(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】トンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240221BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
E21D11/40 B
E21D11/08
(21)【出願番号】P 2021112178
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000228785
【氏名又は名称】日本サミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩之
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-015000(JP,A)
【文献】特開2021-011780(JP,A)
【文献】特開2002-081298(JP,A)
【文献】特開平11-229789(JP,A)
【文献】特開平08-199992(JP,A)
【文献】特開平03-137399(JP,A)
【文献】特開昭51-063532(JP,A)
【文献】特開平03-233098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁の施工に用いるトンネルの施工用架台装置において、
前記トンネル内の道路に配置され、内部通路を有する架台と、
前記架台の屋根部に設けられた前記トンネル幅方向の案内部材と、
前記案内部材に沿ってトンネル幅方向に移動可能に設けられたキャリアと
、
前記架台の外部の被吊上げ物を吊上げる吊上げ装置とを備え
、
前記吊上げ装置は、前記屋根部の上方でトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた対をなす移動吊上げ手段を備え、この移動吊上げ手段は索条を巻取り可能であり、
前記被吊上げ物は、前記トンネルの内壁に取り付けられ、前記トンネルの内壁のアーチ方向に分割したアーチ形部材であり、
前記キャリアは前記案内部材に沿って移動可能な移動部と、この移動部に回動可能に設けられ前記アーチ形部材を着脱可能に取り付ける回動部とを備え、
前記吊上げ装置は、前記架台の長さ方向両側の上部に設けられたトンネル幅方向の幅方向レールと、前記両側の前記幅方向レールにトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた両側の長さ方向レールとを備え、
前記両側の前記長さ方向レールに前記移動吊上げ手段が移動可能に設けられ、
前記幅方向レールのトンネル幅方向他端側は、前記屋根部の位置に比べてトンネル幅方向他側に突出し、
前記両側の前記長さ方向レール同士をトンネル長さ方向に離れるように移動させ、前記回動部の回動により前記屋根部上で旋回する前記アーチ形部材に、前記長さ方向レールが干渉しない位置に移動するように構成したことを特徴とするトンネルの施工用架台装置。
【請求項2】
請求項1記載のトンネルの施工用架台装置を用いてトンネルの内壁に
前記アーチ形部材を取り付ける施工方法であって、
道路の幅方向一側寄りに前記架台を配置すると共に、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を設け、
前記外部通路の運搬車両から前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、
この移送したアーチ形部材を、前記屋根部上の前記キャリアに取り付け、
前記キャリアにより前記アーチ形部材を取付位置に配置することを特徴とするトンネルの施工用架台装置を用いた施工方法。
【請求項3】
請求項1記載のトンネルの施工用架台装置を用いてトンネルの内壁に
前記アーチ形部材を取り付ける施工方法であって、
道路の幅方向一側寄りに前記架台を配置すると共に、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を設け、
前記外部通路の運搬車両から前記キャリアに取り付けた前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、
前記キャリアにより前記アーチ形部材を取付位置に配置することを特徴とするトンネルの施工用架台装置を用いた施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、アーチ形トンネル穴の内面に、据付装置により、トンネル穴を周方向に2分割した形状を有する化粧板としてのプレキャストコンクリート製の左右一対の湾曲状プレキャスト板をアーチ形に組み立てる装置(例えば特許文献1)がある。
【0003】
上記特許文献1の装置では、施工中は道路を全面通行止めにする必要があり、道路の片側交通を確保することができなかった。
【0004】
これに対して、トンネル外に設置した組立架台において複数の円弧型のPC覆工板を前後左右に接合一体化して複数スパン分のアーチ型組立覆工板を組立て、この状態で車体をトンネル内に予め設置した側壁に沿って走行させて覆工部まで移動し、先行して据付けた前記組立覆工板に接合すると共に、左右の下端において前記側壁上に据付けた後、前記車体を坑外に後退走行させてトンネル覆工板を据え付ける組立架台(例えば特許文献2)があり、この組立架台では、屋根形をなす門形フレームからなる車体の下方を、大型自動車等の車輛が通行することができる。
【0005】
しかし、上記特許文献2の組立架台では、門形フレームの下方を車両が通行できるものの、覆工の据付においては、組立覆工版をトンネル内の覆工部に設置する毎に移動台車がトンネル外とトンネル内の覆工部とを往復する必要があるため、施工効率に劣るという問題がある。
【0006】
これに対して、トンネルの内壁に沿うアーチ状のガイドレールを有してトンネルの延長方向へ移動可能な走行架台と、ガイドレール上を走行可能な台車と、台車に設けられてPC板を保持可能であって台車に対して遠近可能で、かつ、トンネルの延長方向を軸に旋回可能な保持装置とを備えたPC板組立装置(例えば特許文献3)が提案されている。
【0007】
上記PC板組立装置では、走行台車の左右一側に複数のPC板を運搬して平積し、これらPC板を保持装置が保持した状態で、アーチ状のガイドレールに沿って保持装置がトンネルの左右他側の側壁位置まで移動し、側壁にPC板を取り付け、これを順次繰り返すことによりトンネルの内壁に6枚のPC板をアーチ状に取り付けることができる。
【0008】
しかし、1台の保持装置により平積みしたPC板を1枚ずつ保持し、取付位置まで移送して取り付けた後、平積み箇所に戻って次にPC板を保持して取付位置まで移送して取り付け、これを繰り返し、1台の保持装置が平積み箇所と取付箇所を往復動する必要があるため、作業に時間を要し、しかも、保持装置が平積み箇所に戻る前にPC板を取付位置に取り付けなければならないため、全体として取付作業に時間を要するという問題がある。
【0009】
さらに、6枚のPC板をアーチ状の取り付けた後、組立装置をトンネル長さ方向に移動して隣りに6枚のPC板をアーチ状に取り付けるため、6枚1組のPC板を取りつける毎に組立装置をトンネル長さ方向に移動し、移動した位置にPC板を平積みにする必要があり、次の位置の取付作業を行うまでに時間を要することが予想される。
【0010】
ところで、トンネルの内壁の施工では、PC板以外にも他の材質のパネルや防水シートなどの取付部材を内壁に取り付ける場合がある。さらに、トンネルの内壁の施工では、斫り作業,削孔作業やアースアンカーの打設作業などが行われ、例えば、既設トンネルの内壁の斫り作業において、専用の斫り装置(例えば特許文献4)が開発されているが、専用の装置であるため、装置が高価となり、また、斫り作業後は斫り装置全体を撤去し、次の作業の装置を準備しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平5-295992号公報
【文献】特開平8-210099号公報
【文献】特開2021-11780号公報
