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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/806 20220101AFI20240221BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240221BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20240221BHJP
   B01F 33/70 20220101ALI20240221BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20240221BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20240221BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20240221BHJP
【FI】
B01F27/806
B01D19/00 101
B01F27/90
B01F33/70
B01F35/213
B01F35/221
B01F35/92
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019174934
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2020075238
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018187248
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】黒川 俊司
(72)【発明者】
【氏名】杉本 章司
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英和
(72)【発明者】
【氏名】峰久 浩二
(72)【発明者】
【氏名】香川 英二
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-330847(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1894087(KR,B1)
【文献】特開2009-190026(JP,A)
【文献】特開2018-171561(JP,A)
【文献】実開昭60-079530(JP,U)
【文献】実開昭60-084096(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110354720(CN,A)
【文献】実開昭60-168535(JP,U)
【文献】特開2006-102608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
A23L 11/00-11/70
B01D 19/00-19/04
B01F 33/70-33/71
B01F 35/00-35/95
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
C12M 1/00- 1/42
F24C 7/02
H05B 6/64
H05B 6/70- 6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、
撹拌軸を回転させる回転装置と、
撹拌翼を上下動させる昇降装置と、
材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、
収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、
撹拌翼の上下方向位置を規定するポジションを複数通り制御する制御装置と、を備え、
前記撹拌翼が、前記撹拌軸を挿通する光ファイバを備える温度センサを備え、
前記撹拌軸が、前記撹拌翼の回転時も光ファイバが回転しないように保持するロータリーコネクタに支持され、
前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程を実行するプログラムを備え、第一の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションと異なる第二のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第一の撹拌パターンを実行可能であることを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、
撹拌軸を回転させる回転装置と、
撹拌翼を上下動させる昇降装置と、
撹拌翼の上下方向位置を規定するポジションを複数通り制御する制御装置と、
材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、
収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、を備え、
前記撹拌翼が、温度センサを備え、
前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程を実行するプログラムを備え、
前記制御装置が、第一の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションと異なる第二のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第一の撹拌パターンを実行可能であること、
