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特許7441010弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H03H9/25 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019095504
(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公開番号】P2020191535
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】今須 誠士
(72)【発明者】
【氏名】岩城 匡郁
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188807(JP,A)
【文献】特開平09-107264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧電基板と、
第2圧電基板と、
前記第1圧電基板と前記第2圧電基板とに挟まれ、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の厚さ方向において対向する第1面および第2面を有し前記第1面と前記第2面との間に連続的に設けられた金属層から形成され、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、
を備え、
前記第1面は前記第1圧電基板に接し、前記第2面は前記第2圧電基板に接するように、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板は前記一対の櫛型電極に接し、
前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間に設けられ、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の弾性定数の温度係数の符号と反対の弾性定数の温度係数の符号を有する誘電体層を備える、または、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間は空隙である弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の主成分は互いに同じである請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第1圧電基板および前記第2圧電基板は、YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板またはYカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板であり、
前記第1圧電基板および前記第2圧電基板のYカット角の差は10°以下であり、
平面視において前記第1圧電基板のX軸方向と前記第2圧電基板のX軸方向のなす角度は10°以下である請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記第1圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された第1支持基板を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記第2圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された第2支持基板を備える請求項4に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間に設けられた誘電体層を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間は空隙である請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間に設けられ、前記一対の櫛型電極を前記空隙に封止する封止層を備える請求項7に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを含むフィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば一対の櫛型電極を有する弾性波デバイス、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の通信機器に用いられる弾性波デバイスとして、弾性表面波共振器が知られている。弾性表面波共振器では、圧電基板上に複数の電極指を有する一対の櫛型電極が設けられている。櫛型電極を覆うように誘電体層を設けることが知られている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-28980号公報
【文献】特開2008-244523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性表面波共振器の入出力インピーダンスは主に一対の櫛型電極間の静電容量により設定される。弾性表面波共振器の入出力インピーダンスを所望の値とすると、一対の櫛型電極の静電容量を所望の値とするため面積が決まってしまう。これにより、小型化が難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1圧電基板と、第2圧電基板と、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板とに挟まれ、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の厚さ方向において対向する第1面および第2面を有し前記第1面と前記第2面との間に連続的に設けられた金属層から形成され、複数の電極指を有する一対の櫛型電極と、を備え、前記第1面は前記第1圧電基板に接し、前記第2面は前記第2圧電基板に接するように、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板は前記一対の櫛型電極に接し、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間に設けられ、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の弾性定数の温度係数の符号と反対の弾性定数の温度係数の符号を有する誘電体層を備える、または、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間は空隙である弾性波デバイスである。
【0008】
