(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】通信システム、管理装置およびそれらの制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/20 20090101AFI20240221BHJP
H04W 48/18 20090101ALI20240221BHJP
H04W 36/14 20090101ALI20240221BHJP
H04W 92/08 20090101ALI20240221BHJP
【FI】
H04W8/20
H04W48/18
H04W36/14
H04W92/08
(21)【出願番号】P 2020005409
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 正志
【審査官】▲高▼木 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063302(JP,A)
【文献】特開2006-222774(JP,A)
【文献】特開2017-038409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0176768(US,A1)
【文献】特開2019-193190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0289788(US,A1)
【文献】国際公開第2019/165941(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/208612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と、前記通信装置への通信プロファイルの割り当てを管理する管理装置とを備える通信システムであって、
前記通信装置は、
受信した報知信号から無線ネットワーク識別子を抽出する抽出手段と、
前記無線ネットワーク識別子
を前記管理装置に通知することに応じて前記管理装置から受信される応答に基づいて、現在利用中の無線ネットワークの第1の通信
プロファイルから変更する第2の通信
プロファイルの存在を確認する確認手段と、
前記存在が確認された場合に、利用対象の通信プロファイルを
前記第1の通信プロファイルから前記第2の通信プロファイルに
変更する
変更手段と、
を備え、
前記管理装置は、
前記通信装置から通知された前記無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルのうち、前記通信装置に割り当てが可能であり、属性が所定の条件を満たす通信プロファイルを前記第2の通信プロファイルとして通知する前記応答を前記通信装置に送信する送信手段を備える、ことを特徴とする通信
システム。
【請求項2】
通信装置と、前記通信装置への通信プロファイルの割り当てを管理する管理装置とを備える通信システムであって、
前記管理装置は、
前記通信装置が利用できる通信プロファイルとその属性を前記通信装置に通知する通知手段、を備え、
前記通信装置は、
前記管理装置から通知される、利用可能な通信プロファイルとその属性を保持する保持手段と、
受信した報知信号から無線ネットワーク識別子を抽出する抽出手段と、
前記保持手段に保持されている通信プロファイルから、前記無線ネットワーク識別子に
対応する通信プロファイルのうち、現在利用中の無線ネットワークの第1の通信
プロファイルとは異な
り、
属性が所定の条件を満たす第2の通信
プロファイルの存在を確認する確認手段と、
前記存在が確認された場合に、利用対象の通信プロファイルを
前記第1の通信プロファイルから前記第2の通信プロファイルに
変更する
変更手段と、
を備えることを特徴とする通信
システム。
【請求項3】
前記利用対象の通信プロファイルを前記第2の通信プロファイルへ変更する場合に、前記第2の通信プロファイルのサブスクリプション管理装置に対して、前記第2の通信プロファイルを要求する要求手段を更に備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記保持手段に保持されている通信プロファイルとその属性を、前記
管理装置からの通知に応じて更新する更新手
段をさらに備えることを特徴とする請求項
2に記載の通信
システム。
【請求項5】
前記更新手段は、前記
管理装置からの着呼を契機に前記
管理装置との間に設定される通信路を介して、前記保持手段に保持されている通信プロファイルとその属性を更新することを特徴とする請求項4に記載の通信
システム。
【請求項6】
前記所定の条件とは、通信料金に関する条件であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項7】
前記所定の条件とは、通信速度に関する条件であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項8】
前記通信装置の起動または再起動が完了した後に、前記報知信号を最初に受信したことに応じて、前記確認手段による確認が実行されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項9】
前記確認手段による前回の確認から所定期間の経過後であり、且つ前記抽出手段により抽出された無線ネットワーク識別子が変化したことを検出した場合、前記報知信号を受信したことに応じて、前記確認手段による確認が実行されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項10】
無線回線品質の測定結果が所定の値を下回ることを検出した履歴が存在する場合、前記報知信号を受信したことに応じて、前記確認手段による確認が実行されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項11】
前記無線回線品質の測定は、通信スループットの測定、および/または、通信フレームエラーレートの測定を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の通信
システム。
【請求項12】
前記無線ネットワーク識別子は、PLMN-ID(Public Land Mobile Networks-IDentifier)であることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の通信
システム。
【請求項13】
通信装置を管理する管理装置であって、
前記通信装置に割り当てが可能な通信プロファイルとその属性を管理する管理手段と、
前記通信装置から通知された無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルの属性に基づいて、前記通信装置が利用する通信プロファイルの切り替えを行うべきか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定の結果を前記通信装置に通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項14】
前記通知手段は、前記判定の結果を、前記無線ネットワーク識別子の通知に対する応答として前記通信装置に通知することを特徴とする請求項13に記載の管理装置。
【請求項15】
通信装置を管理する管理装置であって、
前記通信装置に割り当てが可能な通信プロファイルとその属性を含む好適度情報を保持する保持手段と、
必要に応じて前記好適度情報を更新する更新手段と、
