個、2個または3個の卵パックPを保持部4で保持する。
【0032】
第二の態様は、例えば、保持部4が有する一部の吸着部材5のみを利用する、保持部4で4個分の卵に対応する部分を吸着する態様である。第二の態様は、例えば、1回の動作で1個、2個または3個の卵パックPを置き直す。第二の態様は、第一の態様で1回の移載で運ばれる卵パックPの全てを保持部4によって保持する。なお、第二の態様は、第一の態様で1回の移載で運ばれる卵パックPの一部のみを保持部4によって保持してもよい。
【0033】
次に、卵パックの移載ロボットシステム10を用いた収納方法の一例について説明する。まず、ロボットヘッド1が届く範囲にロールインナーRを配置する。ロールインナーRは、卵パックPを移載する棚板R1を使用状態にしておき、それよりも上段側の棚板R1は収納状態にしておく。
【0034】
搬送装置7では、上流側から搬送された卵パックPが一時待機領域6に集められる。一時待機領域6に、例えば、3つの卵パックPが集まった状態で、移載動作が開始される。
【0035】
まず、制御部3は、集められた卵パックPの上方にロボットヘッド1を移動させる。その際、制御部3は、卵パックPが保持部4で確実に保持されるようにロボットヘッド1を卵パックPの所定箇所に位置付けて当該卵パックPを保持する。ロボットアーム2の先端およびロボットヘッド1は、卵パックPの上方に位置する。ロボットヘッド1の下面側には、10個入りの卵パックPのうち、長手方向から6個分の卵に対応する部分を卵パックPの上面で吸着する保持部4を備える。
【0036】
制御部3は、保持部4によって卵パックPを一時待機領域6から持ち上げる。言い換えれば、制御部3は、保持部4によって一時待機領域6の卵パックPを第一の態様で保持する。
【0037】
制御部3は、卵パックPを一時待機領域6からロールインナーRまで移動させる。制御部3は、ロボットヘッド1で保持した卵パックPをロールインナーR内の収納空間R10に移動させる。制御部3は、ロボットヘッド1で保持した卵パックPと障害物との干渉を避けるように、卵パックPを移動させる。
【0038】
その後、保持部4に保持された卵パックPをロールインナーR上で解放する。制御部3は、先に積まれた卵パックPの上面に、卵パックPを載置する目標となる位置からずれた位置に、卵パックPを仮置きする。
【0039】
その後、制御部3は、卵パックPを保持していない保持部4をロールインナーR上で移動させる。制御部3は、保持部4を棚板R1から離れる方向に移動させる。そして、制御部3は、卵パックPを再び保持部4によって持ち上げる。言い換えれば、制御部3は、第一の態様とは異なる第二の態様で保持部4によって卵パックPを保持する。なお、第二の態様では、
図4に示すように、卵パックPが傾いていてもよい。すなわち、仮置きから再び持ち上げる際には、卵パックP全体を持ち上げる必要はなく、卵パックPの一部が先に積まれた卵パックPの上面に接していてもよい。このようにして、制御部3は、ロールインナーRに設けられた折り畳み式の棚板R1の下方の空間に卵パックPを移動させる。
【0040】
なお、卵パックPを移動させるロールインナーR内の収納空間R10には、先に積まれた卵パックPの上面と収納状態の棚板R1の下面に囲まれた空間(奥側の空間)が含まれる。奥側の空間に卵パックPを移動させる際には、ロボットアーム2の先端およびロボットヘッド1は、奥側のフレームから離れた側(手前側)に位置する。そして、卵パックPは、奥側の空間に縦向きに配置される。
【0041】
棚板R1の一段分を移載した後、制御部3は、折り畳み式の棚板R1を展開させる。すなわち、折り畳み式の棚板R1は、卵パックPを移載する際と同じロボットヘッド1を用いて、収納状態から使用状態に展開される。具体的には、制御部3は、保持部4が棚板R1を吸着し、その状態のままロボットヘッド1を手前側に移動させることで、折り畳み式の棚板R1が展開される。収納状態の棚板R1は、下段の収納空間R10の上部の一部分のみを覆う一方、展開された使用状態の棚板R1は、下段の収納空間R10の上部の全体を覆う。
【0042】
以上説明したように、本実施形態にかかる卵パックの移載ロボットシステム10は、ロールインナーRの棚板R1に保持部4で保持した卵パックPを移動させる。棚板R1は、棚板R1の一層目の卵パックPの前方への落下を防止する前枠R7と、棚板R1の一層目の卵パックPの後方への落下を防止する後ろ枠R8とを備える。卵パックの移載ロボットシステム10は、ロボットヘッド1と、ロボットアーム2と、制御部3とを備える。ロボットヘッド1は、卵パックPを保持する保持部4を備える。ロボットアーム2は、ロボットヘッド1の位置姿勢を変更可能なものである。制御部3は、ロボットヘッド1とロボットアーム2の動きを制御する。制御部3は、棚板R1の一層目の卵パックPの上に積み重ねられる卵パックPを、前枠R7または後ろ枠R8の上方の空間まで突出させて配置する。
【0043】
このような移載ロボットシステム10であるため、棚板R1への卵パックPの並べ方に制約があっても、棚一段あたりの積載パック数を従来の手作業と同じ程度にすることができる。
【0044】
移動式のラックは、棚板R1を支える左右の側フレームR3を備える。制御部3は、一の卵パックPのテープ留めまたは溶着されたフランジP4が一方の側フレームR3に隣り合うように卵パックPを配置する。また、制御部3は、他の卵パックPのテープ留めまたは溶着されたフランジP4が他方の側フレームR3に隣り合うように卵パックPを配置する。そのため、フランジP4が緩衝材の役割を果たして、ロールインナーRが動かされることにも耐え得る。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0046】
