(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】2-[5-(3-クロロフェニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニル]アミノ]酢酸を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/81 20060101AFI20240221BHJP
C07D 213/79 20060101ALN20240221BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C07D213/81 CSP
C07D213/79
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020562673
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 US2019031310
(87)【国際公開番号】W WO2019217550
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513297117
【氏名又は名称】アケビア セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AKEBIA THERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイ.ゴリン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム.ランティエル
(72)【発明者】
【氏名】アン ブー チャウ ルオング
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムス デンスモア コップ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヴィエル ゴンザレズ
(72)【発明者】
【氏名】サッシャ ヤウツェ
(72)【発明者】
【氏名】エリック クラウス
(72)【発明者】
【氏名】アラン オコナー
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-522409(JP,A)
【文献】特表2018-502882(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105837502(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(8)の化合物:
【化1】
またはその塩を調製するための方法であって、
式(I)の化合物:
【化2】
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)
またはその塩を、加水分解剤に接触させることを含
み、
前記式(I)の化合物またはその塩が、
a)式(5)の化合物:
【化3】
またはその塩を、塩基の存在下で、式(II)の化合物:
【化4】
(式中、R
1
はC
1~4
アルキルである)またはその塩に接触させることと、
b)ステップa)で形成された生成物を、塩基の存在下で、式(III)の化合物:
【化5】
(式中、R
2
はC
1~4
アルキルである)
またはその塩に接触させることと、
c)ステップb)からの前記式(I)の化合物を、水及び塩基を含む溶媒で洗浄して、前記式(I)の化合物
【化6】
またはその塩を得ることと、を含む方法によって調製される、方法。
【請求項2】
R
1がt-ブチルであ
り、
かつ/またはR
2
がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加水分解剤が酸
または塩基を含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、Polymer-SK、またはテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基が、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、及びこれらの任意の組合せから選択されるアルカリ金属水酸化物である
か、または
前記塩基が、炭酸リチウム(Li
2
CO
3
)、炭酸ナトリウム(Na
2
CO
3
)、炭酸カリウム(K
2
CO
3
)、炭酸セシウム(Cs
2
CO
3
)、及びこれらの任意の組合せから選択されるアルカリ金属炭酸塩である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウム(KOH)である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、t-ブタノール、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、またはこれらの任意の組合せを含む溶媒の存在下で生じる、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記式(8)の化合物の純度が少なくとも99%である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記式(I)の化合物が、約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記式(I)の化合物が、約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記式(I)の化合物が、約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記式(I)の化合物が、約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基の各々が独立的に有機塩基である、請求項
8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
各々の有機塩基が独立的に、トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン(DBN)、またはこれらの任意の組合せである、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
各々の有機塩基が独立的にジイソプロピルアミン(DIPEA)である、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチルアセトアミド(DEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、またはこれらの任意の組合せを含む溶媒の存在下で生じる、請求項
1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒がテトラヒドロフラン(THF)である、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)の化合物またはその塩の純度が少なくとも約80%である、請求項1~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記式(I)の化合物またはその塩の純度が少なくとも約90%である、請求項1~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(I)の化合物:
【化7】
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩。
【請求項23】
R
1がt-ブチルである、請求項
22に記載の化合物またはその塩。
【請求項24】
R
2がメチルである、請求項
22または
23に記載の化合物またはその塩。
【請求項25】
純度が少なくとも約80%である、請求項
22~24のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項26】
純度が少なくとも約85%である、請求項
22~24のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項27】
純度が少なくとも約90%である、請求項
22~24のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項28】
純度が少なくとも約95%である、請求項
22~24のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項29】
前記化合物が、約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
22~28のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【化8】
【請求項30】
前記化合物が、約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
29に記載の化合物またはその塩。
【請求項31】
前記化合物が、約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
29に記載の化合物またはその塩。
【請求項32】
前記化合物が、約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
29に記載の化合物またはその塩。
【請求項33】
前記化合物が、約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
29に記載の化合物またはその塩。
【請求項34】
前記式(I)の化合物が単離される、請求項
22~33のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項35】
組成物であって、
a)80%以上の式(I)の化合物:
【化9】
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、
b)20%以下の式(IV)の化合物:
【化10】
(式中、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、を含み、
前記式(I)の化合物またはその塩と、前記式(IV)の化合物またはその塩とを合わせた量が約99%から約100%の間である、組成物。
【請求項36】
R
1がt-ブチルである、請求項
35に記載の組成物。
【請求項37】
R
2がメチルである、請求項
35または
36に記載の組成物。
【請求項38】
85%以上の前記式(I)の化合物またはその塩および15%以下の前記式(IV)の化合物またはその塩を含む、請求項
35~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
90%以上の前記式(I)の化合物またはその塩および10%以下の前記式(IV)の化合物またはその塩を含む、請求項
35~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
35~39のいずれか一項に記載の組成物。
【化11】
【請求項41】
約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項42】
約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項43】
