(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】制御装置、撮像装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/63 20230101AFI20240221BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240221BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240221BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20240221BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20240221BHJP
【FI】
H04N23/63 300
G03B5/00 J
G03B5/00 K
G03B15/00 Q
G03B17/18
H04N23/68
(21)【出願番号】P 2019239275
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風見 祐介
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136035(JP,A)
【文献】特開2017-111430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/63
G03B 5/00
G03B 15/00
G03B 17/18
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段から出力された画像信号に基づく画像における、追尾する被写体の位置を検出する検出手段と、
前記画像における前記被写体の目標位置を設定する設定手段と、
前記被写体の位置と前記目標位置とに基づいて、前記画像における前記被写体の位置を前記目標位置に移動させるための追尾補正量を求める算出手段と、
前記追尾補正量に基づいて、前記画像における前記被写体の位置を目標位置に近づける追尾制御を行わせる制御手段と、
前記追尾制御の開始前の前記目標位置に対応する前記画像上の位置に対応する、前記追尾制御の開始後の前記画像に
おける位置に、前記追尾補正量に基づく指標を重畳して表示手段に表示させるように制御する表示制御手段と
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記指標は、前記追尾補正量が小さくなる方向を示すことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
撮像手段から出力された画像信号に基づく画像における、追尾する被写体の位置を検出する検出手段と、
前記画像における前記被写体の目標位置を設定する設定手段と、
前記被写体の位置と前記目標位置とに基づいて、前記画像における前記被写体の位置を前記目標位置に移動させるための追尾補正量を求める算出手段と、
前記追尾補正量に基づいて、前記画像における前記被写体の位置を目標位置に近づける追尾制御を行わせる制御手段と、
前記追尾補正量に基づいて、前記追尾制御が実行されなかった場合の前記被写体の位置を示す
指標を、前記追尾制御の開始後の前記画像に重畳して表示手段に表示させるように制御する表示制御手段と
を有することを特徴とす
る制御装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記指標の表示形態を、前記追尾補正量に応じて異ならせることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記追尾補正量を予め決められた第1の閾値と比較し、前記第1の閾値より前記追尾補正量が大きい場合と、前記第1の閾値以下の場合とで、前記指標の表示形態を異ならせることを特徴する請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記指標の色、形状、大きさのうち、少なくとも1つを異ならせることを特徴とする請求項
4または
5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記追尾補正量が予め決められた第2の閾値よりも小さい場合に、前記指標を表示しないように制御することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記画像を表示する前記表示手段を備えることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の制御装置と、
