(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】インプリント装置、情報処理装置、インプリント方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 564Z
(21)【出願番号】P 2019225760
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 豊昭
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009798(JP,A)
【文献】特開2018-195811(JP,A)
【文献】特開2012-011310(JP,A)
【文献】特開2016-178127(JP,A)
【文献】特開2019-186477(JP,A)
【文献】特開2016-092270(JP,A)
【文献】特開2016-082100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記インプリント材の液滴を吐出する複数の吐出口を含み、前記複数の吐出口を介して前記基板上に前記インプリント材を供給する供給部と、
処理部と、を有し、
前記処理部は、
前記インプリント材の第1液滴が前記供給部によって前記基板の
ショット領域の第1領域上に供給される第1位置を取得し、
前記
ショット領域の前記第1領域の外側
であって、当該ショット領域の周辺部に位置する第2領域上に前記供給部によって供給される前記インプリント材の第2液滴の
経過時間に対応する予測の広がり量を取得し、
前記供給部が前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの予測時間を取得し、
(i)前記インプリント材の前記第1液滴が前記
ショット領域の前記第1領域上に供給される前記第1位置、(ii)前記
ショット領域の前記第2領域上に供給される前記インプリント材の前記第2液滴の予測の広がり量、及び、(iii)前記供給部が前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの前記予測時間に基づいて、前記インプリント材の前記第2液滴を供給すべき前記
ショット領域の前記第2領域上の第2位置を決定する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴に前記型を接触させた際に前記インプリント材の前記第2液滴が前記型の外側又は前記
ショット領域の前記第2領域の外側にはみださないように、前記インプリント材の前記第2液滴を供給すべき前記
ショット領域の前記第2領域上の前記第2位置を決定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記インプリント材の前記第1液滴が前記供給部から前記
ショット領域の前記第1領域上に供給される前記第1位置を、前記第1位置を示すドロップレシピから取得し、
更新されるドロップレシピが、前記インプリント材の前記第2液滴が前記
ショット領域の前記第2領域上に供給される前記第2位置を示すように、前記ドロップレシピを更新することを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記ドロップレシピによって示される最も外側の第1位置の供給位置が変更されるように、前記ドロップレシピを更新することを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記ドロップレシピによって示される前記最も外側の第1位置の供給位置が当該供給位置よりも内側に位置する供給位置に近づくように、前記ドロップレシピを更新することを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基板と前記複数の吐出口との相対的な位置関係が変更されるように前記供給部を移動させる移動部を更に有し、
前記移動部は、前記複数の吐出口から吐出された前記インプリント材の前記第2液滴が前記
ショット領域の前記第2領域の前記第2位置に供給されるように、前記供給部を移動させることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記移動部は、前記複数の吐出口から吐出される前記インプリント材の液滴の吐出方向に平行な軸周りに前記供給部を回転させることを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記基板を保持して移動するステージを更に有し、
前記ステージは、前記複数の吐出口から吐出された前記インプリント材の前記第2液滴が前記
ショット領域の前記第2領域の前記第2位置に供給されるように、前記供給部の下で移動することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記ステージは、前記複数の吐出口から吐出された前記インプリント材の前記第2液滴が前記
ショット領域の前記第2領域の前記第2位置に供給されるように、前記供給部の下を移動する際の前記ステージの軌道及び前記供給部の下を移動する際の前記ステージの速度の少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項8に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記基板は、前記
ショット領域を複数
