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特許7440986検出電界に基づく物体欠陥検出方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】検出電界に基づく物体欠陥検出方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
G01N27/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023529943
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2021137095
(87)【国際公開番号】W WO2022143102
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】202011604192.9
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523180687
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ エレクトロニック サイエンス アンド テクノロジー オブ チャイナ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF ELECTRONIC SCIENCE AND TECHNOLOGY OF CHINA
【住所又は居所原語表記】No.2006,Xiyuan Ave,West Hi-Tech Zone,Chengdu,Sichuan 611731, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ポン ジェガン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジャチー
(72)【発明者】
【氏名】レン チンシュェン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109188534(CN,A)
【文献】特開2019-67197(JP,A)
【文献】特開2018-81114(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105650482(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107102363(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110208863(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110243923(CN,A)
【文献】国際公開第2013/045862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出電界に基づく物体欠陥検出方法であって、
S1、液体における被測定物を検出電気信号で構成される前記検出電界に配置するステップと、
S2、前記被測定物の表面に予め設定された経路に従って前記検出電気信号を移動し、且つ電界信号を同期収集するステップと、
S3、時間-周波数結合スペクトログラムによって被測定物の欠陥の位置情報を取得し、前記時間-周波数結合スペクトログラムは前記電界信号に対して短時間フーリエ変換を行って得られるステップと、
S4、前記時間-周波数結合スペクトログラムに基づき、カットオフ周波数認識算出方法を用い、被測定物のカットオフ周波数を算出するステップと、
S5、予め構築された被測定物のクラック幅とカットオフ周波数との対応関係において、前記被測定物のカットオフ周波数に基づいて被測定物のクラック幅を検索するステップと、を含み、
ステップS3は具体的には、
S31、前記電界信号に対して短時間フーリエ変換を行い、被測定物の時間-周波数結合スペクトログラムを求めるステップと、
S32、前記時間-周波数結合スペクトログラムにおけるエネルギー振幅の突起又は凹部の端点を見つけ、且つ前記端点に基づいて端点に対応する時刻を取得するステップと、
S33、前記被測定物の表面における前記検出電気信号の移動の始点位置、終点位置、移動の速度及び前記端点に対応する時刻に基づき、被測定物の欠陥の位置情報を確定するステップと、を含み、
ステップS4は具体的には、
S41、前記時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換するステップと、
S42、前記エネルギースペクトル密度行列におけるノイズを除去し、ろ過後のエネルギースペクトル密度行列を得るステップと、
S43、前記ろ過後のエネルギースペクトル密度行列における各周波数成分の歪み値を算出するステップと、
S44、周波数-歪み値に対して多項式フィッティングを行い、カットオフ周波数フィッティング曲線を得て、前記カットオフ周波数フィッティング曲線において歪み値が0である点に対応する周波数値は被測定物のカットオフ周波数であるステップと、を含む、
ことを特徴とする、検出電界に基づく物体欠陥検出方法。
【請求項2】
ステップS41において、前記時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換するステップは、
