(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】イブプロフェンエステル系プロドラッグ、医薬組成物、調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
C07C 69/96 20060101AFI20240221BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240221BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C07C69/96 Z CSP
A61K31/216
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021577868
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2021102752
(87)【国際公開番号】W WO2022033202
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】202010815093.9
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520099508
【氏名又は名称】南京海融医薬科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】叶海
(72)【発明者】
【氏名】閔涛
(72)【発明者】
【氏名】呂田
(72)【発明者】
【氏名】周文亮
(72)【発明者】
【氏名】陳星燃
(72)【発明者】
【氏名】馮雲慶
(72)【発明者】
【氏名】莫美玲
(72)【発明者】
【氏名】王佳琳
【審査官】中村 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-112944(JP,A)
【文献】特表2008-546717(JP,A)
【文献】国際公開第2011/017634(WO,A1)
【文献】特表2014-509613(JP,A)
【文献】国際公開第2016/054805(WO,A1)
【文献】特表2020-509005(JP,A)
【文献】特開平04-364171(JP,A)
【文献】BEN-SHABAT, S. et al.,Synthesis of Pendent Carbonate Ester Groups onto Aliphatic Polycarbonates,Journal of Bioactive and Compatible Polymers,2006年,Vol.21, No.5,pp.385-397
【文献】山中 宏 他,光学活性体のプレパレーション・生理活性・利用,季刊 化学総説 光学異性体の分離,1999年06月10日,No.6,pp.8-9,124,212-213
【文献】周東 智,有機医薬分子論,2012年,pp.83-87
【文献】YAO, Y. et al.,Synthesis of Cefpodoxime Proxetil,Chinese Journal of Pharmaceuticals,Vol.39, No.2,2008年,pp.90-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/00
C07C 68/00
A61K 31/00
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物
N9の右旋性鏡像異性体(1位の炭素がS配置の異性体)
である化合物であって、前記右旋性鏡像異性体の構造は以下のとおりであ
る、化合
物。
【化1】
【請求項2】
化合物N9(S)は、以下の化合物N9(S)-1とN9(S)-2との任意比での混合物である、
【化2】
請求項
1に記載の化合
物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載
の化合
物の、薬剤の調製における使用であって、
前記薬剤は、関節リウマチ、腰痛症、偏頭痛、神経痛、肩関節周囲炎、変形性膝関節症のうちの1種以上の疾患の治療、頸肩腕症候群の消炎および/または鎮痛、手術後、外傷後、または抜歯後の鎮痛および/または消炎、急性上気道炎の解熱および/または鎮痛に用いられる、使用。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載
の化合物を含む医薬組成
物であって、前記医薬組成物は
、経口製剤、注射剤、点眼液、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、またはパップ剤であ
る、医薬組成物。
【請求項5】
前記経口製剤は錠剤、カプセル剤、顆粒剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記
注射剤は、脂肪エマルジョン注射剤である、請求項
4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、出願人が2020年8月13日に中国国家知的財産権局に提出した、特許出願番号が202010815093.9で、発明の名称が「イブプロフェンエステル系プロドラッグ、医薬組成物、調製方法および使用」である先行出願に対して、優先権の利益を主張するものであり、該先行出願の全文を引用により本願に援用する。
【0002】
本願は、薬剤分野に属し、具体的には、イブプロフェンエステル系プロドラッグ、その調製方法、使用、および前記イブプロフェンエステル系プロドラッグを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
イブプロフェンとは、化学名が2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸であり、鎮痛、抗炎症、抗リウマチ、解熱等の機能を有し、現在世界中で最も広く使用される非ステロイド系抗炎症剤である。抗炎症鎮痛剤としての臨床応用は、既に30年近くの歴史があり、多くのNSAIDで最も安全で有効であると考えられ、且つ非処方薬であり、痛み段階薬剤で推薦される第1段階の薬剤である。その作用メカニズムは、主に、シクロオキシゲナーゼがアラキドン酸の水素原子を奪うことを阻止することにより、ひいてはアラキドン酸の過酸化を阻止し、最終的にプロスタグランジンおよび血液凝固因子の生成を阻止することである。
【0004】
イブプロフェンの半減期は短く、治療濃度を維持するために頻繁に投与する必要があることで、いくつかの有害反応が発生する。例えば、イブプロフェン経口錠は、胃腸管で薬剤の半減期が短く、バイオアベイラビリティが低いという問題が存在するため、長期間にわたって頻繁に投与する必要があり、胃腸管への副作用を増加させ、腎臓に一定の損傷を与える。これは、イブプロフェンの臨床応用を制限する。
【0005】
イブプロフェンの構造には1つのキラル炭素原子が含まれ、市場における常用のイブプロフェンは、イブプロフェンラセミ混合物(イブプロフェンラセミ混合物には、50%のR-イブプロフェンおよび50%のデキスイブプロフェン(即ち、S-イブプロフェン)が含まれている)である。研究により、R-イブプロフェンの抗炎症解熱鎮痛の作用が弱く、デキスイブプロフェンはR-イブプロフェンより薬効が28倍強く、且つ、R-イブプロフェンは、胃腸管毒性、水ナトリウム貯留、腎臓の灌流低下およびアレルギー反応等の様々な有害反応を引き起こすことが分かった。
【0006】
研究により、S-イブプロフェンは、明らかな高い臨床効果を有することが分かった(Adam et al., J. Pharm. Pharakol、 28、 257およびJamali et al., Pharmac Res. 1988、 5、 44)。ラセミ混合物と比べ、S-異性体は、血液中で速やかに治療濃度に達することができる。ラセミイブプロフェンは抗炎症鎮痛剤として多くの患者により受け入れられているが、ラセミイブプロフェンは、リウマチおよび関節リウマチ等の慢性疾患を治療する有効な薬剤として、長期間にわたって頻繁に大きな投与量で投与すると、胃腸管への副作用を増加させ、更に胃腸出血を引き起こし、腎臓に一定の損傷を与え、その臨床応用は大きく制限される。そのため、単一キラルなS-イブプロフェンを研究する価値がある。
【0007】
現在、市販されているデキスイブプロフェンは、錠剤、カプセル、注射剤および坐剤等のみしかなく、経口製剤は吸収が不均一で、初回通過効果が強く、バイオアベイラビリティが低く、且つ、デキスイブプロフェンの半減期が短く、治療濃度を維持するために頻繁に投与する必要があり、患者コンプライアンスが悪く、且つ、いくつかの有害反応が発生する。現在市販されている注射剤は、静脈投与されるものであり、注射部位に対する刺激性が大きい。従って、新型のデキスイブプロフェン薬剤を研究調製し、その毒副作用を改善して低減することは、該薬剤の臨床応用を拡大する必然的なニーズである。
【0008】
Shanbhagらは、イブプロフェン等のような、カルボキシル基を含むNSAIDsの胃腸管刺激が主に分子におけるカルボキシル基によるものであり、イブプロフェンをプロドラッグに作製することにより、患者コンプライアンスを向上させることができると記述した[J Pharmaceutical Sciences、1992、81(2): 149~154]。イブプロフェンプロドラッグは、主に、カルボキシル基部分をアミド化またはエステル化することに集中し、人体内に加水分解エステラーゼの生物酵素が豊かに含まれているため、イブプロフェンのカルボキシル基をエステル化してイブプロフェンプロドラッグを調製することは、比較的有効な方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、イブプロフェンエステル系プロドラッグ、医薬組成物、調製方法、および使用を提供する。
【0010】
本願において、ラセミイブプロフェンまたはS-イブプロフェンのカルボキシル基を誘導体化し、1シリーズのエステル系プロドラッグを設計して調製し、それを脂肪エマルジョン注射製剤に作製することにより、従来のイブプロフェンの臨床応用に存在するいくつかの問題を克服し、半減期を延長し、安定性を向上させ、薬効を向上させ、または毒副作用を低減する等の目的を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
態様1において、本願は、構造式(1)で示される化合物であるイブプロフェンエステル系プロドラッグ、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはその医薬的に許容される塩の溶媒和物を提供する。
【0012】
【0013】
(構造式(1)において、R1およびR2は同じまたは異なり、それぞれ独立してC1~10アルキル基、C2~10アルケニル基、C2~10アルキニル基、C3~8シクロアルキル基、5~10員ヘテロ環基、C6~10アリール基および5~10員ヘテロアリール基から選ばれ、ここで、前記C1~10アルキル基、C2~10アルケニル基、C2~10アルキニル基、C1~10アルコキシ基、C3~8シクロアルキル基、C3~8シクロアルキルオキシ基、5~10員ヘテロ環基、C6~10アリール基および5~10員ヘテロアリール基は、1つ、2つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8アルコキシ基、C1~10アルキル基で置換されてもよいC6~10アリール基、またはC1~10アルキル基で置換されてもよい5~10員ヘテロアリール基により置換されてもよい。)
【0014】
