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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20240221BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/12 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019170628
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046130
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】石原 大雅
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508401(JP,A)
【文献】特開2009-137568(JP,A)
【文献】特開2010-260255(JP,A)
【文献】特開2019-064487(JP,A)
【文献】特開2006-142925(JP,A)
【文献】特表2018-520928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に、シーラント層を介して、制音体が配置され、
前記シーラント層の厚さは、一定でなく、前記シーラント層と前記制音体との間に隙間が設けられており、
前記隙間は、空隙の状態であり、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に規則的に配列された凹凸を有していることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向に一定でない、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ幅方向に漸増又は漸減する部分を有する、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤ幅方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有する、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記シーラント層の厚さは、タイヤ周方向に一定でない、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有する、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
タイヤ周方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有する、請求項5又は6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向のいずれにおいても一定でない、請求項1~7のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有する、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
タイヤ幅方向断面視及びタイヤ周方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有する、請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記制音体は、スポンジ材である、請求項1~10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記制音体は、不織布である、請求項1~10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの内腔内で生じる空気やガスの共鳴振動(空洞共鳴)を低減するため、タイヤ内面に、スポンジ材等からなる制音体を配置することが知られている(例えば、特許文献1)。制音体は、タイヤの内腔内での空気やガスの振動エネルギーを熱エネルギーへと変換し、タイヤの内腔内での空洞共鳴を抑制することができる。制音体としては、不織布を用いることも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-254924号公報
【文献】特開2016-210250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、タイヤパンク時に穴を塞ぐために、タイヤ内面にシーラント層を配置する場合がある。このような場合、釘がトレッド部を貫通して制音体が千切れ、その千切れた部分が釘の貫通により生じた穴に入り込むことによって、シーラント剤が穴にうまく流入することができず、耐パンク性能が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、耐パンク性能の低下を抑制した、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)本発明の空気入りタイヤは、
タイヤ内面に、シーラント層を介して、制音体が配置され、
前記シーラント層の厚さは、一定でないことを特徴とする。
ここでいう、「シーラント層の厚さ」は、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、タイヤ幅方向断面視において、タイヤ内面に垂直に測定した厚さをいうものとする。
【0007】
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0008】
(2)上記(1)では、前記シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向に一定でないことが好ましい。
【0009】