約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項44】
約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、請求項
40に記載の組成物。
【請求項45】
純度がHPLCにより測定されたものである、請求項1~
21のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項46】
純度がHPLCにより測定されたものである、請求項22~34のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項47】
純度がHPLCにより測定されたものである、請求項35~44のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月9日出願の米国特許出願第62/669,135号の恩典を主張し、当該出願の全体は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して合成方法及び化学組成物に関し、より具体的には、バダデュスタット(2-[5-(3-クロロフェニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボニル]アミノ]酢酸)の調製及び製造に有用なプロセス及びその中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
バダデュスタットは、内因性エリスロポエチン合成を誘導し鉄動員を増強する、滴定可能な経口用の低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤である。バダデュスタットの合成方法は説明されているが、不純物を実質的に含まない高純度のバダデュスタットまたはその塩を製造するための改善された方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、部分的には、不純物を実質的に含まない高純度のバダデュスタットまたはその医薬的に許容される塩が、本明細書で説明される方法及び組成物を用いて製造することができるという驚くべき発見に基づくものである。
【0005】
本明細書では、バダデュスタット及びその医薬的に許容される塩、ならびにバダデュスタットの合成に有用な中間体及びその塩を調製する方法及びプロセスが開示される。
【0006】
一つの態様において、本明細書では、式(8)の化合物:
【化1】
またはその塩を調製するための方法であって、式(I)の化合物:
【化2】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩を、加水分解剤に接触させることを含む、方法が開示される。
【0007】
別の態様において、本明細書では式(I)の化合物:
【化3】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩が開示される。
【0008】
別の態様において、本明細書では、組成物であって、
a)80%以上の式(I)の化合物:
【化4】
(式中、R
1及びR
2の各々は独立的に、本明細書で定義されている通りである)またはその塩と、
b)20%以下の式(IV)の化合物:
【化5】
(式中、R
2は、本明細書で定義されている通りである)またはその塩と、を含み、式(I)の化合物またはその塩と、式(IV)の化合物またはその塩とを合わせた量が約99%から約100%の間である、組成物が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明される物質、化合物、組成物、物品、及び方法は、以下に示す本開示の主題の特定の態様についての詳細な説明やその中に含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0010】
本発明の物質、化合物、組成物、物品、デバイス、及び方法を開示及び説明する前に理解されたいのは、以下に説明する諸態様は、特定の合成方法や特定の試薬に限定されるものではなく、これら自体は当然ながら様々であり得ることである。また、本明細書で使用する用語は、特定の態様を説明するためのものに過ぎず、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことも理解されたい。
【0011】
また、本明細書の全体にわたって様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示内容は、本開示事項が関係する最新技術をより十分に説明するために、その全体が参照により本出願に援用される。また、開示されている参考文献は、その中に含まれる、参考文献に依拠する文で論じられた物質についても、参照により個別かつ具体的に本明細書に援用される。
【0012】
定義
別段の指定がない限り、全ての温度は摂氏温度(℃)である。
【0013】
別段の記載がない限り、全ての純度及び関連する数値(%)は、HPLCにより測定されたものである。
【0014】
本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「一つの(a)」、「及び(and)」、及び「当該(the)」は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「一つの化合物」という言及には複数のこのような薬剤が含まれ、「当該塩」という言及には、一つ以上の塩(または複数の塩)及び当業者に知られているその等価物への言及が含まれる、などとなる。本明細書において、範囲が物理的特性(例えば、分子量)または化学的特性(例えば、化学式)に対し使用される場合、本明細書にある範囲及び特定の実施形態の全ての組合せ及び部分組合せが含まれるように意図されている。数字または数値範囲に言及する際の「約」という用語は、言及された数字または数値範囲が、実験的変動性内(または統計的実験誤差内)の近似であることを意味し、そのため数字または数値範囲は、記載された数字または数値範囲の1%から15%の間で変動し得る。
【0015】
本明細書及び付属の請求項で使用する場合、反対の内容が明記されない限り、以下の用語は、下記に示される意味を有する。
【0016】
単離(された):本明細書で使用する場合、「単離(された)」という用語は、(1)最初に生成された際に(自然界であるか及び/もしくは実験的環境であるかにかかわらず)会合した構成成分の少なくとも一部から分離した物質及び/もしくは実体、ならびに/または(2)人工的に生成、調製、及び/もしくは製造された物質及び/もしくは実体を意味する。単離された物質及び/または実体は、それらが最初に会合した他の構成成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離され得る。いくつかの実施形態において、単離された作用物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超純粋である。本明細書で使用する場合、物質は、他の構成成分を実質的に含まない場合に「純粋」である。本明細書で使用する場合、単離された物質及び/または実体の純度パーセントの計算は、賦形剤(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)を含むべきではない。
【0017】
本明細書で開示される化合物は、一つ以上の不斉中心を含む場合があり、そのため、絶対的立体化学の観点から(R)-または(S)-として定義することができる鏡像異性体、ジアステレオマー、及びその他の立体異性体を生じる場合がある。別段の記載がない限り、本明細書で開示される化合物の全ての立体異性体形態は本開示によって企図されることが意図されている。本明細書で説明される化合物がアルケン二重結合を含む場合、かつ別段の指定がない限り、本開示はE及びZ両方の幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)を含むことが意図されている。同様に、全ての可能な異性体、ならびにそのラセミ形態及び光学的に純粋な形態、ならびに全ての互変異性体形態も含まれるように意図されている。「幾何異性体」という用語は、アルケン二重結合のEまたはZ幾何異性体(例えば、シスまたはトランス)を意味する。「位置異性体」という用語は、中央の環を軸とする構造異性体、例えば、ベンゼン環を軸とするオルト、メタ、及びパラ異性体を意味する。
【0018】
「アミノ」とは、-NH2ラジカルを意味する。
【0019】
「アルキル」とは、炭素及び水素原子のみからなる直鎖状または分枝状の炭化水素鎖ラジカルを意味し、飽和を含まず、1~15個の炭素原子を有する(例えば、C1~15アルキル)。ある特定の実施形態において、アルキルは1~13個の炭素原子を含む(例えば、C1~13アルキル)。ある特定の実施形態において、アルキルは1~10個の炭素原子を含む(例えば、C1~10アルキル)。ある特定の実施形態において、アルキルは1~8個の炭素原子を含む(例えば、C1~8アルキル)。他の実施形態において、アルキルは1~5個の炭素原子を含む(例えば、C1~5アルキル)。他の実施形態において、アルキルは1~4個の炭素原子を含む(例えば、C1~4アルキル)。他の実施形態において、アルキルは1~3個の炭素原子を含む(例えば、C1~3アルキル)。他の実施形態において、アルキルは1~2個の炭素原子を含む(例えば、C1~2アルキル)。他の実施形態において、アルキルは1個の炭素原子を含む(例えば、C1アルキル)。他の実施形態において、アルキルは5~15個の炭素原子を含む(例えば、C5~15アルキル)。他の実施形態において、アルキルは5~10個の炭素原子を含む(例えば、C5~10アルキル)。他の実施形態において、アルキルは5~8個の炭素原子を含む(例えば、C5~8アルキル)。他の実施形態において、アルキルは2~5個の炭素原子を含む(例えば、C2~5アルキル)。他の実施形態において、アルキルは3~5個の炭素原子を含む(例えば、C3~5アルキル)。他の実施形態において、アルキル基は、メチル、エチル、1-プロピル(n-プロビル)、1-メチルエチル(イソ-プロピル)、1-ブチル(n-ブチル)、1-メチルプロピル(sec-ブチル)、2-メチルプロピル(イソ-ブチル)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチル)、1-ペンチル(n-ペンチル)から選択される。アルキルは、単結合によって分子の残部と結びつく。
【0020】