撮像光学系を介して結像した被写体像を画像信号に変換する撮像手段と、
像ぶれ補正手段と、を有し、
前記制御手段は、前記像ぶれ補正手段を制御することで前記追尾制御を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記像ぶれ補正手段は、光学補正系を前記撮像光学系の光軸に垂直な方向にシフトさせることで前記撮像光学系の光軸を偏向することにより、像ぶれ補正を行うことを特徴とする請求項
9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記像ぶれ補正手段は、前記撮像手段を前記撮像光学系の光軸に垂直な方向にシフトさせることで、像ぶれ補正を行うことを特徴とする請求項
9または
10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記画像を記憶する記憶手段を更に有し、
前記像ぶれ補正手段は、前記記憶手段に記録された前記画像から、一部の領域を切り出して読み出すことで、像ぶれ補正を行うことを特徴とする請求項
9乃至
11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
検出手段が、撮像手段から出力された画像信号に基づく画像における、追尾する被写体の位置を検出する検出工程と、
設定手段が、前記画像における前記被写体の目標位置を設定する設定工程と、
算出手段が、前記被写体の位置と前記目標位置とに基づいて、前記画像における前記被写体の位置を前記目標位置に移動させるための追尾補正量を求める算出工程と、
制御手段が、前記追尾補正量に基づいて、前記画像における前記被写体の位置を目標位置に近づける追尾制御を行わせる制御工程と、
表示制御手段が、
前記追尾制御の開始前の前記目標位置に対応する前記画像上の位置に対応する、前記追尾制御の開始後の前記画像に
おける位置に、前記追尾補正量に基づく指標を重畳して表示手段に表示させるように制御する表示制御工程と
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項14】
検出手段が、撮像手段から出力された画像信号に基づく画像における、追尾する被写体の位置を検出する検出工程と、
設定手段が、前記画像における前記被写体の目標位置を設定する設定工程と、
算出手段が、前記被写体の位置と前記目標位置とに基づいて、前記画像における前記被写体の位置を前記目標位置に移動させるための追尾補正量を求める算出工程と、
制御手段が、前記追尾補正量に基づいて、前記画像における前記被写体の位置を目標位置に近づける追尾制御を行わせる制御工程と、
表示制御手段が、前記追尾補正量に基づいて、前記追尾制御が実行されなかった場合の前記被写体の位置を示す指標を、前記追尾制御の開始後の前記画像に重畳して表示手段に表示させるように制御する表示制御工程と
を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項
15に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、撮像装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体を撮影画面内の所定位置へフレーミングするように、自動的に被写体追尾をする被写体追尾制御機能を備える撮像装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、像ブレを補正するためのブレ補正機構を、撮影画面内の被写体の動きに合わせて追尾するように駆動することで、被写体を撮影画面内の所定位置へ移動する、光学式追尾方式を適用した撮像装置が開示されている。一方、光学式追尾方式とは異なる被写体の追尾方式として、電子式追尾方式が知られている。電子式追尾方式を適用した場合、撮像装置は、撮影画面内の被写体の動きに合わせて、撮影画面内の被写体の位置が所定位置となるように画像をトリミングすることで被写体の追尾を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被写体追尾制御機能を備える撮像装置においては、撮像装置が自動的に被写体の位置を撮影画面内の所定位置に保持するように被写体追尾を行うため、撮影者は被写体を追う動作(フレーミング操作)を行う必要はない。しかし、例えば、光学式追尾方式による被写体追尾において、光学系の一部を移動させることで行われる場合には、追尾できる範囲は光学系の可動範囲により決定されるため、その範囲には限りがある。従って、追尾範囲端(光学系の可動範囲端)まで達した場合、それ以上追尾することができないので、撮影者自身も、ある程度、撮像装置の向きを被写体の方向に合わせ、追尾範囲内に被写体を収めるフレーミング操作を行うことが必要になる。これは、画像のトリミング可能領域に限りがある電子式追尾方式においても同様である。