(3)上記(2)では、前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ幅方向に漸増又は漸減する部分を有することが好ましい。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)では、
タイヤ幅方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずかでは、前記シーラント層の厚さは、タイヤ周方向に一定でないことが好ましい。
【0012】
(6)上記(5)では、前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有することが好ましい。
【0013】
(7)上記(5)又は(6)では、
タイヤ周方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。
【0014】
(8)上記(1)~(7)のいずれかでは、前記シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向のいずれにおいても一定でないことが好ましい。
【0015】
(9)上記(8)では、前記シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有することが好ましい。
【0016】
(10)上記(8)又は(9)では、
タイヤ幅方向断面視及びタイヤ周方向断面視において、
前記シーラント層の前記制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。
【0017】
(11)上記(1)~(10)のいずれかでは、前記制音体は、スポンジ材であることが好ましい。
【0018】
(12)上記(1)~(10)のいずれかでは、前記制音体は、不織布であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐パンク性能の低下を抑制した、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】シーラント層及び制音体を拡大して示す図である。
図3】シーラント層の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)1は、一対のビード部2と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該サイドウォール部に連なるトレッド部5とを有している。また、タイヤ1は、一対のビード部2に埋設されたビードコア2aにトロイダル状に跨るカーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルト4とトレッドゴムとを順に備えている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態においては、ビードコア2aのタイヤ径方向外側に、図示例で断面略三角形状のビードフィラ2bをさらに備えている。一方で、本発明では、ビード部2の構成は、特に限定されるものではなく、ビードコア2aやビードフィラ2bの断面形状、大きさ、材質は任意の既知のものとすることができる。また、ビードコア2aやビードフィラ2bを有しない構成とすることもできる。
【0024】
また、本実施形態では、カーカス3は、有機繊維からなる1枚のカーカスプライで構成されているが、本発明では、カーカス3を構成するカーカスプライの枚数や材質も特に限定されない。
【0025】
また、本実施形態では、ベルト4は、層間でコード(この例ではスチールコード)が互いに交差する、2層のベルト層4a、4bからなるが、本発明では、ベルト構造は特に限定されず、コードの材質等、打ち込み数、傾斜角度、ベルト層数等、任意の構成とすることができる。
また、トレッド部5のゴムの材質等も、任意の既知の構成とすることができる。
【0026】
ここで、図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ内面6(本例では、インナーライナーのさらに内面)に、シーラント層8を介して、制音体7が配置されている。本実施形態では、制音体7は、少なくとも一部(図示例では全部)が、トレッド部5のタイヤ径方向内側に配置されている。なお、この例では、制音体7及びシーラント層8は、タイヤ周上に、タイヤ周方向に沿って連続して設けられている。
【0027】
シーラント層8には、粘着性の流動体であるシーラント液を用いることができ、例えば、パンクシール用のシーラント剤として従来公知のものなどを用いることができる。シーラント剤としては、例えば、シリコーン系化合物、スチレン系化合物、ウレタン系化合物、エチレン系化合物、ポリブテンとテルペン樹脂とを主成分とするゲルシートからなるもの等を用いることができる。
【0028】
本実施形態では、制音体7は、多孔質体(この例ではスポンジ材)である。この例では、制音体7は、タイヤ幅方向断面視で略矩形の形状をなしているが、制音体7の形状は特に限定されない。また、制音体7の寸法等も特には限定されないが、制音体7の体積は、タイヤ1の内腔の全体積の0.1%~80%とすることが好ましい。制音体7の体積をタイヤ1の内腔の全体積の0.1%以上として制音性を高めることができ、一方で、制音体7の体積をタイヤ1の内腔の全体積の80%以下として、制音体7による重量増を抑制することができるからである。ここでいう「体積」は、常温、常圧下での、タイヤ1をリムから取り外した状態でのものとする。また、「タイヤの内腔の全体積」は、タイヤ1を適用リムに装着し、規定内圧を充填した際の全体積をいうものとする。
【0029】