上記構成において、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板の主成分は互いに同じである構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板は、YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板またはYカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板であり、前記第1圧電基板および前記第2圧電基板のYカット角の差は10°以下であり、平面視において前記第1圧電基板のX軸方向と前記第2圧電基板のX軸方向のなす角度は10°以下である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された第1支持基板を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第2圧電基板の前記一対の櫛型電極が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された第2支持基板を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間に設けられた誘電体層を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間において、前記複数の電極指間は空隙である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1圧電基板と前記第2圧電基板との間に設けられ、前記一対の櫛型電極を前記空隙に封止する封止層を備える構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記弾性波デバイスを含むフィルタである。
【0016】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型化を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)および図2(b)は、それぞれ比較例1および実施例1における周波数に対するアドミッタンスを示す図である。
図3図3(a)から図3(c)は、実施例1およびその変形例1および2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、実施例1の変形例3および4に係る弾性波デバイスの断面図である。
図5図5(a)から図5(d)は、実施例1の変形例4に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図6図6(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図6(b)は実施例2の変形例1のデュプレクサの回路図である。
図7図7(a)は、実施例2に係るフィルタの斜視図、図7(b)は図7(a)のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、支持基板および圧電基板の積層方向をZ方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板が回転YカットX伝搬基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
【0021】
図1(a)および図1(b)に示すように、圧電基板10および12の間に弾性波共振器20が設けられている。弾性波共振器20はIDT(Inter Digital Transducer)22および反射器24を有する。反射器24はIDT22のX方向の両側に設けられている。IDT22および反射器24は、圧電基板10と12との間に設けられた金属膜14により形成される。
【0022】
IDT22は、対向する一対の櫛型電極18を備える。櫛型電極18は、複数の電極指15と、複数の電極指15が接続されたバスバー16と、を備える。一対の櫛型電極18の電極指15が交差する領域が交差領域25である。交差領域25の長さが開口長である。一対の櫛型電極18は、交差領域25の少なくとも一部において電極指15がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。交差領域25において複数の電極指15が励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極18のうち一方の櫛型電極の電極指15のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。弾性波の波長λはほぼ電極指15の2本分のピッチとなる。反射器24は、IDT22の電極指15が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより弾性波はIDT22の交差領域25内に閉じ込められる。
【0023】
圧電基板10および12は、単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO)基板、単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO)基板または水晶基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。金属膜14は、例えばAl(アルミニウム)、Cu(銅)またはMo(モリブデン)を主成分とする膜である。電極指15と圧電基板12との間にTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指15より薄い。
【0024】
[シミュレーション]
実施例1および圧電基板12を備えていない比較例1についてアドミッタンスをシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
弾性波の波長λ:5.5μm(電極指15のピッチ×2)
圧電基板10:厚さが4λの42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
圧電基板12:厚さが0.55λの42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
金属膜14:厚さが0.11λのアルミニウム膜
圧電基板10と12ともX方向を結晶方位のX軸方向とした。
シミュレーションは電極指15が1対について、X方向の境界条件を周期条件として2.5次元の有限要素法を用い行った。
【0025】
図2(a)および図2(b)は、それぞれ比較例1および実施例1における周波数に対するアドミッタンスを示す図である。図2(a)に示すように、比較例1では共振周波数frおよび反共振周波数faが観察される。図2(b)に示すように、実施例1では、比較例1に比べ共振周波数frおよび反共振周波数faが大きくなる。これは圧電基板12を設けることで音速が速くなったためである。共振周波数frおよび反共振周波数fa付近に副共振は観測されず、共振周波数frおよび反共振周波数faのピークは急峻である。また、シミュレーションにおける変移方向から比較例1および実施例1とも圧電基板10の上面にSH(Shear Horizontal)波が励振されている。さらに、実施例1では、圧電基板12の下面にSH波が励振されている。これにより、実施例1は比較例1に比べ共振特性の劣化はない。
