(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】樹脂チューブの搬送装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20240221BHJP
B65G 47/91 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B65G47/14 K
B65G47/91 C
(21)【出願番号】P 2019001905
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 広梓
(72)【発明者】
【氏名】善木 智義
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-344062(JP,A)
【文献】特開2002-102960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂チューブが接する載置面を有している載置部と、
前記樹脂チューブを吸引する吸引部と、を有している樹脂チューブの搬送装置であって、
前記載置面は、水平面に対して傾斜している第1傾斜面を有しており、
前記吸引部は、前記第1傾斜面上または該第1傾斜面よりも上側に配置されており、
前記吸引部の下部に、吸引口が設けられており、
前記吸引部は、前記第1傾斜面に沿って前記第1傾斜面と平行な方向に移動可能であることを特徴とする樹脂チューブの搬送装置。
【請求項2】
前記吸引部は、前記第1傾斜面と対向している第1外側面を有している請求項1に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面と前記第1外側面が平行である請求項2に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項4】
前記第1傾斜面と前記第1外側面が当接している請求項2または3に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項5】
前記吸引口は、前記吸引部の前記第1外側面以外の面に形成されている請求項2~4のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項6】
前記載置面は、前記第1傾斜面と対向し、かつ前記第1傾斜面に対して45度以上145度以下の角度で傾斜している第2傾斜面を有しており、
前記吸引部は、前記第2傾斜面と対向しており、前記第1外側面に対して傾いている第2外側面をさらに有しており、前記吸引口が前記第2外側面に形成されている請求項2~5のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項7】
前記載置面が、前記第1傾斜面と対向し、かつ前記第1傾斜面に対して45度以上145度以下の角度で傾斜している第2傾斜面を有しており、
前記吸引部は、前記第2傾斜面と対向しており、前記第1外側面に対して傾いている第2外側面と、前記第1外側面および前記第2外側面と隣接しており、かつ前記第1外側面および前記第2外側面と非平行な第3外側面を有しており、前記吸引口が前記第3外側面に形成されている請求項2~5のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項8】
前記第1外側面と前記第2外側面がなす角度は30度以上150度以下である請求項6または7に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項9】
前記吸引部は多面体構造である請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項10】
前記吸引口は、前記樹脂チューブの長手方向に沿って延在している請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項11】
前記吸引部に複数の前記吸引口が形成されており、該複数の吸引口が前記樹脂チューブ
の長手方向に離間して配置されている請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項12】
前記複数の吸引口は、吸気装置と排気装置の両方に接続されており、吸気と排気の切り替えが可能である請求項11に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項13】
前記第1傾斜面は、前記水平面に対して5度以上45度以下の角度で傾斜している請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項14】
さらに、前記吸引部に接続されており、前記吸引部を前記第1傾斜面に沿って移動させる搬送部を有する請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項15】
前記搬送部は、前記第1傾斜面の高さ方向に駆動する1軸以上のアクチュエータを含む請求項14に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項16】
前記吸引部に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部と、
前記センサ部および前記搬送部に接続されており、前記センサ部で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに前記搬送部の移動を制御する制御部と、を有している請求項14または15に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項17】
前記載置部は、前記水平面と垂直な上下方向と、該上下方向と垂直な長手方向と、前記上下方向および前記長手方向と垂直な短手方向とを有し、
前記載置部の前記長手方向と前記樹脂チューブの長手方向が同じである請求項1~16のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項18】