【文献】特公平2-57182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するものであり、トンネル内での施工性に優れたトンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法を提供することを目的とし、加えて、架台の外側で作業を行うことができるトンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、トンネルの内壁の施工に用いるトンネルの施工用架台装置において、前記トンネル内の道路に配置され、内部通路を有する架台と、前記架台の屋根部に設けられた前記トンネル幅方向の案内部材と、前記案内部材に沿ってトンネル幅方向に移動可能に設けられたキャリアと、前記架台の外部の被吊上げ物を吊上げる吊上げ装置とを備え、前記吊上げ装置は、前記屋根部の上方でトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた対をなす移動吊上げ手段を備え、この移動吊上げ手段は索条を巻取り可能であり、前記被吊上げ物は、前記トンネルの内壁に取り付けられ、前記トンネルの内壁のアーチ方向に分割したアーチ形部材であり、前記キャリアは前記案内部材に沿って移動可能な移動部と、この移動部に回動可能に設けられ前記アーチ形部材を着脱可能に取り付ける回動部とを備え、前記吊上げ装置は、前記架台の長さ方向両側の上部に設けられたトンネル幅方向の幅方向レールと、前記両側の前記幅方向レールにトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた両側の長さ方向レールとを備え、前記両側の前記長さ方向レールに前記移動吊上げ手段が移動可能に設けられ、前記幅方向レールのトンネル幅方向他端側は、前記屋根部の位置に比べてトンネル幅方向他側に突出し、前記両側の前記長さ方向レール同士をトンネル長さ方向に離れるように移動させ、前記回動部の回動により前記屋根部上で旋回する前記アーチ形部材に、前記長さ方向レールが干渉しない位置に移動するように構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載のトンネルの施工用架台装置を用いてトンネルの内壁に前記アーチ形部材を取り付ける施工方法であって、道路の幅方向一側寄りに前記架台を配置すると共に、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を設け、前記外部通路の運搬車両から前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、この移送したアーチ形部材を、前記屋根部上の前記キャリアに取り付け、前記キャリアにより前記アーチ形部材を取付位置に配置することを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1記載のトンネルの施工用架台装置を用いてトンネルの内壁に前記アーチ形部材を取り付ける施工方法であって、道路の幅方向一側寄りに前記架台を配置すると共に、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を設け、前記外部通路の運搬車両から前記キャリアに取り付けた前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、前記キャリアにより前記アーチ形部材を取付位置に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の構成によれば、取付部材や施工装置をキャリアに取り付けた状態で、トンネルの内壁の所定位置まで移動し、内壁に取付部材を取り付けたり、施工装置により内壁の施工を行ったりすることができる。
【0017】
また、請求項1の構成によれば、吊上げ装置により架台の外部から被吊上げ物を吊上げることができる。
【0018】
また、請求項1の構成によれば、被吊上げ物に索条を連結し、この索条を巻き取って吊上げ、吊上げた状態で移動吊上げ手段を移動して屋根部の所定位置に被吊上げ物を移送することができる。
【0019】
また、請求項1の構成によれば、回動部にアーチ形部材を取り付けた後、回動部を回動してアーチ形部材の向きを変えることができる。
【0020】
また、請求項1の構成によれば、架台の外部では、アーチ形部材の湾曲方向をトンネル長さ方向に向けることにより、アーチ形部材が道路の幅寸法を取らないように配置し、この湾曲方向がトンネルの長さ方向に長いアーチ形部材を、架台上でトンネルの湾曲方向に合わせて旋回し、アーチ形の内壁に取り付けることができる。このように道路の幅寸法を取らないように湾曲方向をトンネル長さ方向に配置したアーチ形部材を、屋根部上に吊り上げた後、旋回して内壁に取り付けることができる。そして、両側の長さ方向レールがトンネル長さ方向に離れるように移動可能であるから、長さ方向レールがアーチ形ユニット板の旋回の邪魔にならない。
【0021】
請求項2の構成によれば、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を確保し、前記外部通路の運搬車両から前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、架台の外側でアーチ形部材の作業を行うため、取付作業中でも架台の内部の通路により通行を確保することができる。
【0022】
請求項3の構成によれば、道路の幅方向他側に運搬車両の外部通路を確保し、前記外部通路の運搬車両から前記キャリアに取り付けた前記アーチ形部材を前記屋根部に移送し、このように架台の外側でアーチ形部材の作業を行うため、取付作業中でも架台の内部通路により通行を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1を示す施工時のトンネルの断面図である。
【
図3】同上、中央のアーチ形ユニット板を吊上げた状態の全体斜視図である。
【
図4】同上、中央のアーチ形ユニット板のアーチ方向をトンネル長さ方向に沿って旋回した後の全体斜視図である。
【
図5】同上、中央のアーチ形ユニット板の組立体の斜視図である。
【
図6】同上、側部のアーチ形ユニット板の組立体の斜視図である。
【
図7】同上、キャリア用の架台本体の上部の斜視図である。
【
図9】同上、架台の下端側の断面図であり、
図7(A)は脚部の車輪を降下した状態、
図7(B)は車輪を脚部内に収納した状態を示す。
【
図10】同上、アーチ形ユニット板の吊上げ作業を示す断面図である。
【
図11】同上、組立体の吊上げ作業を示す断面図である。
【
図12】本発明の
参考例
1を示すアーチ形ユニット板の持ち上げ作業を示す断面図である。
【
図13】本発明の
参考例
2を示す組立体の吊上げ作業を示す断面図である。
【
図14】同上、中央のアーチ形ユニット板の組立体の斜視図である。
【
図15】本発明の実施例
2を示す組立体の吊上げ作業を示す断面図である。
【
図16】本発明の
参考例
3を示す既設トンネルの上部の斫り作業を示す断面図である。
【
図17】同上、トンネルの側部の斫り作業を示す断面図である。
【
図18】本発明の実施例
3を示す施工時のトンネルの断面図である。
【
図19】同上、幅方向レールの端部の正面図である。
【
図21】本発明の実施例
5を示す幅方向レールの端部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規なトンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法を採用することにより、従来にないトンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法が得られ、そのトンネルの施工用架台装置とこれを用いた施工方法について記述する。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
図1~
図11は本発明の実施例1を示し、トンネル1のアーチ形の内壁2に、左右の側部アーチ形ユニット板11,11と、中央アーチ形ユニット板12とが略半円アーチ形に取り付けられ、それらアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11は、プレキャスト製である。尚、アーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11はPC鋼材(図示せず)で緊張したプレストレストコンクリート製でもよい。
【0026】
この例ではトンネル1の内壁2のアーチ方向に3分割したアーチ形ユニット板11,12,11を用いている。また、アーチ形部材たる3枚1組のアーチ形ユニット板11,12,11は、トンネル長さ方向の幅が等しく、アーチ形の湾曲方向の寸法も略等しく形成されている。尚、アーチ形ユニット板11,12,11の幅は、全組が同じ幅でなくてもよく、また、アーチ形ユニット板11,12,11は、そのアーチ形の湾曲方向の寸法も異なっていてもよい。
【0027】
前記トンネル1内の道路3の左右両側には、側壁コンクリート4,4が設けられ、これら左右の側壁コンクリート4,4上に前記左右のアーチ形ユニット板11,11の下縁11F,11Fが連結され、それら左右のアーチ形ユニット板11,11の上縁に、前記中央アーチ形ユニット板12の両端縁が固定される。尚、この例の道路3は左右の二車線3L,3Rを有するが、道路3は3車線以上でもよい。
【0028】
前記中央アーチ形ユニット板12の両側縁には、トンネル長さ方向中央に凹部13が形成されている(
図5)。また、前記左右のアーチ形ユニット板11の上側縁には、前記凹部13に嵌合する凸部14が形成され(
図6)、前記側壁コンクリート4の上縁に連結されるアーチ形ユニット板11の下縁11Fは直線状に形成されている。尚、凹部13と凸部14が無くてもよい。
【0029】
前記アーチ形ユニット板11,12の施工には施工用架台装置20が用いられ、この架台装置20は、複数のアーチ形ユニット板11,12,11をアーチ形に組み立ててトンネル1の内壁2に取り付けるために用いられる。また、前記架台装置20の架台21は、キャリア用の架台本体22を備え、この架台本体22は、トンネル1のアーチ形の内壁2に対応したアーチ形をなす屋根部23と、この屋根部23の幅方向両側を支える左右の支持部24,24とを一体に備える。尚、前記屋根部23はトンネル幅方向に湾曲し、支持部24はトンネル長さ方向に設けられている。
