(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/08 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
B66F7/08 C
(21)【出願番号】P 2023142918
(22)【出願日】2023-09-04
【審査請求日】2024-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135398
【氏名又は名称】株式会社ヤエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】藤川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】新山 秀邦
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 勢
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196172(JP,A)
【文献】特開2009-256014(JP,A)
【文献】特開平04-016498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、
前記ベース部の上方に配置される昇降部と、
前記ベース部と前記昇降部との間に介在されて前記昇降部を昇降させる昇降用リンク機構と、
前記ベース部に回動自在に設けられて前記昇降用リンク機構を作動させる作動部材と、
前記作動部材を回動させるアクチュエータとを備える昇降装置であって、
前記昇降用リンク機構は、X字状に交差する一対のリンク部材を備え、
前記作動部材は、一方の前記リンク部材に下方から当接して押し上げることにより一対の前記リンク部材の交差角度を変える押圧部を複数備えており、
複数の前記押圧部は、前記作動部材の回動中心から異なる距離にそれぞれ配置されており、前記作動部材が一方向に回動すると、回動中心に近い前記押圧部から順に一方の前記リンク部材を押し上げるように構成された昇降装置。
【請求項2】
前記作動部材は、回動中心と、回動中心から最も遠い前記押圧部との間が、上方に凸となるように屈曲または湾曲して形成されている請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記作動部材は、回動中心から突出する被駆動部を備え、
前記アクチュエータは、基端側が前記ベース部に回動自在に取り付けられた本体と、前記本体の先端側に進退可能に設けられたロッドとを備えており、前記ロッドが前記被駆動部に回動自在に係合する請求項1に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記昇降部は、浴槽内に配置される浴槽用底板の縁部を支持することができるように細長状に形成されている請求項1に記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入浴装置として、特許文献1には、昇降装置により上下動する昇降板を浴槽内に配置し、上昇位置において入浴者を車椅子ごと昇降板に搭載した後、昇降板を降下させることにより入浴者が入浴することができる昇降式入浴装置が開示されている。
【0003】
昇降装置は、X字状に交差する一対のリンク部材を備えており、折り畳み可能な袋状の軟性体シリンダ内に水道水を供給することで、軟性体シリンダを膨張させて昇降板を上昇させる一方、軟性体シリンダ内の水道水を外部に排出することで、軟性体シリンダを収縮させて昇降板を降下させることができる。
【0004】
上記特許文献1に開示された昇降装置は、特に、昇降板が最も低い位置である下降位置にある状態では、軟性体シリンダが何重にも折り畳まれているために、軟性体シリンダに供給する水道水の供給圧を高める必要がある一方、軟性体シリンダが膨張を開始すると、水道水の供給圧が高くなり過ぎて昇降板が急激に上昇するおそれがあるため、昇降板の上昇を安定的に行うことが困難であった。
【0005】
一対のリンク部材の駆動手段としては、直動アクチュエータを用いることも従来から行われているが(例えば、特許文献2)、特に昇降板が下降位置にある状態では、直動アクチュエータの動力をリンク部材に効率良く伝達することが困難であり、昇降板を上昇させる際に大きな力が必要になるため、直動アクチュエータを含めた装置全体が大型化し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-290414号公報
【文献】特開2014-27987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、小型化を図りつつ対象物を安定的に上昇させることができる昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、ベース部と、前記ベース部の上方に配置される昇降部と、前記ベース部と前記昇降部との間に介在されて前記昇降部を昇降させる昇降用リンク機構と、前記ベース部に回動自在に設けられて前記昇降用リンク機構を作動させる作動部材と、前記作動部材を回動させるアクチュエータとを備える昇降装置であって、前記昇降用リンク機構は、X字状に交差する一対のリンク部材を備え、前記作動部材は、一方の前記リンク部材に下方から当接して押し上げることにより一対の前記リンク部材の交差角度を変える押圧部を複数備えており、複数の前記押圧部は、前記作動部材の回動中心から異なる距離にそれぞれ配置されており、前記作動部材が一方向に回動すると、回動中心に近い前記押圧部から順に一方の前記リンク部材を押し上げるように構成された昇降装置により達成される。
