(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力プログラム、アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20240221BHJP
G01D 5/04 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01D5/244 J
G01D5/04 C
(21)【出願番号】P 2020015092
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 SMC株式会社,令和2年1月31日,ウェブサイト https://www.smcworld.com/ja-jp/,https://www.smcworld.com/newproducts/ja-jp/le_/,http://ca01.smcworld.com/catalog/New-products/mpv/s100-136-LE-Batteryless/index.html#target/page_no=1
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】石 雄人
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059173(WO,A1)
【文献】特開2006-029937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01D 5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車とともに回転可能な永久磁石と、
前記永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する角度センサと、
停止状態における前記第1駆動歯車の角度位置情報を出力する角度位置情報出力部と、
前記角度位置情報に対応する前記第1駆動歯車の角度誤差情報を出力する角度誤差情報出力部と、
を備え
、
前記角度誤差情報出力部は、前記角度誤差情報を停止状態における位置を基準にして、前記第1駆動歯車の1回転範囲における角度誤差の最大値と最小値との中間値を基準に設定する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記角度位置情報出力部は、外部制御装置からの角度位置情報要求情報に応じて前記角度位置情報を前記外部制御装置に出力する、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記角度誤差情報出力部は、外部制御装置からの角度誤差情報要求情報に応じて前記角度誤差情報を前記外部制御装置に出力する、
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
角度誤差情報出力部は、前記角度誤差情報を前記角度位置情報出力部に出力し、
前記角度位置情報出力部は、前記角度誤差情報に応じて前記角度位置情報を補正し補正後の角度位置情報を外部制御装置に出力する、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記角度誤差情報出力部は、前記第1駆動歯車の正転方向における角度誤差と逆転方向における角度誤差とに応じて前記角度誤差情報を出力する、
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車とともに回転可能な永久磁石と、
前記永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する角度センサと、
を備えるアブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力プログラムであり、
停止状態における前記第1駆動歯車の角度位置情報を出力する角度位置情報出力ステップと、
前記角度位置情報に対応する前記第1駆動歯車の角度誤差情報を出力する角度誤差情報出力ステップと、
をコンピュータに実行させ
、
前記角度誤差情報出力ステップでは、前記角度誤差情報を停止状態における位置を基準にして、前記第1駆動歯車の1回転範囲における角度誤差の最大値と最小値との中間値を基準に設定する、
アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力プログラム。
【請求項7】
主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車とともに回転可能な永久磁石と、
前記永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する角度センサと、
を備えるアブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力方法であり、
停止状態における前記第1駆動歯車の角度位置情報を出力する角度位置情報出力ステップと、
前記角度位置情報に対応する前記第1駆動歯車の角度誤差情報を出力する角度誤差情報出力ステップと、
をコンピュータが実行
し、
前記角度誤差情報出力ステップでは、前記角度誤差情報を停止状態における位置を基準にして、前記第1駆動歯車の1回転範囲における角度誤差の最大値と最小値との中間値を基準に設定する、
アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力プログラム、アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリエンコーダが知られている。このようなロータリエンコーダには、相対的な位置又は角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のアブソリュートエンコーダとが存在している。
【0003】
このようなアブソリュートエンコーダにおいては、例えば、使用状態における回転速度と特定回転速度との速度比を算出し、補正量テーブルに記憶された補正量から、算出された速度比及び分割角度位置に対応した補正値を算出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アブソリュートエンコーダは、起動時の主軸の位置(角度)を基準にして、その基準からのモータの回転量で回転軸の位置を検出する。しかしながら、アブソリュートエンコーダは、製造ばらつき等によって、主軸の位置(角度)に誤差が含まれることがある。また、アブソリュートエンコーダの角度の誤差は、回転軸の位置検出に用いられる磁石や磁気センサの位置関係によっても変化する。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主軸の位置に基づく誤差を補正することができるアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、前記第1駆動歯車とともに回転可能な永久磁石と、前記永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する角度センサと、停止状態における前記第1駆動歯車の角度位置情報を出力する角度位置情報出力部と、前記角度位置情報に対応する前記第1駆動歯車の角度誤差情報を出力する角度誤差情報出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、主軸の位置に基づく誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、シールドプレートを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、基板を除いた状態で概略的に示す平面図である。
