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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20240221BHJP
【FI】
H01L31/04 570
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019072535
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020170815
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 守孝
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0247530(US,A1)
【文献】特開2013-206967(JP,A)
【文献】特開2001-111089(JP,A)
【文献】特開2009-043842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103811573(CN,A)
【文献】特開平10-012911(JP,A)
【文献】国際公開第2008/139611(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の太陽電池セルでそれぞれ構成された複数のセル群を備え、前記複数のセル群がそれぞれ電極配線によって接続された太陽電池モジュールであって、
前記複数のセル群のそれぞれにおいて前記複数の太陽電池セルが所定の列設方向に列設されており、
前記複数のセル群の隣り合う2つのセル群における前記電極配線間が導電性シート部材を介して接続され、
さらに、前記導電性シート部材上に、前記隣り合う2つセル群における前記電極配線間を接続する接続用電極配線が設けられており、
前記接続用電極配線は、前記列設方向に対して所定の傾斜角度で斜めに設けられていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池モジュールであって、
前記導電性シート部材は、前記列設方向に対して斜めに切り欠かれていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項3】
1又は複数の太陽電池セルでそれぞれ構成された複数のセル群を備え、前記複数のセル群がそれぞれ電極配線によって接続された太陽電池モジュールであって、
前記複数のセル群のそれぞれにおいて前記太陽電池セルが所定の列設方向に列設されており、
前記複数のセル群の隣り合う2つのセル群における前記電極配線間が前記列設方向に対して所定の傾斜角度で斜めに設けられた接続用電極配線を介して接続され、
前記接続用電極配線は、一端部が前記隣り合う2つのセル群のうちの一方のセル群における前記電極配線に接続され、かつ、他端部が前記隣り合う2つのセル群のうちの他方のセル群における前記電極配線に接続され、
前記接続用電極配線の前記他端部は、前記他方のセル群における前記電極配線の前記列設方向に直交する直交方向における前記一方のセル群側の端と前記一端とは反対側の端との間において前記一端及び前記他端から離れた位置であって前記一端から前記他端側に120mm以上離れない位置に接続されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項までの何れか1つに記載の太陽電池モジュールであって、
太陽電池モジュール本体が直角の角部及び直角以外の角度の角部を有する多角形状に形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般的に、1又は複数の太陽電池セルでそれぞれ構成された複数のセル群を備え、複数のセル群がそれぞれ電極配線(バスバー)によって接続されている。また、複数のセル群のそれぞれにおいて太陽電池セルが所定の列設方向にそれぞれ列設されている。また、太陽電池モジュールとして、例えば、太陽電池モジュール本体が直角の角部及び直角以外の角度の角部を有する多角形状(例えば五角形状、台形状や三角形状)に形成されているものもある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/173216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図27は、従来の五角形状の太陽電池モジュールMxを概略的に示す平面図である。
【0005】
従来の太陽電池モジュールMxは、図27に示すように、複数のストリングS(1)~S(n)(nは2以上の整数、n=3)が直列に接続されている。
【0006】
第1ストリングS(1)~第nストリングS(n)は、それぞれ、複数のセル群CG(1)~CG(m)を備えている。複数のセル群CG(1)~CG(m)は、1又は複数の太陽電池セルC(1,1)~C(1,jm)~C(m,1)~C(m,jm)(j1~jmは1以上の整数、m=2)が直列に接続されたものである。j1~jmの数は、それぞれのストリングS(1)~ストリングS(n)において異なっている。この例では、ストリングS(1)では、j1、jm(=j2)が共に5であり、ストリングS(2)では、j1が4、jm(=j2)が3であり、ストリングS(n)〔=S(3)〕では、j1が2、jm(=j2)が1である。そして、太陽電池モジュールMxは、マージン部を構成するカバー部CVを設けることで、五角形状の外形を構成している。
【0007】
太陽電池モジュールMxでは、複数のセル群CG(1)~CG(m)のそれぞれにおいて太陽電池セルC(1,1)~C(m,jm)が所定の列設方向Xに列設されている。第1ストリングS(1)~第nストリングS(n)は、列設方向Xに直交する直交方向Yに並設されている。
【0008】
第1ストリングS(1)において、第1セル群CG(1)の一端部は第1電極配線L1に、他端部は第2電極配線L2に接続されている。第2セル群CG(2)の一端部は第2電極配線L2に、他端部は第3電極配線L3に接続されている。
【0009】
第2ストリングS(2)において、第1セル群CG(1)の一端部は第3電極配線L3に、他端部は第4電極配線L4に接続されている。第4電極配線L4は、列設方向Xに平行に設けられた接続用電極配線Lwを介して第5電極配線L5に接続されている。第2セル群CG(2)の一端部は第5電極配線L5に、他端部は第6電極配線L6に接続されている。
【0010】
