(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】動的集束ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240221BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20240221BHJP
G02F 1/1347 20060101ALN20240221BHJP
G02B 3/14 20060101ALN20240221BHJP
G02B 1/06 20060101ALN20240221BHJP
G02B 1/08 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02F1/13 505
G02F1/1347
G02B3/14
G02B1/06
G02B1/08
(21)【出願番号】P 2022141509
(22)【出願日】2022-09-06
(62)【分割の表示】P 2018532356の分割
【原出願日】2016-10-28
【審査請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517235258
【氏名又は名称】イー-ビジョン スマート オプティックス, インク.
【氏名又は名称原語表記】E-VISION SMART OPTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヒューフテン アンソニー
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-324284(JP,A)
【文献】特開2006-018325(JP,A)
【文献】特開2000-081573(JP,A)
【文献】特表2002-544533(JP,A)
【文献】米国特許第09116337(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347736(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02919060(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
G02F 1/13
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイ装置であって、
偏光された光を発するディスプレイと、
前記ディスプレイと光通信して、前記ディスプレイが発した前記偏光された光の一部を透過するビームスプリッ
タと、
前記ビームスプリッタと光通信して、前記ビームスプリッタが透過した前記偏光された光の前記一部を受信し、且つ、前記ビームスプリッタを介して、前記ディスプレイの画像を前記ヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に反射する反射面と、
前記
ビームスプリッタの第1の表面と前記反射面との間に封止されて、前記装着者に反射される前記ディスプレイの前記画像の焦点を変える液晶層と、
前記液晶層を作動させるための、前記第1の表面上に配置された第1の電極層及び前記反射面上に配置された第2の電極層と
を備える、前記ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1の表面が、前記反射面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1の表面が、前記反射面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項4】
前記液晶層が湾曲しており、均一な厚さを有する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項5】
前記液晶層が不均一な厚さを有する、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項6】
前記液晶層が、第1の範囲にわたって連続的に変化し得る屈折力を提供し、第2の範囲にわたって段階的であるように構成されている、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項7】
前記第1の電極層が電極へとパターニングされ、前記第2の電極層がグラウンドプレーンである、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項8】
前記第1の電極層がグラウンドプレーンであり、前記第2の電極層が電極へとパターニングされる、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項9】
前記第1の表面と前記反射面との間に前記液晶層を封止するために、前記液晶層の外面に配置されているシーリング材をさらに備える、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項10】
ヘッドマウントディスプレイ装置であって、
ディスプレイと、
前記ディスプレイと光通信して、前記ディスプレイが発した光を透過するビームスプリッタを
有する固体光学ブロックと、
前記ビームスプリッタと光通信して、前記ディスプレイが発し、前記ビームスプリッタが透過した前記光を受信し、且つ、前記ビームスプリッタを介して前記ディスプレイの画像を前記ヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に反射する凹反射面と、
前記ビームスプリッタと前記凹反射面との間に前記固体光学ブロックに組み込まれ、且つ可変の屈折力を有して、前記装着者に反射される前記ディスプレイの前記画像の焦点を変える調節可能レンズとを備え
、
前記調節可能レンズが、前記
固体光学ブロックの凸面と前記凹反射面との間に封止される電気活性材料、及び前記電気活性材料の屈折率を変えるように前記電気活性材料に電圧勾配を印加するために、前記凸面上に前記電気活性材料と電気通信して配置された複数の電極を備え、
前記凹反射面が、前記電気活性材料と電気通信するグラウンドプレーンの少なくとも一部を形成する、
前記ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項11】
前記ディスプレイが、前記調節可能レンズの光軸に垂直な軸に沿って偏光された光を発するように構成される、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項12】
前記調節可能レンズが、前記ビームスプリッタと前記凹反射面との間に前記固体光学ブロックに組み込まれたネマチック液晶材料層を備える、請求項11に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項13】
前記調節可能レンズが、前記ビームスプリッタと前記凹反射面との間に前記固体光学ブロックに組み込まれた双安定液晶材料層を備える、請求項11に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項14】
前記ビームスプリッタが、周囲光を前記装着者に透過するように構成される、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項15】
前記調節可能レンズに動作可能に結合されて、前記装着者からの入力に応答して前記調節可能レンズを作動させるコントローラをさらに備える、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項16】
前記調節可能レンズと前記ディスプレイとに動作可能に結合されて、前記ディスプレイ上の画像に応答して前記調節可能レンズを作動させるコントローラをさらに備える、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項17】
前記調節可能レンズが、直角に整列したネマチック液晶材料層を備える、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項18】
前記調節可能レンズが、前記凹反射面の光軸からの距離によって変わる厚さを有する、請求項10に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項19】
請求項10~
16のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置に情報を表示する方法であって、
前記ヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に、前記装着者の眼の調節に一致するように選択された焦点で、前記ヘッドマウントディスプレイ装置を介して情報含有画像を表示するステップ
を含み、前記情報含有画像を表示するステップが、
前記ヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイで前記情報含有画像を生成するステップと、
ビームスプリッタと凹反射面との間に固体光学ブロックに組み込まれた調節可能レンズを通して前記ディスプレイから前記情報含有画像を送信するステップと、
前記凹反射面と前記固体光学ブロック
の凸面とを介して前記情報含有画像を前記装着者に反射するステップと
を含む、前記方法。
【請求項20】
前記情報含有画像の前記焦点を変えるように前記調節可能レンズを作動させるステップをさらに含む、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記調節可能レンズを作動させるステップが、前記装着者からのコマンドに応答して電気活性材料を作動させるステップを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記調節可能レンズを作動させるステップが、前記情報含有画像の情報に応答して前記調節可能レンズを作動させるステップを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記調節可能レンズを作動させるステップが、液晶材料に印加される電圧を変えるステップを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘッドマウントディスプレイ装置を通して前記装着者が見る現実の世界の画像の焦点に影響を与えずに、前記装着者に前記情報含有画像を表示するステップをさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項25】
ヘッドマウントディスプレイ装置であって、
偏光された光を発するディスプレイと、
前記ディスプレイと光通信して、前記ディスプレイが発した前記偏光された光の一部を透過するビームスプリッタ及び凸面を
有する光学ブロックと、
前記ビームスプリッタと光通信して、前記ビームスプリッタが透過した前記偏光された光の前記一部を受信し、且つ、前記ビームスプリッタを介して、前記ディスプレイの画像を前記ヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に反射する凹反射面と、
前記凸面と前記凹反射面との間に封止され、不均一な厚さを有し、前記装着者に反射される前記ディスプレイの前記画像の焦点を変える液晶層と
を備える、前記ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項26】
前記凸面が、前記凹反射面の曲率半径と異なる曲率半径を有する、請求項
25に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項27】
前記液晶層がネマチック液晶を含む、請求項
25に記載のヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項28】
ヘッドマウントディスプレイ装置(300)であって、
ディスプレイ(5)と、
前記ディスプレイ(5)と光通信して前記ディスプレイ(5)が発した光を透過する、ビームスプリッタ(25)及び透明な凸面(70)を
有する光学ブロック(10)と、
前記ビームスプリッタ(25)及び前記透明な凸面(70)と光通信して、前記ディスプレイ(5)が発し、前記ビームスプリッタ(25)が透過した光を受信し、且つ、前記ビームスプリッタ(25)を介して、前記ディスプレイ(5)の画像を前記ヘッドマウントディスプレイ装置(300)の装着者に反射する凹反射面(100)であって、前記透明な凸面(70)が、前記凹反射面(100)の曲率半径と異なる曲率半径を有する、前記凹反射面(100)と、
電気活性材料を含む調節可能レンズであって、前記透明な凸面(70)と前記凹反射面(100)との間に配置され、可変の屈折力を有し、前記装着者に反射される前記ディスプレイ(5)の前記画像の焦点を変える、前記調節可能レンズと
を備える、前記ヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項29】
前記ディスプレイ(5)が、前記調節可能レンズの光軸に垂直な軸に沿って偏光された光を発するように構成される、請求項
28に記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項30】
前記電気活性材料が、前記ビームスプリッタ(25)と前記凹反射面(100)との間に配置されたネマチック液晶材料層を備える、請求項
29に記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項31】
前記電気活性材料が、直角に整列したネマチック液晶材料層を備える、請求項
28~30のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項32】
前記電気活性材料が、前記ビームスプリッタ(25)と前記凹反射面(100)との間に配置された双安定液晶材料層を備える、請求項
29に記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項33】
前記ビームスプリッタ(25)が、周囲光を前記装着者に透過するように構成される、請求項
28~32のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項34】
前記凹反射面(100)が、前記電気活性材料と電気通信するグラウンドプレーンの少なくとも一部を形成する、請求項
28~33のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項35】
前記電気活性材料の屈折率を変えるように前記電気活性材料に電圧勾配を印加するために、前記電気活性材料と前記透明な凸面(70)との間に配置された複数の電極をさらに備える、請求項
28~34のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項36】
前記調節可能レンズに動作可能に結合されて、前記装着者からの入力に応答して前記調節可能レンズを作動させるコントローラ(315)をさらに備える、請求項
28~35のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項37】
前記調節可能レンズと前記ディスプレイ(5)とに動作可能に結合されて、前記ディスプレイ(5)の画像に応答して前記調節可能レンズを作動させるコントローラをさらに備える、請求項
28~36のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【請求項38】
前記調節可能レンズが、前記凹反射面(100)の光軸からの距離によって変わる厚さを有する、請求項
28~37のいずれかに記載のヘッドマウントディスプレイ装置(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月22日に出願された米国特許出願第62/270,896号の優先権を主張し、参照により、その全体を本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、ユーザが頭部または頭部周辺に装着して情報を見る装置である。見る情報は、現実世界で観察されている画像に重ねられる(拡張現実と呼ばれる場合もある)、現実世界の画像を除く提示される情報(仮想画像と呼ばれる場合もある)、または、これらの組み合わせ(仮想/拡張、または、複合現実と呼ばれる場合もある)であってよい。
【0003】
典型的に、今日のHMDに提示される情報含有画像は、単焦点に設定される。最も一般的な焦点は、無限遠、すなわち、「遠距離」である。これによって、ユーザは、拡張現実アプリケーションの場合には、遠くにある現実世界の物体と同時に情報画像に焦点を合わせて見ることができ、仮想現実の場合には、遠距離の情報のみを見ることができる。
【0004】