本願の実施形態によれば、構造式(1)において、R1およびR2は同じまたは異なり、それぞれ独立してC1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、C3~8シクロアルキル基、5~8員ヘテロ環基、C6~8アリール基、および5~8員ヘテロアリール基から選ばれ、ここで、前記C1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、C1~6アルコキシ基、C3~8シクロアルキル基、C3~8シクロアルキルオキシ基、5~8員ヘテロ環基、C6~8アリール基、および5~8員ヘテロアリール基は、1つ、2つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、C1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、C1~6アルコキシ基、C1~6アルキル基で置換されてもよいC6~8アリール基、またはC1~6アルキル基で置換されてもよい5~8員ヘテロアリール基により置換されてもよい。
【0015】
本願の実施形態によれば、構造式(1)において、R1およびR2は同じまたは異なり、それぞれ独立してC1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、およびC3~8シクロアルキル基から選ばれ、ここで、前記C1~6アルキル基、C2~6アルケニル基、C2~6アルキニル基、およびC3~8シクロアルキル基は、1つ、2つまたは複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ基、アミノ基、またはC1~6アルキル基で置換されてもよいフェニル基により置換されてもよい。
【0016】
本願の実施形態によれば、構造式(1)において、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基であり、R2は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0017】
本願の実施形態によれば、構造式(1)で示される化合物は、以下の化合物から選ばれる。
【0018】
【0019】
本願の実施形態によれば、前記構造式(1)で示される化合物は、化合物N2、N6、N9、N10、N18、N19およびそれらの右旋性鏡像異性体(1位の炭素がS配置の異性体)から選ばれることがより好ましい。これらの化合物が人体内で代謝した後の副生成物は、毒性が小さいとともに、速い代謝速度を有し、注射製剤としての開発により適し、投与方式は、皮下注射、筋肉注射、静脈内急速投与、または点滴静脈内投与等であってもよい。化合物N2、N6、N9、N10、N18およびN19の右旋性鏡像異性体は以下に示すとおりである。
【0020】
【0021】
本願の実施形態によれば、前記構造式(1)で示される化合物は、化合物N4、N14、およびそれらの右旋性鏡像異性体(1位の炭素がS配置の異性体)であることが更に好ましい。これらの化合物が人体内で代謝した後の副生成物は、毒性が小さいとともに、代謝速度が遅く、長期徐放製剤としての開発により適する。化合物N4、N14の右旋性鏡像異性体は以下に示すとおりである。
【0022】
【0023】
態様2において、本願は、構造式(1)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、または医薬的に許容される塩の溶媒和物の調製方法を提供し、化合物1と構造式(2)で示される有機カーボネートとを反応させるステップを含む。
【0024】
【0025】
(構造式(2)において、Xは、塩素、臭素、またはヨウ素であり、R1およびR2は、上記定義された意味を有する。)
【0026】
本願の実施形態によれば、化合物1は、ラセミな、S配置またはR配置のイブプロフェンであり、即ち、(±)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸、(S)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸、または(R)-2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸である。
【0027】
本願の実施形態によれば、構造式(1)で示される化合物の調製方法は、化合物1と構造式(2)で示される化合物とを反応させるステップを含み、その反応式は以下のとおりである。
【0028】
【0029】
(ただし、X、R1およびR2は、上記定義された意味を有する。)
【0030】
本願の実施形態によれば、上記構造式(1)で示される化合物の調製方法は、酸結合剤の存在下で行われる。
【0031】
本願の実施形態によれば、構造式(1)で示される化合物の調製方法は、以下のとおりである。
【0032】
イブプロフェンおよび酸結合剤を反応容器に入れ、反応溶剤を加えて混合させた後、構造式(2)で示される化合物
【化7】
(ただし、X、R
1およびR
2は、それぞれ上記X、R
1およびR
2に対して定義された意味を有する。)を反応容器に添加し、添加が終了した後、反応液を撹拌する。その後、反応液を抽出し、洗浄し、有機相を乾燥してから濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物を取得する。
【0033】
本願の実施形態によれば、上記反応ではNaI/KI、相間移動触媒を加えたり、加熱したりすることにより、反応の進行を加速することができる。例えば、構造式(2)で示される化合物におけるXが塩素である場合、このように反応の進行を加速することができる。
【0034】
本願の実施形態によれば、反応温度は-5~80℃であってもよく、反応時間は0.5~24hであってもよく、使用される酸結合剤は、NaOH、KOH、K2CO3、KHCO3、Na2CO3、NaHCO3のような無機塩基、またはトリエチルアミン、ピリジン、DMAP、DIEA、DBUのような有機塩基のうちの1種、2種または複数種であってもよく、反応溶剤は、アセトン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMF、DMAc、またはエチルエーテルのうちの1種、2種または複数種であってもよく、相間移動触媒を使用する場合、テトラブチルアンモニウムブロマイド、18-クラウン6-エーテル等を使用してもよい。
【0035】
態様3において、本願は、構造式(2)で示されるハロゲン化有機カーボネート(Xは塩素またはヨウ素である)の調製方法を更に提供し、前記方法は、以下のステップを含む。まず、有機アルデヒドR1CHO(ただし、R1は、R1に対して定義された意味を有する)とトリホスゲンとを低温反応させてクロロアルキルクロロホルメート中間体を取得し、その後、クロロアルキルクロロホルメートと有機アルコールR2-OH(ただし、R2は、上記R2に対して定義された意味を有する)とを更に反応させて塩素化有機カーボネートを取得し、好ましくは、塩素化有機カーボネートとNaIとを更に反応させてヨウ化有機カーボネートを取得し、その反応式は以下のとおりである。
【0036】
【0037】
(ただし、R1およびR2は、それぞれ上記R1およびR2に対して定義された意味を有する。)
【0038】
本願の実施形態によれば、構造式(2)で示される塩素化有機カーボネート(XはClまたはIである)の調製方法は、以下のステップを含む。
【0039】
ステップ1において、トリホスゲン、酸結合剤および反応溶剤を反応容器に入れ、反応容器を低温環境に置き、N
2の保護下で、アルデヒド系化合物
【化9】
(ただし、R
1は、上記R
1に対して定義された意味を有する)を上記反応容器にゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、0℃でしばらく反応させ続け、その後、減圧下で排気(排除されたガスをアルカリ液で吸収する)し、残液を室温にて減圧下で濃縮して溶剤を除去し、その後、蒸留法によりクロロアルキルクロロホルメートを取得する。
【0040】
ステップ2において、前のステップで得られたクロロアルキルクロロホルメートおよびアルキルアルコールR2-OH(ただし、R2は、上記R2に対して定義された意味を有する)を無水無酸素の反応溶剤を含む反応容器に入れ、0℃の氷浴条件に置き、その中に酸結合剤をゆっくりと添加し、添加が終了した後、反応液を室温まで昇温して撹拌して反応させ続け、その後、反応液を洗浄し、乾燥して減圧下で濃縮した後、構造式(2)(XはClである)の塩素化有機カーボネートを取得する。
【0041】
ステップ3において、N2の保護下で、前のステップで調製された塩素化有機カーボネート、無水NaI、相間移動触媒、または乾燥剤等を反応フラスコに入れ、溶剤を加えて混合した後、加熱反応させ、その後、反応液を室温に降温し、5%~25%のチオ硫酸ナトリウム、水、飽和食塩水で順に洗浄し、乾燥し、濃縮して溶剤を除去した後、または更に蒸留により、構造式(2)(XはIである)のヨウ化有機カーボネートを取得する。
【0042】
本願の実施形態によれば、上記ステップ1、ステップ2およびステップ3において、反応溶剤は、アセトン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、エチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル、DMF、トルエン、テトラヒドロフラン、DMAcのうちの1種、2種または複数種であってもよく、使用される酸結合剤は、ピリジン、トリエチルアミン、DIEA、DBU、またはNaOH、KOH、K2CO3、KHCO3、Na2CO3、NaHCO3等であってもよく、反応時間は0.5~12hであってもよい。ここで、ステップ1に記載の低温環境は-50℃~0℃で、例えば、-40℃~0℃、-30℃~0℃であり、例示的には、-20℃、-2℃である。
【0043】
本願の実施形態によれば、上記ステップ3で使用される相間移動触媒は、18-クラウン-6、テトラブチルアンモニウムブロマイド等であってもよく、反応中に添加可能な乾燥剤は、CaCl2、MgSO4、Na2SO4等であってもよく、反応溶剤は、アセトニトリル、酢酸エチル、DMF、トルエン、テトラヒドロフラン、DMAc等であってもよく、反応温度は25~100℃であってもよく、反応時間は1~12hであってもよい。
【0044】
態様4において、本願は、上記構造式(1)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはその医薬的に許容される塩の溶媒和物の、薬剤の調製における使用を提供する。
【0045】
本願の実施形態によれば、前記薬剤は、関節リウマチ、腰痛症、偏頭痛、神経痛、肩関節周囲炎、変形性膝関節症のうちの1種以上の疾患の治療、頸肩腕症候群の消炎および/または鎮痛、手術後、外傷後、または抜歯後の鎮痛および/または消炎、急性上気道炎の解熱および/または鎮痛に用いられる。
【0046】
本願の実施形態によれば、前記薬剤は非ステロイド性抗炎症薬剤である。
【0047】
態様5において、本願は、上記構造式(1)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、またはその医薬的に許容される塩の溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0048】
本願の実施形態によれば、前記医薬組成物は医薬的に許容される補助材料を更に含む。前記医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等のような経口製剤であってもよいし、注射剤、点眼液、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、またはパップ剤等であってもよい。
【0049】
