(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】キャリアテープの成形方法
(51)【国際特許分類】
B65B 47/02 20060101AFI20240221BHJP
B65B 15/04 20060101ALI20240221BHJP
B65B 47/10 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B65B47/02
B65B15/04 P
B65B47/10
(21)【出願番号】P 2020039281
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 士朗
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-141787(JP,A)
【文献】特開平07-088949(JP,A)
【文献】特開平02-162011(JP,A)
【文献】特開2002-067140(JP,A)
【文献】特開昭52-090381(JP,A)
【文献】特開昭55-111222(JP,A)
【文献】特開平03-130126(JP,A)
【文献】特開2018-016326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 47/00
B65B 15/00
B29C 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシート材を搬送しながら
、搬送方向に沿って並ぶ複数の収納凹部を形成するキャリアテープの成形方法であって、
前記シート材
を表面から加熱ドラムに巻き付けて、加熱しながら成形ドラムに搬送する加熱工程と、
搬送される前記シート材
を裏面から前記成形ドラムに巻き付け、
前記成形ドラムの外周面に開口するキャビティに吸引して、収納凹部を真空成形する成形工程と、を含み、
前記加熱工程では、前記加熱ドラムの外周に設けた凸部によって前記シート材
に表側から裏側に向かって膨出するように、前記キャビティよりも小さな膨出部を成形するものであり、
前記加熱ドラムによって前記シート材に形成された膨出部は、前記加熱ドラムから送り出された前記シート材が前記成形ドラムに巻き付くときに、前記成形ドラムの前記キャビティに収容されていき、
前記凸部の高さ寸法K1が、前記収納凹部の深さ寸法K0にシート材の厚みtを加えたもの以下であり、
前記シート材の長手方向および幅方向のそれぞれについての前記収納凹部の寸法をA0,B0とし、
前記加熱ドラムの回転方向および回転軸方向のそれぞれについての前記凸部の寸法をA1,B1として、
以下の関係式(1)(2)が同時に満たされる、
0<A1≦ A0-2×t …(1)
0<B1≦ B0-2×t …(2)
ことを特徴とするキャリアテープの成形方法。
【請求項2】
前記寸法A0,A1,B0,B1について、以下の関係式(3)が満たされる、
0.05≦(A1×B1)/(A0×B0)≦0.65 …(3)
ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項3】
前記寸法K0,K1について、以下の関係式(4)が満たされる、
0.31≦K1/K0≦1.12 …(4)
ことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項4】
前記加熱ドラムには、
前記加熱ドラムの外周面に巻き付けた前記シート材を吸引するための吸引孔が設けられ、
前記加熱工程では、前記シート材を前記加熱ドラムの外周面に吸着して、前記膨出部を成形する、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの成形方法。
【請求項5】
前記シート材を予備加熱ドラムに巻き付けて、予熱しながら前記加熱ドラムに搬送する予熱工程を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品、精密機器などの部品の収納、搬送などに用いるキャリアテープに関し、特に部品の収納凹部を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のキャリアテープとしては、例えば特許文献1に記載されているエンボス型のキャリアテープが知られている。このものでは、テープ長手方向に並んで間欠的に形成された収納凹部(エンボス部)にそれぞれ電子部品などを収納し、それらを覆うようにカバーテープを熱融着して、封入する。こうして部品などを収納したキャリアテープは、リールに巻き取って保管したり、搬送したりすることができる。
