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特許7441097金属検出器を動作させる方法、および金属検出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】金属検出器を動作させる方法、および金属検出器
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/10 20060101AFI20240221BHJP
   G01N 27/72 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01V3/10 F
G01N27/72
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020062228
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2020190547
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】19169834
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511241516
【氏名又は名称】メトラー-トレド・セーフライン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】イーフェイ・ジャオ
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542424(JP,A)
【文献】特開平05-232247(JP,A)
【文献】特開2016-075484(JP,A)
【文献】特開2000-314776(JP,A)
【文献】米国特許第05691640(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/10
G01N 27/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの動作周波数(fTX)を有する送信信号(s1)を供給する送信装置(1)に接続された駆動コイル(21)と、アンバランス信号を含む関連した受信信号(s3)を処理し、復調された前記アンバランス信号のデジタル同相成分および直交成分(d、d)を供給する受信装置(3)に出力信号(s2)を供給する第1および第2の検出コイル(22、23)と、を有する平衡コイルシステム(2)を備える金属検出器を動作させる方法であって、
> 前記アンバランス信号を補償するために使用される補償装置(5)に制御データを供給するために、信号コントローラ(4)において前記アンバランス信号の前記デジタル同相成分およびデジタル直交成分(d、d)を処理するステップと、
> 前記アンバランス信号の前記デジタル同相成分(d)を前記アンバランス信号についての同相制御成分(dCI)を供給する第1の制御装置(41I)に加えるとともに、前記アンバランス信号の前記デジタル直交成分(d)を前記アンバランス信号についての直交制御成分(dCQ)を供給する第2の制御装置(41Q)に加えるステップと、
> 前記補償装置(5)において、前記少なくとも1つの動作周波数(fTX)に対応する前記アンバランス信号の周波数を有するとともに、前記アンバランス信号について供給される前記同相制御成分および前記直交制御成分(dCI、dCQ)に応じた位相および大きさを有する、デジタル補償信号(dCOMP)を合成するステップと、
> 前記デジタル補償信号(dCOMP)をアナログ補償信号(aCOMP)に変換するステップと、
> 前記アンバランス信号を補償するために、前記アナログ補償信号(aCOMP)を前記平衡コイルシステム(2)または前記受信信号(s2、s3)に加えるステップと、
を含む、金属検出器を動作させる方法。
【請求項2】
異なる動作周波数(fTX-A、fTX-B)に関する複数のアンバランス信号についてのアナログ補償信号(aCOMP)を生成するステップを含む、請求項1に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項3】
前記受信装置(3)の信号経路における、もしくは前記信号コントローラ(4)における前記アンバランス信号を他の信号から分離するために、少なくとも1つのローパスフィルタ(40I;40Q)を用いるステップ、および/または前記アンバランス信号の前記デジタル同相成分(d)を第1のローパスフィルタ(40I)を介して前記第1の制御装置(41I)に加えるとともに、前記アンバランス信号の前記デジタル直交成分(dCQ)を第2のローパスフィルタ(40Q)を介して前記第2の制御装置(41Q)へ加えるステップを含む、請求項1または2に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項4】
前記第1の制御装置(41I)および前記第2の制御装置(41Q)において制御項(Kp、Ki、Kd)を使用するステップを含み、前記制御項(Kp、Ki、Kd)は、加えられた前記デジタル同相制御成分(dCI)および前記デジタル直交制御成分(dCQ)に対して比例、積分、および微分の影響を及ぼす、請求項1、2または3に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項5】
> 前記信号コントローラ(4)において、外乱信号のデジタル同相成分およびデジタル直交成分、ならびに周波数を決定するステップと、
> 前記外乱信号の前記デジタル同相成分および前記デジタル直交成分に基づいて、前記外乱信号についてのデジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分を決定または計算するステップと、
> 前記補償装置(5)において、前記外乱信号の前記デジタル同相成分およびデジタル直交成分、ならびに前記外乱信号の前記周波数に関する周波数情報に応じて、デジタル補正信号(dCORR)を合成するステップと、
> 前記デジタル補正信号(dCORR)を前記デジタル補償信号(dCOMP)に加算するステップと
を含む、請求項1から4の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項6】
> 前記デジタル同相制御成分(dCI)および前記デジタル直交制御成分(dCQ)を位相制御信号(cPH)および大きさ制御信号(c)に変換するステップと、
> 前記位相制御信号(cPH)および前記大きさ制御信号(c)ならびに周波数制御信号(f)を前記補償装置(5)に設けられるシンセサイザ(51)に供給するステップと、
> 前記周波数制御信号(f)に応じた周波数を有するとともに、前記位相制御信号(cPH)に応じた位相を有する周波数信号(f)を生成するように前記シンセサイザ(51)を制御するステップと、
> 乗算器(52)において、前記デジタル補償信号(dCOMP)を供給するために、供給される前記大きさ制御信号(c)に応じて、生成された前記周波数信号(f)の大きさを調整するステップと、
を含む、請求項1から5の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項7】
> 前記デジタル同相制御成分(dCI)および前記デジタル直交制御成分(dCQ)ならびに周波数制御信号(f)を前記補償装置(5)に供給するステップと、
> 前記周波数制御信号(f)に対応する同相周波数成分(fGI)および直交周波数成分(fGQ)を生成するようにシンセサイザ(51)を制御するステップと、
> 同相乗算器(52I)において、前記デジタル補償信号(dCOMP)のデジタル同相補償成分(dCOMP-I)を供給するために、前記デジタル同相制御成分(dCI)に応じて、生成された前記同相周波数成分(fGI)の大きさを調整し、直交乗算器(52Q)において、前記デジタル補償信号(dCOMP)のデジタル直交補償成分(dCOMP-Q)を供給するために、前記デジタル直交制御成分(dCQ)に応じて前記直交周波数成分(fGQ)の大きさを調整するステップと、
> 前記デジタル補償信号(dCOMP)を供給するために、前記デジタル補償信号(dCOMP-I)の前記デジタル同相補償成分(dCOMP-I)と、前記デジタル補償信号(dCOMP)の前記デジタル直交補償成分(dCOMP-Q)とを組み合わせるステップと、