また、第nストリングS(n)〔=第3ストリングS(2)〕において、第1セル群CG(1)の一端部は第6電極配線L6に、他端部は第7電極配線L7に接続されている。第7電極配線L7は、列設方向Xに平行に設けられた接続用電極配線Lwを介して第8電極配線L8に接続されている。第mセル群CG(m)〔=第2セル群CG(2)〕の一端部は第8電極配線L8に、他端部は第9電極配線L9に接続されている。
【0011】
第1電極配線L1から第9電極配線L9は、何れも直交方向Yに沿うように設けられている。
【0012】
このような従来の太陽電池モジュールMxにおいては、列設方向Xに平行に設けられた接続用電極配線Lwの抵抗が大きくなり、それだけ出力損失(出力ロス)が大きくなる。
【0013】
この点に関し、特許文献1には、出力損失を低減させることについて何ら示されていない。
【0014】
そこで、本発明は、出力損失を低減させることができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、次の第1態様及び第2態様の太陽電池モジュールを提供する。
【0016】
(1)第1態様の太陽電池モジュール
本発明に係る第1態様の太陽電池モジュールは、1又は複数の太陽電池セルでそれぞれ構成された複数のセル群を備え、前記複数のセル群がそれぞれ電極配線によって接続された太陽電池モジュールであって、前記複数のセル群のそれぞれにおいて前記複数の太陽電池セルが所定の列設方向に列設されており、前記複数のセル群の隣り合う2つのセル群における前記電極配線間が導電性シート部材を介して接続され、さらに、前記導電性シート部材上に、前記隣り合う2つセル群における前記電極配線間を接続する接続用電極配線が設けられており、前記接続用電極配線は、前記列設方向に対して所定の傾斜角度で斜めに設けられていることを特徴とする。
【0017】
(2)第2態様の太陽電池モジュール
本発明に係る第2態様の太陽電池モジュールは、1又は複数の太陽電池セルでそれぞれ構成された複数のセル群を備え、前記複数のセル群がそれぞれ電極配線によって接続された太陽電池モジュールであって、前記複数のセル群のそれぞれにおいて前記太陽電池セルが所定の列設方向に列設されており、前記複数のセル群の隣り合う2つのセル群における前記電極配線間が前記列設方向に対して所定の傾斜角度で斜めに設けられた接続用電極配線を介して接続され、前記接続用電極配線は、一端部が前記隣り合う2つのセル群のうちの一方のセル群における前記電極配線に接続され、かつ、他端部が前記隣り合う2つのセル群のうちの他方のセル群における前記電極配線に接続され、前記接続用電極配線の前記他端部は、前記他方のセル群における前記電極配線の前記列設方向に直交する直交方向における前記一方のセル群側の端と前記一端とは反対側の端との間において前記一端及び前記他端から離れた位置であって前記一端から前記他端側に120mm以上離れない位置に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、出力損失を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る太陽電池モジュールを示す正面図である。
図2】第1実施形態に係る太陽電池モジュールの図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図3】第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける配線シートにおいて電極配線に接続される非配線パターニング部部分を抜き出して示す概略平面図である。
図4】接続用電極配線を列設方向に平行に設けた従来例1に基づき出力例を設定して太陽電池モジュールにおける接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図5図4の例1の出力損失量に基づき第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおける配線シートの非配線パターニング部での出力損失を求めた概略算出図表である。
図6図4の例1の出力損失量に基づき第1実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、第4電極配線、第7電極配線及び配線シートにおける非配線パターニング部での出力損失を求めた概略算出図表である。
図7】第2実施形態に係る太陽電池モジュールを示す正面図である。
図8】第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおける配線シートにおいて電極配線に接続される非配線パターニング部部分及び接続用電極配線を抜き出して示す概略平面図である。
図9図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、接続用電極配線を設けた非配線パターニング部及びでの出力損失を求めた概略算出図表である。
図10図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、第4電極配線、第7電極配線及び接続用電極配線を設けた非配線パターニング部での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11A図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11B図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11C図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11D図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11E図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11F図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11G図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図11H図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、配線シートにおける非配線パターニング部及び接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図12】表4に示す従来例1の太陽電池モジュールにおける接続用電極配線の出力損失と第5電極配線、第8電極配線の出力損失とを合計した出力損失合計を表した概略算出図表である。
