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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】壁パネルの支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/82 20060101AFI20240221BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20240221BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
E04B2/82 511A
E04B5/02 Z
E04B1/00 501M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020059132
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156073
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智勇
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-148002(JP,A)
【文献】特開2010-209616(JP,A)
【文献】特開2019-049169(JP,A)
【文献】特開平10-196138(JP,A)
【文献】特開平11-013143(JP,A)
【文献】実開昭59-142305(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/82
E04B 5/02
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置された少なくとも一対の床受け梁を備える軸組架構を有する建物の壁パネルの支持構造であって、
前記一対の床受け梁に架け渡されて支持されている少なくとも1つの床パネルと、
平面視で前記床パネルを跨ぐように延在し、前記一対の床受け梁又は前記軸組架構を構成する他の軸組部材に対して、前記床パネルを介さずに、直接的又は間接的に固定されることにより、前記一対の床受け梁又は前記他の軸組部材に支持された壁受け部材と、
前記壁受け部材で支持された壁パネルと、を有する、壁パネルの支持構造。
【請求項2】
前記壁受け部材は、前記他の軸組部材に対して固定されることにより前記他の軸組部材により支持されており、
前記他の軸組部材は、前記一対の床受け梁を連結する連結梁である、請求項1に記載の壁パネルの支持構造。
【請求項3】
前記壁受け部材と前記床パネルとを連結し、前記壁パネルが受けた水平荷重を前記床パネルへと伝達する水平荷重伝達手段を有する、請求項1又は2に記載の壁パネルの支持構造。
【請求項4】
前記水平荷重伝達手段は軸部材から構成され、前記軸部材は、一方端が前記壁受け部材に連結され、他方端が前記床パネルに挿入されている、請求項3に記載の壁パネルの支持構造。
【請求項5】
前記一対の床受け梁それぞれに取り付けられている一対の床受け部材を有し、
前記一対の床受け部材は、前記一対の床受け梁の間で前記床パネルが落とし込まれるようにして前記床パネルを支持する、請求項1~4のいずれか1項に記載の壁パネルの支持構造。
【請求項6】
前記建物は、所定の平面モジュールに基づき構築されており、
前記軸組架構は、前記所定の平面モジュールに基づき格子状に配された基準線の交点位置にボルト孔群を有し、
前記壁受け部材は、前記ボルト孔群のボルト孔を用いて前記軸組架構にボルト固定されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の壁パネルの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁パネルの支持構造に関し、特に、軸組架構を有する建物の壁パネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の建物において、例えばバルコニーと居室との間を区切るために、壁パネルを設ける構成が知られている。特許文献1には、界壁によってバルコニーと居室とが区切られたバルコニー構造が開示されている。特許文献1のバルコニー構造では、界壁は軸組を構成する梁によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-64415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示のバルコニー構造では、界壁に沿った位置に梁を設けなければならない。また、界壁を支持するための梁を設けるためには、バルコニー側の床面と、居室側の床面とを、それぞれ別々の床の下地材であるALC板で構成しなければならない。さらに、それぞれのALC板を支持するために、別々の梁を設けなければならなくなる可能性がある。そのため、バルコニー構造を構成する部材の数が多くなると共に構成が複雑になり、コストや施工の手間が増大するという問題があった。