【
図5】
図3に示される角度センサ支持基板を下面側から見た図である。
【
図6】
図4に示すアブソリュートエンコーダのA-A断面図である。
【
図7】
図4に示すアブソリュートエンコーダのB-B断面図である。
【
図8】
図4に示すアブソリュートエンコーダのC-C断面図である。
【
図9】
図1に示すアブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図10】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける第1ウォームギアの回転角度の基準角度と角度誤差との一例を示すグラフである。
【
図11】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおいて角度誤差補正処理を行う機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【
図12】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける角度誤差補正処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図13】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける第1ウォームギアの回転角度の角度誤差の算出基準の一例を示すグラフである。
【
図14】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける第1ウォームギアの回転方向による角度誤差の相違の一例を示すグラフである。
【
図15】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける第1ウォームギアの回転方向による角度誤差補正後の角度誤差の相違の一例を示すグラフである。
【
図16】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける第1ウォームギアの回転方向ごとに角度誤差補正後の角度誤差の一例を示すグラフである。
【
図17】
図1に示すアブソリュートエンコーダにおける角度誤差補正処理の別の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、複数回転ともいう。)にわたる回転量(以下、主軸の回転量ともいう。)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗することにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に比例して増加する。例えば、減速比が50であれば、主軸50回転分の回転量を特定することができる。
【0011】
一方、必要な回転体の分解能は、減速比に比例して小さくなる。例えば、減速比が100であれば、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/100=3.6°となり、±1.8°の検出精度が求められる。一方、減速比が50の場合、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/50=7.2°となり、±3.6°の検出精度が求められる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態、変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、図面において歯車は歯部形状を省略して示す。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、シールドプレート7を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図2では、アブソリュートエンコーダ2のケース4及び角度センサ支持基板5が透過されて示される。
図3は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、ケース4を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図3では、アブソリュートエンコーダ2の角度センサ支持基板5が透過されて示される。
図4は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、角度センサ支持基板5を除いた状態で概略的に示す平面図である。
【0014】
図1乃至
図4に示すように、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11と、マグネットMpと、角度センサSpと、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第2ウォームホイール部41と、マグネットMqと、角度センサSqと、ギアベース部3と、を備える。第1ウォームギア部11は、第1駆動歯車として主軸1aの回転に従って回転する。マグネットMpは、第1永久磁石として第1ウォームギア部11の先端部側に設けられる。角度センサSpは、第1角度センサとしてマグネットMpから発生する磁束の変化に対応する第1ウォームギア部11の回転角度を検出する。第1ウォームホイール部21は、第1従動歯車として中心軸が第1ウォームギア部11の中心軸と直交し、第1ウォームギア部11に噛み合う。第2ウォームギア部22は、第2駆動歯車として第1ウォームホイール部21と同軸上に設けられ、第1ウォームホイール部21の回転に従って回転する。第2ウォームホイール部41は、第2従動歯車として中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と直交し、第2ウォームギア部22に噛み合う。マグネットMqは、第2永久磁石として第2ウォームホイール部41の先端側に設けられる。角度センサSqは、第2角度センサとしてマグネットMqから発生する磁束の変化に対応する第2ウォームホイール部41の回転角度を検出する。アブソリュートエンコーダ2は、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eを備える。テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、停止状態における第1ウォームギア部11の角度位置情報を出力する角度位置情報出力部及び角度位置情報に対応する第1ウォームギア部11の角度誤差情報を出力する角度誤差情報出力部として機能する。以下、アブソリュートエンコーダ2の構造を具体的に説明する。
【0015】
本実施の形態においては、説明の便宜上、アブソリュートエンコーダ2についてXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向は夫々X軸方向に直交する。本説明において、X軸方向を左側或いは右側と、Y軸方向を前側或いは後側と、Z軸方向を上側或いは下側ともいう。