前記撹拌容器外の温度センサの検出値が所定の温度以上である場合に、前記撹拌翼を下降して前記温度センサを材料に当接させた後、前記温度センサの検出値が所定の温度未満となるまで前記プログラムを実行しないことを特徴とする撹拌装置。
【請求項3】
前記制御装置が、第一の時間帯に前記撹拌翼が前記第一のポジションと異なる第三のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第三のポジションと異なる第四のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第二の撹拌パターンを実行可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記撹拌軸を挿通する光ファイバを備えており、
前記撹拌軸が、前記撹拌翼の回転時も光ファイバが回転しないように保持するロータリーコネクタに支持されていることを特徴とする請求項に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記撹拌翼が、前記撹拌軸に工具を用いずに着脱できるように固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記収納部内を減圧する減圧装置を備え、
前記プログラムが、前記収納部内を減圧し、前記加熱・撹拌工程を経た材料を脱泡する脱泡工程を実行することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記収納部内に設置された撹拌容器内の材料を監視する監視センサと、前記収納部内の圧力を制御する圧力制御装置とを備え、
前記脱泡工程において、前記プログラムが、前記監視センサからの信号に基づき前記撹拌容器内の材料が吹きこぼれないように前記収納部内の圧力を前記圧力制御装置により制御することを特徴とする請求項に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記収納部には、前記撹拌軸が昇降自在に挿通されるシャフトシールが取り付けられており、
前記シャフトシールが、前記撹拌軸が挿通され、前記撹拌軸に付着した材料をかきとるスクレーパーシールを備えることを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項9】
前記シャフトシールが、前記スクレーパーシールの上方に設けられ、前記撹拌軸が挿通される第一のシール部材と、第一のシール部材から発生した摩耗粉を回収する摩耗粉回収部と、を備えることを特徴とする請求項に記載の撹拌装置。
【請求項10】
前記シャフトシールが、前記収納部を気密とするための第二のシール部材を備えることを特徴とする請求項またはに記載の撹拌装置。
【請求項11】
前記収納部が、前記撹拌翼を冷却するためのエア噴出口を備えることを特徴とする請求項ないし10のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項12】
請求項に記載の撹拌装置を用いた脱泡済み液体材料の製造方法であって、
材料が投入された前記撹拌容器を前記収納部に収納し、前記加熱・撹拌工程および前記脱泡工程を実行することにより脱泡済み液体材料を自動で製造する、脱泡済み液体材料の製造方法。
【請求項13】
前記材料が、化粧品材料である、請求項12に記載の脱泡済み液体材料の製造方法。
【請求項14】
前記撹拌容器に投入される材料は、固形又は粘度の高い液体である、請求項12に記載の脱泡済み液体材料の製造方法。
【請求項15】
材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、
収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、
収納部内を減圧する減圧装置と、
収納部内に設置された撹拌容器内の材料を監視する監視センサと、
収納部内の圧力を制御する圧力制御装置と、
下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、
撹拌軸を回転させる回転装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程、および、前記収納部内を減圧し、前記撹拌容器内の材料を撹拌しながら脱泡する脱泡工程を実行するプログラムを備え、
前記脱泡工程において、前記プログラムが、前記監視センサからの信号に基づき前記撹拌容器内の材料が吹きこぼれないように前記収納部内の圧力を前記圧力制御装置により制御することを特徴とする撹拌装置。
【請求項16】
前記撹拌翼が、温度センサを備えていることを特徴とする請求項15に記載の撹拌装置。
【請求項17】
請求項1ない7のいずれかに記載の撹拌装置の前記収納部に設けられた貫通孔に装着されるシャフトシールであって、
前記貫通孔に挿入される胴部と、
前記胴部を貫通孔に固定する固定部と、
前記胴部に形成された、円柱状のシャフトが回転自在かつ昇降自在に挿通される挿通孔と、
前記挿通孔の下端部に設けられた、前記シャフトに付着した材料をかきとるスクレーパーシールと、を備えることを特徴とするシャフトシール。
【請求項18】
前記シャフトシールが、前記スクレーパーシールの上方に設けられ、前記シャフトが挿通される第一のシール部材と、第一のシール部材から発生した摩耗粉を回収する摩耗粉回収部と、を備えることを特徴とする請求項17に記載のシャフトシール。