図13図11Aから図11D図9図11Eから図11Hに示す出力損失合計を第2実施形態の出力損失改善率と共に示す概略算出図表である。
図14】始点位置及び第1位置から第8位置での出力損失合計を表したグラフである。
図15】始点位置及び第1位置から第8位置での出力損失改善率を表したグラフである。
図16】第3実施形態に係る太陽電池モジュールを示す正面図である。
図17】第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおける内部構造を示す縦断面図である。
図18】第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて接続用電極配線部分を抜き出して示す概略平面図である。
図19】接続用電極配線を列設方向に平行に設けた従来例2の太陽電池モジュールにおける接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図20図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおける接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図21図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、第4電極配線、第7電極配線並びに接続用電極配線、第5電極配線、第8電極配線の右半分及び左半分での出力損失を求めた概略算出図表である。
図22図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、接続用電極配線での出力損失を求めた概略算出図表である。
図23】表19に示す従来例2の太陽電池モジュールにおける接続用電極配線の出力損失と第5電極配線、第8電極配線の出力損失合計とを合計した出力損失合計を表した概略算出図表である。
図24図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、第5電極配線、第8電極配線での出力損失、及び、第3実施形態の出力損失合計を第3実施形態の出力損失改善率と共に示す概略算出図表である。
図25】第8電極配線の左端から右端に向けた20mm毎の第3実施形態の出力損失合計を表したグラフである。
図26】第8電極配線の左端から右端に向けた20mm毎の第3実施形態の出力損失改善率を表したグラフである。
図27】従来の五角形状の太陽電池モジュールを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1を示す正面図である。
【0022】
太陽電池モジュールM1の基本構成は、配線シート13が設けられている一方、接続用電極配線Lwが設けられていないことを除いて図27に示す従来の太陽電池モジュールMxと同様であり、詳しい説明を省略する。
【0023】
本実施の形態では、太陽電池モジュールM1における太陽電池セルC(1,1)~C(m,jm)は、160mm角程度の大きさのものである。
【0024】
太陽電池モジュールM1は、受光面の反対側の裏面にp型電極及びn型電極が形成された裏面電極型太陽電池モジュール(いわゆるバックコンタクト型太陽電池モジュール)である。太陽電池モジュールM1は、太陽電池モジュール本体30及びフレーム枠(図示省略)を備えている。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1の図1に示すA-A線に沿った断面図である。太陽電池セルC(1,1)~C(m,jm)は、以下の図2の説明において、単に太陽電池セルCという。
【0026】
太陽電池モジュール本体30は、バックシート11、接着層12、配線シート13(導電性シート部材)、太陽電池セルC、受光面側封止材14及びカバーガラス15を備えている。
【0027】
バックシート11は、PET樹脂などのみを用いる場合やアルミニウム箔の両面をPET樹脂などでラミネートしたものを用いることができる。また、バックシート11上には接着層12が形成されている。接着層12を形成したバックシート11上には配線シート13が設けられている。配線シート13上には複数の太陽電池セルCが設けられている。配線シート13は、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂シート上に金属箔(銅箔)をパターニングした配線を配置したものである。非配線パターニング部13a(図1参照)は、パターニング部とは絶縁された状態で金属箔(銅箔)が全面的に形成されている。ここで、非配線パターニング部13aは、配線シート13における配線をパターニングした部分である配線パターニング部の以外の(外側の)部分である。
【0028】
太陽電池セルCは、シリコン基板の受光面と反対側にn電極及びp電極を配置した裏面電極型の太陽電池セルである。n電極及びp電極は、配線シート13の金属配線(銅配線)と半田などで接続されている。
【0029】
配線シート13及び太陽電池セルC上には、樹脂シートで形成された受光面側封止材14が設けられている。さらに、受光面側封止材14上には、太陽電池モジュールM1の受光面を形成する透明受光面基板であるカバーガラス15が設けられている。
【0030】
太陽電池モジュール本体30は、フレーム枠に支持されて封止樹脂(図示せず)によって封止されている。
【0031】
図3は、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における配線シート13において電極配線(L4,L7),(L5,L8)に接続される非配線パターニング部13a部分を抜き出して示す概略平面図である。
【0032】
図3に示すように、太陽電池モジュールM1の第2ストリング(2)及び第nストリング(n)において、隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)のうち、一方のセル群CG(1)の他端部における第4電極配線L4及び第7電極配線L7が配線シート13の非配線パターニング部13aに接続されている。第4電極配線L4及び第7電極配線L7と非配線パターニング部13aとは、半田等の導電性接続材16を介して接続されている。導電性接続材16は、第4電極配線L4及び第7電極配線L7の直交方向Yにおけるセル群CG(m)に対応する領域の全体又は略全体に亘って設けられている。