前記時間-周波数結合スペクトログラムの三次元データをエネルギースペクトル密度行列に変換し、
前記エネルギースペクトル密度行列は二次元行列であり、
前記二次元行列において、横軸は時間勾配を表し、縦軸は周波数を表し、前記横軸と前記縦軸が位置する面に垂直な垂直軸の座標は現在周波数の現在時間のエネルギー振幅を表すことである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検出電界に基づく物体欠陥検出方法。
【請求項3】
ステップS42は具体的には、
S421、前記エネルギースペクトル密度行列におけるエネルギー振幅の総平均値avg、及び各行のエネルギー振幅の平均値avgiを算出し、iは行番号であるステップと、
S422、avgi<avgであれば、i行目のエネルギー振幅を全て0とするステップと、を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検出電界に基づく物体欠陥検出方法。
【請求項4】
ステップS43における前記歪み値の計算式は、
i=(maxi-avgi)-(avgi-mini)であり、ここで、hiはi行目の歪み値、maxiはi行目におけるエネルギー振幅最大値、miniはi行目におけるエネルギー振幅最小値、avgiはi行目におけるエネルギー振幅平均値、iは行番号である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検出電界に基づく物体欠陥検出方法。
【請求項5】
検出電界に基づく物体欠陥検出システムであって、
送信電極、受信電極、検出パン・チルト及び信号処理器を含み、
前記送信電極は検出電気信号を送信し、前記検出電界を構成し、前記送信電極と前記受信電極は前記検出パン・チルトに固定されており、
前記検出パン・チルトは、前記送信電極及び前記受信電極を駆動して前記被測定物の表面に予め設定された経路に基づいて移動させ、前記受信電極は移動中に電界信号を同期収集し、
前記信号処理器は前記電界信号を受信し、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を用いて水中被測定物を検出し、被測定物の欠陥情報を取得する、
ことを特徴とする、検出電界に基づく物体欠陥検出システム。
【請求項6】
以下のシーンの一つ、
水中金属に対して油汚れ情報検出を行うため、
水中金属に腐食情報検出を行うため、
水中金属に対してクラック情報検出を行うため、に適用する、
ことを特徴とする、請求項5に記載の検出電界に基づく物体欠陥検出システムの使用
【請求項7】
前記水中金属の材質は鉄、アルミニウム、銅又はステンレスを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の検出電界に基づく物体欠陥検出システムの使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属欠陥検出技術分野に関し、特に検出電界に基づく物体欠陥検出方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水中金属物体の欠陥検出は、船舶表面のコーティング検出、潜水機表面の構造検出、水中管路検出、サルベージ及び考古学等の方面で広く応用され且つ重要な役割を果たす。
【0003】
海洋作戦及び海洋開発探索の進展に伴い、水中検出の応用環境はますます複雑になる。現在の水中非破壊検査技術は、検出原理に基づき、以下に分けられる:電磁センシング検出技術、超音波センシングに基づく検出技術及び光学センシングに基づく検出技術。
【0004】
光学センシングに基づく検出技術は、主に水中目視検査であり、目視検査はいくつかの小さな表面クラック及び不連続な箇所を発見することができ、水中構造全体を評価することができ、且つ録画又は撮影によって関連する損傷を記録することができる。
【0005】
磁場に基づく検出技術は、磁粉探傷技術、交流磁場測定(ACFM)技術及び渦電流検出技術を含む。
【0006】
磁粉探傷技術の原理は、磁化された後の部材が漏洩磁場を形成して強磁性物質を吸引することであり、当該部材に欠陥が存在すれば、欠陥部分に形成された磁場が磁粉を吸着し、このように欠陥の大きさ・位置・形状等の情報を直接表示することができる。
【0007】
交流磁場測定技術は、金属表面クラックを正確に測定できる電磁非破壊検査技術であり、構造物欠陥の検出と評価に広く応用される。その原理は、電磁誘導原理に基づき、励起コイルに低周波励起信号を負荷し、プローブが被測定物の表面に近づく場合、被測定物の表面に均一な電場が感知され、感知された電場が欠陥に遭遇する場合、電場が欠陥の両端と底部から迂回し、それにより欠陥周囲の磁場の歪みを引き起こし、最終的に空間における磁場信号を抽出することにより欠陥を定量分析し、信号をコンピュータに入力して分析し、磁場のBxとBzの成分の変化を得る。
【0008】
渦電流検出技術の原理は、交番電流が負荷されたコイルが金属材料に近づくと、金属材料の内部に渦電流が発生し、材料に欠陥が発生すると、材料内の渦電流経路が欠陥により変化し、同時にコイル内部のインピーダンスも変化する。コイル内部インピーダンスの変化を検出することにより、欠陥が存在するか否かを判断する。
【0009】
超音波センシングに基づく検出技術は、主に超音波探傷技術であり、超音波が構造物に伝播するいくつかの物理的特性を利用して構造物内部の欠陥を発見する方法である。超音波検出は、金属に適用するだけでなく、非金属材料にも適用する。超音波探傷技術の原理は、超音波送信器によって超音波を送信して材料内部に浸透することができ、さらに部品自体及び欠陥に反射され、屈折された信号を受信して分析し、それにより欠陥又は材料の特性情報を取得する。
