IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミネベア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図1
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図2
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図3
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図4
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図5
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図6
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図7
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図8
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図9
  • 特許-アブソリュートエンコーダ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240221BHJP
   G01D 5/04 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01D5/244 B
G01D5/04 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020015093
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124281
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 SMC株式会社,令和2年1月31日,ウェブサイト https://www.smcworld.com/ja-jp/,https://www.smcworld.com/newproducts/ja-jp/le_/,http://ca01.smcworld.com/catalog/New-products/mpv/s100-136-LE-Batteryless/index.html#target/page_no=1
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】崎枝 健
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝典
(72)【発明者】
【氏名】石 雄人
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059173(WO,A1)
【文献】特開平09-308171(JP,A)
【文献】実開平05-055020(JP,U)
【文献】特開2017-009312(JP,A)
【文献】特開平01-110215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01D 5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車の先端部側に設けられる第1永久磁石と、
前記第1永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する第1角度センサと、
中心軸が前記第1駆動歯車の中心軸と直交し、前記第1駆動歯車に噛み合い、内部に形成される貫通孔に軸が挿通される第1従動歯車と、
前記第1従動歯車と同軸上に設けられ、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、
中心軸が前記第1従動歯車の中心軸と直交し、前記第2駆動歯車に噛み合う第2従動歯車と、
前記第2従動歯車の先端側に設けられる第2永久磁石と、
前記第2永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第2従動歯車の回転角度を検出する第2角度センサと、
前記第1角度センサ及び前記第2角度センサの周囲の少なくとも一部を囲い、前記第1従動歯車の前記軸を支持する軸支部を有する磁束遮へい部材と、
を備え、
前記磁束遮へい部材は、焼鈍処理が施された磁性体により構成されている、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記磁束遮へい部材は、前記第1角度センサと前記主軸を回転させる駆動源との間、または前記第2角度センサと前記駆動源との間に設けられている板状部材である、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
非磁性体により形成されていて、前記第1永久磁石の径方向における外周面を保持するホルダ部、
を備える、
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石から前記主軸の軸線方向において離間した位置で前記第1角度センサ及び前記第2角度センサを支持する角度センサ支持基板と、
非磁性体により形成されていて、前記角度センサ支持基板を支持する支柱と、
を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリエンコーダが知られている。このようなロータリエンコーダには、相対的な位置又は角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のアブソリュートエンコーダとが存在している。
【0003】