図7および
図8に本発明の変形例を示す。
図7に示すように、ロボットヘッド1で卵パックPを載置する際に、棚板R1が収納状態以外の姿勢をとっていてもよい。この卵パックの移載ロボットシステム10は、パック保持部と、パック制御部と、棚板保持部8と、棚板制御部9とを備える。
【0047】
パック保持部は、卵パックPを保持する。パック保持部は、ロボットヘッド1に設けられる。ロボットヘッド1は、ロボットアーム2で位置姿勢を変更可能である。パック保持部は、上述した実施形態の「保持部4」と同一またはこれに準じた構成や動きを行うものである。
【0048】
パック制御部は、ロボットヘッド1とロボットアーム2の動きを制御して、パック保持部を制御する。パック制御部は、上述した実施形態の「制御部3」と同一またはこれに準じた構成や動きを行うものである。
【0049】
棚板保持部8は、棚板R1を保持する。棚板保持部8は、棚板R1の保持できれば、棚板R1表面を吸着部材5で吸着してもよいし、裏表両面から棚板R1を挟んでもよいし、裏面側から棚板R1を持ち上げてもよい。棚板保持部8は、ロボットヘッド1に設けられてもよいし、それ以外の装置に設けられてもよい。
【0050】
棚板制御部9は、棚板保持部8を制御する。棚板制御部9は、収納状態の棚板R1を使用状態まで状態変更する。棚板制御部9は、棚板R1の前枠R7をフック部R13から取り外し、棚板R1を途中まで展開した状態で静止させる。棚板制御部9は、途中まで展開した状態から、棚板R1を使用状態にする。
【0051】
図8に動きの一例を示す。まず、ロールインナーRが所定箇所に配置されると(ステップS1)、棚板保持部8は、2段目の棚板R1を途中まで展開する(ステップS2)。棚板R1の二枚の板R5は、90度くらいまで開かれ、その状態が保持される。この状態で、パック制御部は、パック保持部でロールインナーRの1段目に卵パックPを移載する(ステップS3)。1段目への積み込みが完了すると、棚板保持部8は、途中まで開いていた2段目の棚板R1を、使用状態まで展開する(ステップS4)。棚板R1の二枚の板R5は、180度まで開かれ、その状態が保持される。
【0052】
同様に、棚板保持部8は、3段目の棚板R1を途中まで展開した後(ステップS5)、パック制御部は、2段目に卵パックPを移載する(ステップS6)。2段目への積み込みが完了すると、棚板保持部8は、途中まで開いていた3段目の棚板R1を、使用状態まで展開する(ステップS7)。また、棚板保持部8は、4段目の棚板R1を途中まで展開した後(ステップS8)、パック制御部は、3段目に卵パックPを移載する(ステップS9)。3段目の積み込みが完了すると、棚板保持部8は、途中まで開いていた4段目の棚板R1を、使用状態まで展開する(ステップS10)。そして、パック制御部は、4段目に卵パックPを移載する(ステップS11)。
【0053】
なお、ステップS2、S5、S7の棚板R1の途中までの展開動作は、それぞれステップS3、S6、S9の複数の卵パックPの移載の途中で行われてもよい。また、棚板R1を途中まで展開させた時の姿勢は、
図7に示すものには限られない。
【0054】
以上より、本変形例にかかる卵パックの移載ロボットシステム10は、移動式のラックの複数枚の折り畳み式の棚板R1にパック保持部で保持した卵パックPを移動させるものであって、棚板R1を保持する棚板保持部8と、棚板保持部8を制御する棚板制御部9とを備え、棚板制御部9が棚板R1を途中まで展開した状態で、当該棚板R1の下方の空間にパック保持部で卵パックPを移動させる。
【0055】
このようなものであるため、上述した実施形態と同一またはこれに準じた効果が得られる。さらに、障害物(複数個の卵パックPが積み上げられる空間の上方に存在する折り畳まれた状態の棚板R1)が空間から退避しているので、ロボットアーム2を使っていても棚板R1の奥側まで卵パックPを配置しやすく、この奥側の空間に卵パックPを横向きに配置することも可能である。なお、奥側に配置される卵パックPは、後ろ枠R8の上方の空間まで突出させていなくてもよい。
【0056】
以下に、上述した以外の変形例について述べる。
【0057】
棚板R1は、前枠R7のみ、または、後ろ枠R8のみを備えるものであってもよい。制御部3は、卵パックPを前枠R7の上方の空間まで突出させて配置させるもの、または、卵パックPを後ろ枠R8の上方の空間まで突出させて配置させるもののいずれかであってもよい。
【0058】
保持部4は、吸着タイプのものには限られない。例えば、卵パックPを側方から保持する保持部4であってもよい。
【0059】
卵パックPはフラットパックには限られない。例えば、卵の形状に沿った凹凸が蓋P1に形成されている「レギュラーパック」であってもよい。また、卵パックPは、10個入りのパックに限らない。ロールインナーRへの卵パックPの並べ方は図示したものには限られない。
【0060】
折り畳み式の棚板R1を展開させるステップは、卵パックPを移載するロボットが行ってもよいし、卵パックPを移載するロボットとは異なる装置を用いるなどしてもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、卵パックを移動式のラックに移載する卵パックの移載ロボットシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…卵パックの移載ロボットシステム
1…ロボットヘッド
2…ロボットアーム
3…制御部
4…保持部
R…ロールインナー(移動式のラック)
R1…棚板
R3…側フレーム
P4…フランジ
R7…前枠
R8…後ろ枠
P…卵パック