制音体7がスポンジ材である場合、スポンジ材は、海綿状の多孔構造体とすることができ、例えば、ゴムや合成樹脂を発泡させた連続気泡を有する、いわゆるスポンジを含む。また、スポンジ材は、上述のスポンジの他に、動物繊維、植物繊維又は合成繊維等を絡み合わせて一体に連結したウエブ状のものを含む。なお、上述の「多孔構造体」は、連続気泡を有する構造体に限らず、独立気泡を有する構造体も含む意味である。上述のようなスポンジ材は、表面や内部に形成される空隙が振動する空気の振動エネルギーを熱エネルギーに変換する。これにより、タイヤの内腔での空洞共鳴が抑制され、その結果、ロードノイズを低減することができる。
スポンジ材の材料としては、例えば、エーテル系ポリウレタンスポンジ、エステル系ポリウレタンスポンジ、ポリエチレンスポンジなどの合成樹脂スポンジ、クロロプレンゴムスポンジ(CRスポンジ)、エチレンプロピレンジエンゴムスポンジ(EPDMスポンジ)、ニトリルゴムスポンジ(NBRスポンジ)などのゴムスポンジが挙げられる。制音性、軽量性、発泡の調節可能性、耐久性などの観点を考慮すれば、エーテル系ポリウレタンスポンジを含むポリウレタン系又はポリエチレン系等のスポンジを用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態のように、制音体7がスポンジ材である場合は、スポンジ材の硬度は、特には限定されないが、5~450Nの範囲とすることが好ましい。硬度を5N以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、硬度を450N以下とすることにより、制音体の接着力を増大させることができる。同様に、制音体の硬度は、8~300Nの範囲とすることがより好ましい。ここで、「硬度」とは、JIS K6400の第6項の測定法のうち、6.3項のA法に準拠して測定された値とする。
また、スポンジ材の比重は、0.001~0.090とすることが好ましい。スポンジ材の比重を0.001以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、スポンジ材の比重を0.090以下とすることにより、スポンジ材による重量増を抑制することができるからである。同様に、スポンジ材の比重は、0.003~0.080とすることがより好ましい。ここで、「比重」とは、JIS K6400の第5項の測定法に準拠し、見かけ密度を比重に換算した値とする。
また、スポンジ材の引張り強さは、20~500kPaとすることが好ましい。引張り強さを20kPa以上とすることにより、接着力を向上させることができ、一方で、引張り強さを500kPa以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の引張り強さは、40~400kPaとすることがより好ましい。ここで、「引張り強さ」とは、JIS K6400の第10項の測定法に準拠し、1号形のダンベル状試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の破断時の伸びは、110%以上800%以下とすることが好ましい。破断時の伸びを110%以上とすることにより、スポンジ材にクラックが発生するのを抑制することができ、一方で、破断時の伸びを800%以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の破断時の伸びは、130%以上750%以下とすることがより好ましい。ここで、「破断時の伸び」とは、JIS K6400の第10項の測定法に準拠し、1号形のダンベル状試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の引裂強さは、1~130N/cmとすることが好ましい。引裂強さを1N/cm以上とすることにより、スポンジ材にクラックが発生するのを抑制することができ、一方で、引裂強さを130N/cm以下とすることにより、スポンジ材の製造性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の引裂強さは、3~115N/cmとすることがより好ましい。ここで、「引裂強さ」とは、JIS K6400の第11項の測定法に準拠し、1号形の試験片で測定した値とする。
また、スポンジ材の発泡率は、1%以上40%以下とすることが好ましい。発泡率を1%以上とすることにより、制音性を向上させることができ、一方で、発泡率を40%以下とすることにより、スポンジ材の生産性を向上させることができるからである。同様に、スポンジ材の発泡率は、2~25%とすることがより好ましい。ここで、「発泡率」とは、スポンジ材の固相部の比重Aの、スポンジ材の比重Bに対する比A/Bから1を引いて、その値に100を乗じた値をいう。
また、スポンジ材の全体の質量は、5~800gとすることが好ましい。質量を5g以上とすることにより、制音性を低減することができ、一方で、質量を800g以下とすることにより、スポンジ材による重量増を抑制することができるからである。同様に、スポンジ材の質量は、20~600gとすることが好ましい。
【0031】
制音体7を構成する材料は、空洞共鳴エネルギーの緩和、吸収、別のエネルギー(例えば、熱エネルギー)への変換、等によって、空洞共鳴エネルギーを低減するようにすることができるものであれば良く、上述した多孔質体に限られるものではなく、例えば、有機繊維や無機繊維からなる不織布等を用いることもできる。
制音体に用いる有機繊維の例としては、レーヨンやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリベンゾイミダゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルアルコール、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド(アラミド)、芳香族ポリイミド等が挙げられる。また、制音体に用いる無機繊維の例としては、炭素繊維やフッ素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。なお、異なる種類の繊維を2種以上混合して用いることもできる。