【0009】
この昇降装置において、前記作動部材は、回動中心と、回動中心から最も遠い前記押圧部との間が、上方に凸となるように屈曲または湾曲して形成されていることが好ましい。
【0010】
前記作動部材は、回動中心から突出する被駆動部を備えることが好ましく、前記アクチュエータは、基端側が前記ベース部に回動自在に取り付けられた本体と、前記本体の先端側に進退可能に設けられたロッドとを備えており、前記ロッドが前記被駆動部に回動自在に係合することが好ましい。
【0011】
前記昇降部は、浴槽内に配置される浴槽用底板の縁部を支持することができるように細長状に形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化を図りつつ対象物を安定的に上昇させることができる昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る昇降装置の正面図である。
【
図2】
図1に示す昇降装置の作動後の状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の昇降装置の適用例を説明するための平面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る昇降装置の作動を説明するための概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る昇降装置の正面図である。
図1に示すように、昇降装置1は、ベース部2、昇降部3、昇降用リンク機構10、作動部材20、およびアクチュエータ30を備えている。ベース部2および昇降部3は、互いに平行となるように水平に延びる帯状の部材であり、ベース部2の上方に昇降部3が配置されている。昇降部3の上面には、昇降させる対象物を支持する支持部3aが設けられている。
【0015】
昇降用リンク機構10は、中央の交差部13において回動可能になるようにX字状に交差する一対のリンク部材11,12を備えており、ベース部2と昇降部3との間に介在されて、昇降部3を水平状態のまま昇降させることができる。
【0016】
一方のリンク部材11は、下端部11aがベース部2に回動自在に取り付けられており、上端部11bが昇降部3の長手方向(水平方向)に沿って移動可能に設けられている。他方のリンク部材12は、上端部12aが昇降部3に回動自在に取り付けられており、下端部12bがベース部2の長手方向(水平方向)に沿って移動可能に設けられている。
【0017】
昇降用リンク機構10は、X字状に交差する一対のリンク部材11,12を複数段設けた構成であってもよく、一対のリンク部材11,12の各上端部に、他の一対のリンク部材11,12の各下端部をそれぞれ回動自在に連結して、パンタグラフ式に構成してもよい。
【0018】
作動部材20は、帯板状に形成されており、回動部20aを回動中心として回動自在となるように、一端側がベース部2に取り付けられている。作動部材20は、回動部20aから他端側に向けて上方に凸となるように屈曲しており、屈曲部の頂点部および他端側の先端部のそれぞれに、押圧部22,23が設けられている。押圧部22,23は、作動部材20の回動により、一方のリンク部材11の下部に、交差部13と上端部11bとの間で当接可能に配置されている。押圧部22,23は、いずれもローラからなり、一方のリンク部材11を押し上げながら一方のリンク部材11に沿って移動することで、一対のリンク部材11,12の交差角度を変化させて、昇降部3を上昇させることができる。押圧部22,23は、必ずしもローラである必要はなく、例えば、一方のリンク部材11に対して滑動または摺動する部材であってもよい。
【0019】
また、作動部材20は、回動部20aから突出する被駆動部21を備えており、アクチュエータ30によって被駆動部21を駆動することで、作動部材20を回動させることができる。被駆動部21を設ける位置は、特に限定されるものではなく、例えば、作動部材20の押圧部23よりも更に他端側に、被駆動部を設けてもよい。
【0020】
アクチュエータ30は、例えば水圧シリンダであり、シリンダチューブを備える本体31と、本体31の先端側に進退可能に設けられたロッド32とを備えている。アクチュエータ30の基端側となる本体31の基部31aは、ベース部2に回動自在に取り付けられている。ロッド32の先端部32aは、作動部材20の被駆動部21の先端部に回動自在に係合しており、ロッド32の進退により作動部材20を回動させることができる。なお、
図1においては、アクチュエータ30が押圧部22,23に重なる部分を切り欠いて図示している。アクチュエータ30は、必ずしも直動アクチュエータに限定されるものではなく、例えば、モータの回転により減速機を介して作動部材20を回動させることもできる。
【0021】
上記の構成を備える昇降装置1は、
図1に示すように、昇降部3が最も低い下降位置にある状態では、2つの押圧部22,23のうち、回動部20aに近い側の押圧部22が一方のリンク部材11の下側に当接する。この状態から、アクチュエータ30のロッド32を進出させて、作動部材20を矢示方向に回動させると、押圧部22は、昇降部3が上昇するように一方のリンク部材11を押し上げながら、一方のリンク部材11に沿って交差部13に向けて移動する。
【0022】
一方のリンク部材11が押圧部22によってある程度押し上げられると、