前記載置部の前記長手方向と垂直な断面において、前記樹脂チューブの外径は前記吸引口の径よりも大きい請求項17に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項19】
前記吸引部で前記樹脂チューブを吸引しながら、前記吸引部を前記第1傾斜面に沿って上方に移動させることで前記樹脂チューブが引きずり上げられる請求項1~18のいずれか一項に記載の樹脂チューブの搬送装置。
【請求項20】
樹脂チューブが接する載置面を有している載置部と、前記樹脂チューブを吸引する吸引部と、を有しており、前記載置面は、水平面に対して傾斜している第1傾斜面を有しており、前記吸引部は、前記第1傾斜面上または該第1傾斜面よりも上側に配置されており、
前記吸引部の下部に、吸引口が設けられている樹脂チューブの搬送装置の作動方法であって、
前記吸引部で前記樹脂チューブを吸引しながら、前記吸引部を前記第1傾斜面に沿って前記第1傾斜面と平行な方向かつ上方に移動させるステップを有することを特徴とする樹脂チューブの搬送装置の作動方法。
【請求項21】
さらに、前記樹脂チューブの搬送装置は、前記吸引部に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部と、前記吸引部に接続されており、前記吸引部を前記第1傾斜面に沿って移動させる搬送部と、前記センサ部および前記搬送部に接続されており、前記センサ部で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに前記搬送部の移動を制御する制御部とを有し、
前記樹脂チューブの搬送装置の作動方法は、前記吸引部を、吸引状態で前記第1傾斜面に沿って下方に移動させるステップをさらに有し、
前記吸引部を下方に移動させるステップにおいて、前記センサ部が前記吸引部の吸引圧力が基準値を超えたことを検出した場合、前記制御部が前記吸引部の進行方向を逆転させて前記吸引部を前記第1傾斜面に沿って前記第1傾斜面と平行な方向かつ上方に移動させるステップに移行する請求項20に記載の樹脂チューブの搬送装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂チューブ等の長尺物を搬送するための装置とその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺物を次工程に搬送する工程では、作業者が指でつまんで1本ずつ次工程の装置に供給したり、載置された複数本の長尺物が絡まらないように作業者が整列させた後で特定の1本を取り出してから次工程の装置に供給したり、あるいは特許文献1~4に開示されているような装置を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-113843号公報
【文献】特開2002-102960号公報
【文献】特開2008-183713号公報
【文献】実開平4-22415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業者による長尺物の次工程の搬送作業、複数本の長尺物の載置作業、または長尺物の絡まり解除作業は、長尺物の大量生産や大量加工には適していなかった。また、特許文献1~4に開示されている装置は、複数本の長尺物から1本を取り出すための機構が開示されているが、まとめて保持してしまうおそれや機構が複雑になるおそれがあった。特に、カテーテル用の樹脂チューブのような外径が小さい長尺物の場合には1本ずつ保持することが難しかった。そこで、本発明は長尺物を1本ずつ保持して次工程に搬送することができる搬送装置とその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の長尺物の搬送装置の一実施態様は、長尺物が接する載置面を有している載置部と、長尺物を吸引する吸引部と、を有している長尺物の搬送装置であって、載置面は、水平面に対して傾斜している第1傾斜面を有しており、吸引部は、第1傾斜面上または第1傾斜面よりも上側に配置されており、吸引部の下部に、吸引口が設けられており、吸引部は、第1傾斜面に沿って移動可能であることを特徴とする。このように載置部と吸引部を構成することにより、載置部に置かれた長尺物を吸引部で吸引しながら吸引部を第1傾斜面に沿って上方に移動させることで長尺物を引きずり上げることができる。このとき、吸引部に吸引されている1本の長尺物以外は第1傾斜面の傾斜により落下するため、載置された複数本の長尺物の中から1本をピックアップしやすくなる。
【0006】
吸引部は、第1傾斜面と対向している第1外側面を有していることが好ましい。また、第1傾斜面と第1外側面が平行であってもよく、第1傾斜面と第1外側面が当接していてもよい。
【0007】
吸引口は、吸引部の第1外側面以外の面に形成されていることが好ましい。
【0008】
載置面は、第1傾斜面と対向し、かつ第1傾斜面に対して45度以上145度以下の角度で傾斜している第2傾斜面を有しており、吸引部は、第2傾斜面と対向しており、第1外側面に対して傾いている第2外側面をさらに有しており、吸引口が第2外側面に形成されていることが好ましい。
【0009】
載置面が、第1傾斜面と対向し、かつ第1傾斜面に対して45度以上145度以下の角度で傾斜している第2傾斜面を有しており、吸引部は、第2傾斜面と対向しており、第1外側面に対して傾いている第2外側面と、第1外側面および第2外側面と隣接しており、かつ第1外側面および第2外側面と非平行な第3外側面を有しており、吸引口が第3外側面に形成されていることが好ましい。
【0010】
第1外側面と第2外側面がなす角度は30度以上150度以下であることが好ましい。
【0011】
吸引部は多面体構造であることが好ましい。
【0012】
吸引口は、長尺物の長手方向に沿って延在していることが好ましい。また、吸引部に複数の吸引口が形成されており、複数の吸引口が長尺物の長手方向に離間して配置されていることが好ましい。
【0013】