【0030】
前記架台本体22の前記屋根部23は、金属板などからなり、トンネル1内の道路3の上部を覆うように設けられ、上方からの落下物が道路3に落下しないように構成されている。また、
図3及び
図4などでは、前記支持部24として、縦壁状のものを図示しているが、屋根部23を支持する支柱(図示せず)を道路3の長さ方向に複数配置したものでもよい。尚、前記架台本体22の内部空間22Kの幅は、前記道路3の車線の幅の2分の1以上の寸法であることが好ましいが、前記道路3の車線の幅の2分の1未満の寸法でもよい。
【0031】
前記屋根部23の上面には、アーチ形のレール25がトンネル1の長さ方向に等間隔で複数設けられている。
図7に示すように、前記レール25は、対をなすレール部材26,26を有し、このレール部材26は、縦片部26Aと横片部26Bとを有する断面略L字形をなし、それらレール部材26,26の縦片部26A,26Aをトンネル長さ方向に間隔を置いて前記屋根部23の上面に固定すると共に、前記横片部26B,26Bの先端間に隙間27を設けている。また、レール25の両端部には、後述する車輪がレール25の長さ方向から挿脱可能な開口部28,28が設けられている(
図7)。尚、この例では、トンネル幅方向他端側(
図1中で右側)の開口部28から車輪を挿脱するから、レール25のトンネル幅方向一端部側には開口部を設けずに閉塞してもよい。
【0032】
尚、レール25の底部は屋根部23により塞がれているが、
図1中の左側に示す屋根部23のない箇所では、レール25は底板部(図示せず)により塞がれた有底構造となる。
【0033】
前記架台装置20は、前記架台本体22において前記アーチ形ユニット板11,12を搬送するキャリア31を備える。
図5~
図7などに示すように、前記キャリア31は、前記レール25に沿って屋根部23の湾曲方向に移動し、前記レール25に沿って移動可能な移動部たる移動ベース部32と、この移動ベース部32に回動可能に設けられた回動部たる回動ベース部33とを備える。また、前記移動ベース部32の上面に回動機構34を設け、この回動機構34により前記回動ベース部33を前記移動ベース部32に回動可能に連結している。前記移動ベース部32は略正方形形状で板状をなし、前記回動ベース部33は略長方形形状で板状をなす。
【0034】
尚、人力により移動ベース部32に対して回動ベース部33が回動することができ、或いは前記回動機構34に、動力源を用いた図示しないモータなどの回動駆動手段(図示せず)を設け、電動により移動ベース部32に対して回動ベース部33が回動してもよい。
【0035】
前記移動ベース部32は、隣接する3本の前記レール25,25,25に沿って移動し、3本のレール25,25,25の中央のレール25に沿って移動する中央車輪35と、この中央車輪35が先端側に回動可能に取り付けられた中央脚部36と、前記中央のレール25を両側から挟む位置に配置された外側のレール25,25に沿って移動する外側車輪37,37と、これら外側車輪37,37が先端側に回動可能に取り付けられ、前記移動ベース部32に固定した外側脚部38,38とを備える。
【0036】
前記移動ベース部32の下面で該移動ベース部32の移動方向の一側には、前記中央のレール25に対応して前記中央脚部36の基端側が固定され、この中央脚部36の先端側には、前記移動方向と交差方向の軸を中心として、前記中央車輪35が回動可能に設けられている。尚、前記中央車輪35は、前記移動ベース部32の前記交差方向の中央側に配置されている。
【0037】
前記移動ベース部32の下面で前記移動方向の他側には、前記外側のレール25に対応して前記外側脚部38の基端側が固定され、この外側脚部38の先端側には、前記交差方向の軸を中心として、前記外側車輪37が回動可能に設けられている。尚、前記外側車輪37は、前記移動ベース部32の前記交差方向の両側に配置されている。
【0038】
また、前記中央車輪35と外側車輪37の少なくとも一方を動力源により駆動する移動手段たる駆動輪としてもよい。例えば、中央車輪35を駆動輪にしたら、前記レール25にラック(図示せず)を設け、このラックに中央車輪35が噛み合うように構成することができる。
【0039】
前記回動ベース部33の上面には、前記交差方向の両側位置に、対をなす伸縮駆動杆41,41Aの基端側が連結されると共に、それら伸縮駆動杆41,41Aが交差するように配置され(
図5及び
図6)、それら対をなす伸縮駆動杆41,41Aを前記移動方向に間隔を置いて二対設けており、それら伸縮駆動杆41,41Aは流体圧シリンダなどからなる。また、前記伸縮駆動杆41,41Aの杆本体42の基端側を枢軸42Jにより前記回動ベース部33の上面に回動可能に連結し(
図7)、前記杆本体42の先端には伸縮杆43が伸縮可能に設けられ、その伸縮杆43の先端側を枢軸43Jにより取付手段たる帯板44に回動可能に連結している(
図5及び
図6)。そして、前記伸縮駆動杆41,41A,41,41Aが、伸縮手段であって、キャリア31に取り付けた取付部材たるアーチ形ユニット板11,12,11をトンネル1の内壁2に向かって進退する手段であり、アーチ形ユニット板11,12,11を該内壁2に近付けたり、離したりすることができる。
【0040】
また、
図5及び
図6に示すように、前記帯板44はアーチ形ユニット板11,12の幅方向(トンネル長さ方向)に長く形成され、前記枢軸42J,43Jはアーチ形ユニット板11,12の幅方向に配置され、枢軸43J,43Jを中心に帯板44が揺動することにより、両側の帯板44,44同士が異なる角度でアーチ形ユニット板11,12の内面に添うことができる。そして、前記帯板44は、該帯板44の透孔(図示せず)に挿通した固定部材たるネジ手段(図示せず)を前記アーチ形ユニット板11,12に螺合することにより、アーチ形ユニット板11,12に着脱可能に固定される。
【0041】
前記移動ベース部32及び回動ベース部33の幅は、前記アーチ形ユニット板11,12の幅に比べて狭く形成されており、前記帯板44,44をアーチ形ユニット板11,12に取り付けた状態で、アーチ形ユニット板11,12の下から移動ベース部32及び回動ベース部33が食み出さないように構成されている。
【0042】
従って、キャリア31を取り付けた3本のレール25,25,25に隣り合う3本のレール25,25,25に、キャリア31を取り付けても、トンネル長さ方向に隣り合うキャリア31,31同士が干渉することが無い。
【0043】
また、
図3及び
図4に示すように、前記架台21は、前記架台本体22の長さ方向両側に、それぞれ作業用の架台本体51,51を備える。この架台本体51は、横方向の作業屋根部52と、この作業屋根部52の幅方向両側を支える左右の作業支持部53,53とを一体に備える。また、前記作業屋根部52は、金属板などからなり、平坦に形成されており、道路3の上部を覆うように設けられ、上方からの落下物が道路3に落下しないように構成されている。また、前記作業支持部53は前記支持部24と道路3の長さ方向に並んでいる。また、
図3及び
図4などでは、前記作業支持部53として、縦壁状のものを図示しているが、作業屋根部52を支持する支柱(図示せず)を道路3の長さ方向に複数配置したものでもよい。尚、前記架台本体51の内部空間51Kの幅は、前記内部空間22Kと同一幅であって、前記道路3の車線の幅以上とすることが好ましい。そして、前記架台21をトンネル1内の道路3に配置した場合、前記内部空間51K,22K,51Kにより、車両が走行可能な架台21の内部通路5が形成される。
【0044】
図9に示すように、前記支持部24及び作業支持部53の下端には移動用の車輪56が設けられており、この車輪56は旋回可能に設けられると共に、全方向で向きを固定することができ、この例では道路3の長さ方向に移動する際は前後向きに固定され、道路3の幅方向に移動する際は左右向きに固定される。また、前記車輪56は、昇降手段たる流体圧シリンダ57により、前記支持部24及び作業支持部53の下端から出没自在に設けられている。
【0045】
従って、複数の車輪56を降下して道路3に接地し、移動方向に車輪56を向け、架台装置20を引っ張る又は押すことにより移動することができ、移動した位置で、車輪56を収納して前記支持部24及び作業支持部53を道路3に接地し、架台装置20を道路3に固定することができる。
【0046】
図3及び
図4などに示すように、前記架台装置20には、移送手段たるクレーン装置61が設けられている。このクレーン装置61は、両側の架台本体51,51の上部にトンネル幅方向の一対の幅方向レール62,62をトンネル長さ方向に間隔を置いて配置し、それら一対の幅方向レール62,62はH形鋼などからなり、作業屋根部52に立設した支柱54,54により該作業屋根部52上に横方向に配置されている。
【0047】
また、両側の架台本体51,51には、対をなすトンネル長さ方向に長い長尺スライド杆たる長さ方向レール63,63を設け、これら長さ方向レール63,63は、H型鋼などからなり、前記対をなす幅方向レール62,62上に連結体64によりトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に取り付けられている。尚、幅方向レール62のトンネル幅方向他端側(
