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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】製造ラインの管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240221BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 301T
G05B23/02 T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022122888
(22)【出願日】2022-08-01
(65)【公開番号】P2023024346
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2021127984
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509232197
【氏名又は名称】田中電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-125612(JP,A)
【文献】特開2018-073185(JP,A)
【文献】特開2019-179336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対する個別の処理動作をシーケンサによる制御に従って順次実行する複数の機器で構成された製造ラインの撮像画像、前記製造ラインにおけるワークの位置を示す位置情報、及び前記シーケンサの制御内容を、前記製造ラインの動作開始後の時間軸上で選択された時点から互いに同期させて単一の管理画面内に再生して表示する製造ラインの管理システムであって、
前記製造ラインを撮像するカメラと、前記カメラが撮像した画像情報を時系列的に記録する画像記録部と、前記シーケンサから供給される制御情報を時系列的に記録する制御情報記録部と、管理用画面を表示するディスプレイと、前記ディスプレイに表示すべき前記管理用画面を作成する制御部と、を備え、
前記管理用画面は、前記制御情報記録部に記録された制御情報のうち特定の制御情報を時系列的に表示する制御情報表示部と、前記画像記録部に記録された画像情報を表示する画像表示部と、前記制御部が前記制御情報記録部に記録された制御情報に基づいて特定した前記製造ラインにおけるワークの位置を予め格納された前記製造ラインの略図内に表示して作成した画像を前記位置情報として表示するワーク位置表示部と、前記制御情報表示部内における再生開始時点の指示操作を受け付ける選択部材と、を含み、
前記制御部は、前記選択部材で指示された再生開始位置に対応する時点から前記画像情報及び前記位置情報を互いに同期した状態で前記画像記録部及び前記ワーク位置表示部に表示する製造ラインの管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、予め定められた時間間隔で、前記カメラが撮像した画像情報及び前記シーケンサから供給される制御情報を前記画像記録部及び前記制御情報記録部に記録するとともに、前記位置情報を作成して記録する請求項に記載の製造ラインの管理システム。
【請求項3】
前記選択部材は、前記制御情報表示部、前記ワーク位置表示部及び前記画像表示部における再生状態の停止、巻き戻し、早送りの指示操作を受け付ける請求項又はに記載の製造ラインの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シーケンサによって制御される製造ラインの管理システムに関し、特に、製造ラインにおける異常の発生状況に関する複数の情報を単一の画面上で確認できるようにした製造ラインの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに対して複数の処理工程を実行する製造ラインの動作は、稼働効率の向上及び省力化のために、シーケンサの制御によって長時間継続して無人稼働されている。製造ラインを構成する機器は、シーケンサのプログラムに従って、ワークに対する複数の処理工程を順次実行する。製造ラインを長期間にわたって安定して稼働させるためには、製造ラインに生じた異常を解析した結果をシーケンサのプログラムや製造ラインを構成する機器の調整等に反映させる必要がある。
【0003】