【0010】
従来の水中検出技術において、様々な異なる欠陥が存在し、例えば:水中目視検査は最も一般的且つ基本的な方法であり、操作しやすく且つ応用面が広い。しかしそれは表面のクラック欠陥を検出するためだけに用いられ、同時に、目視検査はさらに水中検出者が各種の水中検査技術、潜水技術及び適応力を把握して水中に発生する各種の不測の事態に対処することを要求し、時間及び労働コストが高い。
【0011】
水中磁粉探傷技術の原理は陸上と同じであり、その困難は水中で探傷対象の金属表面又は溶接継ぎ目をクリーニングすることである。磁粉探傷技術は表面に肉眼で識別しにくい欠陥が存在する部品に適用するが、被検出材料は強磁性材料でなければならず、マルテンサイト系ステンレス鋼材料に適用し、オーステナイト系ステンレス鋼材料に適用せず、且つ探傷前に被検出部品を磁化する必要があり、探傷後に脱磁する必要がある。
【0012】
渦電流方法は表面探傷法に属し、当該方法はクラックタイプ・欠陥深さの定量化検出を実現することができるが、直観的な欠陥情報を与えることができず、且つ形状が複雑な物体の検出に適用しない。
【0013】
水中の超音波への影響要因が多く且つ複雑であり、超音波検出はプローブと構造物表面との密着を必要とする。しかし水中構造物の表面が凹凸であるため、反射及び透過する超音波はより複雑になる。さらに海洋における複雑な音響信号により、超音波信号が干渉されやすくなる。欠陥の位置は送信された超音波を受信するのにかかる時間によって決定され、欠陥の大きさは超音波エコーの高さ又は欠陥エコーの範囲によって決定され、従って超音波信号が複雑であるほど、信頼性が低く、検出の難易度が高い。
【0014】
本発明に最も近い従来技術として、特許「アクティブ電界原理に基づく水中金属形状検出方法及び装置」(公開番号CN109188534)は、アクティブ電界原理に基づく水中金属形状の検出方法及び装置を開示した。当該発明は金属形状検出方法及びその装置を提供してアクティブ電界検出技術に基づき、水中アクティブ電界によって異なる角度から金属物体に対して全方位検出を行い、収集された電界情報を処理して物体の異なる方向におけるカットオフ周波数を得て、さらに処理して金属物体の形状を判断する。当該方法は水中環境の暗い、混濁等の多くの複雑な要因の影響を克服することができ、操作しやすく、適用範囲が広く、液体環境における金属物体の形状検出に対して良好な効果を有する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、上記カットオフ周波数に基づいて液体環境における金属物体の形状を検出する上で、新たな水中金属欠陥検出の技術的手段を提供し、従来の検出手段に存在する問題を克服することができ、検出電界に基づく物体欠陥検出方法及びシステムを提供することである。
【0016】
上記の発明目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0017】
アクティブ電界に基づく物体欠陥検出方法であって、以下のステップを含む:
【0018】
S1、液体における被測定物を検出電気信号で構成される検出電界に配置する。
【0019】
S2、被測定物の表面に予め設定された経路に従って検出電気信号を移動し、且つ電界信号を同期収集する。
【0020】
S3、時間-周波数結合スペクトログラム(Joint Time-Frequency Spectrogram)によって被測定物の欠陥の位置情報を取得し、時間-周波数結合スペクトログラムは電界信号に対して短時間フーリエ変換を行って得られる。
【0021】
S4、時間-周波数結合スペクトログラムに基づき、カットオフ周波数認識算出方法を用い、被測定物のカットオフ周波数を算出する。
【0022】
S5、予め構築された被測定物のクラック幅とカットオフ周波数との対応関係において、被測定物のカットオフ周波数に基づいて被測定物のクラック幅を検索する。
【0023】
本発明の好ましい態様として、ステップS3は具体的に以下のステップを含む:
【0024】
S31、電界信号に対して短時間フーリエ変換を行い、被測定物の時間-周波数結合スペクトログラムを求める。
【0025】
S32、時間-周波数結合スペクトログラムにおけるエネルギー振幅の突起又は凹部の端点を見つけ、且つ端点に基づいて端点に対応する時刻を取得する。
【0026】
S33、検出電気信号が被測定物体の表面における移動の始点位置、終点位置、移動の速度及び端点に対応する時刻に基づき、被測定物体の欠陥の位置情報を確定する。
【0027】
本発明の好ましい態様として、ステップS4は具体的に以下のステップを含む:
【0028】
S41、時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換する。
【0029】
S42、エネルギースペクトル密度行列におけるノイズを除去し、ろ過後のエネルギースペクトル密度行列を得る。
【0030】
S43、ろ過後のエネルギースペクトル密度行列における各周波数成分の歪み値を算出する。
【0031】
S44、周波数-歪み値に対して多項式フィッティングを行い、カットオフ周波数フィッティング曲線を得て、カットオフ周波数フィッティング曲線において歪み値が0である点に対応する周波数値は被測定物体のカットオフ周波数である。