本願の医薬組成物は、注射により投与できる。注射は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射および経穴注射等を含む。本願の医薬組成物を、注射液、注射乳剤、粉末注射剤等のような注射による投与に適した製剤に作製し、前記注射乳剤は、脂肪エマルジョン注射剤であってもよい。
【0050】
態様6において、本願は、構造式(1)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、または医薬的に許容される塩の溶媒和物、油性物質および乳化剤を含む脂肪エマルジョン注射剤を更に提供する。
【0051】
本願に適した油性物質は注射可能な油脂であり、大豆油、サフラワー油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、ヒマシ油、サジー油、月見草油、トウモロコシ油、ブルセアンチン(Brucea javanicaseed oil)、シソ油、ブドウ種子油、ツバキ油、パーム油、落花生油、中鎖油(中鎖トリグリセリド)、長鎖トリグリセリド、オレイン酸エチル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコールジエステル、リノール酸グリセリル、またはポリエチレングリコールラウリン酸グリセリル、またはそのうちの2種以上の組み合わせから選ばれる。
【0052】
本願の実施形態によれば、前記乳化剤は、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加レシチン、飽和および不飽和C12~18脂肪酸アシルホスファチジルコリンのうちの1種、2種または複数種の組み合わせのような天然乳化剤、卵黄レシチンおよび/または大豆リン脂質、またはツイーン-80、ポロキサマー188、またはそれらの組み合わせのような合成非イオン乳化剤から選ばれる。
【0053】
本願の実施形態によれば、前記脂肪エマルジョン注射剤には、必要に応じて、乳化助剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、安定剤、金属キレート剤等のような他の医薬的に許容される補助材料を加えてもよい。
【0054】
前記乳化助剤は、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、コレステロール、コール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、または卵黄ホスファチジルグリセロール(EPG)、あるいはそのうちの2種または複数種の組み合わせである。
【0055】
前記等浸透圧調整剤は、グリセリン、ソルビトール、グルコース、マルトース、マンニトール、またはプロピレングリコール、あるいはそのうちの2種または複数種の組み合わせから選ばれる。
【0056】
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、リン酸、リン酸塩、クエン酸、クエン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸塩、酢酸、酢酸塩、グリシン、またはリシン、あるいはそのうちの2種または複数種の組み合わせから選ばれ、本願の実施形態によれば、pH調整剤は、pHを5.5~8.5に調整し、好ましくは6.0~8.0に調整する。
【0057】
前記酸化防止剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、またはピロ亜硫酸ナトリウム、あるいはそのうちの2種または複数種の組み合わせから選ばれる。
【0058】
前記安定剤は、オレイン酸、ホスファチジルグリセロール、およびオレイン酸ナトリウムから選ばれる1種、2種または複数種の組み合わせである。
【0059】
前記金属キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(EDTA-Na)であり、特にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩である。
【0060】
本願の実施形態によれば、前記脂肪エマルジョン注射剤は、脂肪エマルジョン注射液または凍結乾燥エマルジョンであってもよい。ここで、前記脂肪エマルジョン注射液は、注射用水を更に含む。前記脂肪エマルジョン注射液を冷凍乾燥して凍結乾燥エマルジョンを取得し、凍結乾燥前に、脂肪エマルジョン注射液に凍結乾燥保護剤を加えてもよく、前記凍結乾燥保護剤は、乳糖、ショ糖、マンニトール、デキストラン20、デキストラン40、デキストラン70、キシリトール、ソルビトール、トレハロースのうちの1種、2種、3種または複数種の組み合わせであってもよい。
【0061】
本願で調製される脂肪エマルジョン注射剤は、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内または筋肉内注射あるいは輸液を含む非経口投与方式で投与されるか、または鞘内もしくは脳室内のような頭蓋内に投与されることが好ましい。1回の投与量が大きい形式で非経口投与してもよいし、連続灌流ポンプのようなものにより投与してもよい。あるいは、鞘内または脳室内のような頭蓋内に投与されてもよい。注射剤の常用容器として、ガラスアンプル、バイヤル、プラスチックアンプル、プレフィルドシリンジ等がある。
【0062】
本願に係る脂肪エマルジョン注射剤は、1mlあたり0.01~400mgの活性成分を含み、好ましくは、1mlあたり5~300mgの活性成分を含み、最も好ましくは、1mlあたり10~200mgの活性成分を含む単位質量の製剤である。
【0063】
本願に係る脂肪エマルジョン注射剤の平均粒径サイズは10~1000nmの範囲にあり、例えば、20~800nmの範囲、30~500nmの範囲、40~400nmの範囲、50~300nmの範囲等にある。
【0064】
態様7において、本願は、前記脂肪エマルジョン注射剤の調製方法を更に提供し、構造式(1)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物、または医薬的に許容される塩の溶媒和物と、油相物質とを均一に混合させ、油相を取得するステップと、任意の乳化助剤、浸透圧調整剤、酸化防止剤、安定剤、金属キレート剤、および凍結乾燥保護剤を適量の注射用水に分散し、水相を取得するステップと、油相、水相および乳化剤を混合させて乳化し、初期エマルジョンを取得するステップと、その後、注射用水で定容し、更に乳化し、pH調整剤を加えてpHを調整し、脂肪エマルジョン注射液を取得するステップとを含む。
【0065】
本願の実施形態によれば、前記脂肪エマルジョン注射剤の調製方法は、前記脂肪エマルジョン注射液を凍結乾燥して凍結乾燥エマルジョンを取得するステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0066】
有益な効果は以下のとおりである。
【0067】
(1)本願は、ラセミイブプロフェンのカルボキシル基を誘導体化し、1シリーズのイブプロフェンのエステル系プロドラッグを設計して調製することにより、イブプロフェンの半減期が短く、安定性が悪く、刺激性および配合等の面に存在する問題を克服する。本願に係る化合物は、in vitro血漿試験により、良好な薬物動態的性質を有することが分かった。且つ、化合物自体の理化学的安定性は高く、例えば、高温試験(60℃にて5~10日間放置する)において化合物の純度はほぼ一定である。
【0068】
(2)イブプロフェンの主な薬理活性がデキスイブプロフェンに由来し、本願は、デキスイブプロフェンを原料として(1S)配置のデキスイブプロフェンエステルプロドラッグを指向的合成し、研究により、デキスイブプロフェンエステルプロドラッグは、R-イブプロフェンプロドラッグより血漿中の加水分解速度が速く、より多くのデキスイブプロフェンを生成することができると発見した。本分野では、R-イブプロフェンによる抗炎症解熱鎮痛の作用が弱く、デキスイブプロフェン(S配置)はR-イブプロフェン(R配置)より薬効が28倍強く、且つ、R-イブプロフェンは、胃腸管毒性、水ナトリウム貯留、腎臓の灌流低下およびアレルギー反応等の様々な有害反応を引き起こすことが知られている。従って、S配置のイブプロフェンエステル系プロドラッグである本願の構造式(1)で示される化合物の右旋性鏡像異性体を研究して調製することは、重要な意義がある。
【0069】
(3)更なる試験により、本願のイブプロフェンエステルプロドラッグの右旋性鏡像異性体が水相、油相で高温80℃にて10日間放置されても、関連物質および異性体はいずれも相対的に高い安定性を保持することができることを発見した。
【0070】
(4)本願で調製される1シリーズのイブプロフェンのエステル系プロドラッグは、その側鎖にカーボネート構造が含まれ、脂溶性を改善し、該構造の化合物は油状物であり、油性物質に溶解して脂肪エマルジョン注射剤に作製することができ、注射は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射および経穴注射等を含む。従来のイブプロフェン等の非ステロイド抗炎症剤による消化管粘膜への損傷を回避し、薬剤のバイオアベイラビリティを向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本願に係る化合物のS配置の異性体のヒト血漿中での分解速度を示す。
【
図2】本願に係る化合物のS配置の異性体がヒト血漿中で代謝してイブプロフェンを産生するレベルを示す。
【
図3】本願に係る化合物N6(S)のヒト血漿中での分解の液相クロマトグラムを示す。
【
図4】本願に係る化合物N9(S)のヒト血漿中での分解の液相クロマトグラムを示す。
【
図5】本願に係る化合物N2(S)のヒト血漿中での分解の液相クロマトグラムを示す。
【
図6】本願に係る化合物N6(S)の水素スペクトルを示す。
【
図7】本願に係る化合物N9(S)の水素スペクトルを示す。
【
図8】デキスイブプロフェンおよびデキスイブプロフェンエステル誘導体N9(S)の注射溶液の血中濃度-時間曲線を示す。
【
図9】デキスイブプロフェン、デキスイブプロフェンエステル誘導体N9(S)、側鎖キラル化合物N9(S)A、N9(S)Bの注射溶液の血中濃度-時間曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、具体的な実施例を参照しながら本願の技術案について更に詳細に説明する。以下の実施例は、本願を例示的に説明して解釈するためのものに過ぎず、本願の保護範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本願の上記内容に基づいて実現される技術は、全て本願の保護しようとする範囲内に含まれる。
【0073】
特に断りのない限り、以下の実施例で使用される原料および試薬は、全て市販品であるか、または既知の方法で調製できるものである。
【0074】
合成の一般式:
【0075】
【0076】
(ただし、X、R1およびR2は、それぞれ上記X、R1およびR2に対して定義された意味を有する。)
【0077】
合成の一般的な方法:
クロロアルキルクロロホルメートを合成する。トリホスゲン、酸結合剤および反応溶剤を反応容器に入れ、反応容器を低温環境に置き、N
2の保護下で、アルデヒド系化合物
【化11】
を上記反応容器にゆっくりと滴下し、添加が終了した後、0℃でしばらく反応させ続け、その後、減圧下で排気(排除されたガスをアルカリ液で吸収する)し、残液を室温にて減圧下で濃縮して溶剤を除去し、その後、蒸留法によりクロロアルキルクロロホルメートを取得する。
【0078】
