(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】LIDAR位相ノイズ除去システム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20240221BHJP
G01S 7/4915 20200101ALI20240221BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S7/4915
(21)【出願番号】P 2023515006
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 US2021048923
(87)【国際公開番号】W WO2022051542
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-27
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520390450
【氏名又は名称】オーロラ・オペレイションズ・インコーポレイティッド
【氏名又は名称原語表記】AURORA OPERATIONS, INC.
【住所又は居所原語表記】1654 Smallman Street, Pittsburgh, PA 15222, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マイケルズ・アンドルー・スタイル
(72)【発明者】
【氏名】リン・セン
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/076402(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0249351(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0269790(US,A1)
【文献】特開2020-085723(JP,A)
【文献】特開2014-202716(JP,A)
【文献】特開2015-125062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律車両のためのLIDAR(Light Detection and Ranging)システムであって、
レーザビームを生成するように構成されるレーザソースと、
前記レーザビームを表す信号を生成するように構成される自由空間干渉計と、
前記レーザビームを表す信号は、第1ビート信号であり、
前記レーザビームを表す信号に基づいて前記レーザビームの移動時間を測定するように構成されるLIDAR測定回路と、
前記移動時間は、前記レーザビームが前記自律車両の環境に送信され、前記自律車両の前記環境内のオブジェクトから反射され、前記LIDARシステムによって受信されるために移動した時間を示し、
前記レーザソースの位相を決定するように構成される基準測定回路と、
(i)前記レーザソースの前記位相、及び(ii)前記レーザビームの前記移動時間に少なくとも部分的に基づいて、前記レーザビームを表す信号から位相ノイズを低減するように構成される位相除去回路と、を含み、
前記位相除去回路は、特定時間の前記位相ノイズを識別するために、前記移動時間を用いて基準干渉計からの基準信号の位相を遅延させることによって前記位相ノイズを低減し、
前記基準干渉計は、前記レーザビームに基づいて前記基準信号を生成するように構成さ
れ、
前記レーザソースの前記位相は、前記基準干渉計から受信される第2ビート信号から計算され、
前記レーザソースは、前記自由空間干渉計及び前記基準干渉計を同時に駆動する、
LIDARシステム。
【請求項2】
前記自由空間干渉計は、第1局部発振器信号及びターゲット反射第1信号を結合して前記第1ビート信号を生成し、
前記基準干渉計は、第2局部発振器信号及び固定長光遅延線によって遅延した第2信号を結合して前記第2ビート信号を生成する、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項3】
前記位相除去回路は、デジタル遅延演算を通じて前記レーザソースの基準信号部分の遅延位相を生成する、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項4】
前記位相除去回路は、前記レーザソースの非遅延位相から前記レーザソースの基準信号部分の前記遅延位相を減算して前記レーザソースのデルタ位相を生成し、
前記レーザソースの前記デルタ位相は、前記特定時間の前記位相ノイズを示す、
請求項3に記載のLIDARシステム。
【請求項5】
前記位相除去回路は、前記レーザビームを表す信号に前記デルタ位相の複素共役(Complex Conjugate)を乗じて位相ノイズを低減させる、
請求項4に記載のLIDARシステム。
【請求項6】
前記位相ノイズの低減後に前記レーザビームを表す信号である修正された信号に基づいて前記レーザソースと前記オブジェクトとの間の距離を計算するように構成される距離計算回路をさらに含む、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項7】
前記距離計算回路は、前記修正された信号の周波数を決定し、
前記修正された信号の前記周波数は、前記修正された信号の周波数表現のピーク振幅に基づいて決定される、
請求項6に記載のLIDARシステム。
【請求項8】
前記LIDARシステムは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)LIDARシステムである、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項9】
前記基準測定回路は、前記基準干渉計からの同相信号(In-Phase Signal)及び直交信号(Quadrature Signal)に少なくとも部分的に基づいて前記レーザソースの位相を決定する、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項10】
前記レーザソースの前記位相を決定するために、前記基準測定回路は、前記同相信号で割った前記直交信号にアークタンジェント演算(Arctangent Operation)を適用し、前記アークタンジェント演算からの出力に積分演算(Integration Operation)を適用するように構成される、
請求項9に記載のLIDARシステム。
【請求項11】
前記レーザビームの前記移動時間を測定するために、前記LIDAR測定回路は、自由空間干渉計からビート信号の周波数を決定するように構成され、
前記ビート信号の周波数は、前記ビート信号の周波数表現の少なくとも1つのピーク振幅に基づいて決定される、
請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項12】
自律車両制御システムであって、
LIDARシステムと、1つ以上のプロセッサとを含み、
前記LIDARシステムは、レーザソースと、
自由空間干渉計と、LIDAR測定回路と、基準測定回路と、位相除去回路と、を含み、
前記レーザソースは、レーザビームを生成するように構成され、
前記自由空間干渉計は、前記レーザビームを表す信号を生成するように構成され、
前記レーザビームを表す信号は、第1ビート信号であり、
前記LIDAR測定回路は、前記レーザビームを表す信号に基づいて前記レーザビームの移動時間を測定するように構成され、
前記移動時間は、前記レーザビームが自律車両の環境に送信され、前記自律車両の前記環境内のオブジェクトから反射され、前記LIDARシステムによって受信されるために移動した時間を示し、
前記基準測定回路は、前記レーザソースの位相を決定するように構成され、
前記位相除去回路は、(i)前記レーザソースの前記位相、及び(ii)前記レーザビームの前記移動時間に少なくとも部分的に基づいて、前記レーザビームを表す信号から位相ノイズを低減するように構成され、
前記位相除去回路は、特定時間の前記位相ノイズを識別するために前記移動時間を用いて基準干渉計からの基準信号の位相を遅延させることによって前記位相ノイズを低減し、
前記基準干渉計は、前記レーザビームに基づいて前記基準信号を生成するように構成され、
前記レーザソースの前記位相は、前記基準干渉計から受信される第2ビート信号から計算され、
前記レーザソースは、前記自由空間干渉計及び前記基準干渉計を同時に駆動し、
前記1つ以上のプロセッサは、前記位相除去回路によって出力される信号に応答して前記自律車両制御システムを制御する、
自律車両制御システム。
【請求項13】
前記位相除去回路は、デジタル遅延演算である遅延演算を通じて前記レーザソースの遅延位相を生成するように構成される、
請求項12に記載の自律車両制御システム。
【請求項14】
前記位相除去回路は、前記レーザソースの遅延していない位相から前記レーザソースの前記遅延位相を減算して前記レーザソースのデルタ位相を生成し、
前記レーザソースの前記デルタ位相は、前記レーザビームを表す信号内の位相ノイズを表し、
前記位相除去回路は、前記レーザビームを表す信号に前記デルタ位相の複素共役(Complex Conjugate)を乗じて位相ノイズを低減するように構成される、
請求項13に記載の自律車両制御システム。
【請求項15】
自律車両であって、
LIDARシステムと、1つ以上のプロセッサと、を含み、
前記LIDARシステムは、レーザソースと、
自由空間干渉計と、LIDAR測定回路と、基準測定回路と、位相除去回路と、を含み、
前記レーザソースは、レーザビームを生成するように構成され、
前記自由空間干渉計は、前記レーザビームを表す信号を生成するように構成され、
前記レーザビームを表す信号は、第1ビート信号であり、
前記LIDAR測定回路は、前記レーザビームを表す信号に基づいて前記レーザビームの移動時間を測定するように構成され、
前記移動時間は、前記レーザビームが前記自律車両の環境に送信され、前記自律車両の前記環境内のオブジェクトから反射され、前記LIDARシステムによって受信されるために移動した時間を示し、
前記基準測定回路は、前記レーザソースの位相を決定するように構成され、
前記位相除去回路は、(i)前記レーザソースの前記位相、及び(ii)前記レーザビームの前記移動時間に少なくとも部分的に基づいて、前記レーザビームを表す信号から位相ノイズを低減するように構成され、
前記位相除去回路は、特定時間の前記位相ノイズを識別するために前記移動時間を用いて基準干渉計からの基準信号の位相を遅延させることによって前記位相ノイズを低減し、
前記基準干渉計は、前記レーザビームに基づいて前記基準信号を生成するように構成され、
前記レーザソースの前記位相は、前記基準干渉計から受信される第2ビート信号から計算され、
前記レーザソースは、前記自由空間干渉計及び前記基準干渉計を同時に駆動し、
前記1つ以上のプロセッサは、前記位相除去回路によって出力される信号に応答して前記自律車両を制御する、
自律車両。
【請求項16】
前記位相除去回路は、前記移動時間によって前記レーザソースの前記位相を遅延させるように構成される遅延演算を通じて前記レーザソースの遅延位相を生成するように構成される、
請求項15に記載の自律車両。
【請求項17】
前記位相除去回路は、前記レーザソースの遅延していない位相から前記レーザソースの遅延した位相を減算して前記レーザソースのデルタ位相を生成し、
前記レーザソースの前記デルタ位相は、前記レーザビームを表す信号内の位相ノイズを表し、
前記位相除去回路は、前記レーザビームを表す信号に前記デルタ位相の複素共役(Complex Conjugate)を乗じて位相ノイズを低減するように構成される、
請求項16に記載の自律車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての相互参照
本出願は、2020年9月4日付で出願された米国仮出願第63/074,832号についての優先権を主張する2021年8月31日付で出願された米国特許出願第17/463,263号についての優先権を主張する。出願第17/463,263号および第63/074,832号は、参照として本明細書に含まれる。
【0002】
本開示は、一般に光検出および距離測定(LIDAR)に関する。
【背景技術】
【0003】
周波数変調連続波(FMCW、Frequency Modulated Continuous Wave)LIDARは、周波数変調されたコリメートされた光ビームをターゲットに向けてオブジェクトの距離と速度を直接測定する。ターゲットの距離および速度情報は、FMCW LIDAR信号から導出できる。LIDAR信号の精度を高める設計および技術が好ましい。
【0004】
