(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】リポソーム製剤のためのp-エトキシ核酸
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7125 20060101AFI20240221BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240221BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240221BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240221BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240221BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240221BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240221BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240221BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K31/7125
A61K9/127
A61K9/19
A61K31/713
A61K47/24
A61K47/26
A61K48/00
A61P3/10
A61P19/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018539236
(86)(22)【出願日】2016-10-14
(86)【国際出願番号】 US2016057148
(87)【国際公開番号】W WO2017066643
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-10-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2015-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518130059
【氏名又は名称】バイオ-パス ホールディングス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン, ピーター
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】鈴木 理文
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6015886(US,A)
【文献】特開昭61-161246(JP,A)
【文献】特表2010-531820(JP,A)
【文献】特表平11-512099(JP,A)
【文献】特表2001-502172(JP,A)
【文献】特表2003-511405(JP,A)
【文献】Formulation of Lipofectamine 2000 and Lipofectin, SignaGen Blog, 2015.05.,<https://signagen.com/blog/2015/10/05/formulation-of-lipofectamine-2000-and-lipofectin/>
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci., 1989, Vol.86, pp.6077-6081
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72, 31/00-31/80, 47/00-47/69, 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチドの集団、リン脂質、および界面活性剤を含む組成物であって、前記集団のオリゴヌクレオチドが、リン酸骨格結合を通して互いに結合されたヌクレオシド分子から構成されており、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの60%~75%が、p-エトキシ骨格結合であり、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの25%~40%が、ホスホジエステル骨格結合であ
り、
前記リン脂質が、ホスファチジルコリンであり、前記界面活性剤が、ポリソルベート20であり、前記オリゴヌクレオチド、リン脂質、及び界面活性剤がリポソームを形成し、前記リポソームのうちの少なくとも90%が、直径が5ミクロン未満である、前記組成物。
【請求項2】
前記リン酸骨格結合のうちの
65%~71%が、p-エトキシ骨格結合であ
り、前記リン酸骨格結合のうちの29%~35%が、ホスホジエステル骨格結合である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン酸骨格結合のうちの60%~70%が、p-エトキシ骨格結合であり、前記リン酸骨格結合のうちの30%~40%が、ホスホジエステル骨格結合である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、7~30個のヌクレオチドの範囲のサイズを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドの集団が、オリゴヌクレオチドの単一種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドの集団が、オリゴヌクレオチドの少なくとも2つの種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドの集団が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短干渉RNA、マイクロRNA、またはpiwiRNAを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの発癌タンパク質、感染性因子タンパク質、または自己抗原の発現を阻害する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの発癌オリゴヌクレオチド、感染性因子オリゴヌクレオチド、または自己抗原オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする
、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記リン脂質が、生理的pHにおいて、非荷電であるか、または中性電荷を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記リン脂質が、中性リン脂質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記中性リン脂質が、ジオレオイルホスファチジルコリンである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記リン脂質が、コレステロールを本質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記リン脂質及びオリゴヌクレオチドが、約5:1~約100:1のモル比で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、リポソームの集団としてさらに定義される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドの集団が、前記リポソームの集団中に組み込まれている、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
前記集団の前記オリゴヌクレオチドの各々の中の前記ホスホジエステル骨格結合が各オリゴヌクレオチドの全体にわたってランダムに配置される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、凍結乾燥されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドを細胞に送達させるために、前記医薬組成物を、前記細胞と接触させることを特徴とする、請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物が、過形成、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を治療するための組成物である、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を有する対象を治療するための請求項
19に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、前記対象に投与されることを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項23】
前記対象が、ヒトである、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記癌が、膀胱、血液、膵臓、骨、骨髄、脳、胸部、結腸、食道、胃、頭頸部、腎臓、肝臓、肺、前立腺、皮膚、精巣、舌、卵巣、または子宮癌である、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記自己免疫疾患が、紅斑性狼瘡、シェーグレン病、クローン病、真性糖尿病、多発性硬化症、または関節リウマチである、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記感染性疾患が、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、または寄生虫感染症である、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬組成物が、皮下、静脈内、または腹腔内投与されることを特徴とする、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬組成物が、前記対象への少なくとも第2の抗癌療法と共に投与されることを特徴とする、請求項
22に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記第2の抗癌療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、抗ウイルス療法、免疫抑制療法、抗細菌療法、抗寄生虫療法、抗真菌療法、またはサイトカイン療法である、請求項
28に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年10月14日に出願された米国仮出願第62/241,503号の優先権を主張するものであり、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、概して、医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、p-エトキシオリゴヌクレオチドのリポソーム製剤、及びそのような製剤の製造方法ならびに医学における使用方法に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
標的mRNAの特異的領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(オリゴ)は、内在性遺伝子の発現を阻害するために使用されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドが標的mRNAに結合すると、DNA-RNAハイブリッドが形成される。このハイブリッド形成は、mRNAの翻訳、ひいてはコードされたタンパク質の発現を阻害する。タンパク質が細胞の生存に必須である場合、その発現の阻害は細胞死に繋がり得る。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、抗癌及び抗ウイルス療法における有用なツールとすることができる。
【0004】
遺伝子発現を阻害するためにアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することの主な障害は、細胞の不安定性、低い細胞取込み、及び低い細胞間送達である。天然のホスホジエステルはヌクレアーゼ加水分解に対して耐性が無く、これにより、いずれかの阻害効果が観察される前に高濃度のアンチセンスオリゴヌクレオチドが必要となる。p-エトキシなどの修飾ホスホジエステル類似体は、このヌクレアーゼの加水分解の問題を克服するために作製されているが、これらは問題に対して満足のいく解決法を提供していない。
【0005】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞取込みは低い。この問題を解決するために、リン酸カルシウム析出法、DEAE-デキストラン媒介、または電気穿孔法などの物理的技法が、オリゴヌクレオチドの細胞取込みを増加させるために使用されてきた。これらの技法は、再現することが難しく、インビボでは適用できない。リポフェクチンなどのカチオン性脂質も、オリゴヌクレオチドを送達するために使用されてきた。カチオン性脂質と負に帯電したオリゴヌクレオチドとの間に静電相互作用が形成され、その結果、その後標的細胞によって取り込まれる複合体をもたらす。これらのカチオン性脂質は、ヌクレアーゼ消化からオリゴヌクレオチドを保護しないために、細胞膜に有害であり、またヌクレアーゼ耐性ホスホロチオエートの送達においてのみ有用であるが、ヌクレアーゼが切断可能なホスホジエステルの送達において有用ではない。
【0006】
調製された別の修飾ホスホジエステル(PD)類似体は、p-エトキシ(pE)オリゴである。pEオリゴの修飾は、修飾が標的mRNAへのこれらのオリゴの結合を妨げることがないように、リン酸骨格において行われる。pEオリゴは、リン酸骨格の非架橋酸素原子にエチル基を付加して、これにより、これらのオリゴを非荷電化合物にすることによって行われる。ヌクレアーゼに対するそれらの抵抗性にもかかわらず、内在化の際に、これらのオリゴがエンドソーム/リソソームの液胞内部に隔離されたままであり、標的mRNAへのそれらの接近を妨害するために、pEオリゴの細胞取込み及び細胞内送達は不良である。
【0007】
疾患の治療に使用するための改善されたアンチセンス組成物が必要とされ、及びそのような改善された組成物の製造プロセスも必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドの集団を含む組成物が提供される。いくつかの態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、リン酸骨格結合を通して互いに結合されたヌクレオシド分子から構成されており、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合のうちの少なくとも1つはp-エトキシ骨格結合であり、また各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合のうちの80%以下がp-エトキシ骨格結合である。いくつかの態様では、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合のうちの少なくとも1つは、ホスホジエステル骨格結合である。いくつかの態様において、リン酸骨格結合のうちの10%~80%はp-エトキシ骨格結合であり、リン酸骨格結合の20%~80%はp-エトキシ骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの30%~80%はp-エトキシ骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの40%~80%はp-エトキシ骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの50%~80%はp-エトキシ骨格結合であり、またはリン酸骨格結合のうちの60%~70%はp-エトキシ骨格結合であり、もしくはその中で導出可能な任意の範囲である。いくつかの態様では、リン酸骨格結合のうちの20%~90%はホスホジエステル骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの20%~80%はホスホジエステル骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの20%~70%はホスホジエステル骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの20%~60%はホスホジエステル骨格結合であり、リン酸骨格結合のうちの20%~50%はホスホジエステル骨格結合であり、またはリン酸骨格結合のうちの30%~40%がホスホジエステル骨格結合であり、もしくはその中で導出可能な任意の範囲である。様々な態様では、リン酸骨格結合のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%、もしくはその中の任意の値が、p-エトキシ骨格結合である。様々な態様では、リン酸骨格結合のうちの最大で5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%、もしくはその中の任意の値が、ホスホジエステル骨格結合である。いくつかの態様では、組成物は凍結乾燥されている。