特に、界壁を隣接する界壁に対し平面視で斜めに(例えば45度)屈曲するように配置する場合は、梁の接合部やALC板を特殊な形状・納まりとする必要があり、コストや施工の手間が更に増大することに加え、構造解析も複雑化するという問題があった。それゆえ、壁パネルを簡易な構成で支持することができる技術が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で壁パネルを支持することができる、壁パネルの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の壁パネルの支持構造は、平行配置された少なくとも一対の床受け梁を備える軸組架構を有する建物の壁パネルの支持構造であって、
前記一対の床受け梁に架け渡されて支持されている少なくとも1つの床パネルと、
平面視で前記床パネルを跨ぐように延在し、前記一対の床受け梁又は前記軸組架構を構成する他の軸組部材に支持された壁受け部材と、
前記壁受け部材で支持された壁パネルと、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明の壁パネルの支持構造において、前記壁受け部材は、前記他の軸組部材により支持されており、前記他の軸組部材は、前記一対の床受け梁を連結する連結梁であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の壁パネルの支持構造は、前記壁受け部材と前記床パネルとを連結し、前記壁パネルが受けた水平荷重を前記床パネルへと伝達する水平荷重伝達手段を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明の壁パネルの支持構造において、前記水平荷重伝達手段は軸部材から構成され、前記軸部材は、一方端が前記壁受け部材に連結され、他方端が前記床パネルに挿入されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の壁パネルの支持構造は、前記一対の床受け梁それぞれに取り付けられている一対の床受け部材を有し、前記一対の床受け部材は、前記一対の床受け梁の間で前記床パネルが落とし込まれるようにして前記床パネルを支持することが好ましい。
【0011】
また、本発明の壁パネルの支持構造において、前記建物は、所定の平面モジュールに基づき構築されており、前記軸組架構は、前記所定の平面モジュールに基づき格子状に配された基準線の交点位置にボルト孔群を有し、前記壁受け部材は、前記ボルト孔群のボルト孔を用いて前記軸組架構にボルト固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で壁パネルを支持することができる、壁パネルの支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。
図2図1に対応する図であって、図1に示した部材の一部の図示を省略した、壁パネルの支持構造の斜視図である。
図3図1中、A-A線で示す断面図である。
図4図1中、B-B線で示す端面図である。
図5】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。
図6】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る壁パネルの支持構造の概略構成の一部を示す拡大断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。
図8図7に対応する図であって、図7に示した部材の一部の図示を省略した、壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。
図9図7中、C-C線で示す断面図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る壁パネルの支持構造における、軸組架構の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の壁パネルの支持構造に係る第1~第3の実施形態について説明する。なお、本発明に係る壁パネルの支持構造を適用可能な建物は、平面視で直交する2軸に沿って床受け梁が配置される軸組架構を有する建物であれば特に限定されない。また、そのような軸組架構を有する建物は、例えば、標準化され予め工場等で製造された部材を建設現場で組み立てるプレハブ住宅等の工業化建物であってもよく、在来工法により建設された住宅等の在来建物であってもよい。
【0015】
(第1の実施形態)
はじめに、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る壁パネルの支持構造の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の壁パネルの支持構造100(以下、「支持構造100」と略記する。)は、平行配置された一対の床受け梁1,2を備える軸組架構10を有する建物に適用されるものである。支持構造100は、一対の床受け梁1,2と、一対の床受け梁1,2に架け渡されて支持されている第1の床パネル11及び第2の床パネル12と、平面視で第1の床パネル11及び第2の床パネル12それぞれを跨ぐように延在し、第1~第3の連結梁21~23に、第1~第3の高さ調整部材51~53を介して間接的に支持された壁受け部材30と、壁受け部材30で支持された壁パネル40と、を有している。