自動車産業は、現在、特定の状況で車両を制御するための自律機能を開発している。SAE International標準J3016によると、レベル0(自律なし)からレベル5(あらゆる条件で運転者入力なしで操作できる車両)まで、6段階の自律性が存在する。自律機能を有する車両は、センサーを用いて車両が移動する環境を感知する。センサーからデータを収集して処理することによって、車両は周囲の環境を探索することができる。自律車両は、環境を感知するための1つ以上のFMCW LIDAR装置を含み得る。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、LIDAR測定ユニット、基準測定ユニット、および位相除去ユニットを含むLIDAR(Light Detection and Ranging)システムを含む。LIDAR測定ユニットは、レーザビームがレーザソースとターゲットとの間を移動する時間を推定するように構成される。基準測定ユニットは、レーザソースの位相を決定するように構成される。位相除去ユニットは、レーザソースの位相およびレーザビームが移動する時間に少なくとも部分的に基づいてレーザビームを表す信号から位相ノイズを除去するように構成される。
【0006】
一実施形態において、LIDARシステムは、自由空間干渉計および固定長干渉計をさらに含む。レーザビームを表す信号は、自由空間干渉計から受信された第1ビート信号である。レーザソースの位相は、固定長干渉計から受信された第2ビート信号から計算される。レーザソースは、自由空間干渉計と固定長干渉計にレーザビームを同時に供給する。
【0007】
一実施形態において、自由空間干渉計は、第1局部発振器信号をターゲット反射信号と結合して第1ビート信号を生成し、固定長干渉計は、第2局部発振器信号を固定長光遅延線によって遅延した固定長信号と結合して第2ビート信号を生成する。
【0008】
一実施形態において、位相除去ユニットは、LIDAR測定ユニットで推定されたレーザビームの移動時間だけレーザソースの位相を遅延させるように構成される遅延演算を通じてレーザソースの遅延位相を生成する。
【0009】
一実施形態において、位相除去ユニットは、レーザソースの位相からレーザソースの遅延した位相を減算してレーザソースのデルタ位相を生成し、レーザソースのデルタ位相は、レーザビームを表す信号内の位相ノイズを表す。
【0010】
一実施形態において、位相除去ユニットは、レーザビームを表す信号にデルタ位相の複素共役を乗じて位相ノイズを除去する。
【0011】
一実施形態において、LIDARシステムは、位相ノイズが除去されたレーザビームを表す信号であるデノイズされた信号(Denoised Signal)からレーザソースとターゲットとの間の距離を計算するように構成される距離計算ユニットをさらに含む。
【0012】
一実施形態において、距離計算ユニットは、デノイズされた信号の周波数を決定し、デノイズされた信号の周波数は、デノイズされた信号の周波数表現のピーク振幅に基づいて決定される。
【0013】
一実施形態において、LIDARシステムは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)LIDARシステムである。
【0014】
一実施形態において、基準測定ユニットは、固定長干渉計からの同相信号(In-phase Signal)および直交信号(Quadrature Signal)に少なくとも部分的に基づいてレーザソースの位相を決定する。
【0015】
一実施形態において、レーザソースの位相を決定するために、基準測定ユニットは、同相信号で割った直交信号にアークタンジェント演算(Arctangent Operation)を適用し、アークタンジェント演算からの出力に積分演算(Integration Operation)を適用するように構成される。
【0016】
一実施形態において、レーザビームの移動時間を推定するために、LIDAR測定ユニットは、自由空間干渉計からビート信号の周波数を決定するように構成され、ビート信号の周波数は、ビート信号の周波数表現の少なくとも1つのピーク振幅に基づいて決定される。
【0017】
本開示の実施形態は、LIDARシステムを含む自律車両制御システムを含む。LIDARシステムは、LIDAR測定ユニット、基準測定ユニット、および位相除去ユニットを含む。LIDAR測定ユニットは、レーザビームがレーザソースとターゲットとの間を移動する時間を推定するように構成される。基準測定ユニットは、レーザソースの位相を決定するように構成される。位相除去ユニットは、レーザソースの位相およびレーザビームが移動する時間に少なくとも部分的に基づいてレーザビームを表す信号から位相ノイズを除去するように構成される。自律車両制御システムは、位相除去ユニットから出力される信号に応答して自律車両制御システムを制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0018】
一実施形態において、LIDARシステムは、自由空間干渉計および固定長干渉計をさらに含む。レーザビームを表す信号は、自由空間干渉計から受信された第1ビート信号である。レーザソースの位相は、固定長干渉計から受信された第2ビート信号から計算される。レーザソースは、自由空間干渉計と固定長干渉計にレーザビームを同時に供給する。
【0019】
一実施形態において、位相除去ユニットは、LIDAR測定ユニットで推定されたレーザビームの移動時間だけレーザソースの位相を遅延させるように構成される遅延演算を通じてレーザソースの遅延位相を生成する。
【0020】
一実施形態において、位相除去ユニットは、レーザソースの位相からレーザソースの遅延した位相を減算してレーザソースのデルタ位相を生成し、レーザソースのデルタ位相は、レーザビームを表す信号内の位相ノイズを表す。位相除去ユニットは、レーザビームを表す信号にデルタ位相の複素共役を乗じて位相ノイズを除去するように構成される。
【0021】
本開示の実施形態は、LIDARシステムを含む自律車両用の自律車両システムを含む。LIDARシステムは、LIDAR測定ユニット、基準測定ユニット、および位相除去ユニットを含む。LIDAR測定ユニットは、レーザビームがレーザソースとターゲットとの間を移動する時間を推定するように構成される。基準測定ユニットは、レーザソースの位相を決定するように構成される。位相除去ユニットは、レーザソースの位相およびレーザビームが移動する時間に少なくとも部分的に基づいてレーザビームを表す信号から位相ノイズを除去するように構成される。自律車両は、位相除去ユニットによって出力された信号に応答して自律車両を制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0022】
一実施形態において、LIDARシステムは、自由空間干渉計および固定長干渉計をさらに含む。レーザビームを表す信号は、自由空間干渉計から受信された第1ビート信号である。レーザソースの位相は、固定長干渉計から受信された第2ビート信号から計算される。レーザソースは、自由空間干渉計と固定長干渉計に同時にレーザビームを供給する。
【0023】
一実施形態において、位相除去ユニットは、LIDAR測定ユニットで推定されたレーザビームの移動時間だけレーザソースの位相を遅延させるように構成される遅延演算を通じてレーザソースの遅延位相を生成するように構成される。
【0024】
一実施形態において、位相除去ユニットは、レーザソースの位相からレーザソースの遅延した位相を減算してレーザソースのデルタ位相を生成するように構成される。レーザソースのデルタ位相は、レーザビームを表す信号内の位相ノイズを表す。位相除去ユニットは、レーザビームを表す信号にデルタ位相の複素共役を乗じて位相ノイズを除去するように構成される。
【0025】
本開示の実施形態は、レーザ波形関数、パラメータセット、およびキャリブレーションユニットを含むLIDARシステムを含む。レーザ波形関数は、レーザ波形を定義する。パラメータセットは、少なくとも部分的にレーザ波形を定義する。キャリブレーションユニットは、パラメータセットの各パラメータに対する周波数応答の偏導関数を推定するように構成される。周波数応答は、レーザ波形によって駆動されるレーザ出力で測定される。キャリブレーションユニットは、レーザの周波数応答がレーザ波形機能によって定義された条件を満たすように、パラメータセットをアップデートするように構成される。
【0026】
一実施形態において、LIDARシステムは、固定長干渉計をさらに含む。キャリブレーションユニットは、固定長干渉計から同相信号および直交信号を受信するように構成される。キャリブレーションユニットは、同相信号および直交信号に基づいてレーザの周波数応答を決定するように構成される。
【0027】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザ波形関数およびパラメータセットに基づいてレーザ波形を繰り返し構成する。パラメータセットは、パラメータセットの1つ以上のアップデートされたバージョンに置き換えられるパラメータセットの初期バージョンを含む。
【0028】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、パラメータセットのアップデートされたバージョンを使用してレーザの周波数応答を繰り返し評価するように構成される。
【0029】
一実施形態において、レーザの周波数応答を繰り返し評価するために、キャリブレーションユニットは、レーザ波形をデジタル-アナログ変換器にロードし、レーザが安定するまで待機し、干渉計からの出力を測定し、干渉計からの出力から周波数応答を計算するように構成される。
【0030】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザ波形関数の勾配を推定するように構成される。
【0031】
一実施形態において、レーザ波形関数の勾配を推定するために、キャリブレーションユニットは、レーザ波形の摂動されたバージョン(Perturbed Version)を計算し、レーザ波形の摂動されたバージョンをデジタル-アナログ変換器にロードし、レーザからの出力を測定し、レーザ波形関数の摂動されたバージョンを評価するように構成される。
【0032】
一実施形態において、レーザ波形の摂動されたバージョンは、パラメータセットの第1パラメータとパラメータセットの第2パラメータとの間の差を含む。
【0033】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、パラメータセットの各パラメータに対する周波数応答の偏導関数に基づいてパラメータセットをアップデートするように構成される。
【0034】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザの歪み特性を補償するためにパラメータセットをアップデートするように構成される。
【0035】
本開示の実施形態は、LIDARシステムを含む自律車両制御システムを含む。LIDARシステムは、レーザ波形を定義するレーザ波形関数と、レーザ波形を少なくとも部分的に定義するパラメータセットと、パラメータセット内の各パラメータに対する周波数応答の偏導関数を推定するように構成されるキャリブレーションユニットと、を含む。周波数応答は、レーザ波形によって駆動されるレーザの出力から測定される。キャリブレーションユニットは、レーザの周波数応答がレーザ波形機能によって定義された条件を満たすように、パラメータセットをアップデートするように構成される。自律車両制御システムは、キャリブレーションユニットによって少なくとも部分的に定義されたレーザ波形に応答して自律車両制御システムを制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0036】
一実施形態において、自律車両制御システムは、固定長干渉計をさらに含む。キャリブレーションユニットは、固定長干渉計から同相信号および直交信号を受信するように構成される。キャリブレーションユニットは、同相信号および直交信号に基づいてレーザの周波数応答を決定するように構成される。
【0037】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザ波形関数およびパラメータセットに基づいてレーザ波形を繰り返し構成する。パラメータセットは、パラメータセットの1つ以上のアップデートされたバージョンに置き換えられるパラメータセットの初期バージョンを含む。
【0038】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、パラメータセットのアップデートされたバージョンを使用してレーザの周波数応答を繰り返し評価するように構成される。
【0039】
一実施形態において、レーザの周波数応答を繰り返し評価するために、キャリブレーションユニットは、レーザ波形をデジタル-アナログ変換器にロードし、レーザが安定するまで待機し、干渉計からの出力を測定し、干渉計からの出力から周波数応答を計算するように構成される。