情報含有画像が、HMDにおいて無限遠焦点でユーザに提示される時、幾つかの問題が生じる。拡張現実を用いる時、情報含有(information-bearing)画像(仮想画像とも呼ばれる)が、遠距離焦点に設定される場合、ユーザは、視線をより近くにある物体、例えば、ハンドヘルドアイテムに移動させたい場合があり、そうすると、仮想画像に焦点が合わなくなる。ユーザが普通に本を読む距離でハンドヘルドタブレットを見る場合に、こういう事が起こり得る。ユーザの眼で調節できる場合、ユーザの眼はタブレットに焦点が合うように焦点を変えるが、仮想画像が遠距離焦点に設定されているので、タブレット画像に焦点を合わせると、仮想画像に焦点が合わない。この場合、仮想画像の焦点を、タブレットと同じ距離に定め直して、仮想画像とタブレットに同時に焦点が合うのが望ましい。
【0005】
HMDを用いて情報含有画像を表示して仮想現実を見る時、同様の問題が生じる。リアリティのある三次元仮想画像を作成するために、仮想画像の焦点は、人間の眼が動的に焦点を変えるように変更されるべきであり、そうすることによって、画像が近いか遠いかを人間の脳に納得させる。情報含有画像が、遠距離焦点のみであり、変化する距離をシミュレーションする他の手段が、焦点距離を変えずに使用される場合、効果は、焦点距離も変更された場合ほどのリアリティがない。仮想現実体験を強化するために、仮想画像は、変化する距離に動的に焦点を定め直すことが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
従来型レンズを使用して、情報含有画像の焦点を変更することができる。しかし、従来型レンズは、ガラスやプラスチックから形成され、比較的重い。さらに、従来型レンズは、一般的に、焦点を変更するために、電気モータ等の電気機械アクチュエータを用いて移動させなければならない。アクチュエータは、重さ、かさ、複雑さをさらに加える。アクチュエータは、比較的大量の電力も消費し得、これは、電源の重さ、かさ、費用も増やし得る。
【0007】
眼と観察する画像との間に配置された液晶レンズ等の電気活性レンズを用いて、眼の焦点を変えることもできる。しかしながら、視線を変えると、眼は上下に動くので、電気活性レンズは、眼の瞳孔よりずっと大きくなければならない。例えば、6mmの瞳孔は、典
型的な凝視角の変化を可能にする十分なカバー範囲を目の前に提供するために、約40mm幅の光学素子を典型的に必要とする。電気活性レンズを用いて達成できる光路差(OPD)の変化に制限があるために、電気活性レンズは、典型的に、積層や位相ラッピング等、光学的に妥協して、所望の光学サイズの必要な屈折力を達成する。これらの光学的妥協は、通常、電力消費を増加させ、より高速の切り替えを必要とし、その両方とも、より大きいサイズ、重量、及び、費用につながる。
【0008】
本技術の実施形態は、HMDと協働して仮想画像の焦点を変更できる小型で効率的な光学システムを含む。ある実施態様においては、この光学システムは、軽量で、広範囲の母集団にわたって眼の調節範囲を補償する十分な屈折力(例えば、約1ジオプターから約15ジオプター)を提供し、かつ、非常に少ない電力しか消費しない。また、この光学システムは、可動部無しに実施できる。
【0009】
例えば、本技術は、HMD装置として実施されてよく、HMD装置は、ディスプレイ、ディスプレイと光通信するビームスプリッタ、ビームスプリッタと光通信する凹反射面、及び、ビームスプリッタと凹反射面の間に配置される調節可能レンズを含む。凹反射面は、屈折率分布型(GRIN)レンズもしくはフレネル構造等の別の集束構成要素を用いて補強、または、置き換えられてもよい。操作時、ビームスプリッタは、ディスプレイが発した光を透過する。(ビームスプリッタは、HMD装置の装着者に周囲光を透過してもよい。)凹反射面は、ディスプレイが発し、ビームスプリッタが透過した光を受信して、ディスプレイの画像を、ビームスプリッタを介して装着者に反射する。調節可能レンズは、装着者に反射されるディスプレイの画像の焦点を変える。
【0010】
ある場合には、ディスプレイは、電気活性材料の光軸に平行な軸に沿って偏光された光を発する。電気活性材料は、ネマチック液晶または双安定液晶を含んでよい。ディスプレイが、偏光された光を発するので、電気活性材料は、従来の装置で必要とされる2層のネマチック液晶層の代わりに、単層のネマチック液晶層として実施されてよい。これによって、装置の大きさ、重量、電力消費、費用、及び、複雑さが低減される。
【0011】
ビームスプリッタは、凸面を画定でき、この場合、電気活性材料は、凸面と凹反射面の間に配置される。凹反射面は、電気活性材料と電気通信するグラウンドプレーンの少なくとも一部を形成してよい。HMD装置は、電気活性材料の可変屈折率を変えるように電気活性材料に電圧勾配を印加するために、電気活性材料と凸面の間に配置された複数の電極も含んでよい。
【0012】
他の場合には、調節可能レンズは、ビームスプリッタと光通信するように配置された変形可能な湾曲した膜を有する液体レンズを含む。この場合には、可撓膜が、凹反射面を画定でき、凹反射面は、凹反射面によって少なくとも部分的に画定された空洞に流体が汲み入れられたり、空洞から汲み上げられたりすると、形を変える。
【0013】
ヘッドマウントディスプレイ装置は、コントローラを含むことができ、コントローラは、調節可能レンズに動作可能に結合されて、装着者からの入力に応答して調節可能レンズを作動させる。さらに、コントローラは、ディスプレイ上の画像に応答して、調節可能レンズを作動できる。
【0014】
本技術は、HMDに情報を表示する方法としても実施されてよい。一例において、HMDは、装着者の眼の調節に一致するように選択された焦点で、HMDの装着者に、情報含有画像を表示する。HMDは、情報含有画像をディスプレイに生成し、ビームスプリッタと凹反射面の間に配置された電気活性材料を通して、情報含有画像を送信し、凹反射面とビームスプリッタを介して装着者に情報含有画像を反射してよい。HMDは、情報含有画
像の焦点を変えるように電気活性材料を作動させてよい。ある場合には、HMDは、装着者からのコマンドに応答して、及び/または、情報含有画像の情報に応答して、電気活性材料を作動させる。HMDは、眼の調節センサからの信号に応答して、電気活性材料を作動させてもよい。眼の調節センサは、視線の輻輳点を決定する瞳孔間距離を測定し、入射光の波面を検出し、瞳孔径と光レベル等を測定し得る。
【0015】
本技術の他の実施形態は、ディスプレイと、ディスプレイと光通信するビームスプリッタと、ビームスプリッタと光通信する凹反射面と、凸面と凹反射面との間に配置された液晶層とを含むヘッドマウントディスプレイ装置を含む。操作時、ディスプレイは、偏光された光を発する。ビームスプリッタは、ディスプレイが発した偏光された光の一部を透過させる。凹反射面は、ビームスプリッタが透過させた偏光された光の一部を受信し、ディスプレイの画像をビームスプリッタを介してヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に反射する。液晶層は、装着者に対して反射されるディスプレイの画像の焦点を変える。
【0016】
本技術のさらに別の実施形態は、ディスプレイと、ディスプレイと光通信するビームスプリッタと、ビームスプリッタと光通信する液体レンズと、液体レンズ及びビームスプリッタと光通信する鏡とを含むヘッドマウントディスプレイ装置を含む。操作時、ビームスプリッタは、ディスプレイが発した光を透過する。液体レンズは、可変の屈折力を提供する。また、鏡は、ディスプレイが発し、ビームスプリッタが透過した光を液体レンズを介して受信して、ディスプレイの画像を液体レンズを介してヘッドマウントディスプレイ装置の装着者に反射する。
【0017】
上記概念と、以下でさらに詳細に論じる追加の概念の組み合わせは全て(このような概念が互いに矛盾しないことを条件として)、本明細書に開示の発明の主題の一部であるとみなされることを理解されたい。特に、本開示の最後に記載する特許請求する主題の組み合わせは全て、本明細書に開示の発明の主題の一部であるとみなされる。参照によって組み込まれた任意の開示にも出現し得る本明細書で明示的に採用された用語は、本明細書に開示の具体的な概念と最も一致する意味であることも理解されたい。
【0018】