【0033】
同様に、太陽電池モジュールM1の第2ストリング(2)及び第nストリング(n)において、隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)のうち、他方のセル群CG(2)の一端部における第5電極配線L5及び第8電極配線L8が配線シート13の非配線パターニング部13aに接続されている。第5電極配線L5及び第8電極配線L8と非配線パターニング部13aとは、半田等の導電性接続材16を介して接続されている。導電性接続材16は、第5電極配線L5及び第8電極配線L8の直交方向Yにおけるセル群CG(m)に対応する領域の全体又は略全体に亘って設けられている。
【0034】
このように、複数のセル群CG(1)~CG(m)の隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)における電極配線間(第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間)が配線シート13を介して接続されていることで、隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)のうち、一方のセル群CG(1)における第4電極配線L4、第7電極配線L7からの電流iyが、配線シート13において他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5及び第8電極配線L8に向けて分散されて移動し、他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5及び第8電極配線L8に至る。そうすると、配線シート13における電流iyが流れる部分の抵抗値を下げることができる。これにより、出力損失を軽減させることができる。
【0035】
第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1において、配線シート13は、基材シート上に配線をパターニングした配線シートである。そして、複数のセル群CG(1)~CG(m)の隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)における電極配線間(第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間)が配線シート13における配線パターニング部の以外の非配線パターニング部13aを介して接続されている。こうすることで、受光面の反対側の裏面にp型電極及びn型電極が形成された裏面電極型太陽電池モジュール(いわゆるバックコンタクト型太陽電池モジュール)に好適に適用することができる。
【0036】
第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1において、配線シート13は、所定の列設方向Xに対して斜めに切り欠かれている(図3に示す切り欠き部α参照)。こうすることで、配線シート13において、配線シート13における電流iyが流れる部分以外の不要な部分を除去することができる。これにより、太陽電池モジュールM1の多角形状を効率良く形成することができる。また、太陽電池モジュールM1の製造コストを低減させることができる。
【0037】
<第1実施形態の具体例>
次に、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1について、第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間の出力損失Qを求めたので、それについて以下に説明する。なお、図27に示す太陽電池モジュールMxの従来例1として、配線シート13を備えたバックコンタクト型太陽電池モジュールMxとした。
【0038】
以下の例では、第4電極配線L4及び第5電極配線L5、第7電極配線L7及び第8電極配線L8の長さを何れも157mm、厚みを0.23mm、幅を2mmとした。配線シート13の金属箔を銅箔(体積抵抗率ρ=1.8×10-5Ωm)とし、銅箔の厚みを0.035mmとした。また、太陽電池モジュールM1,Mxの最大出力動作電流(Ipm)を9Aとした。また、従来例1の太陽電池モジュールMxでは、接続用電極配線Lwの長さを160mm、厚みを0.23mm、幅を6mmとした。
【0039】
図4は、接続用電極配線Lwを列設方向Xに平行に設けた従来例1に基づき出力例を設定して太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwでの出力損失を概略算出で求めた図表である。
【0040】
図4において、抵抗値R(Ω)の計算は、長さをl、厚みをd、幅hとした場合、抵抗値R(Ω)は、R=体積抵抗率ρ×長さl/(厚みd×幅h)で算出した。また、第4電極配線L4、第7電極配線L7部分及び第5電極配線L5、第8電極配線L8部分の出力損失Q(W)は、R×(Ipm/2)で算出し、接続用電極配線Lw部分の出力損失Q(W)は、R×Ipmで算出した。
【0041】
図5は、図4の例1の出力損失量に基づき第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1における配線シート13の非配線パターニング部13aでの出力損失Qを概略算出で求めた図表である。
【0042】
配線シート13における非配線パターニング部13aでの出力損失Qyは、図3に示すように、非配線パターニング部13aの第5電極配線L5、第8電極配線L8側の端部を20mmずつ第1位置P1から第8位置P8で8分割して出力損失を計算した。非配線パターニング部13aの列設方向Xの長さをly、直交方向Yの長さをlx、始点位置P0、第1位置P1から第8位置P8での個々の斜め方向の長さをlz〔=(lx+ly1/2〕とした。非配線パターニング部13aを概略9分割された個々の領域に流れる電流iyは概略に均等とする。これに基づき、図5に示すように、第4電極配線L4、第7電極配線L7から第5電極配線L5、第8電極配線L8の始点位置P0、第1位置P1から第8位置P8までに流れる電流iyは、何れも1(A)となる。
【0043】
図5において、出力損失Qy(W)は、銅箔の厚みをd(=0.035mm)、非配線パターニング部13aの9分割された個々の幅hy(=20mm)とした場合、出力損失Qy(W)は、〔ρ×lz/(d×hy)〕×iyで算出した。出力損失合計Qt(W)は、個々の出力損失Qy(W)を合計したものである。