【0040】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザ波形関数の勾配を推定するように構成される。
【0041】
一実施形態において、レーザ波形関数の勾配を推定するために、キャリブレーションユニットは、レーザ波形の摂動されたバージョン(Perturbed Version)を計算し、レーザ波形の摂動されたバージョンをデジタル-アナログ変換器にロードし、レーザからの出力を測定し、レーザ波形関数の摂動されたバージョンを評価するように構成される。
【0042】
一実施形態において、自律車両は、LIDARシステムを含む。LIDARシステムは、レーザ波形を定義するレーザ波形関数と、レーザ波形を少なくとも部分的に定義するパラメータセットと、パラメータセット内の各パラメータに対する周波数応答の偏導関数を推定するように構成されるキャリブレーションユニットと、を含む。周波数応答は、レーザ波形によって駆動されるレーザの出力から測定される。キャリブレーションユニットは、レーザの周波数応答がレーザ波形機能によって定義された条件を満たすように、パラメータセットをアップデートするように構成される。自律車両は、キャリブレーションユニットによって少なくとも部分的に定義されたレーザ波形に応答して自律車両を制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0043】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、パラメータセットのアップデートされたバージョンを使用してレーザの周波数応答を繰り返し評価するように構成される。
【0044】
一実施形態において、キャリブレーションユニットは、レーザ波形関数の勾配を推定するように構成される。
【0045】
本開示の実施形態は、基準測定ユニットおよびLIDAR測定ユニットを含むLIDARシステムを含む。基準測定ユニットは、レーザソースによって駆動される固定長干渉計から基準ビート信号の位相を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、レーザソースの下向き周波数チャープからの第2周波数スペクトルピークにペアリングされる、レーザソースの上向き周波数チャープからの第1周波数スペクトルピークに少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの距離を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、基準ビート信号の位相に少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの距離を決定するように構成される。
【0046】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、第1周波数スペクトルピークと第2周波数スペクトルピークとの間で順次ペアリングされるピークを用いて自由空間レーザ信号が複数のターゲットに移動する時間を推定するように構成される。第1ピークペアは、第1周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、第2周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、を含む。
【0047】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、複数のターゲットの距離を繰り返し決定するように構成される。複数のターゲットのそれぞれは、第1周波数スペクトルピークのうちの1つと第2周波数スペクトルピークのうちの1つのピークペアから決定された移動時間推定値に関連付けられる。
【0048】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、レーザソースの位相ノイズを識別するために、移動時間推定値と等しい持続時間だけ基準ビート信号の位相を遅延させるように構成される。
【0049】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、自由空間ビート信号の位相ノイズを除去し、デノイズされた自由空間ビート信号を生成するために、位相ノイズの複素共役を自由空間ビート信号と乗算するように構成される。
【0050】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、上向き周波数チャープ中に発生する位相ノイズを除去するように構成される。基準測定ユニットは、下向き周波数チャープ中に発生する位相ノイズを除去するように構成される。
【0051】
一実施形態において、第1周波数スペクトルピークは、自由空間干渉計からの第1ビート信号から生成される。第2周波数スペクトルピークは、自由空間干渉計の第2ビート信号から生成される。
【0052】
一実施形態において、自由空間干渉計は、上向き周波数チャープから第1ビート信号を生成するために、第1局部発振器信号を第1ターゲット反射信号と結合する。自由空間干渉計は、下向き周波数チャープ(Chirp)から第2ビート信号を生成するために、第2局部発振器信号を第2ターゲット反射信号と結合する。
【0053】
一実施形態において、LIDARシステムは、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムである。
【0054】
一実施形態において、基準測定ユニットは、固定長干渉計からの同相信号および直交信号に少なくとも部分的に基づいて基準ビート信号の位相を決定する。
【0055】
一実施形態において、基準ビート信号の位相を決定するために基準測定ユニットは、同相信号で割った直交信号にアークタンジェント演算を適用し、アークタンジェント演算からの出力に積分演算を適用するように構成される。
【0056】
一実施形態において、基準ビート信号は、第1基準ビート信号である。第1基準ビート信号の位相は、上向き周波数チャープから生成される。基準測定ユニットは、下向き周波数チャープから生成された第2基準ビート信号の位相を推定するように構成される。
【0057】
本開示の実施形態は、LIDARシステムを含む自律車両制御システムを含む。LIDARシステムは、LIDAR測定ユニットおよび基準測定ユニットを含む。基準測定ユニットは、レーザソースによって駆動される固定長干渉計から基準ビート信号の位相を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、レーザソースの下向き周波数チャープからの第2周波数スペクトルピークにペアリングされるレーザソースの上向き周波数チャープからの第1周波数スペクトルピークに少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの範囲を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、基準ビート信号の位相に少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの範囲を定めるように構成される。自律車両制御システムは、LIDAR測定ユニットおよび基準測定ユニットのうち、少なくとも1つによって出力される信号に応答して自律車両制御システムを制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0058】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、第1周波数スペクトルピークと第2周波数スペクトルピークとの間で順次ペアリングされるピークを用いて自由空間レーザ信号が複数のターゲットに移動する時間を推定するように構成される。第1ピークペアは、第1周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、第2周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、を含む。
【0059】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、複数のターゲットの距離を繰り返し決定するように構成される。複数のターゲットのそれぞれは、第1周波数スペクトルピークのうちの1つと第2周波数スペクトルピークのうちの1つのピークペアから決定された移動時間推定値に関連付けられる。
【0060】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、レーザソースの位相ノイズを識別するために、移動時間推定値と等しい持続時間だけ基準ビート信号の位相を遅延させるように構成される。LIDAR測定ユニットは、自由空間ビート信号の位相ノイズを除去し、デノイズされた自由空間ビート信号を生成するために、位相ノイズの複素共役を自由空間ビート信号と乗算するように構成される。
【0061】
本開示の実施形態は、LIDARシステムを含む自律車両を含む。LIDARシステムは、LIDAR測定ユニットおよび基準測定ユニットを含む。基準測定ユニットは、レーザソースによって駆動される固定長干渉計から基準ビート信号の位相を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、レーザソースの下向き周波数チャープからの第2周波数スペクトルピークにペアリングされる、レーザソースの上向き周波数チャープからの第1周波数スペクトルピークに少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの範囲を決定するように構成される。LIDAR測定ユニットは、基準ビート信号の位相に少なくとも部分的に基づいて複数のターゲットの範囲を定めるように構成される。自律車両は、LIDAR測定ユニットまたは基準測定ユニットのうち、少なくとも1つによって出力される信号に応答して自律車両を制御するための1つ以上のプロセッサを含む。
【0062】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、第1周波数スペクトルピークと第2周波数スペクトルピークとの間で順次ペアリングされるピークを用いて自由空間レーザ信号が複数のターゲットに移動する時間を推定するように構成される。第1ピーク対は、第1周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、第2周波数スペクトルピークのうちの第1のピークと、を含む。
【0063】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、複数のターゲットの距離を繰り返し決定するように構成される。複数のターゲットのそれぞれは、第1周波数スペクトルピークのうちの1つと第2周波数スペクトルピークのうちの1つのピークペアから決定された移動時間推定値に関連付けられる。
【0064】
一実施形態において、LIDAR測定ユニットは、レーザソースの位相ノイズを識別するために、移動時間推定値と等しい持続時間だけ基準ビート信号の位相を遅延させるように構成される。LIDAR測定ユニットは、自由空間ビート信号の位相ノイズを除去し、デノイズされた自由空間ビート信号を生成するために、位相ノイズの複素共役を自由空間ビート信号と乗算するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本開示の非限定的かつ非包括的な実施形態は、以下の図面を参照して説明され、ここで特に明示されない限り、同様の参照番号は、様々な図面全体において同様の部分を示す。
【0066】
【
図1】本開示の実施形態に係るLIDARシステムにおける位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを支援する光測定装置を示す。
【0067】
【
図2】本開示の実施形態に係る位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを統合できるLIDARシステムを示す。
【0068】
【
図3b】本開示の実施形態に係る例示的な位相ノイズ除去システムを示す。
【0069】
【
図4b】本開示の実施形態に係る前置歪み波形発生器の例を示す。
【0070】
【
図5b】本開示の実施形態に係るFMCW LIDARシステムのためのマルチターゲット識別システムの例を示す。
【0071】
【
図6b】本開示の様々な実施形態に係る位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを統合するLIDARシステムの動作サイクルの例を示す。
【0072】
【
図7a】本開示の実施形態に係る例示的なセンサーの配列を含む自律車両を示す。
【0073】
【
図7b】本開示の実施形態に係る例示的なセンサーの配列を含む自律車両の平面図を示す。
【0074】
【
