(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】逆止弁、ラベル、ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 15/14 20060101AFI20240221BHJP
F16K 24/04 20060101ALI20240221BHJP
G09F 3/02 20060101ALI20240221BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20240221BHJP
B31D 1/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
F16K15/14 Z
F16K24/04 G
G09F3/02 Z
G09F3/10 A
B31D1/02 A
(21)【出願番号】P 2020062270
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】坂元 大二
(72)【発明者】
【氏名】長岡 一樹
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-112375(JP,A)
【文献】特開2004-250093(JP,A)
【文献】特開2015-189492(JP,A)
【文献】特公平2-36464(JP,B2)
【文献】実開平01-060083(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-2040443(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/14
F16K 24/04
G09F 3/02
G09F 3/10
B31D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止弁であって、
前記逆止弁が貼着される被貼着物に接着される粘着剤層と、
前記粘着剤層に積層された下基材層とを備え、
前記粘着剤層と前記下基材層とを貫通する貫通孔が形成されており、
さらに、前記下基材層上に設けられ前記貫通孔の周囲の一部を囲う固着部と、
前記固着部を介して前記下基材層に積層され、前記貫通孔を開閉可能に覆う上基材層と、
前記粘着剤層の前記被貼着物に接着される接着面の、前記貫通孔の周縁の少なくとも一部に設けられ、前記粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部と、を備える、逆止弁。
【請求項2】
前記上基材層は、前記下基材層よりも引張り強度が小さい、請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
剥離紙と、
前記剥離紙に積層された粘着剤層と、
前記粘着剤層に積層された下基材層とを備え、
前記粘着剤層と前記下基材層とを貫通し前記剥離紙を貫通しない貫通孔が形成されており、
さらに、前記下基材層上に設けられ前記貫通孔の周囲の一部を囲う固着部と、
前記固着部を介して前記下基材層に積層され、前記貫通孔を開閉可能に覆う上基材層と、
前記粘着剤層の前記剥離紙側の表面の、前記貫通孔の周縁の少なくとも一部に設けられ、前記粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部と、を備える、ラベル。
【請求項4】
剥離紙と、粘着剤層と、下基材層とが順に積層された積層体を準備するステップと、
前記粘着剤層と前記剥離紙との間に前記粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部を設けるステップと、
前記粘着剤層と前記下基材層とを貫通し前記剥離紙を貫通しない貫通孔を、前記貫通孔の周縁の少なくとも一部に前記弱粘着部が存在するように、形成するステップと、
前記下基材層上に、前記貫通孔の周囲の一部を囲う固着部を設置するステップと、
前記貫通孔を開閉可能に覆う上基材層を、前記固着部を介して前記下基材層に積層するステップと、を備える、ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、逆止弁、ラベル、およびラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平2-36464号公報(特許文献1)には、透孔を有する基盤フイルムの一面にこの透孔を覆って弁フイルムを配設すると共に、透孔よりガスを外部に逃散させる間隙を両フイルム間に形成するように両フイルムの縁部を固着し、間隙をガス通気路として構成し、かつ基盤フイルムの他面に粘着剤層を形成し、この粘着剤層上に透孔と連通する貫通孔を有する剥離紙を積層した、ガス抜き用弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器に取り付けられて容器の内部から外部に流出する気体の流れを許容するとともにその逆方向への流れを禁止する逆止弁においては、容器の内部から外部への気体の流れやすさの向上が求められている。
