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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】マヨネーズ風ドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/60 20160101AFI20240221BHJP
【FI】
A23L27/60 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019137736
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021019525
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】朝武 宗明
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0040263(KR,A)
【文献】特開昭57-132851(JP,A)
【文献】特開平02-065760(JP,A)
【文献】No.49 Preparation of a new vegan mayonnaise by using αCD,Wayback machine archive of Recent research finding, CycloChem Bio Co., Ltd.,2019年06月17日,https://web.archive.org/web/20190617024517/http://www.cyclochem.com/cyclochembio/research_e/049.html,[検索日2023年4月19日]
【文献】日本臨床栄養学会雑誌,2012年,34(3),175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/60
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)及び(2)の工程を含む、卵黄及び全卵を含まないマヨネーズ風ドレッシングの製造方法:
(1)水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を混合する工程、
(2)工程(1)で得られた混合物に乳化剤を加えてさらに混合する工程。
【請求項2】
油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤を含む、卵黄及び全卵を含まないマヨネーズ風ドレッシングを製造するためのキットであって、
請求項1に記載の方法において用いられ
油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を第1の容器に収容し、乳化剤を第2の容器に収容する、キット。
【請求項3】
油脂がキャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油からなる群から選択される一又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サイクロデキストリンがα-サイクロデキストリンである、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
水溶性ゲル化剤がカルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、ιカラギーナン、ローカストビーンガム、λカラギーナン、κカラギーナン、ジェランガム、アルギン酸塩、グアーガムからなる群から選択される一又は複数である、請求項1、3、4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選択される一又は複数である、請求項1、3、4、5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乳化剤のHLB値が3~16である、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤を含むマヨネーズ風ドレッシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズは、油脂、卵、酢等を主原料とする半固体状ドレッシングであり、サラダをはじめとする様々な料理の調味料として人気を博している。
【0003】
一方、マヨネーズには卵が含まれるために、卵アレルギーを有する人はマヨネーズを食すことができない。そのため、卵アレルギーを有する人でも食すことが可能な、卵を含まないマヨネーズ風ドレッシングが開発・報告されている。
【0004】
特許文献1には、加熱した豆乳の表面からすくいあげられた皮膜(生ゆば)を卵黄に代えて用いる、マヨネーズ様食品が開示されている。
【0005】
特許文献2には、有機酸類、脱脂粉乳、キサンタンガム及び微結晶セルロースを配合してなるマヨネーズ様調味料が開示されている。
【0006】
特許文献3には、豆乳発酵物及び水性調味液を主成分とし、これらに澱粉及び寒天を加えて粘性を付与することを特徴とする、精製油脂及び卵黄を含まないマヨネーズ風調味料が開示されている。
【0007】
特許文献4には、卵黄を使用せず、その代わりに豆乳を使用したマヨネーズタイプの調味料が開示されている。
【0008】
特許文献5には、オクテニルコハク酸処理澱粉を含有し、卵黄を乳化材として使用しないあるいは削減したマヨネーズタイプ等の粘性を有した酸性水中油型乳化食品が開示されている。
【0009】
特許文献6には、卵黄を含まず、リゾ化リン脂質、大豆成分、澱粉質を含むマヨネーズ様の食味を呈する乳化食品が開示されている。