図7c】本開示の実施形態に係るセンサー、ドライブトレイン、および制御システムを含む例示的な車両制御システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
LIDAR(Light Detection and Ranging)システムのための位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングの具現がここに説明されている。以下の説明においては、前記具現についての完全な理解を提供するためにいくつかの詳細が提示される。しかし、関連技術分野の技術者は、本明細書に説明されている技術が1つ以上の特定の詳細を除いて、または他の方法、要素または材料を用いて実行され得ることを認識するであろう。他の場合において、周知の構造、材料または作業は、特定の態様を不明瞭にすることを避けるために詳細に表示または説明されていない。
【0076】
本明細書全体にわたって「1つの実施形態」または「実施形態」についての言及は、実施形態に関して説明されている特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって、様々な位置での「1つの実施形態における」または「実施形態における」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。また、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態で任意の適切な方法で結合され得る。
【0077】
本明細書全体にわたって、いくつかの技術用語が使用される。これらの用語は、本明細書で具体的に定義されていないか、または使用される文脈が明確に別段の意味を持たない限り、その用語が由来した技術分野において一般的な意味を取るべきである。本開示の目的のために、「自律車両(Autonomous Vehicle)」という用語は、SAE国際規格J3016の自律性レベルで自律機能を有する車両を含む。
【0078】
本開示の態様において、可視光線は、約380nm~700nmの波長範囲を有すると定義されることができる。非可視光は、紫外線、赤外線などの可視光線領域外の波長を有する光として定義されることができる。約700nm~1mmの波長範囲を有する赤外線は、近赤外線を含む。本開示の態様において、近赤外線光は、約700nm~1.6μmの波長範囲を有すると定義されることができる。
【0079】
本開示の態様において、「透明」という用語は、90%より大きい光透過率を有すると定義されることができる。一部の実施形態において、「透明」という用語は、90%より大きい可視光線透過率を有する物質として定義されることができる。
【0080】
コヒーレントLIDARシステムは、変調されかつコリメートされた光ビームをオブジェクトに向けることによって、オブジェクトの距離および速度を直接測定する。オブジェクトから反射される光は、タップされたバージョンのビームと結合される。結果として得られるビートトーンの周波数は、ドップラーシフトが補正されると、LIDARシステムからオブジェクトまでの距離に比例し、2番目の測定が必要になる場合がある。同時に実行または実行されない可能性がある両方の測定は、距離と速度の両方の情報を提供する。本出願においては、コヒーレントLIDARの一例として周波数変調連続波(FMCW、Frequency Modulated Continuous Wave)LIDARについて説明する。しかし、本明細書に記載の具現および例は、あらゆる種類のコヒーレントLIDARに適用できる。
【0081】
一部の実施形態において、コヒーレントLIDARの一種であるFMCW LIDARを使用できる。特に、FMCW LIDARは、レーザソースから出る光ビームの周波数を変調する。FMCW LIDARは、向上した生産性(Manufacturability)と性能のために集積フォトニクス(Integrated Photonics)を活用できる。集積フォトニックシステムは、ミクロン規模の導波装置(Waveguiding Device)を用いて単一の光モードを操作することができる。
【0082】
集積FMCW LIDARシステムは、システムに光出力を提供する1つ以上のレーザソースに依存する。このようなレーザによって生成された光フィールドは、一般に決定論的および確率的位相ゆらぎ(Phase Fluctuation)を表し、これは、リターンされるFMCWビート信号を拡張することによって、システム性能を低下させることができる。
【0083】
FMCW LIDARシステムは、ユニットに戻る前にシーン内の1つ以上のオブジェクトから反射することができる光を放出する。このような多重リターンは、複数のピークを有するスペクトルのビート信号を生成する。これらのそれぞれのリターン距離と速度を決定するために、ビート信号についての2回の測定が行われ得る。複数の距離と速度を正確に決定するために、2つのスペクトルのピークが正確にペアリングされる。
【0084】
FMCW LIDARシステムは、優れた性能を達成するために線形周波数チャープを使用する。この線形周波数チャープは、レーザ駆動波形でレーザを駆動することによって達成することができる。レーザの歪み特性を補償するために、レーザ駆動波形は、送信レーザの特性を補償するように定義されることができる。システムが老化するにつれて、周波数チャープの線形性が低下する可能性がある。本開示のいくつかの実施形態は、システムの劣化または変更を支援するためにレーザ駆動波形の現場再較正(In Situ Recalibration)を提供する。
【0085】
集積FMCW LIDARシステムにおいて、レーザの周波数偏位(Frequency Excursion)を直接測定するためのシステムが説明される。測定された周波数偏位は、レーザによって生成された位相光信号を決定するために統合できる。
【0086】
システムは、FMCW LIDARシステムを少なくとも部分的に規定する主自由空間干渉計(Main Free-Space Interferometer)に並列に接続または結合される短い(固定長)集積干渉計を含む。単一のレーザソースが両方の干渉計に供給される。
【0087】
主な自由空間干渉計からの目標距離の初期推定値を用いてビート信号の不要な光学位相ゆらぎ(位相ノイズ)を推定し、ビート信号から減算することができ、これによって主な自由空間干渉計の測定能力を向上し得る。
【0088】
推定されたビート信号位相は、複数のリターン(複数のターゲット)が存在するときにスペクトルピークを正確にペアリングするためにさらに使用できる。
【0089】
測定された周波数偏位は、レーザ周波数チャープの線形性を向上するために前置歪み波形の現場生成および較正に等しく使用できる。
【0090】
光学位相ゆらぎ(「位相ノイズ」)を識別および除去し、複数のターゲットを識別し、前置歪み波形を生成するための本明細書に記載のシステムおよび方法は、(集合的または個別的に)車両の自律動作を支援するために使用できる。これらおよび他の実施形態は、
図1~
図7cに関連してより詳細に説明される。
【0091】
図1は、本開示の実施形態に係るFMCW LIDARシステムにおける位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを支援する光位相測定装置100を示す。光位相測定装置100は、レーザソース101、スプリッタ102、自由空間干渉計103、および固定長干渉計104を含み、LIDARシステムにおける位相推定、位相ノイズ除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを支援する。
【0092】
レーザソース101によって放出された光は、レーザソース101の光出力を2つの別々の光チャネルに分割するスプリッタ102に入る。スプリッタ102によって達成されるスプリット比率は、同じであるか(50:50)、またはいくつかの異なる比率(例えば、80:20)であり得る。実際、光パワーの大部分は、分割されて自由空間干渉計103にルーティングされるが、光パワーの残りの小さな部分は、固定長干渉計104にルーティングされる。
【0093】
固定長干渉計104は、レーザソース101の瞬間レーザ周波数を測定または概算するように構成される。固定長干渉計104は、スプリッタ105、固定長光遅延線106、光ハイブリッド107、平衡(Balanced)光ダイオードペア108、および平衡光ダイオードペア109を含み得る。固定長干渉計104は、例えば、10cm~30cmの範囲で固定長光遅延線106に短い光遅延を含み得る。したがって、固定長干渉計104は、短い固定長干渉計または基準干渉計と呼ばれることができる。
【0094】
固定長干渉計104に入射する光は、同一または同一でない分割比を有し得るスプリッタ105を通過する。スプリッタ105の上部出力は、固定長光遅延線106に接続される。固定長光遅延線106は、スプリッタ105の下部出力を出る光と比較して短い時間だけ光信号を遅延させる。これらの2つの光路(すなわち、上部光路および下部光路)は、2×4光ハイブリッドで具現できる光ハイブリッド107に接続される。光ハイブリッド107は、下部信号を固定長光遅延線106を介して遅延する上部信号と混合する。レーザソース101は、時間ベースの線形変化周波数(すなわち、チャープ)を出力するように駆動できるため、光ハイブリッド107に到達する上部信号の周波数は、光ハイブリッド107に到達する下部信号の周波数とわずかに異なる(例えば、速いか、または遅い)。異なる周波数の信号が混合または結合されると、2つの周波数の差に等しいビート周波数を有するビートトーンまたはビート信号が生成される。
【0095】
光ハイブリッド107からのビート信号を測定し、平衡光ダイオードペア108および平衡光ダイオードペア109を用いて電気信号に変換する。平衡光ダイオードペア108は、同相信号Irefに対応する電気信号を生成し、平衡光ダイオードペア109は、直交信号Qrefに対応する電気信号を生成する。固定長光遅延線106の十分に短い(例えば、20cm)具現のために、同相信号Irefおよび直交信号Qref測定の位相は、レーザソース101の瞬間周波数に比例する。レーザソース101の瞬間周波数は、レーザソース101の瞬間位相を計算するために統合できる。レーザソース101の瞬間位相は、決定論的および確率的位相ゆらぎによって定義されることができるレーザソース101の位相ノイズを分離するために使用できる。
【0096】
自由空間干渉計103は、レーザソース101とターゲットとの間の距離を測定または推定するように構成される。自由空間干渉計103は、スプリッタ110、可変距離光遅延線111、光ハイブリッド112、平衡光ダイオードペア113、および平衡光ダイオードペア114を含み得る。
【0097】
自由空間干渉計103に入る光は、スプリッタ110に入る。スプリッタ110は、「局部発振器」フィールド(すなわち、図示された下部経路、「下部信号」および/または「局部発振器信号」)を「信号」フィールド(すなわち、図示された上部経路、「上部信号」および/または「遅延した信号」)から分離する。上部信号電力は、自由空間に結合される。この光は、ターゲットに当たり、LIDARユニット(例えば、自由空間干渉計103)に向かって再び反射される前に異なる距離または可変距離にわたって伝搬する。この光は、自由空間干渉計103によって受信され、可変距離光遅延線111を効果的に形成する。遅延した信号と局部発振器信号は、光ハイブリッド112によって一緒に混合される。光ハイブリッド112の出力は、平衡光ダイオードを用いて電気信号に変換される。結果として得られる電気信号は、それぞれFMCW LIDARビート信号のコンポーネントである同相信号IFSおよび直交信号QFSに対応する。測定されたビート信号の位相ゆらぎは、固定長干渉計104によって測定されたビート信号の位相ゆらぎと時間相関があるが、これは、干渉計がレーザソース101によって同時に供給されるためである。
【0098】
図2は、FMCW LIDARシステム200の例を示し、これは本開示の実施形態によって位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングを統合するように構成され得る。FMCW LIDARシステム200は、LIDAR処理エンジン201およびFPA(Focal Plane Array)システム202を含む。他の実施形態において、他の形のビームステアリングを使用することができる。
【0099】
LIDAR処理エンジン201は、レーザ制御器205のための変調信号を生成するデジタル-アナログ変換器(DAC)204を駆動するように構成されるマイクロコンピュータ203を含む。レーザ制御器205は、Qチャネルレーザアレイ206の周波数を変調する。レーザアレイ206によって放出された光出力は、分割され、スイッチング可能なコヒーレントピクセルアレイ208およびレーザ位相基準干渉計207(