有することを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記供給部は
、複数のショット領域のうち少なくとも2つ以上のショット領域上に連続的に前記インプリント材を供給し、
前記少なくとも2つ以上のショット領域上の前記インプリント材に前記型を接触させて前記インプリント材のパターンを連続的に形成することを特徴とする請求項10に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記供給部は、前記処理部で決定された前記第2位置に基づいて、前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項13】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置で用いられる、前記インプリント材の液滴を吐出する複数の吐出口を含み、前記複数の吐出口を介して前記基板上に前記インプリント材を供給する供給部から供給すべき前記インプリント材の液滴の前記基板上における供給位置を示すドロップレシピを生成する情報処理装置であって、
処理部を有し、
前記処理部は、
前記インプリント材の第1液滴が前記供給部によって前記基板の
ショット領域の第1領域上に供給される第1位置を取得し、
前記
ショット領域の前記第1領域の外側
であって、当該ショット領域の周辺部に位置する第2領域上に前記供給部によって供給される前記インプリント材の第2液滴の
経過時間に対応する予測の広がり量を取得し、
前記供給部が前
記ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの予測時間を取得し、
(i)前記インプリント材の前記第1液滴が前記
ショット領域の前記第1領域上に供給される前記第1位置、(ii)前記
ショット領域の前記第2領域上に供給される前記インプリント材の前記第2液滴の予測の広がり量、及び、(iii)前記供給部が前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの前記予測時間に基づいて、前記インプリント材の前記第2液滴を供給すべき前記
ショット領域の前記第2領域上の第2位置を決定する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記インプリント材の第1液滴が前記基板の
ショット領域の第1領域上に供給される第1位置を取得し、
前記
ショット領域の前記第1領域の外側
であって、当該ショット領域の周辺部に位置する第2領域上に供給される前記インプリント材の第2液滴の
経過時間に対応する予測の広がり量を取得し、
前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの予測時間を取得し、
(i)前記インプリント材の前記第1液滴が前記
ショット領域の前記第1領域上に供給される前記第1位置、(ii)前記
ショット領域の前記第2領域上に供給される前記インプリント材の前記第2液滴の予測の広がり量、及び、(iii)前記
ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記
ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの前記予測時間に基づいて、前記インプリント材の前記第2液滴を供給すべき前記
ショット領域の前記第2領域上の第2位置を決定し、
決定された前記
ショット領域の前記第2領域上の前記第2位置に前記インプリント材の前記第2液滴を供給する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、情報処理装置、インプリント方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上のインプリント材を型(モールド)で成形して、型に形成された微細な凹凸パターンを基板上に形成する微細加工技術が注目されている。かかる微細加工技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができる。
【0003】
インプリント技術を採用したインプリント装置では、基板上の複数のショット領域に連続的にインプリント材を供給し、その後、各ショット領域上のインプリント材と型とを接触させてインプリント材を硬化させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、インプリント材(の液滴)を供給してから型を接触させるまでの時間がショット領域ごとに異なる。そのため、インプリント材を供給してからの経過時間に伴い、基板上のインプリント材の液滴が広がり、その広がりによっては型を接触させた際にインプリント材がショット領域(型)や基板の外側にはみ出してしまうことがある(以下、「浸み出し」と称する)。