複数の吸引口は、吸気装置と排気装置の両方に接続されており、吸気と排気の切り替えが可能であることが好ましい。
【0014】
第1傾斜面は、水平面に対して5度以上45度以下の角度で傾斜していることが好ましい。
【0015】
上記搬送装置は、さらに、吸引部に接続されており、吸引部を第1傾斜面に沿って移動させる搬送部を有することが好ましく、搬送部は、第1傾斜面の高さ方向に駆動する1軸以上のアクチュエータを含むことが好ましい。
【0016】
上記搬送装置は、吸引部に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部と、センサ部および搬送部に接続されており、センサ部で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに搬送部の移動を制御する制御部と、を有していることが好ましい。
【0017】
載置部は、水平面と垂直な上下方向と、該上下方向と垂直な長手方向と、上下方向および長手方向と垂直な短手方向と、を有し、載置部の長手方向と長尺物の長手方向が同じであることが好ましい。
【0018】
前記載置部の前記長手方向と垂直な断面において、前記長尺物の外径は前記吸引口の径よりも大きいことが好ましい。
【0019】
本発明の長尺物の搬送装置の作動方法の一実施態様は、長尺物が接する載置面を有している載置部と、長尺物を吸引する吸引部と、を有しており、載置面は、水平面に対して傾斜している第1傾斜面を有しており、吸引部は、第1傾斜面上または第1傾斜面よりも上側に配置されており、吸引部の下部に、吸引口が設けられている長尺物の搬送装置の作動方法であって、吸引部で長尺物を吸引しながら、吸引部を第1傾斜面に沿って上方に移動させるステップを有することを特徴とする。上記作動方法が、吸引部で長尺物を吸引しながら吸引部を第1傾斜面に沿って上方に移動させるステップを有していることにより、長尺物を引きずり上げることができる。このとき、吸引部に吸引されている1本の長尺物以外は第1傾斜面の傾斜により落下するため、載置された複数本の長尺物の中から1本をピックアップしやすくなる。
【0020】
上記作動方法において、さらに、搬送装置は、吸引部に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部と、吸引部に接続されており、吸引部を第1傾斜面に沿って移動させる搬送部と、センサ部および搬送部に接続されており、センサ部で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに搬送部の移動を制御する制御部とを有し、吸引部を、吸引状態で第1傾斜面に沿って下方に移動させるステップと、吸引部で長尺物を吸引しながら、吸引部を第1傾斜面に沿って上方に移動させるステップと、を有し、吸引部を下方に移動させるステップにおいて、センサ部が吸引部の吸引圧力が基準値を超えたことを検出した場合、制御部が吸引部の進行方向を逆転させ第1傾斜面に沿って上方に移動させるステップに移行することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、載置部に置かれた長尺物を吸引部で吸引しながら吸引部を第1傾斜面に沿って上方に移動させることで1本の長尺物を引きずり上げることができる。このとき、吸引部に吸引されている1本の長尺物以外は第1傾斜面の傾斜により落下するため、載置された複数本の長尺物の中から1本をピックアップしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置を含む加工機の側面図を表す。
【
図2】
図1に示した搬送装置を拡大した側面図を表す。
【
図3】
図1に示した搬送装置を拡大した側面図を表す。
【
図4】
図1に示した搬送装置を第2傾斜面側から第1傾斜面側に向かって見た模式図を表す。
【
図6】
図4に示した搬送装置の模式図の変形例を表す。
【
図8】
図4に示した搬送装置の模式図の変形例を表す。
【
図9】
図2に示した搬送装置の側面図の変形例を表す。
【
図10】
図2に示した搬送装置の側面図の他の変形例を表す。
【
図11】
図2に示した搬送装置の側面図のさらに他の変形例を表す。
【
図12】
図2に示した搬送装置の側面図のさらに他の変形例を表す。
【
図13】
図2に示した搬送装置の側面図のさらに他の変形例を表す。
【
図14】本発明の一実施形態に係る搬送装置のブロック図を表す。
【
図15】本発明の実施の形態1に係る搬送装置の作動方法を示すフロー図を表す。
【
図16】本発明の実施の形態2に係る搬送装置の作動方法を示すフロー図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0024】
1.長尺物の搬送装置
本発明において、長尺物は中実または中空状であって長手方向に延在しているものであり、例えばパイプ、ロッド、チューブと称されるものが含まれる。長尺物は、長手方向に垂直な断面の外周の長さと長手方向の長さを比べた場合、長手方向の長さの方が長いものであってもよい。長尺物の長さは特に限定されず、例えば10cm以上、20cm以上、または30cm以上であってもよいが、吸引しやすくするためには200cm以下、150cm以下、または100cm以下であることが好ましい。長尺物の断面形状は特に限定されず、例えば円形状、楕円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状にすることができる。吸引部での吸引操作を行いやすくするために、長尺物の外径は、例えば0.4mm以上、0.8mm以上、または1.2mm以上であることが好ましく、6.0mm以下、5.0mm以下、または4.0mm以下であることが好ましい。
【0025】