【0009】
いくつかの態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、7~30個のヌクレオチドの範囲のサイズを有する。ある特定の態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、12~25固のヌクレオチドの範囲のサイズを有する。様々な態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29個、または30個のヌクレオチドのサイズを有する。このサイズ範囲は、集団中のオリゴヌクレオチドの平均サイズであり得る。
【0010】
いくつかの態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29個、または30個のヌクレオチドの平均サイズを有しており、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合のうちの5、6、7、8、8、9、10、11、12、13、14、15、15、16、17、18、19、20、20、21、22、23個、または24個以下が、それぞれp-エトキシ骨格結合である。いくつかの態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29個、または30個のヌクレオチドの平均サイズを有しており、それぞれ、各オリゴヌクレオチド中のリン酸骨格結合のうちの少なくとも2、2、2、2、3、3、3、3、4、4、4、4、4、5、5、5、5、5、5、6、6、6、6、または6が、ホスホジオエステル骨格結合である。
【0011】
いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、単一種のオリゴヌクレオチドを含む。他の態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含む。単一種のオリゴヌクレオチドは、同じヌクレオチド配列を有し得るが、分子内の異なる位置にp-エトキシ結合を有するか、または欠如するかのいずれかであってもよい。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、またはpiwiRNA(piRNA)を含む。
【0012】
ある特定の態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの発癌性タンパク質、感染性因子タンパク質、または自己抗原の発現を阻害する。いくつかの態様では、集団のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの発癌性オリゴヌクレオチド、感染性因子オリゴヌクレオチド、または自己抗原オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする。
【0013】
様々な態様では、本組成物は、リン脂質をさらに含む。いくつかの態様では、リン脂質は、非電荷であるか、または生理的pHで中性電荷を有する。いくつかの態様では、リン脂質は中性リン脂質である。ある特定の態様では、中性リン脂質は、ホスファチジルコリンである。ある特定の態様では、中性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリンである。いくつかの態様では、リン脂質は本質的にコレステロールを含まない。
【0014】
いくつかの態様では、リン脂質及びオリゴヌクレオチドは、約5:1~約100:1のモル比、またはその中で導出可能な任意の比で存在する。様々な態様では、リン脂質及びオリゴヌクレオチドは、約5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、または100:1のモル比で存在する。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチド及びリン脂質は、例えば、リポソーム複合体などの、オリゴヌクレオチド-脂質複合体を形成する。いくつかの態様では、リポソームのうちの少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%は、直径が5ミクロン未満である。様々な態様では、組成物は、例えば、ポリソルベート20などの少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む。いくつかの態様では、全リポソームp-エトキシアンチセンス製剤のうちの少なくとも約5%は界面活性剤からなり、またリポソームの少なくとも約90%が直径5ミクロン未満である。いくつかの態様では、全リポソームp-エトキシアンチセンス医療品の少なくとも約15%は界面活性剤から構成され、またリポソームのうちの少なくとも約90%は、直径が3ミクロン未満である。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、リポソームの集団に組み込まれている。
【0015】
一態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、それぞれ約21個のヌクレオチドの長さを含み、かつ約30%のホスホジエステル骨格結合を有する。一態様では、オリゴヌクレオチドの集団は、少なくとも約5%の界面活性剤を含むリポソーム組成物にさらに組み込まれてもよく、該リポソームのうちの少なくとも約90%が、約5ミクロン未満の直径を有し得る。
【0016】
一実施形態では、本実施形態のオリゴヌクレオチド及びリン脂質の組成物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの態様では、本組成物は、化学療法剤をさらに含む。
【0017】
一実施形態では、細胞を本実施形態の医薬組成物と接触させることを含む、オリゴヌクレオチドの治療有効量を細胞に送達するための方法が提供される。いくつかの態様では、本方法は、過形成、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を治療する方法である。
【0018】
一実施形態では、本実施形態の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を有する対象を治療するための方法が提供される。いくつかの態様では、対象はヒトである。いくつかの態様では、癌は、膀胱、血液、膵臓、骨、骨髄、脳、胸部、結腸、食道、胃、頭部及び頸部、腎臓、肝臓、肺、前立腺、皮膚、精巣、舌、卵巣、または子宮癌である。いくつかの態様では、自己免疫疾患は、紅斑性狼瘡、シェーグレン病、クローン病、真性糖尿病、多発性硬化症、または関節リウマチである。いくつかの態様では、感染性疾患は、細菌感染、真菌感染、ウイルス感染、または寄生虫感染である。いくつかの態様では、組成物は、皮下、静脈内、または腹腔内投与される。いくつかの態様では、本方法は、少なくとも第2の抗癌療法を対象に施すことをさらに含む。いくつかの態様では、第2の抗癌療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である。
【0019】
オリゴヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするか、または標的タンパク質の発現を調節する核酸分子に、特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸分子を含む。「特異的ハイブリダイゼーション」は、アンチセンス核酸分子が標的とされた核酸分子にハイブリダイズし、その発現を調節することを意味する。好ましくは、「特異的ハイブリダイゼーション」は、他の遺伝子または転写物が影響を受けないことも意味する。オリゴヌクレオチドは、一本鎖核酸とすることができ、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個またはそれより多い核酸塩基を含み得る。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、15~30個、19~25個、20~23個、または21個の連続した核酸塩基を含むことができる。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、癌性もしくは前癌性または過形成哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)の増殖を促進する遺伝子の翻訳を阻害する。オリゴヌクレオチドは、細胞内でアポトーシスを誘導し、及び/または発癌遺伝子もしくは他の標的遺伝子の翻訳を阻害し得る。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド成分は、単一種のオリゴヌクレオチドを含む。他の実施形態では、オリゴヌクレオチド成分は、1、2、3、4個またはそれより多くの遺伝子を標的とする2、3、4個またはそれより多くの種類のオリゴヌクレオチドを含む。組成物は、化学療法剤または他の抗癌剤をさらに含んでもよく、これらは、本発明の脂質成分またはリポソームに組み込まれても、または組み込まれていなくてもよい。さらなる実施形態では、オリゴヌクレオチド成分は、リポソーム、または脂質成分内に組み込まれている。
【0020】
「捕捉する」、「封入する」、及び「組み込む」とは、リポソームが、対象のある薬剤とのまたはその周辺での会合による溶液中への自由拡散の妨害を形成することを指し、例えば、リポソームは、脂質層内または、脂質層内もしくは脂質層間の水性区画内に薬剤を封入することができる。ある特定の実施形態では、本組成物は、薬学的に許容できる担体中に含まれている。薬学的に許容できる担体は、ヒト対象、または患者への投与のために配合され得る。
【0021】
ある特定の実施形態では、脂質成分は、中性リン脂質または正味中性電荷を含むために、本質的に中性の電荷を有する。ある特定の態様では、中性リン脂質は、DOPC、卵ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(「POPC」)、リゾホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリンであり得る。他の態様では、中性リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、またはリゾホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジルエタノールアミンとすることができる。ある実施形態では、リン脂質成分は、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの種類またはタイプの中性リン脂質を含み得る。他の実施形態では、リン脂質成分は、2、3、4、5、6またはそれより多くの種類またはタイプの中性リン脂質を含み得る。
【0022】
ある特定の実施形態では、脂質成分は、正荷電脂質と負荷電脂質とを含むため、本質的に中性の電荷を有し得る。脂質成分は、中性荷電脂質(複数可)またはリン脂質(複数可)をさらに含み得る。正荷電脂質は、正荷電リン脂質であってもよい。負荷電脂質は、負荷電リン脂質であってもよい。負荷電リン脂質は、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、または脳ホスファチジルセリン(「BPS」)などのホスファチジルセリンであり得る。負荷電リン脂質は、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、またはジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)などのホスファチジルグリセロールであり得る。ある特定の実施形態では、本組成物は、コレステロールまたはポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。他の実施形態では、本組成物は本質的にコレステロールを含まない。ある特定の実施形態では、リン脂質は天然起源のリン脂質である。他の実施形態では、リン脂質は合成リン脂質である。
【0023】
リポソームは、脂質材料が実質的に非荷電である限りにおいて、1つ以上のリン脂質から作製され得る。本組成物がアニオン性及びカチオン性のリン脂質とコレステロールとを実質的に含まないことが重要である。好適なリン脂質には、ホスファチジルコリン及びこの分野の当業者に周知である他のものが含まれる。
【0024】
本発明の別の態様は、細胞を本発明の中性脂質組成物と接触させることを含む、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するための方法を伴う。本方法は、本発明の組成物を有効量で提供するであろう。有効量は、対象の細胞、病態または疾患状態を弱め、遅らせ、低減または排除する治療成分の量である。細胞は、ヒトなどの対象、または患者に含まれ得る。本方法は、癌または他の過形成状態を治療する方法をさらに含み得る。癌は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、胸部、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮に由来し得る。ある特定の実施形態では、本方法は、非癌性疾患、または過形成状態を治療する方法をさらに含む。細胞は、前癌性、または癌性細胞であってもよい。ある特定の実施形態では、本組成物及び方法は、細胞の増殖を阻害し、細胞においてアポトーシスを誘導し、及び/または癌遺伝子の翻訳を阻害する。オリゴヌクレオチドは、癌性細胞において過剰発現される遺伝子の翻訳を阻害し得る。
【0025】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、対象に追加の療法を施すことをさらに含む。追加の療法は、化学療法剤(例えば、パクリタキセルまたはドセタキセル)、外科手術、放射線療法、及び/または遺伝子療法を施すことを含み得る。ある特定の態様では、化学療法は、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセート、またはこれらの組み合わせである。ある実施形態では、化学療法は、ドセタキセルまたはパクリタキセルなどのタキサンである。化学療法は、本発明の中性脂質組成物に対して、送達前、送達中、送達後、またはこれらの組み合わせで送達され得る。化学療法は、中性脂質組成物の送達の0、1、5、10、12、20、24、30、48、または72時間以内またはそれよりも長い時間内に送達され得る。中性脂質組成物、第2の抗癌療法、または中性脂質組成物及び抗癌療法の双方は、腫瘍内、静脈内、腹腔内、皮下、経口またはこれらの様々な組み合わせで施され得る。
【0026】
本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法または組成物に対して実施することができ、逆もまた同様であることが想定される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、特定の成分に関して「本質的に含まない」とは、特定の成分のいずれも意図的に組成物に配合されておらず、及び/または混入物として、または微量でのみ存在することを意味するために使用される。よって、意図しない組成物の混入に起因する特定の成分の総量は、0.05%をはるかに下回る、好ましくは0.01%未満である。最も好ましくは、その中で特定の成分の量が標準的な分析方法で検出され得ない組成物である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味する場合がある。請求項(複数可)において本明細書で使用される場合、「含む」という単語と併せて使用されるとき、「a」または「an」という単語は、1つまたは2つ以上を意味する場合がある。
【0029】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示される、または代替物が相互に排他的でない限り、「及び/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物、及び「及び/または」のみを指す定義を支援する。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、またはそれ以上を意味し得る。
【0030】
本出願の全体を通して、「約」という用語は、ある値が装置についての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用され、本方法は、この値、または試験対象間に存在する変動を決定するために使用される。
【0031】
本発明の他の対象物、特徴及び利点は、以下の詳細な説明によって明らかとなる。しかしながら、詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示のみを目的として与えられることが理解されるべきであり、なぜならば、本発明の精神及び範囲内における種々の変更ならびに改変は、この詳細な説明によって当業者に明らかとなるからである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