このような浸み出しが発生すると、インプリント材がはみ出した箇所が不良になるとともに、インプリント材がはみ出した先のショット領域に形成されるパターンも不良となる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、基板上に形成されるパターンの不良を低減するのに有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記インプリント材の液滴を吐出する複数の吐出口を含み、前記複数の吐出口を介して前記基板上に前記インプリント材を供給する供給部と、処理部と、を有し、前記処理部は、前記インプリント材の第1液滴が前記供給部によって前記基板のショット領域の第1領域上に供給される第1位置を取得し、前記ショット領域の前記第1領域の外側であって、当該ショット領域の周辺部に位置する第2領域上に前記供給部によって供給される前記インプリント材の第2液滴の経過時間に対応する予測の広がり量を取得し、前記供給部が前記ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの予測時間を取得し、(i)前記インプリント材の前記第1液滴が前記ショット領域の前記第1領域上に供給される前記第1位置、(ii)前記ショット領域の前記第2領域上に供給される前記インプリント材の前記第2液滴の予測の広がり量、及び、(iii)前記供給部が前記ショット領域の前記第2領域上に前記インプリント材の前記第2液滴を供給してから前記型が前記ショット領域の前記第2領域上の前記インプリント材の前記第2液滴と接触するまでの前記予測時間に基づいて、前記インプリント材の前記第2液滴を供給すべき前記ショット領域の前記第2領域上の第2位置を決定する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、基板上に形成されるパターンの不良を低減するのに有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図3】基板上へのインプリント材の供給を説明するための図である。
【
図4】
図1に示すインプリント装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図4に示すS301からS303までの動作を説明するための図である。
【
図6】
図4に示すS301からS303までの動作を説明するための図である。
【
図7】供給部から供給すべきインプリント材の液滴の目標位置の決定を説明するためのフローチャートである。
【
図8】供給部から供給すべきインプリント材の液滴の目標位置の決定を説明するためのフローチャートである。
【
図9】ドロップレシピを生成する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図10】供給部の複数の吐出口から基板上の目標位置にインプリント材Rの液滴を供給する様子を示す図である。
【
図11】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置IMPの構成を示す概略図である。インプリント装置IMPは、物品としての半導体デバイス、液晶表示素子、磁気記憶媒体などの製造工程であるリソグラフィ工程に採用される。インプリント装置IMPは、基板にパターンを形成する、具体的には、モールドを用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置IMPは、基板上に供給された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0014】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0016】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0017】
本明細書及び添付図面では、基板Wの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転及びZ軸周りの回転のそれぞれを、θX、θY及びθZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御又は駆動は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御又は駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御又は駆動は、それぞれ、X軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御又は駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸及びZ軸の座標に基づいて特定される情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸及びθZ軸の値で特定される情報である。位置決めは、位置及び/又は姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板及び型の少なくとも一方の位置及び姿勢の制御を含む。
【0018】
本実施形態では、インプリント材として、紫外線を照射することで硬化する紫外線硬化性のインプリント材を用いる(即ち、インプリント材の硬化法として光硬化法を採用する)場合について説明する。但し、インプリント材として、熱可塑性又は熱硬化性のインプリント材を用いてもよい。
【0019】
インプリント装置IMPは、基板Wを保持する基板チャック101と、基板チャック101を支持して移動する基板ステージ102と、パターンPが形成された型Mを保持する型チャック103と、型チャック103を支持して移動する型ステージ104とを有する。また、インプリント装置IMPは、基板上にインプリント材Rを供給する供給部(ディスペンサ)Dと、供給部Dを移動させる移動部MUとを有する。また、インプリント装置IMPは、インプリント装置IMPの全体を制御する制御部CNTと、表示画面(操作画面)を生成(管理)するコンソール部CONSと、表示画面を表示する表示部112と、キーボードやマウスなどの入力部113とを有する。制御部CNTは、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部に記憶されたプログラムに従って、インプリント装置IMPの各部を統括的に制御してインプリント装置IMPを動作させる。