このようなアブソリュートエンコーダにおいては、例えば、メインシャフト及びサブシャフトの角度位置を、磁気を利用して検知する複数の磁気式エンコーダ部を備え、その検出結果からメインシャフトの絶対位置を計測するためのアブソリュート型のロータリエンコーダが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-24572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるアブソリュートエンコーダは、例えば、モータのマグネットあるいは装置外部の磁石など、隣接する永久磁石から発生した磁束の一部が、磁気検知素子である磁気センサに影響を与えることで、本来検出したい永久磁石からの磁束以外の外部要素によるノイズの影響によって、検出精度が悪化することがあった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、永久磁石からの磁束を検出する磁気センサに対して、本来検出すべきでない永久磁石からの漏れ磁束による影響を低減するアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、前記第1駆動歯車の先端部側に設けられる第1永久磁石と、前記第1永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第1駆動歯車の回転角度を検出する第1角度センサと、中心軸が前記第1駆動歯車の中心軸と直交し、前記第1駆動歯車に噛み合う第1従動歯車と、前記第1従動歯車と同軸上に設けられ、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、中心軸が前記第1従動歯車の中心軸と直交し、前記第2駆動歯車に噛み合う第2従動歯車と、前記第2従動歯車の先端側に設けられる第2永久磁石と、前記第2永久磁石から発生する磁束の変化に対応する前記第2従動歯車の回転角度を検出する第2角度センサと、前記第1角度センサ及び前記第2角度センサの周囲の少なくとも一部を囲う磁束遮へい部材と、を備え、前記磁束遮へい部材は焼鈍処理が施された磁性体により構成されている。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダの磁束遮へい部材は、フェライト系ステンレス鋼の板状部材に機械加工を施す機械加工工程と、前記機械加工が施された前記板状部材を真空または水素雰囲気中で焼鈍温度800~900℃にて焼鈍する焼鈍工程と、により製造される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、永久磁石からの磁束を検出する磁気センサに対して、本来検出すべきでない永久磁石からの漏れ磁束による影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、シールドプレートを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図3図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図4図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、基板を除いた状態で概略的に示す平面図である。
図5図3に示される角度センサ支持基板を下面側から見た図である。
図6図4に示すアブソリュートエンコーダのA-A断面図である。
図7図4に示すアブソリュートエンコーダのB-B断面図である。
図8図4に示すアブソリュートエンコーダのC-C断面図である。
図9図1に示すアブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図10図3に示すアブソリュートエンコーダの構成において、磁束遮へい部材としてのギアベース部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、複数回転ともいう。)にわたる回転量(以下、主軸の回転量ともいう。)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗ずることにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に比例して増加する。例えば、減速比が50であれば、主軸50回転分の回転量を特定することができる。
【0012】
一方、必要な回転体の分解能は、減速比に比例して小さくなる。例えば、減速比が100であれば、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/100=3.6°となり、±1.8°の検出精度が求められる。一方、減速比が50の場合、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/50=7.2°となり、±3.6°の検出精度が求められる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態、変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、図面において歯車は歯部形状を省略して示す。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す斜視図である。図2は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、シールドプレート7を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図2では、アブソリュートエンコーダ2のケース4及び角度センサ支持基板5が透過されて示される。図3は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、ケース4を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図3では、アブソリュートエンコーダ2の角度センサ支持基板5が透過されて示されている。図4は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、角度センサ支持基板5を除いた状態で概略的に示す平面図である。
【0015】
図1乃至図4に示すように、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11と、マグネットMpと、角度センサSpと、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第2ウォームホイール部41と、マグネットMqと、角度センサSqと、ギアベース部3と、を備える。第1ウォームギア部11は、第1駆動歯車として主軸1aの回転に従って回転する。マグネットMpは、第1永久磁石として第1ウォームギア部11の先端部側に設けられる。角度センサSpは、第1角度センサとしてマグネットMpから発生する磁束の変化に対応する第1ウォームギア部11の回転角度を検出する。第1ウォームホイール部21は、第1従動歯車として中心軸が第1ウォームギア部11の中心軸と直交し、第1ウォームギア部11に噛み合う。第2ウォームギア部22は、第2駆動歯車として第1ウォームホイール部21と同軸上に設けられ、第1ウォームホイール部21の回転に従って回転する。第2ウォームホイール部41は、第2従動歯車として中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と直交し、第2ウォームギア部22に噛み合う。マグネットMqは、第2永久磁石として第2ウォームホイール部41の先端側に設けられる。角度センサSqは、第2角度センサとしてマグネットMqから発生する磁束の変化に対応する第2ウォームホイール部41の回転角度を検出する。ギアベース部3は、磁束遮へい部材として角度センサSp及び角度センサSqの周囲の少なくとも一部を囲う。ギアベース部3は、焼鈍処理が施された磁性体により構成されている。以下、アブソリュートエンコーダ2の構造を具体的に説明する。