【0032】
本発明の好ましい態様として、ステップS41において、時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換するステップは以下のとおりである:時間-周波数結合スペクトログラムの三次元データをエネルギースペクトル密度行列に変換し、エネルギースペクトル密度行列は二次元行列である。二次元行列において、横軸は時間勾配を表し、縦軸は周波数を表し、横軸と縦軸が位置する面に垂直な垂直軸の座標は現在周波数の現在時間のエネルギー振幅を表す。
【0033】
本発明の好ましい態様として、ステップS42は具体的に以下のステップを含む:
【0034】
S421、エネルギースペクトル密度行列におけるエネルギー振幅の総平均値avg、及び各行のエネルギー振幅の平均値avgiを算出し、iは行番号である。
【0035】
S422、avgi<avgであれば、i行目におけるエネルギー振幅を全て0とする。
【0036】
本発明の好ましい態様として、ステップS43における歪み値の計算式は以下のとおりである:
【0037】
i=(maxi-avgi)-(avgi-mini
【0038】
ここで、hiはi行目の歪み値、maxiはi行目におけるエネルギー振幅最大値、miniはi行目におけるエネルギー振幅最小値、avgiはi行目におけるエネルギー振幅平均値、iは行番号である。
【0039】
同じ構想に基づき、本発明はさらに送信電極、受信電極、検出パン・チルト及び信号処理器を含む、アクティブ電界に基づく物体欠陥検出システムを提供し、
【0040】
送信電極は検出電気信号を送信し、検出電界を構成し、送信電極と受信電極は検出パン・チルトに固定され、
【0041】
検出パン・チルトは送信電極及び受信電極を駆動して被測定物の表面に予め設定された経路に基づいて移動させ、受信電極は移動中に電界信号を同期収集する。
【0042】
信号処理器は電界信号を受信し、上記いずれかの方法を用いて水中被測定物を検知し、被測定物の欠陥情報を取得する。
【0043】
本発明の好ましい態様として、以下のシーンの一つに適用する:水中金属に対して油汚れ情報検出を行うためである。水中金属に対してクラック情報検出を行うためである。水中金属に腐食情報検出を行うためである。
【0044】
本発明の好ましい態様として、金属の材質は鉄、アルミニウム、銅又はステンレスを含む。
【0045】
従来技術と比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0046】
1、本発明の検出装置は簡単であり、且つ専門の潜水者が水中作業を行う必要がなく、水中検出装置を水中で操作するのみである。本発明は金属材料及び非金属材料に適用し、強磁性材料に限定されない。被測定物に欠陥がある場合、本発明の方法及びシステムは、渦電流法が直観的な欠陥情報を与えられないのに対し、変化を直観的に観察することができる。水中の超音波への影響要因が多く且つ複雑であり、超音波検出はプローブと構造物の表面と密着する必要があり、本発明はプローブが構造物の表面に接触する必要がなく、且つ超音波と異なり、海洋要因の影響が小さい。
【0047】
2、本方法のアクティブ電界のカットオフ周波数に基づく検出は全く新しい方法である。アクティブ電界検出技術に基づき、時間-周波数結合スペクトログラムによって被測定物の欠陥の位置情報を取得する。被測定物体が金属である場合、さらに被測定物体のアクティブ電界でのカットオフ周波数を求めることができ、被測定物体のアクティブ電界でのカットオフ周波数と標準品のカットオフ周波数とを比較分析し、被測定物体に腐食、コーティング脱落、物体欠損、異物被覆等の欠陥が存在するか否かを判断する。
【0048】
3、本発明は操作しやすく、エネルギー消費が小さく、移植性に優れ、適用範囲が広く、広い温度・広い圧力の場合に適用できる。水中検出、特に深海検出分野において重要な価値を有する。本発明は、被測定金属に対して単一のアクティブ電界走査を行うだけで、被測定物のカットオフ周波数を得ることができ、且つそれに基づいて被測定物が標準部材に対する欠陥情報を分析し、水中金属物体の欠陥検出に対して良好な効果を有する。
【0049】
4、本方法の形式は多様であり、検出信号は方形波であってもよく、正弦波であってもよく、他の信号であってもよい。検出される材料も多種多様であり、鉄、アルミニウム、銅、ステンレスなどのいずれかの一般的な及び一般的でない金属であってもよい。本方法の制御装置は信号、データ処理能力を有するコントローラ、プロセッサ、シングルチップマイコン又はPC機の一種であり、上記制御装置は、有線又は無線によって検出装置に接続されている。本方法の検出情報はクラック、油汚れ及び腐食等の状況を含むがこれらに限定されず、応用が広い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、本発明の実施例1におけるアクティブ電界に基づく物体欠陥の検出方法のフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施例1における短時間フーリエ変換によって電界信号を処理して得られた時間-周波数結合スペクトログラムである。
図3図3は、本発明の実施例1におけるLabviewで操作する実験装置の運動のフロントパネル概略図である。
図4図4は、本発明の実施例1における周波数-歪み値をフィッティングして得られたフィッティング曲線である。