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、X軸方向における左側が左側であり、X軸方向における右側が右側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Y軸方向における手前側が前側であり、Y軸方向における奥側が後側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Z軸方向における上側が上側であり、Z軸方向における下側が下側である。Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で左側から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ2は任意の姿勢で使用され得る。
【0016】
アブソリュートエンコーダ2は、既述したように、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2は、平面視で略矩形状を有しており、正面視及び側面視で主軸1aの延在方向である上下方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ2は上下方向よりも水平方向に長い偏平な直方体形状を有している。
【0017】
アブソリュートエンコーダ2は内部構造を収容する中空角筒状のケース4を備えている。ケース4は、少なくともモータ1の主軸1aの一部、主軸ギア10、第1中間ギア20、第2中間ギア30、第1副軸ギア40、及び第2副軸ギア50などを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部4aを含み、上側の端部が開蓋されている。ケース4は、開蓋されている4つの外壁部4aの上側の端部に、矩形の板状部材である磁束遮へい部材としてのシールドプレート7が、ネジ8eによりケース4及びギアベース部3に固定されている。
シールドプレート7は、軸線方向(Z軸方向)において角度センサSp,Sq,Srとアブソリュートエンコーダ2の外部との間に設けられている板状部材である。シールドプレート7は、ケース4の内部に設けられている角度センサSp,Sq,Srがアブソリュートエンコーダ2の外部で発生している磁束による磁気干渉を防ぐために、磁性体で形成されている。
【0018】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置等の減速機構を介して産業用等のロボットを駆動する駆動源として適用されるモータであってもよい。モータ1の主軸1aは上下方向の両側がモータのケースから突出している。アブソリュートエンコーダ2はモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。
【0019】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、上下方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部の夫々の長さは例えば25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ2は、例えばモータ1の外形形状に合わせて25mm角である。
【0020】
図1,2においては、角度センサ支持基板5がケース4及びシールドプレート7とともにアブソリュートエンコーダ2の内部を覆うように設けられている。
図5は、角度センサ支持基板5を下側から見た図である。
図5に示すように、角度センサ支持基板5は、平面視で略矩形状を有し、上下方向に薄い板状のプリント配線基板である。また、コネクタ6は、角度センサ支持基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ2と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0021】
図2,3に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11(第1駆動歯車)を有する主軸ギア10と、第1ウォームホイール部21(第1従動歯車)、第2ウォームギア部22(第2駆動歯車)及び第3ウォームギア部28(第3駆動歯車)を有する第1中間ギア20と、第3ウォームホイール部31(第3従動歯車)及び第1平歯車部32(第4駆動歯車)を有する第2中間ギア30と、第2ウォームホイール部41(第2従動歯車)を有する第1副軸ギア40と、第2平歯車部51(第3従動歯車)を有する第2副軸ギア50と、マグネットMpと、マグネットMpに対応する角度センサSpと、マグネットMqと、マグネットMqに対応する角度センサSqと、マグネットMrと、マグネットMrに対応する角度センサSrと、マイコン121とを含んでいる。
【0022】
図6は、アブソリュートエンコーダ2のA-A断面図である。
【0023】
図4、及び
図6に示すように、モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ2に回転力を伝達する入力軸である。主軸ギア10は、モータ1の主軸1aに固定されており、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持されている。第1ウォームギア部11は、モータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア10の外周に設けられている。主軸ギア10において、第1ウォームギア部11は、その中心軸が主軸1aの中心軸と一致又は略一致するように設けられている。主軸ギア10は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア10は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
【0024】
図3、及び
図4に示すように、第1中間ギア20は、主軸ギア10の回転を、第1副軸ギア40及び第2中間ギア30に伝えるギア部である。第1中間ギア20は、軸23によって基部3bに略平行に伸びる回転軸線の周りに軸支されている。第1中間ギア20は、その回転軸線の方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア20は、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第3ウォームギア部28とを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸23が挿通されている。この軸23をギアベース部3の基部3bに設けられた第1中間ギア軸支部3gに挿通することで、第1中間ギア20が軸支されている。第1ウォームホイール部21、第2ウォームギア部22、及び第3ウォームギア部28は、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア20は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1中間ギア20は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0025】
図7は、アブソリュートエンコーダ2のB-B断面図である。
【0026】
図4、及び