オリゴヌクレオチドの集団を含む組成物であって、前記集団のオリゴヌクレオチドが、リン酸骨格結合を通して互いに結合されたヌクレオシド分子から構成されており、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの少なくとも1つが、p-エトキシ骨格結合であり、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの80%以下が、p-エトキシ骨格結合である、前記組成物。
(項目2)
前記リン酸骨格結合のうちの10%~80%が、p-エトキシ骨格結合である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~80%が、p-エトキシ骨格結合である、項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記リン酸骨格結合のうちの30%~80%が、p-エトキシ骨格結合である、項目3に記載の組成物。
(項目5)
前記リン酸骨格結合のうちの40%~80%が、p-エトキシ骨格結合である、項目4に記載の組成物。
(項目6)
前記リン酸骨格結合のうちの50%~80%が、p-エトキシ骨格結合である、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記リン酸骨格結合のうちの60%~70%が、p-エトキシ骨格結合である、項目6に記載の組成物。
(項目8)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~90%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目1に記載の組成物。
(項目9)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~80%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~70%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~60%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目10に記載の組成物。
(項目12)
前記リン酸骨格結合のうちの20%~50%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記リン酸骨格結合のうちの30%~40%が、ホスホジエステル骨格結合である、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、7~30個のヌクレオチドの範囲のサイズを有する、項目1に記載の組成物。
(項目15)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、7個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの5個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目14に記載の組成物。
(項目16)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、10個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの8個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目14に記載の組成物。
(項目17)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、30個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの24個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目14に記載の組成物。
(項目18)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、12~25個のヌクレオチドの範囲のサイズを有する、項目14に記載の組成物。
(項目19)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、15個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの12個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目18に記載の組成物。
(項目20)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、18個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの14個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目18に記載の組成物。
(項目21)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、20個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの16個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目18に記載の組成物。
(項目22)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、25個のヌクレオチドの平均サイズを有し、各オリゴヌクレオチド中の前記リン酸骨格結合のうちの20個以下が、p-エトキシ骨格結合である、項目18に記載の組成物。
(項目23)
前記オリゴヌクレオチドの集団が、オリゴヌクレオチドの単一種を含む、項目1に記載の組成物。
(項目24)
前記オリゴヌクレオチドの集団が、オリゴヌクレオチドの少なくとも2つの種を含む、項目1に記載の組成物。
(項目25)
前記オリゴヌクレオチドの集団が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短干渉RNA、マイクロRNA、またはpiwiRNAを含む、項目1に記載の組成物。
(項目26)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの発癌タンパク質、感染性因子タンパク質、または自己抗原の発現を阻害する、項目1に記載の組成物。
(項目27)
前記集団の前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの発癌オリゴヌクレオチド、感染性因子オリゴヌクレオチド、または自己抗原オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする、項目1に記載の組成物。
(項目28)
リン脂質をさらに含み、前記オリゴヌクレオチド及びリン脂質が、オリゴヌクレオチド-脂質複合体を形成する、項目1に記載の組成物。
(項目29)
前記リン脂質が、生理的pHにおいて、非荷電であるか、または中性電荷を有する、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記リン脂質が、中性リン脂質である、項目29に記載の組成物。
(項目31)
前記中性リン脂質が、ホスファチジルコリンである、項目30に記載の組成物。
(項目32)
前記中性リン脂質が、ジオレオイルホスファチジルコリンである、項目30に記載の組成物。
(項目33)
前記リン脂質が、コレステロールを本質的に含まない、項目28に記載の組成物。
(項目34)
前記リン脂質及びオリゴヌクレオチドが、約5:1~約100:1のモル比で存在する、項目28に記載の組成物。
(項目35)
前記オリゴヌクレオチド-脂質複合体が、リポソームの集団としてさらに定義される、項目28に記載の組成物。
(項目36)
前記リポソームのうちの少なくとも90%が、直径が5ミクロン未満である、項目35に記載の組成物。
(項目37)
前記オリゴヌクレオチドの集団が、前記リポソームの集団中に組み込まれている、項目35に記載の組成物。
(項目38)
前記組成物が、凍結乾燥されている、項目1に記載の組成物。
(項目39)
項目28に記載の組成物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
(項目40)
化学療法剤をさらに含む、項目39に記載の組成物。
(項目41)
オリゴヌクレオチドの治療有効量を細胞に送達させるための方法であって、前記細胞を項目39に記載の医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
(項目42)
前記方法が、過形成、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を治療する方法である、項目41に記載の方法。
(項目43)
癌、自己免疫疾患、または感染性疾患を有する対象を治療する方法であって、前記対象に、項目39に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
(項目44)
前記対象が、ヒトである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記癌が、膀胱、血液、膵臓、骨、骨髄、脳、胸部、結腸、食道、胃、頭頸部、腎臓、肝臓、肺、前立腺、皮膚、精巣、舌、卵巣、または子宮癌である、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記自己免疫疾患が、紅斑性狼瘡、シェーグレン病、クローン病、真性糖尿病、多発性硬化症、または関節リウマチである、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記感染性疾患が、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症、または寄生虫感染症である、項目43に記載の方法。
(項目48)
前記組成物が、皮下、静脈内、または腹腔内投与される、項目43に記載の方法。
(項目49)
少なくとも第2の抗癌療法を前記対象に施すことをさらに含む、項目43に記載の方法。
(項目50)
前記第2の抗癌療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、抗ウイルス療法、免疫抑制療法、抗細菌療法、抗寄生虫療法、抗真菌療法、またはサイトカイン療法である、項目49に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示的な実施形態の説明
本発明は、脂質組成物を介するオリゴヌクレオチド(例えば、遺伝子発現の阻害剤)の細胞への送達のための組成物及び方法を提供し、ある特定の態様では、約ゼロの正味電荷を有する脂質組成物、すなわち中性脂質組成物を提供する。ある特定の実施形態では、脂質組成物は、非荷電リポソームである。これらの方法は、癌を治療するために有効に使用され得る。
【0033】
I.脂質及びリポソーム
「リポソーム」は、本明細書では、脂質二重層を有する脂質含有小胞、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドを捕捉または組み込むことができる他の脂質担体粒子を意味するために使用される。このように、リポソームは、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単層、多層、及び多小胞(multivesicular)脂質ビヒクルを包含する一般的な用語である。加えて、リポソームは未定義の層状構造を有していてもよい。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けられてもよい。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰の水溶液に懸濁される場合、その多層リポソームが、自発的に形成する。脂質成分は、密閉構造の形成前に自己再配列を行い、そして水及び脂質二重層の間に溶解した溶質を捕捉する(Ghosh and Bachhawat,1991)。しかしながら、本発明は、正常な小胞構造とは異なる構造を溶液中に有する組成物もまた包含する。例えば、脂質は、ミセル構造をとり得るか、または単に、不均一な脂質分子の凝集体として存在してもよい。
【0034】
リポソームは、病変組織中に様々な薬物を送達するための担体であるナノ粒子の一形態である。最適なリポソームのサイズは、標的組織に依存する。腫瘍組織では、血管構造は不連続であり、孔隙サイズは100~780nmで変化する(Siwak et al.,2002)。これと比較して、正常血管内皮における孔隙サイズは、ほとんどの組織で2nm未満であり、後毛細血管細静脈では6nmである。負荷電リポソームは、中性または正荷電リポソームよりも迅速に循環から除去されると考えられているが、しかしながら、最近の研究では、負に荷電した脂質のタイプが細網内皮系(RES)によるリポソーム取込みの速度に影響を及ぼすことが示されている。例えば、立体的に遮蔽されていない負荷電脂質(ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルグリセロール)を含有するリポソームは、中性リポソームよりも迅速に取り除かれる。興味深いことに、カチオン性リポソーム(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン[DOTAP])、及びカチオン性リポソーム-DNAの複合体は、アニオン性、中性、または立体的に安定化された中性リポソームよりも、エンドサイトーシスを介して血管新生血管の内皮細胞によって、より強く結合及び内在化される(Thurston et al.,1998;Krasnici et al.,2003)。カチオン性リポソームは、腫瘍細胞との表面相互作用が静電的に誘導された結合部位障壁効果を生じ、送達系の腫瘍スフェロイドとのさらなる会合を阻害するため、腫瘍細胞にとっての理想的な送達ビヒクルではない可能性がある(Kostarelos et al.,2004)。しかしながら、中性リポソームは、より良好な腫瘍内侵入を有すると思われる。特定のリポソーム調製物による毒性も懸念されている。カチオン性リポソームは、反応性酸素中間体の放出を促進することによって、用量依存性毒性及び肺炎症を誘発し、またこの作用は、DOTAPなどの一価カチオン性リポソームよりも多価カチオン性リポソームでより顕著である(Dokka et al.,2000)。中性及び負荷電リポソームは、肺毒性を提示しないように思われる(Guitierrez-Puente et al.,1999)。カチオン性リポソームは、核酸を効率的に取り込むが、恐らくはその安定した細胞内性質、及び結果として生じる核酸内容物の放出の失敗により、インビボでの遺伝子下方制御に限られた成功しか収めていない。中性の電荷を有する脂質、または中性化された電荷を有する脂質組成物、例えば1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)は、中性特性及びインビボでのアンチセンスオリゴヌクレオチドの送達成功のために、本明細書で使用される。
【0035】
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドを脂質及び/またはリポソームと会合させるための方法及び組成物を提供する。オリゴヌクレオチドは、リポソームの水性内部に組み込まれ、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に会合している結合分子を介してリポソームに連結され、リポソーム内に捕捉され、リポソームとの複合体を形成され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中の懸濁液として含有され、ミセルを含有するか、またはそれと複合体を形成し、ないしは別の方法で脂質と会合することができる。本明細書で提供されるリポソームまたはリポソーム/オリゴヌクレオチド会合組成物は、溶液中のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、二重層構造に、ミセルとして、または「崩壊性」構造と共に存在してもよい。それらは単に溶液中に散在してもよく、サイズまたは形状が均一でない凝集物を形成する可能性がある。
【0036】
A.脂質
脂質は、天然由来または合成であってもよい脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質中に自然発生する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどを含有する当業者に周知である部類の化合物が含まれる。一例は、脂質1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)である。
【0037】
本発明の脂質組成物は、リン脂質を含み得る。ある特定の実施形態では、単一の種類またはタイプのリン脂質が、リポソームなどの脂質組成物の作製に使用され得る。他の実施形態では、1種または1つのタイプより多くのリン脂質が使用されてもよい。