【0016】
本実施の形態においては、説明の便宜上、アブソリュートエンコーダ2についてXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向は夫々X軸方向に直交する。本説明において、X軸方向を左側或いは右側と、Y軸方向を前側或いは後側と、Z軸方向を上側或いは下側ともいう。図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、X軸方向における左側が左側であり、X軸方向における右側が右側である。また、図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Y軸方向における手前側が前側であり、Y軸方向における奥側が後側である。また、図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Z軸方向における上側が上側であり、Z軸方向における下側が下側である。Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で左側から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ2は任意の姿勢で使用され得る。
【0017】
アブソリュートエンコーダ2は、既述したように、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2は、平面視で略矩形状を有しており、正面視及び側面視で主軸1aの延在方向である上下方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ2は上下方向よりも水平方向に長い偏平な直方体形状を有している。
【0018】
アブソリュートエンコーダ2は内部構造を収容する中空角筒状のケース4を備えている。ケース4は、少なくともモータ1の主軸1aの一部、主軸ギア10、第1中間ギア20、第2中間ギア30、第1副軸ギア40、及び第2副軸ギア50などを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部4aを含み、上側の端部が開蓋されている。ケース4は、開蓋されている4つの外壁部4aの上側の端部に、矩形の板状部材である第2の磁束遮へい部材としてのシールドプレート7が、ネジ8eによりケース4及びギアベース部3に固定されている。
シールドプレート7は、軸線方向(Z軸方向)において角度センサSp,Sq,Srとアブソリュートエンコーダ2の外部との間に設けられている板状部材である。シールドプレート7は、ケース4の内部に設けられている角度センサSp,Sq,Srがアブソリュートエンコーダ2の外部で発生している磁束による磁気干渉を防ぐために、磁性体で形成されている。
【0019】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置等の減速機構を介して産業用等のロボットを駆動する駆動源として適用されるモータであってもよい。モータ1の主軸1aは上下方向の両側がモータのケースから突出している。アブソリュートエンコーダ2はモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。
【0020】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、上下方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部の夫々の長さは例えば25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ2は、例えばモータ1の外形形状に合わせて25mm角である。
【0021】
図1,2においては、角度センサ支持基板5がケース4及びシールドプレート7とともにアブソリュートエンコーダ2の内部を覆うように設けられている。
図5は、角度センサ支持基板5を下側から見た図である。図5に示すように、角度センサ支持基板5は、平面視で略矩形状を有し、上下方向に薄い板状のプリント配線基板である。また、コネクタ6は、角度センサ支持基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ2と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0022】
図2,3に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11(第1駆動歯車)を有する主軸ギア10と、第1ウォームホイール部21(第1従動歯車)、第2ウォームギア部22(第2駆動歯車)及び第3ウォームギア部28(第3駆動歯車)を有する第1中間ギア20と、第3ウォームホイール部31(第3従動歯車)及び第1平歯車部32(第4駆動歯車)を有する第2中間ギア30と、第2ウォームホイール部41(第2従動歯車)を有する第1副軸ギア40と、第2平歯車部51(第3従動歯車)を有する第2副軸ギア50と、マグネットMpと、マグネットMpに対応する角度センサSpと、マグネットMqと、マグネットMqに対応する角度センサSqと、マグネットMrと、マグネットMrに対応する角度センサSrと、図5に示すマイコン121とを含んでいる。
【0023】
図6は、アブソリュートエンコーダ2のA-A断面図である。
【0024】
図4、及び図6に示すように、モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ2に回転力を伝達する入力軸である。主軸ギア10は、モータ1の主軸1aに固定されており、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持されている。第1ウォームギア部11は、モータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア10の外周に設けられている。主軸ギア10において、第1ウォームギア部11は、その中心軸が主軸1aの中心軸と一致又は略一致するように設けられている。主軸ギア10は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア10は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
【0025】