塩素化有機カーボネートを合成する。前のステップで得られたクロロアルキルクロロホルメートおよびアルキルアルコールR2-OHを、それぞれ無水無酸素の反応溶剤を含む反応容器に入れ、0℃の氷浴条件に置き、その中に酸結合剤(例えば、ピリジン等)をゆっくりと添加し、添加が終了した後、反応を室温に移してしばらく撹拌して反応させ続ける。その後、反応液を洗浄し、乾燥して減圧下で濃縮した後、塩素化有機カーボネート(XはClである)を取得する。
【0079】
ヨウ化有機カーボネートを合成する。N2の保護下で、塩素化有機カーボネート、無水NaI、相間移動触媒、または乾燥剤等を反応フラスコに入れ、溶剤を加えて混合した後、しばらく加熱反応させ、その後、反応を室温に降温し、5%~25%のチオ硫酸ナトリウム、水、飽和食塩水で順に洗浄し、乾燥し、濃縮して溶剤を除去した後、または更に蒸留により、ヨウ化有機カーボネートを取得する。
【0080】
本明細書で使用される略語は、以下の意味を有する。Ar:アルゴンガス、DCM:ジクロロメタン、Py:ピリジン、TATB:トリアミノトリニトロベンゼン、EA:酢酸エチル、DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、PE:石油エーテル。
【0081】
実施例1:化合物N2の合成
【0082】
【0083】
まず、1-クロロエチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、パラアルデヒド(3.49g、26.41mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を2.29g取得し、収率が55%であった。
【0084】
1-クロロエチルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロエチルクロロホルメート(0.776g、8.26mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、イソプロピルアルコール(0.744g、12.39mmol)を秤量して上記反応フラスコに入れ、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.784g、9.91mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.811g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0085】
1-ヨードエチルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロエチルイソプロピルカーボネート(0.811g、4.88mmol)、CaCl2(0.184g、1.66mmol)、TBAB(0.031g、0.10mmol)、NaI(0.614g、4.10mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0086】
N2を合成した。イブプロフェン(0.677g、3.28mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードエチルイソプロピルカーボネート(1.269g、4.92mmol)を加え、DBU(0.449g、2.95mmol)をゆっくりと加え、反応を40℃に移して1h反応させ、保温して2~6h反応させ続けた。反応ではEAおよび水を加え、分液し、EA層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物(0.666g、1.98mmol)を取得し、収率が60.4%であった。
【0087】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.06 (m, 4H), 6.79-6.72 (m, 1H), 4.91-4.75 (m, 1H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.45-2.42(m, 2H), 1.89-1.79 (m, 1H), 1.50-1.47 (m, 5H), 1.41-1.27(m,3H), 1.26-1.20(m, 4H), 0.889 (d, J = 6.6 Hz, 6H)。
ESI-MS m/z =359.1, [M+Na]+.
【0088】
実施例2:化合物N2(S)の合成
【0089】
【0090】
操作は実施例1と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0091】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.06 (m, 4H), 6.79-6.72 (m, 1H), 4.91-4.75 (m, 1H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.45-2.42(m, 2H), 1.89-1.79 (m, 1H), 1.50-1.47 (m, 5H), 1.41-1.27(m,3H), 1.26-1.20(m, 4H), 0.889 (d, J = 6.6 Hz, 6H)。
ESI-MS m/z =359.1, [M+Na]+.
【0092】
実施例3:化合物N4の合成
【0093】
【0094】
まず、1-クロロエチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。パラアルデヒド(3.49g、26.41mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を2.29g取得し、収率が55%であった。
【0095】
1-クロロエチルシクロヘキシルカーボネートを合成した。1-クロロエチルクロロホルメート(0.544g、2.47mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、シクロヘキサノール(0.381g、3.80mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.219g、2.77mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.680g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0096】
1-ヨードエチルシクロヘキシルカーボネートを合成した。1-クロロエチルシクロヘキシルカーボネート(0.680g、2.18mmol)、CaCl2(0.082g、0.74mmol)、TBAB(0.016g、0.05mmol)、NaI(0.274g、1.83mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0097】
N4を合成した。イブプロフェン(0.342g、1.66mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードエチルシクロヘキシルカーボネート(0.815g、2.09mmol)を加え、DBU(0.228g、1.50mmol)をゆっくりと加え、反応を40℃に移して1h反応させ、保温して2~6h反応させ続けた。反応ではEAおよび水を加え、分液し、EA層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物(0.520g、1.65mmol)を取得し、収率が80.3%であった。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.06 (m, 4H), 6.79-6.72 (m, 1H), 4.65-4.49 (m, 1H), 3.71-3.66 (m, 1H), 2.45-2.42 (m, 2H), 1.87-1.70 (m, 5H), 1.49-1.48 (m, 6H), 1.41-1.30 (m, 6H), 0.90-0.88 (m, 6H)。
ESI-MS m/z =399.2, [M+Na]+.
【0099】
実施例4:化合物N6の合成
【0100】
【0101】
まず、1-クロロエチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。パラアルデヒド(3.49g、26.41mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を2.29g取得し、収率が55%であった。
【0102】
1-クロロエチルエチルカーボネートを合成した。1-クロロエチルクロロホルメート(1.026g、10.92mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、エタノール(0.754g、16.38mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(1.037g、13.11mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を1.104g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0103】
1-ヨードエチルエチルカーボネートを合成した。1-クロロエチルエチルカーボネート(1.104g、7.24mmol)、CaCl2(0.274g、2.47mmol)、TBAB(0.047g、0.15mmol)、NaI(0.914g、6.10mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0104】
N6を合成した。イブプロフェン(0.625g、3.03mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードエチルエチルカーボネート(1.110g、4.55mmol)を加え、DBU(0.415g、2.73mmol)をゆっくりと加え、反応を40℃に移して1h反応させ、保温して2~6h反応させ続けた。反応ではEAおよび水を加え、分液し、EA層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物(0.573g、1.78mmol)を取得し、収率が58.7%であった。
【0105】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m, 4H), 6.78-6.72(m, 1H), 4.24-4.08(m, 2H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.44 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 1.89-1.79(m, 1H), 1.43-1.30(m, 6H), 1.26-1.14(m, 3H), 0.82 (d, 6H, J = 6.6 Hz)。
ESI-MS m/z =345.1, [M+Na]+.
【0106】
実施例5:化合物N6(S)の合成
【0107】
【0108】
操作は実施例4と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0109】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m, 4H), 6.78-6.72(m, 1H), 4.24-4.08(m, 2H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.44 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 1.89-1.79(m, 1H), 1.43-1.30(m, 6H), 1.26-1.14(m, 3H), 0.82 (d, 6H, J = 6.6 Hz)。
ESI-MS m/z =345.1, [M+Na]+.