【請求項19】
前記摩耗粉回収部が、前記挿通孔の上部を構成する大径部および前記挿通孔の下部を構成する小径部により構成されることを特徴とする請求項18に記載のシャフトシール。
【請求項20】
前記シャフトシールが、前記貫通孔の下方を気密とするための第二のシール部材を備えることを特徴とする請求項17ないし19のいずれかに記載のシャフトシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置に関し、特にマイクロ波加熱を行いながら所定の条件で撹拌翼を動作させることができる撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波に、反応速度の向上や従来の加熱法とは異なる反応が促進するなどの化学反応促進効果がある。これらの効果はしばしばマイクロ波による加熱効果以外の効果、または加熱効果以上の効果という観点からマイクロ波効果またはマイクロ波電界効果、若しくは非熱的効果と呼ばれている。マイクロ波の応用分野は、有機化学、無機化学、セラミックス、医療等幅広く、例えば、有機化学反応としては、ポリエステル樹脂の製造、或いは、銅フタロシニアンの製造などが知られている。
マイクロ波による製法の再現性と精度を高めるためには、均一加熱パターンを得ることが重要である。加熱ムラの問題を解決するために、撹拌翼を設け、被照射物を混合しながら撹拌することが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/199005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固形材料にマイクロ波を照射して加熱溶融する工程においては、固形材料に加熱ムラが生じると特定箇所だけが高温となり、容器が溶けてしまうという問題がある。
しかしながら、固形材料の種類と照射条件によっては、はじめに溶融する深さは一様ではなく、規定の撹拌動作では充分な撹拌を行うことができない場合があった。
特に多品種少量生産が要求される現場では、多数の撹拌動作手順に対応する必要があり、自動化を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、マイクロ波を照射した際に深さごとに溶融開始時間が異なる場合であっても、適切な深さで撹拌することを可能とする撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の本発明の撹拌装置は、下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、撹拌軸を回転させる回転装置と、撹拌翼を上下動させる昇降装置と、材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、撹拌翼の上下方向位置を規定するポジションを複数通り制御する制御装置と、を備え、前記撹拌翼が、前記撹拌軸を挿通する光ファイバを備える温度センサを備え、前記撹拌軸が、前記撹拌翼の回転時も光ファイバが回転しないように保持するロータリーコネクタに支持され、前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程を実行するプログラムを備え、第一の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションと異なる第二のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第一の撹拌パターンを実行可能であることを特徴とする。
第2の観点の本発明の撹拌装置は、下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、撹拌軸を回転させる回転装置と、撹拌翼を上下動させる昇降装置と、撹拌翼の上下方向位置を規定するポジションを複数通り制御する制御装置と、材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、を備え、前記撹拌翼が、温度センサを備え、前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程を実行するプログラムを備え、前記制御装置が、第一の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第一のポジションと異なる第二のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第一の撹拌パターンを実行可能であること、前記撹拌容器外の温度センサの検出値が所定の温度以上である場合に、前記撹拌翼を下降して前記温度センサを材料に当接させた後、前記温度センサの検出値が所定の温度未満となるまで前記プログラムを実行しないことを特徴とする。
上記撹拌装置において、前記制御装置が、第一の時間帯に前記撹拌翼が前記第一のポジションと異なる第三のポジションに位置するように前記昇降装置を制御し、第二の時間帯に前記撹拌翼が第三のポジションと異なる第四のポジションに位置するように前記昇降装置を制御する、第二の撹拌パターンを実行可能であることを特徴としてもよい。