図5図5は、本発明の実施例1における真鍮柱の時間-周波数結合スペクトログラムである。
図6図6は、本発明の実施例1における真鍮柱のカットオフ周波数のフィッティング曲線図である。
図7図7は、本発明の実施例1における25mmの真鍮柱の時間-周波数結合スペクトログラムである。
図8図8は、本発明の実施例1における35mmの真鍮柱の時間-周波数結合スペクトログラムである。
図9図9は、本発明の実施例2におけるアクティブ電界のカットオフ周波数に基づく金属欠陥の具体的なテスト環境図である。
図10図10は、本発明の実施例2における検出パン・チルトの運動方向の概略図である。
図11図11は、本発明の実施例3における油汚れ被覆欠陥率-カットオフ周波数曲線図である。
図12図12は、本発明の実施例3におけるクラック幅-カットオフ周波数曲線率図である。
図13図13は、本発明の実施例4におけるPVCプラスチック管のクラック実験により得られた時間-周波数結合スペクトログラムである。
図14図14は、本発明の実施例4におけるPVCプラスチック管の油汚れ被覆実験により得られた時間-周波数結合スペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、試験例及び発明を実施するための形態と合わせて、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明に上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解すべきではなく、本発明の内容に基づいて実現される技術はいずれも、本発明の範囲に属する。
【0052】
実施例1
【0053】
アクティブ電界に基づく物体欠陥検出方法であって、フローチャートは図1に示されるように、以下のステップを含む:
【0054】
S1、検出電界を構築し、且つ水中の被測定物を検出電気信号で構成される検出電界に配置する。
【0055】
本発明の検出方法の主な応用シーンは液体であり、本発明で言及される液体は導電可能な電解質液体であり、例えば淡水と海水などのイオンを有する液体である。本実施例は主に水という液体を例とし、具体的に本発明の方法を説明する。
【0056】
検出電気信号は、一対の送信電極双極子を介して送信され、一方の送信電極双極子が検出電気信号の送信に用いられ、他方の送信電極双極子が接地されることで、当該一対の送信電極双極子間に検出電界が形成される。被測定金属を水中に置き、上記検出電界中に位置させる。検出信号は正弦、方形波などの信号であってもよく、方形波信号のスペクトログラムは基本波の奇数倍にいずれも周波数成分が存在し、カットオフ周波数を確定することができ、正弦波によってカットオフ周波数をより正確に判断することができる。送信電極双極子に隣接する位置に一対の受信電極が配置され、電界信号を同期収集し、検出情報を取得するために用いられる。
【0057】
好ましくは、検出信号は多周波信号であり、同時に複数の周波数の検出信号を送信する。そして、1回の検出で、カットオフ周波数を算出するための複数のデータを取得することができる。算出過程にある時、単一周波数信号を用い、複数回のテストをし、データセットを収集し、カットオフ周波数を算出する代わりに、複数種類の周波数に対応する時間-周波数分布スペクトログラムを直接取得することができ、それによりカットオフ周波数を算出する。
【0058】
S2、上記被測定金属の表面に沿って検出信号を移動し、且つ電界信号を同期収集する。金属物体が水中環境にある場合、励起分極効果により、低周波領域では高インピーダンス、高周波領域では低インピーダンスの特性を示し、カットオフ周波数付近では周辺環境に近いインピーダンス特性を示す。具体的には、物体の周辺に電界が存在する場合、物体が低インピーダンスを示す場合、電界線(line of force)は導体付近でより密集を示し、物体が高インピーダンスを示す場合、電界線は疎な性状を示す。検出信号がカットオフ周波数付近にある場合、被測定物は周囲の液体環境の抵抗率と同じ特性を呈するため、この時に電界歪み情報は最小である。
【0059】
S3、短時間フーリエ変化を用いて上記電界信号を処理し、被測定物の時間-周波数結合スペクトログラムを求め、上記時間-周波数結合スペクトログラムにより被測定物の欠陥の位置情報を取得する。
【0060】
アクティブ電界を用いて被測定物体を検出する時、短時間フーリエ変換によって電界信号を処理し、得られた時間-周波数結合スペクトログラムは図2に示される。図から分かるように、各周波数信号はいずれもスペクトログラムに被測定物の欠陥による振幅値の凹部を表す。
【0061】
時間-周波数結合スペクトログラムは、Labviewソフトウェア、Labview signal expressソフトウェア、NI DIAdemソフトウェアの3つのソフトウェアを用いて取得される。
【0062】
Labviewの主な機能は実験装置の運動問題を操作することであり、フロントパネルは図3に示されるように、データを入力する。
【0063】
Labview signal expressソフトウェアであって、主な役割は実験検出装置の動作期間に収集されたデータを取得し、且つtdmsフォーマットのファイルでデータを保存することである。
【0064】