図1中で右側)は、屋根部23の位置に比べてトンネル幅方向他端側に突出している。
【0048】
また、前記長さ方向レール63,63の外端側には、ウエート63W,63Wが設けられているから、内端側の移動吊上げ手段65により重量物を安定して吊上げることができる。
【0049】
そして、
図8に示すように、前記連結体64の上部には、前記長さ方向レール63の下フランジ部63Fにスライド可能に連結した上連結部64Uが設けられ、前記連結体64の下部には、前記幅方向レール62の上フランジ部62Fにスライド可能に連結した下連結部64Sが設けられている。
【0050】
尚、必要に応じて、前記連結体64内に駆動輪などの移動手段(図示せず)を設け、この電動などの動力源を用いる移動手段により、前記長さ方向レール63,63をトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動するように構成してもよい。
【0051】
また、両側の長さ方向レール63,63は、トンネル幅方向の位置を合わせ、それらの中央側端部63T,63Tを突き合わせることにより、トンネル長さ方向に連続して並んだ梁状となる。さらに、各長さ方向レール63,63の内端側には、移動吊上げ手段65がそれぞれ設けられ、この移動吊上げ手段65は、前記長さ方向レール63の前記下フランジ部63Fに吊設部66により移動可能に吊設されると共に位置固定可能に設けられ、或いは、前記長さ方向レール63の前記下フランジ部63Fに移動吊上げ手段65を固定してもよい。
【0052】
尚、必要に応じて、その吊設部66に内蔵した電動などの動力源を用いる移動手段たる駆動輪(図示せず)により、前記本体67を長さ方向レール63の長さ方向に沿って移動するように構成してもよい。
【0053】
また、前記吊設部66により吊設された本体67には、電動式又は手動式の巻取り装置たるチェーンブロック(図示せず)を設け、このチェーンブロックに設けたチェーンなどの索条68を、被吊上げ物たる前記アーチ形ユニット板11,12などに連結し、前記巻取り装置により索条68を巻き取ることにより、アーチ形ユニット板11,12を吊上げることができる。この場合、両側の移動吊上げ手段65,65を用いて吊上げる。また、吊上げ手段65により、トンネル1の内壁2の斫り装置などの重量物である被吊上げ物を、架台本体51上に吊り上げることもできる。
【0054】
前記アーチ形ユニット板11,12の外面には、
図3などに示すように、該アーチ形ユニット板11,12の幅方向に間隔を置いて対をなす吊り金具15,15Aが、アーチ形ユニット板11,12の湾曲方向に間隔を置いてそれぞれ設けられている。即ち、アーチ形ユニット板11,12の外面の幅方向両側で湾曲方向両側の4箇所に吊り金具15,15,15A,15Aがインサートにより設けられている。
【0055】
また、前記索条68の先端に、短い連結索条69の基端と、これより長い連結索条69Aの基端を連結し、それら連結索条69,69Aの先端には、前記吊り金具15,15Aに着脱可能に連結する連結具70,70Aが設けられている。また、前記連結索条69,69Aの少なくとも一方である連結索条69Aの途中には、長さ調整手段たるレバーブロック(登録商標)71が設けられている。尚、吊り金具15,15Aは同一構成であり、連結具70,70Aも同一構成である。
【0056】
そして、
図10に示すように、前記屋根部23の幅方向他側に位置固定した斜めのキャリア31に、前記アーチ形ユニット板11,12を取り付ける場合、吊り金具15,15Aに連結具70,70Aを連結すると、連結索条69,69Aの長さの違いにより、アーチ形ユニット板11,12は吊り金具15側が吊り金具15A側より高くなるように斜めに吊上げられ、前記斜めのキャリア31の傾きに合わせることができ、必要に応じてレバーブロック(登録商標)71により長い連結索条69Aの長さを調整することにより、斜めの角度を調整することができる。
【0057】
次に、前記架台装置20を用いたアーチ形ユニット板11,12のトンネル1の内壁2の据付方法について説明する。
図1に示すように、道路3の幅方向一側に架台装置20を設置し、道路3の幅方向他側に運搬車両75の外部通路6を確保する。この外部通路6は、運搬車両75が通過可能な幅を有する。
【0058】
図10に示したように、予め1台目のキャリア31を屋根部23の幅方向他側に位置固定しておく。この位置固定作業は、架台21の内部空間22Kを使用しないから、道路3は内部通路5を用いた片側通行を確保することができ、全てのレール25を用いたアーチ形部材の内壁2の取付作業が終わるまで、片側通行を確保できる。尚、キャリア31とアーチ形部材を別々に吊上げる場合、1台目のキャリア31はレール25から外す必要はない。運搬車両75の荷台76に搭載した1枚目のアーチ形ユニット板11に、吊上げ手段65,65の索条68,68を連結する。この際、アーチ形ユニット板11は、その湾曲方向をトンネル長さ方向に向けて荷台76上に載置されていると共に、その幅方向一側縁側が荷台76上に載置されており、
図3に示したように、斜めの状態で垂直方向に吊上げる。この場合、両吊設部66,66のチェーンブロックにより索条68,68を均等に巻き取ってアーチ形ユニット板11を水平に吊上げる。尚、
図3では、アーチ形ユニット板12を吊上げた状態を示すが、アーチ形ユニット板11も同様に吊上げられる。
【0059】
アーチ形ユニット板11を、キャリア31の高さ位置まで垂直に吊上げた後、両側の長さ方向レール63,63をトンネル幅方向の一側(
図10中で右側)に移動し、アーチ形ユニット板11をキャリア31の上に被せ、そのアーチ形ユニット板11の内面に帯板44,44を固定し、キャリア31にアーチ形ユニット板11を取り付けた組立体131を形成する。この場合、連結体64が動力源により駆動する移動手段を有する場合は、この移動手段により長さ方向レール63,63を移動することができ、動力源を用いる移動手段がない場合は、長さ方向レール63を人力で移動する。
【0060】
人力で移動する場合、長さ方向レール63の途中と架台本体51のトンネル幅方向一側の支柱54との間にチェーンなどの索条(図示せず)を設けると共に、前記索条を巻き取る手動式の巻き取り装置たるチェーンブロック(図示せず)により巻き取り、長さ方向レール63をトンネル幅方向一側に移動せしめるようにしてもよい。このように長さ方向レール63の移動は、動力源による移動と、道具を用いた人力による移動と、人力により押したり引っ張ったりする移動を選択することができる。さらに、手動式の巻き取り装置に代えて電動式のチェーンブロックを用いてもよい。
【0061】
このようにしてキャリア31にアーチ形ユニット板11を固定した後、キャリア31の位置固定を解除する。この後、長さレール63,63をトンネル幅方向一側に移動することにより、アーチ形ユニット板11を屋根部23の中央に移動する長さ方向レール63,63を用いた方法と、連結具70,70Aを吊り金具15,15Aから外し、人力により、アーチ形ユニット板11を屋根部23の中央に移動する人力による方法のいずれかを行うことができる。
【0062】
尚、人力による方法を用いる場合は、キャリア31の位置固定を解除する前に、前記組立体131に引張用索条(図示せず)を連結し、組立体131が落ちないように前記引張用索条により保持し、前記位置解除後、前記引張用索条体により組立体131を屋根部23の中央に引っ張り、レール25に沿って組立体131をトンネル1の幅方向一側に移動し、アーチ形ユニット板11を屋根部23の中央側に移動する。この移動にも、チェーンブロックなどの引張手段たる巻き取り装置を用いてもよい。
【0063】
この中央への移動後、屋根部23の中央位置で移動ベース部32をレール25に固定する。この後、回動機構34によりアーチ形ユニット板11を90度回転してアーチ形ユニット板11の向きをトンネル幅方向に向け、据付状態の内壁2の湾曲方向に合わせる(
図4)。
【0064】
架台本体22の上部中央でアーチ形ユニット板11を旋回した後、組立体131をレール25に沿ってトンネル幅方向一側下方に移動すると共に、伸縮駆動杆41,41,41,41を伸縮し、内壁2に対してアーチ形ユニット板11を位置決めし、アーチ形ユニット板11の端部を側壁コンクリート4の上縁に載置して連結する。尚、据付位置で凸部14が上側になるようにアーチ形ユニット板11を回動する。
【0065】
1枚目のアーチ形ユニット板11を運搬してきた運搬車両75は、外部通路6から前方に移動し、次に、2枚目のアーチ形ユニット板12を搭載した運搬車両75が、前進により架台装置20の隣の外部通路6に移動して待機する。
【0066】
1枚目のアーチ形ユニット板11と同様に、2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11の据付では、荷台76から2~3台目のキャリア31,31を屋根部23に吊上げて配置し、1枚目のアーチ形ユニット板11と同様に2~3台目のキャリア31を屋根部23の幅方向他側に位置固定し、この2~3台目のキャリア31に、荷台76から2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11を吊上げて固定して据え付ける据付方法を採用することができるが、以下、別の方法についても説明する。
【0067】