前記更新手段により前記好適度情報が更新された場合に、前記好適度情報を前記通信装置に通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項16】
前記通知手段は、前記通信装置に対し着呼通知を行い、前記着呼通知に応じて前記通信装置が接続した通信路を介して前記更新された好適度情報を通知することを特徴とする請求項15に記載の管理装置。
【請求項17】
通信装置と、前記通信装置への通信プロファイルの割り当てを管理する管理装置とを備える通信システムの制御方法であって、
前記通信装置が、受信した報知信号から無線ネットワーク識別子を抽出
し、通知する
通知工程と、
前記管理装置が、前記通知された前記無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルのうち、前記通信装置に割り当てが可能であり、属性が所定の条件を満たす通信プロファイルを、現在利用中の無線ネットワークの第1の通信プロファイルから変更する第2の通信プロファイルとして通知する応答を前記通信装置に送信する送信工程と、
前記通信装置が、前記応答に基づいて
前記第2の通信プロファイルの存在を確認
した場合に、利用対象の通信プロファイルを
前記第1の通信プロファイルから前記第2の通信プロファイルに
変更する
変更工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項18】
通信装置と、前記通信装置への通信プロファイルの割り当てを管理する管理装置とを備える通信システムの制御方法であって、
前記管理装置が、前記通信装置が利用できる通信プロファイルとその属性を前記通信装置に通知する通知工程と、
前記通信装置が、前記管理装置から通知される通信プロファイルとその属性を保持部に保持する保持工程と、
前記通信装置が、受信した報知信号から無線ネットワーク識別子を抽出する抽出工程と、
前記通信装置が、前記保持部に保持されている通信プロファイルから、前記無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルのうち、現在利用中の無線ネットワークの第1の通信プロファイルとは異なり、属性が所定の条件を満たす第2の通信プロファイルの存在を確認する確認工程と、
前記通信装置が、前記存在が確認された場合に、利用対象の通信プロファイルを前記第1の通信プロファイルから前記第2の通信プロファイルに変更する変更工程と、を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項19】
無線通信装置を管理する管理装置の制御方法であって、
前記無線通信装置に割り当てが可能な通信プロファイルとその属性を管理する管理工程と、
前記無線通信装置から通知された無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルの属性に基づいて、前記無線通信装置が利用する通信プロファイルの切り替えを行うべきか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程による判定の結果を前記無線通信装置に通知する通知工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項20】
無線通信装置を管理する管理装置の制御方法であって、
前記無線通信装置に割り当てが可能な通信プロファイルとその属性を含む好適度情報を保持する保持工程と、
必要に応じて前記好適度情報を更新する更新工程と、
前記更新工程により前記好適度情報が更新された場合に、前記好適度情報を前記無線通信装置に通知する通知工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項21】
請求
項19
または20に記載された制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、管理装置およびそれらの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公衆無線通信装置は、通信オペレータの通信プロファイルを利用して通信を行う。特許文献1では、無線通信装置内に複数の通信プロファイルを事前に記憶しておき、無線通信装置が利用する通信プロファイルを定期的に切換える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信装置の通信プロファイルは、無線通信装置のサプライヤが、出荷前や設置時に無線通信装置内に格納する手法が一般的である。したがって、無線通信装置に格納されている通信プロファイルに対応する通信オペレータよりも好適な条件の通信オペレータの通信エリア内に当該無線通信装置が在圏していても、当該無線通信装置が当該通信オペレータを利用した通信を行うことはできない。無線通信装置に当該好適な通信オペレータのための有効な通信プロファイルが格納されていないからである。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、無線通信装置が使用する通信プロファイルを、その無線通信装置の稼働場所においてより好適な通信プロファイルに更新することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による通信システムは、以下の構成を備える。すなわち、
通信装置と、前記通信装置への通信プロファイルの割り当てを管理する管理装置とを備える通信システムであって、
前記通信装置は、
受信した報知信号から無線ネットワーク識別子を抽出する抽出手段と、
前記無線ネットワーク識別子を前記管理装置に通知することに応じて前記管理装置から受信される応答に基づいて、現在利用中の無線ネットワークの第1の通信プロファイルから変更する第2の通信プロファイルの存在を確認する確認手段と、
前記存在が確認された場合に、利用対象の通信プロファイルを前記第1の通信プロファイルから前記第2の通信プロファイルに変更する変更手段と、を備え、
前記管理装置は、
前記通信装置から通知された前記無線ネットワーク識別子に対応する通信プロファイルのうち、前記通信装置に割り当てが可能であり、属性が所定の条件を満たす通信プロファイルを前記第2の通信プロファイルとして通知する前記応答を前記通信装置に送信する送信手段を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線通信装置が使用する通信プロファイルを、その無線通信装置の稼働場所においてより好適な通信プロファイルに更新することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による無線通信システムの構成例を示す図。
【
図2】第1実施形態による無線通信装置の機能構成例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態による機器管理システムの機能構成例を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態による通信プロファイルの更新処理を示す概念図。
【
図5A】第1実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図5B】第1実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図5C】第1実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図6】第1実施形態による無線通信装置の処理を説明するフローチャート。