を含む、請求項1から5の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項8】
組み合わされたデジタル補償信号(dCOMP)を供給するために、関連したアンバランス信号ごとに合成されたデジタル補償信号(dCOMP-A、dCOMP-B)を組み合わせるステップと、組み合わされた前記デジタル補償信号(dCOMP)を前記アナログ補償信号(aCOMP)に変換するステップと、を含む、請求項1から7の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項9】
少なくとも1つの周波数信号(fG-A、fG-B)またはその同相周波数成分(fGI)および直交周波数成分(fGQ)の波形のデータを直接デジタル合成することによって、またはこれらを記憶装置もしくはルックアップテーブル(51L)もしくは任意の波形生成器から連続的に読み出すことによって、前記少なくとも1つの周波数信号(fG-A、fG-B)またはその同相周波数成分(fGI)および直交周波数成分(fGQ)を生成するステップを含む、請求項1から8の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項10】
前記送信装置(1)において生成された、対応する動作周波数(fTX-A、fTX-B)を有する位相および周波数に関して、前記補償装置(5)において生成される、前記少なくとも1つの生成された周波数信号(fG-A、fTXG-B)またはその同相周波数成分(fGI)および直交周波数成分(fGQ)を同期させるステップを含む、請求項6または請求項9に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項11】
前記アナログ補償信号(aCOMP)を前記平衡コイルシステム(2)の補償コイル(24)に加えるステップ、または前記アナログ補償信号(aCOMP)を前記受信装置(3)の入力信号(s2)に、もしくは好ましくは加算モジュールもしくは減算モジュール(33)を介して前記受信装置(3)の信号経路中の前記受信信号(s3)に加えるステップを含む、請求項1から9の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項12】
> 前記金属検出器を初期化するステップと、
> 好ましくは製品が測定されない第1の制御モードに前記金属検出器を設定するステップと、
> 前記第1の制御モードにおいて、第1のセットの制御項(Kp、Ki、Kd)を前記第1の制御装置(41I)および前記第2の制御装置(41Q)に加えるステップであって、前記制御項(Kp、Ki、Kd)は、前記デジタル同相制御成分(dCI)および前記デジタル直交制御成分(dCQ)に第1の補正因子が供給されるように選択される、加えるステップと、
> 定められた期間にわたって、もしくは前記アンバランス信号が所与の閾値を超える限り、前記第1の制御モードを維持し、前記定められた期間が経過した後、もしくは前記アンバランス信号が前記所与の閾値未満に低下した後に、製品が測定される動作モードに入るステップと、または
> 定められた期間にわたって、もしくは前記アンバランス信号が所与の閾値を超える限り、前記第1の制御モードを維持し、前記定められた期間が経過した後、もしくは前記アンバランス信号が前記所与の閾値未満に低下した後に、製品が測定され前記アンバランス信号がさらに観察および再利用される第2の制御モードに入るステップと、
を含む、請求項1から11の一項に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項13】
前記第1の制御モードにおいて決定され、好ましくは記憶される前記同相制御成分(dCI)および前記直交制御成分(dCQ)、または前記デジタル補償信号(dCOMP)または前記アナログ補償信号(aCOMP)をさらに加えるステップを含む、請求項12に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項14】
前記第2の制御モードにおいて、第2のセットの制御項(Kp、Ki、Kd)を前記第1の制御装置(41I)および前記第2の制御装置(41Q)に加えるステップであって、前記制御項(Kp、Ki、Kd)は、前記デジタル同相制御成分(dCI)および前記デジタル直交制御成分(dCQ)に前記第1の補正因子よりも低い第2の補正因子が供給され、低減された補正をもたらすように選択される、ステップを含む、請求項12に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項15】
前記アンバランス信号を監視するステップと、前記アンバランス信号が所定の閾値を超える場合に、前記第1の制御モードに戻るステップとを含む、請求項12、13または14に記載の金属検出器を動作させる方法。
【請求項16】
請求項1から15の一項に記載の方法により動作する金属検出器。
【請求項17】
少なくとも1つの動作周波数(fTX)を有する送信信号(s1)を供給する送信装置(1)に接続された駆動コイル(21)と、アンバランス信号を含む受信信号(s3)を処理し、復調された前記アンバランス信号のデジタル同相成分および直交成分(d、d)を、前記アンバランス信号を補償するように設計された補償装置(5)に制御データを供給するように設計された信号コントローラ(4)に供給するように設計された受信装置(3)に出力信号(s2)を供給する第1および第2の検出コイル(22、23)と、を有する平衡コイルシステム(2)を備え、
a)前記アンバランス信号の前記デジタル同相成分(d)は、前記アンバランス信号についての同相制御成分(dCI)を供給するように設計された第1の制御装置(41I)に加えることができ、前記アンバランス信号の前記デジタル直交成分(d)は、前記アンバランス信号についての直交制御成分(dCQ)を供給するように設計された第2の制御装置(41Q)に加えることができ、
b)前記補償装置(5)は、
> 前記少なくとも1つの動作周波数(fTX)に対応する前記アンバランス信号の周波数を有するとともに、前記アンバランス信号について供給される前記同相制御成分および前記直交制御成分(dCI、dCQ)に応じた位相および大きさを有する、デジタル補償信号(dCOMP)を合成し、
> 前記デジタル補償信号(dCOMP)をアナログ補償信号(aCOMP)に変換し、
> 前記アンバランス信号を補償するために、前記アナログ補償信号(aCOMP)を前記平衡コイルシステム(2)の補償コイル(24)に、または前記受信装置(3)の入力信号(s2)に、または加算モジュールもしくは減算モジュール(33)を介して前記受信装置(3)の信号経路中の前記受信信号(s3)に加える
ように設計される、請求項16に記載の金属検出器。
【請求項18】
前記信号コントローラ(4)および前記補償装置(5)は、異なる動作周波数(fTX-A、fTX-B)によって生じるアンバランス信号についてのデジタル補償信号(dCOMP)を生成するための複数の制御チャンネルを備える、請求項16または17に記載の金属検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、1つまたは複数の動作周波数(operating frequency)を使用する金属検出器(metal detector)を動作させる方法、および、この方法により動作する金属検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]例えば米国特許第8587301(B2)号において説明されているような産業用金属検出器は、製品中の金属汚染物を検出するために使用される。適切に設置され、動作させられるとき、この金属検出器は、金属汚染を減少させ、食品安全性を改善するのを助ける。最新の金属検出器は、「平衡コイルシステム(balanced coil system)」を備えるサーチヘッドを利用する。この設計の検出器は、生鮮品および冷凍食品などの多種多様な製品における、鉄鋼、非鉄鋼、およびステンレス鋼を含むあらゆる金属汚染物のタイプを検出することができる。
【0003】
