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特許7441105アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含有するフィルムコーティング錠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含有するフィルムコーティング錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4422 20060101AFI20240221BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240221BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240221BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K31/4422
A61K31/4245
A61K9/36
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61P9/10
A61P9/12
A61P43/00 111
A61P43/00 116
A61P43/00 121
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020073113
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161103
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 文耶
(72)【発明者】
【氏名】西島 聡
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001782(JP,A)
【文献】特開2015-013857(JP,A)
【文献】特表2012-525323(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170854(WO,A1)
【文献】特開2020-015689(JP,A)
【文献】国際公開第2007/083679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含む素錠、フィルム層の可塑剤としてヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より一種以上選択される添加剤を含むフィルム層を含有し、フィルム層にポリエチレングリコールを含まない、フィルムコーティング錠。
【請求項2】
前記素錠が、アジルサルタンを含む層及びアムロジピンベシル酸塩を含む層を含有してなる請求項1に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項3】
前記素錠が、アジルサルタンを含む層及びアムロジピンベシル酸塩を含む層を含有してなる二層錠である請求項1又は2のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項4】
前記添加剤が、フィルム層100質量部あたり1~40%である請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項5】
前記添加剤が、ヒドロキシプロピルセルロース又はプロピレングリコールである請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項6】
更に、フィルム層に、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄からなる群より一種以上選択される遮光剤を含有してなる請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含有するフィルムコーティング錠に関する。
【背景技術】
【0002】
アジルサルタンは、化学名2‐Ethoxy‐1‐{[2′‐(5‐oxo‐4,5‐dihydro‐1,2,4‐oxadiazol‐3‐yl)biphenyl‐4‐yl]methyl}‐1H‐benzo[d]imidazole‐7‐carboxylic acidと称され、既に医薬品として医療の現場に提供されている。アジルサルタンは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であり、高血圧症の治療剤として知られている(非特許文献1)。
【0003】
アムロジピンベシル酸塩は、化学名3‐Ethyl 5‐methyl(4RS)‐2‐[(2‐aminoethoxy)methyl]‐4‐(2‐chlorophenyl)‐6‐methyl‐1,4‐dihydropyridine‐3,5‐dicarboxylate monobenzenesulfonateと称され、こちらも既に医薬品として医療の現場に提供されている。アムロジピンは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬としての作用を示すことから、高血圧症、狭心症の治療剤として知られている(非特許文献2)。
【0004】
特許文献1には、アンジオテンシンII受容体拮抗作用を有するベンズイミダソール誘導体(アジルサルタン)と、カルシウム拮抗薬(アムロジピン)とを安定に含有し、消化管における、薬物の製剤からの溶出性が適切にコントロールされたアジルサルタン、アムロジピンベシル酸塩を有効成分し、ヒプロメロース、マクロゴール6000、酸化チタン、黄色三二酸化鉄のフィルム層により被覆されたフィルムコーティング錠(二層錠)に関する発明が記載されている。具体的な実施例として、ポリエチレングリコールを含むフィルム層により被覆されたフィルムコーティング錠が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、アムロジピンとアジルサルタンの二層錠において、アムロジピンの安定性を高めて、アムロジピンのN-ホルミル体の経時的生成を抑制するために、アジルサルタン含有層とアムロジピン含有層とを含んでなる二層錠であって、該二層錠の重量中、アムロジピン含有層の重量が35~85%を占めるものである二層錠に関する発明が記載され、更にタルクが分散されたヒプロメロース及びトリアセチンを含むフィルム層の被覆されたフィルムコーティング錠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5666471号公報
【文献】特開2019-1782号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】添付文書「アジルバ(登録商標)錠10mg/20mg/40mg」、2018年7月改訂(第12版)