上記第2の観点の撹拌装置において、前記温度センサは、前記撹拌軸を挿通する光ファイバを備えており、前記撹拌軸が、前記撹拌翼の回転時も光ファイバが回転しないように保持するロータリーコネクタに支持されていることを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、前記撹拌翼が、前記撹拌軸に工具を用いずに着脱できるように固定されていることを特徴としてもよい。
【0007】
上記撹拌装置において、収納部内を減圧する減圧装置を備え、前記プログラムが、前記収納部内を減圧し、前記加熱・撹拌工程を経た材料を脱泡する脱泡工程を実行することを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、収納部内に設置された撹拌容器内の材料を監視する監視センサと、収納部内の圧力を制御する圧力制御装置とを備え、前記脱泡工程において、前記プログラムが、前記監視センサからの信号に基づき前記撹拌容器内の材料が吹きこぼれないように前記収納部内の圧力を前記圧力制御装置により制御することを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、前記収納部には、前記撹拌軸が昇降自在に挿通されるシャフトシールが取り付けられており、前記シャフトシールが、前記撹拌軸が挿通され、前記撹拌軸に付着した材料をかきとるスクレーパーシールを備えることを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、前記シャフトシールが、前記スクレーパーシールの上方に設けられ、前記撹拌軸が挿通される第一のシール部材と、第一のシール部材から発生した摩耗粉を回収する摩耗粉回収部と、を備えることを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、前記シャフトシールが、前記収納部を気密とするための第二のシール部材を備えることを特徴としてもよい。
上記撹拌装置において、前記収納部が、前記撹拌翼を冷却するためのエア噴出口を備えることを特徴としてもよい。
【0008】
本発明の脱泡済み液体材料の製造方法は、上記監視センサを備える撹拌装置を用いた脱泡済み液体材料の製造方法であって、材料が投入された前記撹拌容器を前記収納部に収納し、前記加熱・撹拌工程および前記脱泡工程を実行することにより脱泡済み液体材料を自動で製造する。
上記脱泡済み液体材料の製造方法において、前記材料が、化粧品材料であるように構成してもよい。
上記脱泡済み液体材料の製造方法において、前記撹拌容器に投入される材料は、固形又は粘度の高い液体であるように構成してもよい。
【0009】
第3の観点の本発明の撹拌装置は、材料が入った撹拌容器を収納する収納部と、収納部内にマイクロ波を照射するマグネトロンと、収納部内を減圧する減圧装置と、収納部内に設置された撹拌容器内の材料を監視する監視センサと、収納部内の圧力を制御する圧力制御装置と、下部に撹拌翼が固定された撹拌軸と、撹拌軸を回転させる回転装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置が、前記マグネトロンによるマイクロ波加熱をしながら前記撹拌翼による撹拌を行う加熱・撹拌工程、および、前記収納部内を減圧し、前記撹拌容器内の材料を撹拌しながら脱泡する脱泡工程を実行するプログラムを備え、前記脱泡工程において、前記プログラムが、前記監視センサからの信号に基づき前記撹拌容器内の材料が吹きこぼれないように前記収納部内の圧力を前記圧力制御装置により制御することを特徴とする。
上記第3の観点の撹拌装置において、前記撹拌翼が、温度センサを備えていることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明のシャフトシールは、上記撹拌装置の前記収納部に設けられた貫通孔に装着されるシャフトシールであって、前記貫通孔に挿入される胴部(131)と、前記胴部を貫通孔に固定する固定部(132,133)と、前記胴部(131)に形成された、円柱状のシャフトが回転自在かつ昇降自在に挿通される挿通孔(134)と、前記挿通孔(134)の下端部に設けられた、前記シャフトに付着した材料をかきとるスクレーパーシール(137)と、を備えることを特徴とする。
上記シャフトシールにおいて、前記シャフトシールが、前記スクレーパーシールの上方に設けられ、前記シャフトが挿通される第一のシール部材と、第一のシール部材から発生した摩耗粉を回収する摩耗粉回収部と、を備えることを特徴としてもよい。
上記シャフトシールにおいて、前記摩耗粉回収部が、前記挿通孔の上部を構成する大径部および前記挿通孔の下部を構成する小径部により構成されることを特徴としてもよい。
上記シャフトシールにおいて、前記シャフトシールが、前記貫通孔の下方を気密とするための第二のシール部材を備えることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マイクロ波を照射した際に深さごとに溶融開始時間が異なる場合であっても、適切な深さで撹拌をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る撹拌脱泡システムの側面図である。
図2】撹拌軸を含む要部の側面断面図である。
図3】シャフトシールの側面断面図である。
図4】撹拌翼の上下方向のポジションを説明する図である。
図5】従来の化粧品材料を溶融し、脱泡する作業工程のフローチャートである。
図6】実施形態に係る加熱・撹拌工程のフローチャートである。
図7】実施形態に係る脱泡工程のフローチャートである。
図8】実施形態に係る加熱・撹拌工程における温度変化例を示すグラフである。