【0038】
リン脂質としては、グリセロリン脂質及び特定のスフィンゴ脂質が挙げられる。リン脂質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジオレオイルホスファチジルコリン(「DOPC」)、卵のホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウリロイルホスファチジルコリン(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジラウリロイルホスファチジルグリセロール(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳のホスファチジルセリン(「BPS」)、脳のスフィンゴミエリン(「BSP」)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(「POPC」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「POPE」)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、及びジリノレオイルホスファチジルコリン。
【0039】
リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンが挙げられ、なぜならホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルコリンは生理条件下(すなわち、約pH7)で非荷電であるので、これらの化合物は中性リポソームを生成するために特に有用であり得る。ある特定の実施形態では、リン脂質DOPCは、非荷電リポソームまたは脂質組成物を生成するために使用される。ある特定の実施形態では、リン脂質ではない脂質(例えば、コレステロール)もまた使用することができる
【0040】
リン脂質は、天然または合成源由来であってもよい。しかしながら、卵または大豆ホスファチジルコリンなどの、天然源由来のリン脂質、脳ホスファチジン酸、脳または植物ホスファチジルイノシトール、心臓カルジオリピン、及び植物または細菌ホスファチジルエタノールアミンは、ある特定の実施形態では、結果として生じるリポソームの不安定性及び漏出性をもたらす可能性があるため、一次ホスファチド(すなわち、全ホスファチド組成の50%またはそれより多くを構成する)としては使用されない。
【0041】
B.中性リポソーム
「中性リポソームまたは脂質組成物」もしくは「非荷電リポソームまたは脂質組成物」は、本明細書で使用される場合、本質的に中性の正味電荷(実質的に非荷電)を生じる1つ以上の脂質を有するリポソームまたは脂質組成物として定義される。ある特定の実施形態では、中性リポソームまたは脂質組成物は、大部分はそれら自体が中性である脂質及び/またはリン脂質を含み得る。ある特定の実施形態では、両親媒性脂質は、中性リポソームまたは脂質組成物に組み込まれ得るか、またはそれを生成するために使用され得る。例えば、中性リポソームは、正及び負に荷電した脂質を組み合わせることによって生成することができ、それにより、これらの電荷が互いに実質的に相殺し、それによって本質的に中性の正味電荷を生じるようにする。「本質的に中性の」または「本質的に非荷電の」とは、もしあれば、所与の集団(例えば、リポソームの集団)内のわずかな脂質が、別の成分の反対の電荷によって相殺されない電荷を含む(例えば、成分の10%未満の、より好ましくは5%未満の、最も好ましくは1%未満の成分が非相殺電荷を含む)。本発明のある特定の実施形態では、組成物の脂質成分が本質的に中性であるが、リポソームの形態ではない組成物が調製されてもよい。
【0042】
リポソームのサイズは、合成の方法に依存して変化する。水溶液中に懸濁されたリポソームは、概して、球状小胞の形状であり、脂質二重層分子の1つ以上の同心円状の層を有し得る。各層は、式XYで表される分子の平行アレイからなり、式中、Xは親水性部分であり、Yは疎水性部分である。水性懸濁液において、同心円状の層は、親水性部分が水相と接触したままであり、かつ疎水性領域が自己会合する傾向があるように配置される。例えば、リポソームの内外の両方に水相が存在するとき、脂質分子は、配置XY-YXのラメラとして知られる二重層を形成し得る。2つ以上の脂質分子の親水性部及び疎水性部が互いに会合するようになると、脂質の凝集体が形成され得る。これらの凝集体のサイズ及び形状は、溶媒の性質及び溶液中の他の化合物の存在などの多くの異なる変数に依存するであろう。
【0043】
本発明の範囲内のリポソームは、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれるBangham et al.(1965)の方法、その内容が参照により本明細書に組み込まれるGregoriadis(1979)の方法、その内容が参照により本明細書に組み込まれるDeamer及びUster(1983)の方法、ならびにSzoka及びPapahadjopoulos(1978)によって記述されているような逆相蒸発法などの既知の実験技術に従って調製することができる。上述の方法は、水性材料を捕捉するそれらのそれぞれの能力及びそれらのそれぞれの水性空間対脂質比で異なる。
【0044】
ある特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドを送達するために、中性リポソームが使用され得る。中性リポソームは、単一の遺伝子の翻訳の抑制に向けられた単一の種のオリゴヌクレオチドを含有してもよく、または中性のリポソームは、複数の遺伝子の翻訳の抑制に向けられた複数の種のオリゴヌクレオチドを含有してもよい。さらに、中性リポソームは、オリゴヌクレオチドに加えて化学療法剤を含有することができ、これにより、ある特定の実施形態では、化学療法剤及びオリゴヌクレオチドは、同じ組成物または別個の組成物中で、細胞(例えば、ヒト対象の癌性細胞)に送達され得る。
【0045】
乾燥脂質または凍結乾燥リポソームを脱水し、適切な溶媒(例えば、DPBSまたはHepes緩衝液)を用いて適切な濃度で再構成することができる。次いで、混合物は、ボルテックスミキサー中で激しく振盪され得る。リポソームは、適切な総リン脂質濃度(例えば、約10~200mM)で再懸濁され得る。非封入のオリゴヌクレオチドは、29,000gでの遠心分離によって除去され、リポソームペレットを洗浄することができる。あるいは、過剰の溶媒に対して透析することにより、非封入オリゴヌクレオチドを除去することができる。封入されたオリゴヌクレオチドの量は、標準的な方法に従って決定することができる。
【0046】
II.遺伝子発現の阻害
阻害性オリゴヌクレオチドは、細胞中の遺伝子の転写または翻訳を阻害することができる。オリゴヌクレオチドは、5~50個、またはそれより多くのヌクレオチド長であってもよく、ある特定の実施形態では7~30個のヌクレオチド長であってもよい。ある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29個または30個のヌクレオチド長であり得る。オリゴヌクレオチドは、核酸及び/または核酸類似体を含み得る。典型的には、阻害性オリゴヌクレオチドは、細胞内の単一の遺伝子の翻訳を阻害するであろうが、ある特定の実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、細胞内の2つ以上の遺伝子の翻訳を阻害する場合もある。
【0047】
オリゴヌクレオチド内では、オリゴヌクレオチドの成分は、同じタイプであるか、または全体にわたって均一である必要はない(例えば、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド及び核酸、またはヌクレオチド類似体を含んでもよい)。本発明のある特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、単一の核酸、または核酸類似体のみを含み得る。阻害性オリゴヌクレオチドは、相補的核酸とハイブリダイズして二本鎖構造を形成する、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30個、またはそれより多くの連続した核酸塩基を含み得る(それらの間の全ての範囲を含める)。
【0048】
III.核酸
本発明は、中性リポソームを介するオリゴヌクレオチドの送達のための方法及び組成物を提供する。オリゴヌクレオチドは核酸から構成されるために、核酸に関する方法(例えば、核酸の生成、核酸の修飾など)もまた、オリゴヌクレオチドに関して使用することができる。
【0049】
「核酸」という用語は、当技術分野において周知である。「核酸」は、本明細書で使用される場合、概して、核酸塩基を含むDNA、RNA、またはその誘導体もしくは類似体の分子(すなわち、鎖部)を指す。これらの定義は、一本鎖または二本鎖核酸を指す。二本鎖核酸は、完全に相補的な結合によって形成され得るが、いくつかの実施形態では、二本鎖核酸は、部分的または実質的に相補的な結合によって形成されてもよい。本明細書で使用される場合、一本鎖核酸は、接頭辞「ss」によって表記され、二本鎖核酸は、接頭辞「ds」によって表記され得る。
【0050】
A.核酸塩基
本明細書で使用される場合、「核酸塩基」は、例えば、少なくとも1つの天然由来の核酸(すなわち、DNA及びRNA)に見出される天然由来の核酸塩基(すなわち、A、T、G、CまたはU)、及び天然または非天然由来の誘導体(複数可)、及びそのような核酸塩基の類似体などの複素環塩基を指す。核酸塩基は、概して、天然由来の核酸塩基対(例えば、AとT、GとC、及びAとUとの間の水素結合)の形成に代わり得る方法で、少なくとも1つの天然由来の核酸塩基と1つ以上の水素結合を形成する(すなわち、「アニールする」または「ハイブリダイズする」)ことができる。核酸塩基は、本明細書に記載されるか、または当業者に既知の任意の化学的または天然の合成方法を用いて、ヌクレオシドまたはヌクレオチドに含まれ得る。
【0051】
「プリン」及び/または「ピリミジン」核酸塩基(複数可)は、1つ以上のアルキル、カルボキシアルキル、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)、チオール、またはアルキルチオール部分によって置換されたプリンまたはピリミジンが挙げられるが、これらに限定されない、天然由来のプリン及び/またはピリミジン核酸塩基、及びその誘導体(複数可)ならびに類似体(複数可)を包含する。好ましいアルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1個、約2個、約3個、約4個、約5個から、約6個までの炭素原子を含む。プリンまたはピリミジンの他の非限定的な例には、デアザプリン、2,6-ジアミノプリン、5-フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8-ブロモグアニン、8-クロログアニン、ブロモチリン、8-アミノグアニン、8-ヒドロキシグアニン、8-メチルグアニン、8-チオグアニン、アザグアニン、2-アミノプリン、5-エチルシトシン、5-メチルシトシン、5-ブロモウラシル、5-エチルウラシル、5-ヨードウラシル、5-クロロウラシル、5-プロピルウラシル、チオウラシル、2-メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N-ジメチルアデニン、アザアデニン、8-ブロモアデニン、8-ヒドロキシアデニン、6-ヒドロキシアミノプリン、6-チオプリン、4-(6-アミノヘキシル/シトシン)などが挙げられる。プリン及びピリミジン誘導体または類似体には、(省略/修飾された塩基の記載で)ac4c/4-アセチルシチジン、Mam5s2u/5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、Chm5u/5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、Manq/ベータ、D-マンノシルクエオシン、Cm/2’-O-メチルシチジン、Mcm5s2u/5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、Cmnm5s2u/5-カルボキシメチルアミノ-メチル-2-チオリジン、Mcm5u/5-メトキシカルボニルメチルウリジン、Cmnm5u/5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、Mo5u/5-メトキシウリジン、D/ジヒドロウリジン、Ms2i6a、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、Fm/2’-O-メチルシュードウリジン、Ms2t6a/N-((9-ベータ-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、Gal q/β、D-ガラクトシルクエオシン、Mt6a/N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチル-カルバモイル)スレオニン、Gm/2’-O-メチルグアノシン、Mv/ウリジン-5-オキシ酢酸メチルエステル、I/イノシン、o5u/ウリジン-5-オキシ酢酸(v)、I6a/N6-イソペンテニルアデノシン、Osyw/Wyブトキソシン、m1a/1-メチルアデノシン、P/シュードウリジン、m1f/1-メチルシュードウリジン、Q/クエオシン、m1g/1-メチルグアノシン、s2c/2-チオシチジン、m1I/1-メチルイノシン、s2t/5-メチル-2-チオウリジン、m22g/2,2-ジメチルグアノシン、s2u/2-チオウリジン、m2a/2-メチルアデノシン、s4u/4-チオウリジン、m2g/2-メチルグアノシン、T/5-メチルウリジン、m3c/3-メチルシチジン、t6a/N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、m5c/5-メチルシチジン、Tm/2’-O-メチル-5-メチルウリジン、m6a/N6-メチルアデノシン、Um/2’-O-メチルウリジン、m7g/7-メチルグアノシン、Yw/Wyブトシン、Mam5u/5-メチルアミノメチルウリジン、またはX/3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン、(acp3)uが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
B.ヌクレオシド
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」は、核酸塩基リンカー部分に共有結合した核酸塩基を含む個々の化学単位を指す。「核酸塩基リンカー部分」の非限定的な例は、5-炭素原子を含む糖(すなわち、「5-炭素糖」)であり、デオキシリボース、リボース、アラビノース、または5炭素糖の誘導体もしくは類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。5-炭素糖の誘導体もしくは類似体の非限定的な例には、2’-フルオロ-2’-デオキシリボースまたは糖環中で炭素が酸素原子に置き換えられている炭素環糖が挙げられる。本明細書中で使用される場合、「部分」は、概して、より大きな化学構造または分子構造のより小さな化学成分または分子成分を指す。
【0053】
異なるタイプの、核酸塩基リンカー部分への核酸塩基の共有結合(複数可)は、当該技術分野において既知である。非限定的な例として、プリン(すなわち、AもしくはG)または7-デアザプリン核酸塩基を含むヌクレオシドは、典型的には、5-炭素糖の1’位へのプリンまたは7-デアザプリンの9位の共有結合を含む。別の非限定的な例では、ピリミジン核酸塩基(すなわち、C、TまたはU)を含むヌクレオシドは、典型的には、5-炭素糖の1’位へのピリミジンの1位の共有結合を含む(Kornberg and Baker,1992)
【0054】
C.ヌクレオチド
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、「骨格結合」をさらに含むヌクレオシドを指す。骨格結合は、概して、ヌクレオチドを含む別の分子、または別のヌクレオチドにヌクレオチドを共有結合させて核酸を形成する。天然由来のヌクレオチドにおける「骨格結合」は、典型的には、5-炭素糖へ共有結合されているリン酸部分(例えば、ホスホジエステル骨格結合)を含む。骨格部分の結合は、典型的には、5-炭素糖の3’位または5’位のいずれかで生じる。しかしながら、特にヌクレオチドが天然由来の5-炭素糖またはリン酸部分の誘導体もしくは類似体を含むとき、他のタイプの結合は当該技術分野において既知である。
【0055】
D.核酸類似体
核酸は、天然由来の核酸中に存在し得る核酸塩基、核酸塩基リンカー部分、及び/または骨格結合の誘導体もしくは類似体を含み得るか、または全体的にそれらから構成され得る。本明細書で使用される場合、「誘導体」は、天然由来の分子の化学的に修飾または変更された形態を指し、一方「模倣体」または「類似体」という用語は、天然由来の分子または部分に構造的に類似していても、またはそうでなくてもよいが、類似の機能を有する分子を指す。核酸塩基、ヌクレオシド、及びヌクレオチド類似体または誘導体は、当技術分野において周知である。