【0005】
本開示では、逆止弁が貼着される被貼着物の内部から外部への気体の流れやすさを向上できる逆止弁が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、粘着剤層と、下基材層と、固着部と、上基材層とを備える、逆止弁が提案される。粘着剤層は、逆止弁が貼着される被貼着物に接着される。下基材層は、粘着剤層に積層されている。粘着剤層と下基材層とには、両層を貫通する貫通孔が形成されている。固着部は、下基材層上に設けられ、貫通孔の周囲の一部を囲う。上基材層は、固着部を介して下基材層に積層され、貫通孔を開閉可能に覆う。逆止弁はさらに、粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部を備えている。弱粘着部は、粘着剤層の被貼着物に接着される接着面の、貫通孔の周縁の少なくとも一部に設けられている。
【0007】
上記の逆止弁において、上基材層は、下基材層よりも引張り強度が小さくてもよい。
本開示のある局面に従うと、ラベルが提案される。ラベルは、剥離紙と、剥離紙に積層された粘着剤層と、粘着剤層に積層された下基材層とを備えている。粘着剤層と下基材層とには、両層を貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔は剥離紙を貫通しない。ラベルはさらに、下基材層上に設けられ貫通孔の周囲の一部を囲う固着部と、固着部を介して下基材層に積層され、貫通孔を開閉可能に覆う上基材層と、粘着剤層の剥離紙側の表面の、貫通孔の周縁の少なくとも一部に設けられ、粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部と、を備えている。
【0008】
本開示のある局面に従うと、ラベルの製造方法が提案される。製造方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、剥離紙と、粘着剤層と、下基材層とが順に積層された積層体を準備するステップである。第2のステップは、粘着剤層と剥離紙との間に、粘着剤層よりも粘着力の弱い弱粘着部を設けるステップである。第3のステップは、粘着剤層と下基材層とを貫通し剥離紙を貫通しない貫通孔を、貫通孔の周縁の少なくとも一部に弱粘着部が存在するように、形成するステップである。第4のステップは、下基材層上に、貫通孔の周囲の一部を囲う固着部を設置するステップである。第5のステップは、貫通孔を開閉可能に覆う上基材層を、固着部を介して下基材層に積層するステップである。
【発明の効果】
【0009】
本開示に従う逆止弁によれば、逆止弁が貼着される被貼着物の内部から外部への気体の流れやすさを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1中のII-II線に沿う、逆止弁の断面図である。
【
図4】ラベルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】剥離紙と粘着剤層との間に弱粘着部を設けた状態を示す断面図である。
【
図7】粘着剤層と下基材層とを貫通する円環スリットを形成した状態を示す断面図である。
【
図8】円環スリットの内部の材料を取り除き貫通孔を形成した状態を示す断面図である。
【
図9】下基材層上に固着部を設置した状態を示す断面図である。
【
図10】下基材層上に固着部を設置した状態を示す平面図である。
【
図11】上基材層を積層した状態を示す断面図である。
【
図12】ラベルが成形された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
(逆止弁1の構成)
図1は、実施形態に係る逆止弁1の平面図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う、逆止弁1の断面図である。
図1,2に示される逆止弁1は、被貼着物100に貼着されている。被貼着物100には孔104が形成されており、逆止弁1はこの孔104を覆うように被貼着物100に貼り付けられている。被貼着物100は、中空の内部空間102を有しており、内部空間102に物体を収容する容器である。被貼着物100は、袋形状を有していてもよい。逆止弁1は、被貼着物100に取り付けられて、被貼着物100の内部空間102から外部に流出する気体の流れを許容するとともに、被貼着物100の外部から内部空間102への気体の流れを禁止する。
【0013】