図3、及び図4に示すように、第1中間ギア20は、主軸ギア10の回転を、第1副軸ギア40及び第2中間ギア30に伝えるギア部である。第1中間ギア20は、軸23によって基部3bに略平行に伸びる回転軸線の周りに軸支されている。第1中間ギア20は、その回転軸線の方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア20は、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第3ウォームギア部28とを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸23が挿通されている。この軸23をギアベース部3の基部3bに設けられた第1中間ギア軸支部3gに挿通することで、第1中間ギア20が軸支されている。第1ウォームホイール部21、第2ウォームギア部22、及び第3ウォームギア部28は、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア20は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1中間ギア20は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0026】
図7は、アブソリュートエンコーダ2のB-B断面図である。
【0027】
図4、及び図7に示すように、第1ウォームホイール部21は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21は、第1ウォームギア部11と噛み合い、第1ウォームギア部11の回転に従って回転するように設けられている。第1ウォームホイール部21と第1ウォームギア部11との軸角は90°又は略90°に設定されている。
【0028】
第1ウォームホイール部21の外径に特別な制限はないが、図示の例では、第1ウォームホイール部21の外径は第1ウォームギア部11の外径より小さく設定されており、第1ウォームホイール部21の外径が小さくなっている。これにより、アブソリュートエンコーダ2では、上下方向の寸法の小型化が図られている。
【0029】
第2ウォームギア部22は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第2ウォームギア部22は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0030】
図8は、アブソリュートエンコーダ2のC-C断面図である。
【0031】
図4、及び図8に示すように、第3ウォームギア部28は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第3ウォームギア部28は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0032】
図4に示すように、第1副軸ギア40は、モータ軸回転に従い、減速されてマグネットMqと一体となって回転する。第1副軸ギア40は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に突出する軸により軸支され、第2ウォームホイール部41と、マグネットMqを保持する保持部と、を含む平面視で略円形状の部材である。第1副軸ギア40は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1副軸ギア40は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0033】
第2ウォームホイール部41は、第1副軸ギア40の外周に設けられており、第2ウォームギア部22と噛み合い、第2ウォームギア部22の回転に従って回転するように設けられている。第2ウォームホイール部41と第2ウォームギア部22との軸角は90°又は略90°に設定されている。第2ウォームホイール部41の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0034】
図4、及び図8において、第2中間ギア30は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速して第2副軸ギア50に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア30は、第2ウォームギア部22と、第2副軸ギア50に設けられる第2平歯車部51との間に設けられる。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合う。第2中間ギア30は、第1中間ギア20の第3ウォームギア部28と噛み合う第3ウォームホイール部31と、第2平歯車部51を駆動する第1平歯車部32とを有する。第2中間ギア30は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア30は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア30は、ギアベース部3の基部3bに軸支されている。
【0035】
第2中間ギア30を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア50を第3ウォームギア部28から遠ざけた位置に配置することができる。このため、マグネットMp、Mqとの間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア30を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
【0036】
第3ウォームホイール部31は、第2中間ギア30の外周に設けられており、第3ウォームギア部28と噛み合い、第3ウォームギア部28の回転に従って回転するように設けられている。第1平歯車部32は、第2中間ギア30の外周にその中心軸が第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第1平歯車部32は、第2平歯車部51と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第3ウォームホイール部31及び第1平歯車部32の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0037】
図8において、第2副軸ギア50は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速してマグネットMrに伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア50は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア50は、第2平歯車部51と、マグネットMrを保持する磁石保持部とを含む。