「アリール」とは、環炭素原子から水素原子を除去することにより、芳香族の単環式または多環式炭化水素環系から誘導されるラジカルを意味する。芳香族の単環式または多環式炭化水素環系は、水素原子と、5~18個の炭素原子のみを含み、このとき、環系内の環のうちの少なくとも一つは完全不飽和であり、すなわち、ヒュッケル理論に従う環系の非局在化された(4n+2)π電子系を含む。アリール基に誘導される環系としては、限定されるものではないが、ベンゼン、フルオレン、インダン、インデン、テトラリン、及びナフタレンなどの基が挙げられる。本明細書内で別段の記載がない限り、「アリール」という用語または「ar」という接頭辞(例えば、「アラルキル(aralkyl)」のar)は、任意選択で、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、フルオロアルキル、シアノ、ニトロ、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたアラルキル、任意選択で置換されたアラルケニル、任意選択で置換されたアラルキニル、任意選択で置換されたカルボシクリル、任意選択で置換されたカルボシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロシクリル、任意選択で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたヘテロアリールアルキル、-Rb-ORa、-Rb-OC(O)-Ra、-Rb-OC(O)-ORa、-Rb-OC(O)-N(Ra)2、-Rb-N(Ra)2、-Rb-C(O)Ra、-Rb-C(O)ORa、-Rb-C(O)N(Ra)2、-Rb-O-Rc-C(O)N(Ra)2、-Rb-N(Ra)C(O)ORa、-Rb-N(Ra)C(O)Ra、-Rb-N(Ra)S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(式中、tは1または2である)、-Rb-S(O)tRa(式中、tは1または2である)、及び-Rb-S(O)tN(Ra)2(式中、tは1または2である)から独立的に選択される一つ以上の置換基によって置換された任意のアリールラジカルを含むように意図されており、このとき、各Raは、独立的に、水素、アルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、フルオロアルキル、シクロアルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、シクロアルキルアルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、アリール(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、アラルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、ヘテロシクリル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、ヘテロシクリルアルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)、ヘテロアリール(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換された)、またはヘテロアリールアルキル(任意選択でハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、もしくはトリフルオロメチルで置換)であり、各Rbは、独立的に、直接結合または直鎖状または分枝状のアルキレンまたはアルケニレン鎖であり、Rcは、直鎖状または分枝状のアルキレンまたはアルケニレン鎖であり、別段の指示がない限り、上記置換基の各々は非置換である。
【0021】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、ブロモ、クロロ、フルオロ、またはヨード置換基を意味する。
【0022】
「互変異性体」とは、分子のある原子から同じ分子の別の原子へのプロトンシフトが可能な分子を意味する。本明細書で提示される化合物は、ある特定の実施形態では、互変異性体として存在し得る。互変異性化が可能な状況では、互変異性体の化学平衡が存在する。互変異性体の正確な比率は、物理的状態、温度、溶媒、及びpHを含めたいくつかの因子に依存する。互変異性平衡のいくつかの例として、以下のものが挙げられる。
【化6】
【0023】
「医薬的に許容される塩」には、酸付加塩及び塩基付加塩の両方が含まれる。本明細書で説明される置換された複素環式誘導体化合物の任意の一つの医薬的に許容される塩は、あらゆる医薬的に好適な塩形態を包含するように意図されている。本明細書で説明される化合物の医薬的に許容される塩の例としては、医薬的に許容される酸付加塩及び医薬的に許容される塩基付加塩がある。
【0024】
「医薬的に許容される酸付加塩」とは、生物学的有効性と、生物学的にまたは別の形で望ましくない遊離塩基の特性とを保持し、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などで形成されている塩を意味する。また、有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族酸、芳香族スルホン酸などで形成されている塩も含まれ、また、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸なども含まれる。したがって、例示的な塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩 スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。また、アミノ酸の塩、例えば、アルギニン塩、グルコン酸塩、及びガラクツロン酸塩も企図されている(例えば、Berge S.M.et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Science,66:1-19(1997)を参照)。塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸に接触させて、当業者が精通する方法及び技法に従って塩を生成することによって調製することができる。
【0025】
「医薬的に許容される塩基付加塩」とは、生物学的有効性と、生物学的にまたは別の形で望ましくない遊離酸の特性とを保持する塩を意味する。このような塩は、遊離酸に無機塩基または有機塩基を添加することにより調製される。医薬的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、または有機アミンを用いて形成することができる。無機塩基から誘導される塩としては、限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、限定されるものではないが、第一級、第二級、及び第三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられる。例えば、Berge et al.(前掲)を参照。
【0026】
別段の明記がない限り、本明細書で示される構造は、一つ以上の同位体濃縮原子が存在することでのみ異なる化合物を含むように意図されている。例えば、水素がジュウテリウムもしくはトリチウムで置き換えられている、または炭素13Cもしくは14C濃縮炭素で置き換えられている点以外は本発明の構造を有する化合物は、本開示の範囲内にある。
【0027】
本開示の化合物は、任意選択で、当該化合物を構成する一つ以上の原子において、人為的な割合の原子同位体を含む。例えば、化合物は、同位体、例えば、ジュウテリウム(2H)、トリチウム(3H)、ヨウ素125(125I)、または炭素14(14C)で標識することができる。2H、11C、13C、14C、15C、12N、13N、15N、16N、16O、17O、14F、15F、16F、17F、18F、33S、34S、35S、36S、35Cl、37Cl、79Br、81Br、125Iによる同位体置換はいずれも企図されている。本発明の化合物における全ての同位体バリエーションは、放射性であるかそうでないかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される化合物は、1H原子の一部または全てが2H原子で置き換えられている。ジュウテリウムを含む置換複素環式誘導体化合物の合成方法は、当技術分野で知られており、非限定的な例に過ぎないが、以下の合成方法が含まれる。
【0029】
「保護基」とは、分子内の反応性官能基と結びついた際に官能基の反応性を遮蔽、低減、または防止する原子の基を意味する。典型的には、保護基は、合成の途中で所望に応じて選択的に除去することができる。保護基の例は、Wuts,“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,”5th Ed.,Wiley(2014)、及びHarrison et al.,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols. 1-8,1971-1996,John Wiley&Sons,NYで見いだすことができる。保護基を有し得る官能基としては、限定されるものではないが、ヒドロキシ、アミノ、及びカルボキシ基が挙げられる。代表的なアミン保護基としては、限定されるものではないが、ホルミル、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、ベンジル(Bn)、ベンゾイル(Bz)、カルバメート、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、p-メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)、tertブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「SES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)、p-メトキシベンジル(PMB)、トシル(Ts)などが挙げられる。
【0030】
「溶媒和物」には、限定されるものではないが、化合物の活性及び/または特性のうちの一つ以上を保持し、かつ望ましくないものではない溶媒和物が含まれ得る。溶媒和物の例としては、限定されるものではないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、エタノールアミン、またはこれらの組合せと組み合わせた化合物が挙げられる。
【0031】
「塩」には、限定されるものではないが、遊離酸及び遊離塩基の活性及び特性のうちの一つ以上を保持し、かつ望ましくないものではない塩が含まれ得る。塩の例示的な例としては、限定されるものではないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、y-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。
【0032】
「溶媒」としては、限定されるものではないが、非極性、極性非プロトン性、及び極性プロトン性溶媒を挙げることができる。非極性溶媒の例示的な例としては、限定されるものではないが、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、及びジクロロメタン(DCM)が挙げられる。極性非プロトン性溶媒の例示的な例としては、限定されるものではないが、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ニトロメタン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。極性プロトン性溶媒の例示的な例としては、限定されるものではないが、ギ酸、n-ブタノール、イソプロパノール(IPA)、n-プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、及び水が挙げられる。
【0033】