図9】従来の化粧品材料の加熱・撹拌工程における温度変化例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、発明を実施するための形態例を説明する。
<構成>
図1は、実施形態に係る撹拌脱泡システム1の側面図である。
撹拌脱泡システム1は、真空ポンプ2と、制御装置3と、圧力調整部(4,5)と、撹拌装置10と、キャビティ21と、観察装置22とを備えて構成されている。
【0014】
真空ポンプ2は、後述のキャビティ21内を減圧するための装置である。
制御装置3は、真空ポンプ2、撹拌装置10等の装置の動作を制御するコンピュータであり、中央処理装置(CPU)と、制御プログラムが格納された記憶装置と、表示装置とを備えている。ここで、表示装置は、無線通信が可能な外部の端末装置(例えば、タブレット端末)により構成してもよい。
圧力調整部は、真空レギュレータ4と、手動大気開放ボタン5と、圧力制御装置としての自動大気開放バルブ(図示せず)とを備えている。自動大気開放バルブは、制御装置3からの制御信号に基づき自動で開閉される。
【0015】
撹拌装置10は、撹拌翼11と、撹拌軸12と、シャフトシール13と、回転装置14と、昇降装置15と、操作部17とを備えて構成されている。
撹拌翼11は、撹拌軸12に取り付けられた細長い矩形の板部材であり、底部側の角部は撹拌容器Cの内底面を傷つけないように丸みをおびている。なお、撹拌翼11の形状は例示の形状に限定されない。また、複数枚の撹拌翼11を撹拌軸12に沿って多段に配置してもよい。
【0016】
図2は、撹拌軸12を含む要部の側面断面図である。
撹拌軸12内には、温度センサ18が挿通されるセンサ挿通孔121が形成されている。温度センサ18は、上部にロータリーコネクタを備える金属シース内に光ファイバーセンサを組み込んで構成されている。ロータリーコネクタは、例えば複数のボールベアリングを備える軸受機構により構成される。撹拌軸12は、キャビティの天板213に着脱自在に挿着されたシャフトシール13に挿通されている(なお、図2においては、後述のエア噴出口214a,214bを省略している。)。
【0017】
撹拌軸12の下端部には撹拌翼11が着脱自在に取り付けられている。撹拌翼11は、取付部111を中心に水平方向に延びる一対の板材により構成されている。取付部111の上部ネジ溝および下部ネジ溝が形成されており、上部ネジ溝の根元部分には第一のOリング112が装着されている。取付部111の下部ネジ溝には先端キャップ113が螺着されている。取付部111および先端キャップ113の脱着は、ドライバーなどの工具を使わずに人手で行うことができる。
【0018】
先端キャップ113内には、温度センサ18が挿通される第二のOリング114が設けられており、先端キャップ113の底面からは温度センサ18の先端部が突出している。図2で例示した先端キャップ113は円盤状の形状としているが、これとは異なり、固形物に刺さりやすい形状(例えば、円錐状(図4参照))に構成してもよい。また、撹拌翼11の下端部に刃を設け(上述の板材をナイフの如く構成し)、押付時に固形物を切れるように構成してもよい。
【0019】
図3は、シャフトシール13の側面断面図である。
シャフトシール13は、胴部131と、上部固定部132と、下部固定部133と、挿通孔134と、第一のシール135と、第二のシール136と、スクレーパーシール137と、キャップ138とを備えている。シャフトシール13は、上部固定部132と下部固定部133とによりキャビティの天板213を挟んで固定される。円盤状の下部固定部133の上面には、Oリングからなる第二のシール136を挿着するための環状溝が形成されている。胴部131、上部固定部132および下部固定部133は、マイクロ波透過性の材料(例えば、ポリプロピレンやテフロン(登録商標)などの樹脂)で構成されている。
【0020】
胴部131には撹拌軸12が挿通される挿通孔134が設けられている。挿通孔134の上端部には第一のシール135が配置されており、下端部にはスクレーパーシール137が配置されている。挿通孔134は上部大径部134aおよび下部小径部134bから構成されている。ここで、下部小径部134bは、撹拌軸12が摺動する直径を有している。このように挿通孔134の上部の径を大径とし、撹拌軸12の外周との間に空間を設けることにより、上部大径部134aで第一のシール135の摩耗粉が回収されるようにしている。
【0021】
スクレーパーシール137は、挿通孔134内を撹拌軸12が上下動する際に、撹拌軸12に付着した材料をかきとり、挿通孔134内に侵入させないために設けられている。スクレーパーシール137は、胴部131の下端とキャップ138により着脱可能に挟持固定されており、交換可能である。開発初期は、スクレーパーシール137ではなく通常のシールを採用していたところ、挿通孔134内に材料が侵入することがあったが、スクレーパーシール137を採用することにより材料侵入の問題を解消することができた。これにより材料替え時のコンタミネーションを防止することができるとともに、シャフトシール131および撹拌軸12の分解洗浄の手間を削減することを可能としている。
【0022】
回転装置14は、撹拌軸12と連結され、回転させるモータにより構成される。回転装置14による撹拌軸12の回転速度は、制御装置3により設定することができる。