また、制音体に用いる不織布を構成する繊維の長さや径は、任意に設定することができる。特には限定されないが、繊維の径は、例えば100nm~200μmとすることができる。
また、制音体に用いる不織布の目付けは、10g/m2~300g/m2であることが好ましい。目付けを10g/m2以上とすることにより、繊維をより均一にすることができ、一方で、300g/m2とすることにより、制音体を設けたことによる過度の重量増を招かないようにすることができる。
【0032】
図2は、シーラント層及び制音体を拡大して示す図である。図3は、シーラント層の斜視図である。
ここで、本実施形態では、シーラント層8の厚さは、一定でない。より具体的には、図1図3に示すように、シーラント層8の厚さは、タイヤ幅方向に一定でない。また、本例では、シーラント層8の厚さは、タイヤ周方向にも一定でない。
【0033】
さらに具体的には、シーラント層8は、該シーラント層8の厚さがタイヤ幅方向に漸増又は漸減する部分を有する。本例では、図1図3に示すように、タイヤ幅方向断面視において、シーラント層8の制音体7側の表面は、断面波状の形状を有する。
【0034】
本例では、シーラント層8は、該シーラント層8の厚さがタイヤ周方向にも漸増又は漸減する部分を有する。本例では、タイヤ周方向断面視において、シーラント層8の制音体7側の表面は、断面波状の形状を有する。
【0035】
図3に示すように、本例では、シーラント層8の制音体7側の表面は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に規則的に配列された凹凸を有している。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0036】
本実施形態の空気入りタイヤによれば、まず、タイヤ内面6に制音体7が配置されているため、制音性を向上させることができる。また、タイヤ内面6にシーラント層8が配置されているため、タイヤパンク時に穴を塞ぐこともできる。
ここで、本実施形態では、シーラント層8の厚さは、一定でないため、制音体7との間に隙間が生じる箇所を有する。これにより、当該隙間に対応する箇所では、釘がトレッド部を貫通して釘が引き抜かれる際にも、千切れた制音体7が当該隙間からタイヤ内腔へと排出され、千切れた制音体7がシーラント層8を介して釘の貫通により生じた穴に入り込むのを抑制することができ、シーラント剤が穴にうまく流入しなくなってしまうのを抑制することができる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、耐パンク性能の低下を抑制することができる。
さらに、制音体7は、通常熱がこもりやすく、タイヤの故障の原因ともなり得るが、本実施形態では、上記の隙間によって放熱効果が得られるため、制音体に熱がこもるのを抑制して、タイヤの故障を抑制することもできる。
【0037】
ここで、シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向に一定でないことが好ましい。タイヤ幅方向に見て、シーラント層と制音体との間に隙間が生じる箇所を有するようにして、上記の効果を得ることができるからである。この場合、シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ幅方向に漸増又は漸減する部分を有することがより好ましい。
また、タイヤ幅方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。上記の隙間をタイヤ幅方向に満遍なく設けつつも、タイヤ幅方向においてシーラント層と制音体との接着性を十分に確保することができるからである。断面波状は、方形波状とすることもできるが、正弦波状とすることの方が好ましい。なお、タイヤ幅方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向外側から内側に突出する部分(山部)の80%以上(好ましくは全て)が制音体に接触していることが好ましい。山部は、隙間の体積を減少させてしまう部分であるため、シーラント層と制音体との接着性を確保する機能を持たせることが好ましいからである。一方で、タイヤ幅方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向内側から外側に凹む部分(谷部)(すなわち上記隙間)の高さは、タイヤ幅方向に均一としても良いし、ばらついていても良い。
【0038】
また、シーラント層の厚さは、タイヤ周方向に一定でないことが好ましい。タイヤ周方向に見て、シーラント層と制音体との間に隙間が生じる箇所を有するようにして、上記の効果を得ることができるからである。この場合、シーラント層は、該シーラント層の厚さがタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有することがより好ましい。また、タイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。上記の隙間をタイヤ周方向に満遍なく設けつつも、タイヤ周方向においてシーラント層と制音体との接着性を十分に確保することができるからである。断面波状は、方形波状とすることもできるが、正弦波状とすることの方が好ましい。
なお、タイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向外側から内側に突出する部分(山部)の80%以上(好ましくは全て)が制音体に接触していることが好ましい。山部は、隙間の体積を減少させてしまう部分であるため、シーラント層と制音体との接着性を確保する機能を持たせることが好ましいからである。一方で、タイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向内側から外側に凹む部分(谷部)(すなわち上記隙間)の高さは、タイヤ周方向に均一としても良いし、ばらついていても良い。
【0039】