【
図7】第1実施形態による機器管理システムの処理を説明するフローチャート。
【
図8】通信プロファイル管理データベースのデータ構成例を示す図。
【
図9】eSIM管理データベースのデータ構成例を示す図。
【
図10】第2実施形態による無線通信システムの構成例を示す図。
【
図11】第2実施形態による無線通信装置の機能構成例を示すブロック図。
【
図12】第2実施形態による通信プロファイルの更新処理を示す概念図。
【
図13A】第2実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図13B】第2実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図13C】第2実施形態による通信プロファイルの更新処理を説明するシーケンス図。
【
図14】第2実施形態による無線通信装置が保持する好適度情報の例を示す図。
【
図15】第2実施形態による無線通信装置の処理を説明するフローチャート。
【
図16】eSIM内の通信プロファイルをIoT機器管理者が更新するシステム例を示す図。
【
図17】(a)はIMSI(International Mobile Subscription Identity)の情報構成を示す図、(b)はIMSIを用いる無線認証制御手順の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<IoT(Internet of Things)機器の管理者による通信プロファイルの更新について>
先ず、以下に説明する本発明の実施形態の比較例として、無線通信装置内のeSIM(embedded Subscriber Identity Module)に記憶されている通信プロファイルをIoT機器の管理者が更新するシステムの動作について、
図16を参照しながら説明する。
【0011】
図16は、無線通信装置(無線IoT機器)内のeSIMに記憶されている通信プロファイルをIoT機器の管理者が更新する無線通信システムの概念図である。
図16には、一例として、無線IoT機器1630を備える建設機械が示されている。IoT機器の管理者1601からの指示により、無線IoT機器1630内のeSIMが保持する通信プロファイルが建設機械(無線IoT機器1630)の稼働場所にて更新される。
【0012】
無線IoT機器1630(建設機械)の管理者1601は、無線IoT機器1630の現在位置情報を元に、利用する通信プロファイルの更新が必要か否かを判断する。管理者1601は、更新が必要と判断した場合、IoT機器管理システム1600に対して、更新対象のeSIMの個体識別情報(eUICC-ID)と、切換先の通信オペレータを指定することにより通信プロファイルの更新の指示1641を行う。IoT機器管理システム1600は、事前に要求先SM問合せ1642を実施して、サブスクリプション管理装置(Subscription Manager)1610のアクセス先を入手している。更新の指示1641を受け付けたIoT機器管理システム1600は、指定された無線IoT機器1630内のeSIMの通信プロファイルを、切換先の通信プロファイルへ更新することを要求する(更新要求1643)。サブスクリプション管理装置1610は、この更新要求1643に従って通信プロファイルの更新通知1644を発行する。更新通知1644を受信した無線IoT機器1630は、eSIMに保持されている通信プロファイルを、更新通知1644に従って更新する。
【0013】
図16に示される通信プロファイルの更新制御では、無線IoT機器1630のサプライヤ側の操作によって指定される通信オペレータの通信プロファイルへの更新が、無線IoT機器1630の稼働場所で実施される。しかしながら、eSIMを搭載する無線IoT機器1630の動作場所の至近にある基地局のMNO(移動体通信事業者:Mobile Network Operator)の情報をIoT機器管理システム1600が常に把握できているとは限らない。従って、無線IoT機器1630がより有利な通信条件の通信オペレータのサービスエリア内に在圏していても、そのことをIoT機器管理システム1600が把握していなければ、当該通信オペレータを選択することはできない。このため、指定された通信オペレータよりも好適な条件の通信オペレータの通信エリア内に無線IoT機器1630が在圏していても、対応する通信プロファイルを取得することができず、当該通信オペレータを利用することができない場合がある。
【0014】
以下、実施形態に係る無線IoT機器、無線IoT機器内のeSIMにて利用される通信プロファイルを、無線IoT機器の稼働場所に応じた好適なものに自動更新する通信システムの実施形態について、図面を参照しながら、説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図17(a)は本実施形態の無線通信システムで利用される無線装置識別情報であるIMSI(International Mobile Subscription Identity)の構成例を示す概念図である。IMSIは、PLMN-ID(Public Land Mobile Networks-IDentifier)と、MSIN(Mobile Subscription Identification Number)によって、構成されている。PLMN-IDは、MCC(Mobile Country Code)とMNC(Mobile Network Code)で構成されている。
【0016】
図17(b)は、
図17(a)のIMSIを用いる、無線通信装置(無線端末)の無線接続認証処理の起動手順を示す模式図である。無線通信装置は、無線通信基地局(以下、基地局という)から定常的に間欠送信される報知信号を受信し、その報知信号内に含まれる無線ネットワーク識別子としてのPLMN-IDを検出している。以下に説明する実施形態では、報知信号内に含まれるPLMN-IDの検出を、「その無線通信装置が当該通信オペレータの統括する無線セル内に在圏状態である」と判断する事象とし、当該事象を通信オペレータの再選択の起動条件に利用する。
【0017】
図1は、第1実施形態による無線通信システムの構成例を示すブロック図である。無線通信システムは、無線通信装置である無線IoT機器11内のeSIMが利用する通信プロファイルを自動的に変更する。本実施形態では、無線IoT機器11の一例として撮像装置が示されているが、これに限られない。すなわち、本発明は、各種IoT機器、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなど、無線通信機能を搭載したあらゆる装置に適用することが可能である。IoT機器管理システム12は、無線IoT機器11をネットワーク経由で管理する管理装置である。IoT機器管理システム12は、無線IoT機器11への通信プロファイルの割当状況を管理する。また、IoT機器管理システム12は、無線通信装置に割り当てが可能な通信プロファイルとその属性を管理する。サブスクリプション管理装置13(Subscription Manager)は、無線IoT機器11内のeSIMに保持される通信プロファイルを管理する。IoT機器管理システム12とサブスクリプション管理装置13との間では、無線IoT機器11に割当てが可能な通信プロファイルの有無の情報が、定期的なメッセージ交換等を用いて共有されている(100)。
【0018】