【0006】
しかしながら、撮像装置が自動的な被写体追尾制御を行っているとき、撮像装置の表示部に表示されている被写体は、撮影画面内の所定位置に停止している。このため、実際には撮像装置の向きと被写体の方向に差が生じていても、撮影者は、このことを把握し難いため、撮影者がフレーミング操作を行うタイミングに遅れが生じる場合がある。結果として、被写体を撮影画面内の所定位置に保持できなくなったり、撮影画面から外れてしまう、という課題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、撮像装置が自動的に被写体を追尾する場合においても、撮影者が撮像装置の向きを被写体の方向に合わせるフレーミング操作を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の制御装置は、撮像手段から出力された画像信号に基づく画像における、追尾する被写体の位置を検出する検出手段と、前記画像における前記被写体の目標位置を設定する設定手段と、前記被写体の位置と前記目標位置とに基づいて、前記画像における前記被写体の位置を前記目標位置に移動させるための追尾補正量を求める算出手段と、前記追尾補正量に基づいて、前記画像における前記被写体の位置を目標位置に近づける追尾制御を行わせる制御手段と、前記追尾制御の開始前の前記目標位置に対応する前記画像上の位置に対応する、前記追尾制御の開始後の前記画像における位置に、前記追尾補正量に基づく指標を重畳して表示手段に表示させるように制御する表示制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撮像装置によれば、撮像装置が自動的に被写体を追尾する場合においても、撮影者が撮像装置の向きを被写体の方向に合わせるフレーミング操作を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態における被写体の追尾撮影処理を示すフローチャート。
【
図3】第2実施形態における被写体の追尾撮影処理を示すフローチャート。
【
図4】本実施形態における被写体追尾制御を説明する図。
【
図5】第1実施形態における理想被写体位置を説明する図。
【
図6】第1実施形態におけるマーカー表示を説明する図。
【
図7】第1実施形態におけるマーカー表示の別の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
撮像装置100は、例えば、デジタル一眼レフカメラやデジタルコンパクトカメラ、デジタルビデオカメラ等である。更に、本発明は、カメラ付き携帯端末、監視カメラ、Webカメラ等にも適用できる。撮像装置100は、装置に加わる振れにより生じる画像のブレ(像ブレ)を補正するブレ補正機能を有する。本実施形態では、CPU101が、光学補正系122を駆動することで、ブレ補正機能を実現する。また、光学補正系122を駆動することで、光学追尾方式の被写体追尾制御を行うことが可能な構成である。なお、像ブレの補正については、画像の縦方向または横方向のいずれか一方の像ブレの補正に関して説明し、他の方向の像ブレの補正については、同様の制御であるため説明を省略する。
【0013】
振れ検出部102は、例えば、振動ジャイロ等の角速度センサで構成され、手振れや体の揺れ等による撮像装置100に加わる振れの量を角速度信号として検出し、その角速度信号をA/D変換器103に供給する。A/D変換器103は、振れ検出部102からの出力信号をデジタル化して、角速度データとしてCPU101内部のDC成分除去フィルタ104に供給する。
【0014】
DC成分除去フィルタ104は、A/D変換器103からの角速度データに含まれる低周波数成分を遮断して高周波数成分を出力する。DC成分除去フィルタ104は、例えば、任意の周波数帯域で特性を変更し得る機能を有するハイパスフィルタである。なお、DC成分除去フィルタ104は、ハイパスフィルタの代わりに、A/D変換器103の出力から、A/D変換器103の出力に対して高周波数成分の信号を遮断するローパスフィルタを通過させた信号を減算する構成にしてもよい。