【0003】
また、前記文献によれば、キャリアテープの収納凹部を成形するために、母材テープであるシート材を加熱ドラムに巻き付けて加熱軟化させた後に、成形ドラム(金型)に連続的に供給して、真空成形するようにしている。すなわち、成形ドラムに供給する前に予め100℃くらいに加熱することで、成形時の材料の延伸性が高まり、収納凹部の肉厚が確保しやすくなるので、所要の座屈強度を得る上で有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例のように予め加熱して延伸性を高めていても、平坦なシート材が成形ドラムのキャビティに吸引されて収納凹部を形成するときには、その開口部から底部に向かって徐々に肉厚が薄くなってしまう。このため、絞りが深くなっていくと、収納凹部の底部、特にその隅部において必要な肉厚を確保できなくなり、座屈強度が不足することがあった。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャリアテープの収納凹部を成形する方法に工夫を凝らして、その底部の肉厚を確保しやすくし、所要の座屈強度が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る1つの態様は、長尺のシート材を搬送しながら、その搬送方向に沿って並ぶ複数の収納凹部を形成するキャリアテープの成形方法であって、前記シート材をその表面から加熱ドラムに巻き付けて、加熱しながら成形ドラムに搬送する加熱工程と、搬送される前記シート材をその裏面から前記成形ドラムに巻き付け、この成形ドラムの外周面に開口するキャビティに吸引して、収納凹部を真空成形する成形工程と、を含み、前記加熱工程では、前記加熱ドラムの外周に設けた凸部によって前記シート材に、その表側から裏側に向かって膨出するように、前記キャビティよりも小さな膨出部を成形するものである。
そして、前記凸部の高さ寸法K1を、前記収納凹部の深さ寸法K0にシート材の厚みtを加えたもの以下にするとともに、前記シート材の長手方向および幅方向のそれぞれについての前記収納凹部の寸法をA0,B0とし、前記加熱ドラムの回転方向および回転軸方向のそれぞれについての前記凸部の寸法をA1,B1として、以下の関係式(1)(2)が同時に満たされるものとする。
0<A1≦ A0-2×t …(1)
0<B1≦ B0-2×t …(2)
なお、前記収納凹部の寸法A0,B0は、収納凹部の底部付近で側面が湾曲して底面に繋がってゆく部位で計測し、同様に、前記凸部の寸法A1,B1も、凸部の先端部付近で側面が湾曲して先端面に繋がってゆく部位で計測すればよい。
(2)上記(1)の態様において、前記寸法A0,A1,B0,B1について、以下の関係式(3)が満たされるようにしてもよい。
0.05≦(A1×B1)/(A0×B0)≦0.65 …(3)
(3)上記(1)または(2)の態様において、前記寸法K0,K1について、以下の関係式(4)が満たされるようにしてもよい。
0.31≦K1/K0≦1.12 …(4)
(4)上記(1)の態様において、前記加熱ドラムには、その外周面に巻き付けた前記シート材を吸引するための吸引孔が設けられ、前記加熱工程では、前記シート材を前記加熱ドラムの外周面に吸着して、前記膨出部を成形するようにしてもよい。
(5)上記(1)の態様において、前記シート材を予備加熱ドラムに巻き付けて、予熱しながら前記加熱ドラムに搬送する予熱工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャリアテープの成形方法によれば、加熱ドラムに凸部を設けて、予めシート材に膨出部を成形するようにしたので、その後の成形工程においてシート材の膨出部がキャビティ内に吸引されて、収納凹部を形成する際に、その底部の肉厚が従来までと比べて確保しやすくなる。よって、絞りが深くなっても収納凹部の底部の座屈強度を所要の値に維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るキャリアテープの概略構造を一部、断面で示す斜視図である。
【
図2】収納凹部を拡大して示す(a)平面図、および(b)(c)断面図である。
【
図3】キャリアテープの成形装置の概略を示す構成図である。
【
図4】加熱ドラムおよび成形ドラムを拡大して示す説明図である。
【
図5】キャリアテープの成形方法の概略を示すフローチャートである。
【
図6】加熱ドラムでも真空引きするようにした変形例の説明図である。