【0016】
次に、支持構造100の詳細な構成について、図1に加えて図2図4を参照して説明する。図2は、図1に対応する図であって、図1に示した部材の一部の図示を省略した、壁パネルの支持構造の斜視図である。具体的には、図2では、図1に示した第1の床パネル11、第2の床パネル12、及び、壁パネル40の図示を省略している。また、図3は、図1中、A-A線で示す断面図であり、図4は、図1中、B-B線で示す端面図である。
【0017】
これらの図を参照して説明すると、支持構造100において、一対の床受け梁1,2は、所定の間隔を設けて互いに平行に配置されている。ここで、一対の床受け梁1,2の材質や形状としては、特に限定されず、例えば、H形鋼等の形鋼からなる鉄骨梁及び矩形断面を有する木質系の梁等を用いることができる。
【0018】
本実施形態の一対の床受け梁1,2は、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対して直交するように配置された第1~第3の連結梁21~23によって連結されている。なお、本実施形態において、第1~第3の連結梁21~23は、一対の床受け梁1,2と同様、軸組架構10を構成する軸組部材である。また、第1~第3の連結梁21~23の短辺側の両端部は、連結部材25を介して、それぞれ床受け梁1及び床受け梁2に連結されている。ここで、第1~第3の連結梁21~23の材質や形状としては、特に限定されず、例えば、H形鋼等の形鋼からなる鉄骨梁及び矩形断面を有する木質系の梁等を用いることができる。
【0019】
本実施形態の第1の床パネル11及び第2の床パネル12は、それぞれ、矩形形状の板状部材である。第1の床パネル11は、第1の連結梁21と第2の連結梁22との間に配置されており、第1の床パネル11の短辺側の両端部は、それぞれ床受け梁1及び床受け梁2の上面に載置されて支持されている。また、第2の床パネル12は、第2の連結梁22と第3の連結梁23との間に配置されており、第2の床パネル12の短辺側の両端部は、それぞれ床受け梁1及び床受け梁2の上面に載置されて支持されている。ここで、第1の床パネル11及び第2の床パネル12の材質としては、特に限定されず、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)、プレキャストコンクリート等を用いることができる。
【0020】
壁受け部材30は、壁パネル40を支持するとともに前後方向の位置決めを行うものである。本実施形態の壁受け部材30は、壁受け部材30の延びる方向が、一対の床受け梁1,2が延びる方向と平行となり、且つ、第1の床パネル11及び第2の床パネル12を跨ぐように配置されている。また、本実施形態の壁受け部材30は、断面視で逆T字状に形成されており、壁パネル40の下端面に当接可能な第1の長片部31と、壁パネル40の下端面が第1の長片部31に当接した状態で壁パネル40の建物内部側の面に当接可能な第2の長片部32とを有している。壁受け部材30の材質としては、特に限定されず、例えば、壁パネル40を支持可能な強度を有する鋼材を用いることができる。
【0021】
本実施形態の支持構造100では、第1~第3の連結梁21~23それぞれの上面には、断面視がハット状に形成された第1~第3の高さ調整部材51~53がボルト等の締結部材(図示省略)によって取り付けられている。本実施形態の第1~第3の高さ調整部材51~53は、壁受け部材30の高さを調整するものである。具体的には、第1~第3の高さ調整部材51~53は、壁受け部材30が第1の床パネル11及び第2の床パネル12の上方で壁パネル40を支持するように、壁受け部材30を嵩上げするものである。本実施形態の壁受け部材30は、第1~第3の高さ調整部材51~53それぞれの凸部上面に、ボルト等の締結部材(図示省略)により固定されている。ここで、第1~第3の高さ調整部材51~53としては、壁受け部材30の高さを調整できるものであれば特に限定されず、例えば、鋼板を折り曲げ加工することで形成することができる。
【0022】
本実施形態の壁パネル40は、バルコニーと居室とを区画する外壁として用いられる。ここで、壁パネル40の材質としては、特に限定されず、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)、プレキャストコンクリート等を用いることができる。なお、ここでの図示は省略するが、壁パネル40の上端側は、軸組架構を構成する上階の梁に取り付けられた位置決め部材によって前後方向の位置決めがなされている。
【0023】