図1および
図2に示されるように、逆止弁1は、粘着剤層10と、下基材層20と、固着部40と、上基材層50とを備えている。
【0014】
粘着剤層10は、被貼着物100に接着されている。下基材層20は、粘着剤層10に積層されて、粘着剤層10の上側の面に接着されている。粘着剤層10と下基材層20との中央部に、粘着剤層10と下基材層20とを貫通する貫通孔30が形成されている。貫通孔30が形成されていることにより、粘着剤層10と下基材層20とは、円環状の形状を有している。被貼着物100の孔104と貫通孔30とが連通するように、逆止弁1は被貼着物100に取り付けられている。
【0015】
固着部40は、下基材層20上に設けられている。固着部40は、下基材層20の一部分に積層されている。固着部40は、下基材層20に固着されている下面を有している。固着部40は、第1固着部41と、第2固着部42とを有している。第1固着部41と第2固着部42とは、別部材として形成されており、離れて配置されている。
【0016】
第1固着部41と第2固着部42との間に、貫通孔30が配置されている。貫通孔30は、第1固着部41と第2固着部42とによって、
図1においては左右両側から挟まれている。固着部40は、貫通孔30の周囲の一部のみを囲うように配置されており、貫通孔30の周囲には固着部40が設けられていない箇所が存在する。
図1においては、貫通孔30に対して図中の上側と下側とには、固着部40が設けられていない。なお、第1固着部41と第2固着部42とは、上基材層50と下基材層20との隙間を介して外部空間と連通するように形成されていればよく、たとえば、
図1において貫通孔30に対して図中の下側のみに固着部40が設けられていなくてもよい。
【0017】
上基材層50は、固着部40を介して下基材層20に積層されている。固着部40は、上基材層50に固着されている上面を有している。上基材層50は、貫通孔30を上方から覆っている。上基材層50は、貫通孔30を開閉可能に覆っている。
図2に示されるように、上基材層50は、第1固着部41と第2固着部42との間の固着部40が設けられていない位置において、下基材層20の上面に接触可能である。下基材層20と上基材層50とは、固着部40を介して固着されており、下基材層20と上基材層50とは直接には接着されていない。
図1においては、貫通孔30の周辺および、貫通孔30に対して図中の上側と下側とにおいて、上基材層50は非接着状態で下基材層20に接触している。これにより上基材層50は、貫通孔30を閉塞している。
【0018】
下基材層20と上基材層50との材質は特に限定されない。下基材層20と上基材層50とは、樹脂材料によって形成されてもよい。たとえば、下基材層20は、PET(polyethylene terephthalate)フィルムで形成されてもよい。上基材層50は、下基材層20よりも物性値として引張り強度の小さい材料で形成される。たとえば、上基材層50は、PP(polypropylene)フィルムで形成されてもよい。上基材層50は、下基材層20よりも厚みが小さく形成されてもよい。たとえば、下基材層20の厚みを50μmとする場合、上基材層50の厚みを20μmまたは40μmなどにしてもよい。好ましくは、下基材層20は上基材層50よりも引張り強度が小さく、かつ厚みが小さい材料で形成される。下基材層20の引張り強度および/または厚みを上基材層50よりも小さくしておくことで、被貼着物100からの気体の圧力により、上基材層50がより押し上げられやすくなる。なお、下基材層20および/または上基材層50には、必要に応じて、任意の文字などが表れた印刷層(図示せず)が設けられる。
【0019】
逆止弁1は、弱粘着部60をさらに備えている。粘着剤層10は、被貼着物100に接着される接触面(
図2においては、図中の下側の粘着剤層10の表面)を有している。弱粘着部60は、粘着剤層10の接触面に設けられている。弱粘着部60は、貫通孔30の周辺に設けられている。
図1に示されるように、実施形態においては、弱粘着部60は貫通孔30の周縁の全周を取り囲んでいる。
【0020】
弱粘着部60は、被貼着物100に接触している。弱粘着部60は、粘着剤層10よりも粘着力が低い。弱粘着部60は、粘着剤層10よりも小さい粘着力を有しており、粘着剤層10よりも小さい粘着力で被貼着物100に貼着されてもよい。または弱粘着部60は、粘着力を有しない非粘着部として構成され、被貼着物100とは非接着状態で接触してもよい。
【0021】
(逆止弁1の動作)
以上の構成を備えている実施形態の逆止弁1の動作について説明する。
図3は、逆止弁1の動作を示す断面図である。
【0022】
逆止弁1が貼着されている被貼着物100の内部空間102において気体が発生し、内部空間102の圧力が上昇すると、一部の気体が