図面は主に、説明的な目的であり、本明細書に記載の発明の主題の範囲を制限することを意図していないことを、当業者は理解されよう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、本明細書に開示の発明の主題の様々な面が、異なる特徴の理解を容易にするために、図面において、誇張または拡大されて示されている場合がある。図面において、類似の参照番号は、一般的に、類似の特徴(例えば、機能的に類似する、及び/または、構造的に類似する素子)を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の従来型のバードバス光学素子の側面図である。
【
図2】HMDの従来型のバードバス光学素子の側面図である。
【
図3A】湾曲した電気活性集束素子を有する可変焦点バードバス光学素子の分解図である。
【
図3B】交差した電気活性円筒形レンズ対を有する可変焦点バードバス光学素子の断面図である。
【
図3C】
図3Aに示す可変焦点バードバス光学素子を有するHMDの斜視図である。
【
図4】
図3Aに示す湾曲した電気活性集束素子を作動させるための同心円の環状電極を形成するようにパターニングされた導電と絶縁の材料の層を示す図である。
【
図5】
図4に示す導電と絶縁の材料の層を示す別の図である。
【
図6】
図3Aに示す湾曲した電気活性集束素子のパッドと電極との電気的接続を示す図である。
【
図7A】膜ベースの動的集束バードバス光学素子を示す図である。
【
図7B】膜ベースの動的集束バードバス光学素子を示す図である。
【
図8A】遠くの物体に装着者の焦点を合わせ、仮想画像が無限遠焦点に設定された、可変焦点バードバス光学素子を備えたHMDを通した光景を示す図である。
【
図8B】近くの物体に装着者の焦点を合わせ、仮想画像が無限遠焦点に設定された、可変焦点バードバス光学素子を備えたHMDを通した光景を示す図である。
【
図8C】近くの物体に装着者の焦点を合わせ、仮想画像の焦点をユーザの眼の調節に一致させた、可変焦点バードバス光学素子を備えたHMDを通した光景を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
電気活性レンズ凹面鏡等の動的集束素子を有するバードバスは、眼の調節を補償するために、または、奥行の錯覚を強めるために、仮想画像の焦点の動的変更を可能にする。バードバスは、ユーザの屈折異常を補償する能力も提供し、ユーザが、HMDを用いる時、HMDデバイスと眼の間に眼鏡等の矯正レンズを装着する必要がなくなる。このようなバードバスシステムによって、電力消費が少なく可動(機械)部分が無いHMDによって表示された仮想画像の焦点を動的に変更できる。
【0021】
発明のHMDデバイスの用途は、運転中、道路から目を離す必要のない地図案内、同じ視野内でバイタルサインデータを提供されながら手術をすること、修理または補修中の現実の物体に仮想の指示図を重ねて修理、補修マニュアルを利用すること、軍事要員や警察官に、「目標から目」を離さない状態で、追加の戦術情報を与えて、軍事要員や警察官の状況認識を向上させることを含むが、これらに限らない。
【0022】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の従来型バードバス
図1は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と共に使用される従来型の「バードバス」光学素子100を示す。光学素子100は、小型ディスプレイまたは他のディスプレイソース5、光学ブロック10、ビームスプリッタ25、及び、凹面鏡35を含む。小型ディスプレイまたは他のディスプレイソース5からの情報含有画像は、光学ブロック10(この場合、固体であるが、気体であってもよい)に入り、ビームスプリッタ25にぶつかる。ビームスプリッタ25は、光の一部を眼からそらせ、光の一部が鏡35に向かい続けるのを可能にする。この例において、鏡35は、ある角度をなして入射光線40を反射する湾曲した凹面鏡で、光線40を焦点に集束させる。光線40は、再度、ビームスプリッタ25にぶつかり、集束する光線45を眼50の方に反射する。
【0023】
鏡35は凹形なので、目に近付く波面も凹形、または、「定焦点」であり、眼の光学要素(すなわち、角膜及び水晶体)が、眼がデバイスのかなり近くにある状態で、網膜上に画像を結ぶのを可能にする。鏡35が平らであれば、画像に焦点を合わせるために眼を助ける矯正用光学素子が眼の前に必要となるが、鏡35の曲率によって、矯正用光学素子は必要なくなる。しかしながら、眼の調節無しに画像の焦点が合うためには、眼はデバイスから所定の距離になければならない。典型的な所定の距離は、11~15mmである。これらの距離で、眼の前にデバイスがあると、人は、心地よく感じる。
【0024】
図2は、
図1に示す凹面鏡35より短い曲率半径を有する凹面鏡65を含む以外は、
図1のデバイス100に類似したバードバス光学素子200を示す。鏡の曲率半径が短くなると、眼の調節も矯正用光学素子も用いずに画像に焦点が合うためには、眼50がデバイス200に近付く必要がある。すなわち、
図2は、バードバス200の凹面鏡35の曲率の変更は、光線55と60の集束角度を変更することによって、バードバス200によって提供される仮想画像の焦点を変えることを示す。
【0025】
HMDの液晶動的集束鏡バードバス
動的集束バードバスは、電気活性レンズまたは液体レンズ等、鏡と組み合わされ、バードバスシステムの内側に組み込まれた調節可能レンズを含む。調節可能な焦点距離を有するレンズをディスプレイとバードバスの凹面鏡との間に(例えば、
図1の鏡35、または、
図2の鏡65の上に)配置することによって、凹面鏡のパワーと仮想画像の焦点とを可動部無しに変えることを可能にする。これによって、システム全体を少なくとも以下のように改良する。
【0026】
第1に、鏡を調節可能レンズと組み合わせることによって、動的集束バードバス光学素子を通してユーザが見る情報含有画像の焦点が、ユーザが動的集束バードバス光学素子を通して見る現実の世界の画像の焦点に影響を与えずに、調整されてよい。これは、自分の眼で調節する人にとって非常に有用である。
【0027】
第2に、調節可能レンズは、光が鏡に向かう途中でレンズを通り、その後、反射された後、再度、通るように鏡と協働するので、レンズは、光を二度、妨害し、その屈折力の範囲を効果的に2倍にする。これによって、電力消費、デバイスの複雑さ、及び、光散乱を低減する。
【0028】
第3に、バードバス光学素子内部で凹面鏡と組み合わされ、偏光された出力を発するディスプレイエンジンと共に使用される液晶光学素子として実施される時、ネマチック液晶または他の偏光感受性材料の単層しか必要なく、複雑さ、費用、電力消費、及び、光損失を低減する。逆に、動的補償液晶光学素子が、単一パス形状で配置されると、入射周囲光は必ずしも偏光されていないので、各補償素子は、2層の液晶(各偏光状態に関して1層)を必要とする。2つの別個の補償レンズを有するデバイスは、最大4つの液晶層を有し、各補償レンズは、2つの直角に整列したネマチック液晶層を有する。ネマチック液晶は、一度に1つの偏光状態を変えることができるので、各補償レンズは、2つの直角に整列した液晶層を有する。偏光されていない光に作用するために、ビームスプリッタ、または、補償レンズの偏光子対は、ネマチック液晶層によって変調できる直交の偏光状態に偏光されていない光を変化させる。これによって、両方の偏光状態の光を両方とも同時に変えることを確実にする。対照的に、電気活性凹面鏡を有するバードバス光学素子は、単層の液晶層で実施することができ、単層の液晶層は、ディスプレイエンジンから来る偏光された光を集束させ、現実の世界から来る偏光されていない光を集束させる必要はない。
【0029】
図3Aは、液晶ベースの動的に調節可能な凹面鏡310を有する可変焦点バードバス光学素子300の例示的な構造を断面で示す。
図1、
図2に示すバードバス同様、
図3Aのバードバス光学素子300は、ディスプレイ5と、ビームスプリッタ25及び透明な凸面70を画定する光学ブロック10とを含む。しかしながら、従来型のバードバス光学素子とは異なって、バードバス光学素子300は、透明な凸面70と凹面反射層100との間に挟まれた幾つかの層を含む。これらの層は、一緒になって、液晶ベースの動的に調節可能な凹面鏡310を形成する。
【0030】
図3Aに示すように、透明な凸面70は、40nm厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)層等、(実質的に)透明な導電性材料層75を塗布される。層80は、ラビングしたポリイミド等の配向層である。層85は、液晶材料層、例えば、15ミクロンの厚さのMerck MLC-2140の層である。層90は、別の配向層であり、ラビングしたポリイミドであってもよい。