図7に示すように、第1ウォームホイール部21は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21は、第1ウォームギア部11と噛み合い、第1ウォームギア部11の回転に従って回転するように設けられている。第1ウォームホイール部21と第1ウォームギア部11との軸角は90°又は略90°に設定されている。
【0027】
第1ウォームホイール部21の外径に特別な制限はないが、図示の例では、第1ウォームホイール部21の外径は第1ウォームギア部11の外径より小さく設定されており、第1ウォームホイール部21の外径が小さくなっている。これにより、アブソリュートエンコーダ2では、上下方向の寸法の小型化が図られている。
【0028】
第2ウォームギア部22は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第2ウォームギア部22は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0029】
図8は、アブソリュートエンコーダ2のC-C断面図である。
【0030】
図4、及び
図8に示すように、第3ウォームギア部28は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第3ウォームギア部28は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0031】
図4に示すように、第1副軸ギア40は、モータ軸
の回転に従い、減速されて
マグネットMqと一体となって回転する。第1副軸ギア40は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に突出する軸により軸支され、第2ウォームホイール部41と、マグネットMqを保持する保持部と、を含む平面視で略円形状の部材である。第1副軸ギア40は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1副軸ギア40は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0032】
第2ウォームホイール部41は、第1副軸ギア40の外周に設けられており、第2ウォームギア部22と噛み合い、第2ウォームギア部22の回転に従って回転するように設けられている。第2ウォームホイール部41と第2ウォームギア部22との軸角は90°又は略90°に設定されている。第2ウォームホイール部41の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0033】
図4、及び
図8において、第2中間ギア30は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速して第2副軸ギア50に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア30は、第2ウォームギア部22と、第2副軸ギア50に設けられる第2平歯車部51との間に設けられる。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合う。第2中間ギア30は、第1中間ギア20の第3ウォームギア部28と噛み合う第3ウォームホイール部31と、第2平歯車部51を駆動する第1平歯車部32とを有する。第2中間ギア30は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア30は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア30は、ギアベース部3の基部3bに軸支されている。
【0034】
第2中間ギア30を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア50を第3ウォームギア部28から遠ざけた位置に配置することができる。このため、マグネットMp、Mqとの間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア30を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
【0035】
第3ウォームホイール部31は、第2中間ギア30の外周に設けられており、第3ウォームギア部28と噛み合い、第3ウォームギア部28の回転に従って回転するように設けられている。第1平歯車部32は、第2中間ギア30の外周にその中心軸が第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第1平歯車部32は、第2平歯車部51と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第3ウォームホイール部31及び第1平歯車部32の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0036】
図8において、第2副軸ギア50は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速してマグネットMrに伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア50は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア50は、第2平歯車部51と、マグネットMrを保持する磁石保持部とを含む。
【0037】
第2平歯車部51は、第2副軸ギア50の外周にその中心軸が第1平歯車部32の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第2平歯車部51の回転軸線は、第1平歯車部32の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。第2副軸ギア50は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第2副軸ギア50は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0038】
ここで、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向を第1噛み合い方向P1(
図4の矢印P1方向)とする。同様に、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に向かう方向を第2噛み合い方向P2(
図4の矢印P2方向)とする。さらに、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に噛み合うために、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に向かう方向を第3噛み合い方向P3(
図4の矢印P3方向)とする。本実施の形態においては、第1噛み合い方向P1、第2噛み合い方向P2、及び第3噛み合い方向P3は共に水平面(XY平面)に沿う方向となっている。
【0039】
