(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、及び光拡散フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240221BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240221BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G02B5/02 B
F21S2/00 411
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2020064170
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 孝太郎
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-108677(JP,A)
【文献】特開2005-001392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/041903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
F21S 2/00
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の熱可塑性樹脂、第二の熱可塑性樹脂および無機粒子を含有し、
100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記第二の熱可塑性樹脂の含有量が、5質量部以上であり、
100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記無機粒子の含有量が、10質量部以上60質量部以下であり、
前記第一の熱可塑性樹脂が塩化ビニル系樹脂を含み、
前記第二の熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂を含み、
前記無機粒子の屈折率が1.40~2.80であり、前記無機粒子の体積中位径が1μm~10μmであり、
前記第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は、10MPa以上1200MPa以下であり、前記第一の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率よりも低い、
樹脂フィルム。
【請求項2】
ヘイズが、70%以上98%以下である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記第二の熱可塑性樹脂の含有量が、15質量部以下である、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記無機粒子が、炭酸カルシウムおよびシリカのいずれか一方または両方である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの一方の面に粘着剤層が形成され、
当該粘着剤層が光拡散性粒子を含む、光拡散フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムの層における粘着剤層が形成された面の裏面に、印刷層が形成されてなる、請求項5に記載の光拡散フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、及び光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDを内部光源とする電飾看板が増えており、LEDの直線光を拡散させ、内部の光源が外部から視認しにくくさせるため、光の遮光性を有する熱可塑性樹脂製のフィルムが使用されている。
【0003】
熱可塑性樹脂製のフィルムは、光の透過性があり、内部にLEDなどの電光を有する電飾看板の表示層として使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、透明樹脂と、架橋メラミン樹脂を含む球状体である光拡散剤と、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートとを含む光拡散シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-175227号公報(2011年9月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に記載の樹脂フィルムとは異なり、無機粒子を含む熱可塑性樹脂から形成された樹脂フィルムは、当該無機粒子が熱や光に対して安定性が高いという観点から、光拡散フィルムの用途に期待される。しかしながら、無機粒子を含有した熱可塑性樹脂からなるフィルムは、光拡散性が不十分であるという問題がある。また、光拡散性を向上させるため、無機粒子の含有量を増加させると、フィルムが脆くなり取扱いが困難になるという問題もある。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い光拡散性を備え、脆性が低い新規な樹脂フィルム、およびその関連技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、第一の熱可塑性樹脂、第二の熱可塑性樹脂および無機粒子を含有し、100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記第二の熱可塑性樹脂の含有量が、5質量部以上であり、100質量部の前記第一熱可塑性樹脂に対する前記無機粒子の含有量が、10質量部以上60質量部以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い光拡散性を備え、脆性が低い新規な樹脂フィルム、およびその関連技術を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様に係る樹脂フィルム1の概略を説明する図である。