【
図7】加熱ドラムでも真空引きするようにした場合の膨出部の形状を、真空引きしない場合と比較して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0011】
図1は、本発明に係るキャリアテープ1の一例を示す斜視図であり、これは、図示しない電子部品などを多数、収納した状態でリールに巻き取り、保管したり、搬送したり、また、一例として実装機(マウンター)に取り付けて送り出し、電子部品などを供給したりするものである。キャリアテープ1は、電子部品に限らず、例えば精密部品などの保管、搬送、供給等にも用いられる。
【0012】
図1に示すようにキャリアテープ1は、テープの搬送方向Cに延びる長尺状とされ、その長手方向(テープ長手方向)に沿って、部品を収納するための収納凹部2が所定の間隔で、即ち間欠的に並んで複数、形成されている。この収納凹部2の形状は、収納する部品の寸法および形状に合わせて設定されるが、本実施形態では、
図2(a)にも示すように平面視で略矩形状とされている。
【0013】
また、キャリアテープ1における幅方向(テープ幅方向)の1側(
図1では奥側)には、キャリアテープ1を送り出すための送り穴3が所定の間隔で、即ち間欠的に並んで複数、形成されている。この送り穴3の寸法、形状および間隔は、実装機などの送り機構に合わせて設定されるものであり、
図1の例では断面が円形状の送り穴3が、収納凹部2と同様の間隔で形成されている。
【0014】
図2には収納凹部2を拡大して示しており、(a)は平面図、(b)(c)はそれぞれ図(a)のb-b線、c-c線における断面図である。各図に表れているように収納凹部2は、その横断面、縦断面も略矩形状とされ、角部にアールが形成されている。この実施形態では図(a)に明らかなように、テープ長手方向の寸法A0がテープ幅方向の寸法B0よりも小さくなっている。
【0015】
なお、収納凹部2の各寸法A0,B0は、JIS C0806-3 2014 に規定するように、いずれも角部のアールの終端位置で計測すればよく、
図2に示す寸法A0,B0は、収納凹部の底部付近で側面が湾曲して底面に繋がってゆく部位で計測する。また、寸法K0は、収納凹部の底面とシート表面との距離である。
【0016】
一例としてキャリアテープ1は、熱可塑性樹脂を材料として形成されている。熱可塑性樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの合成樹脂、これらの樹脂にカーボン等を練り込んで導電性を付与したもの、表面に導電コーティングを施したものなどが挙げられる。
【0017】
上述の如きキャリアテープ1は、以下に説明するようにドラム成形によって形成される。なお、本実施形態のキャリアテープ1は、まず、例えば4列、8列などの複数列のキャリアテープ10として形成され、その後、1列ごとのキャリアテープ1として切断・分離されるものである。そのために複数列のキャリアテープ10の列間や両端部に位置決め用凹部が設けられることもある。
【0018】
次に、キャリアテープ10の成形装置100及び成形方法について説明する。
図3は、本発明に係るキャリアテープ10の成形に用いられる成形装置100の概略を示す構成図であり、この成形装置100は、少なくとも予備加熱ドラム109と、加熱ドラム110と、成形ドラム(ドラム式金型)120と、アキューム部130と、プレス金型140と、搬送装置150とを備えている。
【0019】
予備加熱ドラム109は、図示しない供給手段から供給されるシート材10Aがその裏面から巻き付けられて回転し、搬送方向Cの下流に設けられた加熱ドラム110に連続的に搬送されるものである。こうして搬送しながら予備加熱ドラム109は、シート材10Aを比較的低温で加熱軟化させるものであり、例えば60~80℃程度の温度にシート材10Aを予熱するように構成されている。
【0020】
同様に加熱ドラム110は、搬送されてくるシート材10Aがその表面から巻き付けられて回転するもので、搬送方向Cの下流に設けられた成形ドラム120に連続的に搬送しながら、シート材10Aを比較的高温(例えば100℃程度)で加熱軟化させる。また、そうして軟化させたシート材10Aに、その表側から裏側に向かって膨出部10a(
図4を参照)が形成されるよう、加熱ドラム110の外周に複数の凸部110aが設けられている。
【0021】
すなわち、