[0003]「平衡コイル」の原理に従って動作する金属検出器は、典型的には、非金属フレーム上に巻かれる1つの駆動コイル(drive coil)および2つの同一の検出コイル(detection coils)の3つのコイルを備え、各々は他方に正確に平行である。典型的には中間の中心に配置される駆動コイルを取り囲む検出コイルは同一であるので、理論的には同一の電圧が、駆動コイルに誘導される。システムが平衡であるときにゼロである出力信号を受信するために、第1の検出コイルは、逆方向の巻線を有する第2の検出コイルと直列に接続される。したがって、理想的な条件の下で、同一振幅および逆極性である検出コイルに誘導される電圧は、システムが平衡にあり、観察される製品中に汚染物が存在しない場合には、互いに相殺される。
【0004】
[0004]しかしながら、金属の粒子がコイル配置を通過するとすぐに、電磁場は、まず一方の検出コイルの近くで乱され、次いで他方のコイルの近くで乱される。金属の粒子は検出コイルを通じて運ばれるが、各検出コイルに誘導される電圧は、(典型的には数ナノボルトで)変化する。この平衡の変化により、受信装置において観察される製品中の金属汚染物の存在を検出するために処理され、増幅され、続いて使用される信号が検出コイルの出力に生じる。
【0005】
[0005]受信装置では、通常、入力信号は、同相成分と直交成分に分けられる。これらの成分で構成されるベクトルは、大きさおよび位相角を有し、これは、コイルシステムを通じて運ばれる製品および汚染物にとって一般的である。金属汚染物を識別するために、「製品の影響」は、除去または減少される必要がある。製品の位相が知られている場合、次いで、対応する信号ベクトルは、金属汚染物に由来する信号の検出のためにより高い感度となるように減少させられ得る。
【0006】
[0006]信号スペクトルから不要な信号を排除するために適用される方法は、被検出信号の位相が異なるように金属汚染物、製品、および他の外乱が磁場に対して異なる影響を及ぼすという事実を活用する。高い伝導性を有する材料は、より高い抵抗信号成分およびより小さい抵抗信号成分を有する信号を引き起こす。高い透磁率を有する材料は、より小さい抵抗信号成分およびより高い抵抗信号成分を有する信号を引き起こす。フェライトによって引き起こされる信号は、主にリアクティブであり、一方、ステンレス鋼によって引き起こされる信号は、主にレジスティブである。典型的には、伝導性である製品は、強い抵抗成分を有する信号を引き起こす。製品または汚染物が金属検出器を通じて運ばれるとき、抵抗信号成分と抵抗信号成分の間の信号ベクトルの位相角は、通常一定のままである。
【0007】
[0007]製品または汚染物が存在しない場合、理想的な条件の下で、平衡コイルシステムは、出力信号を供給しないことを上記で説明されている。しかしながら、EP2812734B1に記載されるように、同一の検出コイルが工場現場においてほぼ完全な平衡状態に設定されるという事実にも関わらず、検出コイルシステムは、試験品または汚染物が存在しない平衡状態にならない場合がまだあり、例えば、完全に受け入れることができる食品製品が棄却される結果となる。検出器の平衡は、システムに対する機械的衝撃により、周囲条件の変化により、検出器の近くに位置する金属製物体により、または構成部品の緩和(relaxation)または経年変化により乱され得る。金属検出システムの高感度と、コイルシステムの出力電圧に対する汚染物の微小な影響とを考慮すると、アンバランスは、特に限られた電圧信号範囲にわたって専ら動作する入力増幅器および位相検出器について、受信チャンネルの飽和を引き起こし得る。そのようなアンバランスを除去するために、駆動信号から得られる調整可能な平衡信号は、検出器の出力信号と組み合わされ、組み合わされた出力信号が補償されるまで変化する。
【0008】
[0008]出力信号および調整可能な平衡信号は、組み合わされる前に、個々にフィルタ処理を受けて1つまたは複数の高調波を除去する。さらに、調整可能な平衡信号は、例えば調整可能なポテンショメータによって、調整することができる。典型的には、最高精度で動作しなければならないこの補償回路は、高価な低ノイズ構成部品を必要とする。さらに、補償回路は、アンバランスに反対に作用するだけでなく、例えばポテンショメータによって、検出システムにノイズの導入もする。さらに、これまでに適用された補償回路は、柔軟性がなく、駆動信号の動作周波数に関するアンバランスに限定される。動作周波数に直接関連していない他の外乱は、補正できない。またさらに、特にポテンショメータを使用するとき、調整プロセスは、かなりの時間を必要とする可能性があり、アンバランス信号を完全には相殺できない。
【0009】
[0009]米国特許第5691640(A)号には、金属検出器用の補償回路が開示されており、この補償回路も、駆動信号から得られる信号を使用する。これらの信号は、位相検出器に加えられるとともに、乗算器に加えられ、これに制御信号が加えられる。乗算器の出力信号は、フィードバック絶縁変圧器を介して受信段の入力に加えられる。そのような複雑かつ高価な補償回路の欠点は、上述したものと同じである。この回路も、さらなるアンバランスおよびノイズが導入されないように正確に設計されなければならない高価な低ノイズ構成部品および絶縁変圧器を必要とする。さらに、また補償回路は、柔軟性がなく、駆動信号の動作周波数に関するアンバランスに限定される。動作周波数に直接関連していない他の外乱は、補正できない。さらに、この回路は、選択した動作周波数に従ってその特性を変化させ得る。したがって、導入される可能性のある回路の複雑さおよびさらなるアンバランスにより、特にそれらが同時に加えられる場合、動作周波数が高い数字に増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第8587301(B2)号
【文献】EP2812734B1
【文献】米国特許第5691640(A)号
【文献】米国特許第5892692(A)号
【文献】米国出願公開第2007067123(A1)号
【非特許文献】
【0011】
【文献】https://www.nutaq.com/blog/digital-iq-demodulator-high-speed-adc
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/Direct_digital_synthesis
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/CORDIC
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[0010]したがって、本発明は、金属検出器を動作させる改善された方法、および、この方法により動作する改善された金属検出器を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[0011]本発明の方法により、受信チャンネルにおける金属検出器の任意の段に、特にコイルシステムに現れ、かつこれらの段の外側または内側の影響によって引き起こされるアンバランスを、ほとんど手間をかけずに正確に排除することを可能にするものである。
【0014】
[0012]本発明の補償装置は、アンバランスだけでなく、金属検出器の性能に悪影響を及ぼす外乱も補正するように柔軟でありかつ容易に適合可能であるものである。詳細には、動作周波数から独立して現れる様々な外乱を排除することを可能にするものである。
【0015】
[0013]本発明の金属検出器は、費用のかかる構成部品および複雑な補償回路を要求しないようにするものである。
[0014]さらに、本発明の補償装置は、アンバランスを正確に除去するが、ノイズまたは外乱それ自体をシステムに導入しないものである。
【0016】
[0015]本発明の第1の広い態様では、少なくとも1つの動作周波数を有する送信信号を供給する送信装置に接続された駆動コイルと、典型的にはアンバランス信号を含む関連した受信信号を処理し復調されたアンバランス信号のデジタル同相成分および直交成分を供給する受信装置に出力信号を供給する第1および第2の検出コイルとを有する平衡コイルシステムを備える金属検出器を動作させる方法を提供する。金属検出器は、金属検出器によって検査され、この目的のために金属検出器の平衡コイルシステム通じて移送される製品の中の汚染物、特に金属汚染物を検出するように設計される。
【0017】
[0016]本発明によれば、方法は、