無線IoT機器11は、自身を管理するIoT機器管理システム12に対して、通信プロファイルの更新の要否を確認することを依頼するメッセージ(通信プロファイルの更新要否の確認要求101)を送信する。IoT機器管理システム12は、確認要求101に対して、その確認結果を示すメッセージ(通信プロファイルの更新要否の確認応答102)を無線IoT機器11に送信する。
【0019】
無線IoT機器11は、確認応答102によって通信プロファイルの更新の必要性を認識すると、サブスクリプション管理装置13に対して、通信プロファイルの更新を要求するメッセージ(更新要求103)を送信する。そして、無線IoT機器11は、サブスクリプション管理装置13から更新要求103に対する応答メッセージ(通信プロファイルの更新通知104)を受信することにより、更新対象の通信プロファイル110を取得する。
【0020】
無線IoT機器11は、サブスクリプション管理装置13から更新対象の通信プロファイル110を取得すると、利用対象の通信プロファイルを、利用中の通信プロファイル111から通信プロファイル110に更新する。すなわち、無線IoT機器11は、通信プロファイル111をdisableに、通信プロファイル110をenableに設定する。尚、本実施形態の通信プロファイルは、無線通信オペレータが提供するサブスクリプション情報であり、例えば、電話番号、IMSI(
図17(a))等を想定している。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る無線IoT機器11としての撮像装置の機能構成例を示すブロック図である。無線IoT機器11は、CPU200、表示部201、操作部202、撮影部203、不揮発性記憶部204、Wi-Fi通信部205、GPS受信部206、電源部207、RAM210、ROM211を備える。また、無線IoT機器11は、eSIM機能部212、公衆無線通信部213、無線ネットワーク識別子記憶部214を備える。
【0022】
CPU200は1つまたは複数のプロセッサーを有し、不揮発性記憶部204、RAM210またはROM211に格納されているプログラムを実行することにより、各種制御を実現する。CPU200は、例えば、フローチャートなどにより後述される無線IoT機器11の各種動作を実現する。なお、後述される無線IoT機器11の動作の一部あるいはすべてがハードウエアとCPU200の協働により実現されてもよいし、専用のハードウエアのみによって構成されてもよい。
【0023】
表示部201は、CPU200の制御下で、ライブビュー表示や再生画像表示などの各種表示を行う。操作部202は、シャッターボタンなどを含み、ユーザからの操作入力を受け付ける。撮影部203は、CCDなどの撮像素子を有し、画像を撮影する。不揮発性記憶部204は、例えば、着脱可能なメモリカードであり、撮影部203が撮影した画像を格納する。不揮発性記憶部204に、CPU200により実行されるプログラムが格納されてもよい。その場合、不揮発性記憶部204に格納されているプログラムは、CPU200が実行するために、必要に応じてRAM210にロードされる。Wi-Fi通信部205は、Wi-Fi通信を実現する。GPS受信部206は、GPS信号を受信して、無線IoT機器11の現在の位置を示す位置情報を生成する。電源部207は、不図示のバッテリーを含み、無線IoT機器11内の各部に必要な電力を供給する。
【0024】
RAM210は、CPU200が実行するプログラムを格納するとともに、CPU200が各種処理を実行する際の作業領域を提供する。ROM211は、CPU200が実行するプログラム、各種データを格納する。eSIM機能部212は、eSIM内の通信オペレータを用いて公衆無線通信部213による無線通信を制御する。無線ネットワーク識別子記憶部214は、基地局から受信した報知信号に含まれている無線ネットワーク識別子を一時的に記憶する。本実施形態では、無線ネットワーク識別子としてPLMN-IDが用いられており、無線ネットワーク識別子記憶部214はこのPLMN-IDを一時的に記憶する。なお、無線ネットワーク識別子記憶部214としてRAM210が用いられてもよい。なお、無線ネットワーク識別子記憶部214は、ある無線ネットワーク識別子を含む報知信号が受信されなくなると、当該無線ネットワーク識別子を削除する。
【0025】
図3は、第1実施形態によるIoT機器管理システム12の機能構成例を示すブロック図である。IoT機器管理システム12において、通信プロファイルの管理データベース310は、配布対象の通信プロファイルを管理する。eSIMの管理データベース320は、管理対象IoT機器のeSIM毎の通信プロファイルを管理する。通信プロファイルの管理データベース310のデータ構成例を
図8に、eSIMの管理データベース320のデータ構成例を
図9に示す。通信インタフェース330は、インターネット接続用のインタフェースである。データベース管理部332は、IoT機器に割り当てが可能な通信プロファイルをサブスクリプション管理装置13との間で共有(100)するべく、管理データベース310,320を構築、更新する。更新要否判定部334は、無線IoT機器11から通知されるPLMN-IDとeUICC-ID、および管理データベース310,320に基づいて、IoT機器が有するeSIM内の通信プロファイルの更新の要否を判定する。更新要否判定部334の動作の詳細は、
図7の参照により後述する。
【0026】
図4は、第1実施形態による無線通信システム(
図1)による通信プロファイルの更新動作を説明する図である。
図4では、無線ネットワーク420の下で、無線IoT機器11内の通信プロファイルを当該機器の稼働場所に応じた好適なものに自動的に更新するための制御手順を模式的に示している。
【0027】
図4において、無線IoT機器11、無線IoT機器11を無線ネットワーク経由で管理するIoT機器管理システム12は
図1で説明したとおりである。また、
図4では、無線IoT機器11が有するeSIM内の通信プロファイルを管理する通信オペレータ1用のサブスクリプション管理装置410、通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411が示されている。また、
図4では、無線IoT機器11の移動により、通信オペレータ1が管理する基地局421および通信オペレータNが管理する基地局422からの報知信号が無線IoT機器11によって受信されるようになった状態が示されている。
【0028】
通信プロファイルの更新を実施する際の各装置間のメッセージシーケンスの例を
図5A、
図5B、
図5Cに示す。また、
図6は、無線IoT機器11が、基地局からの報知信号情報の監視タイミングで付加的に実施する処理を示すフローチャートである。
図7は、IoT機器管理システム12が、無線IoT機器11から通信プロファイルの更新要否の確認要求を受信した場合に実施される処理を示すフローチャートである。以下、
図4から
図7を参照して、第1実施形態の無線IoT機器11が、通信サービスの開始待機中(着呼待受けのみの省電力状態)に無線セル切換が発生した際の対応制御の例を説明する。
【0029】
無線IoT機器11は、起動、または再起動し、ハードウエアおよびソフトウウエアの起動が完了すると、自身が在圏する通信エリアを構成する基地局が送信する報知信号を監視する。
図4、
図5Aの例では、無線IoT機器11の移動前において基地局421からの報知信号501のみが無線IoT機器11により受信されている。そして、無線IoT機器11の移動により、基地局421の報知信号501と基地局422からの報知信号502が無線IoT機器11により受信されるように変化している。無線IoT機器11は、報知信号501、報知信号502から送信元基地局のPLMN-IDを抽出し、抽出した情報を、無線ネットワーク識別子記憶部214に格納する(