【0010】
特許文献7には、鶏卵、その他の卵類を使用せずに、キクラゲ・コンニャク精粉・寒天・ゼラチン・葛・等の増粘効果を有する食品原材料の使用で乳化効果を代替した、マヨネーズ風味食品が開示されている。
【0011】
特許文献8には、卵を使用せずに、セルロースエーテルならびに分離大豆蛋白、脱脂粉乳又は澱粉を含むことを特徴とする低脂肪マヨネーズ組成物が開示されている。
【0012】
しかしながら、従来の卵を含まないマヨネーズ風ドレッシングは、卵に代えて別のタンパク質(例えば、大豆タンパク質等)を使用する場合があり、それによって別のアレルギーを誘発する可能性があった。また、卵に代えて用いられるタンパク質や澱粉等によりもたらされる物性は、マヨネーズのものとは異なる場合があった。
【0013】
そのため、当該分野においては依然として、卵を含まず、かつ他のアレルギーを誘発する可能性が低い、マヨネーズに匹敵する物性を有するマヨネーズ風ドレッシングが切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2011-130681号公報
【文献】特開平5-030941号公報
【文献】特開2008-035768号公報
【文献】特開2004-350525号公報
【文献】特開2005-333949号公報
【文献】特開2003-259834号公報
【文献】特開2002-335906号公報
【文献】特開2014-533101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、卵等のタンパク質を実質的に含むことなく、マヨネーズに匹敵する物性を有するマヨネーズ風ドレッシングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、水、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤及び乳化剤を所定の順序で配合してなる乳化組成物が、卵等のタンパク質を実質的に含むことなく、マヨネーズに匹敵する物性を達成できることを見出した。
【0017】
本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 水、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤を含むマヨネーズ風ドレッシング。
[2] タンパク質を実質的に含まない、[1]のマヨネーズ風ドレッシング。
[3] 油脂がキャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油からなる群から選択される一又は複数である、[1]又は[2]のマヨネーズ風ドレッシング。
[4] サイクロデキストリンがα-サイクロデキストリンである、[1]~[3]のいずれかのマヨネーズ風ドレッシング。
[5] 水溶性ゲル化剤がカルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、ιカラギーナン、ローカストビーンガム、λカラギーナン、κカラギーナン、ジェランガム、アルギン酸塩、グアーガムからなる群から選択される一又は複数である、[1]~[4]のいずれかのマヨネーズ風ドレッシング。
[6] 乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選択される一又は複数である、[1]~[5]のいずれかのマヨネーズ風ドレッシング。
[7] 乳化剤のHLB値が3~16である、[6]のマヨネーズ風ドレッシング。
[8] 以下の(1)及び(2)の工程を含む、マヨネーズ風ドレッシングの製造方法:
(1)水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を混合する工程、
(2)工程(1)で得られた混合物に乳化剤を加えてさらに混合する工程。
[9] [8]の方法で製造されたマヨネーズ風ドレッシング。
[10] 油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤を含む、マヨネーズ風ドレッシングを製造するためのキット。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、卵等のタンパク質を実質的に含むことなく、マヨネーズに匹敵する物性を有するマヨネーズ風ドレッシングを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、水、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤を含むマヨネーズ風ドレッシングに関するものである。
【0020】
本発明において「マヨネーズ風ドレッシング」とは、マヨネーズとは異なり原材料に卵黄又は全卵を含まないものの、油脂を水中油滴型に乳化してなる、マヨネーズと同等、又は類似する物性を有する半固体状ドレッシングを意味する。「物性」には、食感、光沢度、接着性等が含まれ、これらの物性は後述の実施例に記載される方法によって測定することができる。
【0021】