「酸」とは、ハイドロン(プロトンもしくは水素イオンH+)を供与可能な分子もしくはイオン、または代替的に、電子対と共有結合を形成可能な分子もしくはイオン(例えば、ルイス酸)を意味する。酸としては、限定されるものではないが、鉱酸、スルホン酸、カルボン酸、ハロゲン化カルボン酸、ビニローグカルボン酸、及び核酸を挙げることができる。鉱酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、ハロゲン化水素及びその溶液:フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI);ハロゲンオキソ酸:次亜塩素酸(HClO)、亜塩素酸(HClO2)、塩素酸(HClO3)、過塩素酸(HClO4)、ならびに対応する臭素及びヨウ素の類似体、ならびに次亜フッ素酸(HFO);硫酸(H2SO4);フルオロ硫酸(HSO3F);硝酸(HNO3);リン酸(H3PO4);フルオロアンチモン酸(HSbF6);フルオロホウ酸(HBF4);ヘキサフルオロリン酸(HPF6);クロム酸(H2CrO4);及びホウ酸(H3BO3)が挙げられる。スルホン酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、メタンスルホン酸(またはメシル酸、CH3SO3H)、エタンスルホン酸(またはエシル酸、CH3CH2SO3H)、ベンゼンスルホン酸(またはベシル酸、C6H5SO3H)、p-トルエンスルホン酸(またはトシル酸、CH3C6H4SO3H)、トリフルオロメタンスルホン酸(またはトリフリン酸、CF3SO3H)、及びポリスチレンスルホン酸(スルホン化ポリスチレン、[CH2CH(C6H4)SO3H]n)が挙げられる。カルボン酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、酢酸(CH3COOH)、クエン酸(C6H8O7)、ギ酸(HCOOH)、グルコン酸(HOCH2-(CHOH)4-COOH)、乳酸(CH3-CHOH-COOH)、シュウ酸(HOOC-COOH)、及び酒石酸(HOOC-CHOH-CHOH-COOH)が挙げられる。ハロゲン化カルボン酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、フルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、及びトリクロロ酢酸が挙げられる。ビニローグカルボン酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、アスコルビン酸が挙げられる。核酸の例示的な例としては、限定されるものではないが、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)が挙げられる。
【0034】
「塩基」とは、プロトン供与体からのプロトンを受け取り可能な及び/または水酸化物イオン(OH-)を生成可能な分子またはイオンを意味する。塩基の例示的な例としては、限定されるものではないが、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化ヒ素(As(OH)3)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化ベリリウム(Be(OH)2)、水酸化ビスマス(III)(Bi(OH)3)、水酸化ホウ素(B(OH)3)、水酸化カドミウム(Cd(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化セリウム(III)(Ce(OH)3)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化クロム(II)(Cr(OH)2)、水酸化クロム(III)(Cr(OH)3)、水酸化クロム(V)(Cr(OH)5)、水酸化クロム(VI)(Cr(OH)6)、水酸化コバルト(II)(Co(OH)2)、水酸化コバルト(III)(Co(OH)3)、水酸化銅(I)(CuOH)、水酸化銅(II)(Cu(OH)2)、水酸化ガリウム(II)(Ga(OH)2)、水酸化ガリウム(III)(Ga(OH)3)、水酸化金(I)(AuOH)、水酸化金(III)(Au(OH)3)、水酸化インジウム(I)(InOH)、水酸化インジウム(II)(In(OH)2)、水酸化インジウム(III)(In(OH)3)、水酸化イリジウム(III)(Ir(OH)3)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)3)、水酸化ランタン(La(OH)、水酸化鉛(II)(Pb(OH)2)、水酸化鉛(IV)(Pb(OH)4)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化マンガン(II)(Mn(OH)2)、水酸化マンガン(III)(Mn(OH)3)、水酸化マンガン(IV)(Mn(OH)4)、水酸化マンガン(VII)(Mn(OH)7)、水酸化水銀(I)(Hg2(OH)2)、水酸化水銀(II)(Hg(OH)2)、水酸化モリブデン(Mo(OH)3)、水酸化ネオジム(Nd(OH)3)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル(II)(Ni(OH)2)、nickel(III)水酸化(Ni(OH)3)、水酸化ニオブ(Nb(OH)3)、水酸化オスミウム(IV)(Os(OH)4)、水酸化パラジウム(II)(Pd(OH)2)、水酸化パラジウム(IV)(Pd(OH)4)、水酸化白金(II)(Pt(OH)2)、水酸化白金(IV)(Pt(OH)4)、水酸化プルトニウム(IV)(Pu(OH)4)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ラジウム(Ra(OH)2)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化ルテニウム(III)(Ru(OH)3)、水酸化スカンジウム(Sc(OH)3)、水酸化ケイ素(Si(OH)4)、水酸化銀(AgOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、水酸化タンタル(V)(Ta(OH)5)、水酸化テクネチウム(II)(Tc(OH)2)、水酸化テトラメチルアンモニウム(C4H12NOH)、水酸化タリウム(I)(TlOH)、水酸化タリウム(III)(Tl(OH)3)、水酸化トリウム(Th(OH)4)、水酸化スズ(II)(Sn(OH)2)、水酸化スズ(IV)(Sn(OH)4)、水酸化チタン(II)(Ti(OH)2)、水酸化チタン(III)(Ti(OH)3)、水酸化チタン(IV)(Ti(OH)4)、水酸化タングステン(II)(W(OH)2)、水酸化ウラニル((UO2)2(OH)4)、水酸化バナジウム(II)(V(OH)2)、水酸化バナジウム(III)(V(OH)3)、水酸化バナジウム(V)(V(OH)5)、水酸化イッテルビウム(Yb(OH)3)、水酸化イットリウム(Y(OH)3)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、及び水酸化ジルコニウム(Zr(OH)4)が挙げられる。
【0035】
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される方法は、本明細書で説明される順序でも、そのいかなる可能な順序でも、同時に発生し得る。
【0036】
一つの態様において、本明細書では、式(8)の化合物:
【化7】
またはその塩を調製するための方法であって、式(I)の化合物:
【化8】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は
独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、
及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基で置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩を、加水分解剤に接触させることを含む、方法が開示される。
【0037】
いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は、独立的に、メトキシ及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、一つまたは二つのメトキシ置換基で置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルである。一部の実施形態において、R1はC1~4アルキルまたはCH2Clである。一部の実施形態において、R1はC1~4アルキルである。一部の実施形態において、R1はt-ブチルである。
【0038】
いくつかの実施形態において、R2は、保護基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2は、メチル、エチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルまたはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルである。
【0039】
いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、R2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキルまたはベンジルであり、R2は、メチル、エチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R1はC1~4アルキルであり、R2はメチルまたはエチルである。いくつかの実施形態において、R1はtert-ブチルであり、R2はメチルである。
【0040】
いくつかの実施形態において、R1は、保護基、メチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、1,2,3-トリメトキシベンゼン、1,2,4-メトキシベンゼン(methoxylbenzene)、1,3,5-トリメトキシベンゼン、ニトロベンゼン、1,2-ジニトロベンゼン、1,3-ジニトロベンゼン、1,4-ジニトロベンゼン、1,2,3-トリニトロベンゼン、1,2,4-ニトロベンゼン(nitrolbenzene)、1,3,5-トリニトロベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-フルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2-ジブロモベンゼン、1,3-ジブロモベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1,2,3-トリブロモベンゼン、1,2,4-トリブロモベンゼン、1,3,5-トリブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,3,5-トリヨードベンゼン、2-メチルベンジル、3-メチルベンジル、4-メチルベンジル、2,3-ジメチルベンジル、2,4-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンジル、2,6-ジメチルベンジル、3,4-ジメチルベンジル、3,5-ジメチルベンジル、2,3-ジメトキシベンジル、2,4-ジメトキシベンジル、2,5-ジメトキシベンジル、2,6-ジメトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、3,5-ジメトキシベンジル、2,3-ジニトロベンジル、2,4-ジニトロベンジル、2,5-ジニトロベンジル、2,6-ジニトロベンジル、3,4-ジニトロベンジル、3,5-ジニトロベンジル、2,3-ジフルオロベンジル、2,4-ジフルオロベンジル、2,5-ジフルオロベンジル、2,6-ジフルオロベンジル、3,4-ジフルオロベンジル、3,5-ジフルオロベンジル、2,3-ジクロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、2,5-ジクロロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、3,4-ジクロロベンジル、3,5-ジクロロベンジル、2,3-ジブロモベンジル、2,4-ジブロモベンジル、2,5-ジブロモベンジル、2,6-ジブロモベンジル、3,4-ジブロモベンジル、3,5-ジブロモベンジル、2,3-ジヨードベンジル、2,4-ジヨードベンジル、2,5-ジヨードベンジル、2,6-ジヨードベンジル、3,4-ジヨードベンジル、または3,5-ジヨードベンジルである。