【0020】
図2は、コンソール部CONSで管理されるドロップレシピRPの一例を示す図である。ドロップレシピRPは、塗布パターンとも呼ばれる。ドロップレシピRPは、基板上にインプリント材Rを供給する際の座標及び供給量に関する情報、即ち、基板上に供給すべきインプリント材Rの液滴の供給位置及びその供給位置に供給すべきインプリント材Rの液滴の量に関する情報を含む。制御部CNTは、ドロップレシピRPで示される基板上の供給位置にインプリント材Rが供給されるように、基板ステージ102及び供給部Dを制御する。具体的には、制御部CNTは、
図3に示すように、ドロップレシピRPに基づいて、基板ステージ102を矢印201の方向に移動させながら、供給部Dに設けられた複数の吐出口Nからインプリント材Rの液滴を吐出させる。これにより、基板上には、ドロップレシピRPに対応するインプリント材R(の液滴)の配列パターンが形成される。また、制御部CNTは、後述するように、ドロップレシピRPで示される基板上の供給位置にインプリント材Rが供給されるように、移動部MUも制御してもよい。移動部MUは、基板Wと供給部Dの複数の吐出口Nとの相対的な位置関係が変更されるように供給部Dを移動させる。移動部MUは、例えば、供給部Dの複数の吐出口Nから吐出されるインプリント材Rの液滴の吐出方向(Z方向)に平行な軸周り(Z軸周り)に供給部Dを回転させる。
【0021】
基板上に供給されたインプリント材Rに型Mを接触させる(押印する)ことによって、基板上のインプリント材Rの液滴が押し潰されて広がるとともに、かかるインプリント材Rが型MのパターンPに充填される。型チャック103の型保持面とは反対側の面には、例えば、型MのパターンPの面積よりも大きな面積を有する凹部が形成されている。かかる凹部は、型M及びシールガラス(不図示)によって密閉されて密閉空間(キャビティ部)を形成する。キャビティ部には、キャビティ部の圧力を調整する圧力調整部(不図示)が接続されている。基板上のインプリント材Rと型Mとを接触させる際には、キャビティ部の圧力を上げて型Mを基板Wに対して凸形状に変形させることで、基板Wと型Mとの間に気泡が挟まれることを抑制する。基板上のインプリント材Rと型Mとが接触したら、キャビティ部の圧力を戻し、基板上のインプリント材Rと型Mとが完全に接触するようにする。
【0022】
インプリント装置IMPは、型ステージ104に固定されたアライメントスコープ105を更に有する。アライメントスコープ105は、基板W(のショット領域)に形成されたアライメントマーク(基板側マーク)106と、型M(のパターンP)に形成されたアライメントマーク(型側マーク)107とを検出する。基板側マーク106及び型側マーク107の検出には、例えば、2つのマークの相対的な位置を反映したモアレ信号などの干渉信号を用いることができる。また、基板側マーク106及び型側マーク107のそれぞれの像を検出して、2つのマークの相対位置を求めてもよい。
【0023】
制御部CNTは、アライメントスコープ105による基板側マーク106及び型側マーク107の検出結果から型Mと基板Wとの相対的な位置ずれを求める。そして、制御部CNTは、型Mと基板Wとの相対的な位置ずれに基づいて、基板ステージ102や型ステージ104を移動させて、型Mと基板Wとの相対的な位置ずれを補正する。なお、型Mと基板Wとの相対的な位置ずれは、シフト成分に限定されず、倍率成分や回転成分も含む。このような場合には、基板上のショット領域の形状に応じて、型MのパターンPの形状を補正すればよい。
【0024】
インプリント装置IMPは、紫外線を放射する光源108と、検出光を放射する検出光源109と、ミラー110と、撮像部111とを更に有する。ミラー110は、ダイクロイックミラーを含み、本実施形態では、光源108からの紫外線を反射し、検出光源109からの検出光を透過する特性を有する。基板上のインプリント材Rと型Mとを接触させた状態において、光源108からの紫外線をミラー110で反射してインプリント材Rに照射することで、インプリント材Rを硬化させる。これにより、基板上のインプリント材Rに型MのパターンPが転写される。
【0025】
検出光源109からの検出光は、型Mを透過して基板上のショット領域を照明する光と、型M(のパターンP)で反射される光とに分離される。ショット領域を照明する光は、基板Wの表面で反射され、型Mで反射される光とともに撮像部111で検出される。撮像部111で検出された検出光に対応する画像を表示部112に表示することで、ユーザは、インプリント処理の様子(例えば、基板上のインプリント材Rと型Mとの接触状態など)を観察することができる。
【0026】