そこで、従来の管理システムでは、ワークを加工する機械本体と、機械本体による加工工程を動画撮影するカメラと、カメラが撮影した画像データをメモリに記憶させる情報処理装置と、を備え、異常発生時刻を含む予め定められた設定時間の画像データを保護するものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この管理システムでは、一例として、タブレット端末のディスプレイに、異常の内容を表す異常メッセージを互いに同期した設定時間の画像データ及び運転情報とともに表示することで、ワークの加工工程における異常を事後的に確認できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-016055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の管理システムは、異常発生時刻を含む予め定められた設定時間の画像データのみを再生可能にしたものであるため、機器の正常時の動作や連続して発生した複数の異常のそれぞれについて事後的に確認することができない。また、従来の管理システムは、単一種類のワークに加工を行う製造ラインを前提としているため、鍍金装置のように処理内容の異なる複数種類のワークが混在して処理される製造ラインにおいて、ワークの種類に応じた動作状況を把握することができない。
【0007】
この発明の目的は、機器の正常時の動作や連続して発生した複数の異常のそれぞれについて事後的に確認することができ、処理内容の異なる複数種類のワークの動作状況を正確且つ容易に把握することができる製造ラインの管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ワークに対する個別の処理動作をシーケンサの制御に従って順次実行する複数の機器によって構成された製造ラインの管理システムであって、製造ラインの撮像画像、製造ラインにおけるワークの位置を示す位置情報、及びシーケンサの制御内容を、製造ラインの動作開始後の時間軸上で選択された時点から互いに同期させて単一の管理画面内に再生して表示する。
【0009】
このために、製造ラインを撮像するカメラと、製造ラインの動作中にカメラが撮像した画像情報を時系列的に記録する画像記録部と、管理用画面を表示するディスプレイと、ディスプレイに表示すべき管理用画面を作成する制御部と、を備え、管理用画面は、シーケンサから供給される制御情報を時系列的に表示する制御情報表示部と、制御情報に基づいて製造ラインにおけるワークの位置情報を時系列的に表示するワーク位置表示部と、画像記録部に記録された画像情報を時系列的に表示する画像表示部と、を含み、制御部は、制御情報表示部内における時間軸上の再生開始位置の指示操作を受け付け、制御情報表示部、位置表示部及び画像表示部のそれぞれに制御情報、ワークの位置情報及び画像情報を再生開始位置から互いに同期した状態で再生して表示する。制御情報は、少なくとも異常情報を含む。異常情報は、製造ラインに発生した異常を時系列的に表示する。
【0010】
この構成によれば、シーケンサから供給される制御情報、製造ラインにおけるワークの位置情報、並びに製造ラインの画像情報が、任意の再生開始時点から互いに同期した状態で、単一の管理用画面内に再生して表示される。例えば、制御情報表示部に少なくとも1つの異常情報が表示されている場合に、表示された異常情報を指定すると、その時点からの製造ラインにおけるワークの位置情報及び製造ラインの画像情報が、単一の管理用画面内に再生して表示される。
【0011】
制御部は、予め定められた時間間隔で、カメラが撮像した画像情報及びシーケンサから供給される制御情報を画像記録部及び制御情報記録部に記録するとともに、位置情報を作成して記録するものとすることができる。選択された時点の各情報を正確かつ容易に抽出して再生することができる。
【0012】
管理用画面内に、制御情報表示部、位置表示部及び画像表示部における再生状態の停止、巻き戻し、早送りの指示操作を受け付ける操作部材を備えることもできる。所望のタイミングにおける制御情報、ワークの位置情報並びに製造ラインの画像情報を管理用画面内に容易に表示させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、製造ラインを構成する複数の機器の正常時の動作や連続して発生した複数の異常のそれぞれについて事後的に確認することができ、処理内容の異なる複数種類のワークの処理状況を正確に且つ容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施形態に係る製造ラインの管理システムを備えた製造ラインの一例としての鍍金装置の構成を示すブロック図である。
図2】同管理システムを備えた製造ラインにおける処理内容の一例を示す図である。
図3】同管理システムのディスプレイに表示される管理用画面の構成の一例を示す図である。
図4】同管理システムの制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】同管理システムの起動中における管理用画面の表示状態の一例を示す図である。
図6】同管理システムの起動中における管理用画面の表示状態の別の一例を示す図である。
図7】同管理システムの起動中における管理用画面に表示されるワーク詳細画面の一例を示す図である。
図8】同管理システムの起動中における管理用画面に表示されるグラフ表示画面の一例を示す図である。
図9】同管理システムの起動中における管理用画面に表示されるシリンダ稼働画面の一例を示す図である。