制御装置3は、撹拌開始から所定時間までの回転速度と、所定時間経過後の回転速度とを個別に設定する機能を備えている。撹拌開始から所定時間までは、材料の粘度が高く、回転速度を遅くするスロースタートが効果的であるからである。また、加熱・溶融工程の回転速度と、脱泡工程の回転速度とを個別に設定する機能を制御装置3に持たせてもよい。また、制御装置3は、材料が固形物であり、撹拌ができない場合に一定時間をおいて再度撹拌を試みるリトライの回数を設定する機能も備えている。 昇降装置15は、垂直方向に往復動作する電動スライダー(図示せず)を備えている。電動スライダーは連結部材を介して回転装置14と連結されており、撹拌翼11の上下方向の位置決めをすることができる。
図4は、撹拌翼11の上下方向のポジションを説明する図である。本実施形態では、撹拌翼11は、待機ポジション(P1)を含む9つのポジションを取ることが可能である。別の観点からは、撹拌翼11は撹拌容器C内でP2~P9の8つの撹拌ポジションを取ることが可能である。なお、撹拌ポジションは例示の9つに限らず、任意の複数の撹拌ポジションを自由に設定することが可能である。
【0023】
加熱・撹拌工程においては、撹拌翼11の位置を時間の経過と共に変化させる。例えば、材料が表面から深い方向に向かって順次溶けていく条件の場合は、最初に撹拌翼11を材料の表面部分(例えば、図4のP2)に下降させて撹拌を行い、一定時間経過後に1つ深いポジション(例えば、図4のP3)に位置させて撹拌を行い、一定時間経過後に1つ深いポジション(例えば、図4のP4)に位置させて撹拌を行い、これを繰り返すことが開示される。ここで、撹拌翼11を下降後、化粧品材料が溶融温度に到達するまで、或いは一定時間を経過するまで動かさずに待機させる場合もある。また、材料の投入量によっては、最初にP3~P5に撹拌翼11を位置させる場合もあるし、一定時間経過後に2つ以上深いポジションに移動させる場合もある。
【0024】
また、表面から深い方向に順次ポジションを移動させるだけでなく、深い位置から表面方向に順次ポジションを移動させるようにしてもよいし、上下のポジション移動(例えば図4のP2およびP7の往復移動、P2からP7を経てP5への移動)を連続して行いながら撹拌を行うようにしてもよい。この際、設定されたポジションを順次移動するだけでなく、各ポジションにステイする時間(すなわち、ポジション毎の撹拌時間)を設定可能に構成することが好ましい。例えば、溶融初期では底近くの粘性が高く混ざりものが多い材料の場合、底近の下ポジションでの撹拌時間を表面近くの上ポジションでの撹拌時間の数倍に設定することが開示される。ここで、上ポジションでも短時間の撹拌を行うのは、上部が局所加熱されることや、オイルが多い材料などで見られる上下層での温度ムラを防ぐためである。
また、最初に各ポジションにおける温度を温度センサ18により検出し、最も温度の高い位置で撹拌を開始するようにしてもよい。さらには、温度センサ18の検出温度が一定以上になったことをトリガーに、ポジション移動を行うようにしてもよい。また、温度センサ18の検出温度が所定温度以上である場合には、撹拌翼11を下降させた後、回転動作をさせない機能を制御装置3に持たせてもよい。連続処理を行う場合、直前の脱泡処理により撹拌翼11が加熱され、温度センサ18の検出温度が実際の材料の温度よりも高くなる場合があるところ、撹拌翼11を材料に埋没させて冷却することが効果的な場合があるからである。
【0025】
操作部17には操作用のボタンが設けられており、予め設定された照射パターンを選択することが可能である。操作部17は、制御装置3と双方向通信が可能である。制御装置3は、温度センサを18および監視センサ212の検出値に基づきマグネトロンの出力を制御することにより選択された照射パターンを実行する。
【0026】
キャビティ21は、直方体ないし立方体形の空間であり、被照射物へマイクロ波を照射するための撹拌容器Cが配置される。キャビティ21の内壁には、マグネトロン(図示せず)と連通する照射口16(図1中点線で図示)が配置されている。この照射口は、1つでもよいし、2つまたは3つでもよいが、複数設ける場合には1つの内壁面に1つの照射口を設けるようにする。図4に示すように、キャビティ21の天板213には、撹拌翼11を冷却するためのエアを噴出するエア噴出口214a,214bが設けられている。複数の撹拌容器Cに対して連続処理を行う際には、脱泡工程完了時には溶融した高温(例えば、98℃)の材料により撹拌翼11が加熱されており、温度センサ18が実際の材料の温度よりも高い温度を表示することがある。そこで、脱泡工程完了後にエア噴出口214a,214bから冷却用エアを噴出し、待機ポジション(P1)にある撹拌翼11および温度センサ18を冷却してから次の撹拌容器C内の材料に対する処理を行うことが好ましい。なお、エア噴出口の数は図4に例示したものに限定されず、1個または3個以上であってもよいし、その位置についても、撹拌翼11に付着した材料がエア噴出により撹拌容器C内に落下するのであれば任意の位置に設けることが可能である。
【0027】
キャビティ21は減圧機能を備えることもあれば、減圧機能を備えないこともある。後者の場合は、撹拌容器Cを減圧環境下に収納するデシケータをキャビティ21に配置して使用する。キャビティ21の側面には、マイクロ波の漏洩が生じない大きさに構成された観察窓211を有する扉が設けられている。カメラを備えた観察装置22を観察窓211の付近に設置することにより、キャビティ内の状況を観察可能である。観察装置22は、例えばタブレット端末により構成することができ、無線通信網を介して制御装置3に撮像画像を送信する。キャビティ21の天面には監視センサ212が設けられており、脱泡工程の間、撹拌容器C内の液面の状態を監視する。監視センサ212は、例えば位置センサ、変位センサ、レーザセンサ、カメラ、カラーセンサ、光電センサ、距離センサにより構成することができる。