図4を参照して、本実施形態におけるインプリント装置IMPの動作、即ち、インプリント処理について説明する。インプリント装置IMPは、上述したように、制御部CNTがインプリント装置IMPの各部を統括的に制御することで動作する。制御部CNTのメモリには、基板上に設定された複数のショット領域のショット番号及び基板上の位置などに関する情報が予め記憶されている。また、本実施形態では、基板上に設定された複数のショット領域のうち少なくとも2つのショット領域に連続的にインプリント処理を行う場合を例に説明する。具体的には、基板上の少なくとも2つ以上のショット領域上に連続的に(一度に)インプリント材Rを供給し、かかる少なくとも2つ以上のショット領域上のインプリント材Rに型Mを接触させてインプリント材Rのパターンを連続的に形成する。従って、基板上の全てのショット領域(のショット番号)は、連続的にインプリント処理を行うグループに分類されて(関連付けて)制御部CNTのメモリに記憶されている。但し、インプリント装置IMPの動作は、複数のショット領域に連続的にインプリント処理を行う場合(所謂、マルチディスペンス)に限定されるものではない。例えば、インプリント装置IMPは、ショット領域ごとに、インプリント処理を行ってもよい(インプリント材Rの供給とパターンの形成とを繰り返してもよい)。具体的には、基板上の1つのショット領域にインプリント材Rを供給し、かかる1つのショット領域上のインプリント材Rに型Mを接触させてインプリント材Rのパターンを形成してもよい。
【0027】
インプリント材Rのパターンを形成する基板Wが基板ステージ102に保持され、且つ、型Mが型チャック103に保持された状態で、インプリント装置IMPは動作を開始する。S301において、制御部CNTは、連続的にインプリント処理を行うn個(nは2以上の整数)のショット領域のそれぞれについて、供給部D(複数の吐出口N)から供給すべきインプリント材Rの液滴の基板上における位置(目標位置)を決定(調整)する。このように、制御部CNTは、インプリント材Rの液滴を供給すべき基板上の位置を決定する処理を行う処理部として機能する。本実施形態では、後述するように、目標位置を決定する際に、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからの経過時間と、かかる経過時間に対応する基板上でのインプリント材Rの液滴の広がり(広がり量)との関係を示す広がり情報が用いられる。また、目標位置を決定する際には、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからインプリント材Rに型Mを接触させるまでの予測時間も用いられる。
【0028】
S302において、制御部CNTは、供給部Dや基板ステージ102を制御して、連続的にインプリント処理を行うn個のショット領域のそれぞれにインプリント材Rを供給する。具体的には、連続的にインプリント処理を行うn個のショット領域のそれぞれが供給部Dの下を通過(移動)するように基板Wを保持した基板ステージ102を移動させる。この際、各ショット領域上のS301で決定された目標位置にインプリント材Rの液滴が供給されるように、供給部Dの複数の吐出口Nのそれぞれからインプリント材Rの液滴を吐出する。これにより、基板Wの各ショット領域上の目標位置にインプリント材Rの液滴が供給(配置)される。
【0029】
S303において、制御部CNTは、基板ステージ102、型ステージ104、光源108などを制御して、連続的にインプリント処理を行うn個のショット領域のそれぞれにインプリント材Rのパターンを形成する。具体的には、インプリント材Rが供給された基板上のショット領域が型Mの下に位置するように基板Wを保持した基板ステージ102を移動させる。次いで、型Mを保持した型ステージ104をZ軸方向に移動(下降)させて基板上のショット領域に供給されたインプリント材Mと型Mとを接触させ、その状態で、光源108から型Mを介してインプリント材Mに紫外線を照射してインプリント材Mを硬化させる。そして、型Mを保持した型ステージ104をZ軸方向に移動(上昇)させて基板上の硬化したインプリント材Mから型Mを引き離すことで、基板上のショット領域にインプリント材Mのパターンを形成する。このような動作をインプリント材Rが供給された全てのショット領域に対して行うことで、n個のショット領域のそれぞれにインプリント材Rのパターンが形成される。
【0030】
S304において、制御部CNTは、基板上の全てのショット領域にインプリント材Mのパターンを形成しているかどうかを判定する。基板上の全てのショット領域にインプリント材Mのパターンを形成していない場合には、S301に移行して、動作を継続する。一方、基板上の全てのショット領域にインプリント材Mを形成している場合には、動作を終了する。
【0031】
ここで、
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)、
図6(a)、
図6(b)及び
図6(c)を参照して、
図4に示すS301からS303までの動作に関して説明する。
図5(a)乃至
図5(c)は、基板Wを+Z方向から見た図である。本実施形態では、
図5(a)乃至
図5(c)に示すショット領域120、121及び122の順に連続的にインプリント処理を行う場合を考える。この場合、制御部CNTは、
図6(a)に示すように、ショット領域120におけるインプリント材Rの液滴の目標位置に対して、ショット領域121及び122におけるインプリント材Rの液滴の目標位置(供給位置)を変更する(S301)。具体的には、ショット領域120におけるインプリント材Rの液滴の目標位置に対して、ショット領域121におけるインプリント材Rの液滴の目標位置を、X方向にSX1、Y方向にSY1だけシフトさせる(ずらす)。このようにして、ショット領域121におけるインプリント材Rの液滴の目標位置を調整(決定)する。同様に、ショット領域120におけるインプリント材Rの液滴の目標位置に対して、ショット領域122におけるインプリント材Rの液滴の目標位置を、X方向にSX2、Y方向にSY2だけシフトさせる(ずらす)。このようにして、ショット領域122におけるインプリント材Rの液滴の目標位置を調整(決定)する。ショット領域120、121及び122に連続的にインプリント材Rを連続的に供給する際には、