別の方法として、前記2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11を荷台76から屋根部23に吊り上げる前に、2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11にキャリア31を取り付けておく据付方法について説明する。尚、第1~3枚目の全てのアーチ形ユニット板11,12,11を荷台76から屋根部23に吊り上げる前に、アーチ形ユニット板11,12,11にキャリア31を取り付けておいてもよい。
【0068】
アーチ形ユニット板12,11の製造工場や荷台76の上でアーチ形ユニット板12,11にキャリア31と取り付けて組立体131を形成しておく。そして、2台目のキャリア31を屋根部23に配置する場合、
図11に示すように、吊上げ手段65により中央車輪35が外側車輪37,37より上になるようにして組立体131を斜めに吊上げ、まず、中央車輪35を開口部28からレール25内に挿入し、次に、外側車輪37,37を開口部28,28から両側のレール25,25内に挿入する。尚、組立体131を垂直方向に吊り上げる方法と、組立体131をトンネル幅方向一側に移動する方法は、1枚目のキャリア31及びアーチ形ユニット板11と同様である。
【0069】
2枚目の組立体131を屋根部23の幅方中央迄移動し、屋根部23に位置決めし、回動機構34によりアーチ形ユニット板11を90度回転してアーチ形ユニット板11の向きをトンネル幅方向に向け、据付状態の内壁2の湾曲方向に合わせる。そして、伸縮駆動杆41,41A,41,41Aを伸縮し、内壁2に対するアーチ形ユニット板12を位置決めし、アーチ形ユニット板12の端部を隣りのアーチ形ユニット板11に連結する。この場合、1枚目のアーチ形ユニット板11の凸部14が2枚目のアーチ形ユニット板11の凹部13に嵌合するようにする。
【0070】
3枚目のアーチ形ユニット板11も同様に、吊上げる前にキャリア31に固定した組立体131にして吊上げ、屋根部23の幅方向他側に位置固定する。この場合、すでに旋回後の2枚目のアーチ形ユニット板12が屋根部23の中央に位置するため、3枚目のアーチ形ユニット板11をその場で90度旋回する。この際、長さ方向レール63,63が旋回の邪魔になる場合は、両側の長さ方向レール63,63同士がトンネル長さ方向に離れるように移動させ(
図4)、3台目のアーチ形ユニット板11の旋回に長さ方向レール63,63が干渉しない位置に移動する。即ち、2台目のアーチ形ユニット板12が既にトンネル1の中央の内壁2に配置されているため、長さ方向レール63を退避して旋回のためのスペースを確保する。
【0071】
そして、伸縮駆動杆41,41A,41,41Aを伸縮し、内壁2に対して3枚目のアーチ形ユニット板11を位置決めし、アーチ形ユニット板11の端部を隣りのアーチ形ユニット板12及び側壁コンクリート4の上部に連結する。この場合、3枚目のアーチ形ユニット板11の凸部14が2枚目のアーチ形ユニット板11の凹部13に嵌合するようにする。
【0072】
このように3枚のアーチ形ユニット板11,12,11同士を連結してアーチ形構造16を形成すれば、このアーチ形構造16は両側の側壁コンクリート4,4により支持されるから、アーチ形ユニット板11,12,11から各キャリア31,31,31を取り外し、さらに、各キャリア31,31,31を屋根部23から取り外し、例えば、荷台76上にキャリア31,31,31を移送して載置する。
【0073】
取付に使用したレール25,25,25の隣の3本のレール25,25,25を用いて、同様にアーチ形ユニット板11,12,11を内壁2に取り付け、これを繰り返す。また、必要箇所において、アーチ形ユニット板11,12,11をアースアンカー(図示せず)により地山に固定し、内壁2とアーチ形ユニット板11,12,11との間の隙間に裏込め材78を充填する。尚、アースアンカーを用いない場合もある。そして、全てのレール25を使用した後、架台装置20をトンネル長さ方向に移動し、同様に施工を続けることができる。
【0074】
このように本実施例では、請求項1に対応して、トンネル1の内壁2の施工に用いる施工用架台装置20において、トンネル1内の道路3に配置され、内部通路5を有する架台21と、架台21の屋根部23に設けられたトンネル幅方向の案内部材たるレール25と、レール25に沿ってトンネル幅方向に移動可能に設けられたキャリア31と、架台21の外部の被吊上げ物を吊上げる吊上げ装置たるクレーン装置61とを備え、吊上げ装置たるクレーン装置61は、屋根部23の上方でトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた対をなす移動吊上げ手段65,65を備え、この移動吊上げ手段65は索条68を巻取り可能であり、前記被吊上げ物は、トンネル1の内壁2に取り付けられ、トンネル1の内壁2のアーチ方向に分割したアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12であり、キャリア31はレール25に沿って移動可能な移動部たる移動ベース部32と、この移動ベース部32に回動可能に設けられたアーチ形ユニット板11,12を着脱可能に取り付ける回動部たる回動ベース部33とを備え、クレーン装置61は、架台21の長さ方向両側の上部に設けられたトンネル幅方向の幅方向レール62,62と、両側の幅方向レール62,62にトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた両側の長さ方向レール63,63とを備え、両側の長さ方向レール63,63に移動吊上げ手段65,65が移動可能に設けられ、幅方向レール63,63のトンネル幅方向他端側は、屋根部23の位置に比べてトンネル幅方向他側に突出し、両側の長さ方向レール63,63同士をトンネル長さ方向に離れるように移動させ、回動ベース部33の回動により屋根部23上で旋回するアーチ形ユニット板11,12に、長さ方向レール63,63が干渉しない位置に移動するように構成したから、取付部材たるアーチ形ユニット板11,12や施工装置をキャリア31に取り付けた状態で、トンネル1の内壁2の所定位置まで移動し、内壁2に取付部材を取り付けたり、施工装置により内壁2の施工を行ったりすることができる。また、両側の長さ方向レール63,63がトンネル長さ方向に離れるように移動可能であるから、長さ方向レール63,63がアーチ形ユニット板11,12の旋回の邪魔にならない。
【0075】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、架台21の外部の被吊上げ物たるアーチ形ユニット板11,12を吊上げる吊上げ装置たるクレーン装置61を備えるから、クレーン装置61により架台21の外部からアーチ形ユニット板11,12を吊上げることができる。
【0076】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、吊上げ装置たるクレーン装置61は、架台21に設けられ屋根部23の上方でトンネル長さ方向及びトンネル幅方向に移動可能に設けられた対をなす移動吊上げ手段65,65を備え、この移動吊上げ手段65は索条68を巻取り可能であるから、アーチ形ユニット板11,12に索条68を連結し、この索条68を巻き取って吊上げ、吊上げた状態で移動吊上げ手段65を移動して屋根部23の所定位置にアーチ形ユニット板11,12を移送することができる。
【0077】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、キャリア31は案内部材たるレール25に沿って移動可能な移動部たる移動ベース部32と、この移動ベース部32に回動可能に設けられ運搬物たるアーチ形ユニット板11,12を着脱可能に取り付ける回動部たる回動ベース部33とを備えるから、回動ベース部33にアーチ形ユニット板11,12を取り付けた後、回動ベース部33を回動してアーチ形ユニット板11,12の向きを変えることができる。
【0078】
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、運搬物がトンネル1の内壁2に取り付けるアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12であるから、架台21の外部では、アーチ形ユニット板11,12の湾曲方向をトンネル長さ方向に向けることにより、アーチ形ユニット板11,12が道路3の幅寸法を取らないように配置し、この湾曲方向がトンネル1の長さ方向に長いアーチ形ユニット板11,12を、架台21上でトンネル1の湾曲方向に合わせて旋回し、アーチ形の内壁2に取り付けることができる。このように道路3の幅寸法を取らないように湾曲方向をトンネル長さ方向に配置したアーチ形ユニット板11,12を、屋根部23上に吊り上げた後、旋回して内壁2に取り付けることができる。
【0079】