NI DIAdemソフトウェアであって、主な役割は保存されたtdmsフォーマットのデータファイルを分析することであり、且つプログラムによってファイルを時間-周波数結合スペクトログラムの方式で表示することである。ソフトウェアにおいてSCRIPTオプションを選択し、実行ボタンを押し、編集されたプログラムを選択した後、分析しようとするファイルを選択し、続いて配置情報を選択し、そして時間-周波数結合スペクトログラムを表示することができる。
【0065】
時間-周波数結合スペクトログラムを観察することにより、より直観的で、より正確に収集された電界信号の凹凸変化状況を観察することができ、それにより被測定物の欠陥の位置情報を取得する。
【0066】
被測定物体の欠陥の位置情報を取得することは、具体的には以下のステップを含む:
【0067】
S31、短時間フーリエ変化を用いて電界信号を処理し、被測定物の時間-周波数結合スペクトログラムを求める。
【0068】
S32、上記時間-周波数結合スペクトログラムにおけるエネルギー振幅の突起又は凹部の端点を見つけ、且つ上記端点に基づいて端点に対応する時刻を見つける。
【0069】
S33、検出電気信号が被測定物体の表面における移動の始点位置、終点位置、移動の速度及び上記端点に対応する時刻に基づき、被測定物体の欠陥の位置情報を算出する。
【0070】
例えば、被測定物は円柱体であり、検出電気信号は円柱体物体の側面で軸線方向に沿って直線移動し、それに応じて、電界信号を収集する。したがって、直線運動の始点位置、終点位置および移動速度を知ることができる。端点に対応する時刻を見つけた後、時間に移動速度を乗算することにより、エネルギー振幅の突起又は凹部の端点と、対応する始点位置(又は終点位置)との距離を求めることができ、被測定物における突起又は凹部の位置を見つけることができる。また、突起又は凹部の両端点の位置が分かれば、その突起又は凹部の軸線方向における長さを知ることができ、クラックの軸線方向の寸法情報を得ることができる。
【0071】
時間-周波数結合スペクトログラムを生成する前に、適切な窓関数を選択する必要がある。事前の予備実験研究により、異なる窓関数の処理結果を比較し、本方法は最終的にハニング窓を信号処理の窓関数として選択した。本方法の応用範囲内で、ハニング窓は周波数分解能と時間分解能をよく両立することができる。ハニング窓は元の信号(非定常)を一組の定常に近似する短時間信号に分解し、続いてフーリエ変換を用いて各段の短時間信号に対してそれぞれ分析処理を行う。各段のスペクトログラムを連結することにより、時間-周波数結合スペクトログラムを得て、その中から元の信号スペクトログラムが時間に従って変化する状況を観察することができる。
【0072】
S4、上記時間-周波数結合スペクトログラムに基づき、カットオフ周波数認識算出方法を用い、被測定物のカットオフ周波数を算出する。
【0073】
検出信号は複数種類の周波数信号であるため、被測定物の励起分極効果が異なるスペクトログラム成分に対して生じる歪み程度によって、振幅周波数特性値曲線をフィッティングすることができ、肉眼観察による誤差を回避し、より正確なカットオフ周波数を取得する。具体的には以下のステップを含む:
【0074】
S41、時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換する。
【0075】
S42、エネルギースペクトル密度行列におけるノイズを除去し、ろ過後のエネルギースペクトル密度行列を得る。
【0076】
S43、上記ろ過後のエネルギースペクトル密度行列における各周波数成分の歪み値を算出する。
【0077】
S44、周波数-歪み値に対して多項式フィッティングを行い、カットオフ周波数フィッティング曲線を得て、上記カットオフ周波数フィッティング曲線において歪み値が0である点に対応する周波数値は被測定物体のカットオフ周波数である。
【0078】
ステップS41において、時間-周波数結合スペクトログラムをエネルギースペクトル密度行列に変換するステップは以下のとおりである:時間-周波数結合スペクトログラムの三次元データをエネルギースペクトル密度行列に変換し、上記三次元データのx軸は周波数であり、単位はHzであり、y軸は時間であり、単位はsであり、z軸はエネルギーであり、単位はdBである。上記エネルギースペクトル密度行列は二次元行列であり、上記二次元行列において横方向は時間勾配を表し、縦方向は周波数を表し、行列における数字は現在周波数の現在時間のエネルギー振幅(単位はdB)を表す。
【0079】
ステップS42は具体的に以下のステップを含む:
【0080】
S421、上記エネルギースペクトル密度行列の総平均値avg及び各行の平均値avgiを算出し、iは行番号である。
【0081】
S422、avgi<avgであれば、i行目における振幅を全て0とする。
【0082】
ステップS43における上記歪み値の計算式は以下のとおりである:
【0083】
i=(maxi-avgi)-(avgi-mini
【0084】
ここで、hiはi行目の歪み値であり、maxiはi行目の振幅最大値であり、miniはi行目の振幅最小値であり、avgiはi行目の振幅平均値であり、iは行番号である。
【0085】
ステップS42及びステップS43は以下の具体的なデータを例として説明する。
【0086】
取得したエネルギースペクトル密度行列pのデータは表1に示される。行列中の数字は、現在周波数の現在時間のエネルギー振幅(単位はdB)を表す。
【0087】
表1 エネルギースペクトル密度行列p
【0088】
[表0001]
【0089】
[表0002]
【0090】