本発明において「油脂」とは、食用に供される動植物性油脂(食用油とも呼ばれる場合がある)を意味し、このような油脂としては、10℃における固体脂含有量(SFC)が0%~35%、好ましくは0%~30%、より好ましくは0%~25%のものである。当該油脂は、好ましくは20℃におけるSFCが0%~25%、好ましくは0%~20%、より好ましくは0%~15%のものである。本発明において利用可能な油脂としては、例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油等が挙げることができ(これらに限定はされない)、好ましくはマヨネーズの原材料として一般的に利用されるものが挙げられる。油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングは、油脂を任意の量で含むことができ、その含有量はマヨネーズにおいて一般的に用いられる量に基づいて、適宜選択することができる。例えば、マヨネーズ風ドレッシング中には油脂を、10重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%、より好ましくは50重量%~60重量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。
【0023】
「サイクロデキストリン」は、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖を意味し、ブドウ糖の数が6つのα-サイクロデキストリン、7つのβ-サイクロデキストリン、8つのγ-サイクロデキストリンが挙げられる。本発明においては、α-、β-、及びγ-サイクロデキストリン、ならびにそれらの任意の組み合わせを用いることができる。好ましくはα-サイクロデキストリンを使用する。α-サイクロデキストリンは水への溶解性が高く、ざらつきの少ないマヨネーズ風ドレッシングを得ることができる。
【0024】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングにおいて、サイクロデキストリンは他の構成成分と共に、マヨネーズと同等、又は類似する物性を付与することが可能な量で含めることができる。例えば、マヨネーズ風ドレッシング中にサイクロデキストリンを、0.1重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、より好ましくは1.5重量%~2.5重量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0025】
本発明において「水溶性ゲル化剤」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与する物質(増粘剤、増粘安定剤、糊料等とも呼ばれる場合がある)を意味する。このような水溶性ゲル化剤としては増粘多糖類を用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、ιカラギーナン、ローカストビーンガム、λカラギーナン、κカラギーナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、グアーガム等を挙げることができる。水溶性ゲル化剤はいずれか単独で用いてもよいし、異なる水溶性ゲル化剤を組み合わせて用いてもよい。より好ましくは、水溶性ゲル化剤はカルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、ιカラギーナン、ローカストビーンガム、λカラギーナン、κカラギーナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウムであり、さらに好ましくは、水溶性ゲル化剤はカルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガム、ιカラギーナン、ローカストビーンガムであり、特に好ましくは、水溶性ゲル化剤はカルボキシメチルセルロース、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガムである。
【0026】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングにおいて、水溶性ゲル化剤は他の構成成分と共に、マヨネーズと同等、又は類似する物性を付与することが可能な量で含めることができ、例えば、マヨネーズ風ドレッシング中に水溶性ゲル化剤を、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、より好ましくは0.05重量%~0.4重量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。本発明において水溶性ゲル化剤は、水溶液のゲル化を目的として一般的に用いられる量よりも少ない量、すなわち水溶液がゲル化しない量で用いられる。
【0027】
「乳化剤」は、飲食品において一般的に用いられるものを利用することができる。乳化剤のHLB値は特に限定されないが、HLB値が3~16程度のものを好ましく利用することができる。本発明において利用可能な乳化剤としては、ショ糖エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンが挙げられ、これらより選択される一又は複数を用いることができる。特に好ましくは、レシチンである。「レシチン」は、グリセロリン脂質の一種であり、本発明においては、飲食品において一般的に用いられるものを利用することができる。本発明において利用可能なレシチンとしては、大豆レシチン、菜種レシチン、ヒマワリレシチン、綿実レシチン、トウモロコシレシチン、落花生レシチン、パームレシチン、ゴマレシチン、コメレシチン、エゴマレシチン、アマニレシチン、卵黄レシチン、ならびにそれらの酵素分解レシチン、水素添加レシチン等が挙げられるが、これらに限定はされない。レシチンはいずれか単独で用いてもよいし、異なるレシチンを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングにおいて、乳化剤は他の構成成分と共に、マヨネーズと同等、又は類似する物性を付与することが可能な量で含めることができ、例えば、マヨネーズ風ドレッシング中に乳化剤を、0.01重量%~3重量%、好ましくは0.05重量%~2重量%、より好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。