また、シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向のいずれにおいても一定でないことが好ましい。タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に見て、シーラント層と制音体との間に隙間が生じる箇所を有するようにして、上記の効果を得ることができるからである。この場合、シーラント層は、該シータント層の厚さがタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に漸増又は漸減する部分を有することがより好ましい。また、タイヤ幅方向断面視及びタイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面は、断面波状の形状を有することが好ましい。上記の隙間をタイヤ幅方向及びタイヤ周方向に満遍なく設けつつも、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向においてシーラント層と制音体との接着性を十分に確保することができるからである。断面波状は、方形波状とすることもできるが、正弦波状とすることの方が好ましい。
なお、タイヤ幅方向断面視及びタイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向外側から内側に突出する部分(山部)の80%以上(好ましくは全て)が制音体に接触していることが好ましい。山部は、隙間の体積を減少させてしまう部分であるため、シーラント層と制音体との接着性を確保する機能を持たせることが好ましいからである。一方で、タイヤ幅方向断面視及びタイヤ周方向断面視において、シーラント層の制音体側の表面が断面波状の形状を有する場合、タイヤ径方向内側から外側に凹む部分(谷部)(すなわち上記隙間)の高さは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に均一としても良いし、ばらついていても良い。
【0040】
シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及び/又はタイヤ周方向に規則的に変化するものとすることができ、例えば図3に示したように、シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向に規則的に変化するものとすることができる。
一方で、シーラント層の厚さは、タイヤ幅方向及び/又はタイヤ周方向にランダムに変化するものとすることもできる。
【0041】
シーラント層のタイヤ内面との接触面積S1に対する、シーラント層と制音体との接触面積(接触箇所が複数の場合はその総和)S2の比S2/S1は、0.05~0.6とすることが好ましい。比S2/S1を0.05以上とすることにより、シーラント層と制音体との接着性をより一層高めることができ、一方で、比S2/S1を0.6以下とすることにより、上記の隙間を十分に設けて耐パンク性の低下をより一層抑制することができるからである。同様の理由により、上記比S2/S1は、0.1~0.3とすることがより好ましい。
例えば、シーラント層と制音体とが接触している一箇所当たりの接触面積は、25~400mm2とすることが好ましい。25mm2以上とすることにより、シーラント層と制音体との接着性をより一層高めることができ、一方で、400mm2以下とすることにより、上記の隙間を十分に設けて耐パンク性の低下をより一層抑制することができるからである。同様の理由により、上記一箇所当たりの接触面積は、50~100mm2とすることがより好ましい。
シーラント層と制音体とが接触している箇所の個数密度は、0.00125~0.024個/mm2とすることが好ましい。0.00125個/mm2以上とすることにより、シーラント層と制音体との接着性をより一層高めることができ、一方で、0.024個/mm2以下とすることにより、上記の隙間を十分に設けて耐パンク性の低下をより一層抑制することができるからである。同様の理由により、個数密度は、0.001~0.012個/mm2とすることがより好ましい。
同様に、タイヤ幅方向においては、シーラント層と制音体とが接触している箇所の個数密度は、0.00125~0.024個/mmとすることが好ましく、0.001~0.012個/mmとすることがより好ましい。また、タイヤ周方向においては、シーラント層と制音体とが接触している箇所の個数密度は、0.00125~0.024個/mmとすることが好ましく、0.001~0.012個/mmとすることがより好ましい。
なお、タイヤ幅方向においてシーラント層と制音体とが接触している箇所の個数密度は、タイヤ幅方向においてシーラント層と制音体とが接触している箇所の個数密度より大きくても小さくても同じであっても良い。
【0042】
図2に示すように、シーラント層の厚さが最も厚い箇所の厚さをd1、シーラント層の厚さが最も薄い箇所の厚さをd2とするとき、比d2/d1は、0.2~0.7とすることが好ましい。比d2/d1を0.2以上とすることにより、接触箇所への応力によってシーラント層と制音体とが剥離するのを抑制することができ、一方で、比d2/d1を0.7以下とすることにより、上記の隙間を十分に設けて耐パンク性の低下をより一層抑制することができるからである。同様の理由により、上記比d2/d1は、0.3~0.6とすることがより好ましい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、図1では、シーラント層8のタイヤ幅方向の幅は、制音体7のタイヤ幅方向の幅と同じとしているが、大きくすることも小さくすることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1:空気入りタイヤ
2:ビード部
2a:ビードコア
2b:ビードフィラ
3:カーカス
4:ベルト
5:トレッド部
6:タイヤ内面
7:制音体
8:シーラント層
図1
図2
図3