このように本実施例では、請求項2に対応して、請求項1記載のトンネル1の施工用架台装置20を用いてトンネル1の内壁2にアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11を取り付ける施工方法であって、道路3の幅方向一側寄りに架台21を配置すると共に、道路3の幅方向他側に運搬車両75の外部通路6を設け、外部通路6の運搬車両75からアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11を屋根部23に移送し、この移送したアーチ形ユニット板11,12,11を、屋根部23上のキャリア31に取り付け、キャリア31によりアーチ形ユニット板11,12,11を取付位置に配置するから、道路3の幅方向他側に運搬車両75の外部通路6を設け、外部通路6の運搬車両75からアーチ形ユニット板11,12,11を屋根部23に移送し、このように架台21の外側でアーチ形ユニット板11,12,11の作業を行うため、取付作業中でも架台21の内部通路5により通行を確保することができる。
【0080】
このように本実施例では、請求項3に対応して、請求項1記載のトンネル1の施工用架台装置20を用いてトンネル1の内壁2にアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11を取り付ける施工方法であって、道路3の幅方向一側寄りに架台21を配置すると共に、道路3の幅方向他側に運搬車両75の外部通路6を設け、外部通路6の運搬車両75からキャリア31に取り付けたアーチ形ユニット板11,12,11を屋根部23に移送し、キャリア31によりアーチ形ユニット板11,12,11を取付位置に配置するから、道路3の幅方向他側に運搬車両75の外部通路6を設け、外部通路6の運搬車両75からキャリア31に取り付けたアーチ形ユニット板11,12,11を屋根部23に移送し、このように架台21の外側でアーチ形ユニット板11,12,11の作業を行うため、取付作業中でも架台21の内部通路5により通行を確保することができる。
【0081】
以下、実施例上の効果として、トンネル1の内壁2のアーチ方向に複数に分割した形状を有するアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11を用い、それら複数のアーチ形ユニット板11,12,11をアーチ形に組み立ててトンネル1の内壁2に取り付けるためのアーチ形ユニット板11,12,11の施工用架台装置20において、トンネル1内の道路3に配置され、内部通路5を有する架台21と、架台21の屋根部23に設けられたトンネル幅方向の案内部材たるレール25と、レール25に沿ってトンネル幅方向に移動可能に設けられ、アーチ形ユニット板11,12,11を着脱可能に取り付ける複数のキャリア31,31,31とを備えるから、複数のキャリア31,31,31を用い、キャリア31にアーチ形ユニット板11を取り付けた状態で取付位置まで移動し、次のキャリア31も同様にアーチ形ユニット板12を取り付けた状態で次に取付位置まで移動し、複数のキャリア31,31,31によりアーチ形ユニット板11,12,11を取付位置に移送してトンネル1の内壁2に取り付けることができる。
【0082】
アーチ方向に複数に分割したアーチ形部材たるアーチ形ユニット板11,12,11と同数である3つキャリア31,31,31を備えるから、全てのアーチ形ユニット板11,12,11を取付位置に移送してアーチ形ユニット板11,12,11同士を連結してアーチ形構造16を形成したら、キャリア31を取り外すことができ、1枚ずつ取り付ける必要がなく、連続して移送・取付作業を行うことができる。この場合、3つを超える4つ以上のキャリア31を備えていてもよい。
【0083】
トンネル1の内壁2のアーチ方向に3分割した形状を有するアーチ形ユニット板11,12,11を用いており、これに対して2分割のアーチ形部材では架台21と内壁2との間にスペースの無い現場ではアーチ形部材を旋回することができず、4分割のアーチ形部材では取付箇所が多くなるため、3分割を採用することにより、施工を効率よく行うことができる。また、左右のアーチ形ユニット板11の上側縁には、中央のアーチ形ユニット板12の端部の凹部13に嵌合する凸部14が設けられているから、凸部14と凹部13の嵌合により、アーチ方向に隣合うアーチ形ユニット板11,12を位置決めを容易に行うことができる。さらに、レール25の端部には、車輪35,37が挿脱可能な開口部28が設けられているから、キャリア31をレール25に着脱可能に設けることができ、例えば、外して外部の荷台76などでキャリア31にアーチ形ユニット板11,12,11を取り付けることができる。
【0084】
キャリア31には、レール25に沿って移動する移動ベース部32に、回動ベース部33を回動可能に設けたから、道路3の幅方向のスペースを取らないように、運搬車両75の荷台76に、アーチ方向をトンネル長さ方向に向けて積んだアーチ形ユニット板11,12を、屋根部23に移送した後、トンネル幅方向に旋回してアーチ状の内壁2に取り付けることができる。また、キャリア31は、移動方向一側に中央車輪35を設けると共に、移動方向他側の両側に2つの外側車輪37,37を有するから、必要最小限の数で安定した移動が可能となる。さらに、屋根部23には、車輪35,37,37の2倍以上で、好ましくは車輪の数の2以上の整数倍のレール25を備えるから、架台21を動かさずに、複数のアーチ形構造16を連続して施工することができ、施工性に優れたものとなり、また、この際、トンネル長さ方向に隣り合うキャリア31,31同士が干渉しないようにキャリア31が構成されている。
【0085】
前記架台21は、前記架台本体22の長さ方向両側に、それぞれ作業用の架台本体51,51を備えるから、作業用の架台本体51の作業屋根部52に施工に必要な重量物などを載置したり、クレーン装置61の幅方向レール62などを設けたりすることができる。また、クレーン装置61は、幅方向レール62に長さ方向レール63を、トンネル長さ方向及び幅方向移動可能に設け、その長さレール63に移動吊上げ手段65を設けたから、狭いトンネル1内で移動吊上げ手段65を自由に移動させることができる。さらに、トンネル長さ方向に隣り合う長さ方向レール63,63を備えるから、運搬吊上げ作業を自由に行うことができる。また、人力によりチェーンブロックを用いる場合、支柱54にチェーンブロックを連結して使用することができる。
【0086】
キャリア31にアーチ形ユニット板11,12を取り付けた組立体131を、屋根部23に移送するから、施工性に優れたものとなり、特に、トンネル1内に搬送する前に組立体131を形成することにより、トンネル1内での作業を削減することができる。また、クレーン装置61は、支柱54及び幅方向レール62などを備え、これらにチェーンブロックなどの引張手段を連結して人力で長さ方向レール63などを移動することができる。さらに、トンネル長さ方向両側に対をなす長さ方向レール63,63を備え、これら対をなす長さ方向レール63,63がトンネル長さ方向に離れるように移動可能であるから、アーチ形ユニット板11の旋回の邪魔にならない。
[参考例1]
【0087】
図12は本発明の
参考例
1を示し、前記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例の架台装置20には前記クレーン装置61を設けておらず、持上げ装置81を用いている。
【0088】
前記持上げ装置81は、前記荷台76に該荷台76の幅方向の案内部材たるレール82を設け、このレール82に沿って本体83を移動可能に設けている。この場合、前記本体83に駆動輪などの移動手段(図示せず)を設け、この電動などの動力源を用いる移動手段により、前記本体83が移動するように構成してもよい。
【0089】
また、前記本体83は、前部に立設した支柱84と、後部に設けたウエート85を備え、前記支柱84の前部に昇降載置受け部たるフォーク86を昇降可能に設けている。この場合、動力源を用いる図示しない昇降駆動手段により、前記フォーク86を昇降するように構成してもよい。尚、本体83は前記レール82から取り外しが可能であり、レール72から本体83を取り外せば、荷台76上にはレール82のみが残り、本体83が積み荷の邪魔にならない。
【0090】
図12に示すように、予め1台目のキャリア31を屋根部23の幅方向他側に位置固定しておく。斜めのキャリア31に対応して、前記フォーク86上にアーチ形ユニット板11を斜めに載置する。この場合、三角形の治具87をフォーク86に設け、その治具87によりアーチ形ユニット板11を斜めに支持する。
【0091】
そして、フォーク86によりアーチ形ユニット板11をキャリア31の高さまで持ち上げ、この高さ位置で本体83を前進してアーチ形ユニット板11をキャリア31に被せ、キャリア31にアーチ形ユニット板11を固定する。
【0092】
この固定後、実施例1と同様に、人力により、アーチ形ユニット板11を屋根部23の中央に移動し、この中央でアーチ形ユニット板11を90度旋回し、アーチ形ユニット板11をトンネル幅方向一側下方に移動すると共に、伸縮駆動杆41,41A,41,41Aを伸縮し、内壁2に対するアーチ形ユニット板11を位置決めし、アーチ形ユニット板11の端部を側壁コンクリート4の上縁に連結する。
【0093】