図6(a)に示すように、矢印210の方向に基板ステージ102を移動させながら、供給部Dの複数の吐出口Nからインプリント材Rの液滴を吐出すればよい。
【0032】
なお、
図6(a)では、ショット領域121及び122におけるインプリント材Rの液滴の目標位置のうち周辺部(最も外側)に位置する目標位置をショット領域の中心方向に(かかる目標位置よりも内側に位置する目標位置に近づくように)変更している。但し、ショット領域121及び122において、ショット領域の周辺部以外に位置する目標位置、或いは、ショット領域の全ての目標位置を変更してもよいし、目標位置ごとに異なる量でシフトさせてもよい。また、ショット領域120についても、インプリント材Rの液滴の目標位置を変更してもよい。
【0033】
上述したように、ショット領域120、121及び122のそれぞれについて、インプリント材Rの液滴の基板上における目標位置を決定したら、制御部CNTは、供給部Dに向けて、基板Wを保持する基板ステージ102を移動させる。具体的には、
図5(a)に示すように、ショット領域122が軌道202を通って供給部Dがインプリント材Rの供給を開始する供給開始位置203に到達するように、基板ステージ102を移動させる。
【0034】
ショット領域122が供給開始位置203に到達すると、制御部CNTは、
図5(b)に示すように、ショット領域122が軌道204を通るように基板ステージ102を移動させる。この際、制御部CNTは、ショット領域120、121及び122におけるインプリント材Rの液滴の目標位置(を示すドロップレシピ)に従って、供給部Dからショット領域120、121及び122のそれぞれにインプリント材Rを供給する。これにより、ショット領域120、121及び122のそれぞれの目標位置にインプリント材Rの液滴が供給(配置)される(S302)。
【0035】
ショット領域120、121及び122に対するインプリント材Rの供給が完了すると、制御部CNTは、
図5(c)に示すように、ショット領域120が軌道205を通って型Mの下に位置するように基板ステージ102を移動させる。そして、制御部CNTは、上述したように、基板ステージ102、型ステージ104、光源108などを制御して、ショット領域120、121及び122のそれぞれにインプリント材Rのパターンを形成する(S303)。
【0036】
このように、基板上のショット領域ごとに、供給部Dから供給すべきインプリント材Rの液滴の基板上における目標位置を決定(調整)することで、インプリント材Rがショット領域(型M)や基板Wの外側にはみ出してしまうこと(浸み出し)を抑制する。例えば、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してから型Mを接触させるまでの時間経過によって、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、ショット領域121及び122に供給されたインプリント材Rの液滴が広がる場合がある。このような場合であっても、本実施形態では、インプリント材R(の液滴)をショット領域内に収めることができるため、浸み出しが抑制される。
【0037】
図7及び
図8を参照して、基板上のショット領域のそれぞれに対する、供給部Dから供給すべきインプリント材Rの液滴の目標位置の決定、即ち、ショット領域ごとの目標位置のシフト量の算出に関して説明する。
【0038】
図7は、基板上にインプリント材Rを供給してからのインプリント材Rの液滴の広がり量、即ち、上述した広がり情報を用いて、ショット領域ごとのシフト量を決定する場合のフローチャートである。S401では、連続的にインプリント処理を行う複数のショット領域のそれぞれにインプリント材Rを供給する。
【0039】
S402では、複数のショット領域のうちの1つのショット領域について、インプリント材Rと型Mとを接触させる直前(パターン形成開始直前)のインプリント材Rの液滴の形状(広がり形状)を取得する。インプリント材Rの液滴の広がり形状を取得する際には、高倍率の撮像系を用いることが好ましく、本実施形態では、アライメントスコープ105を用いる。但し、インプリント材Rの液滴の広がり形状を取得することができれば、他の撮像系を用いてもよく、例えば、撮像部111を用いてもよい。
【0040】
S403では、インプリント材Rが供給された複数のショット領域のうちの1つのショット領域にインプリント材Rのパターンを形成する。
【0041】
S404では、S402で取得されたインプリント材の液滴の形状に基づいて、インプリント材Rのパターンが形成されたショット領域におけるインプリント材Rの液滴の広がり量を算出する。S404で算出されるインプリント材Rの液滴の広がり量は、インプリント材Rを供給してからの経過時間と、その経過時間に対応する基板上でのインプリント材Rの液滴の広がりとの関係を示す情報である。また、S404で算出されるインプリント材Rの液滴の広がり量は、基板上にインプリント材Rを供給してからインプリント材Rに型Mを接触させるまでの時間(予測時間)の情報も含んでいる。本実施形態では、インプリント材Rの広がり量を、縦方向の長さ及び横方向の長さを特徴量として、例えば、制御部CNTにて処理を行うことで算出する。かかる処理は、一例として、S402で取得されたインプリント材Rの液滴の形状と、供給部Dから供給された直後の基板上のインプリント材Rの液滴の形状の設計値(理論値)とを比較する処理を含む。