図4に拡大して示すように、成形ドラム120の外周には、シート材10Aに成形する収納凹部2の寸法・形状及び間隔に応じて、複数(図の例では18個)のキャビティ120aが設けられている。また、これらキャビティ120aよりも小さな凸部110aが、キャビティ120aと同じ間隔で加熱ドラム110の外周に複数(図の例では18個)設けられている。
【0022】
そして、加熱ドラム110および成形ドラム120が回転して、シート材10Aを連続的に搬送するときには、加熱ドラム110の凸部110aによってシート材10Aに膨出部10aが形成され、加熱ドラム110から送り出されたシート材10Aが成形ドラム120に巻き付くときに、そのシート材10Aに形成された膨出部10aが順に成形ドラム120のキャビティ120aに収容されてゆく。
【0023】
このように成形ドラム120は、その回転によりシート材10Aを連続的に搬送しながら、シート材10Aの膨出部10aをキャビティ120aに吸引して、収納凹部2を真空形成するものである。そのために各キャビティ120aには、図示しない真空発生機などに接続されている。また、成形ドラム120は、例えば、水などの冷温調媒体によって所定の温度範囲内に維持されている。
【0024】
図3に戻って、成形装置100のアキューム部130は、収納凹部2が形成されたシート材10Aを一時的に滞留させて冷却し、真空成形時の熱応力を除去するものである。また、プレス金型140は、シート材10Aに送り穴3打ち抜くもので、搬送装置150は、シート材10Aをアキューム部130からプレス金型140に間欠的に搬送するものである。
【0025】
なお、成形装置100は、図示は省略するが、上述したように収納凹部2の形成されたシート材10A、即ち複数列に成形されたキャリアテープ10を、単列のキャリアテープ1に切断・分離する切断装置を備えている。また、成形装置100に連続して、各キャリアテープ1の収納凹部2に部品を収納した後、リールに巻き取る巻取装置などが設置されていてもよい。
【0026】
次に
図5を参照して、キャリアテープ10の成形方法の流れを概略的に説明する。
この成形方法は、シート材10Aを予熱ながら加熱ドラム110に搬送する予熱工程S0と、予熱したシート材10Aを加熱しながら成形ドラム120に搬送する加熱工程S1と、搬送されるシート材10Aを成形ドラム120に巻き付けて、収納凹部2を真空成形する成形工程S2と、を含んでいる。
【0027】
前記の予熱工程S0および加熱工程S1では、シート材10Aを概ね一定の搬送速度でそれぞれ加熱ドラム110および成形ドラム120に搬送する。このとき、搬送速度は1m/minから20m/min程度であり、好ましくは2m/minから15m/minである。また、加熱工程S1では、加熱ドラム110に対し表面から巻き付けられるシート材10Aに、裏側に向かって膨出部10aが形成される。
【0028】
次に成形工程S2では、シート材10Aをその裏面から成形ドラム120に巻き付けて真空吸着しながら搬送する。このときも搬送速度は1m/minから20m/min程度であり、好ましくは2m/minから15m/minである。成形ドラム120の外周に吸着されたシート材10Aにおいて、膨出部10aがキャビティに吸引され、収納凹部2が真空成形される。
【0029】
こうして収納凹部2が形成されたキャリアテープ10は、アキューム部130で冷却された後に反転され、搬送装置150の間欠的な搬送により、プレス金型140で送り穴3などが穿設される。そして、収納凹部2および送り穴3が形成されたキャリアテープ10が、図示しない切断装置において長手方向の切断線に沿って切り離される。このようにして、単列のキャリアテープ1が成形される。
【0030】
上述した成形方法によれば、予めシート材10Aを加熱するための加熱ドラム110に凸部110aを設けて、収納凹部2に対応しかつ小さな膨出部10aを成形するようにしており、この膨出部10aの肉厚は、凸部110aにより拘束されて押し出されるため、過度に薄くはならない。そして、成形工程で膨出部10aがキャビティ120a内に吸引されると、膨出部10aが無い場合に比べてキャビティ120a内に吸引されるシート材10Aの量が多くなるので、収納凹部2の底部の肉厚を確保しやすい。
【0031】
但し、そうして予めシート材10Aに設ける膨出部10aが大きいと、成形工程でシート材10Aが成形ドラム120に巻き付けられるときに、キャビティ120aの周縁部に膨出部10aが干渉してしまい、成形後の収納凹部2に傷などが残るおそれがある。これに対し本実施形態では、膨出部10aがあまり大きくならないように、凸部110aの寸法を設定している。
【0032】
具体的には、前記の