図2に示すように、押圧部22が一方のリンク部材11から離れる一方で、回動部20aから遠い側の押圧部23が一方のリンク部材11の下側に当接する。そして、作動部材20の更なる回動に伴い、押圧部23が一方のリンク部材11を押し上げながら、一方のリンク部材11に沿って交差部13に向けて移動する。こうして、昇降部3を最も高い上昇位置まで上昇させることができる。また、進出させたロッド32を後退させて、作動部材20を上記とは逆方向に回動させることにより、昇降部3や対象物の自重を利用して、昇降部3を上昇位置から下降位置まで降下させることができる。
【0023】
本実施形態の昇降装置1は、複数の押圧部22,23が、作動部材20の回動中心から異なる距離にそれぞれ配置されており、作動部材20が一方向に回動すると、各押圧部22,23が順番に一方のリンク部材11を押し上げる。これにより、アクチュエータ30の動力を、各押圧部22,23が交代で昇降用リンク機構10に効率良く伝達することができるので、アクチュエータ30を含めた昇降装置1全体の小型化を図ることができる。
【0024】
すなわち、
図1に2点鎖線で示すように、仮に作動部材20’が単一の押圧部23’を備える構成の場合には、押圧部23’のみによる一方のリンク部材11の押し上げによって、下降位置から上昇位置までの全体にわたって昇降部3を上昇させる必要があるため、特に昇降部3が下降位置にある場合に、一方のリンク部材11に対して押上力を作用させ難くなる。これに対し、本実施形態の作動部材20は、昇降部3が下降位置の近傍にある上昇初期段階では、回動中心に近い方の押圧部22が一方のリンク部材11を確実に押し上げて、一方のリンク部材11がある程度起立して押し上げ易くなった後に、回動中心から遠い方の押圧部23が一方のリンク部材11を引き続き押し上げることで、昇降部3を下降位置から上昇位置までスムーズに上昇させることができる。
【0025】
本実施形態の昇降装置1は、小型化を図りつつ、対象物を下降位置から上昇位置まで安定的に上昇させることができることから、例えば、入浴者が車椅子ごと入浴可能な昇降式入浴装置に好適に使用することができる。
図3に平面図で示すように、昇降装置1は、浴槽100の周縁部に沿って形成された空間内に収容されて、浴槽100内を挟んで互いに対向するように複数配置されている。昇降装置1が備える昇降部3(
図1参照)は、浴槽100内に配置される浴槽用底板110の縁部を確実に支持することができるように、この縁部に沿って延びる細長状に形成されている。昇降部3の上面に設けられた支持部3a(
図1参照)は、浴槽100に部分的に設けられた変形可能な仕切部101を介して、浴槽用底板110の縁部に設けられた被支持部111を支持することができる。浴槽用底板110には、入浴者を搭載することができ、昇降装置1の作動により、浴槽用底板110を浴槽100内で昇降させることができる。
【0026】
本実施形態の作動部材20は、2つの押圧部22,23を備える構成としているが、3つ以上の押圧部を備える構成であってもよく、押圧部の数を増やすことで、昇降装置1の昇降をより効率良く行うことができる。例えば、
図4に概略正面図で示すように、作動部材20を、上方に凸となるように2か所で屈曲する形状として、各屈曲部と先端部に押圧部22,23,24をそれぞれ設けてもよい。なお、
図4において、
図1と同様の構成部分には同一の符号を付しており、アクチュエータ30の図示は省略している。
【0027】
図4に示す昇降装置1は、昇降部3が下降位置にある状態で作動部材20が一方向に回動すると、まず
図4(a)に示すように、作動部材20の回動中心に最も近い位置の押圧部22が一方のリンク部材11を押し上げ、ついで
図4(b)に示すように、中間位置の押圧部23が一方のリンク部材11を更に押し上げた後、
図4(c)に示すように、回動中心から最も遠い位置の押圧部24が一方のリンク部材11を更に押し上げる。
【0028】
作動部材20が多数の押圧部を備える場合、各押圧部を、作動部材20の回動中心から異なる距離にそれぞれ配置して、作動部材20が一方向に回動すると、回動中心に近い押圧部から順に一方のリンク部材11を押し上げるように構成する。このような押圧部の配置を容易に実現するための作動部材20の形状として、作動部材20の回動中心と、当該回動中心から最も遠い押圧部との間が、上方に凸となるように屈曲または湾曲していることが好ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 昇降装置
2 ベース部
3 昇降部
10 昇降用リンク機構
11,12 リンク部材
20 作動部材
21 被駆動部
22,23,24 押圧部
30 アクチュエータ
32 ロッド
100 浴槽
110 浴槽用底板
【要約】
【課題】 小型化を図りつつ対象物を安定的に上昇させることができる昇降装置を提供する。
【解決手段】 ベース部2と、昇降部3と、昇降用リンク機構10と、昇降用リンク機構10を作動させる作動部材20と、作動部材20を回動させるアクチュエータ30とを備える昇降装置1であって、昇降用リンク機構10は、X字状に交差する一対のリンク部材11,12を備え、作動部材20は、一方のリンク部材11に下方から当接して押し上げることにより一対のリンク部材11,12の交差角度を変える押圧部22,23を複数備えており、複数の押圧部22,23は、作動部材20の回動中心から異なる距離にそれぞれ配置されており、作動部材20が一方向に回動すると、回動中心に近い押圧部22から順に一方のリンク部材11を押し上げるように構成されている。
【選択図】
図1