【0110】
実施例6:化合物N7の合成
【0111】
【0112】
まず、1-クロロエチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。パラアルデヒド(3.49g、26.41mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を2.29g取得し、収率が55%であった。
【0113】
1-クロロエチルメチルカーボネートを合成した。1-クロロエチルクロロホルメート(0.660g、7.04mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、メタノール(0.338g、10.56mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.685g、8.66mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.779g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0114】
1-ヨードエチルメチルカーボネートを合成した。1-クロロエチルメチルカーボネート(0.779g、5.64mmol)、CaCl2(0.213g、1.92mmol)、TBAB(0.035g、0.11mmol)、NaI(0.700g、4.67mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0115】
N7を合成した。イブプロフェン(0.590g、2.86mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードエチルメチルカーボネート(0.986g、4.29mmol)を加え、DBU(0.391g、2.57mmol)をゆっくりと加え、反応を40℃に移して1h反応させ、保温して2~6h反応させ続けた。反応ではEAおよび水を加え、分液し、EA層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物(0.508g、1.65mmol)を取得し、収率が57.7%であった。
【0116】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.22-7.08(m, 4H), 6.91-6.74(m, 1H), 4.26-4.11 (d, J = 28.8Hz, 3H), 3.75-3.70 (m, 1H), 2.43 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 1.90-1.77 (m, 1H), 1.52-1.38 (m, 6H), 0.91 (d, 6H, J = 6.6 Hz)。
ESI-MS m/z =309.2, [M+H]+.
【0117】
実施例7:化合物N8の合成
【0118】
【0119】
まず、1-クロロプロピルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、n-プロピオンアルデヒド(4.09g、70.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を6.44g取得し、収率が58.6%であった。
【0120】
さらに、1-クロロプロピルメチルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルクロロホルメート(1.0g、6.41mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、メタノール(0.308g、9.62mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.623g、7.88mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.784g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0121】
1-ヨードプロピルメチルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルメチルカーボネート(0.784g、5.16mmol)、CaCl2(0.184g、1.66mmol)、TBAB(0.031g、0.10mmol)、NaI(0.649g、4.33mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0122】
N8を合成した。イブプロフェン(0.660g、3.20mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードプロピルメチルカーボネート(0.742g、4.88mmol)を加え、また、氷浴条件でDBU(0.434g、2.85mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.775g取得し、収率が75.3%であった。
【0123】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07 (m, 4H), 6.65-6.59 (m, 1H), 4.24-4.09 (d, J = 32.5Hz, 3H), 3.73-3.68(m, 1H), 2.45-2.43 (m, 2H), 1.89-1.68 (m, 3H), 1.51-1.48 (m, 3H), 0.94-0.75 (m, 9H)。
ESI-MS m/z =345.3, [M+Na]+.
【0124】
実施例8:化合物N9の合成
【0125】
【0126】
まず、1-クロロプロピルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、n-プロピオンアルデヒド(4.09g、70.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を6.44g取得し、収率が58.6%であった。
【0127】
さらに、1-クロロプロピルエチルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルクロロホルメート(1.0g、6.41mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、エタノール(0.443g、9.62mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.623g、7.88mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.766g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0128】
1-ヨードプロピルエチルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルエチルカーボネート(0.766g、4.61mmol)、CaCl2(0.174g、1.57mmol)、TBAB(0.027g、0.09mmol)、NaI(0.580g、3.87mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0129】
最後に、N9を合成した。イブプロフェン(0.411g、1.99mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードプロピルエチルカーボネート(0.777g、3.01mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.267g、1.75mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.49g取得し、収率が73.2%であった。
【0130】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m, 4H), 6.65-6.59(m, 1H), 4.24-4.09(m, 2H), 3.73-3.68(m, 1H), 2.45-2.43(m, 2H), 1.89-1.68(m, 3H), 1.51-1.48(m, 3H), 1.33-1.23 (m, 3H), 0.94-0.75(m, 9H)。
ESI-MS m/z =359.2, [M+Na]+.
【0131】
実施例9:化合物N9(S)の合成
【0132】
【0133】
操作は実施例8と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0134】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m, 4H), 6.65-6.59(m, 1H), 4.24-4.09(m, 2H), 3.73-3.68(m, 1H), 2.45-2.43(m, 2H), 1.89-1.68(m, 3H), 1.51-1.48(m, 3H), 1.33-1.23 (m, 3H), 0.94-0.75(m, 9H)。
ESI-MS m/z =359.2, [M+Na]+.
【0135】
実施例10:化合物N10の合成
【0136】
【0137】
まず、1-クロロプロピルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、n-プロピオンアルデヒド(4.09g、70.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を6.44g取得し、収率が58.6%であった。
【0138】
さらに、1-クロロプロピルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルクロロホルメート(1.0g、6.41mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、イソプロピルアルコール(0.578g、9.62mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.623g、7.88mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.810g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0139】
1-ヨードプロピルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルイソプロピルカーボネート(0.810g、4.50mmol)、CaCl2(0.174g、1.57mmol)、TBAB(0.027g、0.09mmol)、NaI(0.570g、3.80mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0140】
最後に、N10を合成した。イブプロフェン(0.464g、2.25mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードプロピルイソプロピルカーボネート(0.920g、3.38mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.309g、2.03mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.50g取得し、収率が63.5%であった。
【0141】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20-7.17 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 2H), 6.66-6.59 (m, 1H), 4.98-4.85(m, 1H), 3.702(q, J=7.1 Hz,1H), 2.4335(dd, J=3.3, 7.2 Hz,2H), 1.87-1.67 (m, 3H), 1.494 (dd, J=1.9, 7.2 Hz,3H),1.314-1.207(m, 6H), 0.941-0.902, 0.786-0.748(m, 3-H), 0.896-0.871(m, 3H)。
ESI-MS m/z =373.2, [M+Na]+.
【0142】
実施例11:化合物N10(S)の合成
【0143】
【0144】
操作は実施例10と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0145】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20-7.17 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 2H), 6.66-6.59 (m, 1H), 4.98-4.85(m, 1H), 3.702(q, J=7.1 Hz,1H), 2.4335(dd, J=3.3, 7.2 Hz,2H), 1.87-1.67 (m, 3H), 1.494 (dd, J=1.9, 7.2 Hz,3H),1.314-1.207(m, 6H), 0.941-0.902, 0.786-0.748(m, 3H), 0.896-0.871(m, 3H)。
ESI-MS m/z =373.2, [M+Na]+.
【0146】
実施例12:化合物N11の合成
【0147】
【0148】
まず、1-クロロイソブチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(20g、67.40mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、25mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(1.10g、13.80mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、イソブチルアルデヒド(10.170g、141.05mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を9.55g取得し、収率が39.8%であった。
【0149】
さらに、1-クロロイソブチルメチルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルクロロホルメート(1.0g、6.02mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、メタノール(0.293g、9.15mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.578g、7.31mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.747g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0150】
1-ヨードイソブチルメチルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルメチルカーボネート(0.747g、4.50mmol)、CaCl2(0.174g、1.57mmol)、TBAB(0.027g、0.09mmol)、NaI(0.570g、3.80mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0151】
最後に、N11を合成した。イブプロフェン(0.450g、2.18mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードイソブチルメチルカーボネート(0.880g、3.41mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.304g、2.00mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.57g取得し、収率が78.0%であった。
【0152】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07 (m, 4H), 6.65-6.59 (m, 1H), 4.24-4.09 (d, J=29.2 Hz, 3H), 3.73-3.68 (m, 1H), 2.45-2.43 (m, 2H), 1.89-1.68 (m, 2H), 1.51-1.48 (m, 3H), 1.33-1.23 (m, 3H), 0.94-0.75 (m, 9H)。
ESI-MS m/z =359.2, [M+Na]+.
【0153】
実施例13:化合物N12の合成
【0154】
【0155】
まず、1-クロロイソブチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(20g、67.40mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、25mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(1.10g、13.80mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、イソブチルアルデヒド(10.170g、141.05mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を9.55g取得し、収率が39.8%であった。
【0156】
さらに、1-クロロイソブチルエチルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルクロロホルメート(2.0g、12.04mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、エタノール(0.843g、18.30mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(1.132g、14.31mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を1.512g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0157】
1-ヨードイソブチルエチルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルエチルカーボネート(1.512g、8.40mmol)、CaCl2(0.317g、2.86mmol)、TBAB(0.054g、0.17mmol)、NaI(1.058g、7.06mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0158】
最後に、N12を合成した。イブプロフェン(1.237g、6.00mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードイソブチルエチルカーボネート(2.478g、9.11mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.837g、5.50mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を1.30g取得し、収率が61.9%であった。
【0159】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07 (m, 4H), 6.65-6.59 (m, 1H), 4.24-4.09 (m, 2H), 3.73-3.68 (m, 1H), 2.45-2.43 (m, 2H), 1.89-1.68 (m, 2H), 1.51-1.48 (m, 3H),1.33-1.23 (m, 6H), 0.94-0.75 (m, 9H)。
ESI-MS m/z =373.2, [M+Na]+.