本実施形態の支持構造100によれば、第1の床パネル11及び第2の床パネル12の上方で壁パネル40が支持される。そのため、壁パネル40の位置で床パネルを分断しなくてよい。これにより、例えばバルコニー側の床面と居室側の床面を構成する場合に、別々の床パネルとしなくてよい。したがって、支持構造100によれば、部材の数を削減して、簡易な構成で壁パネル40を支持することができる。
【0024】
なお、本実施形態の壁パネルの支持構造は、2つの床パネルを有するものであったが、これに限定されず、一対の床受け梁に架け渡されて支持されている少なくとも1つの床パネルを有していればよい。
【0025】
さらに、本実施形態の壁パネルの支持構造において、壁受け部材は、一対の床受け梁を連結する連結梁に支持されているが、壁受け部材は、連結梁とは別の、他の軸組部材、例えば、壁パネルの配列方向に設置された柱等に支持されていてもよい。また、壁受け部材は、例えば後述の第1の変形例に示すように、軸組部材としての一対の床受け梁によって支持される構成であってもよい。なお、図1等に示したように壁受け部材が連結梁に支持される構成とすれば、連結梁間の距離を小さくすることで壁受け部材の支持間隔を狭めることができ、壁受け部材の鉛直方向の曲げ剛性を小さくできる。つまり、壁受け部材の断面を小さくしたり、壁受け部材の肉厚を薄くしたりした場合でも、壁受け部材を安定的に支持することができる。
【0026】
さらに、本実施形態の壁パネルの支持構造において、壁受け部材は、連結梁に、高さ調整部材を介して間接的に支持されているが、壁受け部材は、高さ調整部材を介さずに、連結梁や一対の床受け梁等に直接的に支持されていてもよい。
【0027】
さらに、本実施形態の壁パネルの支持構造において、壁受け部材の延びる方向は、一対の床受け梁が延びる方向に対して平行であるが、壁受け部材は、少なくとも平面視で床パネルを跨ぐように延在していればよく、後述の第1の変形例に示すように、一対の床受け梁が延びる方向に対して平行でなくてもよい。
【0028】
さらに、本実施形態において、壁パネルはバルコニーと居室とを区切る外壁であったが、これに限定されず、例えば、建物の居室と居室とを区切る間仕切り壁であってもよい。
【0029】
さらに、本発明に係る壁パネルの支持構造は、例えば後述の第2の変形例に示すように、上述した実施形態で説明した部材に加えて、更に他の部材を有していてもよい。
【0030】
<第1の変形例>
ここで、第1の実施形態に係る壁パネルの支持構造の第1の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。なお、本変形例に係る壁パネルの支持構造は、一対の床受け梁に対する壁受け部材の配置が異なるとともに、第1の連結梁21及び第3の連結梁23(図1参照)を備えないこと以外は、第1の実施形態で示した壁パネルの支持構造と基本的な構成は同じである。そこで、以下では、第1の実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を用いてその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0031】
図5に示すように、第1の変形例に係る壁パネルの支持構造200(以下、「支持構造200」と略記する。)において、第1の高さ調整部材51は、床受け梁1の上面に取り付けられている。また、第2の高さ調整部材52は、第2の連結梁22の長手方向略中央の上面に取り付けられている。さらに、第3の高さ調整部材53は、床受け梁2の上面であって第1の高さ調整部材51と第2の高さ調整部材52とを結ぶ線上に取り付けられている。これにより、壁受け部材30は、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対して非平行であり、且つ、平面視で第1の床パネル11及び第2の床パネル12を跨ぐように延在している。
【0032】
本変形例の支持構造200によれば、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対し、壁パネル40の壁面に沿う方向が非平行となるように壁パネル40を設ける場合でも、第1の床パネル11及び第2の床パネル12を分断しなくてよく、壁パネル40を支持するためだけに梁を設ける必要がない。そのため、本変形例の壁パネルの支持構造200によれば、部材の点数を削減して、簡易な構成で壁パネル40を支持することができる。なお、本変形例に示す壁受け部材30は、一対の床受け梁1,2、及び、第2の連結梁22、により支持されているが、一対の床受け梁1,2のみにより支持される構成(この場合、第2の連結梁22自体不要となる)であってもよい。
【0033】
<第2の変形例>
続いて、第1の実施形態に係る壁パネルの支持構造の第2の変形例について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る壁パネルの支持構造の概略構成の一部を示す拡大断面図である。なお、図6に示す壁パネルの支持構造は、後述する水平荷重伝達手段を更に有する以外は、第1の実施形態で示した壁パネルの支持構造と基本的な構成は同じである。そこで、以下では、第1の実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を用いてその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0034】