表1の行列全体の平均値は39.6程度であると算出され、各行の平均値も算出できるため、39.6より小さいものは全て0とし、従って表2の、すなわちノイズ除去後のエネルギースペクトル密度行列が得られる。続いてさらに歪み値を求め、ノイズ除去後のエネルギースペクトル密度行列における各行の平均値avgiを算出する。続いてノイズ除去後のエネルギースペクトル密度行列における各行の最小値miniと最大値maxi、歪み値hi=(maxi-avgi)-(avgi-mini)を計算し、このように各行の歪み値が求められる。
【0091】
表2 ノイズ除去後のエネルギースペクトル密度行列
【0092】
[表0003]
【0093】
ステップS44において、ノイズ除去後のエネルギースペクトル密度行列において、縦方向は周波数を代表する。同時に前のステップにおいて各行の歪み値が求められ、周波数値と歪み値をフィッティングすることができる。周波数-歪み値の多項式フィッティングはMATLABで実現し、matlabにcftoolを入力し、matlabにおけるcftoolツールボックスを呼び出す。周波数-歪み値曲線の周波数値及び歪み値をそれぞれ配列としてmatlabに格納し、続いてcftoolツールボックスにおいて周波数値及び歪み値という二組のデータを選択してそれぞれ横軸及び縦軸とする。Exponential補間を用いれば、フィッティング曲線を取得することができ、フィッティング曲線は図4に示されるように、図中のカットオフ周波数は、200Hz付近である。
【0094】
S5、予め構築された被測定物のクラック幅とカットオフ周波数との対応関係において、上記被測定物のカットオフ周波数に基づいて被測定物のクラック幅を検索する。
【0095】
例えば、事前の実験において、実験条件として水温が25摂氏度であり、導電率が280μS/cmであり、長さが50mmであり、直径が50mmである真鍮柱を選択して実験を行い、信号発生器の送信信号は方形波であり、デューティ比が50%であり、周波数が20Hzであり、振幅が1Vである。
【0096】
テストプログラムを使用し、クラック幅が0mm、5mm、15mmの真鍮柱をそれぞれテストし、その対応する時間-周波数結合スペクトログラムとデータを取得する。真鍮柱の時間-周波数結合スペクトログラムを図5に示される。図5において、(a)は0mmの時間-周波数結合スペクトログラム、(b)は5mmの時間-周波数結合スペクトログラム、(c)は15mmの時間-周波数結合スペクトログラムである。0mmの時間-周波数結合スペクトログラムを例とし、表3に示されるように、当該図を読み取ってエネルギースペクトル密度行列を取得する。
【0097】
表3 0mmの時間-周波数結合スペクトログラムに対応するエネルギースペクトル密度行列
【0098】
[表0004]
【0099】
matlabを用い、フィッティング曲線を取得する:クラック幅が0mm、5mm、15mmの真鍮柱で、カットオフ周波数はそれぞれ、210Hz、420Hz、500Hzであった。
【0100】
カットオフ周波数を取得した後、matlabのフィッティングツールボックスcftoolにより、カットオフ周波数のフィッティング曲線を取得する。カットオフ周波数のフィッティング曲線図は図6に示される。カットオフ周波数フィッティング曲線から被測定物のクラック幅とカットオフ周波数との対応関係を取得することができる。
【0101】
さらに、真鍮柱に25mmと35mmのクラックを刻み、取得した25mm真鍮柱の時間-周波数結合スペクトログラムを図7に示され、取得した35mmの真鍮柱時間-周波数結合スペクトログラムを図8に示される。それに応じて、カットオフ周波数は、フィッティング曲線付近にあり、580Hz、660Hzと測定された。そのため、当該真鍮柱のクラック-カットオフ周波数フィッティング曲線図は信頼でき、クラック幅とカットオフ周波数との対応関係を直接反応する。実際のテストにおいて、カットオフ周波数を取得した後、フィッティング曲線図におけるクラック幅とカットオフ周波数との対応関係を検索することにより、対応するクラック幅を得ることができる。
【0102】
実施例2
【0103】
アクティブ電界に基づく物体欠陥検出システムは、送信電極、受信電極、検出パン・チルト及び信号処理器を含む。
【0104】
送信電極は検出電気信号を送信し、受信電極は電界信号を取得し、送信電極と受信電極は検出パン・チルトに固定される。検出パン・チルトは送信電極及び受信電極を駆動して被測定物の表面に沿って移動させ、受信電極は移動中に電界信号を同期収集する。
【0105】
信号処理器は電界信号を受信し、実施例1の方法を用いて水中金属を検出する。
【0106】
具体的な実施例として、図9に示されるように、具体的なテスト環境を示す。検出パン・チルトは検出装置及び分析装置を含み、検出装置には直角台形に配置された二対の検出電極双極子が搭載される。一対の電極は検出信号を送信し、検出電界を確立するために用いられ、他の一対の受信電極は電界信号を収集し、検出情報を取得するために用いられる。本実験は黒鉛検出電極を用いる。パン・チルトは移動することができ、移動中に受信電極は電界信号を同期収集し、検出情報を取得するために用いられる。分析装置は信号・データ処理能力を有するコンピュータを採用する。
【0107】