【0044】
図6は、図4の例1の出力損失量に基づき第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1において、第4電極配線L4、第7電極配線L7及び配線シート13における非配線パターニング部13aでの出力損失を概略算出で求めた図表である。
【0045】
図6において、「第4電極配線L4、第7電極配線L7」の「出力損失」は、図4に示す「出力損失」と同じである。「図5の非配線パターニング部の出力損失合計」は、図5に示す「出力損失合計」と同じである。「第1実施形態の出力損失合計」は、「第4電極配線L4、第7電極配線L7」の「出力損失」と「図5の非配線パターニング部の出力損失合計」とを合計した値である。「図4の従来例1の出力損失合計」は、図4に示す「出力損失合計」と同じである。「第1実施形態の出力損失の従来との差」は、「図4の従来例1の出力損失合計」から「第1実施形態の出力損失合計」を差し引いた値である。「第1実施形態の出力損失の従来に対する比率」は、「第1実施形態の出力損失合計」を「図4の従来例1の出力損失合計」で割った比率である。
【0046】
図6に示すように、第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1において、「第1実施形態の出力損失の従来との差」は、2.34×10-1(W)となり、「第1実施形態の出力損失の従来に対する比率」は、39%となった。
【0047】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2を示す正面図である。また、図8は、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2における配線シート13において電極配線に接続される非配線パターニング部13a部分及び接続用電極配線Lwを抜き出して示す概略平面図である。
【0048】
太陽電池モジュールM2の基本構成は、接続用電極配線Lwを設けたことを除いて第1実施形態に係る太陽電池モジュールM1と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0049】
図7及び図8に示すように、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、配線シート13上に接続用電極配線Lw(接続用バスバー)が設けられている。接続用電極配線Lwは、隣り合う2つセル群CG(1),CG(m)における電極配線間(第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間)を接続するものである。
【0050】
詳しくは、接続用電極配線Lwは、一方の電極配線(第4電極配線L4、第7電極配線L7)と半田等の導電性接続材を介して接続されている。接続用電極配線Lwは、他方の電極配線(第5電極配線L5、第8電極配線L8)と半田等の導電性接続材を介して接続されている。同様に、接続用電極配線Lwは、配線シート13における非配線パターニング部13aと半田等の導電性接続材を介して接続されている。
【0051】
第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、接続用電極配線Lwは、列設方向Xに対して所定の傾斜角度θで斜めに設けられている。こうすることで、隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)のうち、一方のセル群CG(1)における第4電極配線L4、第7電極配線L7からの電流iyが、配線シート13において他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5、第8電極配線L8に向けて分散されて移動するのに加えて、列設方向Xに対して所定の傾斜角度θで斜めに設けられた接続用電極配線Lwにおいて他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5、第8電極配線L8に向けて移動し、他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5、第8電極配線L8に至る。そうすると、配線シート13及び接続用電極配線Lwにおける電流iyが流れる部分の抵抗値をさらに下げることができる。すなわち、接続用電極配線Lwを列設方向Xに平行に設ける場合に比べて接続用電極配線Lwにおける電流iyが流れる部分の抵抗値を下げることができる。これにより、出力損失をさらに軽減させることができる。しかも、太陽電池モジュールM2をカバー部CVで覆う際に、接続用電極配線Lwを列設方向Xに平行に設ける場合には接続用電極配線Lwをカバー部CVで覆うためのスペースに余裕がなく、それだけ作業性が悪化するところ、接続用電極配線Lwを列設方向Xに対して斜めに設けることで、接続用電極配線Lwをカバー部CVで覆うためのスペースに余裕ができ、それだけ作業性を向上させることができる。
【0052】
<第2実施形態の具体例>
次に、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2について、第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間の出力損失Qを求めたので、それについて以下に説明する。
【0053】
以下の例では、第2実施形態の具体例の各値は、<第1実施形態の具体例>の場合と同じとし、接続用電極配線Lwの第4電極配線L4、第7電極配線L7側の一端部を支点として接続用電極配線Lwを傾斜させた。接続用電極配線Lwは、銅(体積抵抗率ρ=1.8×10-5Ωm)で形成したものとした。
【0054】
図9は、図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、接続用電極配線Lwを設けた非配線パターニング部13a及びでの出力損失Qを概略算出で求めた図表である。図9の例では、接続用電極配線Lwの第5電極配線L5、第8電極配線L8側の他端部を第4位置P4に設けた。
【0055】