マグネットMpは、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定される。マグネットMpは、ホルダ部16を介して主軸ギア10の中心軸に設けられているマグネット支持部17に支持されている。ホルダ部16は、アルミニウム合金などの非磁性体により形成されている。ホルダ部16の内周面は、マグネットMpの径方向における外周面に接してこの外周面を保持するように、マグネットMpの外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。また、マグネット支持部17の内周面は、ホルダ部16の外周面に接するように、ホルダ部16の外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。マグネットMpは、主軸ギア10の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。角度センサSpは、主軸ギア10の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面に上下方向に対向するように、角度センサ支持基板5の下面5aに設けられる。
【0040】
一例として、角度センサSpは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMpの回転角度を特定することにより、主軸ギア10の回転角度、つまり主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。マイコン121は、後述するように、特定された第1副軸ギア40の回転角度及び特定された主軸1aの回転角度に基づいて主軸1aの回転量を特定し、これを出力する。マイコン121は、一例としてモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0041】
角度センサSqは、第2ウォームホイール部41の回転角度、すなわち第1副軸ギア40の回転角度を検知する。マグネットMqは、第1副軸ギア40の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMqは、第1副軸ギア40の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。
図3に示すように、角度センサSqは、第1副軸ギア40の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0042】
一例として、角度センサSqは、角度センサSpが固定された角度センサ支持基板5に、角度センサSpが固定される面と同一の面において固定されている。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMqの回転角度、つまり第1副軸ギア40の回転角度を特定する。
【0043】
角度センサSrは、第2平歯車部51の回転角度、すなわち第2副軸ギア50の回転角度を検知する。マグネットMrは、第2副軸ギア50の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMrは、第2副軸ギア50の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。
図3に示すように、角度センサSrは、第2副軸ギア50の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMrの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0044】
一例として、角度センサSrは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSrは、マグネットMrの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMrの回転角度、つまり第2副軸ギア50の回転角度を特定する。
【0045】
各磁気センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、各永久磁石の磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいて対向する回転体の回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
【0046】
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各磁気センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各磁気センサは各回転体の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0047】
図9は、アブソリュートエンコーダ2が備えるマイコン121の機能構成を示す図である。マイコン121は、角度センサ支持基板5のギアベース部3の基部3b側の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPUで構成され、角度センサSp,Sq,Srのそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア10の回転量を演算する。
図10に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)やRAM(Random Access Memory)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0048】
マイコン121は、回転角取得部121p、回転角取得部121q、回転角取得部121r、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び出力部121eを備える。回転角取得部121pは、角度センサSpから出力された信号をもとに主軸ギア10、つまり、主軸1aの回転角度を示す角度情報である回転角度Apを取得する。回転角取得部121qは、角度センサSqから出力された信号をもとに第1副軸ギア40の回転角度を示す角度情報である回転角度Aqを取得する。回転角取得部121rは、角度センサSrで検知された第2副軸ギア50の回転角度を示す角度情報である回転角度Arを取得する。
【0049】
テーブル処理部121bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。
【0050】
回転量特定部121cは、テーブル処理部121bによって特定された主軸ギア10の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア10の複数回転にわたる第1回転量を特定する。出力部121eは、回転量特定部121cによって特定された主軸ギア10の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
【0051】
なお、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、後述する第1ウォームギア部11の角度位置情報の外部制御装置(コントローラ)への出力を行う角度位置情報出力部としても機能する。また、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、同じく後述する第1ウォームギア部11の角度位置情報を補正するための角度誤差情報の外部制御装置への出力も行う。
【0052】