1枚目のアーチ形ユニット板11と同様に、2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11の据付では、荷台76から2~3台目のキャリア31,31を屋根部23に持上げ装置81により持ち上げて配置し、1枚目のアーチ形ユニット板11と同様に2~3台目のキャリア31を屋根部23の幅方向他側に位置固定し、この2~3台目のキャリア31に、荷台76から2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11を吊上げて固定して据え付ける据付方法を採用することができるが、以下、別の方法も説明する。
【0094】
別の方法として、前記2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11を荷台76から屋根部23に吊り上げる前に、2~3枚目のアーチ形ユニット板12,11にキャリア31を取り付けておき、その組立体131,131を斜めにフォーク86に支持し、持上げ装置81により持ち上げ、実施例1と同様に、屋根部23のレール25,25,25,25に車輪37,35,37を連結し、組立体131を屋根部23の幅方向一側にする。尚、第1~3枚目の全てのアーチ形ユニット板11,12,11を荷台76から屋根部23に吊り上げる前に、アーチ形ユニット板11,12,11にキャリア31を取り付けておいてもよい。
【0095】
2枚目の組立体131を屋根部23の幅方中央迄移動し、屋根部23に位置決めし、回動機構34によりアーチ形ユニット板11を90度回転してアーチ形ユニット板11の向きをトンネル幅方向に向け、据付状態の内壁2の湾曲方向に合わせ、伸縮駆動杆41,41,41,41を伸縮し、内壁2に対するアーチ形ユニット板12を位置決めし、アーチ形ユニット板12の端部を隣りのアーチ形ユニット板11に連結する。
【0096】
3枚目の組立体131を屋根部23の幅方他側で90度旋回し、アーチ形ユニット板11の向きをトンネル幅方向に向け、伸縮駆動杆41,41,41,41を伸縮し、内壁2に対するアーチ形ユニット板12を位置決めし、アーチ形ユニット板12の端部を隣りのアーチ形ユニット板11に連結する。
【0097】
また、参考例上の効果として、荷台76から屋根部23にアーチ形ユニット板11,12,11を移送する移送手段として持上げ装置81を用いるから、架台装置20に設けるクレーン装置61が不要となる。また、持上げ装置81はレール82に沿って本体83が荷台76の幅方向に移動し、本体83の前部に支柱84を備えるから、本体83のトンネル長さ方向の位置を調整するには、運搬車両75を前後に移動し、本体83のトンネル1幅方向の位置を調整するには、本体83をレールに沿って移動することにより、フォーク86を位置合わせすることができる。
[参考例2]
【0098】
図13及び
図14は本発明の
参考例
2を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例の架台装置20には前記クレーン装置61を設けておらず、吊上げ手段(移送手段)として前記持上げ装置81を用いており、運搬車両75の荷台76上でキャリア31にアーチ形ユニット板11,12を取り付けた後、一体化したキャリア31とアーチ形ユニット板11,12を吊上げる。
【0099】
また、
図13に示すように、前記レール25の端部を、下方に延長して前記支持部24の外面側に添う縦方向のレール縦部25Tを設けており、このレール縦部25Tの下端に前記開口部28が設けられている。また、レール25は、屋根部23の湾曲状のレール湾曲部25Wとレール縦部25Tとの間にレール屈曲部25Kが設けられている。
【0100】
図14に示すように、前記中央脚部36は前記移動方向と交差方向の回転中心軸36Jを中心に回動可能に設けられ、且つ、角度設定手段(図示せず)により前記移動ベース部32に対して前記中央脚部36を所定角度で固定可能に構成されている。そして、前記中央脚部36は前記外側脚部38より長く形成されている。
【0101】
そして、前記持上げ装置81のフォーク86により、キャリア31と共に幅方向を縦向きにしたアーチ形ユニット板11を下から支持するようにして持ち上げ、上側の中央車輪35を開口部28からレール縦部25Tに挿入し、次に外側車輪37,37を両側のレール縦部25T,25Tの開口部28,28からレール縦部25T,25Tに挿入する。
【0102】
そして、3本のレール25,25,25のレール縦部25T,25T,25Tに車輪35,37,37を挿入し、さらに、組立体131を持ち上げる。そして、中央車輪35がレール屈曲部25Kから屋根部23上のレール25に移動する際、中央車輪35が移動ベース部32から離れるように中央脚部36を回動することにより、移動ベース部32がレール屈曲部25Kなどに当たることなく、キャリア31が屋根部23上に移動することができ、外側車輪37,37が屋根部23上のレール25に移動したら、移動ベース部32に中央車輪35を近付けるように中央脚部36を回動して位置固定する。
【0103】
以下、参考例上の効果として、前記レール25の端部を、下方に延長して前記支持部24の外面側に添う縦方向のレール縦部25Tを設けたから、キャリア31を縦向きにして垂直に持ち上げ、レール25,25,25に車輪35,37,37を簡便に嵌めることができる。また、中央車輪35と外側車輪37,37の一方である中央車輪35の中央脚部36は、他方の固定脚部38より長く、移動方向に交差する方向の軸を中心に回動可能に設けられているから、中央車輪35がレール屈曲部25Kから屋根部23上のレール25に移動する際、中央車輪35が移動ベース部32から離れるように中央脚部36を回動することにより、移動ベース部32がレール屈曲部25Kに当たることなく、レール屈曲部25Kを通過することができる。
【実施例2】
【0104】
図15は本発明の実施例
2を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例ではクレーン装置61によりレール縦部25Tに組立体131を吊り上げる例である。
【0105】
両方の移動吊上げ手段65,65の索条68,68の先端を、組立体131のアーチ形ユニット板11,12の幅方が縦向きになるように、キャリア31に連結し、この状態で、中央車輪35と外側車輪37,37はレール縦部25Tと同一方向に並び、上側の中央車輪35を開口部28からレール縦部25Tに挿入し、次に外側車輪37,37を両側のレール縦部25T,25Tの開口部28,28からレール縦部25T,25Tに挿入する。
【0106】
また、クレーン装置61により、実施例3と同様に、組立体131を吊上げ、レール屈曲部25Kを通過して、屋根部23上のレール25に移送する。
【0107】
このように本実施例では、請求項1~3に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0108】
また、実施例上の効果として、レール縦部25Tを設けることにより、開口部28が比較的低い位置となり、開口部28への車輪35,37の位置合わせが容易となる。
[参考例3]
【0109】
図16及び
図17は本発明の
参考例
3を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例は既設のトンネル1の内壁2にユニット板11,12,11を取り付ける例である。
【0110】
また、実施例3及び4と同様に、前記レール25の端部を、下方に延長して前記支持部24の外面側に添う縦方向のレール縦部25Tを両側に設けており、このレール縦部25Tの下端に前記開口部28が設けられている。
【0111】
さらに、前記中央脚部36は前記移動方向と交差方向の回転中心軸36Jを中心に回動可能に設けられ、且つ、角度設定手段(図示せず)により前記移動ベース部32に対して前記中央脚部36を所定角度で固定可能に構成されている。
【0112】
そして、左右のレール縦部25T,25Tの一方において、いずれも中央車輪35を上側にし、この上側の中央車輪35を開口部28からレール縦部25Tに挿入し、次に外側車輪37,37を両側のレール縦部25T,25Tの開口部28,28からレール縦部25T,25Tに挿入する。
【0113】
図16に示すように、架台装置20をトンネル1の中央に移動し、既設の内壁2の上部の斫り作業を行う場合は、キャリア31の伸縮駆動杆41,41A,41,41Aの先端に、取付部たるベース部90を枢軸43Jにより回動可能に連結し、前記ベース部90に斫り装置91を取り付ける。尚、この例では
図13に示すように、帯板44を前記ベース部90に着脱可能に取り付けている。また、左右の支持部24,24と内壁2の下壁部2T,2Tとの間にトンネル1の幅方向の支持梁などの支持体92,92を設ける。
【0114】
前記斫り装置91は、斫り用の突起(図示せず)を複数有する回転ドラム93を備える。そして、レール25に沿ってキャリア31を移動しながら、回転ドラム93により内壁2のコンクリート部分を斫る。また、内壁2の仕上がり曲率に合わせて、キャリア31を移動すると共に、伸縮駆動杆41,41Aによりレール25と回転ドラム93との間隔を調整する。このような既設の内壁2の斫り作業の際、架台装置20は両側から支持体92,92により支持され反力を受けるため、斫り作業を円滑に行うことができる。
【0115】
また、