【0056】
5-炭素糖、及び/または骨格結合の誘導体もしくは類似体を含むヌクレオシド、ヌクレオチド、または核酸の非限定的な例には、dsDNAとの三重らせんを形成する、及び/またはdsDNAの発現を妨げるプリン誘導体を含むオリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,681,947号;特に蛍光核酸プローブとして使用するための、DNAまたはRNAで見出されるヌクレオシドの蛍光類似体を組み込む核酸を記載する米国特許第5,652,099号及び同第5,763,167号;増強されたヌクレアーゼ安定性を有するピリミジン環上の置換基を有するオリゴヌクレオチド類似体を記載する米国特許第5,614,617号;核酸検出で使用される修飾された5-炭素糖(すなわち、修飾された2’-デオキシフラノシル部分)を有するオリゴヌクレオチド類似体を記載する米国特許第5,670,663号、同第5,872,232号、及び同第5,859,221号;ハイブリダイゼーションアッセイで用いることができる、水素以外の置換基で4’位において置換された、少なくとも1つの5-炭素糖部分を含むオリゴヌクレオチドを記載している米国特許第5,446,137号;3’-5’骨格結合を有するデオキシリボヌクレオチドと2’-5’骨格結合を有するリボヌクレオチドの両方を有するオリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,886,165号;骨格結合の3’位の酸素が炭素で置換され、核酸のヌクレアーゼ耐性を増強する、修飾された骨格結合を記載する米国特許第5,714,606号;ヌクレアーゼ耐性を増強する1つ以上の5’メチレンホスホネート骨格結合を含有するオリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,672,697号;増強されたヌクレアーゼ安定性及び薬物または検出部分を送達する能力を提供するために、オリゴヌクレオチドの2’炭素に対する薬物または標識を含み得る、置換基部分の結合を記載する米国特許第5,466,786号及び同第5,792,847号;増強した細胞取込み、ヌクレアーゼに対する耐性、及び標的RNAへのハイブリダイゼーションを提供するために、隣接する5-炭素糖部分の4’位及び3’位を結合する2または3個の炭素骨格結合を有する、オリゴヌクレオチド類似体を記載する米国特許第5,223,618号;核酸ハイブリダイゼーションプローブとして有用である、少なくとも1つのスルファメートまたはスルファミド骨格結合を含む、オリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,470,967号;改善されたヌクレアーゼ耐性、細胞取込み、及びRNA発現の調節のために使用される、ホスホジエステル骨格結合に取って代わる3または4原子の骨格結合部分を有するオリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,378,825号、同第5,777,092号、同第5,623,070号、同第5,610,289号、及び同第5,602,240号;オリゴヌクレオチドの2’-O位置に結合し、それらの膜透過性及び安定性を増強する疎水性担体因子を記載する米国特許第5,858,988号;DNAまたはRNAに対する増強されたハイブリダイゼーション、増強されたヌクレアーゼに対する安定性を有する、5’末端においてアントラキノンに結合したオリゴヌクレオチドを記載する米国特許第5,214,136号;増強されたヌクレアーゼ耐性、結合親和性、及びRNアーゼHを活性化する能力のために、DNAが2’-デオキシ-エリスロ-ペントファラノシルヌクレオチドを含むPNA-DNA-PNAキメラを記載する米国特許第5,700,922号;DNAに結合され、DNA-RNAハイブリッドを形成するRNAを記載する米国特許第5,708,154号;1つ以上の核酸塩基がポリエーテル骨格中のキラル炭素原子に結合しているポリエーテル核酸を記載する米国特許第5,908,845号;概して、核酸塩基部分を含む1つ以上のヌクレオチドまたはヌクレオシド、5-炭素糖ではない核酸塩基リンカー部分(例えば、アザ窒素原子、アミド及び/またはウレイドテザー)、及び/またはリン酸骨格結合ではない骨格結合(例えば、アミノエチルグリシン、ポリアミド、ポリエチル、ポリチオアミド、ポリスルフィンアミド、またはポリスルホンアミド骨格結合)を含む、ペプチド核酸(PNAまたはペプチドベースの核酸類似体、またはPENAM)を記載する米国特許第5,786,461号、同第5,891,625号、同第5,786,461号、同第5,773,571号、同第5,766,855号、同第5,736,336号、同第5,719,262号、同第5,714,331号、同第5,539,082号、及びWO92/20702;及び疎水性のヌクレアーゼ耐性p-エトキシ骨格結合を記載する米国特許第5,855,911号のものが挙げられる。
【0057】
核酸類似体の他の修飾及び使用は当該技術分野において既知であり、これらの核酸類似体の技術及びタイプを本発明と共に使用することができると予想される。
【0058】
E.核酸の調製
核酸は、化学合成、酵素生産または生物生産などの、当業者に既知の任意の技術によって作製することができる。合成核酸(例えば、合成オリゴヌクレオチド)の非限定的な例には、参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許第266,032号に記載されているものなどの、ホスホトリエステル、ホスファイト、またはホスホルアミダイト化学及び固相技術を用いたインビトロ化学合成によって、またはそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Froehler et al.(1986)及び米国特許第5,705,629号によって記載されているデオキシヌクレオシドH-ホスホネート中間体によって作製された核酸が挙げられる。本発明の方法では、1種以上のオリゴヌクレオチドが使用されてもよい。オリゴヌクレオチド合成の様々な機構は、例えば、米国特許第4,659,774号、同第4,816,571号、同第5,141,813号、同第5,264,566号、同第4,959,463号、同第5,428,148号、同第5,554,744号、同第5,574,146号、同第5,602,244号に開示されており、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
F.核酸の精製
核酸は、ポリアクリルアミドゲル、塩化セシウム勾配遠心法、または当業者に既知の任意の他の手段(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrook et al.(2001)参照)によって精製することができる。
【0060】
ある特定の実施形態では、本発明は、単離された核酸である核酸に関する。本明細書で使用される場合、「単離された核酸」という用語は、1つ以上の細胞の全ゲノム核酸及び転写された核酸の大部分から遊離して単離された、ないしは別の方法でそれらを含まない核酸分子(例えば、RNAまたはDNA分子)を指す。ある特定の実施形態では、「単離された核酸」は、例えば、脂質またはタンパク質などの高分子、小型生物学的分子などのような細胞成分またはインビトロ反応成分の大部分から遊離して単離された、ないしは別の方法でそれらを含まない核酸を指す。
【0061】
G.ハイブリダイゼーション
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」、または「ハイブリダイズすることができる」とは、二本鎖または三本鎖分子、もしくは部分的二本鎖または三本鎖の性質を有する分子の形成を意味すると理解される。本明細書で使用される「アニールする」という用語は、「ハイブリダイズする」と同義である。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「ストリンジェントな条件(複数可)」または「高ストリンジェンシー」は、相補的配列(複数可)を含有する1つ以上の核酸鎖(複数可)間またはその中でのハイブリダイゼーションを可能にするが、ランダム配列のハイブリダイゼーションを排除する条件のものである。ストリンジェントな条件は、もしあれば、核酸と標的鎖との間のミスマッチをほとんど許容しない。そのような条件は、当業者には周知であり、高い選択性を必要とする用途に対して好ましい。
【0063】
ストリンジェントな条件は、約50℃~約70℃の温度で約0.02M~約0.15MのNaClによって提供されるものなどの、低塩及び/または高温条件を含み得る。所望のストリンジェンシーの温度及びイオン強度は、特定の核酸(複数可)の長さ、標的配列(複数可)の長さ及び核酸塩基含量、核酸(複数可)の電荷組成によって、及びハイブリダイゼーション混合物中のホルムアミド、塩化テトラメチルアンモニウムまたは他の溶媒(複数可)の存在もしくは濃度に対して、部分的に決定されることが理解される。
【0064】
ハイブリダイゼーションのためのこれらの範囲、組成及び条件は、単に非限定的な例として言及されていること、及び特定のハイブリダイゼーション反応のための所望のストリンジェンシーは、しばしば、1つ以上の正または負の対照との比較によって経験的に決定されることも理解される。想定される用途に応じて、標的配列に対する核酸の選択性の程度を変化させることを達成するために、変化するハイブリダイゼーション条件を使用することが好ましい。非限定的な例において、ストリンジェントな条件下で核酸にハイブリダイズしない、関連する標的核酸の同定または単離は、低温及び/または高イオン強度でのハイブリダイゼーションによって達成されてもよい。このような条件は、「低ストリンジェンシー」または「低ストリンジェンシー条件」と呼ばれ、低ストリンジェンシーの非限定的な例には、約20℃~約50℃の温度範囲において約0.15M~約0.9MのNaClで行われるハイブリダイゼーションが挙げられる。当然ながら、特定の用途に適合させるために、低または高ストリンジェンシー条件をさらに改変することは当業者の技術の範囲内である。
【0065】
IV.リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の製造方法
リポソームp-エトキシアンチセンス製剤は、2つのcGMP製品から構成され、これら双方ともにFDAに承認されたリリース基準によるFDAが要求する分析証明書を有する。原材料、溶媒、及び完成製剤が本明細書で記載される。製造時には、製剤は、以下の材料を含む琥珀色または白色の凍結乾燥結晶もしくは粉末である:オリゴヌクレオチド(例えば、p-エトキシアンチセンス原薬)、中性脂質(例えば、DOPC)、及び界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)。患者への投与のための準備において、通常生理食塩水がバイアルに添加され、この時点で、p-エトキシアンチセンスがその内部に組み込まれて、リポソームが形成される。
【0066】
最終製品の特定の物性(例えば、溶解度及び疎水性、これらは、その後に、生理食塩水中の製剤溶解度、オリゴのリポソームへの組み込み、及びリポソームの粒径に影響を及ぼす)は、p-エトキシアンチセンス原薬の製造中に、予め決められたp-エトキシ及びホスホジエステルアミダイト原材料ミックスを用いて限定することができる。オリゴヌクレオチドの骨格中のp-エトキシ分子の数の増加は、この分子をより疎水性にし(これは、より大きなリポソーム粒子をもたらす)、低い極性にし、かつ溶解性を低くする。より多くのp-エトキシ骨格結合に起因してオリゴヌクレオチドがより溶けにくくなると、再構成溶液は、より白くなり、ついには疎水性が高くなりすぎるために粒子状物質が形成される。
【0067】
リポソーム粒径に及ぼす界面活性剤(ポリソルベート20)の効果は、界面活性剤の量を滴定することによって決定された。ポリソルベート20の不在下では、粒子のわずか2.8%が300nm以下の直径を有した。1倍のポリソルベート20(総リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の約5%)の存在下では、粒子の12.5%が300nm以下の直径を有した。3倍~10倍のポリソルベート20を添加することによって、粒子のおよそ20%が300nm以下の直径を有した。したがって、界面活性剤の1倍から3倍までの増加は、粒径の減少をもたらす。
【0068】
V.リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の試験方法
製造された製剤の目視検査:製造後に、製剤を含有する試料バイアルを選択して、目視検査を行う。液体が不在であることは必須条件であり、バイアルの底部に琥珀色の結晶がある場合は受け入れられ、最良結果である白色の凝集粉末または外観まで受け入れが広げられる。白色の外観は、良好な乾燥プロセスを示唆すると共に、高い表面積対質量比は、使用のための再構成への大きな助けとなる。
【0069】
患者IVへの準備が整った再構成薬の目視検査:通常生理食塩水を、製造されたリポソームp-エトキシアンチセンス製剤を含有するバイアルに添加し、振盪して、薬物結晶または粉末が完全に溶解された状態の溶液に再構成する。3つの主要な観察が行われる:1)その結晶または粉末が完全に溶解されていること、2)不溶性物質の白色塊が無いこと、及び3)外観が乳白色であるか、またはスキムミルクに似た外観であることである。再構成液の外観の青みが増すほど、より良好であり、これは、青色スペクトルの光を反射するより小さいリポソームの粒径を示しているためである。
【0070】
質量分析法:質量分析法(mass spec)は、試料中の様々な質量のプロファイルを表示するために用いられる。p-エトキシアンチセンス物質が生成されると、質量分析法が試料で行われる。この結果は、「x」軸から右に向かって増加する質量、及び上向きに増加する「y」軸上の相対質量強度を有するグリッド上に存在する物質のピークを示す。試料からのプロファイルが分析され、p-エトキシ試料中のp-エトキシ骨格の相対量を決定し、ピークのプロファイルが(右端から始まり)、p-エトキシ結合から構成される全ての骨格を有する完全長物質を表し、左に移動する次のピークは、p-エトキシ欠失を有する1つの骨格を備えた完全長(したがって、エチルは外され、その結果、正常なホスホジエステル骨格結合となる)を表し、及びこのように続くことが分かる。右にシフトした質量分析パターンは、より多くのp-エトキシ骨格を有する、したがって、より疎水性であり、溶解しにくい特性を有するp-エトキシ試料を表し、同様に、左にシフトしたパターンは、反対の特性を有する試料を表す。試料の質量分析チャートの検査は、製造中の濾過が、濾過された製剤中に存在するオリゴヌクレオチド組成物に及ぼすいずれかの有害作用が生じているかどうかを決定するために使用することもできる。
【0071】
UV試験:紫外線試験を用いて、試料中に存在するオリゴヌクレオチドの質量を決定する。オリゴヌクレオチドは、260ナノメートルの範囲の光を吸収する。その結果、完成された再構成製剤のUV試験は、製剤のバイアル中のオリゴヌクレオチド原薬の量の決定における方法として使用されるようになった。製造開発及び技術革新の面において、UV試験は、溶液中のより少ないオリゴヌクレオチド、したがってより低いUV読み取り値をもたらす、製造中の濾過の間に遭遇する問題またはp-エトキシアンチセンス原薬の不良な溶解度があるかどうかを判定するために使用された。本方法は、検証され、最終製品リリース試験の一部に恐らくなるであろう。
【0072】
リポソームの粒径:完成製剤のバイアルを再構成して、リポソームの粒径について試験する。結果は、多くの場合、ほぼ、中心点、境界値及び平均値を有するおおよその正規分布であるか、または大部分の粒子及び二次粒子形成効果から生じたより小さなリポソーム粒子のより小さな二次ピークのおおよその正規分布である。リポソーム粒子があまりに大きすぎないことが重要であり、これが、患者において有害作用を生じ得るためである(例えば、肺のより小さい血管における血流の問題を生じる)。その結果、製剤リリース基準は、粒径試験が、リポソームの90%が約5ミクロンまたはそれより小さいサイズまたは約3ミクロンまたはそれより小さいサイズであることを示すことを含む。加えて、より小さなリポソームが好ましく、なぜなら、これらが細胞へのより良好な取込みを有すると思われるためであり、2番目には、より小さなリポソームが、血管孔を貫通することができ、それによって、リポソームが腫瘍の内部に貫通することを可能にし、リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の治療有効性を増加させるためである。
【0073】
VI.治療方法
本発明のある態様は、癌、自己免疫疾患、または感染性疾患などの疾患を治療するためのオリゴヌクレオチド-脂質複合体(例えば、非荷電リポソームに組み込まれたオリゴヌクレオチド)を提供する。特に、オリゴヌクレオチドは、ヒトヌクレオチド配列との塩基対形成を可能にする配列を有し、これにより、ヒトヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の発現を阻害し得る。
【0074】