【0041】
いくつかの実施形態において、R2は、C1~C12直鎖状、C3~C12分枝状、もしくはC3~C12環式アルキル;C2~C12直鎖状、C3~C12分枝状、もしくはC3~C12環式アルケニル;またはC2~C12直鎖状、C3~C12分枝状、もしくはC3~C12環式アルキニル、あるいはベンジルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~C12直鎖状もしくはC3~C12分枝状アルケニル;C2~C12直鎖状、C3~C12もしくは分枝状アルケニル;C2~C12直鎖状もしくはC3~C12アルキニル、またはベンジルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~C12直鎖状アルケニル、C2~C12直鎖状アルケニル、もしくはC2~C12直鎖状アルキニル、またはベンジルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~C12直鎖状アルケニル、C2~C12直鎖状アルケニル、またはベンジルである。いくつかの実施形態において、R2はC1~C12直鎖状アルケニルまたはベンジルである。いくつかの実施形態において、R2はC1~C12直鎖状アルケニルである。
【0042】
いくつかの実施形態において、加水分解剤は酸を含む。いくつかの実施形態において、酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、尿酸、タウリン、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アミノメチルホスホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、ホスホン酸、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸、エタンスルホン酸(ESA)、またはこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、酸は、酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、硫酸、または塩酸である。いくつかの実施形態において、酸はトリフルオロ酢酸(TFA)または塩酸である。いくつかの実施形態において、酸は塩酸である。
【0043】
いくつかの実施形態において、加水分解剤は塩基を含む。いくつかの実施形態において、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、Polymer-SK(例えば、MacCoss et al.,Synlett,675,2004を参照)、またはテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)(例えば、Ren et al.,J.Am.Chem.Soc.,129,5381,2007を参照)である。いくつかの実施形態において、塩基はアルカリ金属水酸化物またはテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)である。いくつかの実施形態において、塩基はアルカリ金属水酸化物である。いくつかの実施形態において、塩基は、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、または水酸化セシウム(CsOH)、及びこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、塩基は水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)である。いくつかの実施形態において、塩基は水酸化カリウム(KOH)である。いくつかの実施形態において、塩基はアルカリ金属炭酸塩である。いくつかの実施形態において、塩基は、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、及びこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、塩基は炭酸カリウム(K2CO3)または炭酸セシウム(Cs2CO3)である。いくつかの実施形態において、塩基は炭酸セシウム(Cs2CO3)である。
【0044】
いくつかの実施形態において、接触は、溶媒の存在下で生じる。いくつかの実施形態において、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformide)(DMF)、t-ブタノール、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、またはこれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、溶媒はTHFを含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、または2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、式(8)の化合物の純度は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(8)の化合物の純度は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(8)の化合物の純度は、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(8)の化合物の純度は、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(8)の化合物の純度は、少なくとも99%である。
【0046】
いくつかの実施形態において、本明細書では、式(I)の化合物:
【化9】
を調製するための方法であって、
a)式(5)の化合物:
【化10】
またはその塩を、塩基の存在下で、式(II)の化合物:
【化11】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は、独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよい)またはその塩に接触させることと、
b)ステップa)で形成された生成物を、塩基の存在下で、式(III)の化合物:
【化12】
(式中、R
2はC
1~4アルキルである)
またはその塩に接触させて、前記式(I)の化合物
【化13】
またはその塩を得ることと、
c)任意選択で、ステップb)で形成された生成物を、水及び塩基を含む溶媒で洗浄することと、を含む、方法が開示される。
【0047】
いくつかの実施形態において、少量の式(IV)の化合物が、ステップb)またはステップc)の後に形成され得る。式(I)の化合物は式(IV)の化合物と共に、本明細書で説明される加水分解を介して直接式(8)の化合物に変換することができる。
【化14】
【0048】
いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は、独立的に、メトキシ及びハロゲンから選択される一つまたは二つの置換基によって置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、一つまたは二つのメトキシ置換基で置換されてもよい。いくつかの実施形態において、R1は、C1~4アルキル、CH2Cl、フェニル、またはベンジルである。一部の実施形態において、R1はC1~4アルキルまたはCH2Clである。一部の実施形態において、R1はC1~4アルキルである。一部の実施形態において、R1はt-ブチルである。
【0049】
いくつかの実施形態において、R2は、保護基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2は、メチル、エチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルまたはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルである。いくつかの実施形態において、R1はt-ブチルであり、R2はメチルである。
【0050】
いくつかの実施形態において、接触は、塩基の存在下で生じる。いくつかの実施形態において、塩基は独立的に有機塩基である。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン(DBN)、またはこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、または1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)である。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)またはジイソプロピルアミン(DIPEA)である。いくつかの実施形態において、有機塩基はジイソプロピルアミン(DIPEA)である。
【0051】