長尺物は可撓性を有していることが好ましい。これにより吸引部で長尺物を吸引しやすくなる。また、形状保持のため、長尺物は弾性を有していることが好ましい。長尺物を構成する材料は、樹脂または金属とすることができる。長尺物を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。長尺物を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。長尺物としては金属で構成されている長尺体の表面に樹脂が被覆されたものも含まれる。中でも、長尺物は、樹脂チューブであることが好ましく、フッ素系樹脂チューブまたはポリアミド系樹脂であることがより好ましい。長尺物は、工業用または医療用の樹脂チューブであることが好ましく、医療用の樹脂チューブであることがより好ましく、バルーンカテーテル用の樹脂チューブであることがさらに好ましい。
【0026】
本発明において長尺物の搬送装置は、次工程の装置に長尺物を1本ずつ供給するために長尺物を搬送する装置であり、以下では単に「搬送装置」と称することがある。
図1~
図5を参照して長尺物の搬送装置の基本構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置1を含むシステム100の側面図を表し、
図2~
図3は、
図1に示した搬送装置1を拡大した側面図を表し、
図4は、
図1に示した搬送装置1を第2傾斜面12側から第1傾斜面11側に向かって見た模式図を表し、
図5は、
図4に示した吸引部20の斜視図を表す。
図1において、搬送装置1は一点鎖線で囲まれている。搬送装置1は、載置部5と、吸引部20と、を有している。なお、システム100は、各種工程を実施するために、少なくとも搬送装置1を含む複数の装置が組み合わされて構成されるものである。
【0027】
載置部5は、次工程の装置への供給前に長尺物50を載置する部分であり、長尺物50が接する載置面10を有している。載置面10は、水平面30に対して傾斜している第1傾斜面11を有している。吸引部20は、長尺物50を吸引する部分であり、第1傾斜面11上または第1傾斜面11よりも上側に配置されている。吸引部20の下部に吸引口25が設けられており、吸引部20は第1傾斜面11に沿って移動可能である。このように載置部5と吸引部20を構成することにより、
図2に示した吸引部20を、
図3に示すように載置部5に置かれた長尺物50に近接させた後、吸引部20で長尺物50を吸引しながら吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させることで長尺物50を引きずり上げることができる。このとき、吸引部20に吸引されている1本の長尺物50以外は第1傾斜面11の傾斜により落下するため、載置された複数本の長尺物50の中から1本をピックアップしやすくなる。
図1では水平面30を二点鎖線で示している。吸引部20による長尺物の吸引は、真空吸引であることが好ましい。ここで真空は、JIS Z 8126-1:1999 真空技術-用語-第1部:一般用語に記載されているように、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。
【0028】
載置部5は、複数本の長尺物50を載置できる程度の大きさを有していればよく、例えば
図1に示すように水平面30に対して傾斜して配置されている板材15の上側面15aと断面V字状に曲げ加工されている別の板材16の一方主面16aが当接するように配置することで谷状に形成することができる。載置部5は、長尺物の長手方向の全体が載置されてもよく、長手方向中央部など、長尺物の一部が載置されてもよい。図示していないが、載置部5は1枚の板材が断面V字状に曲げ加工され形成されてもよく、2枚の板材が断面V字状に接合されて谷状に形成されていてもよく、また、縁部が高くなっているトレイ等の箱状に形成されていてもよい。載置部5をこのような形状とすることにより、複数本の長尺物50をひとかたまりに収まりよく載置することができる。
【0029】
載置部5の形状は特に限定されないが、載置部5は、水平面30と垂直な上下方向zと、上下方向zと垂直な長手方向xと、上下方向zおよび長手方向xと垂直な短手方向yと、を有し、載置部5の長手方向xと長尺物50の長手方向pが同じであることが好ましい。これにより、長尺物50が載置部5内に収まりやすくなる。
【0030】
載置部5は、上下方向zに積層された長尺物50の山が崩れても長尺物50がはみ出ないような高さを有していることが好ましく、例えば、上下方向zにおける載置部5の高さは、長尺物50の外径の10倍以上、20倍以上、または30倍以上の高さとすることができ、載置される長尺物50の本数に応じて1000倍以下、800倍以下、または500倍以下とすることも許容される。
【0031】
載置部5に配置される長尺物50の数は、例えば50本以上、100本以上、300本とすることができ、2000本以下、1500本以下、または1000本以下とすることもできる。
【0032】
載置部5の載置面10の少なくとも一部が曲面であってもよいが、第1傾斜面11は平面であることが好ましい。これにより、第1傾斜面11に沿って吸引部20を移動させやすくなる。図示していないが、第2傾斜面12は曲面であってもよく、平面であってもよい。載置部5を形成しやすくする観点からは、載置部5の載置面10のすべてが平面であることが好ましい。
【0033】
搬送対象外の長尺物50を素早く落下させる観点からは、第1傾斜面11は、水平面30に対して5度以上の角度で傾斜していることが好ましく、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは15度以上の角度で傾斜している。また、長尺物50の落下による衝撃で載置されている長尺物50が傷付かないように、第1傾斜面11は、水平面30に対して45度以下の角度で傾斜していることが好ましく、より好ましくは40度以下、さらに好ましくは35度以下の角度で傾斜している。
【0034】
図示していないが、載置部5の載置面10は水平面30と平行な面を有していてもよい。これにより水平面30と平行な載置面10には長尺物50が安定して載置される。図示していないが、載置部5は、水平面30と垂直な載置面10を有していてもよい。水平面30と垂直な載置面10により、上下方向zに積層された長尺物50の山が崩れても長尺物50が載置部5からはみ出にくくなる。