【0028】
制御装置3は、監視センサ212の検出信号に基づき圧力調整装置を制御することでキャビティ21内の圧力を制御する。具体的には、監視センサ212が化粧品材料の液面が一定以上上昇したことを検出した場合、制御装置3は自動大気開放バルブを開き、キャビティ21内の負圧を放出することであふれを防止する。ここで、制御装置3により、大気開放バルブの開き時間、開き度合い、ON/OFFパターンを設定可能に構成してもよいし、フィードバック制御を組み合わせてもよい。例えば、材料によっては大気開放バルブを短時間に連続してON/OFFさせる方が吹きこぼれを効率的に防ぐことができる場合もあるし、あふれる直前に大気近くまで一気に開放した後、再度大気開放バルブを閉めて真空度を復帰させるのがよい場合もある。また、圧力調整装置を例示の大気開放バルブではなく、真空レギュレータにより構成し、設定した真空度に圧力を制御するようにしてもよい。
脱泡工程では、撹拌翼11による撹拌を行うことが好ましい場合がある。例えば、オイル分が多い材料では、マイクロ波照射により溶融が進むと上下層での温度ムラが生じやすいため、上下ポジションの往復移動を連続して行うことで上下方向にも撹拌を行うことが好ましい。また、脱泡工程の間、温度センサ18の検出温度に基づきマイクロ波の照射出力の制御を行うことで、所望の温度を実現するようにしてもよい。
好ましい態様の制御装置3は、撹拌脱泡システム1の運転履歴(例えば、マグネトロンの出力の履歴、温度センサ18の測定値の履歴、回転装置14の回転数や稼働時間、圧力制御装置の稼働回数)を記録し、表示装置に表示させることができる。これによりGMP(Good Manufacturing Practice)での品質管理を行うこと、メンテナンスの時期を通知すること、トラブル時に原因を解析することなどが可能となる。
【0029】
<動作>
《従来例》
図5を参照しながら、従来の化粧品材料を加熱・撹拌および脱泡する工程を説明する。
[STEP101]
化粧品材料(ブロック状)を切り崩し、切り崩した塊を撹拌容器Cに手作業で投入する。ここで、撹拌容器Cは、マイクロ波透過性の材料(例えば、ポリプロピレンやテフロン(登録商標)などの樹脂)で構成されたジョッキであり、例えば3~10Lの容量である。パイレックスガラス(登録商標)などからなる撹拌容器は、破損時のコンタミネーションの問題があることから、使用不可である。仕込み量および加熱時間は、作業者の勘と経験による。
【0030】
[STEP102]
市販業務用電子レンジに撹拌容器Cを投入し、加熱溶融を行う。加熱時間は、仕込み量と材料の種類により異なる。
[STEP103]~[STEP104]
電子レンジから撹拌容器Cを取り出し、作業者が撹拌器具により化粧品材料を手動で撹拌する。撹拌せずに一気に加熱を行うと局所加熱され、容器溶融のおそれがあるため、手動で測温しながら複数回に分けて加熱を行う。
【0031】
[STEP105]
専用の真空デシケータを用い、減圧下で脱泡処理を行う。まず、溶融された化粧品材料を真空デシケータに設置する。発泡により撹拌容器Cから化粧品材料が溢れる前に、手動で大気開放バルブを操作し調整する作業を脱泡が充分になされるまで繰り返す。
【0032】
[STEP106]~[STEP107]
脱泡工程後の化粧品材料の温度を手動で測定し、必要に応じて再度電子レンジにて加熱する。
【0033】
[STEP108]
脱泡され、所望の温度範囲にある撹拌容器C内の化粧品材料(液体材料)を、充填タンクへ投入する。充填タンクへ投入された化粧品材料は、続く工程において、化粧品の容器(例えば、口紅の容器)に充填される。
図9に、従来の化粧品材料の加熱・撹拌工程における温度変化例を示す。図9に係る実験では、測定のために、撹拌容器C内の上層、中層および下層ならびに撹拌翼の最下端に光ファイバ温度計を設置して加熱・撹拌を行った。図9中、複数のピークが観察されるのは、電子レンジから撹拌容器Cを取り出し、作業者が撹拌器具により手動で撹拌する作業を複数回行っているからである。図9に係る実験からは、目標温度の95℃に到達するまでに材料が品質保証限界温度の98℃を超える場合があることを確認できる。
【0034】
《実施形態》
図6を参照しながら、実施形態に係る化粧品材料の加熱・撹拌工程を説明する。
[STEP201]
従来例と同様、化粧品材料の塊が投入された撹拌容器Cをキャビティ21内に設置する。
[STEP202]~[STEP203]
操作部17を操作して、加熱・撹拌および脱泡プログラムをスタートさせる。これにより、設置ポジションまで撹拌翼11が下降するのと共に、キャビティ21内へのマイクロ波照射が開始される。
【0035】
[STEP204]~[STEP206]
一定時間経過後、撹拌翼11を回転動作させて撹拌を開始する。化粧品材料の溶融が不十分であり、撹拌が開始できない場合は、撹拌翼11を一定時間停止待機させた後、リトライ機能により再度撹拌を試みる。
【0036】
[STEP207]
撹拌が正常に開始されると温度制御を開始する。温度センサ18の検出温度に基づきマイクロ波照射の出力を制御することで、所望の温度範囲を維持する。
【0037】
[STEP208]
加熱・撹拌工程の終了条件を充足するまで温度制御加熱を継続する。終了条件としては、例えば所定時間を経過したこと、所定温度に到達することを設定することが開示される。