【0042】
S405では、インプリント材Rが供給された複数のショット領域のそれぞれについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出しているかどうかを判定する。インプリント材Rが供給された複数のショット領域のそれぞれについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出していない場合には、S402に移行して、インプリント材Rの液滴の広がり量の算出を継続する。一方、インプリント材Rが供給された複数のショット領域のそれぞれについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出している場合には、S406に移行する。
【0043】
S406では、基板上のショット領域の全てについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出しているかどうかを判定する。基板上のショット領域の全てについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出していない場合には、S401に移行して、インプリント材Rの液滴の広がり量の算出を継続する。一方、基板上のショット領域の全てについて、インプリント材Rの液滴の広がり量を算出している場合には、S407に移行する。
【0044】
S407では、S404で算出されたインプリント材Rの液滴の広がり量に基づいて、ショット領域ごとに、供給部Dから供給すべきインプリント材Rの液滴の目標位置のシフト量を算出(決定)する。S407で算出されたシフト量は、制御部CNTのメモリに記憶してもよい。例えば、ショット領域121及び122のそれぞれについて、インプリント材Rの液滴の横方向の広がり量をシフト量SX1及びSX2として、インプリント材Rの液滴の縦方向の広がり量をシフト量SY1及びSY2として、制御部CNTのメモリに記憶する。
【0045】
このようにして、ショット領域ごとの目標位置のシフト量の算出が終了する。なお、
図7では、1つのショット領域にインプリント材Rのパターンを形成するごとにインプリント材Rの液滴の広がり量を算出しているが、全てのショット領域にインプリント材Rのパターンを形成した後にインプリント材Rの液滴の広がりを算出してもよい。また、インプリント材Rの液滴の広がりを算出する際には、インプリント材Rを供給してから型Mを接触するまでのインプリント材Rの液滴の形状を取得できればよいため、S403でインプリント材Rのパターンを形成しなくてもよい。
【0046】
図8は、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからインプリント材Rに型Mを接触させるまでの時間(予測時間)を用いて、ショット領域ごとのシフト量を決定する場合のフローチャートである。S501では、基板上のショット領域にインプリント材Rを供給する。
【0047】
S502では、一定の時間間隔で基板上のショット領域に供給されたインプリント材Rの液滴の形状(広がり形状)を取得する。
【0048】
S503では、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからの経過時間ごとのインプリント材Rの液滴の広がり量を算出する。S503で算出されるインプリント材Rの液滴の広がり量は、インプリント材Rを供給してからの経過時間と、その経過時間に対応する基板上でのインプリント材Rの液滴の広がりとの関係を示す情報である。本実施形態では、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからの経過時間ごとのインプリント材Rの広がり量を、縦方向の長さ及び横方向の長さを特徴量として、例えば、制御部CNTにて処理を行うことで算出する。
【0049】
S504では、S503で算出された経過時間ごとのインプリント材Rの液滴の広がり量を、例えば、制御部CNTのメモリに記憶する。
【0050】
S505では、基板上の複数のショット領域のそれぞれについて、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからインプリント材Rに型Mを接触させるまでの予測時間を算出する。具体的には、制御部CNTのメモリに予め記憶されている基板上の複数のショット領域のショット番号及び基板上の位置、基板ステージ102の移動時間、パターン形成時間などに関する情報に基づいて、ショット領域ごとの予測時間を制御部CNTにて算出する。また、インプリント処理における各種条件などを示すインプリントレシピから、ショット領域ごとの予測時間を算出してもよい。
【0051】
S506では、ショット領域ごとに、S504で算出した経過時間ごとのインプリント材Rの液滴の広がり量と、S505で算出した予測時間とに基づいて、供給部Dから供給すべきインプリント材Rの液滴の目標位置のシフト量を算出(決定)する。S506で算出されたシフト量は、制御部CNTのメモリに記憶してもよい。
【0052】
このようにして、ショット領域ごとの目標位置のシフト量の算出が終了する。なお、