焦点距離演算部105は、撮像光学系121の焦点距離を算出し、光学補正系122を駆動するのに最適な値となるようにDC成分除去フィルタ104の出力を補正する。
【0015】
積分器106は、任意の周波数帯域でその特性を変更し得る機能を有している。積分器106は、焦点距離演算部105からの出力を積分し、光学補正系122の駆動量を算出する。光学補正データ出力制御部107は、光学補正系122が可動範囲内で駆動されるように、積分器106の出力を制限する。
【0016】
光学補正系位置検出部109は、磁石と、磁石に対向する位置に供えられた、例えばホールセンサとからなり、光学補正系122の光軸と垂直な方向への移動量を検出し、その検出値をA/D変換器110に出力する。A/D変換器110は光学補正系位置検出部109からの出力をA/D変換し、得られた光学補正系122の位置データを減算器108に供給する。減算器108は、この位置データを光学補正データ出力制御部107の出力から減算し、その結果である偏差データ、すなわち、光学式手振れ補正量を加算器116に供給する。
【0017】
加算器116は、例えば、光学補正系122で被写体を追尾することが選択された際に、減算器108の出力である光学式手振れ補正量に対し、後述する追尾量算出部115で算出され、追尾制御部113により制御された、追尾補正量を加算する。そして、加算して得られた補正量データを制御フィルタ演算部117に供給する。制御フィルタ演算部117は、加算器116から出力される補正量データを所定のゲインで増幅する増幅器と、位相補償フィルタとで構成される。補正量データは、制御フィルタ演算部117において、増幅器及び位相補償フィルタによる信号処理が行われ、パルス幅変調部118に出力される。
【0018】
パルス幅変調部118は、制御フィルタ演算部117を通過して供給されたデータを、パルス波のデューティー比を変化させるPWM波形に変調して、モータ駆動部119に供給する。モータ120は、光学補正系122の駆動用の、例えばボイスコイル型モータであり、モータ駆動部119によって駆動されることで、光学補正系122を光軸と垂直な方向に移動する。これにより、光学補正データ出力制御部107の出力に対して、光学補正系122の光軸と垂直な方向への移動量を追従させる、フィードバック制御系が構成される。
【0019】
撮像光学系121は、ズームやフォーカス等の動作を行い、入射した被写体像を撮像素子123に結像する。光学補正系122は、光軸と垂直な方向に移動されることにより光軸を偏向する、光学的に振れ補正可能な補正系であり、例えば補正レンズ(シフトレンズ)である。シフトレンズの駆動によって、装置に加わる振れにより生じる像ブレ(撮像面の被写体の移動)が補正された像が、撮像素子123に結像される。撮像素子123は、光学補正系122及び撮像光学系121からなる光学系を介して結像される被写体像を画像信号に変換して出力する。信号処理部124は、撮像素子123から出力される画像信号に基づいて、例えば、NTSCフォーマットに準拠した画像データを生成して、画像メモリ125に供給する。
【0020】
被写体検出部131は、画像メモリ125に保持された画像データから、追尾の対象となる被写体を検出する。追尾量算出部115は、被写体検出部131で検出された追尾の対象となる被写体の位置が、撮影画面における目標位置(例えば、撮影画面の中央位置)付近に位置するように追尾補正量を演算する。
ここで、目標位置は、撮像画像の中央には限定されず、例えば、撮影者が、随時、撮像装置の表示デバイス130である画面に連続的にライブビュー表示される映像を見ながら、操作部132を操作することによって、画面上で任意の位置として指定することも可能である。
【0021】
追尾制御部113は、撮影画像内での被写体の追尾に用いる追尾方式として、光学式追尾方式(第1の追尾方式)と電子式追尾方式(第2の追尾方式)のうちのいずれかを選択し、追尾制御を行う。光学式追尾方式は、光学補正系122の駆動により被写体を追尾する方式である。電子式追尾方式は、撮影画像から一部の領域を切り出すことで被写体を追尾する追尾方式である。なお、追尾制御部113が、いずれの方式を選択するかを決定するための方法は、特に限定されない。例えば、所定の条件に応じて、光学式追尾方式か、電子式追尾方式かを自動で切り替える構成としても良いし、ユーザによる操作部132からの指示に基づいて、予め任意の方式を選択できるような構成にしても良い。