図17に示すように、内壁2の下壁部2Tを斫る場合は、斫り装置91を配置した側と反対側の支持部24と下壁部2Tとの間に前記支持体92を設け、屋根部23と内壁2との間に前記支持体92を縦方向に設ける。この例では、屋根部23の上部にキャリア31を配置し、前記ベース部90と内壁2との間に支持体92を設け、前記ベース部90を前記帯板44,44に着脱可能に取り付けることにより、前記支持体92を回動ベース部33に着脱可能に取り付けている。
【0116】
また、このように
本参考例では
、トンネル1の施工用架台装置20を用いた施工方法であって、トンネル1が既設トンネルであり、キャリア31に斫り装置91を取り付け、キャリア31を移動して斫り装置91により既設トンネルの上部の内壁2を斫るから、アーチ形ユニット板11,12,11を移送するためのキャリア31を用いてトンネル内壁2の上部の斫り作業を行うことができる。この場合、斫り装置91(
図16)及び支持体92(
図17)は運搬物であって、施工装置でもある。
【0117】
また、参考例上の効果として、トンネル1の内壁2の上部及び両側部のいずれかの斫り作業を行う場合、斫り作業を行う箇所以外は、架台21と内壁2との間に支持体92,92を設けたから、架台装置20の使用時に架台21が支持体92,92により支持されるため、斫り作業を円滑に行うことができる。また、伸縮手段たる伸縮駆動杆41,41Aが伸縮するから、レール25と回転ドラム93との間隔を調整することができる。また、キャリア31に支持体92を取り付け、このキャリア31を屋根部23の上部に移動して配置することにより、トンネル1の上部の内壁2と架台21の間に支持体92を設けることができる。
【実施例3】
【0118】
図18及び
図19は本発明の実施例
3を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例では前記幅方向レール62の両端に伸縮当接端部94,94を設けている。
【0119】
図19に示すように、前記伸縮当接端部94は前記幅方向レール62の端部に雌螺子体95を固定し、この雌螺子体95に幅方向レール62の長さ方向の雄螺子棒96を螺合し、この雄螺子棒96の先端と当接部たる当接板97とを自在継手98により連結している。この自在継手98は前記雄螺子棒96の先端に球体部96Aを一体に設け、前記当接板97の裏面に前記球体部95Aを部分的の挿入する球面状の受け部97Aを設け、球体部96Aに対して、当接板97が前後左右に揺動可能に連結されている。そして、前記雌螺子体95と雄螺子棒96により、幅方向レール62の延長端部たる当接板97の位置を幅方向レール62の端部から離したり近付けたりする伸縮手段を構成している。
【0120】
また、前記当接板97の外面には弾性体たるゴム板99が設けられている。さらに、前記雄螺子棒96には操作部たる取っ手部96Bが設けられており、この取っ手部96Bを用いて雄螺子棒96を雌螺子体95に対して回転することにより当接板97を進退することができ、
図18に示すようにゴム板99を内壁2に当接することができる。
【0121】
このように本実施例では、請求項1~3に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0122】
また、この例では、幅方向レール62の端部に伸縮当接端部94を設け、当接部たる当接板97を内壁2に当接したから、幅方向レール62をトンネル1内に安定して設置することができる。
【実施例4】
【0123】
図20は本発明の実施例
4を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例では伸縮手段の変形例を示す。
【0124】
この例の伸縮手段は、パンタグラフジャッキ100であり、アームトップホルダ101に一対のアームアッパ102,102の先端を回動可能に連結すると共に、一対のアームアッパ102,102をハ字状に配置し、それら一対のアームアッパ102,102の基端に一対のアームロア103,103の先端をナットスクリュ104,104に回動可能に連結すると共に、一対のアームロア103,103を逆ハ字状に配置し、それら一対のアームロア103,103の基端をアームロアホルダ105に回動可能に連結し、前記両ナットスクリュ104,104にスクリュ106を螺合する。
【0125】
前記回動ベース部33の上面には、前記交差方向の両側位置に、前記移動方向に間隔を置いて対をなすパンタグラフジャッキ100,100,100,100を設け、このパンタグラフジャッキ100のアームロアホルダ105を枢軸42Jにより前記回動ベース部33の上面に回動可能に連結し、前記アームトップホルダ101を枢軸43Jにより取付体たる帯板44に回動可能に連結している。
【0126】
前記スクリュ106は電動などの動力源を用いる回転駆動手段(図示せず)や人力により回動され、スクリュ106を一側方向に回転すると、アームトップホルダ101とアームロアホルダ105とが離れ、スクリュ106を他側方向に回転すると、アームトップホルダ101とアームロアホルダ105とが近付く。
【0127】
このように本実施例では、請求項1~3に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0128】
このようにキャリア31に取り付けた取付部材たるアーチ形ユニット板11,12,11をトンネル1の内壁2に向かって進退し、該内壁2に近付けたり、離したりすることができる伸縮手段は、各種タイプのものを用いることができる。
【実施例5】
【0129】
図21は本発明の実施例
5を示し、上記各実施例
及び参考例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述すると、この例では実施例6の伸縮手段の変形例を示す。
【0130】
同図に示すように、この例の伸縮当接端部94は、前記幅方向レール62の端部に、油圧シリンダなどの流体圧シリンダ111の本体112を固定し、この本体112に伸縮自裁に設けた伸縮杆113の先端と前記当接板97とを自在継手98により連結している。この自在継手98は前記伸縮杆113の先端に球体部96Aを一体に設け、前記当接板97の裏面に前記球体部95Aを部分的の挿入する球面状の受け部97Aを設け、球体部96Aに対して、当接板97が前後左右に揺動可能に連結されている。そして、前記流体圧シリンダ111により、幅方向レール62の延長端部たる当接板97の位置を幅方向レール62の端部から離したり近付けたりする伸縮手段を構成している。
【0131】
このように本実施例では、請求項1~3に対応して、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0132】
また、この例では、幅方向レール62の端部に伸縮当接端部94を設け、当接部たる当接板97を内壁2に当接したから、幅方向レール62をトンネル1内に安定して設置することができ、油圧などの動力を用いるから、伸縮作業が容易となる。
【0133】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例及び参考例では、被吊上げ物及び運搬物としてコンクリート製のアーチ形部材,キャリア,斫り装置や支持体などを示したが、アーチ形部材と異なる材質のパネルや防水シートなどの内壁に取り付ける取付部材や、削孔作業やアースアンカーの打設作業に用いる装置などのトンネルの施工に用いるものであれば、アーチ形部材以外は請求項に対応しないが、各種のものを用いることができる。また、アーチ方向に3分割したアーチ形ユニット板を示したが、3分割以外でもよい。また、レールは3本一組で、6本で二組を示したが、三組以上でもよい。さらに、キャリアに3つの車輪35,37,37を設けたが、これに限定されず、レールに係合する車輪は2輪や4輪以上でもよく、レールに係合する車輪が2輪の場合は、他に屋根部の外面などに転送する補助車輪などを設けてもよい。また、斫り装置として、回転ドラム式のものを示したが、ウオータジェット式のものなどでもよい。さらに、架台装置において、移動,回動,駆動などする装置類は、人力でなく、動力源として電気や圧縮空気などの用いて動かすことができるものでもよい。また、レール縦部を設けたレールを用いる場合、レール縦部に車輪を挿入し、レール縦部にキャリアを固定した後、或いはレール湾曲部にキャリアを固定した後、そのキャリアにアーチ形ユニット板を固定してもよい。さらに、実施例では、被吊上げ物を荷台から吊上げるようにしたが、被吊上げ物を外部通路上に置き、この外部通路上の被吊上げ物を吊上げるようにしてもよい。また、幅方向レールの当接板の位置を幅方向レールの端部から離したり近付けたりする伸縮手段としては、実施例で示した流体圧シリンダ以外でも、電動などのモータにより前記伸縮杆が伸びたり縮んだりするものなどでもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 トンネル
2 内壁
3 道路
5 内部通路
6 外部通路(道路側部)
11 側部アーチ形ユニット板(アーチ形部材・被吊上げ物・運搬物)
12 中央アーチ形ユニット板(アーチ形部材・被吊上げ物・運搬物)
20 架台装置
21 架台
23 屋根部
25 レール(案内部材)
31 キャリア
32 移動ベース部(移動部)
33 回動ベース部(回動部)
61 クレーン装置(吊上げ装置)
62 幅方向レール
63 長さ方向レール
65 移動吊上げ手段
68 索条
75 運搬車両
91 斫り装置(被吊上げ物・運搬物)
92 支持体(運搬物)