【0029】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングは、更に水を含む。水は任意の量で含むことができ、例えば、マヨネーズ風ドレッシング中に水を、8重量%~85重量%、好ましくは9重量%~50重量%、より好ましくは10重量%~40重量%の範囲より適宜選択することができる。
【0030】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングは、タンパク質を実質的に含まないものとすることができる。タンパク質は一般的に、疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基とから構成され、その両親媒性の特性から乳化作用を有する。そのため、多くの乳化食品において、タンパク質は乳化剤としての機能を果たしている。マヨネーズでは、原料として含まれる卵黄又は全卵に含まれるタンパク質がこの機能を果たしている。一方、本発明においては、油脂、サイクロデキストリン、及び、水溶性ゲル化剤、ならびに、乳化剤は、水の存在下において、後述のとおり順次、混合することによって複合体を形成し、優れた乳化安定性が得られることから、乳化剤として機能するタンパク質を用いなくてもよい。したがって、本発明において「タンパク質を実質的に含まない」とは、本発明のマヨネーズ風ドレッシングにおいてタンパク質が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、タンパク質が一切含まれないことを意図するものではない。
【0031】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングには、上記成分に加えて、必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている保存剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、pH調整剤、香料、甘味料、呈味成分、酸味料等のその他の成分を配合することができる。これらその他の成分の配合量は、本発明において所望される、マヨネーズと同等、又は類似する物性が妨げられない範囲で、適宜選択することができる。
【0032】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングは、マヨネーズと同等、又は類似する物性を有し、公知の光沢度測定方法において30%以上の光沢度を有し、また、公知の接着性測定方法において最大荷重0.35N以上、1.0N以下、付着性400J/m3以上、1000J/m3以下の接着性を示す。
【0033】
本発明のマヨネーズ風ドレッシングは、水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を混合、攪拌し(工程(1))、次いで、得られた混合物に乳化剤を加えてさらに混合、攪拌すること(工程(2))よって製造することができる。工程(1)において、水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤の各成分は全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。また、上記その他の成分は、工程(1)及び工程(2)のいずれか、又は両方において、全ての成分をもしくは任意の組み合わせで適宜添加して混合、攪拌することができる。工程(1)で得られた水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤の混合物に対して、乳化剤を後から加えることによって、マヨネーズと同等、又は類似する物性を達成することができる。得られたマヨネーズ風ドレッシングは、適当な容器に充填・密封され、加熱殺菌処理等に付された後、提供することができる。
【0034】
本発明はまた、本発明のマヨネーズ風ドレッシングを製造するためのキットに関する。キットには、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び乳化剤、ならびにその他の成分、必要に応じてさらに水、が含まれ、それらは個別に別々の容器に、又は任意の組み合わせで別々の容器に収容することができる。例えば、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を第1の容器に収容し、乳化剤を第2の容器に収容することができる。その他の成分は、第1の容器に収容してもよいし、第2の容器に収容してもよいし、あるいは、第1の容器及び第2の容器にそれぞれ収容してもよい。
【0035】
キットに含まれる、油脂、サイクロデキストリン、水溶性ゲル化剤、及び、乳化剤、ならびにその他の成分は、粉末や顆粒等の固形の形態としてもよいし(必要に応じて賦形剤(デキストリン等)等を利用してもよい)、水溶液や分散液等の液体の形態としてもよい。各成分はその形態に応じて、容器に収容される前、又は収容された後に加熱殺菌処理等に付され、キットの構成要素とすることができる。
【0036】