【
図2】本発明の一態様に係る樹脂フィルム1を備えた光拡散フィルム10の概略を説明する図である。
【
図3】本発明の一態様に係る樹脂フィルム1を備えた光拡散フィルム11の概略を説明する図である。
【
図4】本発明の一態様に係る光拡散フィルム11の使用の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0012】
以下、本発明の一態様について、詳細に説明する。
<樹脂フィルム>
図1に示す、本発明の一態様に係る樹脂フィルム1は、第一の熱可塑性樹脂、第二の熱可塑性樹脂および無機粒子を含有する樹脂組成物から成形されてなる。さらに、一態様に係る樹脂フィルムは、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
樹脂フィルム1は、ヘイズが、70%以上98%以下であることが好ましい。ヘイズが70%以上であれば、高い光拡散性を当該樹脂フィルムに付与できる。光拡散性とは、光源から樹脂フィルムに照射され、当該樹脂フィルムを透過した光の拡散性である。また、ヘイズが98%以下であれば、光源から照射され、樹脂フィルムを透過し、樹脂フィルムの表面から照らされる光の輝度が過度に低下することを防止できる。よって、一態様に係る樹脂フィルム1は、例えば、内照看板の表示層として好適に使用できる。
【0014】
また、樹脂フィルム1は、破断伸度が20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。なお、樹脂フィルムは、破断伸度が20%以上であることにより、例えば、大面積を有する表示層として用いるために樹脂フィルムを取り扱うときの破断、貼付後における破断を好適に防止できる。なお、破断伸度の測定方法は、実施例の欄に詳細に説明される。
【0015】
樹脂フィルム1は、厚さが20~100μmであることが好ましく、30~60μmであることがより好ましい。本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、後述する第一の熱可塑性樹脂100質量部に対して15質量部以上50質量部以下の無機粒子を含むことによって、厚さが20~100μmという薄い樹脂フィルムに形成しても、70%以上98%以下という高いヘイズを備え、かつ、高い破断伸度を備えている。
【0016】
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、100質量部の第一の熱可塑性樹脂に対する前記無機粒子の含有量が、10質量部以上60質量部以下であることで、後述するように印刷層を形成するためのインキを均一に塗布できる。
【0017】
〔第一の熱可塑性樹脂〕
樹脂フィルムに含まれる第一の熱可塑性樹脂は、無機粒子を分散相として包含する連続相の主たる樹脂成分である。
【0018】
第一の熱可塑性樹脂は、23℃における貯蔵弾性率が第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率よりも高く、第一の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は1000~2500MPaであることが好ましく、1250~2000MPaであることがより好ましい。常温(23℃)における第一の熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が、1000MPa以上であれば、例えば、樹脂フィルムが過度に軟化せず、表示層として使用する際の変形を好適に防止できる。また、常温23℃における第一の熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が、2500Pa以下であれば、樹脂フィルムの脆化を好適に防止できるという効果を奏す。
【0019】
第一の熱可塑性樹脂および後述する第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率の測定条件は、温度範囲-60~200℃、昇温速度2℃/分、周波数1Hzであり、当該条件によって得られる粘弾性スペクトルの測定結果に基づいて求めるとよい。
【0020】
23℃における貯蔵弾性率が1000~2500MPaである、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびABS樹脂などからなる群から選択される熱可塑性樹脂を第一の熱可塑性樹脂を選択して用いることが好ましい。なかでも、屋外耐候性という観点から、第一の熱可塑性樹脂は塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂であることが好ましく、フィルムへの成形加工性が良好であることから、第一の熱可塑性樹脂は塩化ビニル系樹脂がより好ましい。なお、塩化ビニル系樹脂は、他の単量体単位を含んでいてもよく、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体であってもよい。