いくつかの実施形態において、接触は、溶媒の存在下で生じる。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチルアセトアミド(DEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、またはこれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、または2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、または2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはテトラヒドロフラン(THF)を含む。いくつかの実施形態において、溶媒はテトラヒドロフラン(THF)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、ステップc)が必要とされる。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.5%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.4%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.3%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.2%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.1%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.09%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.08%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.07%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.06%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.05%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.04%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.03%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.02%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、ステップc)で形成された生成物は、約0.01%未満の式(5)の化合物を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、ステップc)で使用される溶媒は、水及び塩基を含む。いくつかの実施形態において、塩基に対する水の比率(v/v)は、約0.1%~1%、約0.1%~5%、約0.1~10%、約0.1%~20%、約0.5%~1%、約0.5%~5%、約0.5%~10%、約0.5%~20%、約1%~5%、約1%~10%、約1%~20%、約5%~10%、約5%~20%、約10%~20%、約10%~30%、約20%~30%、約20%~40%、約30%~40%、約30%~50%、約40%~50%、約40%~60%、約50%~60%、約50%~70%、約60%~70%、約60%~80%、約70%~80%、約70%~90%、約80%~90%、約80%~95%、約90%~95%、約90%~99%、または約95%~99%である。いくつかの実施形態において、塩基は有機塩基である。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン(DBN)、またはこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、または1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)である。いくつかの実施形態において、有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)またはジイソプロピルアミン(DIPEA)である。いくつかの実施形態において、有機塩基はジイソプロピルアミン(DIPEA)である。
【0054】
別の態様において、本明細書では式(I)の化合物:
【化15】
またはその塩が開示される(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)。
【0055】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の純度は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の純度は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の純度は、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の純度は、少なくとも99%、少なくとも99.1%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.4%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の純度は、少なくとも99%である。
【0056】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.5%未満の式(5)の化合物を含む。すなわち、式(I)の化合物は約0.5%未満の不純物を含み、この不純物は式(5)の化合物である。請求項及び本明細書全体において、「式(I)の化合物は、約X%未満の式(5)の化合物を含む」という文は、式(I)の化合物が約X%未満の不純物を含み、この不純物が式(5)の化合物であることを意味する。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.4%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.3%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.2%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.1%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.09%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.08%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.07%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.06%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.05%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.04%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.03%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.02%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、約0.01%未満の式(5)の化合物を含む。
【0057】
別の態様において、本明細書では、組成物であって、
a)80%以上の式(I)の化合物:
【化16】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、
b)20%以下の式(IV)の化合物:
【化17】
(式中、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、を含み、式(I)の化合物またはその塩と、式(IV)の化合物またはその塩とを合わせた量が、約99%から約100%の間である、例えば、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、または約99.9%である、組成物が開示される。
【0058】
いくつかの実施形態において、R2は、保護基、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2は、メチル、エチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルまたはtert-ブチルである。いくつかの実施形態において、R2はメチルである。
【0059】
いくつかの実施形態において、組成物は、約85%以上の式(I)の化合物またはその塩と、約15%以下の式(IV)の化合物またはその塩とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約90%以上の式(I)の化合物またはその塩と、約10%以下の式(IV)の化合物またはその塩とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約95%以上の式(I)の化合物またはその塩と、約5%以下の式(IV)の化合物またはその塩とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、99%以上の式(I)の化合物またはその塩と、約1%以下の式(IV)の化合物またはその塩とを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.5%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.4%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.3%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.2%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.05%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.01%未満の式(5)の化合物を含む。
【0061】
別の態様において、本明細書では、組成物であって、式(I)の化合物:
【化18】
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩、および約0.5%未満の式(5)の化合物:
【化19】
を含む、組成物が開示される。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物は、約0.4%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.3%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.2%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.1%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、0.05%未満の式(5)の化合物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.01%未満の式(5)の化合物を含む。
【0063】
請求項及び本明細書全体において、別段の記載がない限り、化合物の数値パーセンテージポイント(%)は、HPLCにより測定された化合物の純度または不純度を意味する。
調製方法
【化20】
【0064】
パラジウム触媒を用いて、ボロン酸1をジクロロシアノピリジン2と結合して化合物3を得る。クロロシアノ-ピリジン3をナトリウムメトキシドで処理して化合物4を得る。塩酸水溶液を用いて、化合物4を酸5に変換する。化合物5をピバロイルクロリドで処理して混合無水物6を得、これをグリシンメチルエステル塩酸塩と反応させて化合物7に変換する(ピリジン-3-オール位置に少量の化合物7の脱保護バージョンが形成されることがあるが、これはさらなる精製を伴わずに直接化合物8に変換することができる)。水酸化カリウムを用いて、化合物7を化合物8に変換する。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態及び態様を例示するものである。本発明の趣旨または範囲を改変することなく様々な変更、追加、代用などが実施され得ること、そしてこのような変更及び変形が、後述の請求項で定義される発明に包含されることは、当業者には明らかであろう。本明細書で開示される発明を以下の実施例でさらに例示するが、この実施例は決して限定的なものとして解釈すべきではない。