キットは上述の本発明のマヨネーズ風ドレッシングの製造方法にしたがって利用することができ、ボール等の容器に、水(キットのいずれかの成分が液体の形態である場合、それに含まれる水を利用することができる)、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤、ならびに必要に応じてその他の成分を加えて、ミキサーやブレンダー等を用いて混合、攪拌し(工程(1))、次いで、得られた混合物に乳化剤及び必要に応じてその他の成分を加えて同様に混合、攪拌すること(工程(2))ことによって、本発明のマヨネーズ風ドレッシングを得ることができる。
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。
【実施例
【0037】
1.実験方法
(1)マヨネーズ風ドレッシングの作製
以下の組成にしたがって、実施例1及び比較例1-4,6のマヨネーズ風ドレッシングを作製した。比較例5として、市販のマヨネーズを用いた。各成分は2工程、又は1工程で混合し、2工程で混合する場合、まず工程(1)で示される成分を混合した後、工程(2)で示される成分を工程(1)で得られた混合物に加えて混合した。各成分の混合は、ハンドブレンダーを用いて20,000rpmにて10分間攪拌して行った。なお、以下、表中の各成分の量は重量比にて示される。
【0038】
【表1】
得られた各組成物は、4℃にて7日間、又は50℃にて7日間保存し、以下の実験に用いた。
【0039】
(2)官能評価
パネラー10名が、4℃にて7日間、又は50℃にて7日間保存した各組成物3gを食し、その風味について以下の基準で評価した。各組成物を食す前に、うがいを行い、事前に食した組成物の影響が残らないようにした。
〇:風味面、物性面(食感)ともマヨネーズとして認識できるもの
×:物性面(食感)、風味面いずれかの面でマヨネーズと認識できないもの
【0040】
(3)光沢度の評価
各組成物の光沢度は日本工業規格JIS Z 8741-1997.鏡面光沢度-測定方法に基づいて、デジタル光沢計GM-026(日本ソナテスト株式会社)を利用して行い、直径4cm、深さ5mmの円筒形の容器に組成物を敷き詰め、表面の凹凸を平らにした後、デジタル光沢計の入射角60°にて測定した。各測定時に、都度校正作業を行い、98.3になることを確認した。測定された光沢度(%)について、マヨネーズの値に基づいて以下の基準で評価した。
〇:30%以上
×:30%未満
【0041】
(4)接着性の評価
各組成物の接着性について、最大荷重[N]及び付着性[J/m3]を、食品物性試験機(クリープメータ:REONER II CREEP METER RE2-33005B(株式会社山電))を製造元の指示書に従って使用し、以下の条件で測定した。
【0042】
【表2】
測定された最大荷重[N]について、マヨネーズの値に基づいて以下の基準で評価した。
〇:0.35N以上、1.0N以下
×:0.35N未満、又は1.0N超
また、測定された付着性[J/m3]について、マヨネーズの値に基づいて以下の基準で評価した。
〇:400J/m3以上、1000J/m3以下
×:400J/m3未満、又は1.0[N]超
【0043】
2.結果
実施例1及び比較例1-5を、4℃にて7日間、又は50℃にて7日間保存したところ、いずれの組成物についても油分離(乳化破壊)は認められなかった。一方、比較例6については、50℃にて7日間の保存により、明らかな油分離が認められた。比較例6は、保存安定性が乏しかったことから、他の評価は行わなかった。
実施例1及び比較例1-5について、各評価結果を以下に示す。
【0044】
工程(1)で、水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を混合し、次いで、工程(2)で、工程(1)の混合物にレシチンを加えてさらに混合して得られた実施例1の組成物のみが、全ての評価項目においてマヨネーズと同等の値を示すことが確認された。
【0045】
比較例1は、実施例1と同じ成分組成を有するものであるが、1工程で全ての成分を混合したところ、実施例1とは異なり、全ての評価項目においてマヨネーズとは異なる値を示した。
【0046】
また、2工程に分けて各成分を混合したとしても、レシチン又は水溶性ゲル化剤を欠くことにより、その物性値はマヨネーズとは異なる値を示した(比較例2,4)。
【0047】
【表3】
【0048】
以上の結果より、工程(1)で、水、油脂、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を混合し、次いで、工程(2)で、工程(1)の混合物にレシチンを加えてさらに混合して得られた組成物は、マヨネーズと同等の物性を得ることが可能であり、マヨネーズの代替物として利用できることが明らかとなった。
【0049】
3.その他の乳化剤の評価
(1)マヨネーズ風ドレッシングの作製及び評価
上述の実施例1の組成において、クルードレシチン(HLB3~4)を同量のショ糖ステアリン酸脂肪酸エステル(HLB7、HLB11、又はHLB16)に代えた以外は同様にして、実施例2,3及び4のマヨネーズ風ドレッシングを作製した。作製は実施例1と同じく、工程(1)と工程(2)の2工程で混合して行った。
得られたマヨネーズ風ドレッシングについて、上述のとおり官能評価、光沢度の評価、及び接着性の評価を行った。
【0050】
(2)結果
実施例2,3及び4を、4℃にて7日間、又は50℃にて7日間保存したところ、いずれの組成物についても油分離(乳化破壊)は認められなかった。また、いずれの組成物についても、全ての評価項目においてマヨネーズと同等の値を示すことが確認された。各評価結果を以下に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
以上の結果より、本発明のマヨネーズ風ドレッシングには、様々な乳化剤を好適に利用することが可能であり、そのHLB値も限定されないことが確認された。