「治療」及び「治療すること」は、疾患または健康関連状態の治療効果を得る目的のために、対象への治療剤の投与もしくは適用、または対象の処置もしくは治療法の実施を指す。例えば、治療には、オリゴヌクレオチド-脂質複合体の薬学的有効量の投与が含まれ得る。
【0075】
「対象」及び「患者」は、霊長類、哺乳動物、及び脊椎動物などの、ヒトまたは非ヒトのいずれかを指す。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0076】
本出願の全体を通して使用される場合、「治療効果」または「治療上有効な」という用語は、この病態の医学的治療に関して対象の健康状態を促進または強化する何事も指す。これには、疾患の徴候または症状の頻度もしくは重症度の軽減が含まれるが、これに限定されない。例えば、癌の治療には、例えば、腫瘍のサイズの縮小、腫瘍の侵襲性の低下、癌の増殖速度の低下、または転移の予防が含まれ得る。癌の治療はまた、癌に罹患した対象の生存を延長させることを指してもよい。自己免疫疾患の治療には、例えば、望ましくない免疫応答がある自己抗原の発現を軽減させること、望ましくない免疫応答がある自己抗原の寛容を誘導すること、または自己抗原に対する免疫応答を阻害することを含み得る。感染性疾患の治療は、例えば、感染性因子を排除すること、感染性因子のレベルを低下させること、または感染性因子のレベルをある特定のレベルに維持することを含み得る。
【0077】
本治療法が有用である腫瘍には、固形腫瘍、血液腫瘍、転移性癌、または非転移性癌に見られるものなどの、任意の悪性細胞型が含まれる。例示的な固形腫瘍には、膵臓、結腸、盲腸、食道、胃腸、歯肉、肝臓、皮膚、胃、精巣、舌、子宮、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、骨、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、及び胸部からなる群から選択される臓器の腫瘍を挙げることができるが、これらに限定されない。血液学的腫瘍の例には、骨髄、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽球腫、骨髄腫などの腫瘍が挙げられる。本明細書で提供される方法を使用して治療することができる癌のさらなる例には、癌腫、リンパ腫、芽球腫、肉腫、白血病、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric or stomach)癌(胃腸癌及び消化管間質癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌腫、唾液腺癌、腎臓癌または腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、様々なタイプの頭頸部癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中悪性/濾胞性NHL;中悪性びまん性NHL;高悪性免疫芽細胞NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性小非切込細胞NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリーセル白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、及び慢性骨髄芽球性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
癌は、具体的には、以下の組織型のものであり得るが、これらに限定されない:悪性新生物;癌腫;未分化癌腫;巨細胞癌及び紡錘形細胞腫瘍;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母細胞腫;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管癌との複合癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内腺癌;家族性大腸ポリポージス腺癌;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞上皮腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性細胞癌;好酸性細胞癌;好酸性腺腫;好塩基性腺腫;透明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭及び濾胞状腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質細胞癌;子宮内膜性腫瘍;皮膚付属器腫瘍;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘液性類表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;ムチン性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性乳癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質細胞癌;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性細胞腫、;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞癌;悪性脂質細胞癌;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;悪性グロームス腫瘍(glomangiosarcoma);悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒色腫巨細胞色素性母斑;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質細胞肉腫;混合腫瘍;ミューラー混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉細胞腫;悪性ブレンナー腫;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性エナメル上皮腫;悪性エナメル上皮線維肉腫;松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣細胞腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;グリア芽細胞腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特異的非ホジキン病リンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及び有毛細胞性白血病。
【0079】
本治療法が有用な自己免疫疾患には、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、真性糖尿病、小児脂肪便症、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性肝疾患、アディソン病、移植拒絶反応、移植片対宿主病、宿主対移植片病、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、若年性関節リウマチ、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、初期関節炎、ウイルス性関節炎、多発性硬化症、または乾癬が挙げられるが、これらに限定されない。これらの疾患の診断及び治療は、文献に十分に記載されている。
【0080】
本治療法が有用な感染症には、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染及び寄生虫感染が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なウイルス感染には、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2、ヒトパピローマウイルス、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、ヘルペス帯状疱疹、水痘帯状疱疹、コクサッキーウイルスA16、サイトメガロウイルス、エボラウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ハンタウイルス、ヘンドラウイルス、ウイルス性髄膜炎、呼吸系発疹ウイルス、ロタウイルス、西ナイルウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスの感染が挙げられる。例示的な細菌感染症には、Chlamydia trachomatis、Listeria monocytogenes、Helicobacter pylori、Escherichia coli、Borelia burgdorferi、Legionella pneumophilia、Mycobacteria sps(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intraceliuiar e、M.kansaii、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitides、Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、Streptococcus(viridans群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(嫌気性菌)、Streptococcus pneumoniae、病原性Campylobacter sp.、Enterococcus sp.、Haemophilus influenzae、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheriae、corynebacterium sp.、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides sp.、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Treponema pallidium、Treponema pertenue、Leptospira、Rickettsia、Actinomyces israelli、Shigella属菌(例えば、S.flexneri、S.sonnei、S.dysenteriae)、及びSalmonella属菌感染症が挙げられる。例示的な真菌感染症には、Candida albicans、Candida glabrata、Aspergillus fumigatus、Aspergillus terreus、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatitidis、及びChlamydia irachomatis感染症が挙げられる。
【0081】
オリゴヌクレオチド-脂質複合体は、本明細書では、抗腫瘍、抗ウイルス、抗細菌、抗真菌、抗寄生虫、または抗自己免疫薬として様々な治療法で使用することができる。特定の実施形態では、本発明は、オリゴヌクレオチド-脂質複合体の使用方法が、疾患細胞の集団を、オリゴヌクレオチド-脂質複合体の治療有効量と、疾患を阻害または後退させるのに十分な期間接触させることを含むと想定される。
【0082】
一実施形態では、インビボで接触させることは、静脈内、腹腔内、皮下、または腫瘍内注射によって、本発明のオリゴヌクレオチド-脂質複合体を含む生理学的に許容できる組成物の治療有効量を患者に投与することによって成し遂げられる。オリゴヌクレオチド-脂質複合体は、注射または経時的な徐々の注入によって、非経口的に投与することができる。
【0083】
オリゴヌクレオチド-脂質複合体を含む治療用組成物は、通常、例えば、単位用量の注射などにより、静脈内または皮下に投与される。「単位用量」という用語は、治療組成物に関して使用されるとき、対象のための単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる希釈剤、すなわち、担体またはビビクルと関連付けて所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を含有する。
【0084】
組成物は、投与製剤と適合する方法で、また治療上有効な量で投与される。投与される量は、治療する対象、対象の系が有効成分を利用する能力、及び所望の治療効果の程度に依存する。投与に必要な有効成分の正確な量は、施術者の判断に依存し、各個体に特有である。しかしながら、全身投与のための適切な投与量範囲は、本明細書に開示され、投与経路に依存する。初期投与及びブースター投与のための適切な投与計画も想定され、初期投与に続いて、その後の注射または他の投与によって1時間以上の間隔で反復投与されることが典型である。例示的な複数回の投与が本明細書に記載されており、ポリペプチドの連続的に高い血清及び組織レベルを維持するために特に好ましい。あるいは、インビボ療法のために特定された範囲の血液中の濃度を維持するために十分な連続静脈内注入が想定される。
【0085】
本発明のオリゴヌクレオチドは、局所的に進行した癌または転移性の癌に罹患した癌患者の腫瘍細胞の増殖を阻害する、または癌細胞を死滅させるためなどの、疾患治療のために、全身的にまたは局所的に投与され得ることが想定される。それらは、静脈内、くも膜下腔内、皮下及び/または腹腔内に投与することができる。それらは、単独で、または抗増殖薬と組み合わせて投与することができる。一実施形態では、これらは、外科手術または他の処置の前に患者の癌負荷を軽減するために投与される。あるいは、外科手術後にそれらを投与して、いかなる残存する癌(例えば、手術で切除できなかった癌)も生存しないようにすることができる。
【0086】
治療上有効な量のオリゴヌクレオチドは、所望の効果を達成するように、例えば、標的タンパク質の発現を阻害するように計算された所定の量である。これにより、本発明のオリゴヌクレオチドの投与のための投与範囲は、所望の効果を生じるために十分な大きさのものである。投与量は、例えば、過粘着性症候群、肺水腫、うっ血性心不全、神経学的効果などの有害な副作用を引き起こすほど大きくすべきではない。概して、投与量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の程度によって変化し、当業者によって決定され得る。投与量は、何らかの合併症が生じた場合には、個々の医師によって調整され得る。
【0087】
本発明の組成物は、好ましくは、患者に非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、リンパ内、腹腔内、皮下、胸膜内、または髄腔内注射によって投与され、またはエクスビボで使用することができる。好ましい投与量は5~25mg/kgである。投与は、好ましくは、癌が消失または退行するまで、予定されたスケジュールで繰り返され、また他の形態の療法と併せて行うことができる。
【0088】
VII.医薬製剤
リポソームを含む医薬組成物は、通常、水または生理食塩溶液などの無菌の薬学的に許容できる担体もしくは希釈剤を含むであろう。
【0089】
オリゴヌクレオチドを含有する非荷電脂質成分の(例えば、リポソームの形態での)臨床応用が行われる場合、脂質複合体を意図した応用に適した医薬組成物として調製することが一般的に有益であろう。これは、典型的には、発熱性物質、ならびにヒトまたは動物にとって有害であり得る任意の他の不純物を本質的に含まない医薬組成物を調製することを伴うであろう。複合体を安定にし、かつ標的細胞による取込みを可能にする適切な緩衝液を使用してもよい。
【0090】
成句「薬学的にまたは薬理学的に許容できる」とは、必要に応じて、ヒトなどの動物に投与されるとき、有害なアレルギー反応または他の予期しない反応を生じることがない分子実体及び組成物を指す。参照により本明細書に組み込まれる、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st,2005によって例示される、オリゴヌクレオチドまたは追加の活性成分を含む少なくとも1つの非荷電脂質成分を含有する医薬組成物の調製は、本開示を考慮すれば、当業者には既知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与については、製剤がFDA生物製品基準局によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性及び純度基準を満たさねばならないことが理解されるであろう。
【0091】
本明細書で使用する場合、当業者には既知であるように、「薬学的に許容できる担体」には、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩類、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、染料、この種の材料及びこれらの組み合わせが含まれる。薬学的に許容できる担体は、好ましくは、ヒトへの投与のために配合され、ある特定の実施形態では、非ヒト動物への投与のために配合される薬学的に許容できる担体を使用することが望ましい場合があるとはいえ、これは、ヒトへの投与には許容できないであろう(例えば、政府規制のために)。任意の従来の担体が活性成分と不適合である場合を除き、その治療薬または医薬組成物における使用が想定される。