図10】同管理システムの起動中における管理用画面に表示されるキャリア移動距離画面541の一例を示す図である。
図11】同管理システムの起動中における管理用画面に表示される管理情報画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施形態に係る製造ラインの管理システムについて、製造ラインとして鍍金装置を例に挙げて、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、この発明の実施形態に係る製造ラインの管理システム10は、一例として、鍍金装置100を構成する複数の機器の動作状態並びにワークの処理状況を管理する。鍍金装置100は、一例として、搬入ステージ101、各種の処理槽102~114、搬出ステージ115、ガイドレール116、駆動部117、センサ121~140、キャリア141~145、制御盤150を備えている。鍍金装置100に配置される処理槽及びキャリアの数は、この実施形態に限るものではなく、処理すべきワークの種類数、各ワークに対する処理内容、並びに処理槽の配置数及び配置位置等に応じて適宜決定される。
【0017】
鍍金装置100は、一例として、単一種類のワークWを、ガイドレール116に沿って移動するキャリア141~145を介して、搬入ステージ101から各処理槽102~114を経由して搬出ステージ115に移動させる間に、一例として、図2に示すように、各処理槽102~114に予め設定された時間にわたって順次浸漬させる。ワークWは、形状や大きさに応じた治具を介してキャリア141~145に保持される。
【0018】
センサ121~135は、搬入ステージ101、各処理槽102~114、搬出ステージ115においてワークWの有無を検出する。センサ136~140は、それぞれキャリア141~145においてワークWの有無を検出する。
【0019】
鍍金装置100は、搬入ステージ101に順次搬入されるワークWが図2に示す時間にわたって各処理槽102~114に浸漬した後に搬出ステージ115に搬出されるように、キャリア141~145を動作させる。鍍金装置100におけるキャリア141~145の動作は、制御盤150内のシーケンサ118に予め格納されたプログラムSPによって制御される。
【0020】
シーケンサ118は、搬入ステージ101、各処理槽102~114、搬出ステージ115及びキャリア141~145のそれぞれに配置されたセンサ121~140から入力される検出信号、並びに制御盤150に配置されている機器からの信号に応じて、キャリア141~145の動作に係る駆動信号を制御盤150内の機器を介して駆動部117に出力する。駆動部117は、キャリア141~145の動作状態を示す駆動電流値等の動作信号をシーケンサ118に出力する。
【0021】
シーケンサ118は、センサ121~140の検出信号及び鍍金装置100の制御情報を管理システム10に出力する。制御情報は、センサ121~140の検出信号及び駆動部117から出力された動作信号に基づいて、シーケンサ118が作成するものであり、シーケンサ118が鍍金装置100に生じた異常を検出した際に、その内容を示す異常情報を含む。
【0022】
例えば、センサ121~140の何れかの検出信号の状態がプログラムSPに規定されている状態と異なる場合やキャリア141~145の何れかに対する駆動電流値が許容範囲を越える場合等において、シーケンサ118は、鍍金装置100に異常が発生したと判断する。シーケンサ118は、センサ121~140の配置位置や駆動電流値が許容範囲を越えるキャリア141~145に応じて、異常の内容及び場所を特定する異常情報を作成する。
【0023】
管理システム10は、制御部1、画像記録部2、制御情報記録部3、位置情報記録部4、ディスプレイ5及びカメラ61~66を備えている。カメラ61は、動作中の鍍金装置100の全体の画像を継続して撮像する。カメラ62~66は、それぞれ動作中の鍍金装置100におけるキャリア141~145の画像を継続して撮像する。
【0024】
なお、キャリア141~145の画像を撮像するカメラ62~66に代えて、又はこれらとともに、ワークWの搬送経路を複数に分割したエリア毎の画像を撮像するカメラを備えることもできる。また、少なくとも鍍金装置100の全体の画像を撮像するカメラを含む少数のカメラを備え、レンズの機械的な動作又は画像処理技術によって必要箇所の画像を取得するようにしてもよい。
【0025】
制御部1は、カメラ61~66が撮像した画像情報を画像記録部2に時系列的に記録する。制御部1は、カメラ61が撮像した鍍金装置100の全体の画像情報から画像処理によって作成した鍍金装置100の要部の画像情報を鍍金装置100の全体の画像情報とともに画像記録部2に時系列的に記録することができる。
【0026】