図4のS41、
図6のS601)。なお、本例では、2つの通信プロバイダによる2つの基地局から報知信号を受信した場合を説明するが、3つ以上の通信プロバイダによる3つ以上の基地局が存在すれば、それら3つ以上の基地局からの報知信号を受信することになる。
【0030】
続いて、無線IoT機器11は、通信プロファイル更新の要否確認を実施することの必要性を判定する(S51、S602~S605)。本実施形態では、無線IoT機器11が、報知信号を受信した際に以下の(1)~(3)のいずれかの条件が満たされている場合に、通信プロファイル更新の要否確認が必要であると判定する。なお、通信プロファイル更新の要否確認が必要ではないと判定された場合、本処理は終了する。
(1)無線IoT機器11の起動後または再起動後の、最初の報知信号の検出であった場合(S602でYES)。
(2)利用中の無線ネットワークでの通信品質(無線回線品質)低下の事象の発生履歴がある場合(S603でYES)。すなわち、利用中の無線ネットワークにおいて無線回線品質の測定結果が規定の値を下回ることを検出した履歴が存在する場合。なお、無線回線品質の測定は、例えば、通信スループットの測定、および/または、通信フレームエラーレートの測定を含む。
(3)前回の要否確認(前回のPLMN-IDの抽出)から規定期間(所定期間)の経過後であり、今回のPLMN-ID(の組み合わせ)が前回のPLMN-ID(の組み合わせ)から変化している場合(S604、S605でYES)。
【0031】
通信プロファイル更新の要否確認が必要と判定された場合、無線IoT機器11は、IoT機器管理システム12と通信セッションを設定し、受信中のPLMN-ID(現在利用中のPLMN-IDを含む)を通知する(S606)。より具体的には、無線IoT機器11は、現在利用中の通信オペレータ1用の通信プロファイルを用いて、RRC接続503および通信ベアラ設定504を行う。RRC接続503とは、利用中の通信オペレータの基地局421との無線通信路の接続設定である。通信ベアラ設定504とは、利用中の通信オペレータのデータゲートウェイ経由でのデータ通信路の設定である。通信ベアラ設定504の後に、無線IoT機器11は、IoT機器管理システム12に対して、データ通信セッションを設定し、通信プロファイルの更新要否の確認要求101のメッセージを送信する(S42、S52)。確認要求101のメッセージは、無線ネットワーク識別子記憶部214に格納されているPLMN-ID(受信中のPLMN-ID)と、eSIMの個体識別情報であるeUICC-IDを含む。なお、上記(1)の条件により更新の要否確認が必要と判定された場合、抽出されたPLMN-IDのうち無線IoT機器11においてデフォルトで使用するように設定されている通信プロファイルのPLMN-IDが現在利用中のPLMN-IDとして用いられる。
【0032】
通信プロファイルの更新要否の確認要求101を受信したIoT機器管理システム12(更新要否判定部334)は、
図7に示す処理を開始する。先ず、IoT機器管理システム12は、通信プロファイルの更新要否の確認要求101にて通知されたPLMN-ID、eUICC-ID情報を指標として、IoT機器管理システム12内の管理データベース310、320(
図8、
図9)を参照する。IoT機器管理システム12は、無線ネットワーク識別子に基づいて、現在利用中の無線ネットワークの通信オペレータとは異なる通信オペレータのうち、現在利用可能であって、所定の条件を満たす通信オペレータが存在するか否かを確認する。所定の条件を満たす通信オペレータとは、現在利用中の通信プロファイルよりも好適であると判断され、且つ、配布可能な通信プロファイルである。IoT機器管理システム12は、このような通信プロファイルの有無を判定条件として、通信プロファイル更新の要否を確認する(S701)。すなわち、IoT機器管理システム12の更新要否判定部334は、通知されたPLMN-IDの中に、現在利用中の通信プロファイルよりも好適で配布が可能な通信プロファイル(所定の条件を満たす通信プロファイル)が存在する場合に、通信プロファイルの更新が必要であると判定する。
【0033】
以上のように、通信プロファイル更新の要否判定では、通信プロファイルの更新要否の確認要求101の送信元の無線IoT機器11が現在enable状態の通信オペレータより好適な通信オペレータが存在するかを通知されたPLMN-IDを元に判定する。本例では、通信品質の低下を要因にした要否判定には通信オペレータ毎の提供通信速度指標の優先度を、通信品質以外を要因にした要否判定には通信オペレータ毎の利用通信料金指標の優先度を用いて、通信プロファイルの更新要否判定を実施する例を示す。
図8、
図9では、これらの優先度が、好適度判定時の優先度として示されている。
【0034】
現在利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータが存在しない場合は、S701において通信プロファイルの更新が不要と判定される(S702でNO)。この場合、IoT機器管理システム12は、利用中の通信プロファイルの継続利用を指示するステータスをセットして、通信プロファイルの更新要否の確認応答102を返送する(S708、S43)。一方、現在利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータが存在する場合は、更新の要否判定(S701)で通信プロファイルの更新が必要と判定され(S702でYES、S53)る。この場合、IoT機器管理システム12は、先ず、当該好適な通信オペレータの通信プロファイルが、確認要求101の送信元である無線IoT機器11内のeSIMに格納済であるかを確認する(S703)。
【0035】
格納済と判定された場合(S703でYES)、IoT機器管理システム12は、当該格納済の通信プロファイルへの更新(enable対象の通信プロファイルの変更)を指示するステータスをセットして、確認応答102を返送する(S707、S43)。一方、格納済でないと判定された場合(S703でNO)、より好適と判定された通信オペレータのサブスクリプション管理装置に対して、新規に通信プロファイルを発行するための回線契約を要求するためのメッセージ505を送信する(S704)。本例では、通信オペレータNのサブスクリプション管理装置411にメッセージ505が送信される。
【0036】
回線契約を要求するメッセージ505を受領したサブスクリプション管理装置411は、サブスクリプション管理装置へのアクセスルートを更新するためのメッセージ506を、更新元の通信オペレータ1用のサブスクリプション管理装置410へ送信する。IoT機器管理システム12は、新規な通信プロファイルの発行受付の確認を示すメッセージ507を受信すると、新規の通信プロファイルの発行受付が完了した判断する(S705でYES)。IoT機器管理システム12は、新規の通信プロファイルの発行受付が完了したと判断すると、新規通信プロファイルへの更新指示を含む確認応答102を無線IoT機器11に送信する(S706、S43、S54)。この確認応答102には、例えば、新規発行された通信プロファイルへの更新を指示するステータスと、新規通信プロファイルの起動用のコードがセットされる。通信プロファイルの更新要否の確認応答102の返送をもって、IoT機器管理システム12は1通信セッション単位の処理を終了する。