配線シート13における非配線パターニング部13a及び接続用電極配線Lwでの出力損失Qyは、図8に示すように、第1実施形態と同様にして、9分割して出力損失を計算した。非配線パターニング部13aの9分割された個々の領域に流れる電流iyは、接続用電極配線Lwに対応する領域以外の領域で均等であり、接続用電極配線Lwに対応する領域で集中する。従って、図9に示すように、第4電極配線L4、第7電極配線L7から第5電極配線L5、第8電極配線L8の始点位置P0、第1位置P1、第2位置P2、第6位置P6、第7位置P7及び第8位置P8に流れる電流iyは、何れも1(A)となり、第3位置P3及び第5位置P5分の電流iyは、第4位置P4を中心に電流が流れると考え第4位置P4の電流iyは、3(A)とし、第3位置P3及び第5位置P5の電流iyは0(A)と考える。図9において、各値の計算の仕方は、図5に示す各値の計算の仕方と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0056】
図10は、図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、第4電極配線L4、第7電極配線L7及び接続用電極配線Lwを設けた非配線パターニング部13aでの出力損失を概略算出で求めた図表である。
【0057】
図10において、「第4電極配線L4、第7電極配線L7」の「出力損失」は、図4に示す「出力損失」と同じである。「図9の非配線パターニング部の出力損失合計」は、図9に示す「出力損失合計」と同じである。「第2実施形態の出力損失合計」は、「第4電極配線L4、第7電極配線L7」の「出力損失」と「図9の非配線パターニング部の出力損失合計」とを合計した値である。「図4の従来例1の出力損失合計」は、図4に示す「出力損失合計」と同じである。「第2実施形態の出力損失の従来との差」は、「図4の従来例1の出力損失合計」から「第2実施形態の出力損失合計」を差し引いた値である。「第2実施形態の出力損失の従来に対する比率」は、「第2実施形態の出力損失合計」を「図4の従来例1の出力損失合計」で割った比率である。
【0058】
図10に示すように、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、「第2実施形態の出力損失の従来との差」は、2.38×10-1(W)となり、「第2実施形態の出力損失の従来に対する比率」は、38%となった。
【0059】
次に、第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2について、接続用電極配線Lwの他端部の位置(傾斜角度θ)を変更して出力損失が最小或いは略最小になる値を求めたので、それについて以下に説明する。
【0060】
図11Aから図11Hは、それぞれ、図4の例1の出力損失量に基づき第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2において、配線シート13における非配線パターニング部13a及び接続用電極配線Lwでの出力損失Qを概略算出で求めた図表である。図11Aから図11Hにおいて、接続用電極配線Lwの他端部を始点位置P0、第1位置P1から第3位置P3、第5位置P5から第8位置P8に設けた例を示している。なお、接続用電極配線Lwの他端部を第4位置P4に設けた場合は、図9に表している。
【0061】
この例では、表4に示す従来例1の太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwの出力損失Qと第5電極配線L5、第8電極配線L8の出力損失Qとを合計した出力損失合計Qtに対する出力損失改善率を求めた
図12は、表4に示す従来例1の太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwの出力損失Qと第5電極配線L5、第8電極配線L8の出力損失Qとを合計した出力損失合計Qtを表した概略算出図表である。図13は、図11Aから図11D図9図11Eから図11Hに示す出力損失合計を第2実施形態の出力損失改善率と共に示す概略算出図表である。図14は、始点位置P0及び第1位置P1から第8位置P8での出力損失合計を表したグラフである。また、図15は、始点位置P0及び第1位置P1から第8位置P8での出力損失改善率を表したグラフである。
【0062】
図13において、始点位置P0及び第1位置P1から第8位置P8での「第2実施形態の出力損失合計」は、図11Aから図11D図9図11Eから図11Hに示す「出力損失合計」である。「第2実施形態の出力損失改善率」は、始点位置P0及び第1位置P1から第8位置P8での(1-「第2実施形態の出力損失合計」/「図12の従来例1の出力損失合計Qt」)×100の計算式でそれぞれ算出したものである。
【0063】
図13から図15に示すように、「第2実施形態の出力損失合計」は、第7位置P7で3.82×10-2(W)と最小或いは略最小となった。また、「第2実施形態の出力損失改善率」は、86.21%となった。このときの接続用電極配線Lwの傾斜角度θは36.9°となった。
【0064】
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3を示す正面図である。
【0065】
太陽電池モジュールM3の基本構成は、配線シート13がないこと、及び、太陽電池セル(1,1)~C(4,jm)の構造が異なることを除いて図7に示す第2実施形態に係る太陽電池モジュールM2と同様であり、詳しい説明を省略する。
【0066】
太陽電池モジュールM3は、受光面及び受光面の反対側の裏面の双方に電極が形成された単結晶型太陽電池モジュールである。
【0067】
図17は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3における内部構造を示す縦断面図である。太陽電池セルC(1,1)~C(m,jm)は、以下の図17の説明において、単に太陽電池セルCという。
【0068】
太陽電池セルCは、図17に示すように、表面電極31と裏面電極32とを備えている。表面電極31は、バスバー電極31aと、図示を省略したフィンガー電極とから構成されている。バスバー電極31aは、帯状のものであり、太陽電池セルCの表面において列設方向Xに直線的に形成されている。フィンガー電極は、バスバー電極31aの両側縁から直交方向Yに櫛歯状に延びて多数に形成されている。フィンガー電極は、互いに一定の間隔をあけて、太陽電池セルCの受光面全体を網羅するようにパターン形成されている。また、裏面電極32は、太陽電池セルCの裏面において列設方向Xに直線的に帯状となるように形成されており、バスバー電極31aと表裏対向するように設けられている。
【0069】