【0021】
〔第二の熱可塑性樹脂〕
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、第二の熱可塑性樹脂を含んでいる。本実施形態において、第二の熱可塑性樹脂は、樹脂フィルムにおける含有量が第一の熱可塑性樹脂のそれよりも少ない熱可塑性樹脂であってよい。本発明の一態様に係る樹脂フィルムにおいて、第二の熱可塑性樹脂は、第一の熱可塑性樹脂と相溶し、無機粒子を分散する連続相を形成し得る。
【0022】
第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は、第一の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率よりも低いことが好ましい。第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは20MPaである。また、第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は、2000MPa以下であることが好ましく、1200MPa以下であることがより好ましく、600MPaであることがさらに好ましい。常温23℃における第二の熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が、上記の上限値以下であれば、予め第二の熱可塑性樹脂に無機粒子を分散することで、樹脂フィルムにおけるドット抜けの原因となる当該無機粒子の凝集物をなくし、より均一に無機粒子を分散できる。この分散性の向上により、光拡散性を高められ、かつ樹脂フィルムの脆性を改善できる。また、常温23℃における第二の熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が、上記の下限値以上であれば、例えば、樹脂フィルムの脆化を好適に防止できる。
【0023】
第二の熱可塑性樹脂として、23℃における貯蔵弾性率が上記の範囲内である、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびエチレン-酢酸ビニル樹脂からなる群から選択される熱可塑性樹脂を選択し、樹脂フィルムに用いることが好ましい。なかでも、高い耐候性を有し、第一の熱可塑性樹脂との相溶性が良好であるという観点から、第二の熱可塑性樹脂はポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂であることが好ましい。
【0024】
〔無機粒子〕
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、光拡散性粒子として無機粒子を含む。当該無機粒子は、第一および第二熱可塑性樹脂を含む、連続相中に分散する分散相である。樹脂フィルムに含まれる無機粒子の分散相は、当該無機粒子の一次粒子として連続相中に分散されていることが好ましい。
【0025】
無機粒子の屈折率は、1.40~2.80であることが好ましく、1.4~1.70であることがより好ましい。屈折率が1.40~2.80である無機粒子を用いることで、樹脂フィルムに高い光拡散性を付与できる。
【0026】
また、無機粒子の体積中位径は、1μm~10μmであることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。光拡散性粒子の平行線透過率が極小値を示すため、粘着剤組成物から形成された粘着剤層を介して光源(被着体)に貼り付けたフィルム越しに見える当該光源の形状が十分に隠蔽できる。なお、無機粒子の体積中位径は、レーザー回折法によって測定することができる。
【0027】
上述の屈折率および体積中位径から、無機粒子には、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、炭酸マグネシウム、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア、チタニア、硫酸バリウム、およびハイドロタルサイト類などが挙げられる。これらの無機粒子は、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対する無機粒子の含有量は、10質量部以上60質量部以下であることが好ましい。100質量部の第一の熱可塑性樹脂に対する無機粒子の含有量が10質量部以上60質量部以下であれば、ヘイズが高く、かつ、破断伸度が高い樹脂フィルムが得られる。また、表面におけるインキなどによる印字性が優れる樹脂フィルムを好適に形成できる。
【0029】
〔その他の添加剤〕
一態様に係る樹脂フィルムは、その他の添加剤として、可塑剤、安定剤、滑剤を含んでいることが好ましい。
【0030】
〔可塑剤〕