【0038】
図7を参照しながら、実施形態に係る化粧品材料の脱泡工程を説明する。
[STEP209]~[STEP214]
加熱・撹拌工程の終了条件を充足すると、真空ポンプ2がONとなり、キャビティ21内が減圧される。脱泡工程は、予め定められた脱泡時間が経過するまで、キャビティ21内を減圧環境とすることで実施される。
脱泡工程の間、監視センサ212は撹拌容器C内の状況を監視しており、吹きこぼれのおそれがある場合は、自動大気開放バルブを開き、キャビティ21内の圧力を高めることで吹きこぼれを防止し、吹きこぼれのおそれが解消されると自動大気開放バルブを閉じる制御を行う。続いて、温度センサ18の検出温度に基づきマイクロ波照射の出力を制御することで、所望の温度範囲を維持する。なお、脱泡工程においてはマイクロ波照射を行わないようにしてもよい(すなわち、STEP214を行わないようにしてもよい。)。
【0039】
[STEP215]~[STEP216]
脱泡工程の終了条件を充足すると、真空ポンプ2がOFFとなり、自動大気開放バルブを開かれ、キャビティ21内の圧力が開放される。撹拌が行われている場合には撹拌が停止され、撹拌翼11は待機ポジション(P1)に上昇する。この際、スクレーパーシール137により撹拌軸12に付着した材料は掻き取られる。脱泡工程を経ることにより脱泡済みの化粧品材料(液体材料)を製造することができる。
加熱・撹拌および脱泡の工程(STEP202~216)が終了するまでキャビティ21からの撹拌容器Cの取り出しは不要である。撹拌容器Cのキャビティ21への設置時および取り出し時には、撹拌翼11は待機ポジション(P1)にあるので、出し入れの邪魔になることはない。
図8に、実施形態に係る加熱・撹拌工程における温度変化例を示す。図8に係る実験においても、図9に係る実験と同様、測定のために、撹拌容器C内の上層、中層および下層ならびに撹拌翼の最下端に光ファイバ温度計を設置して加熱・撹拌を行った。マイクロ波の照射出力は、光ファイバ温度計の検出値に基づき自動制御されている。図8においては、6分経過時点頃から撹拌を開始している。図8に係る実験からは、目標温度の95℃に到達するまでに材料が品質保証限界温度の98℃を超えることはないことを確認できる。
【0040】
以上に説明した実施形態の撹拌脱泡システム1によれば、キャビティ21内で温度制御および圧力制御を行いながら撹拌を行うため、材料にマイクロ波を照射して加熱溶融する工程において、深さごとに溶融開始時間が異なる場合(例えば、表面層から溶融が始まる場合)でも、溶融した深さに撹拌翼を位置させることで適格に撹拌することが可能となる。特に、加熱しても溶融しない沈殿物(例えば、雲母などのラメ入り材料)が含まれる混合材料においては、沈殿が生じ、撹拌しないと特定層の温度が上昇するという問題が生じるが、適切なポジションで撹拌することによりかかる問題を解消することが可能である。
【0041】
また、実施形態の撹拌脱泡システム1は、温度センサ18の検出値に基づきマイクロ波の照射出力を自動制御することで、材料が品質保証限界温度を超えて加熱されることを防ぐことが可能である。また、撹拌軸12に温度センサ18が組み込まれているので、市販の温度センサを撹拌容器C内に設置した際に生じる温度センサが撹拌翼11の撹拌動作を邪魔するという問題がない。
また、スクレーパーシール137を採用することにより、材料替え時のコンタミネーションを防止するとともに、シャフトシール131および撹拌軸12の分解洗浄の手間を削減することを可能としている。
また、挿通孔134の上部の径を大径とし、撹拌軸12の外周との間に空間を設けることにより、上部大径部134aで第一のシール135の摩耗粉を回収することで、コンタミネーションの問題が生じないようにしている。
さらには、加熱・撹拌工程から脱泡工程までの一連の工程を自動化することができるので、多品種少量生産を行う際の人件費を著しく削減させることが可能となる。
また、脱泡完了後にエア噴出口214a,214bから冷却用エアを噴出することで、撹拌翼11が冷却されるまでの待ち時間を短くすることができるので、連続処理を行う際の生産性を向上させることが可能である。なお、エアによる冷却は、撹拌翼11を液体により冷却する場合に生じるコンタミネーションの問題も生じない点でも有利である。
また、制御装置3が、撹拌が行えない場合には回転装置14を無理に稼働させず、一定時間経過後に再度稼働を試みるリトライ機能を備えているので、回転装置14の寿命を延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 撹拌脱泡システム
2 真空ポンプ
3 制御装置
4 真空レギュレータ
5 手動大気開放ボタン
10 撹拌装置
11 撹拌翼
111 取付部
112 第一のOリング
113 先端キャップ
114 第二のOリング
12 撹拌軸(シャフト)
121 センサ挿通孔
13 シャフトシール
131 胴部
132 上部固定部
133 下部固定部
134 挿通孔
135 第一のシール
136 第二のシール
137 スクレーパーシール
138 キャップ
14 回転装置
15 昇降装置
16 照射口
17 操作部
18 温度センサ
21 キャビティ(収納部)
211 観察窓
212 監視センサ
213 天板
214a,214b エア噴出口
22 観察装置
C 撹拌容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9