図3中の矢印に示されるように孔104を通過して貫通孔30内へ流れる。貫通孔30内の圧力が上昇することで、上基材層50が押し上げられて、上基材層50が下基材層20から離れる。貫通孔30が上基材層50によって閉塞されなくなり、貫通孔30が開放される。
図1を参照して説明したように、貫通孔30の周囲には固着部40が設けられていない箇所が存在する。そのため、開放された貫通孔30は、押し上げられた上基材層50と下基材層20との隙間を介して、外部空間と連通する。
【0023】
気体は、貫通孔30を通過し、さらに下基材層20と上基材層50との隙間を経由して、逆止弁1から外気中に流出する。被貼着物100の内部空間102から外部へ気体が流れ出ることにより、内部空間102の圧力が降下する。内部空間102の圧力が外気圧まで降下すると、内部空間102から貫通孔30内へ気体が流れなくなる。気体が上基材層50を押し上げる作用がなくなることで、上基材層50が下がり、上基材層50が再び下基材層20に接触して、貫通孔30が閉じられる。このようにして、外部から内部空間102への気体の流れが遮断されて、外部の空気などが内部空間102へ侵入することが防止される。
【0024】
貫通孔30の周縁に弱粘着部60が設けられていることにより、
図3に示されるように、弱粘着部60が被貼着物100から離れるように押し上げられる。これにより、貫通孔30の容積が増大する。逆止弁1は、貫通孔30内により多くの気体を収容することが可能であるので、被貼着物100の内部空間102から貫通孔30へ気体が流れやすくされている。逆止弁1は、貫通孔30内により多くの気体を溜めることが可能な構造であるので、貫通孔30内に溜められた気体の圧力で上基材層50を押し上げて貫通孔30が開放されやすくされている。したがって、被貼着物100の内部空間102から外部への気体の流れやすさが向上されている。
【0025】
逆止弁1が弱粘着部60を有しない構成である場合、貫通孔30が被貼着物100の孔104からずれた配置で逆止弁1が被貼着物100に貼着されると、内部空間102内の気体が孔104から貫通孔30へ流れにくくなる。弱粘着部60を備える実施形態の逆止弁1は、貫通孔30が孔104からずれた配置であっても、そのずれ量が孔104と弱粘着部60とが重なる程度であれば、弱粘着部60が押し上げられて被貼着物100から離れることで孔104と貫通孔30とが連通できるので、ずれを許容できる。逆止弁1を被貼着物100に貼着するときに貫通孔30を厳密に孔104と位置合わせすることが必ずしも必要でなくなるので、逆止弁1の使い勝手が向上されている。
【0026】
上述した実施形態の説明においては、貫通孔30の周縁の全部に弱粘着部60が設けられる例について説明した。弱粘着部60は、貫通孔30の周縁の全周を取り囲むように必ずしも設けられなくてもよい。貫通孔30の周縁の少なくとも一部に弱粘着部60が設けられていれば、上述した、貫通孔30の容積を増大させて気体の流れやすさを向上でき、被貼着物100の孔104に対する逆止弁1のずれを許容できる効果を、同様に得ることができる。
【0027】
(ラベル90とその製造方法)
以上説明した逆止弁1は、逆止弁1が剥離紙82に貼り付けられた状態のラベル90として流通させることが可能である。以下では、ラベル90の製造方法について詳細に説明する。
図4は、ラベル90の製造方法を示すフローチャートである。
【0028】
図4に示されるように、まずステップS1において、積層体80を準備する。
図5は、積層体80の構成を示す断面図である。積層体80は、剥離紙82と、粘着剤層10と、下基材層20とが、この順に積層されて形成されている。剥離紙82と粘着剤層10と下基材層20とを個別に準備した上でこの順に積層して、積層体80を作成してもよい。または、市販品の積層体80を用いることも可能である。
【0029】
ステップS2において、剥離紙82と粘着剤層10との間に空間18を形成する。粘着剤層10と下基材層20とを持ち上げて、粘着剤層10を剥離紙82から分離することにより、中空の空間18が剥離紙82と粘着剤層10との間に形成される。
【0030】
ステップS3において、空間18内に、粘着剤層10よりも粘着力の弱い弱粘着部60を設ける。
図6は、剥離紙82と粘着剤層10との間に弱粘着部60を設けた状態を示す断面図である。
図6に示されるように、空間18に露出した粘着剤層10の表面に弱粘着部60を貼り付けて、弱粘着部60を粘着剤層10に接着させることで、剥離紙82と粘着剤層10との間に弱粘着部60が設置される。弱粘着部60は、円板状の形状を有している。弱粘着部60は、粘着剤層10の裏面にマスキング層を積層することによって形成できる。マスキング層は、ベタ状であってもよく、ドット状やストライプ状に積層されていてもよい。マスキング層としては、たとえば紫外線硬化型インキからなる印刷層、シリコーン樹脂や微粒子などを含む剥離層などを用いることができる。マスキング層の厚みや形状を適宜調整することにより、弱粘着部60の粘着力を調整することができる。
【0031】
ステップS4において、粘着剤層10と下基材層20とを、剥離紙82に再積層する。粘着剤層10と下基材層20とを押し下げて、剥離紙82に粘着剤層10を接触させて、剥離紙82と粘着剤層10との間に空間18が形成されないようにする。これにより、剥離紙82と粘着剤層10と下基材層20とが再度積層される。剥離紙82と粘着剤層10との間の一部に、弱粘着部60が設けられている。弱粘着部60は、剥離紙82と粘着剤層10との間に挟まれている。弱粘着部60は、粘着剤層10の、剥離紙82側の表面に設けられている。
【0032】
ステップS5において、円環スリット36を形成する。
図7は、粘着剤層10と下基材層20とを貫通する円環スリット36を形成した状態を示す断面図である。たとえば下基材層20の側から積層体80を機械加工することにより、下基材層20、粘着剤層10および弱粘着部60を貫通する円環スリット36が形成される。円環スリット36は円環状の形状を有している。円環スリット36は、円板状の弱粘着部60よりも小径である。円環スリット36は、弱粘着部60と位置を合わせて形成される。典型的には、円環スリット36は、弱粘着部60と同心になるように形成される。円環スリット36の内部の全体に弱粘着部60があり、かつ、円環スリット36を囲って弱粘着部60がある状態になる。
【0033】
円環スリット36は、剥離紙82を貫通しない。
図7に示されるように、剥離紙82の上面まで円環スリット36が形成されてもよい。または、剥離紙82の厚さ方向の一部に円環スリット36が形成されても構わないが、円環スリット36が剥離紙82の厚さ方向の全体を貫通することがないように、円環スリット36が形成される。
【0034】
ステップS6において、下基材層20に接着剤84を塗布する。下基材層20の、円環スリット36に取り囲まれる位置に、接着剤84が塗布される。接着剤84は、たとえば、紫外線硬化型の接着剤である。
【0035】
ステップS7において、接着剤84にフィルム材86が貼り付けられる。フィルム材86は、ラベル90を構成する材料とは別のフィルムである。フィルム材86は、紫外線を透過する材料で形成されてもよい。この場合、次のステップS8でフィルム材86を透過して紫外線を接着剤84に照射することが可能になり、接着剤84を硬化させる処理が容易になる。
【0036】
ステップS8において、下基材層20とフィルム材86とを、接着剤84を介して接着する。接着剤84が紫外線硬化型の接着剤である場合、紫外線を接着剤84に照射することで接着剤84を硬化させて、下基材層20を接着剤84に接着し、フィルム材86を接着剤84に接着する。これにより、下基材層20とフィルム材86とが、接着剤84を介して接着される。
【0037】
ステップS9において、フィルム材86を除去する。
図8は、円環スリット36の内部の材料を取り除き貫通孔30を形成した状態を示す断面図である。先のステップS8で、フィルム材86には接着剤84を介して下基材層20が接着されている。下基材層20の下面に粘着剤層10が接着しており、粘着剤層10の下面に弱粘着部60が接着している。そのため、
図8に示されるように、フィルム材86を持ち上げてフィルム材86を積層体から離すように移動させると、円環スリット36に囲まれた部分の下基材層20、粘着剤層10および弱粘着部60が、フィルム材86とともに持ち上げられる。円環スリット36の内部の全体に弱粘着部60があることで、弱粘着部60を剥離紙82から容易に分離させることが可能とされている。
【0038】
このようにして、円環スリット36の内部の下基材層20、粘着剤層10および弱粘着部60が取り除かれて、粘着剤層10と下基材層20とを貫通する貫通孔30が形成される。粘着剤層10の剥離紙82側の表面の貫通孔30の周縁には、弱粘着部60が存在している。貫通孔30は、剥離紙82を貫通していない。
【0039】
ステップS10において、固着部40を設置する。
図9は、下基材層20上に固着部40を設置した状態を示す断面図である。
図10は、下基材層20上に固着部40を設置した状態を示す平面図である。
図10には、
図9中に示す矢印X方向から見た平面図が図示されている。
【0040】