【文献】添付文書「アムロジピン錠10mg「JG」/20mg「JG」/40mg「JG」」、2017年5月改訂(第14版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、保存安定性(例えば、温湿度条件あるいは熱条件下)に優れたアジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含有するフィルムコーティング錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の錠剤を検討するにあたって、本発明者らは、アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩の安定性に着目して検討を行い、先ずはアジルサルタンの保存安定性に効果のあるとされているポリエチレングリコールが、意外にもアムロジピンベシル酸塩由来の分解物(N-ホルミル体)を温湿度条件下に経時的に生成させ、該分解物量が増大することを知った。本発明者らは、更に鋭意検討を行った結果、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より一種以上選択される添加剤を含むフィルム層が、アムロジピン由来の分解物の生成を抑制して、安定性の改善されたフィルムコーティング錠が得られること等を知見して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含む素錠、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より一種以上選択される添加剤を含むフィルム層を含有してなるフィルムコーティング錠、
(2)前記素錠が、アジルサルタンを含む層及びアムロジピンベシル酸塩を含む層を含有してなる前記(1)に記載のフィルムコーティング錠、
(3)前記素錠が、アジルサルタンを含む層及びアムロジピンベシル酸塩を含む層を含有してなる二層錠である前記(1)又は(2)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(4)前記添加剤が、フィルム層100質量部あたり1~40%である前記(1)~(3)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(5)前記添加剤が、プロピレングリコールである前記(1)~(4)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
(6)更に、フィルム層に、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄からなる群より一種以上選択される遮光剤を含有してなる前記(1)~(5)のいずれかに記載のフィルムコーティング錠、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存安定性(例えば、温湿度条件あるいは熱条件下)に優れたアジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における「安定性」とは、アジルサルタン及びアムロジピンの分解等に起因する類縁物質量の増大及び/又は未知物質の生成・増加を抑制することを意味する。評価方法としては、例えば、温湿度条件下、例えば、後記実施例に記載の試験条件下等に錠剤を保管した後、高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)により試験を行い、類縁物質量を算出して、試験開始時の総類縁物質量と比較する等して、アジルサルタン及びアムロジピン含有フィルムコーティング錠の安定性を評価する。次に、評価基準は、例えば、温湿度条件下、例えば、40℃75%RHで7日間又は14日間、あるいは60℃で7日間又は14日間保管するとき、アジルサルタン由来の類縁物質(デスエチル体)、アムロジピンベシル酸塩由来の類縁物質(N-ホルミル体)及び総類縁物質量が特定量以下として規定される。例えば、アジルサルタン由来の類縁物質(デスエチル体)について、ある態様として0%~0.4%、アムロジピンベシル酸塩由来の類縁物質(N-ホルミル体)について、ある態様として0%~0.2%、総類縁物質量について、ある態様として0%~0.9%と規定する。
【0013】
本明細書における「安定性に影響を及ぼさない」あるいは「安定性に影響の少ない」とは、有効成分に由来する類縁物質量について、製品供給の観点から、安全性が寛容される範囲内であることを意味する。例えば、後記試験方法に記載された方法に従って類縁物質量を算出することにより、類縁物質量の許容値が、ある態様として0%~0.9%と規定される。
【0014】
本明細書における「ポリエチレングリコールを実質的に含まない」とは、アムロジピンベシル酸塩の安定性に影響を及ぼさない範囲内のポリエチレングリコールの量を意味する。例えば、フィルム層100質量部あたりポリエチレングリコールを1%未満、ある態様として0.5%未満、ある態様として0.1%未満、と規定される。
【0015】
以下に、本発明のアジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩を含むフィルムコーティング錠に関して説明する。
【0016】
本発明に用いられるアジルサルタンは、化学名2‐Ethoxy‐1‐{[2′‐(5‐oxo‐4,5‐dihydro‐1,2,4‐oxadiazol‐3‐yl)biphenyl‐4‐yl]methyl}‐1H‐benzo[d]imidazole‐7‐carboxylic acidと称され、既に医薬品として医療の現場に提供され、臨床で使用されている。アジルサルタンは、特許第2514282号公報に記載の製造方法に従って、容易に製造することができる。
【0017】
アジルサルタンの効能及び効果は、「高血圧症」である。用法及び用量は、上記効能及び効果に対して、通常、成人にはアジルサルタンとして20mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最大投与量は40mgとする。
【0018】
アジルサルタンの配合量は、フィルムコーティング錠全量あたり、ある態様として5%~15%、ある態様として8%~10%である。
【0019】
本発明に用いられるアムロジピンベシル酸塩は、化学名3‐Ethyl 5‐methyl(4RS)‐2‐[(2‐aminoethoxy)methyl]‐4‐(2‐chlorophenyl)‐6‐methyl‐1,4‐dihydropyridine‐3,5‐dicarboxylate monobenzenesulfonateと称され、既に医薬品として医療の現場に提供され、臨床で使用されている。アムロジピンは、特許第1645822号公報に記載の製造方法に従って、容易に製造することができる。
