(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
G03F7/20 505
(21)【出願番号】P 2020035878
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】神田 寛行
(72)【発明者】
【氏名】原 望
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-053140(JP,A)
【文献】特開2006-136897(JP,A)
【文献】特開2009-149427(JP,A)
【文献】特開2017-215535(JP,A)
【文献】特開2020-052284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材にパターンを描画する描画装置であって、
長尺の基材が巻回された供給ロールを保持する供給部と、
前記供給部から引き出された前記基材を保持面にて保持するテーブルと、
前記保持面を通過した前記基材を回収ロールにて巻き取る回収部と、
搬送ローラを有し、パターンの非描画時に前記供給部から前記保持面を通過して前記回収部へと至る搬送経路に沿って前記基材を搬送する搬送部と、
パターンの描画時に前記保持面上の前記基材に向けて変調した光を出射する光出射部と、
パターンの描画時に、前記保持面上に保持される前記基材の長手方向に沿う移動方向に、前記テーブルを前記光出射部に対して相対的に移動する移動機構と、
前記テーブルに対する相対的な位置が固定された校正用検出部を有し、校正動作において前記光出射部からの光が前記校正用検出部に照射されることにより、前記光出射部と前記テーブルとの相対位置に関する校正値を取得する校正値取得部と、
を備え、
前記保持面上の前記基材の幅方向に沿って見た場合に、前記移動方向における前記テーブルの一端近傍に位置する折返位置にて前記搬送経路が前記移動方向に関して折り返され、
前記折返位置よりも前記テーブル側に、前記供給部および前記回収部が配置され、
前記移動方向に沿って、前記テーブル、前記折返位置および前記校正用検出部が順に並ぶことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の描画装置であって、
前記移動機構が、前記テーブルを前記移動方向に連続的に移動し、
前記供給部および前記回収部が、前記移動方向に移動可能であることを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の描画装置であって、
前記テーブル、前記供給部および前記回収部を支持するベース部をさらに備え、
前記移動機構が前記ベース部を移動することを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項
1ないし
3のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記供給部および前記回収部が互いに隣接して配置されることを特徴とする描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル基板等の長尺の基材にパターンを描画する描画装置が知られている。描画装置では、基材が巻回された供給ロールを保持する供給部、基材にパターンを描画する描画部、および、基材を回収ロールにて巻き取る回収部が順に設けられる。描画部では、供給ロールから引き出された基材の一部分がテーブル上に保持され、テーブルを移動しつつ当該部分に光を照射してパターンが描画される。パターンが描画された部分は、回収ロールにて巻き取られる。このような描画装置では、供給部と描画部との間、並びに、描画部と回収部との間に、基材の弛みを吸収するダンサーロール等が設けられることがある。
【0003】
一方、描画部の両側において、ダンサーロール等を介して供給部および回収部を配置する場合、描画装置の設置スペースを大きく取る必要がある。また、供給部と回収部との間の基材の搬送距離が長くなることにより、基材の蛇行等の問題も生じる。そこで、特許文献1では、テーブルが設けられるベース上において、テーブルの両側に供給部および回収部を配置し、パターンの描画においてテーブルを移動する際に、供給部および回収部もテーブルと同じ方向に移動する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基材の長手方向に沿って供給部、描画部および回収部が順に設けられる装置では、供給ロールおよび回収ロールの交換を行う際に、描画部を挟んだ両側の位置の間を作業者が移動する必要があり、交換作業を効率よく行うことができない。また、特許文献1のように、テーブルの両側に供給部および回収部を配置した装置においても同様の問題が生じる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、供給ロールおよび回収ロールの交換作業を効率よく行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、長尺の基材にパターンを描画する描画装置であって、長尺の基材が巻回された供給ロールを保持する供給部と、前記供給部から引き出された前記基材を保持面にて保持するテーブルと、前記保持面を通過した前記基材を回収ロールにて巻き取る回収部と、搬送ローラを有し、パターンの非描画時に前記供給部から前記保持面を通過して前記回収部へと至る搬送経路に沿って前記基材を搬送する搬送部と、パターンの描画時に前記保持面上の前記基材に向けて変調した光を出射する光出射部と、パターンの描画時に、前記保持面上に保持される前記基材の長手方向に沿う移動方向に、前記テーブルを前記光出射部に対して相対的に移動する移動機構と、前記テーブルに対する相対的な位置が固定された校正用検出部を有し、校正動作において前記光出射部からの光が前記校正用検出部に照射されることにより、前記光出射部と前記テーブルとの相対位置に関する校正値を取得する校正値取得部とを備え、前記保持面上の前記基材の幅方向に沿って見た場合に、前記移動方向における前記テーブルの一端近傍に位置する折返位置にて前記搬送経路が前記移動方向に関して折り返され、前記折返位置よりも前記テーブル側に、前記供給部および前記回収部が配置され、前記移動方向に沿って、前記テーブル、前記折返位置および前記校正用検出部が順に並ぶ。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記移動機構が、前記テーブルを前記移動方向に連続的に移動し、前記供給部および前記回収部が、前記移動方向に移動可能である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の描画装置であって、前記テーブル、前記供給部および前記回収部を支持するベース部をさらに備え、前記移動機構が前記ベース部を移動する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記供給部および前記回収部が互いに隣接して配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、供給ロールおよび回収ロールの交換作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】描画装置の一部の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】基材上にパターンを描画する動作の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1の構成を示す図である。
図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している(他の図において同様)。
図1の例では、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向(鉛直方向)である。描画装置1の設計によっては、Z方向が上下方向に対して傾斜した方向、または、水平方向であってもよい。
【0015】
描画装置1は、長尺の基材9上の感光材料に光を照射して、当該感光材料に配線等のパターンを描画する装置である。基材9は、例えばフレキシブル基板であり、樹脂等により形成される。描画装置1は、制御ユニット2と、描画ユニット3と、ステージ移動機構4と、ステージユニット5とを備える。制御ユニット2は、例えばCPU等を有するコンピュータである。制御ユニット2は、描画ユニット3、ステージ移動機構4およびステージユニット5を制御する。
【0016】
描画ユニット3は、ユニット支持部39と、光出射部31と、複数の補正用撮像部71とを備える。ユニット支持部39は、定盤10上に設けられ、定盤10上のステージ移動機構4およびステージユニット5を跨ぐ門状である。
図1では、ユニット支持部39を破線にて示している。光出射部31および複数の補正用撮像部71はユニット支持部39に支持され、ステージ移動機構4およびステージユニット5の上方((+Z)側)に配置される。
【0017】
光出射部31は、複数の描画ヘッド32を備える。複数の描画ヘッド32は、X方向(以下、「幅方向」という。)に沿って配列される。本実施の形態では、複数の描画ヘッド32は、幅方向に沿って千鳥状に配置される(後述の
図3参照)。各描画ヘッド32は、光源33と、光変調部34とを備える。光源33は、例えば、半導体レーザ、固体レーザまたは気体レーザ等を有し、光変調部34に向けてレーザ光を出射する。光変調部34は、光源33からの光を変調する。光変調部34により変調された光は、ステージユニット5により保持される基材9に向けて出射される。光変調部34としては、例えば、複数の光変調素子が二次元に配列されたDMD(デジタルミラーデバイス)等が利用される。光変調部34は、複数の光変調素子が一次元に配列された変調器等であってもよい。補正用撮像部71の詳細については後述する。
【0018】
ステージ移動機構4は、定盤10上に設けられ、ガイドレール、ガイドブロック、モータ(例えばリニアモータ)、リニアスケール等を有する。ステージ移動機構4は、ステージユニット5をY方向(以下、「移動方向」という。)に移動する。これにより、後述のテーブル52に保持される基材9上において、光出射部31(複数の描画ヘッド32)からの光の照射位置が移動方向に走査する。描画装置1では、ステージ移動機構4によるステージユニット5の移動に同期して、光出射部31を制御することにより、基材9上にパターンが描画される。
【0019】
ステージユニット5は、ベース部50と、供給部51と、テーブル52と、回収部53と、搬送部54と、複数の校正用検出部61とを備える。ベース部50は、移動方向および幅方向に広がる板状であり、ステージ移動機構4の移動体に固定される。供給部51、テーブル52、回収部53、搬送部54および複数の校正用検出部61はベース部50上に設けられ、ベース部50により支持される。
【0020】
供給部51および回収部53は、ベース部50の(-Y)側の部分上において互いに隣接して設けられる。供給部51は、複数の供給ロール511を備える。各供給ロール511は、リールに基材9を巻回したものであり、当該リールを中心として回転可能に保持される。複数の供給ロール511は、幅方向に互いに僅かに離れて設けられる。
図1の例では、複数の供給ロール511は、移動方向にもずれた位置に配置される(後述の回収ロール531において同様)。
【0021】
回収部53は、複数の回収ロール531を備える。各回収ロール531は、リールに基材9を巻回したものであり、当該リールを中心として回転可能に保持される。回収ロール531には、例えばモータを有する回転機構が接続される。複数の回収ロール531は、幅方向に互いに僅かに離れて設けられる。幅方向に関して、複数の回収ロール531は、複数の供給ロール511とそれぞれ同じ位置に配置される。
図1の例では、幅方向の同じ位置に配置された回収ロール531および供給ロール511が、移動方向に直接的に(他の部材を挟むことなく)対向する。描画装置1では、各供給ロール511から引き出された基材9は、テーブル52等を経由した後、当該供給ロール511と幅方向の同じ位置に配置される回収ロール531により巻き取られる。
【0022】
テーブル52は、移動方向および幅方向に広がる板状であり、下方((-Z)方向)を向く面にはテーブル支持台526が固定される。テーブル支持台526には、Y方向に貫通する空間が連絡経路527として設けられる。テーブル52は、テーブル支持台526を介してベース部50に固定される。
図1の例では、テーブル52とベース部50との間には移動機構は設けられておらず、テーブル52の位置は、ベース部50に対して固定されている。
【0023】
テーブル52において上方を向く面は、保持面521である。保持面521は、移動方向および幅方向に広がる平面であり、各供給ロール511から引き出された基材9を吸引して吸着保持する。保持面521では、基材9の吸着と、吸着の解除とが切替可能である。保持面521上に保持される各基材9の長手方向は移動方向に沿っており、保持面521では、複数の供給ロール511から引き出された複数の基材9が幅方向に並ぶ。当該幅方向は、保持面521上に保持される基材9の幅方向と同じである。保持面521では、機械的なチャック機構等を用いて基材9が保持されてもよい。
【0024】
搬送部54は、複数の測定ローラ541と、一対の昇降ローラ542と、1つの折返ローラ543と、1つの駆動ローラ544と、1つのニップローラ545と、複数の補助ローラ546とを備える。各ローラ541~546は、幅方向に略平行な軸を中心として回転可能に支持される。各供給ロール511と、対応する回収ロール531との間における基材9の部分は、ローラ541~546に掛けられ、供給ロール511から回収ロール531まで搬送される。ローラ541~546は、基材9の搬送に利用される搬送ローラである。
【0025】
測定ローラ541および補助ローラ546の個数は、供給ロール511および回収ロール531の個数と同じである。すなわち、複数の供給ロール511から引き出された複数の基材9は、複数の測定ローラ541および複数の補助ローラ546をそれぞれ通過して、複数の回収ロール531に巻き取られる。以下の説明では、供給ロール511および回収ロール531のそれぞれの個数、すなわちテーブル52の保持面521上に並ぶ基材9の個数が、2個であるものとして説明を行うが、1個または3個以上であってもよい。測定ローラ541および補助ローラ546の個数において同様である。
【0026】
各測定ローラ541は、供給ロール511とテーブル52との間に配置される。測定ローラ541には、ロードセル等を含む張力測定部が取り付けられており、当該測定ローラ541に掛けられる基材9の張力が測定可能である。一対の昇降ローラ542は、テーブル52の(+Y)側および(-Y)側にそれぞれ配置される。各昇降ローラ542には、2個の基材9が掛けられる。一対の昇降ローラ542には昇降機構549が接続される。昇降機構549は、一対の昇降ローラ542の上端が、テーブル52の保持面521とほぼ同じ高さである下位置と、保持面521よりも僅かに上方に位置する上位置とに、一対の昇降ローラ542を選択的に配置する。
【0027】
折返ローラ543は、(+Y)側の昇降ローラ542に対してテーブル52とは反対側に配置される。折返ローラ543の上端は、テーブル52の保持面521よりも僅かに下方に配置される。折返ローラ543には、2個の基材9が掛けられる。駆動ローラ544は、折返ローラ543の(-Z)側かつ(-Y)側に配置される。ニップローラ545は、駆動ローラ544に近接して配置され、駆動ローラ544とニップローラ545との間に2個の基材9が挟まれる。駆動ローラ544には、モータを有する回転機構が接続される。各補助ローラ546は、回収ロール531の近傍に配置される。
【0028】
搬送部54が基材9を搬送する際には、一対の昇降ローラ542が上位置に配置されることにより、基材9が保持面521から上方に僅かに離される。この状態において、駆動ローラ544が
図1中の反時計回りに回転することにより、基材9において長手方向に連続する部分が、供給部51の各供給ロール511から順次引き出される。供給ロール511から引き出された基材9(の各部分)は、その直後に測定ローラ541を通過し、(-Y)側の昇降ローラ542を介してテーブル52の保持面521に対向する位置へと到達する。保持面521に対向する基材9は、(+Y)側の昇降ローラ542を介して折返ローラ543に到達し、折返ローラ543の表面に沿って進行方向が折り返される。折返ローラ543を通過した基材9は、駆動ローラ544を介してテーブル52の下方の連絡経路527へと向かう。連絡経路527を通過した基材9は、補助ローラ546へと到達し、回収部53の回収ロール531に巻き取られる。
【0029】
描画装置1の後述の動作では、基材9の各部分は、テーブル52の保持面521上に一旦保持されて当該部分にパターンが描画される。換言すると、供給ロール511から引き出された基材9の各部分は、回収ロール531に到達するまでの間にテーブル52の保持面521を通過する。したがって、描画装置1では、供給部51からテーブル52の保持面521を通過して回収部53へと至る搬送経路が設けられているといえる。搬送経路(基材9)は、
図1のように幅方向に沿って見た場合に、折返ローラ543を折返位置として移動方向に関して折り返される。折返位置である折返ローラ543は、移動方向においてテーブル52の一端((+Y)側の端)の近傍に位置し、供給ロール511および回収ロール531よりもテーブル52に近接している。折返ローラ543は、一対の昇降ローラ542を除く、いずれの搬送ローラよりもテーブル52に近接していることが好ましい。
【0030】
搬送部54では、光出射部31から基材9に向けて光を出射しておらず、基材9にパターンが描画されていない期間において(すなわち、パターンの非描画時に)、基材9が当該搬送経路に沿って搬送される。なお、描画装置1の設計によっては、昇降機構549に代えて、テーブル52を上下方向に移動する機構を設けることにより、基材9の搬送時に基材9が保持面521から離されてもよい。また、基材9およびテーブル52の材質等によっては、基材9が保持面521に接触したままで搬送されてもよい。
【0031】
既述のように、測定ローラ541には、張力測定部が取り付けられる。また、供給部51では、例えばパウダーブレーキが設けられる。基材9の搬送時において、張力測定部による基材9の張力の測定値に基づいてパウダーブレーキへの供給電流を調整することにより、搬送経路における基材9の張力が所定の設定値にておよそ一定に維持される。
【0032】
図2は、描画装置1の一部の機能構成を示すブロック図である。描画装置1は、校正値取得部6と、補正値取得部7と、描画制御部21とをさらに備える。校正値取得部6は、光出射部31とテーブル52との相対位置に関する校正値を取得する。校正値取得部6は、既述の校正用検出部61と、校正値算出部62とを備える。補正値取得部7は、基材9とテーブル52との相対位置に関する補正値を取得する。補正値取得部7は、既述の補正用撮像部71と、補正値算出部72とを備える。本実施の形態では、複数の校正用検出部61および複数の補正用撮像部71が設けられるが、
図2では、1つの校正用検出部61および1つの補正用撮像部71のみを示している。校正値算出部62および補正値算出部72は、描画制御部21と共に、制御ユニット2により実現される。これらの機能の全部または一部が、専用の電気的回路により実現されてもよい。
【0033】
図3は、描画装置1を示す平面図であり、
図3では、光出射部31、複数の補正用撮像部71、複数の校正用検出部61、折返ローラ543、テーブル52、並びに、複数の基材9のみを示している。
図1に示すように、校正値取得部6の複数の校正用検出部61は、ベース部50上において、折返ローラ543および駆動ローラ544の(+Y)側に設けられる。
図3に示すように、校正用検出部61の個数は、例えばテーブル52上の基材9の個数と同じであり、幅方向(X方向)に関して、複数の校正用検出部61は、複数の基材9と同じ位置に配置される。
図3の例では、2個の校正用検出部61が設けられる。各校正用検出部61とベース部50との間には移動機構は設けられておらず、校正用検出部61の位置は、ベース部50に対して固定されている。換言すると、校正用検出部61では、テーブル52に対する相対的な位置が固定されている。
【0034】
各校正用検出部61は、校正用撮像部616を備える。光出射部31は、描画実行期間以外の任意のタイミングで、校正用撮像部616に向けて光を照射する。校正用撮像部616は光出射部31からの光の位置に基づいて描画ヘッド32とテーブル52との間の相対的な位置調整(校正動作、すなわちキャリブレーション)を行う。校正用撮像部616が取得する撮像画像は校正値算出部62に出力される。
【0035】
図1に示すように、補正値取得部7の複数の補正用撮像部71は、光出射部31の(-Y)側に設けられる。各補正用撮像部71は、撮像部移動機構38を介してユニット支持部39に支持される。撮像部移動機構38により補正用撮像部71は幅方向に移動可能である。
図3に示すように、例えば各基材9に対して2個の補正用撮像部71が設けられる。基材9の各側部(幅方向の端部)には、複数の参照マーク(アライメントマーク)96が長手方向に沿って形成される。各基材9に対する2個の補正用撮像部71は、幅方向に関して当該基材9の両側部の参照マーク96と同じ位置に配置される。後述する補正動作では、基材9上において長手方向に並ぶ複数の参照マーク96が、補正用撮像部71により順次撮像される。
【0036】
図4は、描画装置1が基材9上にパターンを描画する動作の流れを示す図である。
図1の描画装置1では、一対の昇降ローラ542を下位置に配置し、保持面521上において基材9を吸着保持した状態で、光出射部31の(-Y)側に配置されたステージユニット5が、ステージ移動機構4により(+Y)方向に向かって連続的に移動する。このとき、
図3に示す各補正用撮像部71により、基材9において保持面521上に保持される部位(パターンが描画される予定の部位であり、以下、「描画対象部位」という。)における複数の参照マーク96が順次撮像される。補正用撮像部71により取得される撮像画像は、
図2の補正値算出部72に出力される。また、ステージ移動機構4のリニアスケールから、各撮像画像の取得時におけるテーブル52の移動方向の位置も補正値算出部72に出力される。
【0037】
補正値算出部72では、複数の撮像画像を用いて複数の参照マーク96の位置に基づいた補正値が取得される(ステップS11)。補正値は、例えば、各参照マーク96の理想的な位置(設計上の位置)と、リニアスケールの出力値および撮像画像に基づいて求められる実際の位置との間のX方向およびY方向のずれ量を示す。補正値は、テーブル52と基材9の各参照マーク96との相対位置のずれ量(あるべき位置からのずれ量)を示す。補正値は、テーブル52に対する基材9の位置ずれのみならず、テーブル52上における基材9の傾きや伸び等の影響も含む値である。補正値は描画制御部21に入力される。
【0038】
描画制御部21では、描画対象部位に描画すべきパターンを示す描画データが、補正値に基づいて補正される。すなわち、テーブル52に対する各基材9の位置ずれ、並びに、テーブル52上における基材9の傾きや伸び等に合わせて、描画データが補正される。描画データの補正の少なくとも一部は、ステージユニット5の(+Y)方向への移動に並行して行われることが好ましい。
図1中に二点鎖線にて示すように、テーブル52の全体(基材9の描画対象部位の全体)が光出射部31の下方を通過すると、ステージユニット5の(+Y)方向への移動が停止される。
【0039】
続いて、ステージ移動機構4によるステージユニット5の(-Y)方向への連続的な移動が開始される。また、ステージユニット5の移動に同期して光出射部31が制御され、基材9の描画対象部位に向けて変調した光が出射される。これにより、基材9の描画対象部位にパターンが描画される(ステップS12)。基材9へのパターンの描画時には、光出射部31およびステージ移動機構4が駆動され、ステージユニット5の搬送部54(の駆動ローラ544)は駆動されない。パターンの描画では、補正済みの描画データに基づいて各描画ヘッド32が制御される。また、光出射部31とテーブル52との相対位置に関する校正値も利用される。基材9の描画対象部位の全体が光出射部31の下方を通過すると、ステージユニット5の(-Y)方向への移動が停止される。
【0040】
描画対象部位に対するパターンの描画が完了すると、保持面521における基材9の吸引が解除されるとともに、一対の昇降ローラ542が上位置に配置される。なお、一対の昇降ローラ542を上位置に配置するのみで基材9を保持面521から離すことが可能であるならば、保持面521における吸引は維持したままでもよい。ここでは、次にパターンを描画すべき基材9の部位が存在するため(ステップS13)、駆動ローラ544を回転することにより、長手方向における描画対象部位の長さだけ、基材9が搬送経路に沿って搬送される(ステップS14)。このとき、未だパターンが描画されていない基材9の一部が供給ロール511から引き出され、既にパターンが描画された基材9の一部が回収ロール531に巻き取られる。
【0041】
基材9の搬送が完了すると、一対の昇降ローラ542が下位置に配置されるとともに、保持面521における基材9の吸着保持が再開される。これにより、直前にパターンが描画された描画対象部位に対して(-Y)側に連続する未描画の部位が、新たな描画対象部位として保持面521上に保持される。その後、上記ステップS11,S12の処理と同様に、ステージユニット5がY方向に往復移動することにより、当該描画対象部位にパターンが描画される。
【0042】
基材9において、描画すべき部分の全体にパターンが描画されるまで、上記ステップS14,S11,S12の処理が繰り返される(ステップS13)。基材9において描画すべき部分の全体にパターンが描画されると(ステップS13)、作業者により供給ロール511および回収ロール531が、新たな供給ロール511および新たな回収ロール531に交換される(ステップS15)。典型的には、2個の供給ロール511には同じ長さの基材9が巻回されているため、2個の供給ロール511および2個の回収ロール531は同時に交換される。
【0043】
供給ロール511および回収ロール531の交換では、例えば、一対の昇降ローラ542が上位置に配置された状態で、搬送部54が基材9を搬送することにより、基材9の全体が回収ロール531に巻き取られる。そして、回収ロール531が回収部53から取り外されるとともに、新たな回収ロール531となるリールが取り付けられる。また、リールのみとなった供給ロール511が新たな供給ロール511に交換される。そして、新たな供給ロール511から引き出した基材9が、搬送部54のローラ541~546に掛けられた後、当該基材9の端部が新たな回収ロール531のリールに接続される。
【0044】
供給ロール511および回収ロール531の交換が完了すると、上記ステップS11~S14が行われ、基材9にパターンが描画される。なお、基材9の両主面にパターンを描画する場合には、一方の主面に対するパターンの描画が完了した基材9の回収ロール531が、次の供給ロール511として供給部51に取り付けられてもよい。
【0045】
供給ロール511および回収ロール531の交換は、他の周知な手法にて行われてよい。例えば、供給ロール511に巻回された基材9のおよそ全体にパターンが描画されると、当該供給ロール511の近傍において基材9が切断される。また、供給部51において、ほぼリールのみとなった当該供給ロール511が新たな供給ロール511に交換され、当該新たな供給ロール511に巻回された新たな基材9の端部が、切断された基材9の端部にテープ等により接続される。続いて、両基材9の接続部分が回収ロール531の近傍に到達するまで、搬送部54により基材9が搬送される。接続部分が回収ロール531の近傍に到達すると、当該接続部分において両基材9が分離され、回収ロール531が回収部53から取り外される。また、新たな回収ロール531となるリールが回収部53に取り付けられ、当該新たな基材9の端部が当該リールに接続される。これにより、供給ロール511および回収ロール531の交換が完了する。
図1の例では、ステージユニット5の(-Y)側に作業者の作業スペースが設けられるため、供給部51および回収部53は、作業者の手前側に配置されているといえる。
【0046】
図5は、比較例の描画装置8を示す図である。比較例の描画装置8では、ベース部80上において、供給部81、テーブル82および回収部83が移動方向(Y方向)に順に設けられる。また、校正用検出部84の上方が基材9により覆われる。比較例の描画装置8において、供給ロール811および回収ロール831を交換する際には、テーブル82を挟んだ両側の位置の間を作業者が移動する必要があり、交換作業を効率よく行うことができない。また、基材9に対するパターンの描画が進むのに従って、基材9が供給ロール811から回収ロール831に移動し、ベース部80の重量バランスが変化する。その結果、ベース部80(ステージユニット)を安定して移動することができない場合がある。
【0047】
これに対し、
図1の描画装置1では、幅方向に沿って見た場合に、基材9の搬送経路が、移動方向におけるテーブル52の一端近傍に位置する折返位置(折返ローラ543)にて移動方向に関して折り返され、折返位置よりもテーブル52側に、供給部51および回収部53が配置される。これにより、供給ロール511および回収ロール531を交換する際に、作業者が移動する距離が短くなり、供給ロール511および回収ロール531の交換作業を効率よく行うことができる。
【0048】
好ましい描画装置1では、供給部51および回収部53が互いにY方向に隣接して配置される。これにより、交換作業をより効率よく行うことができる。また、基材9が供給ロール511から回収ロール531に移動しても、ベース部50の重量バランスが大幅に変化することはないため、ベース部50(ステージユニット5)を安定して移動し、パターンを精度よく描画することができる。
【0049】
図5の比較例の描画装置8では、校正用検出部84の上方が基材9により覆われるため、校正動作を行う際には、基材9を取り外して校正用検出部84の上方に重ならない位置に移動する必要がある。したがって、基材9を取り外して校正用検出部84を利用可能な状態にした上で、事前準備として、補正用撮像部85と校正用検出部84との相対位置に関する他の校正値を取得する必要がある。
【0050】
これに対し、
図1の描画装置1では、移動方向に沿って、テーブル52、折返位置(折返ローラ543)および校正用検出部61が順に並び、校正用検出部61が基材9に覆われない。これにより、基材9を取り外すことなく、校正動作を容易に行うことができる。
【0051】
上記描画装置1では様々な変形が可能である。
【0052】
図1の描画装置1では、移動方向に関してテーブル52よりも(-Y)側(折返位置とは反対側)に、供給部51および回収部53の双方が設けられるが、例えば回収部53がテーブル52の下方や駆動ローラ544の近傍に配置されてもよい。この場合も、
図5の比較例の描画装置8と比較して、交換作業における作業者の移動距離が少なくなるため、供給ロール511および回収ロール531の交換作業を効率よく行うことができる。以上のように、描画装置1では、供給部51および回収部53が、移動方向において折返位置(折返ローラ543)よりもテーブル52側に配置されていればよい。
【0053】
図6に示すように、供給部51および回収部53が、ベース部50上に設けられず、ステージユニット5から独立して設けられてもよい。
図6の描画装置1aにおいても、基材9の搬送経路における折返位置(折返ローラ543)よりもテーブル52側に、供給部51および回収部53が配置される。これにより、供給ロール511および回収ロール531の交換作業を効率よく行うことができる。
【0054】
ところで、
図6の描画装置1aでは、パターンの描画においてテーブル52が移動方向に移動するのに伴って、供給部51および回収部53のそれぞれとテーブル52との間の距離が変化する。したがって、供給部51とテーブル52との間、並びに、テーブル52と回収部53との間に、ダンサーロール512,532等、基材9の弛みを吸収する構成が必要となる。一方、この場合、描画装置1aの設置スペースが大きくなってしまう。また、供給部51および回収部53のそれぞれとテーブル52との間における基材9の長さが大きくなる、すなわち、供給ロール511と回収ロール531との間の基材9の搬送距離が長くなり、基材9の蛇行等が生じやすくなる。したがって、これらの問題を解消するには、
図1の描画装置1のように、供給部51および回収部53を移動方向に移動可能として、ダンサーロール512,532等を省略することが好ましい。
【0055】
供給部51および回収部53が移動可能な描画装置1において、テーブル52を移動するステージ移動機構4とは異なる移動機構により、供給部51および回収部53が移動方向に移動してもよい。また、モータ等の駆動部を設けることなく、供給部51および回収部53が、単にガイドレール等により移動方向に移動可能に支持されてもよい。この場合、テーブル52が移動方向に移動する際に、例えば、テーブル52が供給部51および回収部53を引くまたは押すことにより、供給部51および回収部53がテーブル52と共に同じ方向に移動することが可能となる。
【0056】
一方、テーブル52、供給部51および回収部53の移動に係る構成を簡素化するには、
図1の描画装置1のように、テーブル52、供給部51および回収部53を支持するベース部50が設けられ、パターンの描画において、ステージ移動機構4によりベース部50が移動方向に移動することが好ましい。
【0057】
供給部51から保持面521を通過して回収部53へと至る基材9の搬送経路は、適宜変更されてよい。例えば、
図1の描画装置1において、供給部51の位置と回収部53の位置とが入れ替えられ、供給ロール511から引き出されてテーブル52の下方を通過した基材9が、折返ローラ543を介して保持面521上に導かれてもよい。また、上記の搬送部54に設けられるローラの個数および配置は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。
【0058】
搬送経路における折返位置は、必ずしもローラの位置である必要はなく、例えば、回転しない円柱部材が折返位置に設けられ、基材9が当該円柱部材の表面と摺動しつつ移動方向に関して折り返されてもよい。
【0059】
描画装置1,1aでは、例えば、テーブル52が(+Y)方向に連続的に移動する際に、テーブル52上の基材9にパターンが描画され、テーブル52が(-Y)方向に移動する際に、基材9にパターンを描画することなく、搬送経路における基材9の搬送が行われてもよい。搬送経路における基材9の搬送は、パターンの非描画時であるならば、任意のタイミングで行われてよい。
【0060】
描画装置1,1aでは、テーブル52の位置が固定され、基材9にパターンを描画する際に、光出射部31が移動方向に移動してもよい。すなわち、移動機構は、テーブル52を光出射部31に対して相対的に移動方向に移動するものであればよい。また、テーブル52の移動方向への相対移動(主走査)が完了する毎に、移動機構が、光出射部31またはテーブル52を幅方向に間欠的に移動(副走査)することにより、基材9の描画対象部位へのパターンの描画が行われてもよい。
【0061】
校正用検出部61では、校正用撮像部616に代えて、受光面上の光の照射位置が検出可能なセンサ等が用いられてもよい。この場合も、光出射部31とテーブル52との相対位置に関する校正値を取得することが可能である。
【0062】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1a 描画装置
4 ステージ移動機構
6 校正値取得部
9 基材
31 光出射部
50 ベース部
51 供給部
52 テーブル
53 回収部
54 搬送部
61 校正用検出部
71 補正用撮像部
96 参照マーク
511 供給ロール
521 保持面
531 回収ロール
541~546 ローラ