制御部1は、シーケンサ118から入力される鍍金装置100の制御情報を制御情報記録部3に記録し、シーケンサ118から入力されるセンサ121~140の検出信号からワークWの位置情報を作成して位置情報記録部4に記録する。ワークWの位置情報は、鍍金装置100における搬入ステージ101、各処理槽102~114、搬出ステージ115の配置情報に基づいて予め作成されたワークWの経路の略図上に、センサ121~140の検出信号に応じたワークWの位置を表示したものである。ワークWの経路の略図は、制御部1に作業者によって入力されるか、又は作業者によって入力された配置情報に基づいて制御部1が作成する。
【0027】
ディスプレイ5は、管理用画面を表示する。制御部1は、管理用プログラムMPに従って、シーケンサ118から入力される制御情報に基づいて、ディスプレイ5に表示すべき管理用画面を作成する。
【0028】
図3に示すように、ディスプレイ5が表示する管理用画面51は、一例として、制御情報表示部511、ワーク位置表示部512、画像表示部513、カーソル表示部514、操作部材515A~515Cを含む。
【0029】
制御情報表示部511は、少なくとも、シーケンサ118から供給される異常情報を時系列的に表示する。ワーク位置表示部512は、一例として、上述した鍍金装置100におけるワークWの経路の略図として搬入ステージ101、各処理槽102~114、搬出ステージ115を一例として上辺が開放した矩形で固定的に表示する。画像表示部513は、画像記録部2に記録された画像情報を表示する。カーソル表示部514は、制御情報表示部511における再生開始時点の選択を受け付けるカーソル514Aを表示する。操作部材515A~515Cは、この発明の選択部材に相当し、それぞれ、再生状態の停止、巻き戻し、早送りの指示操作を受け付ける。
【0030】
管理用画面51における制御情報表示部511、ワーク位置表示部512、画像表示部513、カーソル表示部514、操作部材515A~515Cの配置位置及び状態は、図3に示す状態に限るものではない。管理用画面51は、制御情報表示部511、ワーク位置表示部512及び画像表示部513のそれぞれが指定されたタイミングにおける状態を互いに同期して表示できることを条件に、適宜変更することができる。例えば、鍍金装置100に備えられた全ての処理槽をワーク位置表示部512内に表示できない場合に表示すべき処理槽の範囲の移動を受け付ける操作部材をワーク位置表示部512の一部に設けることもできる。
【0031】
図4に示すように、制御部1は、鍍金装置100が動作を開始すると、タイマTを起動し(ステップS1(以下、ステップSnを単にSnという。))、予め設定された一定時間ΔT毎に、カメラ61~66が撮像した画像情報及びシーケンサ118から入力される制御情報を画像記録部2及び制御情報記録部3に記録するとともに、シーケンサ118から入力されるセンサ121~140の検出信号に基づいてワークWの位置情報を作成して位置情報記録部4に記録する(S2~S5)。
【0032】
次いで、制御部1は、シーケンサ118から入力された制御情報に異常情報が含まれるか否かを判別し(S6)、制御情報に異常情報が含まれる場合には、その異常情報をディスプレイ5が表示している管理用画面51内の制御情報表示部511に表示する(S7)。制御部1は、制御情報に異常情報が含まれない場合には、一定時間ΔTの経過を待機する(S6→S2)。
【0033】
制御部1は、制御情報表示部511に異常情報を表示した後、カーソル514Aの操作によって制御情報表示部511における再生開始時点が選択されると(S8)、画像記録部2及び位置情報記録部4に記録されている画像及び位置情報を選択された時点から順次読み出し、画像表示部513及びワーク位置表示部512に再生して表示する(S9,S10)。
【0034】
上記の制御部1における処理により、一例として図5に示すように、管理用画面51において、カーソル514Aが示す時点におけるワークWの位置がワーク位置表示部512に表示されるとともに、鍍金装置100の全体、第1キャリア141および第2キャリア142の画像が画像表示部513に表示される。
【0035】
制御部1は、シーケンサ118から供給される制御情報のうち少なくとも異常情報を制御情報表示部511における横方向を時間軸として左から右に向かって表示し、これに同期して鍍金装置100におけるワークWの位置をワーク位置表示部512に表示するとともに、画像記録部2に記録された画像情報を画像表示部513に表示する。
【0036】
制御部1は、鍍金装置100におけるワークWの処理が正常に進行している状況で、制御情報表示部511に異常情報を除く制御情報を順次表示するか又は何も表示せず、ワーク位置表示部512にワークWの位置を順次変化させて表示し、画像表示部513にカメラ61~66が撮像している画像を表示することもできる。
【0037】
また、鍍金装置100に動作の停止を伴わない程度の異常が発生した場合、その異常情報を制御情報表示部511における異常発生時刻に応じた時間軸位置に固定的に表示した後、ワーク位置表示部512においてワークWの変位を継続して表示するとともに、画像表示部513にはカメラ61~66の一部又は全部が撮像している画像を継続して表示することもできる。
【0038】