【0022】
追尾制御部113は、追尾量算出部115で算出された追尾補正量に従い、選択された追尾方式で被写体を追尾する制御を実行する。具体的には、光学式追尾方式が選択された場合、追尾量算出部115が算出した追尾補正量を加算器116に出力する。一方、電子式追尾方式が選択された場合には、追尾補正量をメモリ読み出し制御部126に出力する。
【0023】
メモリ読出し制御部126は、追尾補正量が入力されていれば、追尾補正量に従って、また、入力されていなければ予め決められた範囲の画像データを画像メモリ125から読み出し、記録制御部127と表示制御部129に供給する。
記録制御部127は、映像信号を記録媒体128に記録させる。記録媒体128は、ハードディスク等の磁気記録媒体や半導体メモリ等の情報記録媒体である。表示制御部129は、表示デバイス130を駆動し、表示デバイス130は、液晶表示素子(例えば、LCD)により画像を表示する。
【0024】
操作部132は、ズームレバーまたはズームボタン等のズーム操作部材や、撮影開始を指示するレリーズスイッチ、被写体の指定や撮像装置100の設定を行うタッチパネルや操作スイッチ等を含む。操作部132の操作信号は、CPU101に入力される。
【0025】
<第1実施形態>
次に
図2を用いて、第1実施形態における被写体の追尾制御について説明する。
図2は第1実施形態における撮像装置100による被写体の追尾撮影処理を示すフローチャートである。なお、
図2の各ステップは、CPU101により実行される。
【0026】
撮像装置100は、電源が投入されると、各種の初期化処理を行った後、ユーザによる動作指示の待ち状態となる。
まずS201において、ユーザによる操作部132の操作により、被写体追尾モードの実行が指示されたか否かを判定する。被写体追尾モードの実行が指示された場合、S202に進む。一方、被写体追尾モードの実行指示が無い場合、S201の判定を継続する。
【0027】
S202において、追尾対象の被写体が選択され、被写体追尾を開始することが可能か否かを判定する。被写体が選択され、被写体追尾の開始が可能な場合、S203に進む。一方、被写体追尾の開始が不可能な場合は、S201に戻る。
【0028】
S203において、被写体検出部131は、撮影画面における被写体位置を検出する。ここでの撮影画面における被写体位置は、撮影画面における被写体の検出位置座標と同義である。撮影画面における被写体の検出位置座標は、S202でユーザによる被写体の選択が行われた時点、つまり、CPU101が被写体を認識した時点において、その被写体を追尾検出することで被写体の検出位置座標を取得している。
【0029】
S204において、追尾量算出部115は、検出された被写体位置から追尾補正量を算出する。追尾補正量は、S203で検出された被写体の位置を、予め設定された撮影画像内の目標位置(例えば、撮影画像内の中央位置)に位置付けるための制御量であり、大きさの情報と方向の情報を含む。
【0030】
S205において、追尾制御部113は、決定された被写体追尾方式にて、S204で追尾補正量に基づき、被写体追尾制御を開始する。追尾制御部113で選択された追従方式が、光学式追尾方式であった場合には、追尾補正量を加算器116に送り、光学式手振れ補正量と合わせて光学補正系122を駆動することで、光学式追尾方式の被写体追尾制御を行う。一方、追尾制御部113で選択された追従方式が、電子式追尾方式であった場合には、追尾補正量をメモリ読出し制御部126に送り、追尾補正量に基づいて撮影画像から被写体の領域を切り出すことで、電子式追尾方式の被写体追尾制御を行う。
【0031】
ここで、本実施形態における被写体追尾制御について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、被写体追尾制御の開始前における撮影画像401aを例示する。
図4(b)は、被写体追尾制御の開始後における撮影画像401bを例示する。
図4(a)の撮影画像401aにおいて、中央に示す点は予め設定された被写体追尾の目標位置403aを示す。被写体追尾制御の開始前に被写体402aの撮影画面における位置は、目標位置403aから離れている。この時点において、S204で算出される追尾補正量は、被写体402aと、目標位置403aとの差に相当する。ここで、被写体追尾制御が開始されると、時間経過につれて、被写体402aの位置と、目標位置403aとの距離が徐々に小さくなっていく。被写体追尾制御により、最終的には