図1の固定長干渉計104を含み得る)にルーティングされる。スイッチング可能なコヒーレントピクセルアレイ208に入る光は、FPAドライバ209によって制御される。スイッチング可能なコヒーレントピクセルアレイ208の異なる位置から放出された光は、レンズ210によって異なる角度でコリメートされ、自由空間211に放出される。
【0100】
自由空間に放出された光211は、ターゲットから反射され、レンズ210を通って再び伝搬し、スイッチング可能なコヒーレントピクセルアレイ208に再び結合される。受信された光は、光ハイブリッド107および/または光ハイブリッド112(
図1に示す)を統合できるNチャネル受信機212を用いて測定される。結果として得られる電流は、1つ以上のMチャネルアナログ-デジタル変換器(ADC)213を用いてデジタル化され、これらの信号は、マイクロコンピュータ203によって処理される。
【0101】
自由空間測定と並列に、レーザ位相基準干渉計207を通過する光フィールドは、Pチャネル受信機214を用いて測定され、これはRチャネルアナログ-デジタル変換器(ADC)215を用いてデジタル信号に変換される電流を生成する。この結果、デジタル信号は、レーザの位相ゆらぎ(位相ノイズ)を推定するためにマイクロコンピュータ203によって処理される。推定または決定された位相ノイズは、その後、自由空間距離測定信号から位相ノイズを除去する(「デノイズ(Denoise)」)ために使用できる。
【0102】
図3aおよび
図3bは、本開示の実施形態に係る光位相測定装置100(
図1に示す)およびFMCW LIDARシステム200(
図2に示す)がFMCW LIDAR距離および速度測定を支援するために不要な位相ゆらぎ(「位相ノイズ」)を能動的に除去するために使用できる例示的な位相ノイズ除去システムを示す。
【0103】
図3aは、本開示の実施形態に係る位相ノイズ除去システム300を示す。位相ノイズ除去システム300は、LIDAR測定ユニット301、基準測定ユニット302、位相除去ユニット303、および距離計算ユニット304を含み得る。LIDAR測定ユニット301は、光が光源とターゲットとの間を移動する時間(すなわち、移動時間)を推定してFMCW距離測定を行うように構成され得る。本出願においては、光が光源(例えば、レーザソース)とターゲット(例えば、LIDARシステムが配置されている環境のオブジェクト)との間を移動する時間を飛行時間(Time-of-Flight)として定義する。同時に、基準測定ユニット302は、基準または固定長干渉計を用いて光(例えば、レーザ光)の位相推定を決定するように構成され得る。LIDAR測定ユニット301からの飛行時間推定値τ
estおよび基準測定ユニット302からの光位相φ
ex(t)は、位相除去ユニット303に提供される。位相除去ユニット303は、飛行時間推定値τ
estおよび光位相φ
ex(t)を用いて光を表す信号(例えば、同相信号I
FSおよび/または直交信号Q
FS)から位相ノイズを推定して除去する。位相除去ユニット303は、距離を目標距離と推定するために距離計算ユニット304によって用いられるデノイズされた信号V(t)
dnを出力する。距離計算ユニット304は、また、例えば、ドップラーシフト計算または測定を行うことによって、ターゲットの速度を計算するように構成され得る。
【0104】
図3bは、本開示の実施形態に係る位相ノイズ除去システム340の例を示す。位相ノイズ除去システム340は、位相ノイズ除去システム300の例示的な具現である。位相ノイズ除去システム340内の1つ以上のコンポーネントまたは動作は、光子集積回路および/またはFMCW LIDARシステムで具現できる。
【0105】
LIDAR測定ユニット301は、信号305(例えば、電圧信号)を受信し、飛行時間推定値τ
estを生成するように構成される。信号305は、自由空間で少なくとも1つのターゲットを往復した光を表す信号である。信号305は、局部発振器信号と自由空間光信号の組み合わせであるビート信号であり得る。信号305は、同相信号I
FSおよび/または直交信号Q
FSを含み得、自由空間干渉計103(
図1に示す)から受信され得る。
【0106】
LIDAR測定ユニット301は、周波数変換ブロック306、フィルタブロック307、およびピーク探索ブロック308を含む。周波数変換ブロック306は、信号305を信号305の周波数表現に変換する。LIDAR測定ユニット301は、フーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換(FFT))を用いてこの作業を行う。周波数変換ブロック306は、信号305をデジタル化することができ、信号305の電力スペクトル密度(PSD)を計算するためにフーリエ変換を用い得る。フィルタブロック307は、信号対雑音比を向上するために周波数変換ブロック306の出力をフィルタリングする。ピーク探索ブロック308は、信号305のフィルタリングされた周波数スペクトルで最も高いピークを識別することができる。システムパラメータに基づいてこのピーク位置は、光信号の飛行時間推定値τesrに変換することができる。
【0107】
LIDAR測定ユニット301の動作と同時に、基準測定ユニット302は、光の位相φex(t)を決定するように構成される。基準測定ユニット302は、除算ブロック311、アークタンジェントブロック312、位相アンラップ(Unwrap)ブロック313、および積分ブロック314を含み得る。基準測定ユニット302は、固定長干渉計からの入力として同相信号310および直交信号309を受信する。一実施形態において、同相信号310および直交信号309は、固定長干渉計104からの同相信号Irefおよび直交信号Qrefである。除算ブロック311は、直交信号309を同相信号310で除算することを含む。アークタンジェントブロック312は、同相信号310および/または直交信号309のうち、少なくとも1つによって表されるビート信号の位相を推定するために除算ブロック311の出力に対するアークタンジェントを行う。位相アンラップブロック313は、アークタンジェントブロック312の出力に位相アンラッピング(Phase Unwrapping)を適用する。位相アンラップブロック313の出力は、時間に対するシステムレーザの位相ゆらぎを推定するために積分ブロック314で(時間に対して)積分される。
【0108】
位相除去ユニット303は、光の位相φexおよび飛行時間τestに少なくとも部分的に基づいて信号305から位相ノイズを除去するように構成される。位相除去ユニット303は、遅延ブロック315、減算ブロック316、指数ブロック317、および乗算ブロック318を含む。遅延ブロック315は、光の位相φexの時間遅延した推定値である遅延した位相φex(t-τest)を生成する。遅延は、デジタル遅延であり得、遅延の持続時間は、飛行時間τestの持続時間である。飛行時間τestの持続時間だけ光の位相φex(t)を遅延させることによって、位相除去ユニット303は、信号305を定義する光伝送に関連する光の位相φex(t)の部分を識別する。減算ブロック316は、遅延した位相φex(t-τest)で光の位相φex(t)を減算し、レーザソースが信号305を送信した時間における位相ゆらぎまたは位相ノイズを定義するデルタ位相Δφex(τest)を分離する。指数ブロック317は、デルタ位相Δφex(τest)から共役フェーザ(Conjugate Phasor)を構成する。乗算ブロック318は、共役フェーザを信号305と乗じてデノイズされた信号V(t)dnを生成する。デノイズされた信号V(t)dnは、不要な位相ゆらぎが除去された信号またはノイズが除去された信号305である。デノイズされた信号V(t)dnは、距離計算ユニット304に伝達できる結果として生じる「クリーンな」ビート信号である。
【0109】
距離計算ユニット304は、デノイズされた信号V(t)dnを用いて光源とターゲットとの間の距離を決定するように構成される。距離計算ユニット304は、周波数変換ブロック319、フィルタブロック320、およびピーク探索ブロック321を含む。周波数変換ブロック319は、デノイズされた信号V(t)dnをデノイズされた信号V(t)dnの周波数表現に変換する。距離計算ユニット304は、フーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換(FFT))を用いてこの演算を行い得る。周波数変換ブロック319は、デノイズされた信号V(t)dnをデジタル化することができ、デノイズされた信号V(t)dnのパワースペクトル密度(PSD)を計算するためにフーリエ変換を用い得る。フィルタブロック320は、信号対雑音比を向上するために周波数変換ブロック319の出力をフィルタリングする。ピーク探索ブロック321は、ノイズ除去された信号V(t)dnのフィルタリングされた周波数スペクトルで1つ以上のピークを識別できる。このピーク情報は、ターゲットの位置と速度を推定するために使用される。ブロック322で位相ノイズ除去システム340は、動作を終了する。
【0110】
図4aおよび
図4bは、本開示の実施形態に係る前置歪み波形発生器の例を示す。前置歪み波形発生器は、光位相測定装置100(
図1に示す)およびFMCW LIDARシステム200(
図2に示す)を用いてLIDARシステムレーザを駆動するための前置歪み波形を生成するか、または、既存の前置歪みを改善(「キャリブレーション」)し得る。前置歪み波形生成は、レーザの歪み特性によってLIDARシステムにおいて有益であり得る。例えば、レーザ周波数を上および/または下に線形的に変更するためにLIDARシステムは、三角波形などの波形でレーザ周波数を駆動するように構成され得る。三角波形は、値が線形的に増加し、値が線形的に減少する。しかし、レーザの歪み特性により、レーザの周波数応答が線形的に増加する周波数と線形的に減少する周波数を有しない出力を生成し得る。FMCW LIDARシステムは、周波数変調(例えば、チャーピング)に依存するため、このようなシステムは、特定のLIDARシステムに統合されたレーザの歪み特性を補償する前置歪み波形の利点を得ることができる。前置歪み波形の即時(In-Place)または現場(In Situ)調整、改善、または較正は、各レーザのマイナーな固有動作特性を補償するという利点を提供する。
【0111】
図4aは、本開示の実施形態に係る前置歪み波形発生器400を示す。前置歪み波形発生器400は、関数定義ブロック401、パラメータセットブロック402、およびキャリブレーションユニット403を含む。LIDARシステムの動作の前に、関数定義ブロック401は、メリット関数F(f)を定義する。メリット関数F(f)は、レーザを駆動するために使用されるチャープレーザ周波数の線形性(または形状)を定義したり、または定量化する。同様に、LIDARシステムの動作の前に、パラメータセットブロック402は、レーザ駆動波形の形状/動作を定義する数字セットを含むパラメータpを定義する。メリット関数F(f)は、明示的にLIDARレーザをチャープするために使用される時間依存の周波数の関数であり得、明示的または暗黙的にパラメータpに依存し得る。
【0112】
キャリブレーションユニット403は、メリット関数F(f)を最小化するパラメータpを見つけるためにLIDARシステムに適用される。キャリブレーションユニット403は、レーザの歪み特性を補償するために前置歪み波形を生成するように構成される。キャリブレーションユニット403は、パラメータpのセットのパラメータpのそれぞれについて、メリット関数F(f)に偏導関数(Partial Derivative)を適用することによって前置歪み波形を生成する。レーザの歪み特性を繰り返し識別することによって、キャリブレーションユニット403は、将来の使用においてレーザ駆動波形を定義するために格納されるパラメータpのセットを再定義する。
【0113】
前置歪み波形発生器400は、ブロック419で動作を終了する。
【0114】
図4bは、本開示の実施形態に係る前置歪み波形発生器430の例を示す。前置歪み波形発生器430は、前置歪み波形発生器400(
図4aに示す)の例示的な具現である。
【0115】
キャリブレーションユニット403は、前置歪み波形生成を支援するために複数の動作または処理ブロックを含む。キャリブレーションユニット403は、波形構成ブロック404、関数評価ブロック405、勾配推定ブロック411、および更新ブロック417を含む。波形構成ブロック404において、キャリブレーションユニット403は、関数定義ブロック401およびパラメータセットブロック402で定義されたメリット関数F(f)およびパラメータpから初期駆動波形V(t、p)を構成する。
【0116】
次に、メリット関数F(f)の値は、関数評価ブロック405で評価される。関数評価ブロック405は、いくつかの下位動作を含み得る。ブロック406で駆動波形V(t、p)の現在のバージョンがデジタル-アナログ変換器(DAC)406にロードされる。ブロック407で駆動波形V(t、p)によって駆動されるレーザが定常状態動作に安定することが可能になる。ブロック408において、同相信号I