【0038】
第2平歯車部51は、第2副軸ギア50の外周にその中心軸が第1平歯車部32の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第2平歯車部51の回転軸線は、第1平歯車部32の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。第2副軸ギア50は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第2副軸ギア50は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0039】
ここで、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向を第1噛み合い方向P1(図4の矢印P1方向)とする。同様に、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に向かう方向を第2噛み合い方向P2(図4の矢印P2方向)とする。さらに、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に噛み合うために、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に向かう方向を第3噛み合い方向P3(図4の矢印P3方向)とする。本実施の形態においては、第1噛み合い方向P1、第2噛み合い方向P2、及び第3噛み合い方向P3は共に水平面(XY平面)に沿う方向となっている。
【0040】
マグネットMpは、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定される。マグネットMpは、ホルダ部16を介して主軸ギア10の中心軸に設けられているマグネット支持部17に支持されている。ホルダ部16は、アルミニウム合金などの非磁性体により形成されている。ホルダ部16の内周面は、マグネットMpの径方向における外周面に接してこの外周面を保持するように、マグネットMpの外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。また、マグネット支持部17の内周面は、ホルダ部16の外周面に接するように、ホルダ部16の外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。マグネットMpは、主軸ギア10の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。角度センサSpは、主軸ギア10の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面に上下方向に対向するように、角度センサ支持基板5の下面5aに設けられる。
【0041】
一例として、角度センサSpは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMpの回転角度を特定することにより、主軸ギア10の回転角度、つまり主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。マイコン121は、後述するように、特定された第1副軸ギア40の回転角度及び特定された主軸1aの回転角度に基づいて主軸1aの回転量を特定し、これを出力する。マイコン121は、一例としてモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0042】
角度センサSqは、第2ウォームホイール部41の回転角度、すなわち第1副軸ギア40の回転角度を検知する。マグネットMqは、第1副軸ギア40の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMqは、第1副軸ギア40の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。図3に示すように、角度センサSqは、第1副軸ギア40の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0043】
一例として、角度センサSqは、角度センサSpが固定された角度センサ支持基板5に、角度センサSpが固定される面と同一の面において固定されている。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMqの回転角度、つまり第1副軸ギア40の回転角度を特定する。
【0044】
角度センサSrは、第2平歯車部51の回転角度、すなわち第2副軸ギア50の回転角度を検知する。マグネットMrは、第2副軸ギア50の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMrは、第2副軸ギア50の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。図3に示すように、角度センサSrは、第2副軸ギア50の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMrの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0045】
一例として、角度センサSrは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSrは、マグネットMrの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMrの回転角度、つまり第2副軸ギア50の回転角度を特定する。
【0046】
各磁気センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、各永久磁石の磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいて対向する回転体の回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
【0047】
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各磁気センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各磁気センサは各回転体の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0048】