【0160】
実施例14:化合物N13の合成
【0161】
【0162】
まず、1-クロロプロピルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、n-プロピオンアルデヒド(4.09g、70.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を6.44g取得し、収率が58.6%であった。
【0163】
さらに、1-クロロプロピルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルクロロホルメート(1.0g、6.41mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、イソプロピルアルコール(0.578g、9.62mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.623g、7.88mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.810g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0164】
1-ヨードプロピルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルイソプロピルカーボネート(0.810g、4.50mmol)、CaCl2(0.174g、1.57mmol)、TBAB(0.027g、0.09mmol)、NaI(0.570g、3.80mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0165】
最後に、N13を合成した。イブプロフェン(0.464g、2.25mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードプロピルイソプロピルカーボネート(0.920g、3.38mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.309g、2.03mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.50g取得し、収率が63.5%であった。
【0166】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20-7.17 (m, 2H), 7.09-7.06 (m, 2H), 6.66-6.59 (m, 1H), 4.98-4.85(m, 1H), 3.702(q, J=7.1 Hz,1H), 2.4335(dd, J=3.3, 7.2 Hz,2H), 1.87-1.67 (m, 3H), 1.494 (dd, J=1.9, 7.2 Hz,3H),1.314-1.207(m, 6H), 0.941-0.902, 0.786-0.748(m, 3H), 0.896-0.871(m, 3H)。
ESI-MS m/z =373.2, [M+Na]+.
【0167】
実施例15:化合物N14の合成
【0168】
【0169】
まず、1-クロロプロピルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(10g、33.70mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、15mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(0.54g、6.83mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、n-プロピオンアルデヒド(4.09g、70.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を6.44g取得し、収率が58.6%であった。
【0170】
さらに、1-クロロプロピルシクロヘキシルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルクロロホルメート(1.0g、6.41mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、シクロヘキサノール(0.921g、9.20mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(0.609g、7.70mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を0.836g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0171】
1-ヨードプロピルシクロヘキシルカーボネートを合成した。1-クロロプロピルシクロヘキシルカーボネート(0.836g、3.80mmol)、CaCl2(0.184g、1.66mmol)、TBAB(0.031g、0.10mmol)、NaI(0.480g、3.20mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0172】
N14を合成した。イブプロフェン(0.392g、1.90mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードプロピルシクロヘキシルカーボネート(0.880g、2.82mmol)を加え、また、氷浴条件でDBU(0.266g、1.75mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.49g取得し、収率が66.1%であった。
【0173】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20-7.06(m, 4H), 6.66-6.59(m, 1H), 4.66-4.48(m, 1H), 3.73-3.67(m, 1H), 2.45-2.42(m, 2H), 1.87-1.69 (m, 5H), 1.51-1.20 (m, 11H), 0.95-0.90, 0.79-0.74(m, 3H), 0.893 (d, J=3.3, 3H),0.876(d, J=3.3 Hz,3H)。
ESI-MS m/z =413.2, [M+Na]+.
【0174】
実施例16:化合物N15の合成
【0175】
【0176】
まず、1-クロロイソブチルクロロホルメートを合成した。トリホスゲン(20g、67.40mmol)を秤量して100mLの三つ口反応フラスコに入れ、25mLの無水ジクロロメタンを加え、反応フラスコをArガスで3回置換し、反応フラスコを-20℃のコールドトラップに移して撹拌し続けた。Py(1.10g、13.80mmol)を秤量して5mLのジクロロメタンで希釈した後、反応フラスコに入れた。その後、イソブチルアルデヒド(10.170g、141.05mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、コールドトラップの温度を-2℃に設定し、20h反応させ続けた。水ポンプを、KOH水溶液を含む反応フラスコと連結して抽気処理を5min行った後、反応フラスコをコールドトラップから移し出し、減圧下で濃縮してDCMを除去し、その後、蒸留により無色油状物を9.55g取得し、収率が39.8%であった。
【0177】
さらに、1-クロロイソブチルシクロヘキシルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルクロロホルメート(2.0g、12.04mmol)を秤量して乾燥した二つ口反応フラスコに入れ、10mLの無水DCMを加えて撹拌し続け、シクロヘキサノール(1.803g、18.00mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷水浴に移して撹拌し続け、ピリジン(1.125g、14.22mmol)を秤量して上記反応フラスコにゆっくりと加え、滴下中に白色の固体が現れ、滴下が終了した後、反応フラスコを室温に移して反応を1h行った。反応フラスコに10mLの水を加え、分液し、DCM層を5%のKHSO4でpH=3~4となるまで洗浄し、その後、中性近くまで水洗し、更に、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で濃縮して無色油状物を1.710g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0178】
1-ヨードイソブチルイソプロピルカーボネートを合成した。1-クロロイソブチルイソプロピルカーボネート(1.710g、7.30mmol)、CaCl2(0.276g、2.48mmol)、TBAB(0.048g、0.15mmol)、NaI(1.003g、6.69mmol)を秤量して100mLの二つ口反応フラスコに入れ、50mLの酢酸エチルを加え、加熱還流して3h反応させた。その後、反応フラスコに20mLの水を加え、分液し、EA層を5%のチオ硫酸ナトリウムで2回洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して黄色油状物を取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0179】
最後に、N15を合成した。イブプロフェン(0.680g、3.30mmol)を秤量して乾燥した一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、1-ヨードイソブチルエチルカーボネート(1.612g、4.94mmol)を加え、また、氷浴下でDBU(0.458g、3.01mmol)をゆっくりと滴下し、反応を40℃に移して3h反応させた。反応ではDCMおよび水を加え、分液し、DCM層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥して濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=60:1)により無色油状物を0.66g取得し、収率が49.5%であった。
【0180】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.20-7.06 (m, 4H), 6.66-6.59 (m, 1H), 4.66-4.48 (m, 1H), 3.73-3.67 (m, 1H), 2.45-2.42 (m, 2H), 1.87-1.69 (m, 4H), 1.51-1.20 (m, 11H), 0.95-0.90, 0.79-0.74 (m, 3H), 0.893 (m, 6H),0.876(m, 6H)。
ESI-MS m/z =427.2, [M+Na]+.
【0181】
実施例17:化合物N18の合成
【0182】
【0183】
まず、1-クロロ-1-メチル-エチルエチルカーボネートを合成した。クロロギ酸-2-プロペニル(1.00g、8.30mmol)を秤量して一つ口反応フラスコに入れ、20mLの無水ジクロロメタンを加えて撹拌し続けた。エタノール(0.38g、8.30mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷浴に移して撹拌した。5mLの乾燥したCH2Cl2で希釈したピリジン(0.69g、8.72mmol)をゆっくりと滴下した後、室温で2時間反応させた。系を20mLの氷水に注ぎ、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を蒸発乾固して油状液体を取得した。該液体に10mLのエチルエーテルを加え、その後、50mLの4N塩酸/エチルエーテルをゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮して無色液体を1.1g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0184】
化合物18を合成した。室温下で、イブプロフェン(0.91g、4.4mmol)を秤量して乾燥した50mL一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、その後、1-クロロ-1-メチル-エチルエチルカーボネート(1.1g、6.62mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、その後、DBU(0.672g、4.4mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、室温で一晩撹拌して反応させた。反応フラスコに水(10mL)および酢酸エチル(30mL)を加え、分液し、有機層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA = 4:1)により目的生成物を1.05g取得し、収率が71%であった。
【0185】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m,4H), 4.24-4.08(m, 2H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.44 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 1.89-1.79(m, 1H), 1.60-1.34(m, 9H), 1.33-1.22(m,3H), 0.89(d, 6H, J = 6.6 Hz)。
ESI-MS m/z =337.2, [M+H]+.
【0186】
実施例18:化合物N18(S)の合成
【0187】
【0188】
操作は実施例17と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0189】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.07(m, 4H), 4.24-4.08(m, 2H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.44 (d, 2H, J = 7.1 Hz), 1.89-1.79(m, 1H), 1.60-1.34(m, 9H), 1.33-1.22(m, 3H), 0.89(d, 6H, J = 6.6 Hz)。
ESI-MS m/z =337.2, [M+H]+.