refおよび直交信号Q
refは、短い基準干渉計(例えば、
図1に示す固定長干渉計104)の出力で測定される。ブロック409において、同相信号I
refおよび直交信号Q
refは、例えば、
図3bの基準測定ユニット302について説明したように、時間依存のレーザ周波数fの推定値を計算するために使用される。ブロック409において、同相信号I
refおよび直交信号Q
refは、直交信号Q
refを同相信号I
refで除算し、除算結果のアークタンジェントを行い、アークタンジェント結果をアンラップし、固定長干渉計の相対遅延τで値を割ることによって、時間依存のレーザ周波数fの推定値を計算するのに使用される。ブロック410において、メリット関数F(f)の現在値は、ブロック409からの時間依存の周波数を用いて計算される。
【0117】
メリット関数F(f)の現在値が関数評価ブロック405で評価された後、勾配推定ブロック411は、メリット関数F(f)の勾配(Gradient)を推定するように構成される。勾配推定ブロック411は、それぞれのパラメータpに対するメリット関数F(f)の偏導関数を計算することによって勾配を決定するように構成される。ブロック412は、パラメータpのj番目の要素を摂動させること、駆動波形の摂動されたバージョン(V(pi+Δpj))を計算すること、駆動波形の摂動されたバージョン(V(pi+Δpj))をDACにアップロードすることを含む。ブロック413は、例えば、関数評価ブロック405の下位演算を用いてメリット関数の対応する(摂動された)値F(pi+Δpj)を評価することを含む。ブロック414でメリット関数F(pi+Δpj)の偏導関数((∂F/∂pj))がパラメータpのj番目の要素に対して推定される。偏導関数(∂F/∂pj)は、有限差分を用いて近似化される。ブロック415で摂動のための追加のパラメータpが存在するかどうかが決定される。パラメータpに追加の要素が存在する場合、ブロック415は、ブロック416に進行し、ここでjの値は増加し、勾配推定ブロック411は繰り返される。パラメータpの各要素が評価された場合、ブロック415は、ブロック417に進行する。
【0118】
更新ブロック417において、キャリブレーションユニット403は、(関数評価ブロック405からの)メリット関数F(f)評価および(勾配推定ブロック411からの)メリット関数F(f)の勾配推定に基づいてパラメータpをアップデートする。ブロック418において、キャリブレーションユニット403は、収束チェックを行う。収束チェックは、パラメータpで駆動するときに、レーザの周波数応答が定義されたメリット関数F(f)とどれだけ近接して一致するかを評価するものである。メリット関数F(f)が収束されると、パラメータpの最終バージョンおよびこれに応じた最適化駆動信号V(t、p)が選択され、キャリブレーションユニット403は、ブロック419に進行して終了する。
【0119】
図5aおよび5bは、本開示の実施形態に係るFMCW LIDARシステムにおいて複数のターゲットを識別するために基準位相測定を使用するマルチターゲット識別システムの例を示す。マルチターゲット識別システムは、FMCW LIDARビート信号の複数の周波数スペクトルリターンピークペアに位相測定を適用する。
【0120】
図5aは、FMCW LIDARシステムにおいて、複数のターゲットを識別するために基準位相測定を使用するためのマルチターゲット識別システム500の例を示す。マルチターゲット識別システム500は、LIDAR測定ユニット551および基準測定ユニット552を含む。一実施形態によると、LIDAR測定ユニット551は、LIDAR測定ユニット301(
図3aおよび
図3bに示す)の一部の特徴を含み、基準測定ユニット552は、基準測定ユニット302(
図3aおよび3bに示す)の一部の特徴を含む。
【0121】
LIDAR測定ユニット551は、複数のターゲットの距離を定めるように構成される。LIDAR測定ユニット551は、レーザソースの上向き周波数チャープ(Chirp)から生成された周波数スペクトルピークの第1セットを識別することによって複数のターゲットの距離を定めるように構成される。LIDAR測定ユニット551は、レーザソースの下向き周波数チャープから生成された周波数スペクトルピークの第2セットを識別することによって複数のターゲットの距離を定めるように構成される。LIDAR測定ユニット551は、周波数スペクトルピークの第1セットからのピークを周波数スペクトルピークの第2セットからのピークとペアリングすることによって、複数のターゲットそれぞれの存在を確認し、複数のターゲットそれぞれについての飛行時間を推定する。LIDAR測定ユニット551は、周波数スペクトルピークが導出される自由空間ビート信号をデノイズするために基準ビート信号の位相φex(t)を用いるように構成される。
【0122】
基準測定ユニット552は、固定長干渉計を用いてレーザソースの位相測定を提供するように構成される。基準測定ユニット552は、固定長干渉計からの基準ビート信号の位相φex(t)を決定し、LIDAR測定ユニット551が位相ノイズを除去できるように基準ビート信号の位相φex(t)をLIDAR測定ユニット551に提供するように構成される。基準測定ユニット552は、上向き周波数チャープによって生成された第1基準ビート信号から第1位相を計算することができる。基準測定ユニット552は、下向き周波数チャープによって生成された第2基準ビート信号から第2位相を計算することができる。基準測定ユニット552は、第1基準ビートからの第1位相をLIDAR測定ユニット551に提供し、上向き周波数チャープの自由空間ビート信号からの位相ノイズ除去を可能にするように構成される。基準測定ユニット552は、第2基準ビートからの第2位相を用いて下向き周波数チャープ(Chirp)の自由空間ビート信号からの位相ノイズを除去するように構成される。
【0123】
マルチターゲット識別システム500の動作は、ブロック553で終了する。
【0124】
図5bは、本開示の実施形態に係るFMCW LIDARシステムにおいて複数のターゲットを識別するために基準位相測定を使用するマルチターゲット識別システム570の例を示す。マルチターゲット識別システム570は、マルチターゲット識別システム500の例示的な具現である。
【0125】
最初に、ビート信号は、レーザソースから生成される。ブロック501で上向き周波数チャープ(上向きランプ)を用いて自由空間干渉計から自由空間ビート信号が生成される。ブロック502で下向き周波数チャープ(下向きランプ)を用いて自由空間干渉計から自由空間ビート信号が生成される。両方の自由空間ビート信号は、FMCW LIDARシステムを用いて収集される。このようなビート信号は、自由空間を通る距離および速度測定に対応する。ブロック503でアップランプビート信号のパワースペクトル密度(PSD)が計算され、最も高いNピークの位置(周波数)は、アップランプに対する周波数スペクトルに位置する。ブロック504でダウンランプビート信号のパワースペクトル密度(PSD)が計算され、最も高いNピークの位置(周波数)は、ダウンランプに対する周波数スペクトルに位置する。
【0126】
自由空間干渉計測定と並列に、ブロック505および506で基準ビート信号が同じレーザソースから生成される。ブロック505で上向き周波数チャープ(上向きランプ)を用いて基準(固定長)干渉計から基準ビート信号が生成される。ブロック506で下向き周波数チャープ(下向きランプ)を用いて基準干渉計から基準ビート信号が生成される。ブロック507でアップランプビート信号の位相φex(t)が計算される。ブロック508でダウンランプビート信号の位相φex(t)が計算される。
【0127】
アップランプPSDおよびダウンランプPSDにおけるN個の周波数スペクトルピークは、自由空間におけるN個の異なるリターン経路に対応する。アップランプPSDの各ピークをダウンランプPSDの各ピークと正しくペアリングすれば、このような経路の長さと該当経路の長が変更される速度(すなわち、対象の相対速度)を計算することができる。ブロック509において、アップランプPSDの第1ピークは、ダウンランプPSDの第1ピークとペアリングされる。このペアリングは、ターゲット距離、速度、および飛行時間τestについての推定値を生成する。ブロック510で基準干渉計から得られたレーザ上向きランプの時間依存位相φex(t)が遅延される。位相φex(t)に適用される遅延は、遅延した位相φex(t-τest)を生成する推定飛行時間τestの持続時間である。ブロック511で遅延した位相φex(t-τest)は、デルタ位相Δφ(t)を生成するために、レーザアップランプの非遅延時間依存位相φex(t)から減算する。デルタ位相Δφ(t)は、ブロック501で生成された自由空間ビート信号についての位相ノイズおよび非線形性の寄与の推定値である。ブロック512において、共役フェーザは、デルタ位相Δφ(t)から構成される。ブロック513において、共役フェーザは、位相ノイズを除去し、デノイズされたビート信号を生成するために自由空間アップランプビート信号と乗算される。ブロック514でデノイズされたビート信号のPSDが計算され、結果のピークが位置する。
【0128】
ブロック509で識別されたそれぞれのピークセットが評価される。ブロック515でより多くの(評価されていない)ピークペアがアップおよびダウンランプPSDに残っているかどうかを決定するためにピークペアが検査される。ピークペアが残っている場合、残りの各ペアについてブロック509~515が繰り返される。すべてのペアがテストされた場合、ブロック515は、ブロック516に進行する。ブロック516でどのペアが正確であったかを決定するために、各ペアについて計算されたPSDのピーク値に対する比較が行われる(正しいペアは、PSDピーク値がアップランプで最大化される)。ブロック517でペアリングが正確であるかどうかを確認した後にピークペアが選択される。
【0129】
ブロック517で正確なピークペアが選択された後、マルチターゲット識別システム570は、ブロック553に進行して動作を終了することができる。代替的に、ブロック517の後に、マルチターゲット識別システム570は、ダウンランプ信号の信号対雑音比(SNR)を向上するために位相ノイズの除去を繰り返すことができる。ピークペアを用いて測定されたすべての経路長の距離が推定される。このような経路長に基づくか、または経路長についての推定された飛行時間τestに基づいて、ブロック518で遅延した位相φex(t-τest)は、ダウンランプについて推定された時間依存位相φex(t)を遅延することによって生成される。ブロック519で遅延した位相φex(t-τest)は、デルタ位相Δφ(t)を生成するために、レーザダウンランプの非遅延時間依存位相φex(t)から減算する。デルタ位相Δφ(t)は、ブロック502でダウンランプによって生成された自由空間ビート信号についての位相ノイズおよび非線形性の寄与の推定値である。ブロック520において、共役フェーザは、デルタ位相Δφ(t)から構成される。ブロック521において、共役フェーザは、位相ノイズを除去し、デノイズされたビート信号を生成するために自由空間下向きランプビート信号と乗算される。ブロック522でデノイズされたビート信号のPSDが計算され、結果のピークが位置する。ブロック523でピークペアが残っているかどうかを決定するために検査が行われる。そうであれば、ブロック518~523が繰り返される。すべてのピークが処理された場合、マルチターゲットの最終距離および速度が計算されることができ、ブロック523は、ブロック553に進行してマルチターゲット識別システム570の動作を終了する。
【0130】
図6aおよび
図6bは、本開示の様々な実施形態によって位相推定、能動位相除去、前置歪み波形生成、およびピークペアリングフィット(Peak Pairing Fit)を統合するFMCW LIDARシステムの動作サイクル600の例を示す。
【0131】
ブロック601においては、システムおよびレーザに電力が供給される。ブロック602において、レーザ温度は、温度センサー603によって生成されたデータを用いて安定化するように許容される。レーザ温度が安定化したら、ブロック605において、システムは、レーザ周波数を変調するために既存のレーザ駆動波形604をロードする。システムの摩耗、環境状態の変化などによってロードされたレーザ駆動波形604は、最適ではないことがある。ブロック606でレーザの周波数特性(例えば、チャープ率およびチャープ非線形性)が仕様を十分に満たすかどうかを決定するためにチェックが行われ得る。レーザ特性が仕様内にある場合、ブロック606は、ブロック609(