【0020】
アムロジピンベシル酸塩の効能及び効果は、「高血圧症、狭心症」である。用法及び用量は、高血圧症に対して、成人には、通常、アムロジピンとして2.5~5mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には1日1回10mgまで増量することができる。6歳以上の小児には、通常、アムロジピンとして2.5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。狭心症に対して、成人には、通常、アムロジピンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じ適宜増減する。
【0021】
アムロジピンベシル酸塩の配合量は、アムロジピンの配合量として、錠剤全量あたり、ある態様として0.5%~15%、ある態様として1%~10%である。
【0022】
アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩含有フィルムコーティング錠については、効能又は効果として「高血圧症」というものであり、用法及び用量として「成人には1日1回1錠(アジルサルタン/アムロジピンとして20mg/2.5mg又は20mg/5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。」というものである。
【0023】
本発明に用いるヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より一種以上選択される添加剤としては、製薬学的に許容され、アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩の安定性に影響を与えるものでなければ、あるいは安定性に影響の少ないものであれば、特に制限されない。
【0024】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、製薬的に許容されるものである。例えば、HPC-SSL(例えば、日本曹達株式会社製 製品名NISSO HPC-SSL)を含む。プロピレングリコールとしては、製薬的に許容されるものである。例えば、局方プロピレングリコール(例えば、ADEKA製)を含む。クエン酸トリエチルとしては、製薬的に許容されるものである。例えば、森村商事製・製品名シトロフレックス2 SC-60を含む。好適には、ある態様としてプロピレングリコールが挙げられる。
【0025】
配合量は、フィルムコーティング層100質量部あたり、ある態様として1~40%、ある態様として5~30%、ある態様として10~25%である。
【0026】
本発明に用いられるフィルムコーティング錠は、医薬品錠剤の周囲がフィルム層により被覆されている錠剤である。フィルム層は、例えば、可塑剤、着色剤、遮光剤等からなる群より選択される一種以上の添加剤を含む。
【0027】
フィルム層には、フィルム基剤の他、例えば、可塑剤、着色剤、遮光剤等が必要に応じて配合される。フィルム基剤(コーティング剤)としては、例えば、ヒプロメロース、メチルセルロース等が挙げられる。可塑剤としては、製薬的に許容され、アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩の安定性に影響を与えるものでなければ、あるいは両有効成分の安定性に与える影響の少ないものであれば、特に制限されない。具体的には、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より選択される一種以上の添加物が挙げられる。ある態様としてプロピレングリコールである。着色剤あるいは遮光剤としては、製薬的に許容され、アジルサルタン及びアムロジピンベシル酸塩の安定性に影響を与えるものでなければ、あるいは両有効成分の安定性に与える影響の少ないものであれば、特に制限されない。具体的には、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄からなる群より一種以上選択される添加物が挙げられる。ある態様として酸化チタン、黄色三二酸化鉄である。
【0028】
ある態様として、フィルム層には、あるいはフィルムコーティング錠には、ポリエチレングリコールを実質的に含まない。具体的態様としては、例えば、アムロジピンベシル酸塩の近傍にない状態でポリエチレングリコールを含有する錠剤を含む。例えば、アジルサルタンを含む層及びポリエチレングリコールを含む層の二層錠の場合、アジルサルタンを含む層中に偏在する状態で含有したり、また、アジルサルタンを含む造粒物中に偏在する状態で含有する造粒物を、例えば、水溶性物質(例えば、糖類(糖、糖アルコール)、高分子)等により被覆されてなる状態(例えば、アジルサルタンとは遮断された状態)で含有される態様を含む。後記実施例又は試験方法の記載から、フィルムコーティング錠において、アムロジピンに由来する分解物量(温湿度条件下保管後)について、ポリエチレングリコールを実質的に含まない錠剤では、ポリエチレングリコールを含む錠剤よりも、該分解物の増加が抑制されていることが示された。
【0029】
本発明のフィルムコーティング錠には、本発明の所望の効果が達成される範囲で各種医薬品添加物が適宜使用される。具体的には、例えば、賦形剤、崩壊剤、界面活性剤、結合剤、酸味料、発泡剤、甘味剤、香料、着色剤、緩衝剤、抗酸化剤、滑沢剤等が挙げられる。
【0030】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、トレハロース、無水リン酸水素カルシウム、D-ソルビトール、乳糖、白糖、デンプン、α化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0031】
崩壊剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン等が挙げられる。
【0032】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0033】
結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0034】
酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0035】
発泡剤としては、例えば、重層等が挙げられる。
【0036】
甘味剤としては、例えば、スクラロース、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。