【0092】
患者または対象に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、体重、病態の重症度、治療される疾患の種類、以前のもしくは併存する治療介入、患者の突発性疾患、及び投与の経路などの物理的及び生理学的因子によって決定され得る。投与を担当する医療従事者は、いずれにしても、個々の対象に対して、組成物中の活性成分(複数可)の濃度及び適切な用量(複数可)を決定するであろう。
【0093】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態では、活性化合物は、例えば、約2%~約75%の単位重量、または約25%~約60%、及びその中の導出可能な任意の範囲を構成してもよい。他の非限定的な例では、用量はまた、1回の投与当たり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重またはそれより多くまで、及びその中で導出可能な任意の範囲を含んでもよい。本明細書に列挙された数値から導出可能な範囲の非限定的な例では、約5μg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲で投与され得る。
【0094】
本実施形態のオリゴヌクレオチドは、1回の服用量当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100μgまたはそれより多くの核酸の用量で投与されてもよい。各用量は、1、10、50、100、200、500、1000μlもしくはmlまたはそれより多い体積であってもよい。
【0095】
治療的組成物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、これらの混合物中で、また油中で調製され得る。保管及び使用の通常の条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含有する。
【0096】
本発明の治療的組成物は、液体または懸濁液のいずれかの注射可能な組成物の形態で好都合に投与され、注射の前に溶液または懸濁液にされるのに好適な固形剤も調製されてもよい。これらの製剤はまた乳化され得る。このような目的のための典型的な組成物は、薬学的に許容できる担体を含む。例えば、組成物は、リン酸緩衝生理食塩水1ミリリットル当たり10mg、25mg、50mg、または約100mgに及ぶヒト血清アルブミンを含有してもよい。他の薬学的に許容できる担体には、塩類、防腐剤、緩衝液などを含む水溶液の非毒性賦形剤が含まれる。
【0097】
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、及びエチルオレエートなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩溶液、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなどの非経口ビヒクルが含まれる。静脈内ビヒクルには、液体及び栄養補充剤(fluid and nutrient replenishers)が含まれる。保存剤には、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが含まれる。医薬組成物の様々な成分のpH及び正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。
【0098】
本発明の治療的組成物は、典型的な医薬製剤を含んでもよい。本発明による治療的組成物の投与は、任意の通常の経路を、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、介するであろう。この経路には、経口、経鼻、口腔内、経直腸、膣内、または局所が含まれる。局所投与は、化学療法誘発脱毛、または他の皮膚過剰増殖性障害を予防するために、皮膚癌の治療に特に有利であり得る。あるいは、投与は、同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射であってもよい。このような組成物は、通常、生理学的に許容できる担体、緩衝液または他の賦形剤を含む薬学的に許容できる組成物として投与されるであろう。肺の病態の治療のために、エアロゾル送達が使用され得る。エアロゾルの体積は、約0.01ml~約0.5mlである。
【0099】
治療的組成物の有効量は、意図される目標に基づいて決定される。「単位用量」または「投与量」という用語は、対象で使用するのに適する物理的に別個の単位を指し、各単位は、その投与、すなわち、適切な経路及び処置レジメンに関連付けて上述した所望の応答を生じさせるように計算された予め決められた量の治療的組成物を含有する。処置の回数及び単位用量の双方に従って投与されるべき量は、所望の保護及び効果に依存する。
【0100】
治療的組成物の正確な量は、医療従事者の判断にも依存し、各個人に特有である。用量に影響を及ぼす因子には、患者の身体ならびに臨床状態、投与の経路、治療の意図する目標(例えば、症状の緩和対治癒)及び特定の治療用物質の効力、安定性ならびに毒性が含まれる。
【0101】
VIII.併用治療
ある特定の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、第2または追加の療法と組み合わせて、阻害性オリゴヌクレオチド、または遺伝子発現の阻害剤を発現することができるオリゴヌクレオチドを伴う。併用治療を含む方法及び組成物は、治療的もしくは保護効果を向上させ、及び/または別の抗癌療法もしくは抗過剰増殖療法の治療効果を増加させる。治療的及び予防的方法ならびに組成物は、癌細胞の殺傷及び/または細胞過剰増殖の阻害などの所望の効果を達成するのに有効な合計量で提供され得る。このプロセスは、細胞を遺伝子発現の阻害剤及び第2の療法の両方と接触させることを伴うことができる。このプロセスでは、組織、腫瘍、または細胞は、薬剤(すなわち、遺伝子発現の阻害剤または抗癌剤)のうちの1つ以上を含む1つ以上の組成物または薬理学的製剤(複数可)と接触され得るか、あるいは、組織、腫瘍、及び/または細胞を2つ以上の別個の組成物もしくは製剤と接触させることにより、ここでは、1つの組成物が1)阻害性オリゴヌクレオチド、2)抗癌剤、または3)阻害性オリゴヌクレオチド及び抗癌剤の両方を提供する。また、このような併用療法が、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と共に使用され得ることが想定される。
【0102】
阻害性オリゴヌクレオチドは、抗癌治療に対して、その前に、治療中に、治療後に、または様々な組み合わせで投与されてもよい。投与は、同時投与から数分、数日、数週間に及ぶ範囲の間隔で行われてもよい。阻害性オリゴヌクレオチドが抗癌剤とは別々に患者に提供される実施形態では、一般に、2つの化合物が患者に併用効果をなお有利に及ぼすことができるように、各送達の間にかなりの時間が経過して、有効期限が切れてしまうことないことを確実にするであろう。このような場合には、患者に、阻害性オリゴヌクレオチド療法及び抗癌療法を、患者に互いに対して約12~24時間または72時間以内に、より好ましくは、互いに対して約6~12時間以内に提供し得ることが想定される。場合によっては、治療のための時間を大幅に延長させることが望ましいこともあり、ここでは、それぞれの投与の間で、数日間(2、3、4、5、6または7日間)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)まで経過する。
【0103】
ある特定の実施形態では、一連の治療は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90日またはそれより長く続くであろう。1つの薬剤が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89日目、及び/または90日目に、もしくはこれらの任意の組み合わせで投与されてもよく、別の薬剤が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89日目、及び/または90日目に、もしくはこれらの任意の組み合わせで投与されることが想定される。一日のうちに(24時間で)、患者は、薬剤(複数)の1回または複数回の投与を受けてもよい。さらに、一連の治療後に、抗癌剤が投与されない期間があることが想定される。この期間は、患者の状態、例えば彼らの予後、体力、健康状態などに応じて、1、2、3、4、5、6、7日間、及び/または1、2、3、4、5週間、及び/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間またはそれより長く続いてもよい。
【0104】
様々な組み合わせが使用されてもよい。以下の例については、阻害性オリゴヌクレオチド療法は「A」であり、抗癌剤療法は「B」である。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A
A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0105】
本発明の任意の化合物または療法の患者への投与は、もしあれば、薬剤の毒性を考慮に入れて、このような化合物の投与についての一般的なプロトコルに従うであろう。したがって、いくつかの実施形態では、併用療法に起因する毒性を監視する工程がある。治療周期は、必要に応じて繰り返されることが予想される。様々な標準的な療法、ならびに外科的介入が、記載された療法と組み合わせて適用されてもよいことも想定される。
【0106】
特定の態様では、標準的な療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科療法または遺伝子療法を含むであろうし、本明細書に記載されるように、遺伝子発現の阻害剤の療法、抗癌療法、または遺伝子発現の阻害剤の療法及び抗癌療法の両方と組み合わせて使用されてもよいことが想定される。
【0107】
A.化学療法
多種多様な化学療法剤が、本実施形態に従って使用されてもよい。「化学療法」という用語は、癌を治療するために薬物を使用することを指す。「化学療法剤」は、癌の治療において投与される化合物または組成物を含意するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内のそれらの活性の様式により、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうか、及びどの段階で及ぼすかにより分類される。あるいは、薬剤は、そのDNAに直接架橋するための、DNA中に挿入するための、または核酸合成に影響を及ぼすことによる染色体及び有糸分裂異常を誘発するための能力に基づいて特性化されてもよい。
【0108】
化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチロロメラミンを含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトセシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムシチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;エネジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルチノスタチン発光団及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝産物;デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン類;ミトタン及びトリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;パクリタキセル及びドセタキセルなどのタキソイド;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどのプラチナ配位錯体類;ビンブラスチン;プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(CPT-11);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン;カルボプラチン;プロカルバジン;プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼインヒビター、トランスプラチナ、及び上記のいずれかの薬学的に許容できる塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0109】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く使用されてきた他の因子には、γ線、X線として一般的に知られているもの、及び/または腫瘍細胞への放射性同位元素の指向性送達が含まれる。マイクロ波、陽子ビーム照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)及びUV照射などの、DNA損傷因子の他の形態も想定される。これらの因子の全てが、DNAに対する、DNAの前駆体に対する、DNAの複製ならびに修復に対する、及び染色体の組み立てならびに維持に対する広範な損傷に影響を与える可能性が最も高い。X線の線量範囲は、一日当たり50~200レントゲンの線量で長期間にわたる(3~4週間)ものから、2000~6000レントゲンの1回線量にまで及ぶ。放射性同位元素の線量範囲は、広範囲に変化し、同位元素の半減期、放出される放射線の強度ならびに種類、及び新生細胞による取込みに依存する。
【0110】
細胞に適用される場合の「接触される」及び「曝される」という用語は、本明細書では、治療的構築物及び化学療法剤もしくは放射線療法剤が標的細胞に送達され、標的細胞と直接並列して定置されるプロセスを説明するために使用される。細胞殺傷を達成するために、例えば、両方の薬剤が、細胞を殺傷するために、またはそれが分裂することを防止するために有効な合計量で細胞に送達される。
【0111】
C.免疫療法
癌治療という面においては、免疫療法は、一般に、癌細胞を標的化及び破壊するために、免疫エフェクター細胞及び分子の使用に頼る。トラスツズマブ(Herceptin(商標)は、このような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であってもよい。抗体は、単独では、治療のエフェクターとして機能し得るか、またはこれは、細胞殺傷に実際に影響を及ぼすために、他の細胞を動員し得る。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合して、単に標的化剤として働いてもよい。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。治療方法の組み合わせ、すなわち、直接的な細胞傷害性活性及びErbB2の阻害もしくは低減は、ErbB2を過発現する癌の治療において治療効果をもたらすであろう。
【0112】
別の免疫療法はまた、上述した遺伝子サイレンシング療法との併用療法の一部として使用され得る。免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的化を受けることができる、すなわち、大部分の他の細胞には存在しない、いくつかのマーカーを担持するはずである。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらのいずれかは、本発明の関係における標的化に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb B及びp155が含まれる。免疫療法の代替態様は、抗癌作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、及びFLT3リガンドなどの増殖因子を含む免疫刺激分子も存在する。免疫刺激分子を、タンパク質として組み合わせるか、または腫瘍抑制剤と組み合わせて遺伝子送達で使用するいずれも、抗腫瘍作用を向上させることが示されている。さらに、これらの化合物のいずれかに対する抗体は、本明細書に論じられる抗癌剤を標的化するために使用され得る。
【0113】
