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  • 特許-吹付材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】吹付材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20240221BHJP
   B22D 41/02 20060101ALI20240221BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240221BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C04B35/66
B22D41/02 C
F27D1/00 N
F27D1/16 W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020066179
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021161004
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 優貴
(72)【発明者】
【氏名】白曼 統一
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-114573(JP,A)
【文献】特開2006-219330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
B22D 41/02
F27D 1/00,1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料及びバインダーを含む吹付材であって、
前記耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に、平均粒径1mm超の蝋石原料を1質量%以上15質量%以下含み、かつ、シリマナイト族原料を1質量%以上40質量%以下含み、さらに、ムライト原料、シャモット原料、ボーキサイト原料、炭化珪素原料、アルミナ原料及びシリカ原料から選択される一種以上を合計で50質量%以上90質量%以下含む、吹付材。
【請求項2】
前記耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に、前記平均粒径1mm超の蝋石原料を3質量%以上8質量%以下含み、かつ、前記シリマナイト族原料を5質量%以上20質量%以下含む、請求項1に記載の吹付材。
【請求項3】
粒径1mm以上の耐火原料の合量を100質量%とし、この合量100質量%中に、Al含有量が90質量%未満であってムライトを鉱物に含むムライト系原料として、ムライト原料、シャモット原料及びボーキサイト原料から選択される一種以上を合計で50質量%以上含む、請求項1又は2に記載の吹付材。
【請求項4】
混銑車又は溶銑鍋に適用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の吹付材。
【請求項5】
湿式吹付施工に使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吹付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の溶融金属容器、あるいは高温炉、溶融金属処理装置等の内張りの形成や補修に使用する吹付材に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属容器、高温炉、溶融金属処理装置等に対し、その内張りの形成あるいは補修の手段として、吹付施工が行われている。吹付施工は、湿式吹付施工と乾式吹付施工とに大別される。湿式吹付施工は、施工水を添加して予め泥しょう状に調整した吹付材を、ノズル内又は圧送管内にて急結剤を添加して吹付する施工方法である。他方、乾式吹付施工は吹付材を乾燥状態でガス搬送し、ノズル部で施工水を添加して吹付する施工方法である。
【0003】
このような吹付施工により形成される施工体は、溶融金属熱等の加熱を受けると焼結収縮による剥離を生じやすいという問題がある。
従来、焼結収縮による施工体の剥離を抑制するための技術として、蝋石原料を使用することで吹付材(施工体)に残存膨張性を付与する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
このように蝋石原料を使用することで施工体の剥離は少なくなるものの、依然として施工体の剥離は発生しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-114573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、吹付施工により形成される施工体の剥離を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが蝋石原料を含有する吹付材の吹付施工試験を多数回実施し、その施工体の剥離現象について詳細に調査した結果、施工体の稼働面側(高温側)での残存膨張性に比べ、施工体の背面側(低温側)での残存膨張性が小さく、結果として施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)との残存膨張差が大きくなり、この残存膨張差が施工体の剥離を助長していることがわかった。すなわち、蝋石原料は、施工体の稼働面側の温度域(例えば1450℃程度の高温域)では大きな残存膨張性を示すが、施工体の背面側の温度域(例えば1200℃程度の低温域)ではあまり残存膨張性を示さない。このため、蝋石原料を使用するのみでは、施工体の背面側(低温側)での残存膨張が不足し、結果として施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)との残存膨張差が大きくなる。残存膨張差が大きいと、特に施工体が使用後冷却される段階で、施工体に亀裂を生じやすくなり施工体が剥離しやすくなる。