【0031】
層95は、液晶材料を作動させる電極を形成するようにパターニングされた導電性材料と絶縁材料とを含む。例えば、層95は、例えば、
図4~
図6に関して以下に詳細に記載
するように、一連の同心円状の導電リングにパターニングされてよい。層95は、直角に配置、積層された線形電極を含む、異なる形状でパターニングされた電極を含んでもよく、電極は個々に、円柱屈折力を生成し、併せて、球面屈折力を生成する。層95は、個々にアドレス可能なピクセルで構成された領域(ピクセル)を形成するようにパターニングされてもよく、各ピクセル領域は個々に、作用して、ピストンのみ位相差(piston-only retardation)を生成する。これらのピクセルは、まとめて作動されて、球形、円筒形、または、任意の波面形状を生成できる。
【0032】
凹面反射層100は、反射面を形成し、アルミニウムまたは他の適切な反射材料から形成できる、または、アルミニウムまたは他の適切な反射材料を含み得る。表面105は、層75から層100までを表面105と表面70との間に閉じ込めるエンドキャップである。上記層のそれぞれの外面には、Norland65または他の接着剤等のシーリング材(図示せず)があって、液晶が無くなるまたは漏れ出るのを防ぐ。
【0033】
透明な凸面70と凹面反射層100との間に挟まれた各層は、均一の厚さ、または、液晶ベースの動的に調節可能な凹面鏡310の光軸からの距離によって変わる厚さを有し得る。言い換えると、透明な凸面70と凹面反射層100は、同じ曲率半径を有してもよく、異なる曲率半径を有してもよい。正の屈折力のために構成された単極を有する動的に調節可能な凹面鏡310において、例えば、液晶層85は、動的に調節可能な凹面鏡310の中心で厚く、動的に調節可能な凹面鏡310の端で薄くてよい。液晶層85はネマチック、コレステリック、または、他の双安定液晶材料を含んでよい。この場合、凹面反射層100は、透明な凸面70より小さい曲率半径を有する。負の屈折力を有するレンズに関しては、逆のことが当てはまる、すなわち、液晶層85は、中心で薄く、端で厚い。
【0034】
複数の電極を有する動的に調節可能な凹面鏡310において、液晶層85は、よりプラスの屈折力を有するように屈折力を偏らせるために、動的に調節可能な凹面鏡310の中心で厚く、動的に調節可能な凹面鏡310の端で薄くてよい。例えば、無限のステップでゼロから3ジオプターに調節できる代わりに、一度、個別のジャンプでゼロから1ジオプターに調節し、次に、無限のステップで1から4ジオプターに調節するように設計されてよい。この場合、凹面反射層100は、透明な凸面70より小さい曲率半径を有する。この構成の逆、すなわち、端より中央の方が薄い電気活性素子を用いると、より負の屈折力を有する方にレンズを偏らせる。
【0035】
凹面反射層100と透明な凸面70との曲率半径も、動的に調節可能な凹面鏡310の所望の焦点距離によって決まる。光学分野ではよく知られているように、凹面鏡の焦点距離は、以下の式で与えられる。
ここで、s
0は、鏡から物体の距離、s
1は、鏡から画像の距離、Rは、鏡の曲率半径、fは、鏡の焦点距離である。一般的に言えば、凹面反射層100と透明な凸面70との曲率半径は、物体の距離が、2mmから無限遠の間の距離、画像の距離が、2mmから無限遠の間の距離であるように、この式に従って選択されてよい。動的液晶レンズを湾曲した鏡に追加する時、湾曲した鏡の新しい調節された焦点距離は、結果として得られる焦点距離に、鏡に向かう、また、鏡から離れるように進む光線に対する液晶の効果の影響を追加または減じることによって計算できる。例えば、固定の鏡が、10ジオプターの屈折力(すなわち、焦点距離100mm)を生成し、液晶レンズが、2ジオプターのプラスの屈折力(すなわち、焦点距離500mm)を加える場合、新しい焦点距離は、12ジオプター
(すなわち、焦点距離83.3mm)である。
【0036】
図3Bは、直交軸に沿って可変の円筒形パワーを提供する対になった交差した液晶レンズ311a、311b(まとめて、液晶レンズ311)を含むバードバス光学素子301を示す。各液晶レンズ311は、対応する配向層の対380a/380bと390a/390bの間に挟まれた対応する液晶層385a/385bを含む。また、各液晶層385a/385bは、ネマチック液晶材料またはコレステリックもしくは他の双安定液晶材料を含んでよい。共通のグラウンドプレーン395が、配向層390aと390bの間に配置される。各液晶レンズ311は、線形電極セット375a/37bも含む。
図3Bに示すように、これらの線形電極セット375a/375bは交差している。この例において、線形電極375aは、y軸に平行に配列され、線形電極375bは、z軸に平行に配列される。一般的に、線形電極は、バードバス光学素子の光軸に垂直なプレーン(
図3BのX軸)において任意の対の直交方向に配列できる。
【0037】
交差した動的に調節可能なレンズ311は、一緒になって、適切な波形を電極に印加することによって個々に調整できる円柱屈折力を提供する。屈折力は、例えば、ユーザの眼または光路の他の箇所の非点収差を補償するために、正味の球面屈折力を生成するように、または、所望の量の非点収差を生成するように選択されてよい。
【0038】
バードバス光学素子300がより多いまたは少ない構成要素を含み得ることを、当業者は容易に理解されよう。例えば、液晶ベースの動的に調節可能な凹面鏡310は、液晶と電極の追加の層を含む、より多いまたはより少ない層を含んでよい。層は、異なる順番で配置されてもよい。また、バードバス光学素子300の入射窓及び出射窓は、グレアを低減する偏光フィルタ、反射防止コーティング、及び/または、傷防止コーティングを塗布されてよい。
【0039】
図3A、
図3Bに示す電気活性レンズによって提供された可変の屈折力は、代わりに、または、他の種類のデバイスに追加して、提供され得ることも当業者は理解されよう。例えば、電気活性レンズは、例えば、米国特許第9,329,309号に開示された反射フレネルレンズを含んでよく、同特許は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。同様に、各電気活性レンズの液晶部分は、グレーデッドインデックス(GRIN)液晶レンズ、回折液晶レンズ、フロート電極を有する液晶レンズ、可変液晶厚レンズ、様々な配向層強度の液晶レンズ、様々なポリマーネットワーク密度の液晶レンズ、または、様々な光配向露光の液晶レンズとして実施されてよい。GRINレンズとして実施される場合、電気活性レンズは、液晶から様々な間隔をおいた電力供給電極、高誘電率絶縁層とホールパターニングされた電極、厚い絶縁層とホールパターニングされた電極、高抵抗導電層、または、ホールとリングベースの電極を有してよい。電気活性レンズは、ブルー相偏光不感受性レンズ、ダークコングロメレート相偏光不感受性レンズ、ねじれネマチック(TN)液晶透過ベースのフレネルゾーンプレート、または、空間光変調器(SLM)適応光学システムとして実施されてもよい。
【0040】
動的に調節可能な凹面鏡の制御
図3Aに示すバードバス光学素子300は、従来型のバードバスディスプレイにはない他の素子、すなわち、コントローラ315とオプションのアンテナ320を有する電子機器アセンブリ325も含む。この電子機器アセンブリ325は、
図3CのHMD302の一部として示されるハウジング335内に取り付けられてよく、ハウジング335は、ディスプレイソース5と、電源及び任意の他の電子機器も含み得る。例えば、ハウジング335は、センサ340も保持してよく、センサ340は、周囲光のレベル、動き、範囲、または、バードバス光学素子300及び/またはディスプレイソース5の作動に使用し得る任意の他のパラメータを検出する。
【0041】
操作時、コントローラ315は、電極を介して液晶層85に印加する電圧を変えることによって情報含有画像(仮想画像)の焦点を制御する(
図4~
図6に関して以下に記載する)。バリエーションは、電極、コントローラ315、及び、焦点を制御するユーザインタフェースに応じて、2値(例えば、近いまたは遠い)、位置の範囲を通じて段階的(例えば、無限遠焦点、2メートル焦点、1メートル焦点、50cm焦点、25cm焦点等)、または、特定の範囲にわたって連続的に変化(例えば、無限遠焦点から25cm)であってよい。