現在調査中であるか、または使用中の免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼン及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号;Hui and Hashimoto,1998;Christodoulides et al.,1998)、サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、及びγ;IL-1、GM-CSF及びTNF(Bukowski et al.,1998;Davidson et al.,1998;Hellstrand et al.,1998)遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、p53(Qin et al.,1998;Austin-Ward and Villaseca,1998;米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号)、ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗ガングリオシドGM2、抗HER-2、抗p185(Pietras et al.,1998;Hanibuchi et al.,1998;米国特許第5,824,311号)である。1つ以上の抗癌療法が、本明細書に記載される遺伝子サイレンシング療法で使用されてもよいことが想定される。
【0114】
能動免疫療法では、抗原ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または自己もしくは同種異系腫瘍細胞組成物あるいは「ワクチン」が、一般に別個の細菌アジュバントと共に投与される(Ravindranath and Morton,1991;Morton et al.,1992;Mitchell et al.,1990;Mitchell et al.,1993)。
【0115】
養子免疫療法では、患者の循環リンパ球、または腫瘍浸潤リンパ球がインビトロで単離され、IL-2などのリンフォカインにより活性化されるか、または腫瘍壊死に関する遺伝子で形質導入され、再投与される(Rosenberg et al.,1988;1989)。
【0116】
D.外科手術
癌を有する人のおよそ60%が、予防、診断または病期判定、治癒、及び緩和のための外科手術を含む何らかの種類の外科手術を受けるであろう。根治目的の外科手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法及び/または代替療法などの他の療法と共に使用され得る癌治療である。
【0117】
根治目的の外科手術は、癌性組織の全てまたは一部が物理的に除去され、切除され、及び/または破壊される切除術を含む。腫瘍切除術とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を指す。腫瘍切除術に加えて、外科手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気外科手術、及び顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。本発明は、表在性の癌、前癌病変、または付随する正常組織量の除去と共に用いられてもよいことがさらに想定される。
【0118】
癌性細胞、組織、または腫瘍の全てまたは一部の切除時に、空洞が体内に形成され得る。治療は、追加の抗癌療法によるこの領域の灌流、直接注入、または局所塗布によって達成され得る。このような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、または7日毎に、あるいは1、2、3、4、及び5週毎に、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月毎に繰り返されてもよい。これらの治療はまた、様々な投与量のものであってもよい。
【0119】
E.他の薬剤
処置の治療有効性を改善するために、他の薬剤が本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用されてもよいことが想定される。これらの追加の薬剤には、細胞表面受容体ならびにギャップ結合の上方制御に影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制ならびに分化剤、細胞接着の阻害剤、過剰増殖細胞のアポトーシス誘導因子に対する感受性を増加させる薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。ギャップ結合の数を増やすことによる細胞間シグナル伝達における増加は、近接する過剰増殖細胞集団に及ぼす抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の実施形態では、細胞増殖抑制ならびに分化剤は、治療の抗過剰増殖有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の有効性を改善することが想定される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。抗体c225などの過剰増殖細胞のアポトーシスに対する感受性を増加させる他の薬剤が、治療有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用することができることもさらに想定される。
【0120】
IX.キット及び診断法
本発明の様々な態様では、治療薬及び/または他の治療薬ならびに送達用薬剤を含有する治療キットが想定される。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の療法を準備及び/または施すためのキットを想定する。このキットは、本発明の活性薬剤または有効薬剤(複数可)の投与で使用することができる試薬を含んでもよい。キットの試薬には、少なくとも1つの遺伝子発現の阻害剤、1つ以上の脂質成分、併用療法の1つ以上の抗癌成分、ならびに本発明の構成成分を調製、配合、及び/または投与するための、もしくは本発明の方法のうちの1つ以上のステップを実行するための試薬が含まれ得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、キットはまた、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブなどの、キットの構成成分と反応しないと思われる容器である好適な容器手段を含む。容器は、プラスチックまたはガラスなどの滅菌可能な材料から作製され得る。
【0122】
キットは、本方法の手順のステップを概説する指示書をさらに含んでもよく、この指示書は、本明細書に記載されるもの、または当業者に既知であるものと同じ手順に実質的に従うであろう。
【実施例】
【0123】
X.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技術が、本発明の実施において良好に機能する本発明者らによって見出された技術を表し、したがってその実施の好ましい様式を構成すると見なされ得ることは、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に鑑みて、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が依然として得られることを認識するべきである。
【0124】
実施例1-リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の製造方法
リポソームp-エトキシアンチセンス製剤は、2つのcGMP製品から構成され。これら双方ともにFDAに承認されたリリース基準によるFDAが要求する分析証明書を有する。原材料、溶媒、及び完成製剤が本明細書で記載される。製造時には、製剤は、以下の材料を含む琥珀色または白色の凍結乾燥結晶もしくは粉末である:オリゴヌクレオチド(例えば、p-エトキシアンチセンス原薬)、中性脂質(例えば、DOPC)、及び界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)。患者への投与のための準備において、通常生理食塩水がバイアルに添加され、この時点で、p-エトキシアンチセンスがその内部に組み込まれて、リポソームが形成される。
【0125】
p-エトキシアンチセンス原薬。最終製品の特定の物性(例えば、溶解度及び疎水性、これらは、その後に、生理食塩水中の原薬溶解度、オリゴのリポソームへの組み込み、及びリポソームの粒径に影響を及ぼす)は、p-エトキシアンチセンス原薬の製造中に、予め決められたp-エトキシ及びホスホジエステルアミダイト原材料ミックスを用いて限定することができる。p-エトキシ骨格基の損失は、オリゴヌクレオチドの製造中にランダムに起こり、これらの結合においてホスホジエステル結合をもたらすが、この損失は、オリゴヌクレオチド中のp-エトキシ:ホスホジエステル骨格結合の好ましい比を生じさせない場合がある。この場合、p-エトキシ及びホスホジエステルアミダイト原材料ミックスは、p-エトキシ骨格の欠失の期待値を補い、したがって、所望の割合を有するオリゴヌクレオチドを生成する。オリゴヌクレオチドの骨格中のp-エトキシ分子の数の増加は、この分子をより疎水性にし(これは、より大きなリポソーム粒子をもたらす、表1)、低い極性にし、かつ溶解性を低くする(表2)。電荷中性の疎水性p-エトキシ原薬の試験方法には、オリゴヌクレオチド長の分布を決定するための質量分析法及び原薬の溶解度を決定するためのアッセイが含まれ、このアッセイは、溶解度のための実用的な目的では、生理食塩水中で再構成された原薬の目視検査である。より多くのp-エトキシ骨格結合に起因してオリゴヌクレオチドがより溶けにくくなると、再構成溶液は、より白くなり、ついには疎水性が高くなりすぎるために粒子状物質が形成される。
【表1】
a.このロットは、難溶性のために、具体的には、再構成溶液中のアンチセンス粒子のために廃棄された。
b.このロットは、20mLのバイアル中、2mgのアンチセンスと共に、より低いDMSO及びtBA体積を有し、これは、リポソーム増大へのさらなる成分を付加した。
c.このロットは、それが粒径リリース規格に達しなかったために、リリースされなかった。
【表2-1】
【表2-2】
a.このロットは、難溶性のために、具体的には、再構成溶液中のアンチセンス粒子のために廃棄された。
b.このロットは、20mLのバイアル中、2mgのアンチセンスと共に、より低いDMSO及びtBA体積を有し、これは、リポソーム増大へのさらなる成分を付加した。
c.このロットは、それが粒径リリース規格に達しなかったために、リリースされなかった。
【0126】
リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の配合、濾過、及び凍結乾燥。1グラム(1g)のpEオリゴを、DMSO中に、DMSO1mL当たり10mgのオリゴヌクレオチドの割合で溶解する。次に、DOPCを、tert-ブチルアルコールに、tert-ブチルアルコール1719mL当たり1gのDOPCの割合で添加する。オリゴ及びDOPCを、DOPC2.67g当たり1gのオリゴヌクレオチドの割合で合わせて混合する。次いで、ポリソルベート20の0.835%(体積/体積)溶液20mLをこの混合物に添加して、0.039mg/mLの最終濃度をもたらす。この溶液を、凍結乾燥用のガラスバイアルに分配する前に、滅菌フィルターを通過させる。
【0127】
リポソーム粒径に及ぼす界面活性剤の効果を、界面活性剤の量を滴定することによって決定した(表3)。ポリソルベート20の不在下では、粒子のわずか2.8%が300nm以下の直径を有した。1倍のポリソルベート20(総リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の約5%)の存在下では、粒子の12.5%が300nm以下の直径を有した。3倍~10倍のポリソルベート20を添加することによって、粒子のおよそ20%が300nm以下の直径を有した。したがって、界面活性剤の1倍から3倍までの増加は、粒径の減少をもたらす。
【表3】
【0128】
投与のためのリポソームp-エトキシアンチセンス製剤の調製。凍結乾燥された調製物を、10~5000μMの最終オリゴ濃度で、通常生理食塩水(0.9%/10mMのNaCl)を用いて水和した。リポソーム-p-エトキシオリゴを、手振盪により混合した。
【0129】
実施例2-リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の試験方法
製造された製剤の目視検査:製造後に、製剤を含有する試料バイアルを選択して、目視検査を行う。液体が不在であることは必須条件であり、バイアルの底部に琥珀色の結晶がある場合は受け入れられ、最良結果である白色の凝集粉末または外観まで受け入れが広げられる。白色の外観は、良好な乾燥プロセスを示唆すると共に、高い表面積対質量比は、使用のための再構成への大きな助けとなる。
【0130】
患者IVへの準備が整った再構成薬の目視検査:通常生理食塩水を、製造されたリポソームp-エトキシアンチセンス製剤を含有するバイアルに添加し、振盪して、薬物結晶または粉末が完全に溶解された状態の溶液に再構成する。3つの主要な観察が行われる:1)その結晶または粉末が完全に溶解されていること、2)不溶性物質の白色塊が無いこと、及び3)外観が乳白色であるか、またはスキムミルクに似た外観であることである。再構成液の外観の青みが増すほど、より良好であり、これは、青色スペクトルの光を反射するより小さいリポソームの粒径を示しているためである。
【0131】
質量分析法:質量分析法(mass spec)は、試料中の様々な質量のプロファイルを表示するために用いられる。p-エトキシアンチセンス物質が生成されると、質量分析法が試料で行われる。この結果は、「x」軸から右に向かって増加する質量、及び上向きに増加する「y」軸上の相対質量強度を有するグリッド上に存在する物質のピークを示す。試料からのプロファイルが分析され、p-エトキシ試料中のp-エトキシ骨格の相対量を決定し、ピークのプロファイルが(右端から始まり)、p-エトキシ結合から構成される全ての骨格を有する完全長物質を表し、左に移動する次のピークは、p-エトキシ欠失を有する1つの骨格を備えた完全長(したがって、エチルは外され、その結果、正常なホスホジエステル骨格結合となる)を表し、及びこのように続くことが分かる。右にシフトした質量分析パターンは、より多くのp-エトキシ骨格を有する、したがって、より疎水性であり、溶解しにくい特性を有するp-エトキシ試料を表し、同様に、左にシフトしたパターンは、反対の特性を有する試料を表す。試料の質量分析チャートの検査は、製造中の濾過が、濾過された製剤中に存在するオリゴヌクレオチド組成物に及ぼすいずれかの有害作用が生じているかどうかを決定するために使用することもできる。
【0132】
UV試験:紫外線試験を用いて、試料中に存在するオリゴヌクレオチドの質量を決定する。オリゴヌクレオチドは、260ナノメートルの範囲の光を吸収する。その結果、完成された再構成製剤のUV試験は、製剤のバイアル中のオリゴヌクレオチド原薬の量の決定における方法として使用されるようになった。製造開発及び技術革新の面において、UV試験は、溶液中のより少ないオリゴヌクレオチド、したがってより低いUV読み取り値をもたらす、製造中の濾過の間に遭遇する問題またはp-エトキシアンチセンス原薬の不良な溶解度があるかどうかを判定するために使用された。本方法は、検証され、最終製品リリース試験の一部に恐らくなるであろう。
【0133】
リポソームの粒径:完成製剤のバイアルを再構成して、リポソームの粒径について試験する。結果は、多くの場合、ほぼ、中心点、境界値及び平均値を有するおおよその正規分布であるか、または大部分の粒子及び二次粒子形成効果から生じたより小さなリポソーム粒子のより小さな二次ピークのおおよその正規分布である。リポソーム粒子があまりに大きすぎないことが重要であり、これが、患者において有害作用を生じ得るためである(例えば、肺のより小さい血管における血流の問題を生じる)。その結果、製剤リリース基準は、粒径試験が、リポソームの90%が約5ミクロンまたはそれより小さいサイズであることを示すことを含む。加えて、より小さなリポソームが好ましく、なぜなら、これらが細胞へのより良好な取込みを有すると思われるためであり、2番目には、より小さなリポソームが、血管孔を貫通することができ、それによって、リポソームが腫瘍の内部に貫通することを可能にし、リポソームp-エトキシアンチセンス製剤の治療有効性を増加させるためである。
【化1】
【0134】
本明細書に開示及び主張された方法の全ては、本開示に照らして過度の実験なしに行われ、かつ実行され得る。本発明の組成物及び方法が、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、変更例が、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本方法に、及び本明細書に記載された方法の工程で、もしくは一連の工程で適用されてもよいことが当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方で関連したある特定の薬剤が、同一または同様な結果が得られる限り、本発明に記載された薬剤に代用され得ることは明らかであろう。当業者に明らかな全てのこのような同様の代用品及び変形例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内にあると見なされる。
参考文献
以下の参考文献は、これらが本明細書に記載されたものに対して例示の手順または他の詳細の補足を提供する限りにおいて、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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