【0190】
実施例19:化合物N19の合成
【0191】
【0192】
まず、1-クロロ-1-メチル-エチルイソプロピルカーボネートを合成した。クロロギ酸-2-プロペニル(1.00g、8.30mmol)を秤量して一つ口反応フラスコに入れ、20mLの無水ジクロロメタンを加えて撹拌し続けた。イソプロピルアルコール(0.50g、8.30mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、反応フラスコを氷浴に移して撹拌した。5mLの乾燥したCH2Cl2で希釈したピリジン(0.69g、8.72mmol)をゆっくりと滴下し、その後、室温で2時間反応させた。系を20mLの氷水に注ぎ、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を蒸発乾固して油状液体を取得した。該液体に10mLのエチルエーテルを加え、その後、50mLの4N塩酸/エチルエーテルをゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮して無色液体を0.94g取得し、精製せずに直接次の反応を行った。
【0193】
化合物N19を合成した。室温下で、イブプロフェン(0.5g、2.42mmol)を秤量して乾燥した50mL一つ口反応フラスコに入れ、10mLのアセトンを加えて撹拌溶解し、その後、1-クロロ-1-メチル-エチルイソプロピルカーボネート(0.94g、5.52mmol)を秤量して上記反応フラスコに加え、その後、DBU(0.37g、2.42mmol)を秤量して反応フラスコにゆっくりと滴下し、滴下が終了した後、室温で一晩撹拌して反応させた。反応フラスコに水(10mL)および酢酸エチル(30mL)を加え、分液し、有機層を5%のNaHCO3で洗浄し、水洗し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=4:1)、目的生成物を0.52g取得し、収率が52%であった。
【0194】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.06 (m, 4H), 4.91-4.75 (m, 1H), 3.72-3.66(m, 1H), 2.45-2.42(m, 2H), 1.91-1.85(m, 1H), 1.69-1.49 (m, 9H), 1.36-1.20(m, 6H), 0.889 (d, J = 6.6 Hz, 6H)。
ESI-MS m/z =351.2, [M+H]+.
【0195】
実施例20:化合物N19(S)の合成
【0196】
【0197】
操作は実施例19と同じであり、区別は、イブプロフェンをS-イブプロフェンに置き換えることであった。
【0198】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.19-7.06 (m, 4H), 4.91-4.75 (m, 1H), 3.72-3.66 (m, 1H), 2.45-2.42(m, 2H), 1.91-1.85(m,1H), 1.69-1.49 (m, 9H), 1.36-1.20(m, 6H), 0.889 (d, J = 6.6 Hz, 6H)。
ESI-MS m/z =351.2, [M+H]+.
【0199】
比較例1
市販薬であるフルルビプロフェンアキセチル(FPA)を購入して本願に係る化合物のコントロール化合物とした。
【0200】
【0201】
試験例1:化合物の高温安定性についての研究
試験方案:適量の本願で調製される化合物をバイヤルに入れ、高温(60℃)条件で遮光して放置し、それぞれ0日目、5日目および10日目にサンプリングし、化合物の純度および関連物質(イブプロフェン)の変化状況を考察し、結果は表1に示すとおりであった。
【0202】
【0203】
試験の結果により、本願に係る化合物は、高温(60℃)条件で遮光して10日間放置した後、純度は全て92%以上であり、ほとんどが95%であり、安定性が良好であることが分かった。
【0204】
試験例2:副生成物の毒性
化合物の人体内での代謝経路に応じて、化合物N2~N19の人体内の代謝副生成物および毒性は、以下の表2に示すとおりであった。
【0205】
【0206】
試験の結果により、以下のことが分かった。該シリーズの化合物は、人体内で代謝した後の副生成物の毒性が小さく、特に、化合物N2、N4、N6、N9、N10、N14、N18、N19が良好な薬剤臨床応用の見通しを有する。
【0207】
化合物N2、N6、N9、N10、N18、N19、およびそれらの右旋性鏡像異性体(1位の炭素がS配置の異性体)は、人体内で代謝した後の副生成物の毒性が小さいとともに、代謝速度が速く、注射製剤としての開発により適し、投与方式は、皮下注射、筋肉注射、静脈内急速投与、点滴静脈内投与等から選択できる。
【0208】
また、化合物N4、N14、およびそれらの右旋性鏡像異性体(1位の炭素がS配置の異性体)は、人体内で代謝した後の副生成物の毒性が小さいとともに、代謝速度が遅く、長期徐放製剤としての開発により適する。
【0209】
試験例3:本願に係る化合物のヒト血漿中の代謝についての研究
プロドラッグは、in vivo酵素分解による放出された原薬により治療効果を発揮するため、プロドラッグの血漿中の代謝速度および生成速度は、治療効果を効果的に発揮できるか否か、半減期を延長できるか否かに密に関連する。本願は、in vitro人体血漿代謝モデルを構築することにより、上記好ましい化合物、コントロール化合物およびそれらの異性体の変換特性について評価し、実験方案は以下のとおりであった。
【0210】
3.1 実施例で調製された化合物NXおよび比較例1におけるフルルビプロフェンアキセチルに対してヒト血漿中の酵素分解速度論的実験をバッチで行い、実験方法は以下のとおりであった。
【0211】
(1)40mMの本願に係る化合物NX(Xは、異なる化合物番号を表す)、40mMのフルルビプロフェンアキセチルの純アセトニトリル原液を調製し、40mMのイブプロフェンの純アセトニトリル原液を調製した。
【0212】
(2)25μLのフルルビプロフェン、イブプロフェン原液を取って1mLのヒト血漿中で混合させ、30s旋回させ、200μLサンプリングして800μLのアセトニトリルに入れてタンパク質を沈降させ、1min旋回させて反応を終了し、フルルビプロフェン、イブプロフェンコントロールとし、40mMの本願に係る化合物、40mMのフルルビプロフェンアキセチル原液を200倍に希釈してプロドラッグコントロールとした。
【0213】
(3)100μLの本願に係る化合物、フルルビプロフェンアキセチルの純アセトニトリル原液を取って4mLのヒト血漿中に入れて混合させ、30s旋回させ、37℃の恒温振とうバスヒータに置いて200rpmで振とうした。
【0214】
(4)異なる時点(0、15、30、60、120min)において200μLサンプリングし、各時点で3回サンプリングし、800μLのアセトニトリルに入れてタンパク質を沈降させ、1min旋回させて反応を終了し、同じ方法でブランク血漿コントロールを作製した。
【0215】
(5)12000rpm、4℃で10min遠心し、上清を取り、(濾過膜を介して)30μLのサンプルを注入し、ピーク面積の変化を記録した。
【0216】
(6)本願に係る化合物NXおよびコントロール化合物の加水分解速度を観察して分析し、データに基づいて適当な本願に係る化合物を選別した。
【0217】
3.2 本願に係る化合物NXおよびコントロール化合物を血漿で120min代謝した後、実験結果は以下の表3に示すとおりであった。
【0218】
【0219】
試験の結果により、化合物NXのS配置の異性体(NXSと略記する)の代謝速度は、ラセミ体(NXと略記する)の代謝速度より速く、即ち、デキスイブプロフェンエステルプロドラッグは、ラセミイブプロフェンエステルプロドラッグより、血漿中の加水分解速度が速く、in vitroヒト血漿中で従来のラセミイブプロフェンエステルプロドラッグより速やかに活性代謝物に変換してその薬理活性作用を発揮することができることが分かった。
【0220】
本願に係る化合物のS配置の異性体の、ヒト血漿中で異なる時点(0、15、30、60、120min)における分解速度は
図1に示すとおりであり、活性代謝物の生成速度は
図2に示すとおりであった。図から分かるように、化合物N6SおよびN9Sの代謝速度がいずれも速く、S-FPAに近く、化合物N2SおよびN10Sの代謝速度がいずれも遅く、出願人は、化合物の立体障害が大きくて対応するエステラーゼと結合しにくいため、加水分解される可能性があると推測した。
【0221】
同時に、出願人は、研究により、化合物N6(S)が2つのピークを含むことを意外にも発見し、N6(S)は、主鎖であるイブプロフェンにキラル中心が存在することに加えて、側鎖である連結部にも1つのキラル中心が存在し、且つ、対応する化合物N6(S)-1およびN6(S)-2の分解速度が異なる(
図3)ことを意味する。同様に、化合物N9(S)に含まれる2つのピーク、即ち、対応する化合物N9(S)-1およびN9(S)-2の分解速度も異なった(