鍍金装置100に動作の停止を伴う異常が発生した場合、制御情報表示部511では異常発生時刻に応じた時間軸位置に異常情報が表示された状態で変化が停止し、ワーク位置表示部512では異常発生時刻におけるワークWの位置が表示された状態で変化が停止し、画像表示部513にはカメラ61~66が撮像している画像の表示が継続される。制御部1は、鍍金装置100に動作の停止を伴う異常が発生した場合にカメラ62~66のうち、異常発生場所に対応したカメラの撮像画像を画像表示部513に表示することもできる。
【0039】
鍍金装置100に動作の停止を伴う異常が発生した場合、制御部1は、カーソル表示部514におけるカーソル514Aの操作を待機するようにしてもよい。カーソル514Aは、図示しないマウス若しくはタッチパッド、又はディスプレイ5が備える図示しないタッチパネルの操作によってカーソル表示部514内を左右に移動させることができる。
【0040】
さらに、制御部1は、操作部材515A~515Cの操作に応じて、カーソル表示部514におけるカーソル514Aの位置、ワーク位置表示部512におけるワークWの位置、画像表示部513におけるカメラ61~66の撮像画像を同期させた状態で、再生、停止、巻き戻し、早送りする。
【0041】
したがって、管理システム10は、カーソル表示部514内でカーソル514Aを移動させることにより、任意の時点の鍍金装置100の全体及び/又は要部のカメラ61~66による撮像画像、並びにワークWの位置を、画像表示部513及びワーク位置表示部512に表示させることができる。
【0042】
例えば、カーソル表示部514内でカーソル514Aを制御情報表示部511内で異常情報が表示されている位置まで移動させると、異常発生時における鍍金装置100の全体及び/又は要部のカメラ61~66による撮像画像が画像表示部513に表示されるとともに、その時のワークWの位置がワーク位置表示部512に表示される。
【0043】
この状態から、操作部材515A~515Cを操作することで、異常発生時の前後における鍍金装置100の全体及び/又は要部のカメラ61~66による撮像画像が画像表示部513に再生表示されるとともに、その時のワークWの位置がワーク位置表示部512に再生表示される。
【0044】
これによって、鍍金装置100を構成する複数の機器の正常時の動作や連続して発生した複数の異常のそれぞれについて事後的に確認することができ、処理内容の異なる複数種類のワークWの処理状況を正確に且つ容易に把握することができる。
【0045】
また、管理システム10は、鍍金装置100の動作状態について、適正値からの変動量を検出し、異常発生時期の予測、又は部品交換時期の告知を行うこともできる。例えば、鍍金装置100が正常に1サイクルの動作を遂行した時の理想的なワークWの位置の変化を理想位置情報として記録しておき、一定時間ΔT間隔で作製した現実のワークWの位置情報を理想位置情報と比較し、誤差が所定範囲に達したワークWを搬送中のキャリア141~145について、部品交換時期の到来を告知する。また、部品交換による対応が取れない部分については、動作の継続によって近い将来に異常が発生し得ることを知らせて、作業者による確認を促すこともできる。
【0046】
同様に、鍍金装置100が正常に1サイクルの動作を遂行した時の理想的なキャリア141~145に対する駆動電流値を理想電流値情報として記録しておき、一定時間ΔT間隔で作製した現実のワークWの位置情報を理想電流値情報と比較し、誤差が所定範囲(シーケンサ118で比較される許容範囲よりも狭い範囲。)に達したキャリア141~145について、異常発生時期の近接又は部品交換時期の到来を告知することもできる。
【0047】
図6に示すように、管理用画面51の一部に、キャリア141~145について、異常発生時期の近接又は部品交換時期の到来を告知するメッセージを表示する告知表示部515を設けることができる。また、同時にワーク位置表示部512において、理想位置情報との誤差が所定範囲に達したワークWを正常なワークWと異なる方法で表示することもできる。
【0048】
なお、告知表示部515に異常発生時期の近接又は部品交換時期の到来を告知するメッセージを表示するとともに、鍍金装置100の設置場所に配備された警告灯や鳴動装置を動作させることもできる。
【0049】
鍍金装置100は、ワークW毎の動作状況の詳細を計測して記録しておき、管理用画面51内に図7に示すワーク詳細画面521として表示することもできる。ワーク詳細画面521は、一例としてワーク位置表示部512と同じワークWの経路の略図で構成され、ワークW毎の動作状況の詳細を、例えば各槽間の移動に要した時間、各槽内での滞留時間として表示する。ワーク詳細画面521は、制御情報表示部511、ワーク位置表示部512及び画像表示部513とともに表示すること、これらの全部又は一部と切り換えて表示すること、又はこれらの全部又は一部の上に重ねて表示することができる。
【0050】