このように構成されたアブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Srの検知情報に基づいて特定された第1副軸ギア40及び第2副軸ギア50の回転角度に応じて主軸1aの回転数を特定すると共に、角度センサSpの検知情報に基づいて主軸1aの回転角度を特定することができる。そして、マイコン121は、特定された主軸1aの回転数及び主軸1aの回転角度に基づいて、主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定する。
【0053】
主軸1aに設けられた主軸ギア10の第1ウォームギア部11の条数は例えば1であり、第1ウォームホイール部21の歯数は例えば20である。つまり、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21とは、減速比が20/1=20の第1変速機構を構成する(
図4参照)。第1ウォームギア部11が20回転するとき第1ウォームホイール部21は1回転する。第1ウォームホイール部21と第2ウォームギア部22は同軸上に設けられて第1中間ギア20を構成しており、一体となって回転することから、第1ウォームギア部11が20回転するとき、すなわち主軸1a及び主軸ギア10が20回転するとき、第1中間ギア20は1回転し、第2ウォームギア部22は1回転する。
【0054】
第2ウォームギア部22の条数は例えば5であり、第2ウォームホイール部41の歯数は例えば25である。つまり、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部41とは、減速比が25/5=5の第2変速機構を構成する(
図4参照)。第2ウォームギア部22が5回転するとき第2ウォームホイール部41は1回転する。第2ウォームホイール部41が形成された第1副軸ギア40は、後述するようにマグネットホルダ35及びマグネットMqと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第2ウォームギア部22が5回転するとき、マグネットMqは1回転する。以上より、主軸1aが100回転すると、第1中間ギア20が5回転し、第1副軸ギア40及びマグネットMqが1回転する。つまり、角度センサSqの第1副軸ギア40の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの50回転分の回転数を特定することができる。
【0055】
第3ウォームギア部28の条数は例えば1であり、第3ウォームホイール部31の歯数は例えば30である。つまり、第3ウォームギア部28と第3ウォームホイール部31とは、減速比が30/1=30の第3変速機構を構成する(
図4参照)。第3ウォームギア部28が30回転するとき第3ウォームホイール部31は1回転する。第3ウォームホイール部31が形成された第2中間ギア30は、第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致する中心軸を有する第1平歯車部32が設けられている。このため、第3ウォームホイール部31が回転するとき、第1平歯車部32も回転する。第1平歯車部32は、第2副軸ギア50に設けられている第2平歯車部51と噛み合っており、このため、第2中間ギア30が回転するとき、第2副軸ギア50も回転する。
【0056】
第2平歯車部51の歯数は例えば40であり、第1平歯車部32の歯数は例えば24である。つまり、第1平歯車部32と第2平歯車部51とは、減速比が40/24=5/3の第4変速機構を構成する(
図4参照)。第1平歯車部32が5回転するとき第2平歯車部51は3回転する。第2平歯車部51が形成された第2副軸ギア50は、後述するようにマグネットMrと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第3ウォームギア部28が5回転するとき、マグネットMrは1回転する。以上より、主軸1aが1000回転すると、第1中間ギア20が50回転し、第2中間ギア30が5/3回転し、第2副軸ギア50及びマグネットMrが1回転する。つまり、角度センサSrの第2副軸ギア50の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの1000回転分の回転数を特定することができる。
【0057】
以下、アブソリュートエンコーダ2の構成についてより具体的に説明する。
【0058】
上述のように(
図1~5参照)、アブソリュートエンコーダ2は、ギアベース部3と、ケース4と、角度センサ支持基板5と、コネクタ6とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、主軸ギア10と、第1中間ギア20と、第2中間ギア30と、第1副軸ギア40と、第2副軸ギア50とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMp,Mq,Mr及び角度センサSp,Sq,Srを含んでおり、また、アブソリュートエンコーダ2の駆動部や検出部等を制御するためのマイコン121を含んでいる。
【0059】
ここで、上述したように、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、後述する第1ウォームギア部11の角度位置情報の外部制御装置(コントローラ)への出力を行う角度位置情報出力部としても機能する。また、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、同じく後述する第1ウォームギア部11の角度位置情報を補正するための角度誤差情報の外部制御装置への出力も行う。
【0060】
図10は、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の回転角度の基準角度と角度誤差との一例を示すグラフである。また、
図11は、アブソリュートエンコーダ2において角度誤差補正処理を行う機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【0061】
アブソリュートエンコーダ2は、アブソリュートエンコーダ2から出力される情報に基づいてモータ1の制御を行う外部制御装置(以下「コントローラC」という。)に対して、角度情報、つまり主軸1aの回転角度を出力することで、コントローラCがモータ1の動作制御を行うことができる。ここで、コントローラCは、電源の投入時にアブソリュートエンコーダ2からモータ1の角度情報、すなわち、主軸1aの回転角度を入手することで、コントローラCがモータ1の動作制御をするための基準角度を決定することができる。
【0062】
しかしながら、アブソリュートエンコーダ2は、歯車などの製造ばらつき、あるいは、回転軸の位置検出に用いられる磁石や磁気センサの位置関係等によって、主軸1aの位置(角度)に対して角度センサSpは固有の角度誤差を有している。このため、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11の停止位置によっては、電源投入時にコントローラCへ出力する角度情報が実際の主軸1aの回転角度から最もずれた値(離れた値)となってしまう可能性がある。角度情報が実際の主軸1aの回転角度から最もずれた値である場合は、コントローラCが設定する基準角度が実際の主軸1aの回転角度に対して最大値ME1と最小値ME2との差分の誤差A1だけずれてしまう場合がある。
【0063】
そこで、アブソリュートエンコーダ2は、電源投入直後の角度センサSpが出力する出力角度が第1ウォームギア部11の実際の停止位置からどの程度ずれているかを角度(例えば、deg)で示す角度誤差情報をコントローラCに出力する。