一態様に係る樹脂フィルムは、可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤には、例えば、ポリエステル系可塑剤があげられ、ジオクチルテレフタレート(DOP)、およびジイソノニルテレフタレート(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤、並びにトリメリット酸エステル系可塑剤等の芳香族ポリエステル系可塑剤、並びにアジピン酸エステル等の脂肪酸ポリエステル系可塑剤が挙げられる。なかでも、数平均分子量(Mn)が、1000~10000である、脂肪族ポリエステル系可塑剤が、樹脂フィルムの表面にブリードし難いといことからより好ましい可塑剤である。その他、可塑剤には、パラフィン系鉱物油軟化剤、流動パラフィン、ポリブテン等が挙げられる。これら可塑剤は、第一の熱可塑性樹脂の種類に応じて、適宜選択すればよい。
【0031】
可塑剤の含有量は、100質量部の第一の熱可塑性樹脂に対して、10~50質量部であることが好ましく、20~40質量部であることがより好ましい。
【0032】
〔安定剤〕
一態様に係る樹脂組成物は、安定剤を含んでいることがより好ましい。安定剤は、例えば、熱安定剤、光安定剤、安定助剤などが挙げられる。
【0033】
また、熱安定剤は、例えば、ホスファイト化合物、ヒンダードアミン系化合物、および、過塩素酸金属塩が挙げられる。また、熱可塑性樹脂が塩化ビニル系樹脂である場合、熱安定剤には、さらに、金属錫系安定剤、有機酸の金属塩が挙げられる。
【0034】
例えば、ホスファイト化合物には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、及び4,4’-イソプロピリデン-ジフェノール-アルキルホスファイト等が挙げられ、過塩素酸金属塩には、例えば、過塩素酸ナトリウム、及び過塩素酸バリウム等が挙げられる。また、ヒンダードアミン系化合物には、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラエチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ〕ウンデカン、及び1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ〕ウンデカンが挙げられる。
【0035】
安定剤には、例えば、ジアルキル錫ジカルボキシレート、ジアルキル錫マレートエステル、及びジアルキル錫メルカプタイド等の錫系安定剤、並びに有機酸(オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベへニン酸、及び安息香酸等)の金属(Li、Na、K、Cs、Cu、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Sn、及びPb等)塩が挙げられる。これら安定剤は、塩化ビニル系樹脂を用いる時に用いることが好ましい。
【0036】
光安定剤には、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びシアノアクリレート化合物が挙げられる。
【0037】
ベンゾフェノン系化合物には、例えば、2,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及び2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系化合物には、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5,6-ジクロルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-メチル-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロル-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-フェニルフェニル)-5-クロルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、及び2-{2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)フェニル}-2-ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0039】
アノアクリレート化合物には、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、及び2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
また、別の安定助剤として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、並びにベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、及びステアロイルベンゾイルメタン等のβジケトン化合物を用いてもよい。
【0041】
〔滑剤〕
一態様に係る樹脂フィルムは、滑剤を含んでいてもよい。滑剤は、外部滑剤と内部滑剤とに大別される。外部滑剤には、ワックス、脂肪酸金属石鹸、および脂肪酸エステルが挙げられる。ワックスには、例えば、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、パラフィンワックス等が挙げられ、脂肪酸金属石鹸には、例えば、ステアリン酸亜鉛、およびステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられ、脂肪酸エステルには、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。また、内部滑剤には、例えば、脂肪酸エステルが挙げられ、脂肪酸エステルには、例えば、ステアリン酸ブチル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。その他、内部滑剤には、エポキシ化大豆油などが挙げられる。