太陽電池モジュールM3は、太陽電池セルCと、配線材33(インターコネクタ)と、透光性基板34と、保護部材35とを備えている。太陽電池セルCは、表面電極31と裏面電極32とを備えている。配線材33は、一の太陽電池セルCの表面電極31のバスバー電極31aと他の太陽電池セルCの裏面電極32とに接続されて隣り合う太陽電池セルC,C同士を直列に接続する配線材である。透光性基板34は、太陽電池セルCの表面側(図17では上側)に対向するように設けられている。保護部材35は、太陽電池セルCの裏面側(図17では下側)に対向するように設けられている。
【0070】
太陽電池モジュールM3は、太陽電池セルCと配線材33とが透光性の封止材36によって透光性基板34と保護部材35との間に封止された構造となっている。配線材33は、細長い短冊状に形成された基材の外表面に半田がコーティング(半田メッキ処理)された構成となっている。基材の材質としては特に限定されないが、例えば銅等の金属を用いることができる。
【0071】
そして、配線材33の一方側(図17では左側)が太陽電池セルCの表面のバスバー電極31aに半田接続されている。配線材33の他方側(図17では右側)が隣接する太陽電池セルC裏面の裏面電極32に半田接続されている。なお、本実施の形態では、太陽電池セルCにバスバー電極31aを2本形成しているが、1本又は平行に2本以上形成される場合もある。この場合には、裏面電極32も1本又は平行に3本以上形成され、配線材33~33も、1本又は3本以上使用される。
【0072】
図18は、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3において接続用電極配線Lw部分を抜き出して示す概略平面図である。
【0073】
第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3は、図16及び図18に示すように、複数のセル群CG(1)~CG(m)の隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)における電極配線間(第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間)が列設方向Xに対して所定の傾斜角度θで斜めに設けられた接続用電極配線Lwを介して接続されている。
【0074】
こうすることで、隣り合う2つのセル群CG(1),CG(m)のうち、一方のセル群CG(1)における第4電極配線L4、第7電極配線L7からの電流iyが、列設方向Xに対して所定の傾斜角度θで斜めに設けられた接続用電極配線Lwにおいて他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5、第8電極配線L8に向けて移動し、他方のセル群CG(m)における第5電極配線L5、第8電極配線L8において、直交方向Yの両側に流れる。また、そうすると、接続用電極配線Lwを列設方向Xに平行に設ける場合に比べて接続用電極配線Lwの抵抗値を下げることができる。これにより、出力損失を軽減させることができる。かかる構成では、この例のように、受光面及び受光面の反対側の裏面の双方に電極が形成された単結晶型太陽電池モジュールに好適に適用することができる。
【0075】
<第3実施形態の具体例>
次に、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3について、第4電極配線L4と第5電極配線L5との間、第7電極配線L7と第8電極配線L8との間の出力損失Qを求めたので、それについて以下に説明する。図27に示す太陽電池モジュールMxの従来例2として、受光面及び受光面の反対側の裏面の双方に電極が形成された単結晶型太陽電池モジュールMxとした。
【0076】
以下の例では、第4電極配線L4及び第5電極配線L5、第7電極配線L7及び第8電極配線L8の長さを何れも157mm、厚みを0.23mm、幅を2mmとした。また、太陽電池モジュールM3,Mxの最大出力動作電流(Ipm)を9Aとした。また、従来例1の太陽電池モジュールMxでは、接続用電極配線Lwの長さを160mm、厚みを0.23mm、幅を3.5mmとした。接続用電極配線Lwは、銅(体積抵抗率ρ=1.8×10-5Ωm)で形成したものとした。
【0077】
図19は、接続用電極配線Lwを列設方向Xに平行に設けた従来例2の太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwでの出力損失を概略算出で求めた図表である。
【0078】
図19において、各値の計算の仕方は、図4に示す各値の計算の仕方と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0079】
図20は、図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3における接続用電極配線Lwでの出力損失Qwを概略算出で求めた図表である。図20の例では、接続用電極配線Lwの他端部を第4位置P4に設けた。
【0080】
図20において、出力損失Qw(W)は、接続用電極配線Lwの列設方向Xの距離をfx(=160mm)、接続用電極配線Lwの直交方向Yの距離をfy(=80mm)、接続用電極配線Lwの長さlw(=178.9mm)、接続用電極配線Lwに流れる電流をiw(=9A)、接続用電極配線Lwの厚みをd(=0.23mm)、接続用電極配線Lwの幅をh(=3.5mm)とした場合、出力損失Qw(W)は、〔ρ×lw/(d×h)〕×iwで算出した。
【0081】
図21は、図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3において、第4電極配線L4、第7電極配線L7並びに接続用電極配線Lw、第5電極配線L5、第8電極配線L8の右半分及び左半分での出力損失を概略算出で求めた図表である。
【0082】
図21において、各値の計算の仕方は、図4に示す各値の計算の仕方と同じであり、ここでは説明を省略する。「第3実施形態の出力損失合計」は、「第4電極配線L4、第7電極配線L7」の「出力損失」と、「図20の接続用電極配線Lw」の「出力損失Qw」と、「第5電極配線L5、第8電極配線L8の右半分及び左半分」の「出力損失」とを合計した値である。「図19の従来例2の出力損失合計Qt」は、図19に示す「出力損失合計Qt」と同じである。「第3実施形態の出力損失の従来との差」は、「図19の従来例2の出力損失合計Qt」から「第3実施形態の出力損失合計」を差し引いた値である。「第3実施形態の出力損失改善比率」は、(1-「第3実施形態の出力損失合計」/「図19の従来例2の出力損失合計」)×100の計算式で算出した。