【0026】
圧電基板12の比誘電率は真空より高く、例えばタンタル酸リチウムの比誘電率は約50である。このため、一対の櫛型電極18間の静電容量を大きくできる。よって、同じ入出力インピーダンスを有する弾性波共振器では実施例1は比較例1より面積を小さくでき、小型化が可能となる。また、櫛型電極18から圧電基板12に放熱するため放熱効果を高めることができる。さらに、比較例1では熱応力等により櫛型電極18が圧電基板10から剥がれることがある。実施例1では、圧電基板10と12で櫛型電極18を挟むため櫛型電極18の剥がれを抑制できる。
【0027】
図3(a)から図4(b)は、実施例1およびその変形例に係る弾性波デバイスの断面図である。図3(a)に示すように、実施例1では、圧電基板10上に金属膜14により形成される電極指15を有する弾性波共振器20が設けられている。金属膜14上に圧電基板12が設けられている。電極指15間は空隙30(空気層)である。電極指15は例えば圧電基板10および12に接している。圧電基板10の厚さT0は例えば50μmから300μmである。金属膜14の厚さT4は例えば0.1λ程度であり、0.05μmから3μmである。圧電基板12の厚さT2は例えば10μmから100μmである。
【0028】
[実施例1の変形例1]
図3(b)に示すように、実施例1の変形例1では、圧電基板10は支持基板11a上に接合されている。支持基板11aは、例えば、サファイア基板、アルミナ基板、シリコン基板、石英基板、水晶基板またはスピネル基板である。サファイア基板は単結晶酸化アルミニウム(Al)基板である。アルミナ基板は多結晶酸化アルミニウム(Al)基板である。シリコン基板は単結晶または多結晶シリコン(Si)基板である。石英基板はアモルファス酸化シリコン(SiO)基板である。水晶基板は単結晶酸化シリコン(SiO)基板である。スピネル基板は単結晶または多結晶MgAl基板である。支持基板11aのX方向の線膨張係数は圧電基板10のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、周波数温度係数を小さくできる。
【0029】
支持基板11aの厚さT1aは例えば50μmから300μmである。圧電基板10および12の厚さT0およびT2は各々例えば0.5μmから20μmである。圧電基板10および12の厚さT0およびT2を弾性波の波長以下とすることで損失およびバルク波に起因したスプリアス等を抑制できる。支持基板11aと圧電基板10との間には酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の絶縁膜が設けられていてもよい。このように、支持基板11aは圧電基板10に直接または間接的に接合されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0030】
[実施例1の変形例2]
図3(c)に示すように、実施例1の変形例2では、圧電基板12上に支持基板11bが接合されている。支持基板11bは、例えば、サファイア基板、アルミナ基板、シリコン基板、石英基板、水晶基板またはスピネル基板である。支持基板11bのX方向の線膨張係数は圧電基板12のX方向の線膨張係数より小さい。これにより、周波数温度係数を小さくできる。支持基板11bの厚さT1bは例えば0.5μmから20μmである。支持基板11bと圧電基板12との間には酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の絶縁膜が設けられていてもよい。このように、支持基板11bが圧電基板12に直接または間接的に接合されている。圧電基板10および12の厚さT0およびT2は互いに略等しいことが好ましい。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0031】
[実施例1の変形例3]
図4(a)に示すように、実施例1の変形例3では、圧電基板10と12との間の電極指15間に誘電体層32が設けられている。誘電体層32は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の無機絶縁体または樹脂等の有機絶縁体である。誘電体層32が弾性波を吸収しない観点から誘電体層32は無機絶縁体が好ましい。誘電体層32により放熱経路を形成でき、放熱性を向上できる。また、圧電基板10と12との結合を強固にできる。
【0032】
誘電体層32の弾性定数の温度係数の符号を圧電基板10および12の弾性定数の温度係数の符号と正負を反対とすることで、周波数温度係数を小さくできる。この観点から誘電体層32は酸化シリコン膜が好ましい。酸化シリコン膜は弗素等の不純物を含んでいてもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1および2において、誘電体層32を設けてもよい。
【0033】
[実施例1の変形例4]
図4(b)に示すように、実施例1の変形例4では、圧電基板10と12との間の電極指15間は空隙30である。電極指15を囲むように圧電基板10と12との間に封止層34が設けられている。封止層34は、電極指15等の弾性波共振器20を空隙30に封止する。封止層34は、例えば金、銅もしくは半田等の金属層または無機絶縁体もしくは樹脂等の絶縁層である。封止層34により、弾性波共振器20を気密封止でき、水分等による弾性波共振器20の劣化を抑制できる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1および2において、封止層34を設けてもよい。
【0034】
[実施例1の変形例4の製造方法]
図5(a)から図5(d)は、実施例1の変形例4に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図5(a)に示すように、圧電基板10上に金属膜14からなる弾性波共振器20を形成する。図5(b)に示すように、圧電基板10上に弾性波共振器20を囲む封止層34を形成する。
【0035】
封止層34の厚さは金属膜14の厚さと略等しい。図5(c)に示すように、金属膜14および封止層34上に圧電基板12を接合する。金属膜14および封止層34と圧電基板12との接合には表面活性化法を用いる。金属膜14および封止層34と圧電基板12の間には1nmから10nmのアモルファス層が形成されることがある。アモルファス層の厚さは金属膜14の厚さに比べ十分小さく、金属膜14および封止層34と圧電基板12とは、実質的に直接接合される。
【0036】
図5(d)に示すように、圧電基板12の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い研磨することにより、圧電基板12を所望の厚さとする。以上により実施例1の変形例4に係る弾性波デバイスが製造される。
【0037】
実施例1およびその変形例によれば、一対の櫛型電極18は圧電基板10(第1圧電基板)と圧電基板12(第2圧電基板)とに挟まれている。これにより、一対の櫛型電極18間の静電容量を大きくでき、弾性波デバイスの小型化が可能となる。また、放熱効果を高めることができる。さらに、櫛型電極18を挟むため櫛型電極18の剥がれを抑制できる。