【0042】
ある場合には、コントローラ315は、例えば、バードバス光学素子300を制御するために装着者が使用する別個のデバイスから、アンテナ320によって受信された信号に応答して、情報含有画像の焦点を変更する。例えば、装着者は、スマートフォン、スマートウォッチ、フォブ型コントローラ、または、他の適切なデバイスからコントローラ315に無線制御信号(例えば、BluetoothまたはWifi信号)を送信してよい。
【0043】
装着者は、ボタンを押すことによって、または、バードバス光学素子300が取り付けられたヘッドマウントディスプレイ302のテンプルまたはフレーム上の領域345をスワイプすることによって、情報含有画像の焦点を調節してもよい。ボタンに一度タッチする、または、第1の方向に領域345をスワイプすることによって、焦点を近くにしてよく、ボタンに二度タッチする、または、第2の方向に領域をスワイプすることによって、焦点を遠くにしてよい。
【0044】
コントローラ315は、情報含有画像自体に基づいて、情報含有画像の焦点を変えてもよい。これらの場合、コントローラ315は、ディスプレイ5に動作可能に結合されて、制御してよい、及び/または、ディスプレイ5を制御するプロセッサ(図示せず)に動作可能に結合されて、プロセッサからの制御信号を受信してよい。ディスプレイ5が、食料品店の棚の商品に関する情報等、短焦点で見られることを意図した情報を表示する場合、コントローラ315は、自動的に、情報含有画像が短焦点で見えるようにしてよい。同様に、ディスプレイ5が、高速道路の次の出口に関する情報等、無限遠焦点で見られることを意図した情報を表示する場合、コントローラ315は、自動的に、情報含有画像が無限遠焦点で見えるようにしてよい。装着者は、バードバス光学素子300を介して異なる種類の情報を見ることによって、情報含有画像の焦点を間接的に制御してよいことに注意されたい。
【0045】
コントローラ315は、解剖学的トリガに応答してもよい。例えば、コントローラ315は、周囲光レベル及び/または瞳孔径を検出する光検出器(例えば、
図3Cのセンサ340)からの信号に基づいて、眼の調節を検出してよい。コントローラ315は、加速度計及び/またはジャイロスコープからの信号に基づいて、装着者の頭部の位置または向きを検出してもよい。コントローラ315が、加速度計及び/またはジャイロスコープの信号に基づいて、装着者が見下ろしていることを検出した場合、コントローラ315は、情報含有画像を短焦点にしてよい。また、コントローラ315が、加速度計及び/またはジャイロスコープの信号に基づいて、装着者が見上げていることを検出した場合、コントローラ315は、情報含有画像を無限遠焦点にしてよい。コントローラ315は、神経インパルスまたは脳波の電気的検出に基づいて、情報含有画像の焦点を変えるように構成されてもよい。
【0046】
動的に調節可能な凹面鏡の電極
図4及び
図5は、電極層95をより詳細に示す。
図4は、層95を真横から見た図で、層95は、反射層100上に位置してよく、反射層100は、エンドキャップ105上に位置している。
図4に示された視点は、凹面内にエンドキャップを見ている視点である。
電極層95の一部を含んで、導電性で光透過性の材料からできた一連の同心円状電極110が、層100上にパターニングされる。電極110の上に、電気絶縁層(図示せず)があって、電極と、電極間の隙間とを覆っている。絶縁層内にパターニングされたホール115が、
図5に示すように、電極110のそれぞれの小さい領域を露出させている。絶縁層は、典型的に240nmの厚さの二酸化ケイ素であってよく、または、電子リソグラフィを用いて処理できる任意の他の電気的に絶縁の実質的に透明な材料であってよい。
【0047】
図6は、(
図5で記号を付した)7つのホール115を7つの電気接続パッド125に接続する一連の7つのバスライン120を示す。この構成を用いて、電力を各パッド125に印加できる、また、バスライン120が他の電極110の上を超えて通るので、電流は、短絡無しに、対応する電極110に流れる。バスライン120とパッド125は、例えば、約120nmの厚さにスパッタリングされた、ニッケルまたは他の適切な導電材料から形成できる。
【0048】
電子活性凹面鏡の焦点を変えるために、回路の反対側をグラウンドプレーン(層75)に接続して、勾配状に各電極に電位が印加される。例示の電圧プロファイルは、中心から外側の電極に向かって、それぞれ、0.6、0.7、0.8、0.95、1.2、1.55、及び、1.9ボルトであってよい。この電圧プロファイルは、屈折力を反射面に追加する。電圧シーケンスを逆にすると(例えば、中心から外側の電極に向かって、それぞれ、1.9、1.55、1.2、0.95、0.8、0.7、及び、0.6ボルト)、レンズ全体の屈折力が下がる。これによって、ユーザが、(正の屈折力を用いて)仮想画像が近くに見えるようにし、または、(負の屈折力を用いて)遠くに見えるようにすることを可能にする。
【0049】
この例示の実施形態において、パターニングされた電極は、層95にあり、グラウンドプレーンは、層75である。しかしながら、グラウンドプレーンが層95であるように、2つを逆転することによって、層95は、反射層100と結合して、光学的な反射面と電気的なグラウンドプレーンの両方として働き、複雑さと費用を低減してよい。
【0050】
この例示の実施形態において、7つの電極がある。設計に応じて、より多くの電極を使用することによって、より高品質の光学的結果を生成し得る。例えば、典型的な高品質設計は、10mmの直径を有するレンズに100以上の電極を利用してよい。同様に、
図4~
図6は、円形の電極を示すが、球面屈折力に可変非点収差を提供するように互いに直交に配置された2つの円筒形レンズを生成するように構成された線形電極を含む、他の形状も使用されてよい。
【0051】
図3~
図6に示される動的に調節可能な凹面鏡310は、液晶層の屈折率に勾配をもたせることができる複数の電極を含む。この勾配は、液晶層に入射する光を集束させる。他の技術を使用して凹面鏡の屈折力を変更できることを、当業者は容易に理解されよう。例えば、動的に調節可能な凹面鏡は、印加された応力、張力、または、電磁場に応答して屈折率が変化する電気光学ポリマーまた結晶を含んでよい。
【0052】
HMD用の液体レンズ動的集束鏡バードバス
あるいは、反射面は、可撓膜上に形成されてよく、可撓膜は、バードバスの凸面と共に封止された空洞を画定する。封止された空洞内に屈折率整合流体を汲み入れることによって、膜を膨らませ、動的に調節可能な凹面鏡の焦点距離を変える。空洞から液体を引き出すことにより、膨らみを軽減して、焦点距離を元の値に戻す。可撓膜は、静電的に、圧電機械的に、熱的に、または、任意の他の適切な技術を用いて、作動させることもできる。
【0053】
図7A及び
図7Bは、膜ベースの動的集束鏡710を有するバードバス700を示す。
膜ベースの動的集束鏡710は、透明の剛性壁725の反対側に配置された変形可能な湾曲した膜720を含む。湾曲した膜720は、反射性、または、反射コーティングを塗布されて、入射光を透明な剛性壁725に向かって反射する。湾曲した膜720と透明な剛性壁725は、一緒に、空洞721を画定し、空洞721は、開口730と流体チャネル709を通して流体リザーバ705と流体連通する。膜ベースの動的集束鏡710は、ポンプ706も含み、ポンプ706は、流体リザーバ705に結合される(あるいは、流体通路の別の部分に結合されてもよい)。また、バードバス700は、ポンプ706を制御するコントローラ715を含む。
【0054】
操作時、コントローラ715は、アンテナ320、センサ340、スイッチ(例えば、ユーザがアクティブ化する領域)345等からの信号に応答して、ポンプ706を作動させる。ポンプ706は、流体リザーバ705と空洞721の間で透明な流体707を汲み上げることによって、コントローラ715からの作動信号に応答する。例えば、ポンプ706は、流体707を空洞721に押し入れて、湾曲した膜720を
図7Aに示すように透明な剛性壁725から離してよい。これによって、集束鏡の曲率半径を減らして、その屈折力を増加させる。同様に、ポンプ706は、空洞721から流体707を押し出すことによって、湾曲した膜720を
図7Bに示すように透明な剛性壁725の方に移動させてもよい。これによって、集束鏡の曲率半径を大きくして、その屈折力を減じる。屈折力の正確な変化は、空洞721の流体の量と圧力によって決まり、コントローラ715によって、連続的に(アナログで)または段階的に(デジタルで)制御できる。