ワーク詳細画面521において、各時間をそれぞれの所定時間と比較し、各時間と所定時間との差に応じて、各時間の表示色や字体を変えることにより、動作状況が正常であるか異常であるかを視覚的に認識することができる。例えば何れかの時間がしきい値を越える場合、ワークWに不適正な処理による品質不良が発生していると判断でき、鍍金処理後における別の判定作業を必要とすることなくワークWの品質の良否を判断できる。
【0051】
また、ワーク詳細画面521の別の例として、メッキ装置100が正常な状態で動作している場合のワークWの理想的な動作とワークWの現在の動作とをワーク位置表示部512と同じワークWの経路の略図上に表示し、ワークWの現在の動作が理想的な動作から誤差を視認できるようにしてもよい。この場合に、生じた場合に誤差の程度に応じて色彩等の表示状態を変化させることもできる。
【0052】
ワークWを保持したキャリア141~145を動作させるモータの電流値、インバータモータ及びシリンダの動作の周波数、並びに整流器の電流値及び電圧値等を計測して記録しておき、選択操作に応じて、これらの少なくとも1つを図8に示すように、グラフ表示画面551内に経時的変動を表示することもできる。
【0053】
さらに、ワークWを槽内で揺動させる場合があり、ワーク詳細画面521においてカーソルによって選択された槽について、ワークWを揺動させるモータの駆動電流値や揺動の周波数等を計測して記録しておき、ワーク詳細画面521とともに又は個別にグラフ表示画面551内に経時的変動を表示することもできる。また、各槽について、ワークWの揺動時間を計測して記録しておき、指定された期間について、ワーク詳細画面521とともに又は個別に一覧表示させることもできる。
【0054】
モータの駆動電流値や回転部材の揺動の周波数等の経時的変動は、ワークWの動作状況が正常であるか異常であるか、即ちワークWに不適正な処理による品質不良が発生しているか否かの判断に用いることができるとともに、モータ等の駆動源や回転部材等の伝達機構の寿命の判断にも用いることができる。
【0055】
鍍金装置100は、駆動源として油圧又は空気圧シリンダを備える場合がある。シリンダは、キャリア141~145のそれぞれに取り付けられ、例えばワークWから液滴を除去するエアノズルを退避位置とワークWに対向する位置との間に移動させる。各シリンダの動作時間を計測して記録しておき、例えば動作の開始/完了時刻、動作時間、並びに指定範囲内における動作時間の最大値、最小値及び平均値等を管理用画面51内に図9に示すシリンダ稼働画面531として一覧表示する。
【0056】
各シリンダの動作時間の最大値、最小値及び平均値等をしきい値と比較し、異常の発生やその予測をシリンダ稼働画面531に表示することができる。各モータについても、同様に表示することができる。
【0057】
また、キャリア141~145のそれぞれの移動距離を計測して積算記録しておき、部品交換時期を示すしきい値に到達する日を予測し、図10に示すキャリア移動距離画面541として表示する。部品の交換時期を予め認識することができる。
【0058】
さらに、図11に示すように、鍍金装置100の動作中におけるシーケンサ118の入力等のうち選択操作された入力のオン/オフ状態や数値の測定値の経時的変化を適正値と対比して表示する管理情報を表示する管理情報画面561を表示することもできる。測定値が適正値と異なる場合に異常発生と判定して記録するとともに、その測定値の表示箇所の表示色等を変化させることができる。管理情報画面561は、制御情報表示部511、ワーク位置表示部512、画像表示部513及びグラフ表示画面551とともに表示すること、これらの全部又は一部と切り換えて表示すること、又はこれらの全部又は一部の上に重ねて表示することができる。
【0059】
上述のワーク詳細画面521、シリンダ稼働画面531、キャリア移動距離画面541、グラフ表示画面551及び管理情報画面561は、制御情報表示部511とともにこの発明の制御情報表示部に含まれる。
【0060】
なお、上記の実施形態は一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、鍍金装置100の稼働中に、互いに処理内容が異なる複数種類のワークが搬入される場合には、ワークの種類に応じてワーク位置表示部512におけるワークWの形状を変えることができる。
【0062】
また、ディスプレイ5に代えて、又はこれとともに、管理者が所持するタブレット等の端末装置にネットワークを介して管理用画面51の画像データを供給することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1-制御部
2-画像記録部
3-制御情報記録部
4-位置情報記録部
5-ディスプレイ
10-管理システム
61~66-カメラ
100-鍍金装置
118-シーケンサ
511-制御情報表示部
512-ワーク位置表示部
513-画像表示部
W-ワーク
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10
図11