【0066】
実施例1:5-(3-クロロフェニル)-3-クロロ-2-シアノピリジン(化合物3)の調製
メカニカルスターラー、浸漬管、温度計、及び窒素入口を搭載した20L反応器に、(3-クロロフェニル)ボロン酸(550g、3.52mol)、3,5-ジクロロ-2-シアノピリジン(639g、3.69mol)、K2CO3(5.5g、40mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロ-パラジウム(II)[PdCl2(dppf)](11.5g、140mmol)、及びジメチルホルムアミド(3894g、4.125L)を投入した。反応溶液を撹拌し、浸漬管を通じて30分間窒素パージした。次いで、50℃未満の温度を25時間維持しながら、脱気水(413g)を反応混合物に投入した。反応の完了は、移動相として酢酸エチル/メタノール(4:1)、反応構成成分の可視化にUV435nmを用いたTLC分析による測定で3,5-ジクロロ-2-シアノピリジンが消失したことによって判定した。次いで、反応溶液を5℃まで冷却し、ヘプタン(940g、1.375L)を投入し、30分間撹拌した。水(5.5L)を投入し、混合物をさらに1時間撹拌し、温度を15℃まで上昇させた。濾過によって固体生成物を単離し、水(5.5L)で洗浄し、次にヘプタン(18881g、2750ML)で洗浄した。得られたケーキを真空下で18時間風乾し、次いで50℃で4時間、2-プロパノール(6908g、8800mL)及びヘプタン(1g、2200mL)の混合物で粉砕し、周囲温度まで冷却し、次いで周囲温度で1時間撹拌した。次いで濾過によって生成物を単離し、低温の2-プロパノール(3450g、4395mL)で洗浄し、次にヘプタン(3010g、4400mL)で洗浄した。得られた固体を高真空下、40℃で64時間乾燥して、565.9g(65%の収率)の所望の生成物をベージュ色の固体として得た。HPLCによる純度は98.3%であった。1H NMR(DMSO-d6)δ9.12(d,1H),8.70(d,1H),8.03(t,1H)7.88(m,1H),及び7.58(m,2H)。
【0067】
実施例2:5-(3-クロロフェニル)-3-メトキシ-2-シアノピリジン(化合物4)の調製
メカニカルスターラー、コンデンサー、温度計、及び窒素入口を搭載した20L反応器に、5-(3-クロロフェニル)-3-クロロ-2-シアノピリジン(1)(558g、2.24mol)及び、必要に応じてメタノールを投入し、その後にナトリウムメトキシド(メタノール中25%溶液、726.0g、3.36mol)を投入した。反応溶液を撹拌しながら24時間加熱還流し、ベージュ色の懸濁液を得た。反応の完了は、移動相としてヘキサン/酢酸エチル(6:3)、反応構成成分の可視化にUV435nmを用いたTLC分析による測定で5-(3-クロロフェニル)-3-クロロ-2-シアノピリジンが消失したことによって判定した。反応混合物を5℃まで冷却し、水(5580mL)を投入した。得られたスラリーを5℃で3時間撹拌した。濾過によって固体生成物を単離し、濾過物がpH7になるまで水(5580mL)で洗浄した。濾過ケーキを真空下で16時間風乾した。次いで濾過ケーキを反応器に再投入し、周囲温度で1時間MeOH(2210g、2794mL)中で粉砕した。濾過によって固体を収集し、MeOH(882g、1116mL、5℃)で洗浄し、次にヘプタン(205mL、300mL)で洗浄し、高真空下、45℃で72時間乾燥して448g(82%の収率)の所望の生成物をオフホワイト色の固体として得た。HPLCによる純度は97.9%であった。1H NMR(DMSO-d6)δ8.68(d,1H),8.05(d,1H),8.01(s,1H)7.86(m,1H),7.59(s,1H),7.57(s,1H)及び4.09(s,3H)。
【0068】
実施例3:5-(3-クロロフェニル)-3-ヒドロキシピリジン-2-カルボン酸(化合物5)の調製
メカニカルスターラー、コンデンサー、温度計、窒素入口、及び25%NaOH水溶液トラップを搭載した20L反応器に、5-(3-クロロフェニル)-3-メトキシ-2-シアノピリジン(2)(440.6g、1.8mol)及びHCl 37%水溶液(5302g)を投入した。反応溶液を撹拌しながら102℃まで24時間加熱した。さらなるHCl 37%水溶液(2653g)を添加し、次に104℃で18時間撹拌した。次いで反応内容物を5℃まで冷却し、水(4410g)を投入し、次いで0℃で16時間撹拌した。得られた沈殿生成物を濾過によって単離し、濾過物がpH6になるまで水で洗浄した(約8,000Lの水)。濾過ケーキを減圧下で2時間乾燥した。次いでケーキを反応器に戻し、周囲温度で2時間THF(1958g、2201mL)中で粉砕した。次いで濾過によって固体生成物を単離し、THF(778g、875mL)で洗浄し、減圧下、5℃で48時間乾燥して385g(89%の収率)の所望の生成物をオフホワイト色の固体として得た。HPLC純度は96.2%であった。1H NMR(DMSO-d6)δ8.52(d,1H),7.99(d,1H),7.95(s,1H)7.81(t,1H),7.57(s,1H),及び7.55(s,1H)。
【0069】
実施例4a:5-(3-クロロフェニル)-2-(N-グリシンメチルエステルカルボン酸アミド)-3-(2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ)ピリジン(化合物7)の調製
3-ヒドロキシ5-(3-クロロフェニル)-2-カルボキシ-ピリジン(1.00wt)及びテトラヒドロフラン(4.48wt/wt)を反応器に投入し、次いでN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.21wt/wt)を投入した。ピバロイルクロリド(1.05wt/wt)を約0℃で添加し、反応完了とみなされるまで混合物を撹拌した。テトラヒドロフラン(2.59wt/wt)及びグリシンメチルエステル塩酸塩(0.64wt/wt)を約0℃で添加し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.78wt/wt)を約0℃で添加した。反応完了とみなされるまで、混合物を約0℃及び周囲温度で撹拌した。反応溶媒テトラヒドロフランを、減圧下、高温でエタノールに交換した。水(8.00wt/wt)を約40℃で添加した。得られた懸濁液を周囲温度で撹拌し、濾過し、エタノール及び水で洗浄した。単離した化合物7には約0.5%の化合物5が含まれており、この化合物5の除去は困難であった。
【0070】
実施例4b:5-(3-クロロフェニル)-2-(N-グリシンメチルエステルカルボン酸アミド)-3-(2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ)ピリジン(化合物7)の調製
3-ヒドロキシ5-(3-クロロフェニル)-2-カルボキシ-ピリジン(1.00wt)及びテトラヒドロフラン(4.48wt/wt)を反応器に投入し、次いでN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.21wt/wt)を投入した。ピバロイルクロリド(1.05wt/wt)を約0℃で添加し、反応完了とみなされるまで混合物を撹拌した。テトラヒドロフラン(2.59wt/wt)及びグリシンメチルエステル塩酸塩(0.64wt/wt)を約0℃で添加し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.78wt/wt)を約0℃で添加した。反応完了とみなされるまで、混合物を約0℃及び周囲温度で撹拌した。反応溶媒テトラヒドロフランを、減圧下、高温でエタノールに交換した。水(8.00wt/wt)を約40℃で添加し、次にさらなる量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.077wt/wt)を添加した。懸濁液を周囲温度で撹拌し、濾過し、エタノール及び水で洗浄した。単離した化合物7は、HPLCにおいて検出可能な量の化合物5を含まないかまたは0.05%未満の化合物5を含んだ。化合物7をさらに精製することなく次のステップに使用した。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ9.064(t,j=6.1Hz,1H),8.947(d,j=2.0Hz,1H),8.161(d,j=2.0Hz,1H),7.999(m,1H),7.870(m,1H),7.568(m,2H),4.024(d,j=6.1Hz,2H),3.656(s,3H),1.332(s,9H)。化合物7の分子量は404.11である。これは、質量スペクトルが、分子の[M+1]イオンである質量405.1のメインピークを示すことによって確認された。
【0071】
実施例5:5-(3-クロロフェニル)-2-(N-グリシンカルボン酸アミド)-3-ヒドロキシピリジン(化合物8)の調製
5-(3-クロロフェニル)-2-(N-グリシンメチルエステルカルボン酸アミド)-3-(2,2-ジメチル-1-オキソプロポキシ)ピリジン、2-メチル-テトラヒドロフラン(6.92wt/wt)、及び水(3.24wt/wt)を反応器に投入した。およそ45%の水酸化カリウム溶液(1.50wt/wt)を添加し、反応完了とみなされるまで混合物を周囲温度で撹拌した。水(3.73wt/wt)を投入し、混合物を周囲温度の濃HCl水溶液(約1.3wt/wt)で酸性化した。下方の水相を排出し、約45℃で有機抽出物に水を添加した。下方の水相を排出し、有機相を研磨濾過した。2-メチル-テトラヒドロフラン(8.30wt/wt)を投入し、混合物を真空下約45℃で約5体積に濃縮した。n-ヘプタン(0.99wt/wt)及び5-(3-クロロフェニル)-2-(N-グリシンカルボン酸アミド)-3-ヒドロキシピリジンシード(0.005wt/wt)を約45℃で添加した。n-ヘプタン(5.62wt/wt)を2時間で投入し、懸濁液を約45℃で約1時間撹拌した。懸濁液を真空下、高温で約6.5体積に濃縮し、次に約75℃で撹拌した。懸濁液を周囲温度まで冷却し、撹拌し、濾過した。湿ったケーキをn-ヘプタン(3.31wt/wt)で洗浄し、真空下約50℃で乾燥して、投入量の3-ヒドロキシ-5-(3-クロロフェニル)-2-カルボキシ-ピリジン(化合物5)からHPLCにおいて約90%の収率及び約100%の純度で白色~ベージュ色の結晶を得た。1H NMR(DMSO-d6)δ12.84(s,1H),12.39(s,1H),9.39(t,1H),8.56(d,1H),7.94(s,1H),7.81(m,2H),7.55(q,2H),及び4.02(d,2H)。
【0072】