【0037】
通信プロファイルの更新要否の確認応答102を受信した無線IoT機器11は、IoT機器管理システム12とのデータ通信セッションを解放後、確認応答102によって通知されている指示ステータスを参照する(S607)。更新が不要である旨のステータスを受信した場合は(S607でNO)、本処理(報知信号受信時の付加処理)を終了する。他方、更新が必要である旨のステータスを受信した場合は(S607でYES)、利用する通信プロファイルの更新が必要であること(更新の必要性)を認知し(S55)、無線IoT機器11は、通信プロファイルの更新処理を起動する(S56)。
【0038】
通信プロファイルの更新処理の起動後、無線IoT機器11は、先ず現在利用中の通信オペレータ1用のサブスクリプション管理装置410にルート問い合わせ508を発行する。ルート問い合わせ508は、更新先の通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411へのアクセスルート情報(例えば、サブスクリプション管理装置411のIPアドレス、ドメインネーム等)を問い合わせる。サブスクリプション管理装置410は、通信プロファイルの発行元のサブスクリプション管理装置へのアクセスルートを更新するメッセージ506の内容に従ってルート応答509を返送する。このルート応答509は、更新先である通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411へのアクセスルート情報を含む。
【0039】
無線IoT機器11は、ルート応答509から取得したアクセスルート情報に従って、セキュア通信路の設定要求を発行し(S44)、通信プロファイルダウンロード用のセキュア通信路の接続510を行う(S608)。セキュア通信路とは、通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411に対して、データ通信ペイロードのデータを、装置間で共有している暗号鍵を用いて暗号化して通信する通信路である。
【0040】
セキュア通信路の接続510の完了後、更新先通信オペレータNのサブスクリプション管理装置411から通信プロファイルの更新通知511が無線IoT機器11に送信される(S45)。その後、無線IoT機器11は、セキュア通信路の解放512を実行する。そして、無線IoT機器11は、更新前の通信オペレータ1用の通信プロファイルを用いた通信ベアラの解放513と、RRC解放514を行う。通信ベアラの解放513では、利用中の通信オペレータのデータゲートウェイ423経由でのデータ通信路の解放が行われる。また、RRC解放514では、利用中の通信オペレータの基地局421との無線通信路の解放が行われる。その後、無線IoT機器11は、利用する通信プロファイル(eSIMにおけるenable対象の通信プロファイル)を通信オペレータNの通信プロファイル110に切換える(S57、S609)。
【0041】
無線IoT機器11は、通信プロファイルの切換(S57)の後、好適な通信オペレータが提供する無線ネットワーク(基地局422と、データゲートウェイ424を経由した通信)による通信を行う。すなわち、無線IoT機器11は、通信オペレータN用の通信プロファイルを用いて、RRC接続515(基地局422との無線通信路の接続設定)と、通信ベアラ設定516(データゲートウェイ424経由でのデータ通信路の設定)を行う。通信ベアラの設定後、無線IoT機器11は、通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411に、アクセスルート情報の問合せであるルート問い合せ517を発行する。サブスクリプション管理装置411は、自装置へのアクセスルート情報を含むルート応答518を返送する。
【0042】
無線IoT機器11は、サブスクリプション管理装置411から取得したアクセスルート情報に従って、切換先の通信オペレータのサブスクリプション管理装置411とセキュア通信路の接続519を行う。その後、無線IoT機器11は、通信プロファイルの更新完了通知520をサブスクリプション管理装置411に返送する。これにより、サブスクリプション管理装置411と無線IoT機器11内のeSIMにおけるenable対象の通信プロファイルの設定状況を同期させることができる。その後、無線IoT機器11は、サブスクリプション管理装置411とのセキュア通信路の解放521を行う。無線IoT機器11は、無線接続(RCC接続)を保持したまま、更新された通信プロファイルの特性(料金、速度の条件)に対応した、通信ベアラの更新522(利用通信オペレータのデータゲートウェイ経由でのデータ通信路への更新)を実施する。
【0043】
以上が、第1実施形態の報知信号情報の監視タイミングで実施される制御である。尚、通信プロファイルの更新要否の判定条件として、本実施形態では、
図8、
図9に例示したような通信速度、通信料金を用いた例を示したが、これに限られるものではない。例えば、データ通信時の遅延発生量等を判定条件に利用するようにしてもよい。
【0044】
以上説明したように、第1実施形態の無線通信装置である無線IoT機器は、基地局から送信されている報知信号を定期的に監視する。そして、無線IoT機器11は、報知信号に含まれるPLMN-IDを認識し、認識したPLMN-IDを元に、現在利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータの有無を、IoT機器管理システム12を用いて確認する。この確認により現在利用中の通信オペレータより好適な通信オペレータが有ると判定された際には、無線IoT機器11は、セキュア無線リンクを設定し、通信オペレータの更新処理に備える。一方、好適な通信オペレータが無いと判定された際には、無線IoT機器11は、セキュア無線リンクを設定しない。なお、セキュア無線リンクとは、通信プロファイルの更新処理用のデータ通信ペイロードのデータを、装置間で共有している暗号鍵を用いて暗号化して通信する通信路である。
【0045】
以上により、eSIMを内蔵する無線通信装置が、当該装置の稼働場所において条件的に最も有利な通信オペレータを自動選択し、当該通信オペレータの通信プロファイルをダウンロードすることができる。結果、無線通信装置は、稼働場所においてもっと有利な条件の通信オペレータの回線が利用できるようになる。
【0046】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、無線通信装置(無線IoT機器11)が報知信号を定期的に監視し、報知信号から抽出したPLMN-IDを指標として用いて、好適な通信オペレータの有無を外部装置であるIoT機器管理システム12に判定させていた。第2実施形態では、無線通信装置である無線IoT機器内に、IoT機器管理システム側の通信オペレータ情報と同期した好適度情報を保持させ、これを利用して無線IoT機器自身が、好適な通信オペレータの有無を判定する。
【0047】
図10は、無線IoT機器内のeSIMが利用する通信プロファイルを自動更新する無線通信システムの第2実施形態による構成例を示す模式図である。無線通信システムは、無線IoT機器11a、無線IoT機器11aをネットワーク経由で管理するIoT機器管理システム12a、無線IoT機器11aのeSIM内の通信プロファイルを管理するサブスクリプション管理装置13を備える。第1実施形態と同様に、IoT機器管理システム12aとサブスクリプション管理装置13の間では、無線IoT機器11aに割当可能な通信プロファイルの有無の情報が、定期的なメッセージ交換等を用いて共有されている(100)。また、第2実施形態の無線IoT機器11aは、自装置を管理するIoT機器管理システム12aとの間でPLMN-ID情報を指標にした好適度判定用の情報(好適度情報1002)を共有している(1001)。無線IoT機器11aは、IoT機器管理システム12aとの間で定常的に実施される、装置間のメッセージ通信等(