> アンバランス信号を補償するために使用される補償装置に制御データを供給するために信号コントローラにおいてアンバランス信号のデジタル同相成分およびデジタル直交成分を処理するステップと、
> アンバランス信号のデジタル同相成分をアンバランス信号についての同相制御成分を供給する第1の制御装置に加えるとともに、アンバランス信号のデジタル直交成分をアンバランス信号についての直交制御成分を供給する第2の制御装置に加えるステップと、
> 補償装置において、少なくとも1つの動作周波数に対応するアンバランス信号の周波数を有するとともに、アンバランス信号について供給される同相制御成分および直交制御成分に応じた位相および大きさを有する、デジタル補償信号を合成するステップと、
> デジタル補償信号をアナログ補償信号に変換するステップと、
> アンバランス信号を補償するために、アナログ補償信号を平衡コイルシステムまたは受信信号に加えるステップと、を含む。
【0018】
[0017]本発明の方法によれば、アンバランス信号の同相成分および直交成分が検出され、関連した同相制御成分および直交制御成分が、制御装置において決定または計算される。これらの同相制御成分および直交制御成分に基づいて、補償信号は、アンバランス信号を補償するのに適した周波数、位相、および大きさと合成される。したがって、少なくとも1つの制御ループは、サイズを減少させ、最終的に任意のアンバランス信号を相殺させるように、制御信号の負のフィードバックを用いて形成される。理想的には、補償信号は、アンバランス信号と同一に合成され、信号経路へのアンバランス信号を基準にして180°位相がずれて加えられる。現実には、好ましくは、PIDコントローラは、補償装置に供給される供給されたデジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分に対して比例、積分、および微分の影響を及ぼす制御項を用いてアンバランス信号を完全に補償するように使用される。
【0019】
[0018]したがって、本発明によれば、アンバランス信号のデジタル同相成分およびデジタル直交成分は、デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分を送り届けるように処理される。アンバランス信号およびその成分は、異なるやり方で獲得され得る。アンバランス信号は、金属検出器が好ましくはいかなる製品も平衡コイルシステムを通じて移送されずに動作するときに観察され得る。製品の移送は、合成された補償信号が最適化されるまで遅らされ得る。しかしながら、製品信号が知られている場合、または異なる周波数範囲内にある場合、次いで、アンバランス信号を得るために、製品は測定されてもよく、製品信号は、受信信号から減算または分離され得る。したがって、第1の制御モードまたは較正モードにおいて、アンバランス信号は測定され、対応する補償信号が合成され、それを用いてアンバランス信号は、完全にまたは少なくとも一部排除される。
【0020】
[0019]金属検出器の初期較正が第1の制御モードまたは較正モードで実行された後、金属検出器は、通常動作モードに切り替えることができ、製品は検査され、アンバランス信号は記憶されていた合成された補償信号によって排除される。この動作モードでは、前記アンバランス信号の変化は無視される。
【0021】
[0020]好ましい実施形態では、金属検出器は、第1の制御モードが終わった後に第2の制御モードへ切り替えられる。第2の制御モードでは、製品は検査され、残りのアンバランス信号がさらに観察およびさらに排除される。このために、アンバランス信号は、例えばアンバランス信号が通過することを可能にするフィルタ段によって、受信信号から分離され得る。
【0022】
[0021]通常動作モードではまたは第2の制御モードでは、好ましくは、アンバランス信号は監視され、金属検出器は、アンバランス信号が所定の閾値を超える場合、第1の制御モードに戻される。第1の制御モードでは平衡コイルシステムを通じた製品の、移送は、合成された補償信号が再び最適化されるまで中断されるのが好ましい。典型的には、この最適化は、数秒以内に実行され得る。その後、金属検出器は、通常動作モードまたは第2の制御モードに再び切り替えられる。
【0023】
[0022]受信信号は、製品、汚染物、およびアンバランス信号、または任意の外乱のベースバンド信号を取り戻すために、アナログ領域内またはデジタル領域内で復調され得る。
[0023]デジタル領域内の信号の復調は、例えば、https://www.nutaq.com/blog/digital-iq-demodulator-high-speed-adcに説明されている。デジタルI/Q復調器において、動作周波数の中心にある受信信号は、単一高速ADCデバイスによって直接サンプリングされる。サンプリングされた受信信号は、デジタル同相用混合器内およびデジタル直交混合器内で混合され、動作周波数のデジタル余弦および正弦サンプルが、ベースバンドにおける同相信号および直交信号に受信信号を変換するために、ダイレクト・デジタルシンセサイザ(DDS)によって生成される。同相用混合器およびデジタル直交混合器の出力の高周波数成分をフィルタで除去した後、ベースバンド信号が得られる。高速ADCおよびデジタルI/Q復調器における受信信号の処理の使用は、典型的には、動作周波数からベースバンドへの変換がアナログ領域内で実行されるときに、利得のアンバランスおよび直流オフセットなどの潜在的な誤差を減少させ得る。
【0024】
[0024]受信信号のベースバンドへの変換は、アナログ領域内で実行することもできる。この実施形態では、アナログ受信信号は、デジタル同相成分および直交成分に変換されるベースバンド信号のアナログ同相成分およびアナログ直交成分を作り出すために、第1の位相検出器においてアナログ同相基準信号と比較され、第2の位相検出器においてアナログ直交基準信号と比較される。
【0025】
[0025]したがって、本発明の金属検出器または実施された本発明の方法の第1の実施形態では、受信信号は、アナログ領域内で復調される。本発明の金属検出器または実施された方法の第2の実施形態では、受信信号は、デジタル領域内で復調される。
【0026】
[0026]好ましくは、信号コントローラは、異なるセットの制御項が制御装置に適用される2つ以上のモードで動作する。好ましくは、金属検出器の初期化後、第1の制御モードが設定され、所定の条件が満たされるまで、例えば、定められた期間にわたって、またはアンバランス信号が所与の閾値を超える限り維持される。上述したように、好ましくは、この第1の制御モードまたは較正モード中、製品は検査されない。第1の制御モードは、例えば、典型的には、アンバランス信号が測定にあまり影響を及ぼさないレベルまでアンバランス信号が減少される期間にわたって維持される。代替として、アンバランス信号が測定にあまり影響を及ぼさないレベルは、予め定められ、実際のアンバランス信号と比較される。所定の条件が満たされるとすぐに、第1の制御モードは、第2の制御モードに変化され、アンバランス信号が制御ループ内でさらに観察され、減少させられる間に製品の測定が実行される。第1の制御モードでは、第2の制御モードにおいて、残りのアンバランス信号が最小値へゆっくりと駆られ、または完全に相殺される間、アンバランス信号は、迅速に減少させられる。第2の制御モードのための制御項は、制御ループ内の信号補正が製品の測定中に外乱をもらさないように選択される。詳細には、制御装置のための制御項は、行き過ぎが防がれるように選択される。したがって、第2の制御モードにおいて、動作条件は、測定が実行できる間、連続的に最適化される。
【0027】
[0027]本発明の方法は、受信チャンネルにおける金属検出器の任意の段、特にコイルシステムに生じ、かつこれらの段の外側または内側の影響によって引き起こされるアンバランスをほとんど手間をかけずに正確に排除することができる。本発明の補償装置は、金属検出器の性能に悪影響を及ぼす任意のアンバランスおよびさらなる外乱を補正するように柔軟でありかつ容易に適合可能である。詳細には、動作周波数に直接対応しない外乱は排除することができる。
【0028】
[0028]任意の外乱信号について、信号コントローラは、制御信号を供給することができ、補償装置は、対応する補正信号を生成または合成することができる。信号コントローラは、補正信号が補償装置において合成される外乱信号の周波数、大きさ、および位相に関しての情報を供給する。補償装置は、測定される信号のベースバンドまたはそれに対する周波数のオフセットで補正信号を生成または合成することができる。例えば周波数の側帯波が検出される場合、そのような周波数の側帯波は、それに応じて合成される補正信号によって排除され得る。