図4(b)に示すように、被写体402aと目標位置403aが一致する。
【0032】
次に、S206において、S204にて算出された追尾補正量が予め定められた第1の閾値より大きいか否かを判定する。第1の閾値より大きい場合には、S207に進む。一方、第1の閾値以下の場合には、S210に進む。
【0033】
S207では、S205で被写体位置の追尾補正を行った画像上における理想被写体位置を算出する。理想被写体位置とは、追尾補正量が0である場合の目標位置に相当する撮影画面上の位置である。
【0034】
ここで、本実施形態における理想被写体位置の算出について、
図5を用いて説明する。
図5(a)は、被写体追尾の目標位置を画面の中央とした場合の撮影画像の例を示している。
図5(a)の中央に示す点502aは、被写体追尾の目標位置(画面中央)を示す。一方、点501aは、S203で検出された追尾対象である被写体の位置を示す。ここで、この場合、点502aを原点として、点501aを原点に関して対称移動させた位置である点503aの位置を、理想被写体位置として求める。この位置は、画面上の点502aに対応する画像上の位置が、被写体追尾により移動した位置に対応する、画面上での位置となる。ちなみに、この場合にS204にて算出される追尾補正量は、点501aから点502bへのベクトルで示される。
【0035】
同様に、
図5(b)は、被写体追尾の目標位置を画面の中央以外にした場合の撮影画像の例を示している。
図5(b)に示す点502bは、被写体追尾の目標位置を示す。一方、点501bは、S203で検出された追尾対象である被写体の位置を示す。ここで、この場合、点502bを原点として、点501bを原点に関して対称移動させた位置である点503bの位置を、理想被写体位置として求める。
【0036】
以上のように、本実施形態において、被写体追尾の目標位置を、追尾対象である被写体の位置を原点に対称移動したときの位置を理想被写体位置として算出するが、理想被写体位置の算出方法に関しては、これに限定されない。
【0037】
S208において、S207にて算出された理想被写体位置に表示するマーカー(指標)の表示形態として、色、形状、および大きさを決定する。マーカーの色、形状、および大きさは、S204で算出された追尾補正量の大きさと方向の少なくともいずれかに基づいて決定することができる。マーカーの色、形状、大きさを変更する目的は、撮影者に対し、被写体の追尾限界が近いことを報知するためである。例えば、予めマーカーの色、形状、大きさそれぞれに関して、追尾限界に近い場合の色、形状、大きさを、予めユーザに提示しておく。そして、追尾補正量の大きさにより、色、形状、大きさを、追尾限界に近い場合の色、形状、大きさに変更することで、撮影者に対して報知する。
【0038】
例えば、追尾限界から遠い場合の色、形状、大きさを、それぞれ、青色、○印、小さめ、とし、追尾限界に近い場合の色、形状、大きさを、それぞれ、赤色、×印、大きめ、とする。また、追尾補正量を予め定められた閾値と比較し、閾値より大きい場合には、マーカーの色、形状、および大きさを、それぞれ、赤色、×印、大きめ、に決定してもよい。一方、閾値以下の場合には、マーカーの色、形状、および大きさを、青色、○印、小さめ、に決定する。
【0039】
なお、マーカーの色、形状、大きさの決定方法に関しては、上述した例に限定されず、例えば、複数の閾値を設定し、追尾補正量の大きさに応じて段階的に変化させても良い。また、マーカーの色、形状、大きさに関しても、本実施形態に示した色、形状、大きさに限定されず、追尾補正量の大きさや方向に応じて変化するものであれば、任意に設定することが可能である。
【0040】
S209において、S207で算出した理想被写体位置に、S208で決定したマーカー(指標)を、S205により取得される被写体位置の追尾補正を行った画像に重畳表示する。
【0041】
ここで、本実施形態におけるマーカー表示について、
図6を用いて説明する。
図6は、被写体追尾の目標位置を画面の中央とした場合の撮影画像の例を示す図である。被写体601は、被写体追尾制御の開始前の追尾対象である被写体を示している。一方、被写体602は、被写体601に対し、S205において光学式追尾方式で被写体追尾制御を行った後の被写体位置を示している。つまり、被写体追尾により、被写体601の位置から被写体602の位置に、位置が補正されたことを示す。尚、
図6では説明のために被写体601を表示しているが、被写体601は表示デバイス130に表示しなくてもよい。一方、点603は、S207で算出した理想被写体位置を示している。なお、撮像装置100の表示デバイス130に実際に表示されるのは、被写体602と、点603である。