【0008】
そこで本発明者らは、施工体の背面側(低温側)においても十分かつ適度な残存膨張性を付与し、施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)との残存膨張差を小さくすることを志向し、そのための適切な吹付材の原料構成について検討した。その結果、平均粒径1mm超の蝋石原料とシリマナイト族原料とをそれぞれ特定量組み合わせて使用することで、施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)の両方において十分かつ適度な残存膨張性を確保でき、その残存膨張差を小さくできることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一観点によれば、次の吹付材が提供される。
耐火原料及びバインダーを含む吹付材であって、前記耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に、平均粒径1mm超の蝋石原料を1質量%以上15質量%以下含み、かつ、シリマナイト族原料を1質量%以上40質量%以下含み、さらに、ムライト原料、シャモット原料、ボーキサイト原料、炭化珪素原料、アルミナ原料及びシリカ原料から選択される一種以上を合計で50質量%以上90質量%以下含む、吹付材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吹付材によれば、吹付施工により形成される施工体の剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】湿式吹付施工の一例のイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吹付材は耐火原料及びバインダーを含み、これら耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に、平均粒径1mm超の蝋石原料を1質量%以上15質量%以下含み、かつ、シリマナイト族原料を1質量%以上40質量%以下含む。
【0013】
蝋石原料は、パイロフィライト、石英等を主成分とした天然原料である。加熱を受けると石英のα型からβ型への変態よる体積膨張で吹付材に残存膨張性を付与する。より具体的には上述のとおり、蝋石原料は施工体の稼働面側の温度域(例えば1450℃程度の高温域)において大きな残存膨張性を示す。
蝋石原料による残存膨張性の効果を十分に発揮させるため、蝋石原料の粒度は平均粒径1mm超とする。ここで、平均粒径1mm超とは、蝋石原料を目開き1mmの篩いで篩って分離したときに、篩いの上に残った蝋石原料の質量が、篩いを通過した蝋石原料の質量を上回る粒度のことである。
【0014】
本発明では、施工体の稼働面側(高温側)において十分かつ適度な残存膨張性を確保するために、平均粒径1mm超の蝋石原料を1質量%以上15質量%以下で使用する。
平均粒径1mm超の蝋石原料が1質量%未満であると、施工体の稼働面側(高温側)での残存膨張不足により施工体に収縮亀裂が発生して施工体が剥離しやすくなる。平均粒径1mm超の蝋石原料が15質量%超であると、耐火度が低下してしまう。また、施工体の稼働面側(高温側)での残存膨張が大きくなりすぎて施工体が剥離しやすくなる。
平均粒径1mm超の蝋石原料の使用量(含有量)は、耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に占める割合で3質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0015】
シリマナイト族原料は低温域から高温域までゆるやかな残存膨張性を示す。そこで本発明では、施工体の背面側(低温側)において十分かつ適度な残存膨張性を確保するために、シリマナイト族原料を1質量%以上40質量%以下で使用する。
シリマナイト族原料が1質量%未満であると、施工体の背面側(低温側)での残存膨張不足により施工体に収縮亀裂が発生して施工体が剥離しやすくなる。シリマナイト族原料が40質量%超であると、施工体の背面側(低温側)での残存膨張が大きくなりすぎて施工体が剥離しやすくなる。
シリマナイト族原料の使用量(含有量)は、耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に占める割合で5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
なお、シリマナイト族原料としては、アンダルサイト原料、カイヤナイト原料及びシリマナイト原料の3種類があるが、膨張挙動の点からアンダルサイト原料又はシリマナイト原料が好ましく、アンダルサイト原料が最も好ましい。
【0016】
このように本発明では、平均粒径1mm超の蝋石原料とシリマナイト族原料とをそれぞれ特定量組み合わせて使用することで、施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)の両方において十分かつ適度な残存膨張性を確保でき、施工体の剥離を抑制することができる。