図6に示すように、第2の変形例に係る壁パネルの支持構造300(以下、「支持構造300」と略記する。)は、軸部材60から構成された水平荷重伝達手段を有している。軸部材60は、一方端が壁受け部材30に連結され、他方端が第1の床パネル11に挿入されている。ここで、軸部材60としては、例えば、金属ピンやボルト等を用いることができる。
【0035】
本変形例の支持構造300によれば、壁パネル40に対し水平荷重が作用した場合、この水平荷重は、壁受け部材30、及び、この壁受け部材30に連結された軸部材60を介して、第1の床パネル11へと伝達される。したがって、支持構造300によれば、壁パネル40に作用した水平荷重を、壁受け部材30に加えて、第1の床パネル11で負担することができる。これによれば、壁受け部材30の水平方向の曲げ剛性を小さくできる。つまり、壁受け部材30の断面を小さくしたり、壁受け部材30の肉厚を薄くしたりすることができる。したがって、本変形例の支持構造300によれば、壁受け部材30を、より小型化、薄型化できる。
【0036】
なお、上述した第2の変形例に係る支持構造300では、水平荷重伝達手段を軸部材60から構成しているが、これに限定されず、水平荷重伝達手段は、壁受け部材と床パネルとを連結し、壁パネルが受けた水平荷重を床パネルへと伝達することが可能な部材であればよい。
【0037】
また、上述した第2の変形例に係る支持構造300では、軸部材60は第1の床パネル11に挿入されているが、軸部材60は、第2の床パネル12に挿入されていてもよい。また、軸部材60は、第1の床パネル11及び第2の床パネル12の双方に挿入されていてもよい。更に、各床パネルに対して複数の軸部材60が挿入されてもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
続いて、図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る壁パネルの支持構造の全体構成について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る壁パネルの支持構造の概略構成を示す斜視図である。なお、本実施形態に係る壁パネルの支持構造は、第1の実施形態で示した壁パネルの支持構造を構成する部材に加えて、更に、一対の床受け部材を有する以外は、第1の実施形態で示した壁パネルの支持構造と基本的な構成は同じである。そこで、以下では、第1の実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を用いてその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0039】
図7に示すように、本実施形態に係る壁パネルの支持構造400(以下、「支持構造400」と略記する。)は、図1等で示した支持構造100を構成する部材に加えて、更に、一対の床受け部材71,72、及び、一対の73,74を有している。一対の床受け部材71,72は、一対の床受け梁1,2の間において、第1の床パネル11が落とし込まれるようにして第1の床パネル11の両端部を支持する。また、一対の床受け部材73,74は、一対の床受け梁1,2の間において、第2の床パネル12が落とし込まれるようにして第2の床パネル12の両端部を支持する。
【0040】
次に、支持構造400の詳細な構成について、図7に加えて図8及び図9を参照して説明する。図8は、図7に対応する図であって、図7に示した部材の一部の図示を省略した、壁パネルの支持構造の斜視図である。具体的には、図8では、図7に示した第1の床パネル11、第2の床パネル12、及び、壁パネル40の図示を省略している。また、図9は、図7中、C-C線で示す断面図である。
【0041】
これらの図を参照して説明すると、本実施形態の一対の床受け部材71,72、及び、一対の床受け部材73,74は、それぞれ、断面視でL字状に形成されている。そして、一対の床受け部材71,72は、互いに対向するようにして、第1の連結梁21と第2の連結梁22との間において、一対の床受け梁1,2それぞれの側面にビス等の締結部材(図示省略)によって取り付けられている。一対の床受け部材71,72それぞれは、第1の床パネル11の下面を支持する支持面を有し、この支持面が、一対の床受け梁1,2の上面よりも鉛直方向下方に位置している。そのため、一対の床受け部材71,72は、一対の床受け梁1,2の間において、第1の床パネル11が落とし込まれるようにして第1の床パネル11の両端部を支持することができる。また、一対の床受け部材73,74は、互いに対向するようにして、第2の連結梁22と第3の連結梁23との間において、一対の床受け梁1,2それぞれの側面にビス等の締結部材(図示省略)によって取り付けられている。一対の床受け部材73,74それぞれの、第2の床パネル12の下面を支持する支持面についても、上述した一対の床受け部材71,72それぞれの支持面と同様、一対の床受け梁1,2の上面よりも鉛直方向下方に位置している。ここで、一対の床受け部材71,72、及び、一対の床受け部材73,74は、例えば、鋼板を折り曲げ加工することで形成することができる。