【0042】
〔その他の添加剤〕
樹脂フィルムが含む添加剤は、上述の可塑剤、安定剤、および滑剤に限定されず、例えは、着色剤、帯電防止剤、加工助剤などを含んでいてもよい。
【0043】
<光拡散フィルム10>
図2に示すように、本発明の一態様に係る光拡散フィルム10は、本発明の一態様に係る樹脂フィルム1からなる基材層と、当該樹脂フィルム1の一方の面に形成された粘着剤層2とを備えてなる。また、一態様に係る光拡散フィルム10は、離型フィルム4によって粘着剤層2が保護されていてもよい。なお、樹脂フィルム1は、本発明に係る樹脂フィルムの一態様であるため、その説明を省略する。
【0044】
〔接着剤層2〕
粘着剤層2は、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、及び合成ゴム系粘着剤などの公知の粘着剤によって形成するとよい。光透過性、光安定性、及び熱安定性が優れているため、粘着剤層2を形成するための粘着剤組成物はアクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0045】
アクリル系粘着剤に含まれるアクリル系共重合体は、主たる共重合体単位として、アクリル酸エステル単量体が挙げられ、その他の単量体として、水酸基を有するアクリル酸エステル単量体、およびカルボキシル基を有するアクリル酸エステル単量体を含んでいること好ましい。アクリル系粘着剤は水酸基を有するアクリル酸エステル単量体、およびカルボキシル基を有するアクリル酸エステル単量体を単量体単位として含むことで、架橋剤と架橋できる。このようなアクリル系粘着剤には、例えば、ニッセツ(登録商標)シリーズ(日本カーバイド工業株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
架橋剤には、例えば、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、尿素系架橋剤、金属キレート系架橋剤、オルガノシラン系架橋剤、エポキシ系架橋剤及び酸無水物系架橋剤が含まれ、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることがより好ましい。イソシアネート系架橋剤の例には、CK-117(日本カーバイド工業株式会社製)が挙げられ、メラミン系架橋剤の例には、ニカラック(登録商標)MS-11及びMS-001(共に日本カーバイド工業株式会社製)、ならびに、マイコート715(日本サイテックインダストリーズ株式会社製、「マイコート」はオルネクスジャパン株式会社の登録商標)が含まれる。
【0047】
粘着剤層2の膜厚は、1μm以上200μm以下の範囲内であり、より好ましくは、5μm以上100μm以下の範囲内である。粘着剤層2の膜厚が、1μm以上であることで次好適な粘着性を備えた粘着剤層5を形成でき、粘着剤層5の膜厚が200μm以下であることで、光拡散フィルム10を被着体の曲面や凹凸に好適に追従させて貼り付けできる。
【0048】
その他、一態様に係る光拡散フィルム10が備えている粘着剤層2には、無機粒子、および樹脂粒子を含んでいることが好ましい。
【0049】
粘着剤層2に含まれる無機粒子には、上述の樹脂フィルムに含まれる無機粒子と同様のものが用いられる。また、樹脂粒子には、架橋ベンゾグアナミン樹脂ビーズ(屈折率1.65~1.66)、架橋メラミン樹脂ビーズ(屈折率1.65~1.66)シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.42)、アクリル樹脂ビーズ(1.50)が挙げられる。
【0050】
その他、粘着剤層2は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの安定剤、レベリング剤、沈降防止剤、消泡剤及び湿潤分散剤などの界面活性剤などの添加剤、並びに、可塑剤などをその他の成分として含んでいてもよい。
【0051】
(剥離フィルム4)
剥離フィルム4は、光拡散フィルムを被着体に貼り付ける前において、粘着剤層2を保護できるフィルムであり、離型性を有していれば、その種類は限定されない。このような離型フィルムには、表面にシリコーン樹脂、またはフッ素樹脂などによって表面処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0052】
〔光拡散フィルム〕
図3及び
図4を用いて、本発明の一態様に係る光拡散フィルム11の使用について説明する。
図3は、本発明の一態様に係る光拡散フィルム11の概略を説明する図である。
【0053】
図3に示す、本発明の一態様に係る光拡散フィルム11は、光拡散フィルム10の粘着剤層2が形成された面の裏面に、印刷層3が形成されている。光拡散フィルム10についてはその説明を省略する。
【0054】
〔印刷層3〕