すなわち、平均粒径1mm超の蝋石原料のみを使用する場合、施工体の背面側(低温側)での残存膨張が不足し、結果として施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)との残存膨張差が大きくなる。残存膨張差が大きいと、特に施工体が使用後冷却される段階で、施工体に亀裂を生じやすくなり施工体が剥離しやすくなる。また、シリマナイト族原料のみを使用する場合、施工体の稼働面側(高温側)において十分な残存膨張が得られず、結果として施工体が剥離しやすくなる。
【0017】
本発明の吹付材は、耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に、平均粒径1mm超の蝋石原料を1質量%以上15質量%以下、シリマナイト族原料を1質量%以上40質量%以下含むが、その残部には、蝋石原料及びシリマナイト族原料以外のアルミナ-シリカ質原料(例えば、ムライト原料、シャモット原料、ボーキサイト原料等)、炭化珪素原料、アルミナ原料及びシリカ原料から選択される一種以上を合計で50質量%以上90質量%以下含むことができる。
なお、本発明の吹付材において耐火原料の粒度は、蝋石原料の粒度を平均粒径1mm超とするほかは、吹付材の流動性・充填性等を考慮して適宜、粗粒、中粒、微粒に調整する。
【0018】
本発明の吹付材では、粒径1mm以上の耐火原料の合量を100質量%とし、この合量100質量%中に、Al含有量が90質量%未満であってムライトを鉱物に含む耐火原料を50質量%以上含むことが好ましい。Al含有量が90質量%未満であってムライトを鉱物に含む耐火原料(以下「ムライト系原料」という。)としては、ムライト、シャモット、ボーキサイト等が挙げられるが、ムライト系原料は鉱物としてコランダムを実質的に含まないので、施工体の稼働面側の温度域(例えば1450℃程度の高温域)での熱膨張率が低いという特性を有する。したがって、粒径1mm以上の耐火原料の合量100質量%中にムライト系原料を50質量%以上含むことで、施工体の稼働面側の温度域(例えば1450℃程度の高温域)での施工体の熱膨張を抑制することができる。これにより、高温下での吹付材の熱膨張により発生する応力を小さくすることでき、施工体の剥離をさらに抑制することができる。なお、粒径1mm以上の耐火原料の合量100質量%中におけるムライト系原料の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば85質量%程度とすることができる。
【0019】
なお、本発明でいう粒径とは、耐火原料を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径1mm以上の耐火原料とは篩い目が1mmの篩い目を通過しない耐火原料のことであり、粒径1mm未満の耐火原料とは篩い目が1mmの篩い目を通過する耐火原料のことである。
【0020】
本発明の吹付材においてバインダーとしては、アルミナセメント、水硬性遷移アルミナ、ポルトランドセメント、マグネシアセメント、ケイ酸塩、リン酸塩等の、吹付材のバインダーとして一般的に使用されているものを使用可能である。また、バインダーの一部又は全部は、粒径75μm以下のマグネシア微粉とシリカ超微粉との組み合わせにより凝集性の結合部を形成するものとしてもよい。上記例示したバインダーのうち、早期強度が大きく、耐食性に優れる点からアルミナセメントを用いるのが好ましい。
バインダーの使用量(含有量)は、耐火原料及びバインダーの合量100質量%中に占める割合で1質量%以上15質量%以下程度とすることができる。
【0021】
本発明の吹付材には、上述の耐火原料及びバインダー以外に、分散剤、硬化調整剤、繊維、増粘剤等の各種添加剤を使用することができる。なお、本発明においてこれら添加剤は、耐火原料及びバインダーの合量100質量%に対して外掛けで添加するものとし、その添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で技術常識も考慮して適宜決定する。
【0022】
本発明の吹付材は、混銑車、溶銑鍋、溶鋼鍋等の溶融金属容器、あるいは高温炉、溶融金属処理装置等の内張りの形成や補修に広く適用することができるが、なかでも混銑車又は溶銑鍋に好適に適用することができる。本発明の吹付材は蝋石原料を含むところ、溶銑は溶鋼よりも温度が低いので、蝋石原料が軟化して半溶融状態となり荷重下において変形が大きくなって冷却される段階で施工体に亀裂を生じるといった弊害を生じにくい。また、溶銑は溶鋼よりも粘性が低いことから亀裂に差し込みやすいので、混銑車又は溶銑鍋においては本発明のような亀裂が入りにくい吹付材を適用することが好ましい。
【0023】
本発明の吹付材は、湿式吹付施工と乾式吹付施工のうち、湿式吹付施工に好適に用いることができる。湿式吹付施工では乾式吹付施工に比べ緻密な施工体が得られやすく、施工体の稼働面側(高温側)と背面側(低温側)の両方において十分かつ適度な残存膨張性を確保できるという本発明の効果が顕著に得られる。
【0024】
また、本発明の吹付材において蝋石原料とシリマナイト族原料の含有量は、施工条件に応じて適宜調整することができる。例えば、湿式吹付施工に用いる場合、上述のとおり緻密な施工体が得られやすいので蝋石原料とシリマナイト族原料の含有量は少なくできる。すなわち緻密な施工体では、蝋石原料とシリマナイト族原料は少量でも上記効果が得られやすい。一方、湿式吹付施工であっても雰囲気温度の高い条件において熱間吹付材として用いる場合は、施工水の添加量が多くなり施工体がポーラスになるので、蝋石原料とシリマナイト族原料の添加量は相対的に多くする。
【0025】
図1は、湿式吹付施工の一例のイメージ図である。施工水を添加して予め泥しょう状に調整した吹付材を、圧送管5を介してノズル1内に圧送する。吹付材はノズル1先端近傍に接続した急結剤導入管2から圧縮空気をもって急結剤を添加しつつ、ノズル1から噴出される。そして、吹付対象の壁面3(例えば混銑車又は溶銑鍋のウエアれんが)に吹付け施工体(施工体)4を形成する。