図9は、アブソリュートエンコーダ2が備えるマイコン121の機能構成を示す図である。マイコン121は、角度センサ支持基板5のギアベース部3の基部3b側の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPUで構成され、角度センサSp、Sq,Srのそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア10の回転量を演算する。図9に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)やRAM(Random Access Memory)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0049】
マイコン121は、回転角取得部121p、回転角取得部121q、回転角取得部121r、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び出力部121eを備える。回転角取得部121pは、角度センサSpから出力された信号をもとに主軸ギア10、つまり、主軸1aの回転角度を示す角度情報である回転角度Apを取得する。回転角取得部121qは、角度センサSqから出力された信号をもとに第1副軸ギア40の回転角度を示す角度情報である回転角度Aqを取得する。回転角取得部121rは、角度センサSrで検知された第2副軸ギア50の回転角度を示す角度情報である回転角度Arを取得する。
【0050】
テーブル処理部121bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。
【0051】
回転量特定部121cは、テーブル処理部121bによって特定された主軸ギア10の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア10の複数回転にわたる第1回転量を特定する。出力部121eは、回転量特定部121cによって特定された主軸ギア10の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
【0052】
このように構成されたアブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Srの検知情報に基づいて特定された第1副軸ギア40及び第2副軸ギア50の回転角度に応じて主軸1aの回転数を特定すると共に、角度センサSpの検知情報に基づいて主軸1aの回転角度を特定することができる。そして、マイコン121は、特定された主軸1aの回転数及び主軸1aの回転角度に基づいて、主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定する。
【0053】
主軸1aに設けられた主軸ギア10の第1ウォームギア部11の条数は例えば1であり、第1ウォームホイール部21の歯数は例えば20である。つまり、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21とは、減速比が20/1=20の第1変速機構を構成する(図4参照)。第1ウォームギア部11が20回転するとき第1ウォームホイール部21は1回転する。第1ウォームホイール部21と第2ウォームギア部22は同軸上に設けられて第1中間ギア20を構成しており、一体となって回転することから、第1ウォームギア部11が20回転するとき、すなわち主軸1a及び主軸ギア10が20回転するとき、第1中間ギア20は1回転し、第2ウォームギア部22は1回転する。
【0054】
第2ウォームギア部22の条数は例えば5であり、第2ウォームホイール部41の歯数は例えば25である。つまり、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部41とは、減速比が25/5=5の第2変速機構を構成する(図4参照)。第2ウォームギア部22が5回転するとき第2ウォームホイール部41は1回転する。第2ウォームホイール部41が形成された第1副軸ギア40は、後述するようにマグネットホルダ35及びマグネットMqと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第2ウォームギア部22が5回転するとき、マグネットMqは1回転する。以上より、主軸1aが100回転すると、第1中間ギア20が5回転し、第1副軸ギア40及びマグネットMqが1回転する。つまり、角度センサSqの第1副軸ギア40の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの50回転分の回転数を特定することができる。
【0055】
第3ウォームギア部28の条数は例えば1であり、第3ウォームホイール部31の歯数は例えば30である。つまり、第3ウォームギア部28と第3ウォームホイール部31とは、減速比が30/1=30の第3変速機構を構成する(図4参照)。第3ウォームギア部28が30回転するとき第3ウォームホイール部31は1回転する。第3ウォームホイール部31が形成された第2中間ギア30は、第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致する中心軸を有する第1平歯車部32が設けられている。このため、第3ウォームホイール部31が回転するとき、第1平歯車部32も回転する。第1平歯車部32は、第2副軸ギア50に設けられている第2平歯車部51とかみ合っており、このため、第2中間ギア30が回転するとき、第2副軸ギア50も回転する。
【0056】
第2平歯車部51の歯数は例えば40であり、第1平歯車部32の歯数は例えば24である。つまり、第1平歯車部32と第2平歯車部51とは、減速比が40/24=5/3の第4変速機構を構成する(図4参照)。第1平歯車部32が5回転するとき第2平歯車部51は3回転する。第2平歯車部51が形成された第2副軸ギア50は、後述するようにマグネットMrと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第3ウォームギア部28が5回転するとき、マグネットMrは1回転する。以上より、主軸1aが1000回転すると、第1中間ギア20が50回転し、第2中間ギア30が5/3回転し、第2副軸ギア50及びマグネットMrが1回転する。つまり、角度センサSrの第2副軸ギア50の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの1000回転分の回転数を特定することができる。
【0057】
以下、アブソリュートエンコーダ2の構成についてより具体的に説明する。
【0058】
上述のように(図1~5参照)、アブソリュートエンコーダ2は、ギアベース部3と、ケース4と、角度センサ支持基板5と、コネクタ6とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、主軸ギア10と、第1中間ギア20と、第2中間ギア30と、第1副軸ギア40と、第2副軸ギア50とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMp,Mq,Mr及び角度センサSp,Sq,Srを含んでおり、また、アブソリュートエンコーダ2の駆動部や検出部等を制御するためのマイコン121を含んでいる。
【0059】
ここで、図6に示すように、ギアベース部3は、軸線方向(Z軸方向)において角度センサSp、Sq,Srと主軸1aを回転させる駆動源であるモータ1との間に設けられている板状部材である。ギアベース部3は、主軸ギア10や第1中間ギア20、第1副軸ギア40等のアブソリュートエンコーダ2が備える各回転体を回転可能に保持している。また、ギアベース部3は、角度センサ支持基板5等のアブソリュートエンコーダ2が備える各部材をモータ1に固定する基台である。
【0060】
図10は、アブソリュートエンコーダ2の構成において、磁束遮へい部材としてのギアベース部3の斜視図である。図10に示すように、ギアベース部3は、複数(例えば4個)の支柱3aと、基部3bと、機械加工部としての支柱支持孔3c、ネジ孔3d、切欠部3e、主軸挿通孔3f、及び、第1中間ギア軸支部3gとを備えている。
【0061】
ギアベース部3は、モータ1などアブソリュートエンコーダ2の外部から磁束に対して磁気シールドを行う磁束遮へい部材として機能するために、磁性体により形成されている。具体的には、ギアベース部3は、フェライト系ステンレス鋼(例えば、SUS430)の板状部材である基部3bに、支柱支持孔3c、ネジ孔3d、切欠部3e、主軸挿通孔3f、及び、第1中間ギア軸支部3gといった機械加工部が、削孔、曲げ加工などの各種機械加工により形成されている。ギアベース部3は、このような機械加工により基部3bに機械加工部が形成された後に、焼鈍処理が施されている。ギアベース部3の製造方法については後述する。
【0062】
ギアベース部3の基部3bは、アブソリュートエンコーダ2のモータ1側に面する板状の部分であり、角度センサSp,Sq,Srの周囲の少なくとも一部を囲うことができるように、X軸方向及びY軸方向に延在する。ギアベース部3の基部3bには、中空角筒状のケース4が、複数(例えば2個)のネジ8eによって固定される。
【0063】
ギアベース部3に配設される支柱3aは、基部3bから軸方向でモータ1から遠ざかる方向に突出する略円柱状の部分であり、マグネットMp,Mq,Mrから主軸1aの軸線方向において離間した位置で角度センサ支持基板5を支持する。支柱3aは、例えば、アルミニウム合金(例えば、A5052)のような非磁性体により形成されている。なお、支柱3aの材料には、その他のアルミニウム合金、真鍮などの銅系の合金、オーステナイト系ステンレス合金など、各種非磁性体を用いることができる。
【0064】
支柱3aの突出端には、角度センサ支持基板5が、基板取付ネジ8aを用いて固定される。図2では、角度センサ支持基板5がエンコーダ内部を覆うように設けられている様子が示されている。角度センサ支持基板5は、平面視で略矩形状を有し、軸方向に薄い板状のプリント配線基板である。角度センサ支持基板5には、主に角度センサSp,Sq,Sr及びマイコン121や各種コイルが実装されている。
【0065】
支柱支持孔3cは、ギアベース部3の基部3bに支柱3aを支持する際に、基板取付ネジ8aを挿通するために設けられている。ネジ孔3dは、ギアベース部3をモータ1に固定するためのギアベース部固定ネジ8cを挿通するために設けられている。切欠部3eは、ケース4及びシールドプレート7をモータ1に固定するためのネジ8eを通すために設けられている切り欠きである。主軸挿通孔3fは、モータ1の主軸1aをアブソリュートエンコーダ2側に挿通させるための孔である。第1中間ギア軸支部3gは、第1中間ギア20の中心軸を軸支するために設けられている。
【0066】
第1中間ギア軸支部3gは、ギアベース部3の基部3bの一部を切り起こすことにより、基部3bからZ軸正方向に突き出る突形状の部材であり、第1中間ギア20の軸23が挿通する孔が形成されている。このように構成されることによって、第1中間ギア20は回転軸線において回転可能に支持される。
【0067】
次に、磁束遮へい部材としてのギアベース部3の製造方法について説明する。
【0068】
ギアベース部3は、以下の工程により製造される。すなわち、ギアベース部3は、フェライト系ステンレス鋼の板状部材に機械加工を施す機械加工工程と、機械加工が施された板状部材を真空または水素雰囲気中で焼鈍温度800~900℃にて焼鈍する焼鈍工程とにより製造される。
【0069】
具体的には、SUS430などのフェライト系ステンレス鋼の磁性体板状部材に対して機械加工部を形成する機械加工工程を実行する。機械加工工程では、上記磁性体板状部材からギアベース部3における基部3bの外形形状、支柱支持孔3c、ネジ孔3d、切欠部3e、主軸挿通孔3f、及び、第1中間ギア軸支部3gといった機械加工部が、打ち抜き加工及び、曲げ加工(本実施の形態における機械加工)により形成される。この機械加工工程により、図10に示したギアベース部3の概略構成が形成される。
【0070】
機械加工工程を実行後、上記磁性体板状部材に対して真空または水素雰囲気中で焼鈍温度800~900℃にて所定時間(例えば、数時間)焼鈍する焼鈍工程を実行する。焼鈍工程を実行した後、カシメ加工することにより、支柱3aが傾くことなく上記磁性体板状部材からギアベース部3が形成することができる。
【0071】
次いで、アブソリュートエンコーダ2の作用について説明する。
【0072】
まず、例えば、アブソリュートエンコーダ2に隣接して配置されているモータ1で発生した磁束の一部が、アブソリュートエンコーダ2のマグネットMp,Mq,Mrを検出する角度センサSp,Sq,Srに影響を与える、いわゆる磁気干渉について述べる。
【0073】
アブソリュートエンコーダ2は、全長(Z軸方向の寸法)を短くするためにモータ1の出力軸である主軸1aの反対側に取り付けられる。このため、アブソリュートエンコーダ2において、モータ1と角度センサSp,Sq,Srとの距離が近くなるため、角度センサSp,Sq,Srは漏れ磁束の影響を受けやすくなる。また、モータ1の小型化に伴って、角度センサSp,Sq,Srとモータ1の永久磁石との距離が近くなる。このため、角度センサSp,Sq,Srは、磁界検出対象のマグネットMp,Mq,Mr以外の永久磁石から発せられる磁束の影響を受けやすくなる。
【0074】
このため、角度センサSp,Sq,Srにおいては、磁気干渉が発生した場合に、正確な波形を検出することができない場合がある。
【0075】
アブソリュートエンコーダ2は、モータ1との接合面に、焼鈍処理が施されている磁性体により形成されている磁束遮へい部材としてのギアベース部3を備えている。