図8では、ショット領域ごとに予測時間を算出しているが(S505)、予測時間を算出するのではなく、入力部113を介して入力される予測時間を取得してもよい。
【0053】
次に、
図9を参照して、上述したように決定されたショット領域上の目標位置にインプリント材Rを供給するためのドロップレシピを生成する処理について説明する。S601では、ベースとなるドロップレシピ(ベースレシピ)を取得する。S602では、ショット領域ごとに、
図7に示すS407や
図8に示すS506で算出された目標位置のシフト量を取得する。S603では、ショット領域ごとに、S601で取得されたベースレシピに、S602で取得した目標位置のシフト量を反映させることで、最終的なドロップレシピRPを算出(生成)する(即ち、ドロップレシピRPを更新する)。
【0054】
このようにして得られたドロップレシピRPは、インプリント装置IMPが利用できる形式で管理(記録)される。例えば、ドロップレシピRPは、コンソール部CONSにおいて、ファイル形式で管理される。なお、上述したドロップレシピを生成する処理は、制御部CNTで行ってもよいし、コンソール部CONSで行ってもよい。また、供給部Dが基板上にインプリント材Rを供給してからの時間経過に伴うインプリント材Rの揮発を考慮して、目標位置に供給されるインプリント材Rの供給量を変更してもよい。
【0055】
図10(a)及び
図10(b)は、供給部Dの複数の吐出口Nから基板上の目標位置にインプリント材Rの液滴を供給する様子を示す図である。ドロップレシピRPを更新するのではなく、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、インプリント材Rを供給する際に基板ステージ102や供給部Dを制御することで、基板上の目標位置にインプリント材Rの液滴を供給してもよい。例えば、
図10(a)に示すように、供給部Dを移動部MUによって回転させた状態で、矢印206の方向に基板ステージ102を移動させながら供給部Dの吐出口Nからインプリント材Rの液滴を吐出する。これにより、ショット領域122の最も外側に位置するインプリント材Rの液滴の位置(供給位置)を内側の方向にシフトさせることができる。また、矢印206の方向に基板ステージ102を移動させる際に、供給部Dの吐出口Nからインプリント材Rを吐出する吐出タイミングを遅らせ、且つ、基板ステージ102の移動速度を速くする。これにより、
図10(b)に示すように、ショット領域122において、インプリント材Rの液滴のX方向における位置(供給位置)を内側の方向にシフトさせることができる。これらを組み合わせることで、供給部Dから基板上の目標位置にインプリント材Rを供給することができる。このように、基板上の目標位置にインプリント材Rの液滴が供給されるように、供給部Dを移動(回転)させたり、供給部Dの下を移動する際の基板ステージ102の移動(軌道及び速度の少なくとも一方)を制御したりする。
【0056】
このように、本実施形態では、インプリント材Rを供給してからの経過時間に伴い、基板上のインプリント材Rの液滴が広がった場合であっても、その広がりに応じた基板上の位置にインプリント材Rの液滴を供給している。従って、インプリント材Rがショット領域(型M)や基板Wの外側にはみ出してしまうこと、所謂、浸み出しを抑制して、基板上に形成されるパターンの不良を低減することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、インプリント材Rの液滴を供給すべき基板上の位置を決定する処理をインプリント装置IMP(制御部CNT)で行う場合について説明したが、かかる処理は、装置外(外部)の情報処理装置で行ってもよい。従って、このような情報処理装置も本発明の一側面を構成する。また、このような情報処理装置で決定されたインプリント材Rの液滴を供給すべき基板上の位置を示す供給位置情報(ドロップレシピなど)を取得する取得部を有するインプリント装置も本発明の一側面を構成する。
【0058】
インプリント装置IMPを用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0059】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0060】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図11(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0061】
図11(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。図11(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0062】
図11(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0063】
図11(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。図11(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0064】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0065】
IMP:インプリント装置 D:供給部 CNT:制御部 W:基板 M:型 R:インプリント材