【0035】
図1~
図3に示すように、載置面10は、第1傾斜面11と対向し、かつ第1傾斜面11に対して45度以上145度以下の角度で傾斜している第2傾斜面12を有していてもよい。その場合、第1傾斜面11と第2傾斜面12が接していることが好ましい。
図1~
図2では、載置部5の載置面10が第1傾斜面11と第2傾斜面12を有しており、2つの傾斜面が互いに一辺を共有するようにV字状に配置されている例を示している。このように第2傾斜面12を設けることにより、第1傾斜面11と第2傾斜面12によって形成された谷の底に長尺物50を安定して配置することができる。
【0036】
図2~
図3に示すように、吸引部20は、第1傾斜面11と対向している第1外側面21を有していることが好ましい。これにより、第1傾斜面11と第1外側面21の隙間dが小さくなりやすいため吸引に好ましい状態を形成しやすくなり、より低い吸引圧力で効率よく長尺物50を吸引することができる。なお、第1外側面21は平面であることが好ましい。吸引部20の吸引が真空吸引である場合、このような構成とすることにより、隙間dが小さくなり、吸引部20と長尺物50の間に、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間(真空状態)を形成しやすくなる。
【0037】
第1傾斜面11と吸引部20の最短距離(
図2~
図3では、第1傾斜面11と第1外側面21の隙間d)は、長尺物50の外径よりも小さいことが好ましい。これにより第1傾斜面11と吸引部20の間に長尺物50が入り込みにくくなるため、吸引を行いやすくなる。
【0038】
第1傾斜面11と第1外側面21が平行であることが好ましい。これにより、第1外側面21を第1傾斜面11に沿って平行移動させることで長尺物50を引きずり上げることができるため、吸引部20の移動経路の複雑化を防ぐことができる。また、第1傾斜面11と吸引部20の最短距離(第1傾斜面11と第1外側面21の隙間d)を小さくすることができるため吸引に好ましい状態を形成しやすくなる。吸引部20の吸引が真空吸引である場合、このような構成とすることにより、真空状態を形成しやすくなる。
【0039】
吸引口25が設けられる位置は、吸引部20の下部であればよい。ここで吸引部20の上部は、吸引部20を上下方向zにおいて二等分割したときに上側に配置される部分であり、下部は、下側に配置される部分である。
【0040】
吸引部20は、第2傾斜面12と対向しており、第1外側面21に対して傾いている第2外側面22をさらに有していてもよい。これにより、吸引部20を長尺物50に近接させるときに吸引対象の長尺物50を視認しやすくなる。また、後述するように吸引口25を第2外側面22に形成することができるようになるため、長尺物50と吸引口25をより近接させることができ、低い吸引圧力で効率よく長尺物50を吸引できるようになる。なお、第2外側面22は曲面でもよいが、平面であることが好ましい。
【0041】
吸引部20上に長尺物50が乗り上げることを防ぐために、第1外側面21と第2外側面22がなす角度は、30度以上であることが好ましく、40度以上であることがより好ましく、50度以上であることがさらに好ましい。また、吸引圧力の過度な増大を抑えるためには、第1外側面21と第2外側面22がなす角度は、150度以下であることが好ましく、140度以下であることがより好ましく、130度以下であることがさらに好ましい。
【0042】
吸引部20の形成を容易にするためには、吸引部20は多面体構造であることが好ましい。
図1~
図5では、吸引部20が多面体構造を有するブロックである例を示している。
【0043】
載置部5、吸引部20を構成する材料は特に限定されず、例えば、樹脂または金属、あるいは複合材料から構成することができる。複合材料としては炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂あるいは金属に樹脂をコートした材料などを用いることができる。
【0044】
図4に示すように、吸引口25は、長尺物50の長手方向pに沿って延在していることが好ましい。このように吸引口25を延在させることで、長尺物50の広範囲を吸引しやすくなる。図示していないが、吸引口25は、第1傾斜面11の傾斜方向qに沿って延在するように配置されていてもよい。
【0045】
図6は、
図4に示した搬送装置1の模式図の変形例であり、
図7は
図6に示した吸引部20の斜視図である。
図6に示すように、吸引部20に複数の吸引口25が形成されており、複数の吸引口25が長尺物50の長手方向pに離間して配置されていてもよい。このように複数の吸引口25を設けることでも長尺物50の広範囲を吸引することができる。図示していないが、複数の吸引口25は、第1傾斜面11の傾斜方向qに離間して配置されていてもよい。
【0046】
図6に示すように、吸引部20に複数の吸引口25が形成されており、一の吸引口25が吸気装置26に接続されて、他の吸引口25が排気装置27に接続されていてもよい。これにより、吸気と排気を同時に行うことで、一の吸引口25で長尺物50を吸引しながら、他の吸引口25で長尺物50の絡まりをほぐすことができる。
【0047】
長尺物50の長手方向pに離間するように第1吸引口、第2吸引口、第3吸引口が順に吸引部20に形成されている場合、第2吸引口が吸気装置に接続されており、第1吸引口と第3吸引口がそれぞれ排気装置27に接続されていることが好ましい。これにより長尺物50の長手方向pの中央寄りを吸引しながら、長手方向pの端部では吸引口25から排気されることにより長尺物50の絡まりをほぐすことができるため、1本の長尺物を吸引しやすくなる。
【0048】
図8は、
図6に示した搬送装置1の模式図の変形例である。
図8に示すように、複数の吸引口25は、吸気装置26と排気装置27の両方に接続されており、吸気と排気の切り替えが可能であることが好ましい。吸気と排気を交互に行うことにより、長尺物50の絡まりをほぐすことができる。
【0049】