図6bに示す)に進行する。レーザ特性が仕様から逸脱すると、ブロック606は、ブロック607に進行する。ブロック607でレーザ駆動波形604の現場(In Situ)改選が行われる。現場の改選は、前置歪み波形発生器400および/または前置歪み波形発生器430(
図4aおよび
図4bに示す)によって行われ得る。ブロック607は、ブロック608およびブロック609の両方に進行する(
図6bに示す)。ブロック608でアップデートされた波形は、次の電源サイクルのために格納される。
【0132】
図6bにおいては、レーザ駆動波形604の既存のバージョンが仕様を満たしているか、または代替的に現場改選が完了すると、ブロック609は、フレームデータをキャプチャするプロセスを開始する。ブロック609は、複数の下位動作を含み得る。レーザ周波数が変調されると、ブロック610においてLIDARシステムは、上向きランプ(周波数チャープ増加)が開始されたことを示すトリガを待つ。これに応答して、ブロック611で自由空間FMCW LIDAR測定の性能がトリガされ、同時にブロック612で時間依存レーザ位相ゆらぎ(ノイズおよび非線形性)の測定がトリガされる。ブロック611および612に関連する動作は、光位相測定装置100(
図1に示す)に対応し得る。ブロック611およびブロック612の測定結果は、ブロック613で結合される。ブロック613の動作は、位相ノイズ除去システム300(
図3aに示す)、位相ノイズ除去システム340(
図3bに示す)、マルチターゲット識別システム500(
図5aに示す)、および/またはマルチターゲット識別システム570(
図5bに示す)の動作を示すことができる。ブロック613の動作は、自由空間LIDAR測定の忠実度を向上させることができる。ブロック614でビート信号スペクトルが計算される。ブロック610~614は、ダウンランプに対して繰り返される。ブロック615でフィルタリングされた結果PSDに基づいてシーン内のポイントの距離および速度が計算されることができる。
【0133】
典型的に、LIDARフレームは、1つ以上のポイントを含む。ブロック616において、LIDARシステムは、より多くのポイントがフレームに残っているかどうかを決定する。より多くのポイントがフレームに残っている場合、ブロック616は、FMCW LIDARシステムによって放出されたビームの位置が修正されるブロック617に進行し、ブロック610~615のアップ/ダウンランプキャプチャプロセスが繰り返される。フレームのすべてのポイントがキャプチャされると、ブロック616は、ポイントクラウドが組み立てられるブロック618に進行して作業サイクル600を完了する。
【0134】
一部またはすべてのプロセスブロックがシステムおよびプロセス300、340、400、430、500、570および/または600に現れる順序は、限定的なものと見なされてはならない。むしろ、本開示の利点を有する当業者は、プロセスブロックの一部が例示されていない様々な順序で、または並列に行われ得ることを理解するであろう。
【0135】
図7aは、本開示の態様による
図1~
図6のLIDAR設計を含み得る例示的な自律車両700を示す。図示された自律車両700は、自律車両700の動作を制御する目的で自律車両の外部環境の1つ以上のオブジェクトをキャプチャし、キャプチャされた1つ以上のオブジェクトに関連するセンサーデータを生成するように構成されたセンサーアレイを含む。
図7aは、センサー733A、733B、733C、733Dおよび733Eを示す。
図7Bは、センサー733A、733B、733C、733Dおよび733Eに加えて、センサー733F、733G、733Hおよび733Iを含む自律車両700の平面図を示す。任意のセンサー733A、733B、733C、733D、733E、733F、733G、733Hおよび/または733Iは、
図1~
図6の設計を含むLIDAR装置を含み得る。
図7cは、自律車両700のための例示的なシステム799のブロック図を示す。例えば、自律車両700は、エネルギーソース706によって動力の供給を受け、ドライブトレイン708に電力を提供できる原動機704を含むパワートレイン702を含み得る。自律車両700は、方向制御712、パワートレイン制御714、およびブレーキ制御716を含む制御システム710をさらに含み得る。自律車両700は、人および/または貨物を輸送することができ、様々な異なる環境で走行することができる車両を含む任意の数の異なる車両として具現できる。前述のコンポーネント702~716は、これらのコンポーネントが使用される車両の種類によって広範囲に変化する可能性があることを理解するであろう。
【0136】
例えば、以下で説明する実施形態は、自動車、バン、トラック、またはバスなどの車輪付き陸上車両に焦点を合わせる。このような実施形態において、原動機704は、(その中でも)1つ以上の電気モータおよび/または内燃機関を含み得る。エネルギーソースは、例えば、燃料システム(例えば、ガソリン、ディーゼル、水素を提供する)、バッテリーシステム、ソーラーパネルまたは他の再生エネルギーソースおよび/または燃料電池システムを含み得る。ドライブトレイン708は、原動機704の出力を車両運動に変換するのに適したトランスミッションおよび/または任意の他の機械駆動コンポーネントとともにホイールおよび/またはタイヤを含み得るだけでなく、自律車両700を制御可能に停止または減速するように構成される1つ以上のブレーキおよび自律車両700の軌跡を制御するのに適した方向またはステアリングコンポーネント(例えば、自律車両700の1つ以上のホイールが車両の縦軸に対するホイールの回転平面の角度を変更するために、一般に垂直軸を中心に旋回することを可能にするラックおよびピニオンステアリング接続装置)を含み得る。一部の実施形態において、パワートレインとエネルギーソースの組み合わせが使用できる(例えば、電気/ガスハイブリッド車両の場合)。一部の実施形態において、複数の電気モータ(例えば、個々の車輪または車軸専用)を原動機として使用できる。
【0137】
方向制御712は、自律車両700が望む軌跡に沿うことができるように、方向またはステアリングコンポーネントからフィードバックを制御かつ受信するための1つ以上のアクチュエーターおよび/またはセンサーを含み得る。パワートレイン制御714は、パワートレイン702の出力を制御するように構成され得るが、例えば、原動機704の出力電力を制御し、ドライブトレイン708の変速機ギアを制御することによって、自律車両700の速度および/または方向を制御できる。ブレーキ制御716は、自律車両700を減速または停止させる1つ以上のブレーキ、例えば、車両のホイールに結合されたディスクまたはドラムブレーキを制御するように構成され得る。
【0138】
オフロード車両、オールテレーン(All-Terrain)またはトラック車両、または建設装備を含むが、これらに限定されない他の車両タイプは、必然的に、本開示の利点を有する通常の技術者であれば理解する他のパワートレイン、ドライブトレイン、エネルギーソース、方向制御、パワートレイン制御、およびブレーキ制御を活用する。また、一部の実施形態において、一部のコンポーネントは結合され得るが、例えば、車両の方向制御は、主に1つ以上の原動機の出力を変更することによって処理できる。したがって、本明細書に開示された実施形態は、車輪付き陸上自律車両における本明細書に説明された技術の特定の用途に限定されない。
【0139】
図示の実施形態において、自律車両700についての自律制御は、車両制御システム720で具現され、これは、処理ロジック722内の1つ以上のプロセッサおよび1つ以上のメモリ724を含み得、処理ロジック722は、メモリ724に格納されたプログラムコード(例えば、命令726)を実行するように構成される。処理ロジック722は、例えば、グラフィック処理装置(GPU)および/または中央処理装置(CPU)を含み得る。車両制御システム720は、LIDARピクセルの光ミキサの出力に応答して自律車両700のパワートレイン702を制御するように構成され得る。車両制御システム720は、複数のLIDARピクセルからの出力に応答して自律車両700のパワートレイン702を制御するように構成され得る。車両制御システム720は、FPAシステム202から受信された信号に基づいて生成されたマイクロコンピュータ203からの出力に応答して自律車両700のパワートレイン702を制御するように構成され得る。
【0140】
センサー733A~733Iは、自律車両の動作を制御するのに使用するために自律車両の周辺環境からデータを収集するのに適した様々なセンサーを含み得る。例えば、センサー733A~733Iは、RADARユニット734、LIDARユニット736、3Dポジショニングセンサー738、例えば、GPS、GLONASS、BeiDou、Galileo、またはCompassなどの衛星航法システムを含み得る。
図1~
図6のLIDAR設計は、LIDARユニット736に含まれ得る。LIDARユニット736は、例えば、自律車両700の周囲に分散した複数のLIDARセンサーを含み得る。一部の実施形態において、3Dポジショニングセンサー738は、衛星信号を用いて地球上の車両の位置を決定し得る。センサー733A~733Iは、選択的に1つ以上の超音波センサー、1つ以上のカメラ740、および/または慣性測定ユニット(IMU)742を含み得る。一部の実施形態において、カメラ740は、静止画および/またはビデオ画像を記録することができるモノグラフィックカメラまたはステレオグラフィックカメラであり得る。カメラ740は、自律車両700の外部環境にある1つ以上のオブジェクトのイメージをキャプチャするように構成されたCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサーを含み得る。IMU742は、3つの方向で自律車両700の線形および回転運動を検出できるマルチジャイロスコープおよび加速度計を含み得る。ホイールエンコーダなどの1つ以上のエンコーダ(図示せず)は、自律車両700の1つ以上のホイールの回転をモニタリングするために使用できる。
【0141】
センサー733A~733Iの出力は、位置推定(Localization)サブシステム752、軌跡サブシステム756、知覚サブシステム754、および制御システムインターフェース758を含む制御サブシステム750に提供され得る。位置推定サブシステム752は、周辺環境内で、そして一般的に特定の地理的領域内で自律車両700の位置および(また、時々「姿勢」とも呼ばれる)方向を決定するように構成され得る。自律車両の位置は、ラベル付き自律車両データ生成の一部として、同じ環境内の追加車両の位置と比較できる。知覚サブシステム754は、自律車両700を囲む環境内のオブジェクトを検出、追跡、分類および/または決定するように構成され得る。軌跡サブシステム756は、特定のタイムフレームにわたって希望する目的地が与えられた自律車両700についての軌跡だけでなく、環境内で静止および移動するオブジェクトの軌跡を生成するように構成され得る。一部の実施形態による機械学習モデルは、車両軌跡を生成するために活用できる。制御システムインターフェース758は、自律車両700の軌跡を実施するために制御システム710と通信するように構成される。一部の実施形態において、機械学習モデルは、計画された軌跡を実施するために自律車両を制御するために活用できる。
【0142】
図7に示す車両制御システム720についてのコンポーネントの集合は、本質的に単なる例示であることが理解されるであろう。個々のセンサーは、一部の実施形態においては省略され得る。一部の実施形態において、
図7cに示される異なるタイプのセンサーが自律車両を囲む環境で冗長的におよび/または異なる領域をカバーするために使用できる。一部の実施形態において、制御サブシステムの異なるタイプおよび/または組み合わせが使用できる。また、サブシステム752~758は、処理ロジック722およびメモリ724とは別のものとして示されているが、一部の実施形態において、サブシステム752~758の機能のうちの一部または全部は、メモリ724に常駐し、処理ロジック722によって行われる命令726などのプログラムコードで具現でき、これらのサブシステム752~758は、場合によっては、同じプロセッサおよび/またはメモリを使用して具現できることが理解されるであろう。一部の実施形態において、サブシステムは、様々な専用回路ロジック、様々なプロセッサ、様々なFPGA(Field Programmable Gate Array)、様々なASIC(Application-Specific Integrated Circuit)、様々なリアルタイムコントローラなどで具現でき、前述したように、複数のサブシステムが回路、プロセッサ、センサー、および/または他のコンポーネントを活用できる。また、車両制御システム720の様々なコンポーネントは、様々な方法でネットワーク化することができる。
【0143】