【0055】
集束して眼の調節を補償し得るバードバス光学素子は、
図7A及び
図7Bに示すポンプベースの流体レンズに加えて、多くの種類の液体ベースのレンズを用いて実施できることを、当業者は容易に理解されよう。例えば、オイル、生理食塩水、及び/または、他の流体を使用して、可変の屈折力を提供するエレクトロウェッティングレンズを用いて実施できる。また、電気的に制御された形状変形カプセルレンズを用いて実施できる。
【0056】
動的に調節可能な凹面鏡を通して仮想画像を見ること
図8A~
図8Cは、
図3A、
図7A、
図7Bに示すような動的に調節可能な凹面鏡を含むバードバス光学素子を有するヘッドマウントディスプレイを通して、眼を調節する装着者が見る実像及び仮想画像を示す。
図8Aは、装着者が、無限遠焦点にある、または、その近くにある物体805aをバードバス光学素子を通して見ている時、装着者に見える光景を示す。無限遠焦点にある物体805aは、はっきりと焦点が合って見えるが、左下にあるワインボトル801a等の近くの物体は、かすんで、または、不明瞭に見える。装着者の眼が、遠くの物体805aに焦点を合わせているので、動的に調節可能な凹面鏡は、無限遠焦点にある仮想画像803a(ここでは、物体のラベル)にもはっきりと焦点が合って見えるように設定される。
【0057】
図8Bは、装着者が、仮想画像の焦点を変更すること無しに、バードバス光学素子を通して近くの物体を見ている時、装着者に見える光景を示す。この場合、ワインボトル801bと最前面の他の物体は、はっきりと焦点が合って見えるが、背景の物体805bは、かすんで、または、焦点が合ってないように見える。装着者の眼が調節されるので、無限遠焦点にある情報含有画像803bはいずれも、かすんで、または、焦点がずれて見える。(上記のように、従来型のバードバス光学素子は、眼の調節を考慮できないので、従来型のバードバス光学素子が表示する情報含有画像は、焦点が変わる装着者にとって焦点がずれて見える場合がある。)
【0058】
図8Cは、仮想画像の焦点を変更して、装着者が、バードバス光学素子を通して、近くの物体を見ている時、装着者に見える光景を示す。再び、ワインボトル801cと最前面の他の物体は、はっきりと焦点が合って見えるが、背景の物体805cは、かすんで、ま
たは、焦点がずれて見える。この場合、しかしながら、バードバス光学素子の焦点は、短焦点で情報含有画像803cを生成するように選択されて、そうすることによって、画像803cもはっきりと焦点が合って見える。この選択は、バードバス光学素子上の、もしくは、バードバス光学素子に結合されたアクチュエータを介して、または、スマートフォン、スマートウォッチ、もしくは、専用デバイス等のリモートコントロールを介して、ユーザによって行われてよい。バードバス光学素子は、できれば、表示されている情報に基づいた、ディスプレイコントローラからの信号に応答して、または、周囲光のレベルの変化がない瞳孔径の変化等の、解剖学的手掛かりの検出に応答して、自動的に焦点を調節してもよい。
【0059】
結論
様々な発明の実施形態を本明細書に記載、示してきたが、機能を行うための、及び/または、結果、及び/または、本明細書に記載の利点の1つまたは複数を得るための様々な他の手段及び/または構造を、当業者は容易に構想されよう。また、このような変形及び/または修正のそれぞれは、本明細書に記載の発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的にいうと、本明細書に記載の全てのパラメータ、寸法、材料、及び、構成は、例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/または、構成は、発明の教示を使用する特定の用途(複数可)によって決まることを当業者は容易に理解されよう。当業者は、単に日常的な実験を用いて、本明細書に記載の特定の発明の実施形態の多くの均等物を認識、または、確認できよう。よって、上記実施形態は、例としてのみ提示したものであり、添付の請求項とその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、詳細に記載し、特許請求するのと別の方法で実践されてよいことを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、品物、材料、キット、及び/または、方法に関する。さらに、2つ以上のこのような特徴、システム、品物、材料、キット、及び/または、方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、品物、材料、キット、及び/または方法が互いに矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0060】
上記実施形態は、多くの方法のいずれかで実施できる。例えば、本明細書に開示の技術を設計、作成する実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、または、それらの組み合わせを用いて実施されてよい。ソフトウェアで実施される時、1つのコンピュータに備えられる、または、複数のコンピュータ間に分散される、任意の適切なプロセッサまたはプロセッサの集まり上で、ソフトウェアコードを実行できる。
【0061】
さらに、コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、または、タブレットコンピュータ等の多くの形態のいずれかで実現されてよいことを理解されたい。さらに、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、または、任意の他の適切なポータブルもしくは固定の電子デバイスを含む、一般的にコンピュータとはみなされないが、適切な処理能力を備えたデバイスに埋め込まれてよい。
【0062】
また、コンピュータは、1つまたは複数の入力装置及び出力装置を有してよい。これらの装置を使用して、特に、ユーザインタフェースを提示できる。ユーザインタフェースを提供するのに使用できる出力装置の例は、出力を視覚的に提示するためのプリンタまたはディスプレイ画面と、出力を聴覚的に提示するためのスピーカまたは他の音声生成装置とを含む。ユーザインタフェースに使用できる入力装置の例は、キーボードならびに、マウス、タッチパッド、及び、デジタルタブレット等のポインティングデバイスを含む。別の例としては、コンピュータは、音声認識を通して、または、他の可聴フォーマットで入力情報を受信してよい。
【0063】
このようなコンピュータは、企業ネットワーク及びインテリジェントネットワーク(I
N)またはインターネット等のローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークを含む、任意の適切な形式の1つまたは複数のネットワークによって接続されてよい。このようなネットワークは、任意の適切な技術に基づいてよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してよく、また、無線ネットワーク、有線ネットワーク、または、光ファイバネットワークを含んでよい。
【0064】
本明細書に概要を述べた(例えば、前述した技術を設計、製作する)様々な方法またはプロセスは、様々なオペレーティングシステムまたはプラットフォームの任意の1つを採用する1つまたは複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてよい。さらに、このようなソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語、及び/または、プログラミングもしくはスクリプティングツールのいずれかを用いて書かれてよく、また、フレームワークもしくは仮想マシンで実行される実行可能機械語コードまたは中間コードとしてコンパイルされてよい。
【0065】