図9~
図13を参照しながら吸引口25が設けられる位置の他の態様について説明する。
図9~
図13は、
図2に示した搬送装置1の側面図の変形例を表している。
図9に示すように、第1傾斜面11と第1外側面21が当接していることが好ましい。つまり、第1傾斜面11と第1外側面21の隙間dがないことが好ましい。これにより、吸引部20と長尺物50との間に吸引に好ましい状態を形成しやすくなるため、低い吸引圧力でも効率よく長尺物50を吸引することができる。吸引部20の吸引が真空吸引である場合、このような構成とすることにより、真空状態を形成しやすくなる。第1傾斜面11と第1外側面21が当接している場合、第1傾斜面11と第1外側面21の摩擦防止のため、第1傾斜面11と第1外側面21の少なくともいずれか一方に潤滑剤が塗布されていることが好ましい。
【0050】
吸引口25は、吸引部20の第1外側面21以外の面に形成されていることが好ましい。吸引口25を第1外側面21に形成する場合に比べて、長尺物50と吸引口25を近接させやすくなる。
【0051】
図2~
図3、
図9に示すように、吸引部20が、第2外側面22を有している場合、吸引口25は、第2外側面22に形成されていることが好ましい。これにより吸引対象の長尺物50を視認しやすいとともに、長尺物50と吸引口25を近接させやすくなる。
【0052】
図10に示すように、吸引部20は、第2傾斜面12と対向しており、第1外側面21に対して傾いている第2外側面22と、第1外側面21および第2外側面22と隣接しており、かつ第1外側面21および第2外側面22と非平行な第3外側面23を有していてもよい。その場合、吸引口25は、第3外側面23に形成されていることが好ましい。第2外側面22により吸引部20を長尺物50に近接させるときに吸引対象の長尺物50を視認しやすくしつつ、第3外側面23に吸引口25が形成されているため、長尺物50と吸引口25をより近接させることができ、一層低い吸引圧力で効率よく長尺物50を吸引できるようになる。なお、第3外側面23は曲面でもよいが、平面であることが好ましい。また、第3外側面23は、水平面に対して傾斜していることが好ましい。
【0053】
第3外側面23に長尺物50を近接させて、吸引圧力の過度な増大を抑えるためには、第1外側面21と第3外側面23がなす角度は、第1外側面21と第2外側面22がなす角度よりも大きいことが好ましい。例えば、第1外側面21と第3外側面23がなす角度は、60度以上、70度以上、または80度以上とすることができ、150度以下、140度以下、または130度以下とすることも許容される。
【0054】
図11に示すように、吸引口25は、第1外側面21に形成されていてもよい。その場合、吸引部20の第1外側面21と、第1傾斜面11は離間していることが好ましい。第1傾斜面11によって吸引口25が塞がれることがないため、吸引部20によって長尺物50を吸引することができる。
【0055】
図11に示すように、第1外側面21と第1傾斜面11を離間させるために、吸引部20には第1傾斜面11側に向かって突出している突起28が形成されていてもよい。突起28は、例えば、第1外側面21上に形成することができる。突起28は複数設けられていてもよく、突起28は長尺物50の長手方向pに離間して配置されていてもよい。第1傾斜面11と突起28の摩擦防止のため、突起28には潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0056】
図示していないが、吸引部20の下部に回転体が設けられていてもよい。回転体は、第1傾斜面11と対向するように配置されていることが好ましい。これにより、第1外側面21と第1傾斜面11を離間させつつ、回転体が回転することにより吸引部20を第1傾斜面11に沿って移動させやすくなる。回転体の回転軸方向は、長尺物50の長手方向pまたは載置部5の長手方向xと同じにすることができる。
【0057】
図2~
図3に示すように、吸引口25の下端は、吸引部20の下端を含む位置に存在していてもよい。これにより、積層されている長尺物50のうち下方に配置されている長尺物50を吸引しやすくなる。他方、
図12に示すように、吸引口25の下端は、吸引部20の下端よりも上方に存在していてもよい。すなわち、第1外側面21と第2外側面22の下端が一致していてもよい。これにより、積層されている長尺物50の山を崩すことを防ぎながら長尺物50を吸引することができる。
【0058】
図13に示すように、吸引部20の下部に、吸引口25と連通している凹部29が設けられていることが好ましい。これにより、凹部29に長尺物50の少なくとも一部が入り込むことで、長尺物50が吸引口25により近接しやすくなり、より一層低い吸引圧力で効率よく長尺物50を吸引できるようになる。
【0059】
吸引部20が第1外側面21と第2外側面22と第3外側面23を有しており、第3外側面23に吸引口25が配置されており、第1外側面21の下端21aが第2外側面22の下端22aよりも下方に存在し、第1外側面21の下端21aが第3外側面23の下端23aよりも下方に存在することが好ましい。このように第1外側面21~第3外側面23を構成することにより吸引口25の下部に凹部29を形成することができる。
【0060】
長尺物50の長手方向pおよび第1傾斜面11の傾斜方向qと垂直な方向(
図13では方向rと示している)において、吸引部20の凹部29の最大長さLMは、長尺物50の外径よりも大きいことが好ましい。これにより凹部29に長尺物50が嵌まり込み、吸引部20で長尺物50を吸引しやすくなる。
【0061】
長尺物50の長手方向pおよび第1傾斜面11の傾斜方向qと垂直な方向rにおいて、吸引部20の凹部29の最大長さLMは、長尺物50の外径の25%以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上の大きさである。これにより凹部29に長尺物50の一部が配置されるようになり、吸引部20で長尺物50を吸引しやすくなる。
【0062】