【0042】
本実施形態の支持構造400によれば、第1の床パネル11及び第2の床パネル12をそれぞれ落とし込むように支持することで、壁パネル40の下端面から、壁受け部材30を支持する軸組部材としての第1~第3の連結梁21~23の上面までの鉛直方向の距離を短くすることができる。これにより、壁受け部材30及び第1~第3の高さ調整部材51~53の鉛直方向の長さを小さくできる。したがって、支持構造400によれば、第1の実施形態で示した支持構造100(図1等参照)と比較して、壁パネル40をより安定した状態で支持することができる。なお、本実施形態では、壁受け部材30が第1~第3の連結梁21~23により支持されているが、壁受け部材30が一対の床受け梁1,2により支持される場合(図5参照)でも、同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る支持構造400では、壁受け部材30が延びる方向が、一対の床受け梁1,2が延びる方向と平行であるが、壁受け部材30は、第1の実施形態の第1の変形例に示したように、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対して非平行であり、且つ、平面視で第1の床パネル11及び第2の床パネル12を跨ぐように延在していてもよい。このような構成とすれば、一対の床受け梁1,2の間で第1の床パネル11及び第2の床パネル12が落とし込まれるようにするとともに、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対して、壁パネル40を斜めに配置することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
最後に、図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る壁パネルの支持構造について説明する。図10は、本発明の第3の実施形態に係る壁パネルの支持構造における、軸組架構の概略構成を示す斜視図である。なお、以下では、上述した各実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0045】
本実施形態において、建物は、所定の平面モジュールに基づき構築されている。ここで、平面モジュールとは、建築において設計上の基本寸法を意味し、建物の各部分を一定の大きさの倍数で統一するときの基準となる大きさを意味する。
【0046】
図10に示すように、本実施形態の軸組架構90は、一対の床受け梁1,2と、一対の床受け梁1,2を連結する第1~第3の連結梁21~23とから構成されており、上述した所定の平面モジュールに基づき格子状に配された基準線(図中、一点鎖線で示すL1~L3、及び、一点鎖線で示すl1~l3)の交点位置に、ボルト孔91~99からなるボルト孔群を有している。
【0047】
そして、本実施形態において、壁受け部材30(図1等参照)は、ボルト孔群を構成するボルト孔91~99のうちの任意のボルト孔を用いて軸組架構90にボルト固定されている。なお、壁受け部材30は、第1の実施形態で示した第1~第3の高さ調整部材51~53(図1等参照)等を介して軸組架構90に間接的にボルト固定されていてもよく、軸組架構90に直接的にボルト固定されていてもよい。また、基準線の各交点上に設けられるボルト孔は複数(例えば1箇所に4つ)設けられていてもよい。
【0048】
本実施形態によれば、ボルト孔群から任意のボルト孔(ボルト孔91~99のいずれか)を選択し、選択されたボルト孔を用いて壁受け部材30を軸組架構90にボルト固定することで、壁受け部材30を容易に取り付けることができる。本実施形態によれば、例えば図5に示したように、一対の床受け梁1,2が延びる方向に対して壁パネル40の壁面に沿う方向が非平行となるように壁パネル40を設ける場合でも、施工現場で溶接等の作業を行うことなく、壁受け部材30を容易に取り付けることができる。
【0049】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,2 床受け梁
10 軸組架構
11 第1の床パネル
12 第2の床パネル
21 第1の連結梁
22 第2の連結梁
23 第3の連結梁
25 連結部材
30 壁受け部材
31 第1の長片部
32 第2の長片部
40 壁パネル
51 第1の高さ調整部材
52 第2の高さ調整部材
53 第3の高さ調整部材
60 軸部材
71~74 床受け部材
90 軸組架構
91~99 ボルト孔
100,200,300,400 支持構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10