本明細書で本発明の実施形態を示し説明してきたが、このような実施形態が例として提供されるに過ぎないことは、当業者には明白であろう。当業者には、本発明から逸脱することなしに多数の変形形態、変化、及び置換えが想到されよう。本発明を実施する際には、本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替物が用いられ得ることを理解されたい。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、それにより、これらの請求項の範囲内の方法及び構造ならびにその等価物が網羅されることが意図されている。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
式(8)の化合物:
(化1)
またはその塩を調製するための方法であって、
式(I)の化合物:
(化2)
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)
またはその塩を、加水分解剤に接触させることを含む、方法。
(態様2)
R
1がt-ブチルである、態様1に記載の方法。
(態様3)
R
2がメチルである、態様1または2に記載の方法。
(態様4)
前記加水分解剤が酸
を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
(態様5)
前記加水分解剤が塩基
を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
(態様6)
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、Polymer-SK、またはテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)である、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記塩基が、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化セシウム(CsOH)、及びこれらの任意の組合せから選択されるアルカリ金属水酸化物である、態様5に記載の方法。
(態様8)
前記塩基が、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)、及びこれらの任意の組合せから選択されるアルカリ金属炭酸塩である、態様5に記載の方法。
(態様9)
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウム(KOH)である、態様7に記載の方法。
(態様10)
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、t-ブタノール、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、またはこれらの任意の組合せを含む溶媒の存在下で生じる、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
(態様11)
前記溶媒が2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)を含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記式(8)の化合物の純度が少なくとも99%である、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
(態様13)
前記式(I)の化合物またはその塩が、
a)式(5)の化合物:
(化3)
またはその塩を、塩基の存在下で、式(II)の化合物:
(化4)
(式中、R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は、独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよい)またはその塩に接触させることと、
b)ステップa)で形成された生成物を、塩基の存在下で、式(III)の化合物:
(化5)
(式中、R
2はC
1~4アルキルである)
またはその塩に接触させて、前記式(I)の化合物
(化6)
またはその塩を得ることと、
c)任意選択で、ステップb)からの前記式(I)の化合物を、水及び塩基を含む溶媒で洗浄することと、を含む、方法によって調製される、態様1~12のいずれか一項に記載の方法。
(態様14)
ステップc)が必要とされる、態様13に記載の方法。
(態様15)
前記式(I)の化合物が、約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様13または14に記載の方法。
(態様16)
前記式(I)の化合物が、約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様13または14に記載の方法。
(態様17)
前記式(I)の化合物が、約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様13または14に記載の方法。
(態様18)
前記式(I)の化合物が、約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様13または14に記載の方法。
(態様19)
前記式(I)の化合物が、約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様13または14に記載の方法。
(態様20)
前記塩基の各々が独立的に有機塩基である、態様11~19のいずれか一項に記載の方法。
(態様21)
各々の有機塩基が独立的に、トリエチルアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン(DIPEA)、ピリジン、2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン(DBN)、またはこれらの任意の組合せである、態様20に記載の方法。
(態様22)
各々の有機塩基が独立的にジイソプロピルアミン(DIPEA)である、態様20に記載の方法。
(態様23)
エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチルアセトアミド(DEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、アセトニトリル、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(ME-THF)、またはこれらの任意の組合せを含む溶媒の存在下で生じる、態様13~22のいずれか一項に記載の方法。
(態様24)
前記溶媒がテトラヒドロフラン(THF)である、態様23に記載の方法。
(態様25)
前記式(I)の化合物またはその塩の純度が少なくとも約80%である、態様1~24のいずれか一項に記載の方法。
(態様26)
前記式(I)の化合物またはその塩の純度が少なくとも約90%である、態様1~24のいずれか一項に記載の方法。
(態様27)
式(I)の化合物:
(化7)
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩。
(態様28)
R
1がt-ブチルである、態様27に記載の化合物またはその塩。
(態様29)
R
2がメチルである、態様27または28に記載の化合物またはその塩。
(態様30)
純度が少なくとも約80%である、態様27~29のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(態様31)
純度が少なくとも約85%である、態様27~29のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(態様32)
純度が少なくとも約90%である、態様27~29のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(態様33)
純度が少なくとも約95%である、態様27~29のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(態様34)
前記化合物が、約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様27~33のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(化8)
(態様35)
前記化合物が、約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様34に記載の化合物またはその塩。
(態様36)
前記化合物が、約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様34に記載の化合物またはその塩。
(態様37)
前記化合物が、約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様34に記載の化合物またはその塩。
(態様38)
前記化合物が、約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様34に記載の化合物またはその塩。
(態様39)
前記式(I)の化合物が単離される、態様27~38のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
(態様40)
組成物であって、
a)80%以上の式(I)の化合物:
(化9)
(式中、
R
1は、C
1~4アルキル、CH
2Cl、フェニル、またはベンジルであり、このとき、フェニル及びベンジルの各々は独立的に、メチル、メトキシ、ニトロ、及びハロゲンから選択される一つ、二つ、または三つの置換基によって置換されてもよく、
R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、
b)20%以下の式(IV)の化合物:
(化10)
(式中、R
2はC
1~4アルキルである)またはその塩と、を含み、
前記式(I)の化合物またはその塩と、前記式(IV)の化合物またはその塩とを合わせた量が約99%から約100%の間である、組成物。
(態様41)
R
1がt-ブチルである、態様40に記載の組成物。
(態様42)
R
2がメチルである、態様40または41に記載の組成物。
(態様43)
85%以上の前記式(I)の化合物またはその塩および15%以下の前記式(IV)の化合物またはその塩を含む、態様40~42のいずれか一項に記載の組成物。
(態様44)
90%以上の前記式(I)の化合物またはその塩および10%以下の前記式(IV)の化合物またはその塩を含む、態様40~42のいずれか一項に記載の組成物。
(態様45)
約0.5%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様40~44のいずれか一項に記載の組成物。
(化11)
(態様46)
約0.3%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様45に記載の組成物。
(態様47)
約0.2%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様45に記載の組成物。
(態様48)
約0.1%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様45に記載の組成物。
(態様49)
約0.05%未満の前記式(5)の化合物を含む、態様45に記載の組成物。
(態様50)
純度がHPLCにより測定されたものである、態様1~49のいずれか一項に記載の態様。