【0029】
[0029]好ましい実施形態では、任意の外乱信号を排除するために、
> 外乱信号の信号コントローラにおいて、デジタル同相成分およびデジタル直交成分ならびに周波数が決定され、
> デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分が決定または計算され、
> 補償装置において、デジタル補正信号は、外乱信号のデジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分に応じて合成され、
> 最終的に、デジタル補正信号は、デジタル補償信号に加算される。
【0030】
[0030]本発明の補償装置は、費用のかかる構成部品および複雑な補償回路を要求しないようにするものである。好ましくは、補償装置は、将来の要求に容易に適合され得るフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ装置(FPGA)を備える。加えてまたは代替として、補償装置は、1つまたは複数の周波数シンセサイザ、好ましくは、1つまたは複数の補償信号について要求される周波数を生成することができるhttps://en.wikipedia.org/wiki/Direct_digital_synthesisに記載されたようなダイレクトデジタルシンセサイザを含んでもよい。代替として、少なくとも1つの動作周波数成分または同相周波数成分およびその直交周波数成分の波形の信号データは、記憶装置またはルックアップテーブルから連続的に読み出される。周波数信号の1つまたは複数の期間のデータは、記憶装置またはルックアップテーブルに所望の分解能で記憶でき、関連した周波数を生成するようにシステムクロックを用いて連続的に読み出すことができる。システムクロックに関しては、メモリから読み出されるデータのアドレスは、段階的に増加し得る。したがって、一定のシステムクロックおよびメモリに記憶された多数の波形を用いて、任意の関連した周波数は、所望の分解能で生成することができる。しかしながら、異なるシステムクロックを選択することによって周波数を変化させることが可能であろう。
【0031】
[0031]本発明の制御ループの特定の利点は、任意のアンバランス信号および任意の外乱信号が排除され得る一方、外乱信号またはノイズが金属検出システムに導入されないことである。
【0032】
[0032]本発明の方法は、任意のタイプの金属検出器、例えば、たった1つの動作周波数を使用する金属検出器、または個々に選択可能または同時に適用可能である複数の周波数を使用する金属検出器に使用することができる。関連した動作周波数について生じるアンバランス信号ごとに、補償信号は、対応する制御チャンネルにおいて個々に合成される。
【0033】
[0033]好ましくは、受信装置または信号コントローラにおいて、アンバランス信号は、少なくとも1つのローパスフィルタによって他の信号成分から分離される。より好ましくは、アンバランス信号のデジタル同相成分は、第1のローパスフィルタを介して第1の制御装置へ供給され、アンバランス信号のデジタル直交成分は、第2のローパスフィルタを介して第2の制御装置へ供給される。典型的には、アンバランス信号の復調により、直流成分が生じる。しかしながら、金属検出器を通じて移動する製品または汚染物に由来する信号は、動作周波数の低い周波数変調を引き起こす。例えば、位相検出器において基準周波数を用いて受信信号を復調するとき、この低い周波数が取り戻される。対応するカットオフ周波数(例えば<0.5Hz)を有する。したがって、ローパスフィルタによって、製品および汚染物の信号ならびにアンバランス信号は、互いから分離され得る。したがって、制御チャンネルにおける製品および汚染物の信号の影響は、除外することができる。好ましくは、信号の分離またはフィルタ処理は、デジタルシグナルプロセッサによって実行される。
【0034】
[0034]デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分に基づいて、デジタル補償信号は、異なるやり方で合成または生成することができる。好ましい実施形態では、
> デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分は、位相制御信号および大きさ制御信号(magnitude control signal)に変換され、
> 位相制御信号および大きさ制御信号は、補償装置へ送られ、
> シンセサイザは、シンセサイザに供給される位相制御信号に応じた位相を有する動作周波数を生成するように制御され、
> 乗算器において、生成される動作周波数の大きさは、デジタル補償信号を供給するために供給された大きさ制御信号に応じて調整される。
【0035】
[0035]デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分の位相制御信号および大きさ制御信号への変換は、例えば、信号コントローラまたは補償装置に設けられたマイクロコントローラまたはデジタルシグナルプロセッサまたはFPGAにおけるCORDICアルゴリズム(https://en.wikipedia.org/wiki/CORDIC)によって行われ得る。
【0036】
[0036]さらに好ましい実施形態では、
> デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分が、補償装置に供給され、
> シンセサイザは、動作周波数、すなわち、アンバランス信号の周波数に対応する同相周波数成分および直交周波数成分を生成するように制御され、
> 同相乗算器において、生成される同相周波数成分の大きさは、デジタル補償信号のデジタル同相補償成分を供給するためにデジタル同相制御成分に応じて調整され、直交乗算器において、直交周波数成分の大きさは、デジタル補償信号のデジタル直交補償成分を供給するためにデジタル直交制御成分に応じて調整され、
> デジタル補償信号のデジタル同相補償成分、およびデジタル補償信号のデジタル直交補償成分は、デジタル補償信号を供給するために組み合わされる。
【0037】
[0037]動作周波数ごとに、すなわち、アンバランス信号ごとに合成されたデジタル補償信号が、組み合わされたデジタル補償信号を供給するように組み合わされ、これは、アナログ補償信号に変換される。
【0038】
[0038]説明したように、補償信号は、送信装置によって生成される信号を使用することなく、補償装置において完全に合成される。しかしながら、好ましくは、送信装置および補償装置の両装置は、それらが同期させるように共通のマスタークロックを使用する。位相コヒーレンスを確立することによって、システムにおいて、乱れる位相誤差、位相ドリフト、および位相ノイズなどが防がれる。
【0039】
[0039]補償装置において生成される補償信号は、アンバランス信号が生じる金属検出器内に全ての点で加えられ得る。補償信号は、好ましくは検出コイルと誘導結合される補償コイルによって、コイルシステムに誘導され得る。代替として、アンバランス信号は、好ましくは減算モジュールを介して、受信装置の入力に、例えば、平衡変圧器に設けられた補償コイルに、または受信装置の信号経路に供給されてもよい。
【0040】
[0040]本発明の詳細な態様および例は、図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】送信装置1と、駆動コイル21および2つの検出コイル22、23を有するコイルシステム2と、受信装置3と、制御装置9と、アンバランス信号に関するデータを、コイルシステム2にまたは受信装置3の信号経路に導入される補償信号aCOMPを合成する補償装置5に供給する信号コントローラ4とを備える、本発明の金属検出器の好ましい実施形態を示す図である。
図2】受信装置3の入力に位置し、補償信号aCOMPが加えられる平衡補償コイル30を備える平衡変圧器31に接続されたコイルシステム2の検出コイル22、23を有する、図1の金属検出器を示す図である。
図3】好ましい実施形態において2つの制御チャンネルに対して設けられる信号コントローラ4および補償装置5を示す図である。