【0064】
図11に示すように、モータ1の動作制御に使用する基準角度を決定するのはコントローラC側であるため、アブソリュートエンコーダ2の内部には、アブソリュートエンコーダ2の製造バラつきによって生じる、アブソリュートエンコーダ2固有の角度誤差、すなわち、角度誤差情報を保持している。コントローラCは、電源投入時の第1ウォームギア部11の停止位置(角度位置情報)とともに、その停止位置における誤差量を特定する角度誤差情報をアブソリュートエンコーダ2から読み出す。コントローラCは、アブソリュートエンコーダ2から読み出した角度誤差情報に基づいて第1ウォームギア部11の角度位置情報を補正する。以上のようにすることで、コントローラCは、補正後の角度位置情報に基づいて基準角度を決定し、モータ1の制御を行うことができる。角度誤差情報は、例えば、工場出荷時にマイコン121の記憶領域(例えば、RAM)、すなわち、テーブル処理部121bに書き込まれる。
【0065】
次に、アブソリュートエンコーダ2において行われる、角度誤差情報出力方法(角度誤差情報出力処理)について、具体的に説明する。
【0066】
アブソリュートエンコーダ2において、コンピュータプログラムを実行可能なマイコン121に、アブソリュートエンコーダの角度誤差情報出力プログラムを実行させることにより、角度誤差情報出力処理が実行される。
【0067】
図12は、アブソリュートエンコーダ2における角度誤差補正処理の一例を示すシーケンス図である。
図12に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、以下の処理を行う。
【0068】
コントローラCは、アブソリュートエンコーダ2の電源を投入(電源ON)する要求(命令)を送信する(ステップS1)。
【0069】
コントローラCは、停止状態における第1ウォームギア部11の角度位置情報、すなわち、電源投入時における主軸1aの周方向の位置を示す角度の情報をアブソリュートエンコーダ2に要求するために、角度位置情報要求情報を送信する(ステップS2)。
【0070】
アブソリュートエンコーダ2において、角度位置情報出力ステップとして、以下の処理を行う。すなわち、テーブル処理部121bは、コントローラCからの角度位置情報要求情報を受信すると、受信直後に取得された回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した停止状態の回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、停止状態に取得された回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した停止状態の回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。回転量特定部121cは、テーブル処理部121bから読み出された主軸ギア10の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア10、すなわち、第1ウォームギア部11の停止状態における角度位置情報を特定する。出力部121eは、この停止状態における第1ウォームギア部11の角度位置情報をコントローラCに出力する(ステップS3)。
【0071】
角度位置情報を取得したコントローラCは、この角度位置情報からアブソリュートエンコーダ2の記録領域(フラッシュ領域の対応関係テーブル)におけるアドレス、すなわち、角度位置情報に対応する角度誤差情報の記憶領域を特定する情報を算出する。コントローラCは、このアドレスを角度誤差情報要求情報としてアブソリュートエンコーダ2に送信する(ステップS4)。
【0072】
アブソリュートエンコーダ2において、角度誤差情報出力ステップとして、以下の処理を行う。すなわち、テーブル処理部121bは、コントローラCからの要求に応じて、角度誤差情報要求情報に対応する第1ウォームギア部11の角度誤差情報を第3対応関係テーブルから読み出す。第3対応関係テーブルは、第1ウォームギア部11の所定の角度と、角度誤差情報と、を対応付けて記憶したテーブルである。アブソリュートエンコーダ2において、出力部121eは、この停止状態における第1ウォームギア部11の角度誤差情報をコントローラCに出力する(ステップS5)。角度誤差情報は、例えば、以下のように設定される。主軸1a(第1ウォームギア部11)の角度0°~360°の範囲を所定の角度間隔で分割する。なお、分割される角度は、同じ角度であってもよいし、異なる角度であってもよい。例えば、1.8°の間隔で200分割されてもよいし、1.5°、1.8°又は2.0°等の複数の角度で200分割されてもよい。また、分割数は、150又は300等のように200以外に分割されてもよい。角度誤差情報は、ステップS3で出力された第1ウォームギア部11の角度位置情報に対して任意の角度間隔で丸めた位置(小数点以下切り捨て)での誤差データを割り当てて参照する。ここで、角度誤差情報は、アブソリュートエンコーダ2に固有の角度誤差の中心値からの差分(プラスマイナスの符号付き)で定義されている。
【0073】
図13は、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の回転角度の角度誤差の算出基準の一例を示すグラフである。
【0074】
図13に示すように、アブソリュートエンコーダ2において、角度誤差の最大値ME3がプラス方向に偏った値であっても、角度誤差情報の算出基準SE1は、角度誤差の最大値ME3と最小値ME4との中間値となるように設定することができる。このようにすることで、アブソリュートエンコーダ2によれば、プラス方向の角度誤差A2とマイナス方向の角度誤差A3とを均等に近い形に補正することができる。
【0075】
コントローラCは、アブソリュートエンコーダ2から取得した角度位置情報(例えば、電源投入時における第1ウォームギア部11の停止位置における回転角度)を基準角度に設定する。コントローラCは、設定された基準角度と、取得された角度誤差情報と、に基づいて、補正後の基準角度を決定する。具体的には、コントローラCは、補正前の基準角度から加減算する角度の値を加味することで補正後の基準角度を決定する。コントローラCは、この加減算した基準角度を誤差補正後の角度位置情報として扱い、誤差補正後角度位置情報を用いてモータ制御を行う(ステップS6)。
【0076】
以上のようにアブソリュートエンコーダ2が処理することで、コントローラC側で第1ウォームギア部11の基準角度をより正確な位置に補正することができる。また、以上のようにアブソリュートエンコーダ2が処理することで、コントローラCは、これにより実際の角度誤差を最大で角度誤差の最大値ME1と最小値ME2との差分の誤差A1の半分に抑えることが可能である。
【0077】
次に、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の角度誤差情報の基準角度の一例について説明する。
【0078】
図14は、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の回転方向による角度誤差の相違の一例を示すグラフである。
【0079】
アブソリュートエンコーダ2では、回転方向が切り替わる場合(例えば、正転方向から逆転方向、又は逆転方向から正転方向)に、第1ウォームギア部11の角度誤差のオフセットOS1が生じる場合がある。この場合、