【0042】
撮影者は、点603を被写体602に重ねるように撮像装置100の向きを操作することにより、被写体追尾の目標位置と、被写体の位置とが近づき、追尾補正量が減少することとなるため、追尾の補正限界に到達することを防止できる。
【0043】
一方、追尾補正量が第1の閾値より小さい場合、S210では、先のS209で表示済のマーカーがあれば、マーカーを非表示にする。
【0044】
S211において、ユーザから撮影指示があるか否かを判定する。ユーザからの撮影指示があった場合には、S212に進んで撮影を行う。一方、ユーザからの撮影指示が無い場合には、S201に戻る。
【0045】
上記の通り第1実施形態によれば、追尾補正量に応じて理想被写体位置にマーカーを重畳表示することにより、撮影者のフレーミング動作の操作性を向上させることができる。具体的には、撮影者は、被写体の画像に重畳表示されるマーカーを追尾対象の被写体に重ねるように撮像装置の向きを変更することで、追尾限界に到達することによる追尾の遅れやフレームアウトを防止することが可能になる。
【0046】
また、マーカーの表示の有無や、色、形状、大きさを追尾補正量の大きさや方向に応じて、変更することにより、理想的に追従できている場合の被写体の視認性の向上や、追尾限界が近くなった場合に撮影者への警告を行う際の追従度合や緊急度合を任意に変更できる。
【0047】
なお、上述の実施形態においては、被写体位置の追尾補正を行った画像上の理想被写体位置に、マーカーを重畳して表示する構成としたが、マーカーの表示方法はこの構成に限らない。一例として、マーカーの形状として矢印を用いた場合について、
図7を用いて説明する。
【0048】
図7は、
図6と同様、被写体追尾の目標位置を画面の中央とした場合の撮影画像の例を示す図である。被写体701は、被写体追尾制御の開始前の追尾対象である被写体を示している。一方、被写体702は、被写体701に対し、S205において光学式追尾方式で被写体追尾制御を行った後の被写体位置を示している。つまり、被写体追尾により、被写体701の位置から被写体702の位置に、位置が補正されたことを示す。なお、被写体701も被写体601と同様に説明のために図示しているが、表示デバイス130には表示しなくてもよい。
【0049】
一方、矢印703は、被写体701の位置から被写体702の位置に補正するための追尾補正量の方向で向きが決定されるマーカーである。矢印703は、被写体701の位置から被写体702の位置に補正するための追尾補正量の方向(正負)に応じて、矢印が指し示す方向を変更する。これにより、撮影者に対して、撮像装置100の向きを変更すると、追尾補正量が小さくなる方向を報知することが可能である。さらに、矢印703は、被写体701の位置から被写体702の位置に補正するための追尾補正量の大きさに応じて、矢印の大きさ(長さ)を変更する。これにより、撮影者に対して、撮像装置100の向きをどの程度変更すれば、追尾補正量が0に近づくのか、という量を報知することが可能である。撮影者は、マーカーである矢印703の指し示す方向、および、大きさ(長さ)に応じて、撮像装置の向きを変更することができる。これにより、追尾限界に到達することによる追尾の遅れやフレームアウトをしにくくすることが可能になる。
【0050】
このように、マーカーの形状による情報のみで、撮影者が撮像装置100の向きを変更することが可能である場合、マーカーを表示する位置は、必ずしも理想被写体位置に表示する必要はなく、例えば、画面内の任意の位置に表示することが可能である。その場合、S207の理想被写体位置の算出は省略することが可能である。
【0051】
また、
図7では、追尾補正量の大きさに応じて矢印の大きさを変更した例を説明したが、矢印の大きさを変更しなくても、撮影者に対して撮像装置100の向きを変更すべき方向を示すことができれば追尾の遅れやフレームアウトを生じにくくすることができる。
【0052】
また、
図6及び
図7に表示した、被写体追尾制御をしなかった場合の被写体601、701をマーカーとして表示してもよい。この場合、実際に撮像素子123によりライブビュー映像として撮像されている画像中の被写体と区別をするために、表示濃度を薄くしたり、輪郭だけ表示したり、色を変えたりしてもよい。また、被写体追尾制御をしなかった場合の被写体の位置を撮影者に対して通知することができればよいため、