図13Aで後述)によって好適度情報1002の共有(1001)を行う。
【0048】
無線IoT機器11aは、判定用情報の共有によって取得した好適度情報1002を参照し、通信プロファイルの更新の要否を判定する。無線IoT機器11aは、通信プロファイルの更新の必要性を認識すると、サブスクリプション管理装置13に対して、通信プロファイルの更新要求103を送信し、更新要求103の応答として通信プロファイルの更新通知104を受信する。無線IoT機器11aは、更新通知104から更新対象の通信プロファイル110を取得する。更新対象の通信プロファイル110を取得すると、無線IoT機器11aは、利用対象の通信プロファイルを、利用中の通信プロファイル111から当該取得した通信プロファイル110に更新する。尚、第2実施形態の通信プロファイルは、第1実施形態と同様に、無線通信オペレータが提供するサブスクリプション情報であり、例えば、電話番号、IMSI(
図17(a)を参照)等を想定している。
【0049】
図11は、第2実施形態による無線IoT機器11aの機能構成例を示すブロック図である。第1実施形態(
図2)と同様の機能ブロックには同一の参照番号が付してある。無線IoT機器11aは、第1実施形態の無線IoT機器11の構成に加えて、好適度情報記憶部1101を備える。好適度情報記憶部1101は、上述した、通信オペレータの好適度情報1002を記憶する。なお、好適度情報記憶部1101は、RAM210、不揮発性記憶部204により構成されてもよい。なお、IoT機器管理システム12aの機能構成例は、概ね第1実施形態(
図3)と同様である。但し、第2実施形態のIoT機器管理システム12aは、更新要否判定部334に代えて、好適度情報を無線IoT機器11aと共有するための好適同情報共有部を備える。
【0050】
図12は、第2実施形態による無線通信システム(
図10)により実行される通信プロファイルの更新動作を説明する図である。以下、
図12に示される動作を実施する際の各装置間のメッセージシーケンスの例を
図13A、
図13B、
図13Cに示す。また、
図14に、好適度情報記憶部1101内に記憶される情報テーブルのデータ構成例を示す。また、
図15は、基地局からの報知信号の監視タイミングで無線IoT機器11aが付加的に実行する処理を示すフローチャートである。
【0051】
先ず、PLMN-ID情報を指標にした、通信オペレータの好適度情報1002をIoT機器管理システム12aと無線IoT機器11aが共有する制御について、
図13Aを参照して説明する。
図13Aは、無線IoT機器11aの好適度情報記憶部1101に記憶されている好適度情報を、IoT機器管理システム12a側の通信オペレータ情報の更新に同期して更新する制御手順の例を示している。無線IoT機器11aは、自機器が在圏する通信エリアを構成する基地局421が送信する報知信号1301を監視し、報知信号1301にて通知される、送信元基地局のPLMN-ID情報を抽出し、当該情報を無線ネットワーク識別子記憶部214に格納する。
【0052】
一方、IoT機器管理システム12aは、通信コスト、トラヒック等の見直しにより、システムとしての通信オペレータの好適度情報の更新を実施する。好適度情報の更新が実施されると、IoT機器管理システム12aは、自装置が管理する無線IoT機器11aが保持している好適度情報の更新の必要性を認識する(S131)。更新の必要性を認識したIoT機器管理システム12aは、記憶情報の更新が必要な無線IoT機器11aに対して着呼通知1302を実施する。IoT機器管理システム12aからの着呼通知1302を受け取った無線IoT機器11aは、現在利用中の通信オペレータ1用の通信プロファイルを用いて、RRC接続1303を行う。RRC接続1303では、利用中の通信オペレータの基地局421との無線通信路の接続設定が行われる。そして、無線IoT機器11aは、IoT機器管理システム12aとのベアラ通信路の接続1304を行う。ベアラ通信路の接続1304では、利用中の通信オペレータのデータゲートウェイ423経由でのデータ通信路の設定、接続が行われる。
【0053】
ベアラ通信路の接続1304を認識したIoT機器管理システム12aは、好適度情報の更新要求1305を発行し、通信オペレータの好適度情報の更新が必要であることを無線IoT機器11aに通知する。更新要求1305を受信した無線IoT機器11aは、更新要求1305で通知される好適度情報の更新内容に従って好適度情報記憶部1101内の好適度情報1002を更新する(S121、S132)。好適度情報1002の更新が完了すると、無線IoT機器11aは、更新完了1306をIoT機器管理システム12aに通知する。更新完了1306の送信後、無線IoT機器11aは、着呼通知1302をトリガに設定したベアラ通信路の解放1307と、RRC解放1308を行う。以上が、第2実施形態の無線IoT機器11aによる、好適度情報1002の自動同期更新処理である。このように、無線IoT機器11aは、外部装置であるIoT機器管理システム12aからの着呼を契機として、IoT機器管理システム12aとの間に設定される通信路を介して好適度情報1002を更新する。
【0054】
次に、第2実施形態の無線IoT機器11aが、通信サービスの開始待機中に、無線セル切換が発生した際の対応制御の例(
図13B、
図13C)を説明する。無線IoT機器11aは、自機器が在圏する通信エリアを構成する基地局が送信する報知信号を監視し、当該報知信号にて通知される送信元基地局のPLMN-IDを抽出して無線ネットワーク識別子記憶部214に格納する(S1501)。
図12、
図13Bの例では、無線IoT機器11aの移動により、基地局421からの報知信号1309と基地局422からの報知信号1310が無線IoT機器11aにより受信されるようになる。続いて、所定の条件に従った通信プロファイル更新の要否確認の必要性の確認を行う(S1502~S1505)。
【0055】
第2実施形態では、好適度情報記憶部1101に記憶されている好適度情報(
図14)を参照することにより、利用する通信プロファイルの更新(変更)の要否が確認される。無線IoT機器11aの報知信号受信処理の際に、以下のいずれかの条件が満たされる場合に、利用する通信プロファイルの更新要否の確認が必要であると判断する(S1502~S1505、S133)。
(1)無線IoT機器11aの起動後または再起動後における、最初の報知信号の検出であった場合(S1502でYES)。
(2)利用中の無線ネットワークでの通信品質(無線回線品質)低下の事象の発生履歴がある場合(S1503でYES)。すなわち、利用中の無線ネットワークにおいて無線回線品質の測定結果が規定の値を下回ることを検出した履歴が存在する場合。なお、無線回線品質の測定は、例えば、通信スループットの測定、および/または、通信フレームエラーレートの測定を含む。
(3)前回の要否確認(前回のPLMN-IDの抽出)から規定期間(所定期間)の経過後であり、今回のPLMN-ID(の組み合わせ)が前回のPLMN-ID(の組み合わせ)から変化している場合(S1504とS1505でYES)。