この点で、1つまたは複数のコンピュータまたは他のプロセッサ上で実行されると、上記発明の様々な実施形態を実施する方法を行う1つまたは複数のプログラムを用いて符号化されたンピュータ可読記憶媒体(または、複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つまたは複数のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光学ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイもしくは他の半導体装置の回路構成、または、他の非一時的媒体もしくは有形のコンピュータ記憶媒体)として、様々な発明の概念が実現されてよい。コンピュータ可読媒体(複数可)は、そこに記憶されたプログラム(複数可)が、1つまたは複数の異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされて、上記のような本発明の様々な態様を実施できるように、可搬であってよい。
【0066】
「プログラム」または「ソフトウェア」という語は、本明細書では一般的な意味で使用され、上記実施形態の様々な態様を実施するようにコンピュータまたは他のプロセッサをプログラムするように採用できる任意の種類のコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令セットを指す。さらに、一態様によると、実行されると、本発明の方法を行う1つまたは複数のコンピュータプログラムは、1つのコンピュータまたはプロセッサに常駐する必要はなく、多くの異なるコンピュータまたはプロセッサ間にモジュール式に分散されて、本発明の様々な態様を実施してよいことを、理解されたい。
【0067】
コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のコンピュータまたは他の装置によって実行される、プログラムモジュール等、多くの形態であってよい。一般的に、プログラムモジュールは、特定のタスクを行う、または、特定の抽象データ型を実施するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。典型的に、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態で所望のように組み合わされてよい、または、分散されてよい。
【0068】
また、データ構造は、任意の適切な形式でコンピュータ可読媒体に記憶されてよい。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造の位置を通して関連するフィールドを有するように示されてよい。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体の位置を有するフィールドにストレージを割り当てることによって達成されてよい。しかしながら、ポインタ、タグ、または、データ要素間の関係を構築する他の機構の使用を含む、任意の適切な機構を使用して、データ構造のフィールドの情報同士の関係を構築してよい。
【0069】
また、様々な発明の概念は、1つまたは複数の方法として実現されてよく、その例を記載してきた。方法の一部として行われる行為は、任意の適切な方法で順番付けられてよい
。従って、例示したのとは異なる順番で行為が行われる実施形態が構築されてもよく、説明のための実施形態においては順次的な行為として示したが、幾つかの行為を同時に行うことを含んでよい。
【0070】
本明細書で定義し、使用した、全ての定義は、辞書の定義、参照によって組み込んだ書類の定義、及び/または、定義された用語の通常の意味に優先すると理解されたい。
【0071】
明細書及び請求項で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明確に別段の記載の無い限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。
【0072】
明細書及び請求項で使用される「及び/または」という句は、それによって結合された要素の「いずれか、または、両方」、すなわち、ある場合には、接続的に存在する要素、また、他の場合には、離接的に存在する要素を意味すると理解されたい。「及び/または」と共に列挙された複数の要素は、同様に、すなわち、それによって結合された要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。「及び/または」の節で具体的に特定された要素以外の、具体的に特定されたこれらの要素に関連する、または、関連しない他の要素が、オプションで存在してよい。従って、非制限的な例として、「A及び/またはB」は、「含む」等のオープンエンドの語と共に使用される時、一実施形態においては、Aのみ(オプションで、B以外の要素を含む)を指し、別の実施形態においては、Bのみ(オプションで、A以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態においては、AとBの両方(オプションで、他の要素を含む)を指す等である。
【0073】
明細書及び請求項で使用される場合、「または」は、上に定義した「及び/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、リスト内の項目を分ける時、「または」または「及び/または」は、包括的、すなわち、要素の数またはリストのうち、少なくとも1つを含むが、2つ以上も含む、また、オプションで、追加の列挙されていない項目も含むとして解釈される。「~の1つのみ」もしくは「~のちょうど1つ」、または、請求項で使用される「~から成る」等の明らかに逆を示す用語は、要素の数またはリストのうちの1つの要素だけを含むことを指す。一般的に本明細書で使用される「または」という語は、「either(いずれか)」、「~の1つ」、「~の1つのみ」、または、「~のちょうど1つ」等の排他的な語の後に来るとき、排他的な代替(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)を示すとだけ解釈される。請求項で使用される時、「実質的に~から成る」は特許法の分野で使用される通常の意味を有する。
【0074】
明細書及び請求項で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに言及して「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及びあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しない、要素のリストにある要素の任意の1つまたは複数から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解されたい。この定義は、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内に具体的に特定された要素以外の、具体的に特定された要素に関連する、または、関連しない要素が、オプションで存在してよいことも可能にする。従って、非制限的な例として、「AとBの少なくとも1つ」(または、同等で、「AまたはBの少なくとも1つ」または、同等で、A及び/またはBの少なくとも1つ)は、一実施形態においては、オプションで2つ以上を含む、少なくとも1つのAで、Bは存在せず(及び、オプションで、B以外の要素を含む)を指すことができ、別の実施形態においては、オプションで2つ以上を含む、少なくとも1つのBで、Aは存在せず(及び、オプションで、A以外の要素を含む)を指すことができ、さらに別の実施形態においては、オプションで2つ以上を含む少なくとも1つのAと、オプションで2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び、オプションで、他の要素を含む)を指すことができる等である。
【0075】
請求項と上記明細書とおいて、「comprising(含む)」、「including(含む)」、「carrying(有する)」、「having(有する)」、「containing(含む)」、「involving(伴う)」、「holding(保持する)」、「composed of(~から構成される)」等の移行句は全て、オープンエンド、すなわち、~を含むが、~に限らないと理解されるべきである。「consisting of(~から成る)」及び「consisting essentially of(実質的に~成る)」という移行句のみは、United States Patent Office Manual of Patent Examining
Procedures,Section 2111.03に記載されるように、それぞれ、クローズド、または、セミクローズドの移行句である。