下基材層20上の両端部に、固着部40が設置される。たとえば、帯状の下基材層20の一方の縁部にホットメルト接着剤を筋状に塗工して第1固着部41を設け、下基材層20の他方の縁部に同じくホットメルト接着剤を筋状に塗工して第2固着部42を設けてもよい。ホットメルト接着剤は、加熱することにより軟化させて塗工する。第1固着部41と第2固着部42とは、離れて設けられる。第1固着部41と第2固着部42との間に、貫通孔30が配置される。貫通孔30は、第1固着部41および第2固着部42によって覆われない。貫通孔30の周囲の全体が固着部40によって囲われず、貫通孔30の周囲の一部のみを囲う固着部40が下基材層20上に設置される。
【0041】
ステップS11において、上基材層50を積層する。
図11は、上基材層50を積層した状態を示す断面図である。先のステップS11で下基材層20上に固着された固着部40に、上基材層50が貼り合わされる。より詳細には、
図10に示される第1固着部41と第2固着部42とに亘って、上基材層50が固着部40上に取り付けられる。このようにして、固着部40を介して、上基材層50が下基材層20に積層される。
【0042】
ステップS12において、ラベル90を成形する。
図12は、ラベル90が成形された状態を示す断面図である。
図11に示される剥離紙82から上基材層50までの積層構造を、打抜きに代表される機械加工などで積層方向に切断して、ラベル90と不要部分92とを分離することにより、ラベル90が成形される。ラベル90は、少なくとも1つの貫通孔30とその周縁の弱粘着部60とを含むように、平面視において円形状に成形される。貫通孔30がラベル90の中央部に位置するように、ラベル90が成形される。ラベル90は、第1固着部41と第2固着部42とが両縁にあるように、打ち抜かれて形成される。
【0043】
このようにして、ラベル90の製造に係る一連の処理が終了する(
図4の「エンド」)。
【0044】
以上説明したラベル90の製造方法によれば、
図1,2に示される貫通孔30の周縁に弱粘着部60が設けられた逆止弁1を、容易かつ確実に製造することができる。このようにして製造されたラベル90の剥離紙82から逆止弁1を剥がして、逆止弁1を被貼着物100に貼着することで、
図1,2に示される構成が得られる。このような逆止弁1によれば、
図3を参照して説明したように、被貼着物100の内部から外部への気体の流れやすさを向上することができる。
【0045】
上述した製造方法の説明では、1つの逆止弁1を備えるラベル90が製造されるように説明を行なったが、積層体80から複数の逆止弁1が同時に形成されてもよい。積層体80は帯状の形状を有しており、複数の逆止弁1がその帯状の延びる方向に並ぶように形成されてもよい。一列に並ぶ複数の逆止弁1が形成されてもよく、多列に並ぶ複数の逆止弁1が形成されてもよい。
【0046】
複数の逆止弁1が同時に形成される場合、
図12に示される積層構造を切断するときに、剥離紙82を切断しないようにしてもよい。このようにすれば、不要部分92を剥離紙82から剥がして取り除いた後に、複数の逆止弁1が剥離紙82上に並んで配置されたラベル90を得ることができる。このようなラベル90は、たとえばロールラベルとして取り扱うことができるので取扱性に優れ、かつ強度上も有利である。
【0047】
ラベル90の被貼着物100への貼付は、人力で行ってもよいが、連続的に効率よく貼り付けることができることから、機械的に行うことが好ましい。機械的に行う場合、ラベリング装置(ラベルを被貼着物100に貼付する装置)が用いられる。例えば、ラベル90のロールラベルをラベリング装置に装填し、このロールラベルを長手方向に送り、その途中でラベリング装置のピール部にて、ロールラベルの剥離紙82をその裏面に対して傾斜するように曲げることにより、剥離紙82の表面からラベル90を剥離し、そのラベル90を順次送られてくる被貼着物100に貼付する。
【0048】
ステップS3の弱粘着部60を設ける処理においては、剥離紙82と粘着剤層10との間に弱粘着部60が設けられればよいので、粘着剤層10に弱粘着部60を貼り付ける上述した例に替えて、剥離紙82上に弱粘着部60を積層させてもよい。
【0049】
ステップS4~S9の貫通孔30を形成する処理は、接着剤84とフィルム材86とを用いる上述した例のほか、積層体80を折り返して円環スリット36の内部のみを剥離させて抜き取る、円環スリット36の内部の材料を吸引して取り除く、などによっても実現可能である。
【0050】
ラベルおよび貫通孔の形状は、円形だけでなく、楕円形状であってもよく、略長方形状、略正方形状、略三角形状などの略多角形状であってもよい。
【0051】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 逆止弁、10 粘着剤層、18 空間、20 下基材層、30 貫通孔、36 円環スリット、40 固着部、41 第1固着部、42 第2固着部、50 上基材層、60 弱粘着部、80 積層体、82 剥離紙、84 接着剤、86 フィルム材、90 ラベル、100 被貼着物、102 内部空間、104 孔。