図3に示す、光拡散フィルム11が備えている印刷層3は、樹脂フィルム1上にインキを塗布することによって形成される層である。インキは、インクジェット印刷、スクリーン印刷において使用される公知のインキであればよく、例えば、溶剤型インキ、水性エマルジョン型インキ、光硬化型インキなどが挙げられる。また、印刷層3は単一のインキ層でなくともよく、例えば、カラーインキ層の上に、クリアインキから形成されるクリアインキ層を備えていてもよく、オーバーラミネート層を設けてもよい。
【0055】
上述の通り、光拡散フィルム11は樹脂フィルム1を備え、樹脂フィルム1は、第一の熱可塑性樹脂100質量部に対する無機粒子の含有量は、10質量部以上60質量部以下であるため、樹脂フィルム1の表面におけるインキなどによる印字性が優れている。
【0056】
なお、光拡散フィルム11は、被着体である光源5に貼り付ける前において、剥離フィルム4が剥離される。
【0057】
図4は、光拡散フィルム11の使用の概略を説明する図である。
図4に示すように、本発明の一態様に係る光拡散フィルム11は、光源5が備える光透過性基材5bに貼り付けて使用される。光透過性基材5bに貼り付けられた光拡散フィルム11は、発光源5aによって、光透過性基材5b越しに光Lが照射される。光拡散フィルム11は、無機粒子を含みながら、ヘイズが70%以上98%以下とである。よって、光Lを好適に拡散させつつ、過度に光Lを遮蔽しない。よって、内照標識等の内照表示装置、透過型投影機等のスクリーン、自然光を拡散するパネルや窓や採光板やアーケード等に用いられる光拡散フィルムとして好適に用いられる。
【0058】
発光源5aは、限定されるものではないが、例えば、発行ダイオード(LED)、蛍光灯などが挙げられる。
【0059】
光透過性基材5bは、ガラス、または透明樹脂から成形された基材であり得る。光透過性基材5bに用いられるガラスには、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラス、及びリン酸塩ガラスに代表される各種ガラスが挙げられる。
【0060】
また、光透過性基材5bに用いられる透明樹脂には、アクリル樹脂、塩化ビニルに代表されるハロゲン含有樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0061】
<樹脂フィルムの製造>
本発明の一態様に係る樹脂フィルムの製造方法は、無機粒子と熱可塑性樹脂とを混練して混練物を得る工程と、当該混練物から樹脂フィルムを成形する工程とを包含している。
【0062】
樹脂フィルムを製造する工程は、第二の熱可塑性樹脂と無機粒子とを予備混練して予備混練物を得る段階と、得られた予備混練物と、第一の熱可塑性樹脂とを混練する段階とを含んでいることがより好ましい。
【0063】
予備混練物を得る段階では、第二の熱可塑性樹脂と無機粒子とを予備混練することで、ドット抜けの原因となる無機粒子の凝集物をなくし、樹脂フィルム中に均一な分散相として無機粒子を分散できる。第二の熱可塑性樹脂と無機粒子との予備混練は、例えば、ヘンシェルミキサー等の撹拌装置を用いるとよい。また、第二の熱可塑性樹脂と無機粒子との予備混練するときにおける温度は、第二の熱可塑性樹脂の種類に応じて決定すればよく、例えば、100~150℃の温度にて混練すればよい。
【0064】
予備混練物と、第一の熱可塑性樹脂とを混練する段階では、ロールミキサ、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、および二軸押出機などの混練装置を用いるとよい。ここで、混練温度は第一の熱可塑性樹脂の種類に応じて決定すればよく、例えば、150~200℃であればよい。
【0065】
混練物から樹脂フィルムを成形する工程では、第一の熱可塑性樹脂の種類に応じて、押出製法、カレンダー製法、ゾルキャスト製法、溶融キャスト製法など種々のフィルム製膜方法を使用することができる。
【0066】
<光拡散フィルムの製造>
本発明の一態様に係る光拡散フィルムの製造方法は、本発明の一態様に係る樹脂フィルムを製造する工程と、製造した樹脂フィルムの一方の面に粘着剤層を形成する工程とを包含している。粘着剤層を形成する工程は、粘着剤組成物を塗布する段階と、塗布した粘着剤組成物を乾燥する段階とを含むとよい。
【0067】
粘着剤組成物を塗布する段階は、樹脂フィルム、または離型フィルム上に粘着剤組成物を塗布する工程であり得、粘着剤組成物を塗布する方法には、公知の塗工方法が挙げられる。このような塗工方法の例には、スクリーン印刷、グラビア印刷、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、コンマコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スプレー塗装、静電塗装及び浸漬塗装が含まれる。なお、粘着剤組成物は、塗布作業性の観点から例えば、酢酸エチル等の公知の希釈溶剤を含んでいることが好ましい。
【0068】
塗布した粘着剤組成物を乾燥する段階は、例えば、公知の加熱装置による加熱により、塗工液組成物又はインキを乾燥する工程であり得、公知の加熱装置には、例えば、赤外線ヒータ、熱風ヒータ、又は、オーブン又はホットプレートなどの加熱装置が挙げられる。当該粘着剤層を形成する工程では、粘着剤組成物に含まれる希釈剤の蒸発と、粘着剤組成物に含まれる樹脂の架橋反応とが促進され、粘着剤層が形成され得る。
【0069】