図4)。ヒト血漿中のカルボキシルエステラーゼの、N6(S)またはN9(S)中の2つの異性体に対する加水分解速度が異なることを意味する。N2(S)のような他の化合物は、分解速度が相対的に遅いため、2つのピークの変化は大きく異ならなかった(
図5)。
【0222】
化合物N6(S)-1およびN6(S)-2は、化合物N6(S)を逆相C18カラムを通過させて分取・分離することにより得られ、具体的な構造式は以下のとおりである。
【0223】
【0224】
化合物N9(S)-1およびN9(S)-2は、化合物N9(S)を逆相C18カラムを通過させて分取・分離することにより得られ、具体的な構造式は以下のとおりである。
【0225】
【0226】
試験例4:本願に係る化合物のラット体内での薬物動態学研究
本願に係るデキスイブプロフェンエステル誘導体N9(S)(PEG400による可溶化)およびデキスイブプロフェン(アルギニン塩溶液)を、等モル量でラットに尾静脈注射で投与した後、投与してからの5、10、15、30、60、120、240、360、480および720minに、眼底静脈から採血してヘパリンで処理されたキュベットに入れた。全血を8000rpmで5min遠心し、血漿サンプルを分取して-80℃で保存し、血漿中のデキスイブプロフェン(IBU)の濃度を分析測定した。ラットの血漿中のデキスイブプロフェンと時間との変化関係を考察し、
図8は、デキスイブプロフェンおよびデキスイブプロフェンエステル誘導体N9(S)の注射溶液の血中濃度-時間曲線であり、薬物動態学ソフトウェアの分析により得られた薬物動態学的パラメータは、以下の表に示すとおりであった。
【0227】
供試品薬液の調製:ラットの尾静脈投与の体積はいずれも0.25mL/100gであった。
【0228】
検体であるデキスイブプロフェン:20mg/mLのデキスイブプロフェンを含むデキスイブプロフェンアルギニン塩溶液を調製し、ピペットマンで200μLを取って10mLのEP管に入れ、ディスペンサーで4800μLの生理塩水を取って管に加え、旋回させて均一に混合させ、濃度0.8mg/mL、体積5mLの投与溶液を取得した。
【0229】
検体であるN9:20mgのデキスイブプロフェンエステル誘導体N9を秤量して15mLのEP管に入れ、ディスペンサーで10mLのPEG400を取って管に入れ、旋回させて均一に混合させ、濃度2mg/mLの化合物のPEG溶液を取得した。ピペットマンで3250μLのN9 PEG溶液を取って10mLのEP管に入れ、ディスペンサーで1750μLの生理塩水を取って管に加え、旋回させて均一に混合させ、濃度1.3mg/mL、体積5mLの投与溶液を調製した。
【0230】
【0231】
【0232】
試験の結果により、デキスイブプロフェンエステル系誘導体プロドラッグN9がラット体内でデキスイブプロフェンに変換した後の血中濃度-時間曲線は、デキスイブプロフェン塩溶液を直接注射した後の血中濃度-時間曲線とほぼ一致し、AUC0-tは顕著な差がなく、該エステル系プロドラッグは、ラット体内で速やかに代謝して抗炎症活性を有するデキスイブプロフェンとなることができ、ラット体内での暴露量全体が一致することが分かった。薬物動態学的パラメータにより、注射系製剤でデキスイブプロフェン塩の代わりにエステル系プロドラッグを使用することにより、デキスイブプロフェンの半減期および平均滞留時間を延長し、その除去速度を低減し、見掛け分布容積を増大することができることを示した。従って、本願は、臨床応用において、同じ薬効を達成した上で、薬剤のin vivo作用時間を延長した。
【0233】
試験例5:
デキスイブプロフェン誘導体化合物N9(S)は、主鎖であるイブプロフェンにキラル中心が存在することに加え、側鎖である連結部にも1つのキラル中心が存在するため、デキスイブプロフェン誘導体化合物N9(S)の側鎖ラセミ化合物、側鎖キラル化合物であるN9(S)A、N9(S)BのPEG400可溶化液、およびデキスイブプロフェン(アルギニン塩水溶液)を等モル量で尾静脈投与した後、ラットの血漿中のデキスイブプロフェンの生成と時間との変化関係をモニタリングして比較することにより、主鎖が右旋性であり、2つのエステル側鎖が異性化することによる薬物動態学(プロドラッグ変換)の区別を考察し、薬物動態学ソフトウェアの分析により、
図9は、デキスイブプロフェン、デキスイブプロフェンエステル誘導体N9(S)、側鎖キラル化合物N9(S)A、N9(S)Bの注射溶液の血中濃度-時間曲線であった。
【0234】
供試品溶液の調製方法:デキスイブプロフェン誘導体化合物N9(S)、側鎖異性体N9(S)A、側鎖異性体N9(S)Bをそれぞれ20mg秤量して15mLのEP管に入れ、ディスペンサーで10mLのPEG400を取って管にそれぞれ加え、旋回させて均一に混合させ、濃度2mg/mLの化合物のPEG溶液を調製した。ピペットマンで3250μLの供試化合物のPEG溶液を取って10mLのEP管に入れ、ディスペンサーで1750μLの生理塩水を取って管に加え、旋回させて均一に混合させ、濃度1.3mg/mL、体積5mLの投与溶液を調製した。
【0235】
デキスイブプロフェンの調製方法:20mg/mLのデキスイブプロフェンを含むデキスイブプロフェンアルギニン塩溶液を調製し、ピペットマンで200μLを取って10mLのEP管に入れ、ディスペンサーで4800μLの生理塩水を取って管に加え、旋回させて均一に混合させ、濃度0.8mg/mL、体積5mLの投与溶液を取得した。
【0236】
【表6】
化合物N9(S)AおよびN9(S)Bは、化合物N9(S)を逆相C18カラムを通過させて分取・分離することにより得られ、具体的な構造式は以下のとおりである。
【0237】
【0238】
薬物動態学研究の結果により、デキスイブプロフェンの3つの供試化合物は等モル投与量で、いずれも速やかに代謝できることが分かった。
【0239】
試験例6:化合物の右旋性鏡像異性体の溶剤中の安定性についての研究
4.1 試験方案:化合物N6(S)、N9(S)をそれぞれ中鎖トリグリセリド(MCT)、大豆油、および一定濃度の界面活性剤の水溶液(ツイーン80リン酸塩緩衝液)に溶解し、得られたサンプルを80℃の条件に置いてサンプルを保存し、それぞれ0日目、5日目、10日目にサンプリングして化合物の純度、関連物質(イブプロフェン)および異性体(左旋性)の変化状況を測定した。
【0240】
【0241】
4.2 関連物質の測定
高速液体クロマトグラフィー(中国薬典2015年版通則0512)に従って測定した。
【0242】
(1)クロマトグラフィー条件:カラムはAgilent ZORBAX SB-C8で、4.6mm×250mm、5μmであり、0.1%のリン酸溶液-アセトニトリル(50:50)を移動相とし、検出波長を220nmとした。流速を1.0mL/minとし、カラム温度を40℃とした。
【0243】
(2)測定法:適量の本製品を取り、精密に秤量し、希釈剤[無水エタノール]を加えて振って溶解させ、定量的に希釈して1mLあたり約0.4mgだけ含む溶液を作製し、30s旋回させ、PTFE濾過膜(0.22μm、津騰)で濾過し、後続の濾液を取って供試品溶液とした。10μLだけ精密に秤量して液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、供試品溶液のクロマトグラムに不純物ピークがある場合、ピーク面積正規化法で計算して取得できた。
【0244】
4.3 異性体の測定
高速液体クロマトグラフィー(中国薬典2015年版通則0512)に従って測定した。
【0245】
クロマトグラフィー条件:アミロース-トリ(3,5-ジメチルフェニルカーバメート)シリカゲルを充填剤(Chiralpak AD-H、250×4.6mm、5μm)とし、n-ヘキサン-イソプロピルアルコール(90:10)を移動相とし、約10minでイソクラティック溶離し、流速を1.0ml/minとし、カラム温度を25℃とし、検出波長を219nmとした。
【0246】
測定法:適量の本製品を取って精密に秤量し、希釈剤(n-ヘキサン-イソプロピルアルコール(90:10))を加えて振って溶解させ、定量的に希釈して1mLあたり約1.0mgだけ含む溶液を作製し、30s旋回させ、PTFE濾過膜(0.22μm、津騰)で濾過し、後続の濾液を取って供試品溶液とした。10μLだけ精密に秤量して液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、供試品溶液のクロマトグラムに異性体ピークがある場合、ピーク面積正規化法で計算して取得できた。
【0247】
試験結果は、表5に示すとおりであった。
【0248】
【0249】
試験の結果により、本願に係る化合物のデキスイブプロフェンエステル系化合物N6(S)およびN9(S)は、油相または水相において高温80℃にて10日間放置した後、異性体の純度がほぼ一定であり、2つの化合物の油相中の関連物質がほぼ一定であった(安定性が高い)が、水相中の関連物質の含有量は増加することが分かった。
【0250】
以上、本願の実施形態を説明した。しかし、本願は、上記実施形態に限定されるものではない。本願の精神および原則の範囲内で行われるいかなる修正、均等置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれているべきである。