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  • 特許-下水処理システムおよび下水処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】下水処理システムおよび下水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/32 20230101AFI20240221BHJP
【FI】
C02F3/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020037167
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137727
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 俊貴
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-113693(JP,A)
【文献】特開2013-173084(JP,A)
【文献】特開平07-031994(JP,A)
【文献】特開昭58-143887(JP,A)
【文献】特開2019-141763(JP,A)
【文献】きれいで豊かな海の確保に向けた下水道の取り組みについて,中央環境審議会水環境部会瀬戸内海環境保全小委員会(第10回),資料8,国土交通省
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水を処理し、栄養塩類を含む下水処理水を排出する下水処理設備と、
前記下水処理設備から流出した前記下水処理水を放流先へと放流する第一放流路と、
水生植物を用いて前記下水処理水中の栄養塩類を回収する栄養塩類回収設備を有し、前記下水処理水から栄養塩類を回収してなる処理水を前記放流先へと放流する第二放流路と、
前記下水処理設備から前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記下水処理設備から前記第二放流路へと流入する下水処理水量を調節する流量調節機構と、
前記栄養塩類回収設備から前記水生植物を回収し、回収した水生植物を原料として用いて発電を行う発電設備と、
を備え
前記栄養塩類回収設備が、前記処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように前記水生植物の量を調節する制御装置を備える、下水処理システム。
【請求項2】
前記流量調節機構が、前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を時季に応じて制御する制御装置を備える、請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項3】
前記流量調節機構が、前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を、前記放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて制御する制御装置を備える、請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項4】
前記流量調節機構が、前記放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を制御する制御装置を備える、請求項1~3の何れかに記載の下水処理システム。
【請求項5】
下水を処理し、栄養塩類を含む下水処理水を得る下水処理工程と、
前記下水処理工程で得られた前記下水処理水について、そのまま、および/または、水生植物を用いて栄養塩類を回収した後に放流先へと放流する放流工程と、
前記放流工程において、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを決定する分配工程と、
前記水生植物を回収し、回収した水生植物を原料として用いて発電を行う発電工程と、
を含み、
前記放流工程において前記水生植物を用いて前記下水処理水から栄養塩類を回収して得られる処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように前記放流工程で用いる前記水生植物の量を調節する水生植物量調節工程を更に含む、下水処理方法。
【請求項6】
前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、時季に応じて決定する、請求項に記載の下水処理方法。
【請求項7】
前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、前記放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて決定する、請求項に記載の下水処理方法。
【請求項8】
前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、前記放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように決定する、請求項5~7の何れかに記載の下水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理システムおよび下水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下水処理場では、下水処理水の放流先の水域で行われる養殖業等に配慮し、冬季に下水処理水中の栄養塩類(窒素やリン)濃度を上げることで、冬季に不足しがちな窒素やリンを放流先水域に供給するなど、地域のニーズに応じ季節毎に水質を能動的に管理する季節別運転管理の取組が行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
そして、季節別運転管理を行う下水処理場における放流水の水質の能動的な管理は、下水道法等の法令・条例で定められた範囲内で、例えば反応槽における生物処理の条件を調整することにより行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-141763号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】国土交通省水管理・国土保全局下水道部編、「下水放流水に含まれる栄養塩類の能動的管理のための運転方法に係る手順書(案)」、平成27年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、生物処理の条件を調整することにより放流水の水質の能動的管理を行う上記従来の技術には、生物処理に用いられる微生物の性状を適切に調節することが難しく、放流水の水質を所望のレベルに制御し難いという点において改善の余地があった。
【0007】
また、近年、下水処理場には、積極的にエネルギーを創出するエネルギー供給拠点として機能することも期待されているところ、季節別運転管理を行う下水処理場においても同様に、エネルギー供給機能を発揮することが望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、放流水の水質の能動的管理を容易に行うことができ、且つ、エネルギーの創出も可能にする下水処理システムおよび下水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の下水処理システムは、下水を処理し、栄養塩類を含む下水処理水を排出する下水処理設備と、前記下水処理設備から流出した前記下水処理水を放流先へと放流する第一放流路と、水生植物を用いて前記下水処理水中の栄養塩類を回収する栄養塩類回収設備を有し、前記下水処理水から栄養塩類を回収してなる処理水を前記放流先へと放流する第二放流路と、前記下水処理設備から前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記下水処理設備から前記第二放流路へと流入する下水処理水量を調節する流量調節機構と、前記栄養塩類回収設備から前記水生植物を回収し、回収した水生植物を原料として用いて発電を行う発電設備とを備えることを特徴とする。このように、第一放流路と、水生植物を用いた栄養塩類回収設備を有する第二放流路と、流量調節機構とを設ければ、放流水の水質の能動的管理を容易に行うことができる。また、水生植物を原料として用いて発電を行う発電設備を設ければ、放流水中の栄養塩類の能動的管理と、エネルギーの創出とを達成することができる。
【0010】
ここで、本発明の下水処理システムは、前記流量調節機構が、前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を時季に応じて制御する制御装置を備えることが好ましい。このような制御装置を設ければ、季節別運転管理を適切に行うことができる。
【0011】
また、本発明の下水処理システムは、前記流量調節機構が、前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を、前記放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて制御する制御装置を備えることが好ましい。このような制御装置を設ければ、放流先で要求される栄養塩類の量に応じて放流水の水質の能動的管理を適切に行うことができる。
【0012】
そして、本発明の下水処理システムでは、前記制御装置が、前記放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように前記第一放流路へと流入する下水処理水量および前記第二放流路へと流入する下水処理水量を制御することが好ましい。このような制御装置を設ければ、下水道法等の法令・条例を適切に遵守することができる。
【0013】
また、本発明の下水処理システムは、前記栄養塩類回収設備が、前記処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように前記水生植物の量を調節する制御装置を備えることが好ましい。このような制御装置を設ければ、放流水の水質の能動的管理と、水生植物を用いたエネルギーの創出とを高いレベルで両立することができる。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の下水処理方法は、下水を処理し、栄養塩類を含む下水処理水を得る下水処理工程と、前記下水処理工程で得られた前記下水処理水について、そのまま、および/または、水生植物を用いて栄養塩類を回収した後に放流先へと放流する放流工程と、前記放流工程において、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを決定する分配工程と、前記水生植物を回収し、回収した水生植物を原料として用いて発電を行う発電工程とを含むことを特徴とする。このように、放流工程および分配工程を実施すれば、放流水の水質の能動的管理を容易に行うことができる。また、水生植物を原料として用いて発電を行う発電工程を実施すれば、放流水中の栄養塩類の能動的管理と、エネルギーの創出とを達成することができる。
【0015】
ここで、本発明の下水処理方法において、前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、時季に応じて決定することが好ましい。そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを時季に応じて決定すれば、季節別運転管理を適切に行うことができる。
【0016】
また、本発明の下水処理方法において、前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、前記放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて決定することが好ましい。このようにすれば、放流先で要求される栄養塩類の量に応じて放流水の水質の能動的管理を適切に行うことができる。
【0017】
更に、本発明の下水処理方法は、前記分配工程では、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを、前記放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように決定することが好ましい。放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるようにすれば、下水道法等の法令・条例を適切に遵守することができる。
【0018】
そして、本発明の下水処理方法は、前記放流工程において前記水生植物を用いて前記下水処理水から栄養塩類を回収して得られる処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように前記放流工程で用いる前記水生植物の量を調節する水生植物量調節工程を更に含むことが好ましい。処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように水生植物の量を調節すれば、放流水中の栄養塩類の能動的管理と、水生植物を用いたエネルギーの創出とを達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の下水処理システムおよび下水処理方法によれば、放流水中の栄養塩類の能動的管理を容易に行うことができると共に、エネルギーの創出も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】下水処理システムの一例の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
ここで、本発明の下水処理システムおよび下水処理方法は、特に限定されることなく、例えば下水処理場において地域のニーズに応じて季節毎に放流水の水質を能動的に管理する季節別運転管理を行う際に好適に用いることができる。
【0022】
(下水処理システム)
本発明の下水処理システムの一例は、概略構成を図1に示すように、下水を処理して下水処理水を排出する下水処理設備10と、下水処理設備10から流出した下水処理水を放流先へと放流する放流路21と、放流路21から分岐すると共に分岐位置よりも下流側(放流先側)で再び放流路21に合流するバイパス流路23と、バイパス流路23に設けられた栄養塩類回収設備30とを備えている。また、図1に示す下水処理システム100の放流路21およびバイパス流路23には、それぞれ、流路内を流れる下水処理水の流量の調節に使用し得る第一流量調節弁22および第二流量調節弁24が設けられている。更に、下水処理システム100は、栄養塩類回収設備30において栄養塩類の回収に用いられる水生植物を栄養塩類回収設備30へと供給する水生植物供給機構31と、栄養塩類回収設備30から余剰の水生植物を回収して発電を行う発電設備32と、第一流量調節弁22、第二流量調節弁24、水生植物供給機構31および発電設備32の動作を制御する制御装置40とを備えている。
【0023】
下水処理設備10は、流入した下水を処理し、栄養塩類(窒素および/またはリン)を含む下水処理水を排出する。ここで、下水処理設備10としては、流入した下水を処理することが可能であれば特に限定されることなく、任意の構成の下水処理設備を用いることができる。具体的には、下水処理設備10としては、特に限定されることなく、例えば、最初沈殿池と、最初沈殿池の後段に設けられて流入水を生物処理する反応槽と、反応槽の後段に設けられた最終沈殿池とを備える下水処理設備などを用いることができる。なお、下水処理設備10での消費エネルギーをできるだけ少なくするようにする観点からは、下水処理設備10は、流入した下水を硝化抑制運転により処理するものであることが好ましい。
【0024】
なお、放流水の水質の能動的管理を可能にする観点から、下水処理設備10では、得られる下水処理水中に栄養塩類が残存するように下水を処理する。下水処理水100では、下水処理水中に栄養塩類を意図的に残存させることで、後述するようにして放流水の水質の能動的管理が可能になる。
ここで、下水処理水中の窒素濃度は、流入する下水の水質にもよるが、30mg-N/L以上40mg-N/L以下とすることができる。窒素濃度を上記下限値以上とすれば、下水処理水をそのまま放流することで放流先に栄養塩類を十分に供給することができる。また、窒素濃度を上記上限値以下とすれば、放流先への栄養塩類の供給が不要な場合に栄養塩類回収設備30で栄養塩類を十分に回収してから放流することができる。
【0025】
第一流量調節弁22を有する放流路21は、下水処理設備10と、放流先とを直接接続する。即ち、図示例ではバイパス流路23が分岐する位置よりも下流側に設けられた第一流量調節弁22を開くことで、放流路21は、下水処理設備10から流出した下水処理水を放流先へと放流する第一放流路として機能させることができる。
【0026】
第二流量調節弁24および栄養塩類回収設備30を有するバイパス流路23では、第二流量調節弁24を開き、栄養塩類回収設備30へと下水処理水を流入させることで、下水処理水から栄養塩類を回収してなる処理水を得ることができる。即ち、図示例では、第二流量調節弁24を開くことで、放流路21のうちのバイパス流路23が分岐する位置よりも上流側およびバイパス流路23が合流する位置よりも下流側と、バイパス流路23とを、下水処理水から栄養塩類を回収してなる処理水を放流先へと放流する第二放流路として機能させることができる。
【0027】
そして、下水処理システム100では、第一流量調節弁22および第二流量調節弁24が、放流先へとそのまま放流される下水処理水の量(即ち、第一放流路としての放流路21を流れる下水処理水量)と、栄養塩類を回収した後に放流先へと放流される下水処理水の量(即ち、放流路21の一部およびバイパス流路23からなる第二放流路を流れる下水処理水量)とを調節する流量調節機構として機能する。従って、下水処理システム100では、第一流量調節弁22および第二流量調節弁24の開度を調節し、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の割合を変更することで、放流水中に含まれている栄養塩類の量を能動的に制御することができる。
【0028】
なお、図1に示す例では、下水処理水を放流先にそのまま放流する第一放流路と、栄養塩類回収設備において下水処理水から栄養塩類を回収して得られる処理水を放流先に放流する第二放流路との一部が共通している場合を示したが、本発明の下水処理システムでは、第一放流路と第二放流路とが個別に設けられていてもよい。
【0029】
栄養塩類回収設備30は、水生植物を用いて下水処理水中の栄養塩類を回収し、栄養塩類が回収された処理水を排出する。ここで、水生植物としては、下水処理水中の栄養塩類を回収可能であれば特に限定されることなく、例えば、栄養塩類を取り込んで固定化可能なウキクサや微細藻類等を用いることができる。また、栄養塩類回収設備30としては、特に限定されることなく、ウキクサや微細藻類などの水生植物を培養可能な水槽などを用いることができる。
【0030】
なお、栄養塩類回収設備30で栄養塩類を回収して得られる処理水中の窒素濃度は、流入する下水処理水の水質にもよるが、5mg-N/L以上15mg-N/L以下とすることができる。窒素濃度が上記範囲内であれば、栄養塩類回収設備30の適切な運転・管理により、放流先への栄養塩類の年間排出量を所定値以下になるように容易に調整することができる。
【0031】
水生植物供給機構31は、特に限定されることなく、例えば、水生植物を貯蔵する貯蔵庫と、貯蔵庫から栄養塩類回収設備へと水生植物を搬送する搬送装置とを備えている。そして、水生植物供給機構31は、例えば、栄養塩類回収設備30において下水処理水を処理する際に用いられる水生植物の量が不足した際に、水生植物を栄養塩類回収設備30へと供給する。
【0032】
発電設備32としては、栄養塩類回収設備30から回収した水生植物を原料として用いて発電をすることが可能であれば特に限定されることなく、例えば、栄養塩類回収設備30から余剰の水生植物を回収する回収機構と、回収した水生植物を嫌気性消化して消化ガスを得る消化槽と、消化ガスを用いて発電を行う発電機とを備える発電設備を用いることができる。余剰の水生植物を原料として用いて発電を行えば、放流水中に含まれている栄養塩類の量の能動的管理を行いつつ、電気エネルギーを創出することができる。
なお、発電設備32では、水生植物に加えて、下水処理設備10から排出される初沈汚泥等を原料として用いて発電を行ってもよい。
【0033】
制御装置40は、第一流量調節弁22、第二流量調節弁24、水生植物供給機構31および発電設備32の動作を制御する。具体的には、制御装置40は、流量調節機構としての第一流量調節弁22および第二流量調節弁24の開度を制御し、放流先へとそのまま放流される下水処理水と、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水との割合を変更することで、放流水中に含まれている栄養塩類の量を能動的に制御する。また、制御装置40は、水生植物供給機構31から供給される水生植物の量および発電設備32(特に、発電設備32の回収機構)により回収される水生植物の量を制御し、栄養塩類回収設備30において栄養塩類の回収に用いられる水生植物の量を調節することで、処理水中の栄養塩類の量を適切に管理する。
【0034】
ここで、制御装置40における、そのまま放流される下水処理水と、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の割合の決定は、時季に応じて行ってもよいし、放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて行ってもよい。
【0035】
具体的には、例えば、制御装置40は、放流先において栄養塩類が不足しがちな冬季(1~3月)にはそのまま放流される下水処理水の量を増やし、夏季(7~9月)には栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の量を増やすように制御をおこなってもよい。このようにすれば、季節別運転管理を適切に行うことができる。
【0036】
また、制御装置40は、放流先で要求される栄養塩類の量が多い場合にはそのまま放流される下水処理水の量を増やし、放流先で要求される栄養塩類の量が少ない場合には栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の量を増やすように制御をおこなってもよい。このようにすれば、放流先の水質に応じて栄養塩類の供給量の能動的管理を適切に行うことができる。
なお、放流先で要求される栄養塩類の量は、例えば、放流先の水域の栄養塩類の濃度を測定し、放流先の水域の栄養塩類の濃度の目標値と測定値との差を算出することにより決定することができる。
【0037】
更に、例えば放流先の水域に放出可能な栄養塩類の総量が下水道法等の法令・条例により規定されている場合などには、制御装置40は、放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように、そのまま放流される下水処理水の量と、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の量との比率を制御してもよい。具体的には、制御装置40は、例えば、年間運転計画を立案すると共に、放流水中の栄養塩類の濃度および放流水の流量を測定して放流先への栄養塩類の供給量の積算値を算出しておき、冬季の供給量を十分確保すべく当該積算値が法令や条例の規制値を超えないように、あらかじめ夏季に供給量を抑制するものとすることができる。
【0038】
また、制御装置40を用いた水生植物の量の調節は、例えば、栄養塩類回収設備30から流出する処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように行うことができる。具体的には、栄養塩類回収設備30に流入する下水処理水の量および/または下水処理水中の栄養塩類の濃度が増加した場合には、水生植物供給機構31が栄養塩類回収設備30へと水生植物を供給するようにして栄養塩類回収設備30で回収可能な栄養塩類の量を増加させることができる。また、栄養塩類回収設備30に流入する下水処理水の量および/または下水処理水中の栄養塩類の濃度が減少した場合には、発電設備32(特に、発電設備32の回収機構)により回収される水生植物の量を増加させることにより、処理水の水質を維持しつつ発電設備32における発電量を増加させることができる。
なお、処理水中の栄養塩類の量の目標値は、特に限定されることなく、放流先の水域で要求される栄養塩類の量や、法令や条例に規定されている規制値などに基づいて適宜に設定することができる。
【0039】
(下水処理方法)
本発明の下水処理方法は、特に限定されることなく、本発明の下水処理システムにおいて下水を処理する際に好適に用いることができる。そして、本発明の下水処理方法は、下水を処理し、栄養塩類を含む下水処理水を得る下水処理工程と、下水処理工程で得られた下水処理水について、そのまま、および/または、水生植物を用いて栄養塩類を回収した後に放流先へと放流する放流工程と、放流工程において、そのまま放流する下水処理水の量と、栄養塩類を回収した後に放流する下水処理水の量とを決定する分配工程と、水生植物を回収し、回収した水生植物を原料として用いて発電を行う発電工程とを含むことを特徴とする。このように、放流工程および分配工程を実施すれば、放流水の水質の能動的管理を容易に行うことができる。また、発電工程を実施すれば、放流水の水質の能動的管理と、エネルギーの創出とを達成することができる。
【0040】
ここで、下水処理工程では、例えば上述したような下水処理設備を用いて下水を処理し、栄養塩類(窒素および/またはリン)を含む下水処理水を得る。なお、下水処理水中の窒素濃度は、下水処理システムに関して上述したのと同様とすることができる。
【0041】
また、放流工程では、分配工程で決定された量比となるように、下水処理水を、そのまま、または、栄養塩類を回収してから放流する。ここで、本発明の下水処理方法では、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の割合を変更することで、放流水中に含まれている栄養塩類の量を能動的に制御することができる。
なお、下水処理水から栄養塩類を回収して得られる処理水中の窒素濃度は、下水処理システムに関して上述したのと同様とすることができる。
【0042】
分配工程における、そのまま放流される下水処理水と、栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の割合の決定は、時季に応じて行ってもよいし、放流先で要求される栄養塩類の量に基づいて行ってもよい。
【0043】
具体的には、例えば、分配工程では、放流先において栄養塩類が不足しがちな冬季(1~3月)にはそのまま放流される下水処理水の量を増やし、夏季(7~9月)には栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の量を増やすように上記割合を決定してもよい。このようにすれば、季節別運転管理を適切に行うことができる。
【0044】
また、分配工程では、放流先で要求される栄養塩類の量が多い場合にはそのまま放流される下水処理水の量を増やし、放流先で要求される栄養塩類の量が少ない場合には栄養塩類を回収されてから放流される下水処理水の量を増やすように上記割合を決定してもよい。このようにすれば、放流先で要求される栄養塩類の量に応じて放流水の水質の能動的管理を適切に行うことができる。
なお、放流先で要求される栄養塩類の量は、例えば、放流先の水域の栄養塩類の濃度を測定し、放流先の水域の栄養塩類の濃度の目標値と測定値との差を算出することにより決定することができる。
【0045】
更に、例えば放流先の水域に放出可能な栄養塩類の総量が下水道法等の法令・条例により規定されている場合などには、分配工程では、放流先への栄養塩類の年間排出量が所定値以下になるように、上記割合を決定してもよい。具体的には、分配工程では、例えば、予め年間運転計画を立案した上で、放流水中の栄養塩類の濃度および放流水の流量を測定して放流先への栄養塩類の供給量の積算値を算出しておき、冬季の供給量を十分確保すべく当該積算値が法令や条例の規制値を超えないように、あらかじめ夏季に供給量を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明の下水処理方法は、上述した工程に加え、更に、放流工程で用いる水生植物の量を調節する水生植物量調節工程を有していてもよい。
ここで、水生植物量調節工程における水生植物の量の調節は、例えば、放流工程において水生植物を用いて下水処理水から栄養塩類を回収して得られる処理水中の栄養塩類の量が目標値に近づくように行うことができる。具体的には、水生植物を用いて栄養塩類を回収される下水処理水の量および/または下水処理水中の栄養塩類の濃度が増加した場合には、放流工程で用いる水生植物の量を増加させることができる。また、水生植物を用いて栄養塩類を回収される下水処理水の量および/または下水処理水中の栄養塩類の濃度が減少した場合には、発電工程において回収する水生植物の量を増加させることにより、処理水の水質を維持しつつ発電工程における発電量を増加させることができる。
なお、処理水中の栄養塩類の量の目標値は、特に限定されることなく、放流先の水域で要求される栄養塩類の量や、法令や条例に規定されている規制値などに基づいて適宜に設定することができる。
【0047】
そして、発電工程では、回収した水生植物を原料として用いて発電をすることが可能であれば特に限定されることなく、例えば、余剰の水生植物を回収する回収ステップと、回収した水生植物を嫌気性消化して消化ガスを得る消化ステップと、消化ガスを用いて発電を行う発電ステップとを実施して発電することができる。余剰の水生植物を原料として用いて発電を行えば、放流水中に含まれている栄養塩類の量の能動的な管理を行いつつ、電気エネルギーを創出することができる。
なお、発電工程では、水生植物に加えて、下水処理工程で生じる余剰汚泥等も原料として用いて発電を行ってもよい。
【0048】
以上、一例を用いて本発明の下水処理システムおよび下水処理方法について説明したが、本発明の下水処理システムおよび下水処理方法は上述した例に限定されるものではない。具体的には、本発明の下水処理システムおよび下水処理方法では、水生植物を原料として用いて発電を行った際の発電量を予測し得るようにしてもよい。より具体的には、例えば、放流先の水域の栄養塩類の要求量に基づいて下水処理水から回収する栄養塩類の量を決定し、回収される栄養塩類の量から水生植物の増殖量を算出し、当該増殖量から消化ガスの発生量および当該消化ガスを用いた際の発電量を算出することにより、発電可能な電力量を予測し得るようにしてもよい。発電量の予測が可能であれば、エネルギー供給拠点としてより効率的にエネルギーを供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の下水処理システムおよび下水処理方法によれば、放流水の水質の能動的管理を容易に行うことができると共に、エネルギーの創出も可能になる。
【符号の説明】
【0050】
10 下水処理設備
21 放流路
22 第一流量調節弁
23 バイパス流路
24 第二流量調節弁
30 栄養塩類回収設備
31 水生植物供給機構
32 発電設備
40 制御装置
図1