【0038】
圧電基板10および12は一対の櫛型電極18に接する。これにより、共振特性が劣化することなく、弾性波デバイスの小型化が可能となる。
【0039】
圧電基板10および12の主成分は互いに同じである。これにより、圧電基板10の表面を伝搬する弾性波と圧電基板12の表面を伝搬する弾性波の特性をほぼ同じにできる。よって、副共振等のスプリアスを抑制できる。なお、主成分とは意図的または意図せず含まれる不純物を含まない。
【0040】
圧電基板10および12は、YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板またはYカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10および12のYカット角の差は10°以下であり、平面視において圧電基板10のX軸方向と圧電基板12のX軸方向のなす角度は10°以下である。これにより、圧電基板10の表面を伝搬する弾性波と圧電基板12の表面を伝搬する弾性波の特性をほぼ同じにできる。よって、副共振等のスプリアスを抑制できる。圧電基板10および12のYカット角の差は5°以下が好ましく、2°以下がより好ましい。圧電基板10および12のX結晶方位の差は5°以下が好ましく、2°以下がより好ましい。
【0041】
圧電基板10および12が回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板の場合、10°以上かつ50°以下回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板とする。これにより、櫛型電極18は主にSH(Shear Horizontal)波を励振する。
【0042】
実施例1の変形例1および2のように、圧電基板10の一対の櫛型電極18が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された支持基板11a(第1支持基板)を備える。これにより、周波数温度係数を小さくできる。
【0043】
実施例1の変形例2のように、圧電基板12の一対の櫛型電極18が設けられた面と反対の面に直接または間接的に接合された支持基板11b(第2支持基板)を備える。これにより、周波数温度係数を小さくできる。
【0044】
実施例1の変形例3のように、誘電体層32は、圧電基板10と12との間において、複数の電極指15間に設けられている。これにより、放熱性を向上できる。また、圧電基板10と12との間の接合性を高めることができる。
【0045】
実施例1およびその変形例1、2および4のように、圧電基板10と12との間において、複数の電極指15間は空隙30でもよい。実施例1の変形例4のように、封止層34は、圧電基板10と12との間に設けられ、一対の櫛型電極18を空隙30に封止する。これにより、簡単な構造で、弾性波共振器20を空隙30に封止できる。
【実施例2】
【0046】
図6(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、図6(b)は実施例2の変形例1のデュプレクサの回路図である。図6(a)および図6(b)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に直列共振器S1からS3が直列に接続され、並列共振器P1およびP2が並列に接続されている。並列共振器P1およびP2の一端がグランドに接続されている。1または複数の直列共振器S1からS3および1または複数の並列共振器P1およびP2の少なくとも1つに実施例1およびその変形例の弾性波共振器を用いることができる。ラダー型フィルタの共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタは、多重モード型フィルタでもよい。
【0047】
図6(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ40が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ42が接続されている。送信フィルタ40は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ42は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ40および受信フィルタ42の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0048】
実施例2の変形例1では、マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0049】
図7(a)は、実施例2に係るフィルタの斜視図、図7(b)は図7(a)のA-A断面図である。図7(a)では圧電基板12を透視して圧電基板10の上面を図示している。
【0050】
図7(a)および図7(b)に示すように、支持基板11a上に圧電基板10が接合されている。圧電基板10の上面には弾性波共振器20、配線28および封止層34が設けられている。複数の弾性波共振器20は直列共振器S1からS3、並列共振器P1およびP2を含む。配線28はパッドPin、PoutおよびPgを含む。直列共振器S1からS3は、パッドPinとPoutとの間に配線28を介し直列に接続され、並列共振器P1およびP2はパッドPinとPoutとの間に配線28を介し並列に接続されている。
【0051】
封止層34は圧電基板10および12の周縁において複数の弾性波共振器20および配線28を囲むように設けられている。封止層34は弾性波共振器20および配線28を空隙30に封止する。支持基板11aの下面に端子38が設けられている。端子38は、入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子を含む。圧電基板10および支持基板11aを貫通するビア配線36が設けられている。ビア配線36は、配線28と端子38とを電気的に接続する。パッドPin、PoutおよびPgは、それぞれ入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子と電気的に接続されている。
【0052】
図7(a)のように、フィルタが有する複数の弾性波共振器20を1つの封止層34により封止してもよい。支持基板11aは設けられていなくてもよいし、圧電基板12上に支持基板11bが接合されていてもよい。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10、12 圧電基板
11a、11b 支持基板
14 金属膜
15 電極指
18 櫛型電極
20 弾性波共振器
22 IDT
28 配線
30 空隙
32 誘電体層
34 封止層
40 送信フィルタ
42 受信フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7