図6のように点などのマーカーで表示してもよい。撮影者は、被写体追尾制御をしなかった場合の被写体の位置を示すマーカーが、目標位置に近づくように撮像装置100の向きを変更することができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に
図3を用いて、第2実施形態における被写体の追尾制御について説明する。
図3は第2実施形態における撮像装置100による被写体の追尾撮影処理を示すフローチャートである。なお、
図3の各ステップは、CPU101により実行される。また、
図3において、
図2と同様の処理には同じステップ番号を付して、適宜説明を省略する。
【0054】
S204において追尾補正量を算出すると、次のS305において、ユーザから撮影指示があったか否かを判定する。ユーザからの撮影指示があった場合には、S306に進み、ユーザからの撮影指示が無い場合には、S308に進む。
【0055】
S306では、S205と同様に、追尾制御部113は、決定された被写体追尾方式により、S204で算出された追尾補正量に基づき、被写体追従制御を行い、次のS307において、S212と同様に撮影を行う。
【0056】
一方、S308において、S204で算出された追尾補正量が、補正限界を示す値よりも小さい、予め定められたリミット値(上限値)より大きいか否かを判定する。リミット値より大きい場合には、S309に進み、リミット値以下の場合には、S310に進む。
S309では、S304で算出された追尾補正量をリミット値に変更することにより追尾補正量を制限して、S310に進む。
【0057】
S310において、追尾制御部113は、決定された被写体追尾方式にて、S204で算出された追尾補正量もしくはS309で変更された追尾補正量に基づき、S205と同様にして被写体追従制御を行う。
【0058】
上記の通り第2実施形態によれば、被写体追尾を行っている場合で、かつ、撮影を行わない状態(つまり、撮影者が、表示デバイス130にライブビューされている画像を見ている状態)においては、被写体追尾の補正量にリミットを設定する。このように制御することで、実際の追尾可能限界に到達するよりも早いタイミングで、被写体の位置を目標位置に保持できない現象が発生する。これにより、撮影者に対し、追尾限界に到達する可能性があることを、補正限界に達したタイミングよりも早いタイミングで報知し、撮影者による操作を促すことができるため、追尾限界に到達することによる追尾の遅れやフレームアウトを防止することが可能になる。
【0059】
更に、撮影を行う際には、被写体追尾の補正量にリミットを設定しないことにより、実際に撮影される画像においては、被写体の位置を目標位置に保持できている状態となる。これにより、撮影した画像における被写体追尾と、表示デバイス130にライブビューされている画像におけるフレーミング操作のし易さを両立することが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態においては、撮影を行う際には、被写体追尾の補正量にリミットを設定しないこととしたが、撮影を行わない状態と、撮影を行う状態とで、追尾補正量のリミット値を異なる値とすることでも同様の効果を得ることができる。この場合、撮影を行わない状態のリミット値(第1リミット値)と、撮影を行う場合のリミット値(第2リミット値)の関係性は、第1リミット値<第2リミット値(つまり、撮影を行わない状態の方が補正量の効果が得られない)とすればよい。
【0061】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態では、光学補正系122を駆動することで、光学追尾方式の被写体追尾制御が可能な構成としたが、本発明はこれに限られるものではない。撮像素子123を駆動することでブレ補正機構の機能を実現する撮像装置においては、撮像素子123を駆動することで、光学追尾方式の被写体追尾制御を行ってもよいし、光学補正系122と撮像素子123の両方を駆動する構成としてもよい。
【0062】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0063】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0064】
100:撮像装置、101:CPU、102:振れ検出部、113:追尾量補正部、115:追尾量算出部、122:光学補正系、123:撮像素子、125:画像メモリ、126:メモリ読出し制御部、130:表示デバイス、131:被写体検出部、132:操作部