なお、図1では急結剤の添加をノズル1内としているが、ノズル1後方の圧送管5内でもよい。
【0026】
ノズル1内又はノズル1後方の圧送管5にて添加する急結剤は液状、粉末のいずれでもよい。
液状急結剤としては、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、ケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ等の水溶液である。また、これらの液状急結剤には、必要によりカチオン系あるいはアニオン系等の凝集剤を組み合わせる。
粉末急結剤としては、例えばアルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム、ケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、炭酸ソーダ、塩化カルシウム,水酸化カルシウム、酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ポルトランドセメント、硫酸ばん土等から選ばれる一種以上である。
【0027】
吹付材に対する急結剤の添加は、圧縮空気をもって行うことができる。また、粉末急結剤は耐火物微粉と混合した状態で添加することもできる。なお、ノズル内又はノズル後方の圧送管にて添加する急結剤及びこれに混合する耐火物微粉は、本発明でいう耐火原料及びバインダーの概念に含まれないものとする。
【0028】
吹付材を泥しょう状に調整するための施工水の添加量は、吹付材全体100質量%に対して外掛けで5質量%以上15質量%以下が好ましい。また、泥しょう状に調整した吹付材(施工水を含む)に対する急結剤の添加量は、吹付材の付着性の点から、外掛けで0.5質量%以上3質量%以下が好ましい。
【実施例
【0029】
表1に示す各例の配合(耐火原料及びバインダー)の合量100質量%に対して外掛けで10質量%の施工水を添加して予め泥しょう状に調整した吹付材を、ピストン式圧送ポンプにて圧送し、ノズル部で急結剤を圧縮空気にて外掛け2質量%添加し、耐火物垂直壁に吹付して得た施工体について、下記を評価した。
なお、表1において「その他耐火原料」とは、同表に記載のアルミナ-シリカ質原料以外のアルミナ-シリカ質原料(例えば粒径1mm未満のムライト原料)、炭化珪素原料、アルミナ原料及びシリカ原料から選択される一種以上である。
【0030】
<残存線変化率>
JIS-2554に準拠して1200℃と1450℃において測定した。1200℃は使用時の施工体の背面側の温度を想定し、1450℃は使用時の施工体の稼動面側の温度を想定したものである。具体的には以下の基準で評価した。
1200℃の残存線変化率
◎(優):-0.2以上0.2未満、〇(良):-0.3以上-0.2未満、△(可):-0.5以上-0.3未満又は0.2以上0.5未満、×(不可):-0.5未満又は0.5以上(単位:%)
1450℃の残存線変化率
◎(優):0以上0.5未満、〇(良):0.5以上1未満、△(可):1以上2未満又は-0.5以上0未満、×(不可):2以上又は-0.5未満(単位:%)
【0031】
<残存膨張差>
上記の1200℃と1450℃における残存線変化率の差で評価した。具体的には以下の基準で評価した。
◎(優):0.7未満 〇(良):0.7以上1.3未満、△(可):1.3以上2.5未満、×(不可):2.5以上
【0032】
<熱膨張率>
JIS-R2207に準拠して1450℃おいて測定した。具体的には以下の基準で評価した。
◎(優):0.5以下、〇(良):0.5超0.75以下、△(可):0.75超1以下、×(不可):1超(単位:%)
【0033】
<熱間強さ>
雰囲気温度1450度に保持された雰囲気内でJIS-R2553に準拠して測定した。具体的には以下の基準で評価した。
◎(優):0.5以上、〇(良):0.3以上0.5未満、△(可):0.1以上0.3未満、×(不可):0.1未満(単位:MPa)
【0034】
<総合評価>
上記各評価の結果に基づき以下の基準で評価した。
◎(優):全ての評価が◎の場合、〇(良):×がなく少なくとも一つ○又は△がある場合、×(不良):少なくとも一つ×がある場合
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示しているように本発明の範囲内にある実施例1~10は、総合評価が◎(優)又は〇(良)であり良好な評価結果が得られた。すなわち実施例1~10では、1200℃と1450℃の両方において十分かつ適度な残存膨張性を確保でき、しかも残存膨張差も小さいことから、実使用環境において施工体の剥離を抑制することができると判断される。
【0037】
比較例1はシリマナイト族原料を含まない例である。1200℃における残存線変化率が小さく、その結果、残存膨張差が大きくなった。
比較例2は蝋石原料を含まない例である。1450℃における残存線変化率が小さくなった。
比較例3は蝋石原料の含有量が多い例である。1450℃における残存線変化率が大きくなりすぎた。また、耐火度が低下して熱間強さが低くなった。
比較例4はシリマナイト族原料の含有量が多い例である。1200℃における残存線変化率が大きくなりすぎた。
このように比較例1~4では、1200℃と1450℃の両方において十分かつ適度な残存膨張性を確保できないので、実使用環境において施工体の剥離を抑制することができないと判断される。
【符号の説明】
【0038】
1 ノズル
2 急結剤導入管
3 壁面
4 吹付け施工体(施工体)
5 圧送管
図1