【0076】
アブソリュートエンコーダ2は、ギアベース部3が磁性体により形成されていることで、モータ1の回転に伴って生じる漏れ磁束や、他の永久磁石の磁界等の外部磁界の磁束がギアベース部3に流れるため、ギアベース部3よりもZ軸方向上側、すなわちアブソリュートエンコーダ2のケース4内部に設けられている角度センサSp,Sq,Srに向かうことを防ぐことができる。
【0077】
具体的に、ギアベース部3は、上述したように機械加工部が形成されたフェライト系ステンレス鋼であるSUS430の磁性体板状部材に対して焼鈍処理が施されている。ここで、SUS430は、表面処理が不要で耐食性に優れ、アブソリュートエンコーダ2の歯車などを保持する部材としての必要な強度を有しているものの、透磁率がパーマロイや純鉄と比べると低い。また、磁性体板状部材は、所定の形状に機械加工することにより、機械加工部に加工硬化や、内部にひずみが生じる。このため、ギアベース部3に用いられる磁性体は、機械加工を行うことにより、透磁率にばらつきが生じるため、磁束の軽減にもばらつきが生じていた。
【0078】
そこで、アブソリュートエンコーダ2では、磁性体により形成されているギアベース部3が焼鈍処理を施されていることにより、焼鈍処理を施さない場合に比べて透磁率のばらつきや、磁束の軽減のばらつきが低減されるため、角度センサSp,Sq,Srが外部から届く磁束の影響を抑制することができる。
【0079】
アブソリュートエンコーダ2では、磁性体により形成されているギアベース部3に焼鈍処理が施されていることにより、純鉄やパーマロイよりも低い透磁率を高めることができる。
【0080】
表1は、焼鈍処理の有無によるギアベース部3の磁束の遮へい特性を示すための表である。表1は、モータ1の温度が55度から58度であるときに、ギアベース部3の外部からの磁束の磁束密度を0、0.7、2.0[mT]と変化させていった場合に、ギアベース部3に施されている焼鈍処理の有無による、ギアベース部3の内側において測定された磁束密度の相違を示している。表1において、N1~N3は、ギアベース部3のサンプルを特定する番号を示している。また、表1において、透過する磁束密度の値の正負は、磁束の向きを示している。
【0081】
【表1】
【0082】
表1によれば、焼鈍処理を行うことにより、ギアベース部3は、透過する磁束密度を低減することができる。また、表1によれば、焼鈍処理を行うことにより、ギアベース部3は、アブソリュートエンコーダ2の外部からの磁束密度の値が大きくなった場合の変化量、すなわち、外部からの磁束の磁束密度が大きくなるほど磁束の上昇を抑えることができる。また、焼鈍処理を行うことにより、ギアベース部3は、磁性体板状部材の個体の相違による透過した磁束の分散、あるいは標準偏差が抑制されることから、ギアベース部3の個体差による磁束の遮へい効果を高めることができる。
【0083】
以上説明したように、アブソリュートエンコーダ2によれば、角度検出用永久磁石からの磁束を検出する磁気センサに対して、本来検出すべきでないモータ1内部の永久磁石からの漏れ磁束による影響を低減することができる。
【0084】
また、アブソリュートエンコーダ2は、非磁性体により形成されていて、マグネットMpの径方向における外周面を保持するホルダ部16を備える。軟磁性体によりホルダ部16を形成した場合には、磁場を受けた際にヒステリシスの影響により磁化の影響が残ってしまう。つまり、軟磁性体によりホルダ部16を形成した場合には、ホルダ部16が角度センサSq,Srに近接しているとその残留磁束の影響を与えてしまう。また、軟磁性体によりホルダ部16を形成した場合には、ホルダ部16が外部磁場を受けた際に外部磁場による磁束がその部材に向かって引っ張られてしまう。以上のように、非磁性体により形成されているホルダ部16を備えることにより、アブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Sr近傍の磁場の乱れを防ぐことができる。
【0085】
さらに、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMp及びマグネットMqから主軸の軸線x方向において離間した位置で角度センサSp,Sqを支持する角度センサ支持基板5を支持する支柱3aが、非磁性体により形成されている。上述のホルダ部16と同様に、支柱3aが軟磁性体により形成した場合にも、磁場を受けた際にヒステリシスの影響により磁化の影響が残ってしまう。支柱3aが角度センサSq,Srに近接しているとその残留磁束の影響を与えてしまう。また、軟磁性体により支柱3aを形成した場合には、外部磁場を受けた際に外部磁場による磁束がその部材に向かって引っ張られてしまう。非磁性体により支柱3aを形成することにより、アブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Sr近傍の磁場の乱れを防ぐことができる。
【0086】
つまり、非磁性体によりホルダ部16と支柱3aとを形成することにより、アブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Srの近傍に磁性体を配置されなくなり、焼鈍処理されたギアベース部3に磁束を一様に吸収させることができる。
【0087】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよく、公知の技術と組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0088】
1…モータ、1a…主軸、1b…圧入部、2…アブソリュートエンコーダ、3…ギアベース部、3a…支柱、3b…基部、3c…支柱支持孔、3d…ネジ孔、3e…切欠部、3f…主軸挿通孔、3g…第1中間ギア軸支部、4…ケース、4a…外壁部、5…角度センサ支持基板、5a…下面、6…コネクタ、7…シールドプレート、8a…基板取付ネジ、8c…ギアベース部固定ネジ、8e…ネジ、10…主軸ギア、11…第1ウォームギア部、16…ホルダ部、17…マグネット支持部、20…第1中間ギア、21…第1ウォームホイール部、22…第2ウォームギア部、23…軸、28…第3ウォームギア部、30…第2中間ギア、31…第3ウォームホイール部、32…第1平歯車部、35…マグネットホルダ、40…第1副軸ギア、41…第2ウォームホイール部、50…第2副軸ギア、51…第2平歯車部、121…マイコン、121b…テーブル処理部、121c…回転量特定部、121e…出力部、121p…回転角取得部、121q…回転角取得部、121r…回転角取得部Mp,Mq,Mr…マグネット、Sp,Sq,Sr…角度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10