載置部5の長手方向xと垂直な断面において、長尺物50の外径は吸引口25の径よりも大きいことが好ましい。また、長尺物50の長手方向pと垂直な断面(qr平面)において、長尺物50の外径は吸引口25の径よりも大きいことがより好ましい。このように長尺物50と吸引口25の大きさを設定することにより、吸引口25で長尺物50を吸引しやすくなる。
【0063】
図1および
図14を用いて、吸引部20の搬送機構について説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る搬送装置1のブロック図を表す。
図1および
図14に示すように、搬送装置1は、さらに、吸引部20に接続されており、吸引部20を第1傾斜面11に沿って移動させる搬送部31を有することが好ましい。これにより吸引部20を第1傾斜面11に沿って移動させることができる。例えば、搬送部31はレール32が形成されているフレーム33に支持されており、搬送部31がレール32上を移動するのに連動して吸引部20も傾斜方向qに移動するように構成することができる。図示していないが、搬送部31の一部が第1傾斜面11の高さ方向に伸縮してもよい。搬送部31は吸引部20の上部に接続固定されて、吸引部20を支持していることが好ましい。
【0064】
搬送部31は、第1傾斜面11の高さ方向に駆動する1軸以上のアクチュエータを含むことが好ましく、第1傾斜面11の高さ方向および傾斜方向qに駆動する2軸以上のアクチュエータを含むことがより好ましく、第1傾斜面11の高さ方向、傾斜方向q、高さ方向および傾斜方向qと垂直な方向に駆動する3軸のアクチュエータを含むことがさらに好ましい。このように搬送部31を構成することにより、ロボットハンドに吸引部20を取り付けることができるようになり、自由度の高い設計が可能となる。アクチュエータは、例えば、モータ、リニアガイド、ボールねじ、タイミングベルト・プーリ、スライダ、ラックアンドピニオンの機械要素を含む。
【0065】
図14に示すように搬送装置1は、吸引部20に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部34と搬送部31に接続されており、センサ部34で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに搬送部31の移動を制御する制御部35とを有していることが好ましい。このようにセンサ部34を設けることにより、適切な吸引圧力が付与されているかを監視することができる。また、制御部35によって吸引圧力が調整されるため、複数の長尺物50を吸引する、長尺物50を吸引し損ねる等の不具合を防止することができる。
【0066】
システム100には、
図1に示すように上側に入口36a、下側に出口36bが設けられている角筒状に形成されており、出口36bの開口面積が入口36aに比べて小さくなっているシューター36が設けられていてもよい。吸引部20で吸引された長尺物50は、第1傾斜面11に沿って引きずり上げられた後、シューター36内に入れられる。長尺物50がシューター36を通過することで、例えば次工程のコンベア37上の所望の位置に長尺物50を搬送することができる。
【0067】
吸引部20により吸引された長尺物50がシューター36内に確実に投入されるように、シューター36の入口の上方にはガイド38が設けられていてもよい。ガイド38は、水平面30に対して傾斜している面38aを有していることが好ましい。
【0068】
2.長尺物の搬送装置の作動方法
本発明の長尺物50の搬送装置1の作動方法の一実施態様は、長尺物50が接する載置面10を有している載置部5と、長尺物50を吸引する吸引部20と、を有しており、載置面10は、水平面30に対して傾斜している第1傾斜面11を有しており、吸引部20は、第1傾斜面11上または第1傾斜面11よりも上側に配置されており、吸引部20の下部に、吸引口25が設けられている長尺物50の搬送装置1の作動方法であって、吸引部20で長尺物50を吸引しながら、吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させるステップを有する。上記作動方法が、吸引部20で長尺物50を吸引しながら吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させるステップを有していることにより、長尺物50を引きずり上げることができる。このとき、吸引部20に吸引されている1本の長尺物50以外は第1傾斜面11の傾斜により落下するため、載置された複数本の長尺物50の中から1本をピックアップしやすくなる。吸引部20による長尺物の吸引は、真空吸引であることが好ましい。
【0069】
(実施の形態1)
図15を参照しながら上記作動方法の各ステップについて説明する。
図15は、本発明の実施の形態1に係る長尺物50の搬送装置1の作動方法を示すフロー図を表す。
【0070】
長尺物50が接する載置面10を有している載置部5と、長尺物50を吸引する吸引部20と、を有しており、載置面10は、水平面30に対して傾斜している第1傾斜面11を有しており、吸引部20は、第1傾斜面11上または第1傾斜面11よりも上側に配置されており、吸引部20の下部に、吸引口25が設けられている長尺物50の搬送装置1を準備する(ステップS1)。搬送装置1としては、「1.長尺物の搬送装置」で説明したものを用いることができる。
【0071】
載置部5に長尺物50を載置する(ステップS2)。載置部5への長尺物50の載置は、図示しない供給装置により行ってもよく、作業者が行ってもよい。長尺物50の本数は特に限定されないが、例えば100本以上まとめて載置することにより、搬送作業を効率よく行うことができる。
【0072】
吸引部20を第1傾斜面11に沿って下方に移動させる(ステップS3)。これにより、吸引部20の吸引口25が、載置部5に載置されている長尺物50に近接する。
【0073】
吸引部20で長尺物50を吸引しながら、吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させる(ステップS4)。