図2に示す収納凹部2の設計上の寸法A0,B0,K0を基準として、加熱ドラム110の凸部110aの寸法を以下のように設定する。
【0033】
すなわち、まず、成形ドラム120のキャビティ120aの開口部の縦横の寸法は、収納凹部2の寸法A0,B0にシート材10Aの厚みtの2倍を加えたものであり、加熱ドラム110の回転方向および回転軸方向のそれぞれについての凸部110aの寸法A1,B1は、以下の関係式(1)(2)を同時に満たすことが望ましい。
0<A1≦A0-2×t …(1)、 0<B1≦B0-2×t …(2)
【0034】
このように凸部110aの寸法を設定すれば、これによりシート材10Aに形成される膨出部10aは、成形ドラム120のキャビティ120aにすっぽり入り込む大きさになる。よって、成形工程でシート材10Aが成形ドラム120に巻き付けられるときに、キャビティ120aの周縁部に膨出部10aが干渉し難くなって、成形後の収納凹部2に傷などが残ることを抑制できる。
【0035】
また、キャビティ120aの深さ寸法は、収納凹部2の寸法K0にシート材の厚みtを加えたものなので、加熱ドラム110の外周面から突出する凸部110aの高さ寸法K1については、寸法K0+t 以下にするのが望ましい。膨出部10aの膨出量があまり大きいと、キャビティ120a内に吸引されたときに押し潰されて、成形後の収納凹部2の底部が変形してしまうからである。
【0036】
なお、上述した実施形態の変形例として、加熱ドラム110において凸部110aによりシート材10Aに膨出部10aを形成する際にも、そのシート材10Aを真空吸着するようにしてもよい。すなわち、
図6に一例を示すように、加熱ドラム110の外周面に、その周方向について凸部110aの両側の付け根に開口するスリット状の吸引孔110bを設け、これを図示しない真空発生機に接続して吸引するようにすればよい。
【0037】
そうして真空吸着した場合の膨出部10aの形状を、真空吸着しない場合と比較して
図7に示す。真空吸着しない場合は、同図(b)に示すように膨出部10aの基部付近のアールが大きくなって、同図に黒塗りで示すようにキャビティ120aの周縁部と干渉してしまう。これに対し、真空吸着すれば、同図(a)に示すように膨出部10aの形状の矩形性が高まり、基部付近のアールが小さくなって、干渉が抑制される。
【0038】
(実施例)
次に、上述した成形方法によって実際にキャリアテープ1を製作した結果について説明する。一例として、例えばポリカーボネート製(融点約250℃)のシート材10Aから4列のキャリアテープ1を含むキャリアテープ10を成形した。なお、収納凹部2の設計寸法は、例えば開口部が2.80mm×3.50mmの矩形状で、深さが2.43mmであり、搬送方向Cの間隔は4mmである。
【0039】
また、成形条件としては、予備加熱ドラム109の温度を80℃とし、加熱ドラム110の温度を100℃とした。なお、成形ドラム120の温度は60℃とした。そして、以下の表1に表れているように、加熱ドラム110に設ける凸部の大きさを、面積比で0.05~0.70の範囲で変化させるとともに、高さ比では0.31~1.23の範囲で変化させて、その影響を調べた。
【0040】
ここで、面積比とは、収納凹部2の底面付近における開口部面積を基準として、加熱ドラム110の凸部110aの先端面付近の面積の比率を言う。面積比は、上述した寸法A0,A1,B0,B1を用いて、 (A1×B1)/(A0×B0) と表される。また、高さ比とは、収納凹部2の深さ寸法K0に対する凸部110aの高さ寸法K1であり、 K1/K0 と表される。
【0041】
また、キャリアテープ1の成形評価は、(1)強度として、収納凹部2の底部の座屈強度を測定し、所定の基準値(例えば4.9N)以上であれば合格とする一方、基準値未満であれば不合格とした。また、収納凹部2の底部に所定量以上の変形がある場合も不合格とした。さらに、(2)外観として、収納凹部2の底面や側面に深さ0.01mm以上の傷があるか、又は表層が剥がれて異物を生じた場合に、不合格とした。
【0042】
【0043】
表1の最も左の列には比較例1として、加熱ドラム110に凸部110aを設けていないもの(従来技術に相当)を示しており、成形後の収納凹部2の底部の座屈強度が不足して不合格になっている。これに対し、2番目から9番目の列に示す実施例1~8では、上述した実施形態のように加熱ドラム110に凸部110aを設けたことで、収納凹部2の底部の座屈強度が向上している(合格)。
【0044】