粘着剤層を形成する工程において、樹脂フィルムに粘着剤層を形成した場合、当該粘着剤層に剥離フィルムを貼り付け、粘着剤層を保護してもよい。また、剥離フィルムに粘着剤層を形成した場合、粘着剤層に樹脂フィルムを貼り付けるとよい。
【0070】
その後、インクジェット印刷、スクリーン印刷によって、樹脂フィルムの表面には、印刷層が形成され得る。
【0071】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、第一の熱可塑性樹脂、第二の熱可塑性樹脂および無機粒子を含有し、100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記第二の熱可塑性樹脂の含有量が、5質量部以上であり、100質量部の前記第一熱可塑性樹脂に対する前記無機粒子の含有量が、10質量部以上60質量部以下である。これによって、第一および第二の熱可塑性樹脂中における無機粒子の分散性を高が高められる。よって、ドット抜けの原因となる無機粒子の凝集物をなくし、樹脂フィルム中に均一な分散相として無機粒子を分散できる。このため、樹脂フィルムは、無機粒子を含みながら、高い光拡散性と低い脆性とを備える。また、樹脂フィルムは、無機粒子を含むことによって、当該樹脂フィルムの表面において高い印字性を備えている。
【0072】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムでは、前記第二の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率は、10~1200MPaであり、前記第一の熱可塑性樹脂の23℃における貯蔵弾性率よりも低いことが好ましい。これにより、樹脂フィルムにおける無機粒子の分散性が十分に高められ、また樹脂フィルムの脆化が十分に抑制される。
【0073】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、ヘイズが、70%以上98%以下であることが好ましい。これにより、樹脂フィルムを例えば、内部照明式表示装置に好適に用いることができる。
【0074】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、前記無機粒子が、炭酸カルシウムおよびシリカのいずれか一方または両方であることが好ましい。これにより、高い光拡散性を備えつつ、当該樹脂フィルムの表面に高い印字性を付与できる。
【0075】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムに含まれる上記第二の熱可塑性樹脂は、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂である。これら熱可塑性樹脂から選択される上記第二の熱可塑性樹脂によって、無機粒子の分散性をより高められる。
【0076】
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、第二の熱可塑性樹脂として、ポリウレタン樹脂を含むことがより好ましい。耐候性、および第一の熱可塑性樹脂との相溶性の観点からポリウレタン樹脂を第二の熱可塑性樹脂として用いることが好ましい。
【0077】
本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、100質量部の前記第一の熱可塑性樹脂に対する前記第二の熱可塑性樹脂の含有量が、15質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂フィルムの脆性が抑制され、表示用フィルムとして十分な強度を有する樹脂フィルムが得られる。
【0078】
また、本発明の一態様に係る樹脂フィルムは、前記熱可塑性樹脂が塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。これによって、屋外耐候性が良好な樹脂フィルムが得られる。
【0079】
本発明の一態様に係る光拡散フィルムは、樹脂フィルムの一方の面に粘着剤層が形成され、当該粘着剤層が光拡散性粒子を含んでいてもよい。
【0080】
これにより、光拡散フィルムは、樹脂フィルムの層と粘着剤層との両方により高い光拡散を備えられる。
【0081】
また、本発明の一態様に係る光拡散フィルムは、前記樹脂フィルムの層における粘着剤層が形成された面の裏面に、印刷層が形成されてなる。光拡散フィルムは、樹脂フィルムの表面に高い印字性を付与できる。
【0082】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0083】
本発明の実施例について以下に説明する。
実施例1~9、及び比較例1~5に係るフィルムを製造し、ヘイズ、引張伸度、およびドット抜けの評価を行なった。
【0084】
<樹脂フィルムの作製>
以下に示す材料を用い、実施例1~9および比較例1~5の樹脂フィルムを作製した。
〔第一の熱可塑性樹脂〕
塩化ビニル系樹脂-1:
カネビニール(登録商標)S1008,株式会社カネカ製
平均重合度:800、貯蔵弾性率1709MPa(23℃)
〔第二の熱可塑性樹脂〕
ポリウレタン樹脂-1:
パンデックス(登録商標)T-R3080
ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製、貯蔵弾性率37MPa(23℃)
(メタ)アクリル樹脂-1:
パラペット(登録商標)SA-1000-FP
株式会社クラレ製、貯蔵弾性率54MPa(23℃)
(メタ)アクリル樹脂-2:
パラペット(登録商標)GR-F
株式会社クラレ製、貯蔵弾性率1024MPa(23℃)
ポリエステル樹脂-1:
バイロン(登録商標)600
東洋紡株式会社製
〔無機粒子〕
無機粒子-1:SL-1500(炭酸カルシウム、竹原化学工業株式会社製)
体積中位径2.0μm、屈折率1.65
無機粒子-2:サイリシア445(シリカ、富士シリシア株式会社)
体積中位径3.5μm、屈折率1.45
〔その他、添加剤〕
可塑剤-1:アデカサイザー(登録商標)PN-446(株式会社ADEKA製)
アジピン酸系ポリエステル、数平均分子量2000、固形分100質量%
安定剤-1:アデカスタブ(登録商標)AC-258(株式会社ADEKA製)
バリウム/亜鉛系(Ba/Zn系)安定剤、固形分100質量%
安定剤-2:アデカスタブ(登録商標)CPL-1563(株式会社ADEKA製)
固形分:100質量%
外部滑剤-1:AC-6A(ハネウェル社)
ポリエチレンワックス
内部滑剤-1:ブチルステアレート(川研ファインケミカル株式会社)
【0085】
〔実施例1〕
異方向二軸押出機によって、以下に示す含有量にてポリウレタン樹脂-1及び無機粒子-1を混練し、ペレット化することで予備混練物Iのペレットを得た。
ポリウレタン樹脂-1:8質量部
無機粒子-1:15質量部
【0086】
続いて、ヘンシェルミキサーによって、以下に示す含有量にて塩化ビニル系樹脂-1、可塑剤-1、安定剤-1、安定剤-2、外部滑剤-1及び内部滑剤-1を90℃になるまで攪拌し、その後、常温まで冷却し、予備混練物IIを得た。
塩化ビニル系樹脂-1:100質量部
可塑剤-1:30質量部
安定剤-1:2.7質量部
安定剤-2:1.2質量部
外部滑剤-1:0.2質量部
内部滑剤-1:2.0質量部
【0087】
その後、ヘンシェルミキサーにて得られた予備混練物IIを再撹拌し、予備混練物Iのペレットを全量投入した後、2本ロールのロールミキサを用いて、ロール温度160℃、10分間の条件で溶融混練してコンパウンドを得た。溶融混練後、逆L型に配列した4本カレンダーロールを用い、ロール温度175℃~185℃の条件でコンパウンドを圧延し、厚み50μmのフィルムを製膜した。
【0088】
〔実施例2~10、比較例1~4〕
表1に示す組成にて、それぞれ予備混練物Iを作製した以外は、実施例1と同じ条件で実施例2~10の樹脂フィルム、および比較例1~4の樹脂フィルムを作製した。
【0089】
<ヘイズ測定>
ヘイズの測定は、ヘイズメーター(日本電飾工業株式会社製、NDH-2000)を用いて測定した。表1にヘイズの評価結果を示す。
【0090】
<引張試験(破断伸度)>
実施例1~10の樹脂フィルムおよび比較例1~4の樹脂フィルムを、それぞれ150mm×10mm幅に裁断し、試験片を得た。破断伸度の評価は、引張試験機にて引張速度200mm/分、チャック間距離100mm、測定温度10℃の条件で試験片を引張り、破断した際の伸度を測定した。破断伸度の評価基準は、以下に示す通りであり、表1に破断伸度の評価結果を示す。
〔評価基準〕
優:破断伸度が100%以上であった。
良:破断伸度が50%以上100%未満であった。
可:破断伸度が20%以上50%未満であった。
不可:破断伸度が20%未満であった。
【0091】
<ドット抜け評価>
実施例1~10の樹脂フィルムおよび比較例1~4の樹脂フィルムを、それぞれ200mm角に裁断し、試験片を得た。ドット抜けの評価は、試験片の背面を100mm離れた位置から照らすようにLED光源を配置し、フィルムの正面から見たときにおいて、黒点として確認されるドット抜けの個数を計数した。ドット抜けの評価基準は、以下に示す通りであり、表1にドット抜けの評価結果を示す。
〔評価基準〕
良:ドット抜けがなかった。
可:1~3個のドット抜けがあった。
不可:4個以上のドット抜けがあった。
【0092】
【0093】
表1に示すように、実施例1~9の樹脂フィルムは、ヘイズが70~98%の間であり、かつ、破断伸度が20%以上という高い値を示した。実施例10の樹脂フィルムでは、第二の熱可塑性樹脂が多いとヘイズが高くなることを確認した。比較例1の樹脂フィルムは、無機粒子-1の含有量が少なく、ヘイズが小さい結果となった。また、比較例2および比較例3樹脂フィルムの結果から、無機粒子-1が多いか、第二の熱可塑性樹脂が少ないと、ヘイズが99%と高く、かつ破断伸度が低くなることを確認した。また、比較例4の樹脂フィルムは、第二の熱可塑性樹脂を含んでいないことから、破断伸度が低い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、内側からの光を用いて情報を表示する内部照明式表示装置(内照表示装置ともいう)や、自然光を拡散する光拡散シートに用いられる。具体的には、照明カバーを用いた照明器具、光柱や光壁等の照明看板や電飾看板や内照標識等の内照表示装置、遊技機、及び自動販売機等に用いられる内照表示装置や、透過型投影機等のスクリーン、自然光を拡散するパネルや窓や採光板やアーケード等に用いられる光拡散シートを提供できる。
【符号の説明】
【0095】
1 樹脂フィルム
2 粘着剤層
3 印刷層
4 離型フィルム
5 光源
5a 発光源(光源)
5b 光透過性基材(光源)
10 光拡散フィルム
11 光拡散フィルム