一部の実施形態において、自律車両700は、また、自律車両700のための冗長またはバックアップ制御システムとして使用できる2次車両制御システム(図示せず)を含み得る。一部の実施形態において、2次車両制御システムは、特定イベントに応答して自律車両700を操作できる。2次車両制御システムは、1次車両制御システム720で検出された特定イベントに応答して制限された機能のみを有し得る。また他の実施形態において、2次車両制御システムは、省略され得る。
【0144】
一部の実施形態において、ソフトウェア、ハードウェア、回路ロジック、センサー、およびネットワークの様々な組み合わせを含む異なるアーキテクチャが
図7cに示される様々なコンポーネントを具現するために使用できる。それぞれのプロセッサは、例えば、マイクロプロセッサとして具現でき、それぞれのメモリは、メインストレージだけでなく、メモリの任意の補助レベル、例えば、キャッシュメモリ、不揮発性またはバックアップメモリ(例えば、プログラマブルまたはフラッシュメモリ)、またはリードオンリーメモリを意味し得る。また、それぞれのメモリは、例えば、大容量格納装置または他のコンピュータコントローラに格納されているような仮想メモリとして使用される任意の格納容量だけでなく、自律車両700の他の場所に物理的に位置したメモリストレージ、例えば、プロセッサの任意のキャッシュメモリを含むものと見なすことができる。
図7cに示される処理ロジック722、または完全に別個の処理ロジックは、自律制御の目的以外に自律車両700で追加の機能を実施するために、例えば、エンターテインメントシステムを制御したり、ドア、照明、または便宜機能を操作するために使用できる。
【0145】
また、追加の格納のために、自律車両700は、また、1つ以上の大容量格納装置、例えば、リムーバブルディスクドライブ、ハードディスクドライブ、直接アクセス格納装置(「DASD」)、光ドライブ(例えば、CDドライブ、DVDドライブ)、SSD(Solid State Storage Drive)、ネットワーク接続ストレージ、ストレージエリアネットワーク、および/またはテープドライブなどを含み得る。また、自律車両700は、自律車両700が乗客から複数の入力を受信し、乗客のための出力を生成するためのユーザーインターフェース764、例えば、1つ以上のディスプレイ、タッチスクリーン、音声および/またはジェスチャーインターフェース、ボタン、およびその他の触覚コントロールを含み得る。一部の実施形態において、乗客からの入力は、他のコンピュータまたは電子装置を介して、例えば、モバイル装置のアプリを介して、またはウェブインターフェースを介して受信され得る。
【0146】
一部の実施形態において、自律車両700は、1つ以上のネットワーク770(例えば、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、無線ネットワーク、および/またはインターネットなど)と通信するのに適している1つ以上のネットワークインターフェース、例えば、ネットワークインターフェース762を含み得、これにより、例えば、自律車両700が自律制御に使用するために環境およびその他のデータを受信するためのクラウドサービスなどの中央サービスを含む他のコンピュータおよび電子装置との情報通信を可能にすることができる。一部の実施形態において、1つ以上のセンサー733A~733Iによって収集されたデータは、追加処理のためにネットワーク770を介してコンピューティングシステム772にアップロードされることができる。このような実施形態において、タイムスタンプは、アップロード前に車両データの各インスタンスに関連付けることができる。
【0147】
本明細書に開示される様々な追加のコントローラおよびサブシステムだけでなく、
図7cに示される処理ロジック722は、一般に、オペレーティングシステムの制御下で動作かつ実行されるか、そうでなければ以下に詳細に説明される様々なコンピュータソフトウェアアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、またはデータ構造に依存する。さらに、様々なアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、またはモジュールは、ネットワーク770を介して、例えば、分散、クラウドベース、またはクライアント-サーバコンピューティング環境で自律車両700に結合された他のコンピュータの1つ以上のプロセッサで行い得、これにより、コンピュータプログラムの機能を具現するために必要な処理がネットワークを介して複数のコンピュータおよび/またはサービスに割り当てられる。
【0148】
本明細書に記載されている様々な実施形態を具現するために実行されるルーチンは、オペレーティングシステムの一部または特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、または命令シーケンス、またはそのサブセットの一部として具現されているかどうかにかかわらず、ここで「プログラムコード」 と呼ばれる。プログラムコードは、一般に、様々なメモリおよび格納装置に常駐する1つ以上の命令を含み、1つ以上のプロセッサによって読み取りおよび実行されるとき、本開示の様々な態様を具現するステップまたは要素を実行するために必要なステップを実行する。さらに、実施形態は、完全に機能するコンピュータおよびシステムの文脈で説明されており、今後もそうであろうが、本明細書に記載されている様々な実施形態は、様々な形態のプログラム製品として配布されることができ、実施形態が実際に配布を実行するために使用される特定のタイプのコンピュータ読み取り可能な媒体に関係なく具現できることが理解されるであろう。コンピュータ読み取り可能な媒体の例としては、揮発性および不揮発性メモリデバイス、フロッピーおよび他のリムーバブルディスク、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、磁気テープおよび光ディスク(例えば、CD-ROM、DVD)のようなタイプの非一時的な媒体を含む。
【0149】
また、以下で説明される様々なプログラムコードは、特定の実施形態で具現されるアプリケーションに基づいて識別できる。しかし、以下の任意の特定のプログラム命名法は、単に便宜のために使用されたものであり、したがって、本発明は、このような命名法によって識別および/または暗示された任意の特定アプリケーションでのみ使用するように制限されてはならないことを理解するべきである。さらに、コンピュータプログラムがルーチン、手順、方法、モジュール、オブジェクトなどで構成できる一般に無限の数の方式およびプログラム機能が通常のコンピュータ(例えば、オペレーティングシステム、ライブラリ、API、アプリケーション、アプレット)内に常駐する様々なソフトウェア層の間に割り当てられる様々な方式を考慮するとき、本開示は、本明細書に記載のプログラム機能の特定の組織および割り当てに限定されないことを理解するべきである。
【0150】
本開示の利点を有する当業者は、
図7cに示す例示的な環境が本明細書に開示された実施形態を制限することを意図していないことを認識するであろう。実際、当業者は、本明細書に開示された実施形態の範囲から逸脱することなく、他の代替ハードウェアおよび/またはソフトウェア環境を使用できることを認識するであろう。
【0151】
本明細書において、「処理ロジック」(例えば、処理ロジック722)という用語は、本明細書に開示されている動作を実行するための1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、マルチコアプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)を含み得る。一部の実施形態において、メモリ(図示せず)は、演算を実行および/またはデータを格納するための命令を格納するために処理ロジックに統合される。また、処理ロジックは、本開示の実施形態に係る動作を実行するためのアナログまたはデジタル回路を含み得る。
【0152】
本明細書における「ユニット(Unit)」は、ハードウェアコンポーネント(例えば、AND、OR、NOR、XORゲート)で構成され得、1つ以上のプロセッサ、ASIC、FPGAまたは光子集積回路(PIC)に内蔵された回路として実装、および/またはLIDARシステム内の1つ以上のメモリに格納されたソフトウェア命令として部分的に定義されることができる。例えば、本開示の実施形態によって本明細書に開示される様々なユニットは、LIDAR処理エンジン201、マイクロコンピュータ203、レーザ制御器205、および/またはFPAドライバ209(
図2に示される)で少なくとも部分的に具現できる。
【0153】
本明細書で説明する「メモリ」または「複数のメモリ」は、1つ以上の揮発性または不揮発性メモリアーキテクチャを含み得る。「メモリ」または「複数のメモリ」は、コンピュータ読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなどの情報格納のための任意の方法または技術で具現された取り外し可能および取り外し不可能媒体であり得る。メモリ技術の例においては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD、高精細マルチメディア/データ格納ディスクまたはその他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク格納装置、またはコンピューティング装置によってアクセスを可能にするように情報を格納するために使用できるその他の非送信媒体を含み得る。
【0154】
ネットワークは、ピアツーピアネットワーク、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのパブリックネットワーク、プライベートネットワーク、セルラーネットワーク、無線ネットワーク、有線ネットワーク、有無線組み合わせのネットワーク、および衛星ネットワークなどの任意のネットワークまたはネットワークシステムを含むが、これらに 限定されない。
【0155】
通信チャネルは、IEEE802.11プロトコル、SPI(Serial Peripheral Interface)、I2C(Inter-Integrated Circuit)、USB(Universal Serial Port)、CAN(Controller Area Network)、セルラーデータプロトコル(例えば、3G、4G、LTE、5G)、光通信ネットワーク、インターネットサービスプロバイダ(ISP)、ピアツーピアネットワーク、LAN、WAN、パブリックネットワーク(例えば、「インターネット」)、プライベートネットワーク、衛星ネットワークまたは他のものを用いる1つ以上の有線または無線通信を含むか、またはこれによってルーティングされることができる。
【0156】
コンピューティング装置は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、ファブレット、スマートフォン、フィーチャーホン、サーバコンピュータなどを含み得る。サーバコンピュータは、データセンターに遠隔に位置するか、またはローカルに格納できる。
【0157】
前述したプロセスは、コンピュータソフトウェアおよびハードウェアの側面で説明される。説明された技術は、機械によって実行されるときに、機械が説明された動作を実行させる有形または非一時的な機械(例えば、コンピュータ)読み取り可能な格納 媒体内に具現された機械実行可能命令を構成し得る。さらに、プロセスは、特定用途向け集積回路(「ASIC」)などのハードウェア内に具現できる。
【0158】
有形の非一時的な機械可読格納媒体は、機械(例えば、コンピュータ、ネットワーク装置、PDA、製造ツール、1つ以上のプロセッサセットを有する任意の装置など)によってアクセス可能な形態の情報を提供(例えば、格納)するための任意のメカニズムを含み得る。例えば、機械可読格納媒体は、記録可能/記録不可能媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、磁気ディスク格納媒体、光格納媒体、フラッシュメモリ装置など)を含む。
【0159】
要約書に説明されたものを含め、本開示の例示された実施形態についての前述の説明は、本開示を開示された正確な形態に限定したり徹底的に意図しない。本開示の特定の実施形態および例示が例示的な目的で本明細書に説明されているが、関連技術分野の技術者が認識するように、本開示の範囲内で様々な修正が可能である。
【0160】
このような本発明の修正は、前述の詳細な説明に照らして行われ得る。以下の特許請求の範囲で使用される用語は、本開示を本明細書に開示された特定の実施形態に限定するものと解釈されてはならない。むしろ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって完全に決定されるべきであり、これは特許請求の範囲の解釈の確立された原則に従って解釈されるべきである。