【0074】
吸引部20が所定位置に到着したら吸引を停止する(ステップS5)。所定位置とは、例えば、第1傾斜面11の外側やシューター36の上方に設定することができる。
【0075】
所定数の長尺物50の搬送が完了するまでステップS3~ステップS5を繰り返す。所定数の長尺物50の搬送の完了は、載置部5に載置されている長尺物50が所定の残数になったか否かに基づき判定することができる。
【0076】
(実施の形態2)
図16を用いて、搬送装置1がセンサ部34、搬送部31および制御部35を有している場合の作動方法について説明する。
図16は、実施の形態2に係る長尺物50の搬送装置1の作動方法を示すフロー図を表す。
【0077】
長尺物50が接する載置面10を有している載置部5と、長尺物50を吸引する吸引部20と、を有しており、載置面10は、水平面30に対して傾斜している第1傾斜面11を有しており、吸引部20は、第1傾斜面11上または第1傾斜面11よりも上側に配置されており、吸引部20の下部に、吸引口25が設けられている長尺物50の搬送装置1であって、吸引部20に接続されており、吸引圧力を監視するセンサ部34と、吸引部20に接続されており、吸引部20を第1傾斜面11に沿って移動させる搬送部31と、センサ部34および搬送部31に接続されており、センサ部34で検知した吸引圧力に基づき、次の吸引圧力を増減するとともに搬送部31の移動を制御する制御部35とを有する搬送装置1を準備する(ステップS11)。
【0078】
載置部5に長尺物50を載置する(ステップS12)。ステップS12はステップS2と同様に行うことができる。
【0079】
吸引部20を、吸引状態で第1傾斜面11に沿って下方に移動させる(ステップS13)。具体的には、搬送部31をレール32上で傾斜方向yに移動させることにより吸引部20を移動させることができる。これにより吸引部20の吸引口25を、載置部5に載置されている長尺物50に近接させることができる。吸引部20が吸引状態であるため、吸引口25が長尺物50に近接すると、吸引口25に長尺物50が引きつけられる。ステップS13~ステップS15ではセンサ部34において吸引部20の吸引圧力を検出することが好ましい。また、ステップS13の開始前からセンサ部34において吸引部20の吸引圧力を検出することが好ましい。
【0080】
吸引部20を下方に移動させるステップS13において、センサ部34が吸引部20の吸引圧力が基準値(第1の基準値)を超えたことを検出した場合、制御部35が吸引部20の進行方向を逆転させ、吸引部20で長尺物50を吸引しながら、吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させるステップS14に移行する。センサ部34では、圧力スイッチのオンオフを監視してもよく、吸引圧力の変化やその変化の有無を監視してもよい。
【0081】
吸引部20が所定位置に到着したら、吸引を停止する(ステップS15)。ステップS15はステップS5と同様に行うことができる。
【0082】
所定数の長尺物50の搬送が完了するまでステップS13~ステップS15を繰り返す。所定数の長尺物50の搬送の完了は、載置部5に載置されている長尺物50が所定の残数になったか否かに基づき判定することができる。
【0083】
図示していないが、吸引部20を下方に移動させるステップS13において、センサ部34が吸引部20の吸引圧力が、第1の基準値よりも低い第2の基準値以下であることを検出した場合、吸引部20での長尺物50の吸引を停止してもよい(ステップS16)。吸引圧力が第2の基準値以下である場合、複数の長尺物50を吸引している可能性があるため、吸引を再試行することが望ましい。
【0084】
ステップS16の後は、制御部35が吸引部20の進行方向を逆転させて、吸引部20を第1傾斜面11に沿って上方に移動させることが好ましい(ステップS17)。ステップS17において吸引部20の上方への移動距離は、ステップS14での移動距離よりも短いことが好ましい。ここで、吸引部20を上方に移動させるのは載置部5にある長尺物50の向きを変えるのに吸引部20を一旦退避させるためである。
【0085】
ステップS17の後は、載置部5に載置されている長尺物50を動かして長尺物50の向きを変えることが好ましい(ステップS18)。なお、ステップS18の後は、ステップS13に戻り、再度吸引を試みることが好ましい。
【0086】
図示していないが、吸引部20には、吸引されている長尺物50の本数を数える計数部が設けられていてもよい。その場合、ステップS13とステップS14の間において、計数部が吸引されている長尺物50が複数であると判定した場合、吸引部20での長尺物50の吸引を停止してもよい(ステップS19)。ステップS19の後は、ステップS17、ステップS18を順に行うことが好ましい。これにより、載置された複数本の長尺物50の中から1本のみを搬送することができる。
【0087】
図示していないが、計数部には、吸引されている長尺物50の本数を撮影するカメラが取り付けられていてもよい。その場合、ステップS19において、カメラによる自動判定、または作業者によるカメラ画像の確認結果により吸引されている長尺物50が複数であることを判定してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:長尺物の搬送装置
5:載置部
10:載置面
11:第1傾斜面
12:第2傾斜面
15、16:板材
20:吸引部
21:第1外側面
22:第2外側面
23:第3外側面
25:吸引口
26:吸気装置
27:排気装置
28:突起
29:凹部
30:水平面
31:搬送部
32:レール
33:フレーム
34:センサ部
35:制御部
36:シューター
37:コンベア
38:ガイド
50:長尺物
100:システム
d:第1傾斜面と第1外側面の隙間
p:長尺物の長手方向
q:第1傾斜面の傾斜方向
r:長尺物の長手方向および第1傾斜面の傾斜方向と垂直な方向
x:載置部の長手方向
y:載置部の短手方向
z:載置部の上下方向