送信電極と受信電極を直角台形に配置する目的はより豊富な情報を取得することである。今回は送信電極と受信電極を直角台形の下底と上底に置き、被測定物は送信電極の垂線に位置する。テスト領域で検出パン・チルトを移動させ、被測定物体を送信電極の垂線に位置するように保持し、それにより検出信号強度を保証し、ステッピングモータを起動し、電極パン・チルトを図10に示される方向に従って移動させる。目標物体を乗り越えた後も同距離だけ前進移動して停止する。パン・チルト移動中に受信電極双極子を用いて電界信号を同期収集する。後続の電界信号に対する処理は実施例1と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0108】
実施例3
【0109】
本発明のアクティブ電界に基づく物体欠陥検出システムは、金属欠陥を検出することができるだけでなく、さらに金属体の油汚れ被覆率とクラック欠陥を検出することができる。検出パン・チルトは検出装置及び分析装置を含む。本実験例において、使用される検出装置は二対の黒鉛検出電極を含み、それぞれ送信電極双極子と二つの受信電極双極子とする。送信電極は励起信号を送信し、検出電界を確立するために用いられ、受信電極は電界信号を受信するために用いられる。送信電極と受信電極の配置方式は非対称構造とするべきである。分析装置は、信号・データ処理能力を有するコンピュータであり、且つ検出装置と分析装置とは、有線又は無線で接続されてもよい。
【0110】
本テスト例では、放射電極双極子によって送信された検出信号として、ピークツーピーク値2V、周波数20Hzの方形波を用いた。被測定材料は直径が5cmの銅製中実円柱、鉄製中実円柱、アルミニウム製中実円柱、鋼製中実円柱及び長さが10cm、直径が5cmの鋼製パイプを選択して実験を行う。欠陥設計は二種類に分けられる:一、クラック欠損を作成して水中物体クラック欠損実験を行う。二、絶縁塗装を用いて金属表面をスプレーして油汚れ被覆をシミュレーションする。実験は、水の温度が25°Cの水中環境で行われ、水の導電率は、320μS/cmと測定される。構築された検出パン・チルトにおいて、放射電極双極子によって信号を送信し、検出パン・チルトを移動させ、検出パン・チルトの受信電極によって受信信号を取得する。受信された信号を短時間フーリエ変換によって処理し、時間-周波数結合スペクトログラムを取得し、さらにカットオフ周波数認識算出方法によってカットオフ周波数を取得する。標準品と比較してずれを見ることができ、異なる欠陥率によって物体欠陥率-カットオフ周波数ずれ率曲線をフィッティングして後続の使用に備える。油汚れ被覆欠陥率-カットオフ周波数曲線図は図11に示されるように、将来真鍮ブロック、真鍮柱、鉄柱、鋼柱のカットオフ周波数を算出した後、当該曲線により、対応して油汚れ被覆欠陥率を検索することができる。クラック幅-カットオフ周波数曲線率図は図11に示されるように、将来アルミニウム円柱、真鍮柱、鋼管、鉄円柱のカットオフ周波数を算出した後、当該曲線により、対応するクラック幅を対応して検索することができる。図12からも分かるように、クラックの増加や欠陥率の増加に伴い、カットオフ周波数は徐々に大きくなる。
【0111】
実際の応用において、アクティブ周波数に基づく水中金属欠陥検出は水中輸送配管の欠陥又は閉塞を検出するために用いることができる。水力発電所貯水池の水中水門、水中金属構造物の欠陥、石油工事の水中輸送配管、橋梁工事の水中ビーム柱欠陥等を検出することができる。
【0112】
実施例4
【0113】
さらに、非金属物体に対しても欠陥検出を行うことができる。水中非金属物体の欠陥検出方法であって、以下のステップを含む:
【0114】
A1、検出電界を構築し、且つ被測定物を検出信号で構成される検出電界に配置する。
【0115】
A2、被測定非金属の表面に沿って上記検出信号を移動し、同時に電界信号を収集する。
【0116】
A3、短時間フーリエ変化を用いて電界信号を処理し、被測定物の時間-周波数結合スペクトログラムを求める。
【0117】
A4、時間-周波数結合スペクトログラムにおける振幅の凸凹変化に基づき、上記被測定非金属の欠陥情報を取得する。
【0118】
具体的な一例は以下のとおりである:長さが10cmで、外径が50mmで、厚さが3.5mmのPVCプラスチック管を用い、同様に、欠陥被覆とクラックの二つの状況を設計する。他の実験条件は実施例3と同じである。PVCプラスチック管のクラック実験により得られた時間-周波数結合スペクトログラムが図13に示され、PVCプラスチック管の油汚れ被覆実験で得られた時間-周波数結合スペクトログラムが図14に示される。非金属物体はカットオフ周波数がなく、カットオフ周波数によってその欠陥情報を判断することができないが、時間-周波数結合スペクトログラムによって判断することができる。図から分かるように、プラスチック管を走査する時に、スペクトログラムには顕著な突起が出現し、欠陥又はクラックが出現する時に、スペクトログラムは突起に比べて顕著な凹部を生成する。凹部の端点を見つけ、且つ上記端点に基づいて端点に対応する時刻を見つける。電界信号が被測定物体の表面における移動の始点位置、終点位置、移動の速度及び端点に対応する時刻に基づき、被測定物体の欠陥の位置情報を算出することができる。
【0119】
実際の応用において、アクティブ周波数に基づく水中非金属欠陥検出は、水中非金属配管の欠陥又は閉塞を検出するために用いることができる。水中のいくつかのコンクリート配管の欠陥を検出することができ、またいくつかの水中の非金属構造を探傷することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14