詳しくは、面積比および高さ比がいずれも小さな実施例1では、座屈強度が略基準値(例えば5.2N)に留まっている(座屈強度限界)一方、面積比および高さ比がいずれも大きな実施例6、7の場合、実施例6では問題なかったが、実施例7では成形後の収納凹部2の外面に傷跡や変形が見られ、ぎりぎり合格と判定された。また、実施例8では、加熱ドラム110においてシート材10Aを真空吸着しており、傷や変形なしに合格と判定された。
【0045】
これは、真空吸着をしないと、シート材10Aに形成される膨出部10aの大きさが大きめになることによると考えられる。そして、表1の右から3番目の列の比較例2と、右から2番目の列の比較例3とでは、前記実施例8よりも少し面積比を大きくしており、この場合は真空吸着をしていても、していなくても、傷ありで不合格になっている。よって、面積比は、真空吸着の有無によらず0.65が上限と考えられる。
【0046】
さらに、表1の最も右の列の比較例4は、凸部110aの高さ比が大きい場合であり、面積比については実施例7、8と同じく0.65に留めているが、高さ比は1.23と大きくなっており、この場合も、真空吸着していても不合格になっている。この場合は、凸部110aが高過ぎるため、キャビティ120aに吸引される膨出部10aが大きくなり過ぎ、その底部が押し潰されて変形したものと考えられる。
【0047】
よって、この表1から、加熱ドラム110に設ける凸部110aの大きさについて、面積比で0.05~0.65の範囲が好ましく、余裕をみれば0.1~0.6の範囲がより好ましいといえる。また、高さ比としては0.31~1.12の範囲が好ましく、余裕をみれば0.4~1.0の範囲がより好ましいといえる。特に面積比や高さ比が大きい場合には、真空吸着をするのが好ましいといえる。
【0048】
以上、説明したように本実施形態のキャリアテープ1の成形方法は、予めシート材10Aを加熱するための加熱ドラム110に凸部110aを設けて、収納凹部2よりも小さめの膨出部10aを成形するようにしたので、成形ドラム120においてキャビティ120a内に膨出部10aが吸引され、収納凹部2が真空形成される際に、その底部の肉厚が従来までと比べて薄くなり難い。よって、絞りが深くなっても収納凹部2の座屈強度を維持することができる。
【0049】
実施形態では、凸部110aの寸法A1,B1を、収納凹部2の寸法A0,B0と、シート材10Aの厚みtとに対して、以下の2つの式を満たすように設定する。
0<A1≦A0-2×t …(1)、 0<B1≦B0-2×t …(2)
これにより、膨出部10aがキャビティ120a内に吸引され、入り込む際の干渉を抑制できる。
【0050】
実施形態では、凸部110aの高さ寸法K1を、収納凹部2の深さ寸法K0にシート材10Aの厚みtを加えたもの以下に設定する。これにより、膨出部10aの膨出量があまり大きくならず、キャビティ120a内に吸引されたときに押し潰され難くなるので、成形後の収納凹部2の底部の変形を抑制できる。
【0051】
実施形態では、シート材10Aを予備加熱ドラム109に巻き付けて、予熱しながら加熱ドラム110に搬送する予熱工程を含む。これにより、加熱ドラム110にシート材10Aを巻き付け、凸部110aにより膨出部10aを形成する際の延伸性が高くなって、より好適な成形が行われる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0053】
例えば上述した実施形態では、シート材10Aを加熱ドラム110に搬送しながら予熱する予備加熱ドラム109を設けているが、これは設けなくてもよい。また、加熱ドラム110の凸部110aの高さK1を、収納凹部2の深さ寸法K0にシート材10Aの厚みtを加えたもの以下に設定しているが、シート材10Aの弾性を考慮すれば、K1>K0+tであってもよい。
【0054】
一方、加熱ドラム110の凸部110aの寸法A1,B1については、シート材10Aの弾性を考慮しても収納凹部2の寸法A0,B0およびシート材10Aの厚みtに対して、 A1≦A0-2×t 、 B1≦B0-2×t とするのが好ましい。但し、面積比については0.65以上であってもよく、この場合は、
図6を参照して上述したように加熱ドラム110においても真空吸着するのが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 キャリアテープ
2 収納凹部
10 キャリアテープ、 10A シート材 10a 膨出部
100 成形装置
109 予備加熱ドラム
110 加熱ドラム、 110a 凸部、 110b 吸引孔
120 成形ドラム、 120a キャビティ