図4】別の好ましい実施形態において2つの制御チャンネルに対して設けられる信号コントローラ4および補償装置5を示す図である。
図5】補償信号aCOMPが生成される、異なる動作モードを有する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[0041]図1は、送信装置1と、駆動コイル21ならびに第1および第2の検出コイル22、23を有する平衡コイルシステム2と、受信装置3と、信号コントローラ4と、補償装置5と、制御装置9、例えば、受信装置3によって供給される製品および汚染物に関する信号d、dを処理するために設計された少なくとも1つの信号プロセッサなどの信号処理回路を好ましくは含むパーソナルコンピュータと、を備える、好ましい実施形態における発明の金属検出器のブロック図を示す。金属検出器におけるアンバランスを補償するために使用される信号コントローラ4および補償装置5は、制御装置9において実施されることも好ましい。信号コントローラ4は、デジタルシグナルプロセッサにおいて実施されることが好ましく、補償装置5は、信号コントローラ4からデータを受信するフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)において実施されることが好ましい。
【0043】
[0042]送信装置1は、少なくとも1つの動作周波数fTXを有する送信信号s1を平衡コイルシステム2の駆動コイル21に供給するとともに、動作周波数fTXを有する基準信号sを受信装置3に供給する。システムが平衡である限り、すなわち、製品または汚染物が金属検出器を通じて運ばれない限り、送信信号s1は、同じ振幅であるが逆極性である同一の検出コイル22、23に信号を誘導する。
【0044】
[0043]動作周波数fTXは、一定であってもよく、または複数の周波数fTX-A、fTX-Bから個々に選択可能であってもよい。代替として、複数の周波数fTX-A、fTX-Bは、少なくとも1つの周波数シンセサイザまたは周波数発生器10が設けられる送信装置1において同時に生成されてよい。
【0045】
[0044]製品または汚染物が平衡コイルシステム2を通過するとすぐに、検出コイル22、23に誘導される信号が変化する。結果として、検出コイル22、23に誘導される動作周波数fTXは、ベースバンド信号で変調され、その振幅および周波数は、電気および磁気の特性、寸法、および物体の移動速度に依存する。この移動速度に応じて、ベースバンド信号の周波数は変化する。
【0046】
[0045]アンバランス信号は、受信チャンネルを乱し飽和させ得る一定のアンバランスまたは一定の信号オフセットを引き起こす。そのようなアンバランス信号は、システムに対する機械的衝撃によって、周囲条件の変化によって、検出されたものの近くに位置する金属製物体によって、または構成部品の緩和もしくは経年変化により、引き起こされ得る。
【0047】
[0046]図1に示された好ましい実施形態では、検出コイル22、23の出力信号は、受信装置3の入力段32に加えられる。典型的には、入力段32は、少なくとも1つの増幅器と、少なくとも1つのフィルタ装置とを備える。入力段32は、受信信号s3を任意選択の減算装置33を介して同相チャンネルI-CHおよび直交チャンネルQ-CHへ送り届ける。同一に設計される同相チャンネルI-CHおよび直交チャンネルQ-CHは、フィルタ段35I;35Qに、続いて利得段36I;36Q、およびアナログ/デジタル変換器37I、37Qに接続された位相検出器34I;34Qをそれぞれ備える。
【0048】
[0047]受信信号s3と、送信装置1によって供給される同相基準信号sRIまたは直交基準信号sRQとをそれらの入力で受信する位相検出器34I;34Qは、復調器として働き、それらの出力で、運ばれた製品および汚染物、またはアンバランスから由来するベースバンド信号の同相成分aまたは直交成分aを供給する。同相基準信号sは送信装置1から直接第1の位相検出器34Iへおよび位相シフタ38を介して第2の位相検出器34Qへ通される。
【0049】
[0048]位相検出器34I;34Qの出力で供給されるアナログ同相信号および直交信号a;a、フィルタ装置35I;35Qを介して利得装置36I;36Qへ送られ、好ましくは、これにより、処理済み信号の振幅を所望の値に設定することを可能にする。続いて、フィルタ済み信号および較正済み信号は、アナログ/デジタル変換器37I;37Qにおいてアナログ同相信号および直交信号からデジタル同相信号および直交信号d、dへ変換される。アナログ/デジタル変換器37I;37Qの出力で供給されるデジタル同相信号および直交信号d、dは、制御装置9へ送られ、そこでデジタル同相信号および直交信号d、dは解析され、汚染物に関連する信号が検出された場合に警告を発する。
【0050】
[0049]典型的には、制御装置9は、処理装置と、発明の単一周波数または複数同時周波数金属検出器(multi-simultaneous frequency metal detector)の機能を実行するために設計された動作プログラム90とを備える。動作プログラム90は、本発明の方法を実施するために強化される。好ましくは、信号コントローラ4および補償装置5は、制御装置9に収容された信号処理または信号生成回路においてやはり実施される。
【0051】
[0050]アナログ/デジタル変換器37I;37Qの出力で供給されるデジタル同相信号および直交信号d、dは、信号コントローラ4へさらに送られる。信号コントローラ4において、アンバランス信号の同相成分を含むデジタル同相信号dは、第1の制御装置41Iへ加えられ、第1の制御装置41Iは、アンバランス信号についての同相制御成分dCIを供給する。アンバランス信号の直交成分を含む直交信号dは、第2の制御装置41Qへ加えられ、第2の制御装置41Qは、アンバランス信号についての直交制御成分dCQを供給する。
【0052】
[0051]第1の制御装置41I、および第2の制御装置41Qでは、好ましくは、同一の制御項Kp、Ki、Kdが適用され、この制御項Kp、Ki、Kdは、供給されるデジタル同相制御成分dCI、およびデジタル直交制御成分dCQに対して比例および/または積分および/または微分の影響を及ぼす。したがって、好ましくは、当業界でよく知られているPIDコントローラが実施される。PIDコントローラは、所望の設定値と測定されたプロセス変数との間の差として誤差値を継続的に計算し、(P、IおよびDでそれぞれ示される)比例項、積分項、および微分項に基づく補正を適用する。これらの値は、時間の観点で解釈することができ、すなわち、Pは現在の誤差に依存し、Iは過去の誤差の蓄積に依存し、Dは現在の変化率に基づく将来の誤差の予測に依存する。これらの3つの動作の加重和は、制御要素を介してプロセスを調整するために使用される。本発明の金属検出器では、測定されるプロセス変数は、アンバランス信号のデジタル同相成分dおよびデジタル直交成分dである。設定値は、アンバランス信号の完全な排除を目標とするゼロであり、補正値は、計算された同相制御成分dCIおよび直交制御成分dCQであり、アナログ補償信号aCOMPはそこから得られる。制御要素は、補償信号aCOMPが加えられる投入点とみなされ得る。
【0053】
[0052]同相制御成分dCIおよび直交制御成分dCQは、デジタル同相制御成分dCIおよびデジタル直交制御成分dCQを位相制御信号cPHにおよび大きさ制御信号cに変換するCORDICアルゴリズムを好ましくは使用する変換器42へ送られる。図1は、デジタル同相制御成分dCIおよびデジタル直交制御成分dCQに対応する大きさおよび位相角αを有する制御ベクトルdを示す。アンバランス信号に対応する制御ベクトルdの大きさおよび位相角αは、典型的には一定である。製品および汚染物に関する信号は、一定の位相角、および大きさを有するが、大きさは、製品および汚染物が金属検出器を通じて運ばれる速度に対応する周波数で変化する。
【0054】