【0083】
図21に示すように、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3において、「第3実施形態の出力損失の従来との差」は、5.91×10-2(W)となり、「第3実施形態の出力損失改善率」は、89%となった。
【0084】
次に、第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3について、接続用電極配線Lwの他端部の位置(傾斜角度θ)を変更して出力損失が最小或いは略最小になる値を求めたので、それについて以下に説明する。
【0085】
図22は、図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3において、接続用電極配線Lwでの出力損失Qを概略算出で求めた図表である。図22において、接続用電極配線Lwの一端部を支点として他端部を第5電極配線L5、第8電極配線L8の左端から右端に向けて20mmずつ移動させた例を示している。
【0086】
この例では、表19に示す従来例2の太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwの出力損失Qと第5電極配線L5、第8電極配線L8の出力損失Qとを合計した出力損失合計Qtに対する出力損失改善率を求めた。
【0087】
図23は、表19に示す従来例2の太陽電池モジュールMxにおける接続用電極配線Lwの出力損失Qと第5電極配線L5、第8電極配線L8の出力損失合計とを合計した出力損失合計Qtを表した概略算出図表である。図24は、図4の例1の出力損失量に基づき第3実施形態に係る太陽電池モジュールM3において、第5電極配線L5、第8電極配線L8での出力損失Q(W)、及び、第3実施形態の出力損失合計(W)を第3実施形態の出力損失改善率と共に示す概略算出図表である。図24において、接続用電極配線Lwの一端部を支点として他端部を第5電極配線L5、第8電極配線L8の左端から右端及び右端から左端に向けて20mmずつ移動させた例を示している。図25は、第8電極配線L8の左端から右端に向けた20mm毎の第3実施形態の出力損失合計を表したグラフである。また、図26は、第8電極配線L8の左端から右端に向けた20mm毎の第3実施形態の出力損失改善率を表したグラフである。
【0088】
図24において、「第5電極配線L5、第8電極配線L8」での「出力損失Q」は、「接続用電極配線Lwから左端まで」の「出力損失Qw1」と「接続用電極配線Lwから右端まで」の「出力損失Qw2」とを第8電極配線L8の左端から右端に向けた20mm毎に合計した値である。「第3実施形態の出力損失合計」は、「第5電極配線L5、第8電極配線L8」での「出力損失Q」と図22の「出力損失Q」とを第8電極配線L8の左端から右端に向けた20mm毎に合計した値である。「出力損失改善率」は、(1-「第3実施形態の出力損失合計」/「図22の従来例2の出力損失合計Qt」)×100の計算式で第8電極配線L8の左端から右端に向けた20mm毎に算出したものである。
【0089】
図24から図26に示すように、「第3実施形態の出力損失合計」は、第8電極配線L8の左端から60mmの位置で3.46×10-1(W)と最小或いは略最小となった。また、「第3実施形態の出力損失改善率」は、17%となった。このときの接続用電極配線Lwの傾斜角度θは20.6°となった。
【0090】
(その他の実施形態)
第1実施形態から第3実施形態に係る太陽電池モジュールM1~M3において、複数のセル群CG(1)~CG(m)以外の部分が色塗り(一般的には黒塗り)されている。こうすることで、見栄え良く太陽電池モジュールM1~M3を形成することができ、意匠性を向上させることができる。
【0091】
また、第1実施形態から第3実施形態に係る太陽電池モジュールM1~M3は、太陽電池モジュール本体30が直角の角部及び直角以外の角度の角部を有する多角形状に形成されている。多角形状としては、例えば3つの直角の角部を有する五角形状、2つの直角の角部を有する四角形状又は直角三角形状を例示でき、この例では、多角形状は、3つの直角の角部を有する五角形状とされている。こうすることで、太陽電池モジュールM1~M3を適用する用途を広げることができる。
【0092】
また、第1実施形態から第3実施形態では、太陽電池セルC(1,1)~C(m,jm)として、標準サイズのセル(フルセル)のものを用いたが、標準サイズのセルを分割した分割セルであってもよい。分割セルとは、標準サイズのセル(太陽電池用ウェハ1枚分のセル、フルセルともいう。)を分割した小型のセルをいう。分割セルとしては、標準サイズのセルを半分に分割したもの(ハーフセル)、1/4に分割したものを例示できる。従って、セル1枚当たりの電流の電流値を減少(ハーフセルの場合、半減)させることができ、それだけ、太陽電池モジュールM1~M3の電力損失を減少させることができる。
【0093】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0094】
10 太陽電池モジュール本体
11 バックシート
12 接着層
13 配線シート
13a 非配線パターニング部
14 受光面側封止材
15 カバーガラス
16 導電性接続材
31 表面電極
31a バスバー電極
32 裏面電極
33 配線材
34 透光性基板
34a 受光面
35 保護部材
36 封止材
37 遮光材
C 太陽電池セル
CG セル群
CV カバー部
L1 第1電極配線
L2 第2電極配線
L3 第3電極配線
L4 第4電極配線
L5 第5電極配線
L6 第6電極配線
L7 第7電極配線
L8 第8電極配線
L9 第9電極配線
Lw 接続用電極配線
M1 太陽電池モジュール
M2 太陽電池モジュール
M3 太陽電池モジュール
Mx 太陽電池モジュール
P0 始点位置
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置
P5 第5位置
P6 第6位置
P7 第7位置
P8 第8位置
S ストリング
X 列設方向
Y 直交方向
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図11H
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27