図14に示すように、正転方向の角度誤差ECWと逆転方向の角度誤差ECCWとで相違している。
図14において、第1ウォームギア部11の角度誤差は、正転方向の角度誤差ECWに対して逆転方向の角度誤差ECCWである。角度誤差は、マイナス方向にオフセットOS1が生じている。アブソリュートエンコーダ2では、一方向(例えば、正転方向又は逆転方向)だけで角度誤差が補正された場合、他方向での回転では、オフセットOS1によって角度誤差の許容を超過させる恐れがある。
【0080】
図15は、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の回転方向による角度誤差補正後の角度誤差の相違の一例を示すグラフである。
【0081】
図15に示すように、アブソリュートエンコーダ2において、正転(CW)時の角度誤差ECWと逆転(CCW)時の角度誤差ECCWとで角度誤差が相違している場合に、角度誤差補正の基準角度SE2を正転(CW)時の誤差に基づいて設定することで、同じ角度位置であっても、例えば、
図15において、正転方向の角度誤差A4よりも逆転方向の角度誤差A5が
図14に示したようなオフセットOS1の分だけ大きくなってしまう。
【0082】
図16は、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の回転方向ごとに角度誤差補正後の角度誤差の一例を示すグラフである。
【0083】
そこで、
図16に示すように、アブソリュートエンコーダ2において、正転(CW)時の角度誤差ECWと逆転(CCW)時の角度誤差ECCWとを測定する。ここで、基準角度SE3は、正転方向の回転と逆転方向の回転を合わせた範囲での最大値と最小値の中間値である。基準角度SE3を中心として正転方向と逆転方向とで同じ角度位置における角度誤差のうち、基準位置からの差が大きい角度誤差を、角度誤差情報として、対応関係テーブルに記憶される。このように、角度誤差が相違している場合に、角度誤差補正の基準角度SE3を正転(CW)と逆転(CCW)時との双方の誤差を考慮して、大きいほうの角度誤差を角度誤差情報として対応関係テーブルに設定していることで、正転方向と逆転方向との誤差が偏らず、最大の角度誤差を減少させることができる。
【0084】
次に、アブソリュートエンコーダ2における第1ウォームギア部11の角度誤差補正処理の別の一例について説明する。
【0085】
図17は、アブソリュートエンコーダ2における角度誤差補正処理の別の一例を示すシーケンス図である。
【0086】
図12に示したアブソリュートエンコーダ2における角度誤差補正処理の一例では、アブソリュートエンコーダ2は、コントローラCの要求に応じて、角度位置情報と角度誤差情報とをそれぞれ出力していた。本発明に係る角度誤差補正処理ではこれに限定されず、例えば、
図17に示すシーケンス図のように、コントローラCの要求に応じて、角度誤差情報を加味した誤差補正後の角度誤差情報をコントローラCに出力してもよい。
【0087】
コントローラCは、アブソリュートエンコーダ2の電源を投入(電源ON)する要求(命令)を送信する(ステップS11)。
【0088】
コントローラCは、停止状態における第1ウォームギア部11の角度位置情報、すなわち、電源投入時における主軸1aの周方向の位置を示す角度の情報をアブソリュートエンコーダ2に要求する(ステップS12)。
【0089】
アブソリュートエンコーダ2において、テーブル処理部121bが、コントローラCからの要求に応じて、受信直後に取得した回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した停止状態の回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、停止状態に取得された回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した停止状態の回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。回転量特定部121cは、テーブル処理部121bから読み出された主軸ギア10の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア10、すなわち、第1ウォームギア部11の停止状態における角度位置情報を特定する。
【0090】
アブソリュートエンコーダ2において、テーブル処理部121bが、特定された角度位置情報に対応する第1ウォームギア部11の角度誤差情報を対応関係テーブルから読み出す。アブソリュートエンコーダ2において、テーブル処理部121bは、この停止状態における第1ウォームギア部11の角度誤差情報に基づいて、誤差補正後の角度位置情報を算出する。出力部121eは、誤差補正後の角度位置情報をコントローラCに出力する(ステップS13)。
【0091】
コントローラCは、所定の角度位置、例えば、電源投入時における第1ウォームギア部11の停止位置における回転角度を基準角度に設定する。コントローラCは、この基準角度に対して、取得した角度誤差情報、具体的には補正前の基準角度から加減算する角度の値を加味した補正後の基準角度を決定する。コントローラCは、この加減算した基準角度を誤差補正後の角度位置情報として扱い、誤差補正後の角度位置情報を用いてモータ制御を行う(ステップS14)。
【0092】
以上のように処理することで、アブソリュートエンコーダ2は、先に説明したようにコントローラCにおける角度誤差を抑えることができるとともに、コントローラCの処理能力の負荷を低減することができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよく、公知の技術と組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0094】
以上説明した実施の形態では、本発明に係る角度誤差補正処理を、モータ1の主軸1aに関する第1ウォームギア部11の角度誤差に対して適用するものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1副軸ギア40及び/または第2副軸ギア50に対しても適用可能である。この場合、第1副軸ギア40及び/または第2副軸ギア50の角度位置情報及び角度誤差情報は、
図17に示したようにアブソリュートエンコーダ2において処理される。
【符号の説明】
【0095】
1…モータ、1a…主軸、1b…圧入部、2…アブソリュートエンコーダ、3…ギアベース部、4…ケース、4a…外壁部、5…角度センサ支持基板、5a…下面、6…コネクタ、7…シールドプレート、8a…基板取付ネジ、8c…ギアベース部固定ネジ、8e…ネジ、10…主軸ギア、11…第1ウォームギア部、16…ホルダ部、17…マグネット支持部、20…第1中間ギア、21…第1ウォームホイール部、22…第2ウォームギア部、23…軸、28…第3ウォームギア部、30…第2中間ギア、31…第3ウォームホイール部、32…第1平歯車部、35…マグネットホルダ、40…第1副軸ギア、41…第2ウォームホイール部、50…第2副軸ギア、51…第2平歯車部、121…マイコン、121b…テーブル処理部、121c…回転量特定部、121e…出力部、121p…回転角取得部、121q…回転角取得部、121r…回転角取得部、Mp,Mq,Mr…マグネット、Sp,Sq,Sr…角度センサ