[0053]周波数制御信号fC-Aと一緒に補償装置5へ送られる位相制御信号cPH-Aおよび大きさ制御信号cM-Aは、制御ベクトルdに対応するデジタル補償信号dCOMPを合成するための本質的な情報を含む。現在の例では、補償信号は、第1の動作周波数fTX-Aについて生成および合成される。対応する周波数制御信号fC-Aは、位相制御信号cPH-Aと一緒に、補償装置5における周波数発生器51に加えられる。したがって、周波数発生器51は、周波数制御信号fC-Aに対応する周波数、および位相制御信号cPH-Aに対応する位相角を有する周波数信号fG-Aαを生成する。生成された周波数信号fG-Aαは、デジタル補償信号dCOMPを供給するために、生成された周波数信号fの大きさが供給される大きさ制御信号cに応じて調整される乗算器52へ供給される。
【0055】
[0054]生成または合成されたデジタル補償信号dCOMPは、デジタル/アナログ変換器54へ送られ、デジタル/アナログ変換器54は、金属検出器内の様々な点で適用され得る対応するアナログ補償信号aCOMPを供給する。アナログ補償信号aCOMPは、例えば、受信装置3の入力においてまたは受信装置3の信号経路内の平衡コイルシステムまたは受信信号s2、s3に加えられる。典型的には、全ての実施形態において、アナログ補償信号aCOMPは、それが供給される前にバッファ増幅器などの増幅器6において増幅される。
【0056】
[0055]第1の好ましい実施形態では、アナログ補償信号aCOMPは、駆動コイルの少なくとも1つと誘導結合される補償コイル24に加えられる。第2の実施形態では、アナログ補償信号aCOMPは、減算装置33に加えられ、システム中に存在するアンバランス信号は、アナログ補償信号aCOMPによって好ましくはゼロに減少させられる。
【0057】
[0056]金属検出器内で生じる任意の他の外乱信号について、デジタル同相成分およびデジタル直交成分ならびに周波数が決定され、デジタル同相制御成分およびデジタル直交制御成分が計算され得る。補償装置5では、外乱信号のデジタル同相成分およびデジタル直交成分ならびに周波数に応じたデジタル補正信号dCORRは、合成され、デジタル補償信号dCOMPに加算され得る(図3および図4参照)。
【0058】
[0057]したがって、本発明の方法を用いて、外乱信号を解析し、対応する補正信号を合成することによって、任意の検出された外乱を排除することができる。金属検出器の動作条件および動作パラメータは、制御プログラム90によって選択される。好ましくは、制御装置9は、第1の制御バス91を介して送信装置1と通信するとともに、第2の制御バス945を介して信号コントローラ4および補償装置5と通信する。好ましい実施形態では、金属検出器において実行される全てのプロセス、従来の測定プロセス、および本発明の方法に関する全てのプロセスは、制御装置9によって制御されることが好ましい。
【0059】
[0058]例えば2つの動作周波数fTX-A、fTX-Bが、制御装置9において選択される場合、次いで、送信装置1は、これらの2つの動作周波数fTX-A、fTX-Bを生成するように命令される。さらに、2つの制御チャンネル4A、4B;5A、5Bが、これらの2つの動作周波数fTX-A、fTX-Bに関連したアンバランス信号を補償するために開かれる。図1に示されるような第1の受信モジュール、第1の信号コントローラ4A、および第1の補償装置5Aを含む第1の制御チャンネルは、第1の動作周波数fTX-Aについてのアンバランス信号が排除される第1の制御ループの一部である。図1に示されるような第2の受信モジュール、第2の信号コントローラ4B、および第2の補償装置5Bを含む第2の制御チャンネルは、第2の動作周波数fTX-Bについてのアンバランス信号が排除される第2の制御ループの一部である。受信モジュールにおいて、同相チャンネルI-CHおよび直交チャンネルQ-CHは、例えば図1に示されるように供給される。このようにして、全ての信号コントローラ4A、4Bには、関連した動作周波数fTX-A、fTX-Bについてのアンバランス信号の復調されたデジタル同相成分dおよびデジタル直交成分dが供給される。
【0060】
[0059]金属検出器において実行される全てのプロセスについて位相コヒーレンスを確実にするために、少なくとも1つの生成された周波数信号fG-A、fTXG-B、または補償装置5(図4参照)において生成されたその同相周波数成分fGIおよび直交周波数成分fGQは、送信装置1において生成された対応する動作周波数fTX-A、fTX-Bと位相および周波数に関して同期させられる。図1は、マスタークロックmclが、送信装置1に位置する周波数発生器10、受信装置3におけるアナログ/デジタル変換器37Iおよび37Q、ならびに補償装置5における周波数発生器51、乗算器52、およびデジタル/アナログ変換器54に加えられることを示す。
【0061】
[0060]図2は、受信装置3の入力に位置する平衡変圧器31に接続されたコイルシステム2の検出コイル22、23を有する図1の金属検出器を示す。検出コイル22、23の出力信号は、検出コイル22、23を反映する平衡変圧器31のセンタータップ(center-tapped)一次巻線に加えられる。さらに、平衡変圧器31は、反対の末端が受信装置3の入力段32に接続される2つの同一のセンタータップ二次巻線を備える。平衡変圧器31は、補償信号aCOMPが増幅器6およびシングルエンド差動変換器(single-ended-to-differential-converter)60(以下、SETD変換器とする)を介して加えられる平衡補償コイル30をさらに備える。SETD変換器60は、その出力に一対の差動信号を供給する。
【0062】
[0061]図3は、選択された動作周波数fTX-A、fTX-Bに専用の2つの制御チャンネルを有する信号コントローラ4および補償装置5を示す。各制御チャンネルは、信号コントローラ4A;4Bと、補償装置5A;5Bと、をそれぞれ備える。信号コントローラ4A;4Bは、例えば製品または汚染物に関する他の信号からアンバランス信号を分離するためのローパスフィルタ40I;40Qを備える。したがって、製品および汚染物に関する信号は、阻止され、制御ループ内のプロセスに影響を与えない。アンバランス信号のデジタル同相成分dは、第1のローパスフィルタ40Iを介して第1の制御装置41Iに加えられ、アンバランス信号のデジタル直交成分dCQは、第2のローパスフィルタ40Qを介して第2の制御装置41Qに加えられる。
【0063】
[0062]図1を参照して説明されるように、関連したローパスフィルタ40I;40Qの出力で供給されるデジタル同相信号および直交信号dI-A、dQ-A;dI-B、dQ-Bは、制御装置41I、41Qへ送られる。制御チャンネルごとに、デジタル同相信号dI-A;dI-Bは、第1の制御装置41Iに供給され、第1の制御装置41Iは、アンバランス信号についての同相制御成分dCI-A;dCI-Bを供給する。直交信号dQA、dQBは、第2の制御装置41Qに供給され、第2の制御装置41Qは、アンバランス信号についての直交制御成分dCQ-A;dCQ-Bを供給する。
【0064】
[0063]制御チャンネルごとに、同相制御成分dCI-A;dCI-Bおよび直交制御成分dCQ-A;dCQ-Bは、変換器42へ送られ、好ましくは、変換器42は、デジタル同相制御成分dCI-A;dCI-Bおよびデジタル直交制御成分dCQ-A;dCQ-Bを位相制御信号cPHα;cPHβおよび大きさ制御信号cM-A;cM-Bに変換するためにCORDICアルゴリズムを使用する。
【0065】
[0064]制御チャンネルごとに、周波数制御信号fC-A;fC-Bと一緒に補償装置5へ送られる位相制御信号cPHα;cPHβおよび大きさ制御信号cM-A;cM-Bは、デジタル補償信号dCOMP-A、dCOMP-Bを合成するための本質的な情報を含む。対応する周波数制御信号fC-A;fC-Bは、位相制御信号cM-A;cM-Bと一緒に関連した周波数発生器51に加えられる。周波数発生器51は、周波数制御信号fC-A;fC-Bに対応する周波数と、位相制御信号cM-A;cM-Bに対応する位相角α;βと、を有する対応する周波数信号fG-Aα;fG-Bβを生成する。生成された周波数信号fG-Aα;fG-Bβは、乗算器52に供給され、生成された周波数信号fG-Aα;fG-Bβの大きさは、デジタル補償信号dCOMP-A、dCOMP-Bを供給するために、供給される大きさ制御信号cM-A;cM-Bに応じて調整される。
【0066】