【0056】
要否確認が必要と判定されると(S133)、無線IoT機器11aは、好適度情報記憶部1101に記憶されている好適度情報1002(
図14に例示)と、受信したPLMN-ID情報とを比較する(S1506)。この比較により、無線IoT機器11aは、現在利用中の通信プロファイルよりも好適な通信オペレータが存在するか否かを判定する(S1507)。なお、上記(1)の条件により更新の要否確認が必要と判定された場合、無線IoT機器11においてデフォルトで使用するように設定されている通信プロファイルのPLMN-IDが現在利用中のPLMN-IDとして用いられる。利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータが存在しないと判定された場合(S1507でNO)、無線IoT機器11aは、報知信号受信時の付加処理を終了する。
【0057】
一方、利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータが存在する場合、利用する通信プロファイルの更新が必要と判定される(S1507でYES、S134)。ここでは、より好適な通信オペレータとして通信オペレータNが存在すると判定されたとする。この場合、無線IoT機器11aは、現在利用中の通信オペレータ1用の通信プロファイルを用いて、RRC接続1311を実施し、その後、通信ベアラ設定1312を行う。RRC接続1311では、利用中の通信オペレータの基地局421との無線通信路の接続設定が行われる。通信ベアラ設定1312では、利用中の通信オペレータのデータゲートウェイ423経由でのデータ通信路の設定が行われる。
【0058】
通信ベアラ設定1312の完了後、無線IoT機器11aは、通信オペレータ1用のサブスクリプション管理装置410に、通信オペレータNのサブスクリプション管理装置411へのアクセスルート情報を問い合わせるルート問い合せ1313を発行する。アクセスルート情報には、IPアドレス、ドメインネーム等が含まれる。このルート問い合せ1313を受信したサブスクリプション管理装置410は、自装置内で記憶している、通信オペレータNのサブスクリプション管理装置411へのアクセスルート情報(IPアドレス、ドメインネーム等)を含むルート応答1314を返送する。
【0059】
更新先の通信オペレータNのサブスクリプション管理装置411に関するアクセスルート情報を含むルート応答1314を受信した無線IoT機器11aは、サブスクリプション管理装置411にセキュア通信路の設定を要求する。これにより、セキュア通信路の接続1315が行われる(S44、S1508)。セキュア通信路とは、通信プロファイルの更新用のデータ通信ペイロードのデータを、装置間で共有している暗号鍵を用いて暗号化して通信する通信路である。
【0060】
サブスクリプション管理装置411との間でセキュア通信路の接続が完了すると、無線IoT機器11aは、当該セキュア通信路を介して、サブスクリプション管理装置411に更新用の通信プロファイルの割当てを要求する割当要求1316を発行する。サブスクリプション管理装置411は、割当要求1316のメッセージ内のパラメータの要求情報を確認し、割り当てを行うことに問題がなければ、セキュア通信路を介して、更新用の通信プロファイルの配信1317を行う。無線IoT機器11aは、更新用の通信プロファイルの配信1317を受信すると、セキュア通信路の解放1318を実施する。その後、無線IoT機器11aは、現在利用中の通信オペレータ1用の通信ベアラの解放1319とRRC解放1320を行う。
【0061】
無線IoT機器11aは、通信オペレータ1の無線通信路の解放が完了すると、eSIMにおけるenable対象の通信プロファイルを配信1317により受信した通信プロファイルに更新する(S135、S1509)。その後、無線IoT機器11aは、更新された通信プロファイルを用いて、RRC接続1321および通信ベアラ設定1322を実施する。RRC接続1321では、更新後の通信オペレータの基地局422との無線通信路の接続設定が行われる。また、通信ベアラ設定1322では、更新後の通信オペレータのデータゲートウェイ424経由でのデータ通信路の設定が行われる。
【0062】
通信ベアラ設定1322の完了後、無線IoT機器11aは、通信オペレータN用のサブスクリプション管理装置411に、アクセスルート情報の問合せ1323を行う。サブスクリプション管理装置411は、この問合せ1323に対して、自装置へのアクセスルート情報を含む応答1324を返送する。
【0063】
無線IoT機器11aは、応答1324に含まれているアクセスルート情報に従って、切換先の通信オペレータのサブスクリプション管理装置411とのセキュア通信路の接続1325を行う。セキュア通信路とは、データ通信ペイロードのデータを、装置間で共有している暗号鍵を用いて暗号化して通信する通信路である。セキュア通信路の接続の後、無線IoT機器11aは、通信プロファイルの更新完了通知1326を返送する。これにより、サブスクリプション管理装置411と無線IoT機器11a内のeSIMにおけるenable対象の通信プロファイルの設定状況とを同期させることができる(S136)。
【0064】
その後、無線IoT機器11aは、サブスクリプション管理装置411とのセキュア通信路の解放1327を行い、RRC接続1321を維持したまま、通信ベアラの更新1328を行う。これにより、更新後の通信プロファイルの特性(料金、速度の条件)に対応した通信ベアラ(利用中の通信オペレータのデータゲートウェイ424経由でのデータ通信路)へ更新される。以上が、無線セル切換が発生したタイミングで実施される、第2実施形態の制御である。
【0065】
以上説明したように、第2実施形態の無線IoT機器11aは、自装置内に保持されている通信オペレータの好適度情報と、IoT機器管理システム12aが有する通信オペレータの情報とを自動同期させる。そして、無線IoT機器11aは、基地局から送信されている報知信号を定期的に監視し、報知信号に含まれるPLMN-IDの中に、現在利用中の通信オペレータより好適な通信オペレータが存在するか否かを自装置内の好適度情報に基づいて判定する。この判定により現在利用中の通信オペレータよりも好適な通信オペレータが有ると認識された場合、無線IoT機器11aは、通信プロファイルの更新処理用のセキュア無線リンクを設定して更新処理に備える。より好適な通信オペレータが無いと判定された場合は、セキュア無線リンクを設定しない。
【0066】
これにより、eSIM内蔵の無線IoT機器11aは、その稼働場所において条件的に最も有利な通信オペレータを自動選択し、当該通信オペレータの通信プロファイルをダウンロードすることができる。結果、無線IoT機器11aは、稼働場所において、より有利な条件の通信オペレータの回線を利用することができる。
【0067】
以上説明したように、上記第1、第2実施形態によれば、eSIMを搭載する無線通信装置が、その稼働場所において無線接続可能な通信オペレータの中から、より好適な通信オペレータを自動的に選択して通信プロファイルを自動更新することができる。
【0068】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0069】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0070】
11、11a:無線IoT機器、12,12a:IoT機器管理システム、13、410、411:サブスクリプション管理装置、110,111:通信プロファイル