[0065]デジタル補償信号dCOMP-A、dCOMP-Bは、上述したように好ましくは補正信号dCORRをやはり組み合わせる加算器53において組み合わされる。加算器53の出力において、組み合わされたデジタル補償信号dCOMPが供給され、組み合わされたデジタル補償信号dCOMPは、続くデジタル/アナログ変換器54においてアナログ補償信号aCOMPに変換される。図1または図2を参照して説明されるように、アナログ補償信号aCOMPは、受信装置3の入力においてまたは受信装置3の信号経路内で平衡コイルシステム2または受信信号s2、s3に加えられる。
【0067】
[0066]図4は、別の好ましい実施形態における信号コントローラ4および補償装置5を示す。各制御チャンネルは、信号コントローラ4A;4Bおよび補償装置5A、5Bをそれぞれ備える。制御チャンネルごとに、同相制御成分dCI-A;dCI-Bおよび直交制御成分dCQ-A;dCQ-Bは、関連した補償装置5A、5Bへ直接送られる。周波数制御信号fC-A;fC-Bは、補償装置5A、5Bにおける関連した周波数シンセサイザ51/51Lに加えられ、これは、同相周波数成分fGI-A;fGI-B、および周波数制御信号fC-AまたはfC-Bに対応する直交周波数成分fGQ-A;fGQ-Bを生成する。
【0068】
[0067]制御チャンネルごとに、生成された同相周波数成分fGI-A;fGI-Bの大きさは、デジタル同相補償成分dCOMP-I-A;dCOMP-I-Bを供給するためにデジタル同相制御成分dCI-A;dCI-Bに応じて同相乗算器52Iにおいて調整される。直交乗算器52Qにおいて、直交周波数成分fGQの大きさは、デジタル直交補償成分dCOMP-Q-A;dCOMP-Q-Bを供給するためにデジタル直交制御成分dCQ-A;dCQ-Bに応じて調整される。次いで、デジタル同相補償成分dCOMP-I-A;dCOMP-I-B、およびデジタル直交補償成分dCOMP-Q-A;dCOMP-Q-Bは、次いで、組み合わされたデジタル補償信号dCOMPを供給する加算器53において組み合わされ、これは、続くデジタル/アナログ変換器54をアナログ補償信号aCOMPに変換される。
【0069】
[0068]少なくとも1つの周波数信号fG-A、fG-B、またはその同相周波数成分fGIおよび直交周波数成分fGQは、少なくとも1つの周波数信号fG-A、fG-Bまたはその同相周波数成分fGIおよび直交周波数成分fGQの波形のデータを直接デジタル合成することによって、またはそれを記憶装置またはルックアップテーブル51Lから連続的に読み出すことによって生成される。米国特許第5892692(A)号は、ルックアップテーブルを用いて歪むことなくデジタル化された波形を生成するデジタル波形発振器を説明する。
【0070】
[0069]米国出願公開第2007067123(A1)号は、補償装置において任意の所望の波形を生成するために使用され得る任意の波形生成器を説明する。制御チャンネルは、波形生成器を個々に使用することができ、または波形生成器を共有することができる。任意の波形生成器によりその応用にとって特有であり得る任意の信号波形を作り出すことができることが説明されている。これらの任意の信号波形は、試験下のデバイスなどの構成部品が実験室または製造現場をそれが離れるときに出会う任意の信号波形に関して不具合、ドリフト、ノイズ、および他の異常を含む「実世界」信号をシミュレートするために利用され得る。
【0071】
[0070]好ましい実施形態では、本発明の方法は、上述したように補償信号dCOMPまたは補正信号dCORRを作り出ために、そのような波形生成器を使用する。典型的には、同程度に簡単な実施形態における波形生成器または任意の波形生成器は、金属検出器において繰り返し生じるアンバランス信号または外乱信号を補償するのに十分である。ポイントごと(point-by-point)に信号波形は定められているので、出力信号の分解能は、生成された信号の波形を定めるより多くの更新点を用いることによって向上され得る。
【0072】
[0071]図3および図4では、本発明は、2つの制御チャンネル、または2つの動作周波数fTX-A、fTX-Bについてそれぞれ説明されている。しかしながら、本発明の方法により動作する発明の金属検出器では、任意の個数の制御チャンネルが実施され得る。
【0073】
[0072]好ましくは、信号コントローラ4、4A;4Bは、異なるセットの制御項が制御装置に適用される2つ以上のモードで動作する。図5は、補償信号aCOMPが生成される異なる動作モードを有する流れ図を示す。
【0074】
[0073]この流れ図によれば、以下のステップが実行される
> 金属検出器は、初期化される(システム開始)
> 次いで、金属検出器は、第1の制御モード(制御モード1)に設定される
> 制御モード1では、第1のセットの制御項Kp、Ki、Kdは、第1の制御装置41Iおよび第2の制御装置41Qに適用され、これらの制御項Kp、Ki、Kdは、デジタル同相制御成分dCIおよびデジタル直交制御成分dCQが第1の補正因子を備えるように選択される。
【0075】
> 制御モード1は、定められた期間にわたってまたはアンバランス信号が所与の閾値を超える限り維持される。
> 定められた期間が経過した場合、またはアンバランス信号が所与の閾値未満に低下した場合、第2の制御モード(制御モード2)に入り、金属検出器は、測定プロセスが実行できる状態に変化させられる。
【0076】
> 制御モード2では、第2のセットの制御項Kp、Ki、Kdは、第1の制御装置41Iおよび第2の制御装置41Qに適用され、この制御項Kp、Ki、Kdは、デジタル同相制御成分dCIおよびデジタル直交制御成分dCQに第1の補正因子よりも低い第2の補正因子が供給され、低減された補正をもたらすように選択される。
【0077】
> 制御モード2は、アンバランス信号が所与の閾値を超えない限り維持される。
[0074]制御モード1は、例えば、典型的にはアンバランス信号が測定に大きな影響を及ぼさないレベルまでアンバランス信号が減少させられる期間にわたって維持される。代替として、アンバランス信号が測定に大きな影響を及ぼさないレベルは、予め定められ、実際のアンバランス信号と比較される。アンバランス信号が対応する閾値未満に減少させられるとすぐに、制御モード1は、制御モード2に変化され、製品の測定は、アンバランス信号が制御ループ内でさらに観察され、減少させられる間に実行される。制御モード1では、アンバランス信号は迅速に減少し、一方、制御モード2では、残りのアンバランス信号が、最小値へゆっくりと駆られる。第2の制御モードについての制御項Kp、Ki、Kdは、製品の測定中に制御ループにおける信号補正が外乱をもたらさないように選択される。詳細には、制御装置のための制御項Kp、Ki、Kdは、行き過ぎが防がれるように選択される。第2の制御モードでは、したがって、動作条件は、測定が実行できる間、連続的に最適化される。
【符号の説明】
【0078】
[0075]
1 送信装置
10 送信装置1における周波数発生器
2 コイルシステム
21 駆動コイル
22、23 検出コイル
24 補償コイル
3 受信装置
31 平衡変圧器
32 増幅器および/またはフィルタを有する入力段
33 減算装置
34I、34Q 位相検出器
35I、35Q フィルタ装置
36I、36Q 利得装置;コントローラブル利得装置
37I、37Q アナログ/デジタル変換器
38 位相シフタ
4;4A、4B 信号コントローラ;信号コントローラ
40I、40Q ローパスフィルタ
41I、41Q 制御装置
42 変換器(CORDIC)
5;5A、5B 補償装置;補償装置
51、51L 周波数シンセサイザ、ルックアップテーブル
52;52I、52Q 乗算器
53 加算器
54 A/D変換器
6 増幅器
60 シングルエンド差動変換器
9 制御装置であって、好ましくは、
- 信号コントローラ4
- 補償装置5
- 製品、汚染物および/またはアンバランスに関する信号を処理するデジタルシグナルプロセッサ
を備える制御装置
、a アナログ同相信号および直交信号
COMP アナログ補償信号
大きさ制御信号
PH 位相制御信号
、d デジタル同相信号および直交信号
CI、dCQ デジタル同相信号および直交制御信号
COMP デジタル補償信号
CORR デジタル補正信号
周波数制御信号
生成された周波数信号
TX;fTX-A、fTX-B 動作周波数
Kp、Ki、Kd 制御項
mcl マスタークロック
s1 送信信号
s2 受信装置3における入力信号
s3 受信経路における信号
RI、sRQ 基準信号
図1
図2
図3
図4
図5