【0037】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等が挙げられる。
【0038】
着色剤としては、例えば、黒酸化鉄、酸化チタン、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色3号等が挙げられる。
【0039】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類等が挙げられる。
【0040】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0041】
滑沢剤としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0042】
本発明のフィルムコーティング錠は、粉砕、混合、造粒、乾燥、成形(打錠)、コーティング等の工程を含む、自体公知の方法により、製造することができる。
【0043】
本発明のフィルムコーティング錠は、通常の錠剤の製造方法により製造することが可能であるが、安定性の観点から、素錠は二層錠として製造することが好ましい。
【0044】
具体的には、本発明のアジルサルタン、アムロジピンベシル酸塩含有フィルムコーティング錠は、例えば、アジルサルタンと賦形剤を混合し、結合剤を精製水に溶解した液を噴霧しながらから流動層造粒機で造粒、当該造粒物を篩により、整粒物とし、当該整粒物に、賦形剤、崩壊剤、及び滑沢剤を混合し、アジルサルタン混合末を得る。同様に、アムロジピンベシル酸塩についても、混合、造粒、整粒、混合を行い、アムロジピンベシル酸塩混合末を得る。次に、当該アジルサルタン混合末とアムロジピンベシル酸塩混合末をロータリー打錠機で打錠し、アジルサルタン、アムロジピンベシル酸塩含有二層錠が得られる。次に、得られた二層錠に、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、クエン酸トリエチルからなる群より一種以上選択される添加剤、ヒプロメロース、遮光剤などを精製水に溶解・分散して調製したフィルムコーティング液を、コーティング機を用いて、噴霧することで、本件発明のフィルムコーティング錠が得られる。
【0045】
アジルサルタン及びアムロジピンを含有し、安定なフィルムコーティング錠を製造するためのプロピレングリコールの使用に関する各成分の配合量、配合方法等については、本発明のフィルムコーティング錠における当該説明をそのまま適用することができる。
【0046】
【実施例
【0047】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
流動層造粒コーティング装置(パウレック社製;MP-01)にアムロジピンベシル酸塩42g、D-マンニトール(ロケットジャパン製:ペアリトール50C)278g、トウモロコシデンプン(日本食品化工製;日食局方コンスターチ)42g及び結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)18gを投入し混合後、水138gにヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製;HPC-SSL)12gを溶解させた結合液で造粒・乾燥した。得られた造粒・乾燥品を、スクリーン径500μmの篩にて整粒した。得られた整粒品に、結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)42g、部分アルファー化デンプン(旭化成製;PCS PC-10)42g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製;ステアリン酸マグネシウム 植物性)3.6gを加えてポリ袋にて混合し、打錠用混合品を得た。
打錠用混合品をロータリー式打錠機(菊水製作所製;VEL5)にて、1錠質量230mg、錠径Φ8.0mmの素錠を得た。
【0049】
得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)55g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製;HPC-SSL)11g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)5g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)19g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.45gを精製水750gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、本発明のフィルムコーティング錠を得た。
【実施例2】
【0050】
実施例1で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)55g、プロピレングリコール(ADEKA製;局方プロピレングリコール)11g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)5g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)19g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.45gを精製水750gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、本発明のフィルムコーティング錠を得た。
【実施例3】
【0051】
実施例1で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)55g、クエン酸トリエチル(森村商事製;シトロフレックス2 SC-60)11g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)5g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)19g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.45gを精製水750gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、本発明のフィルムコーティング錠を得た。
【0052】
≪比較例1≫
実施例1で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)55g、マクロゴール6000(三洋化成工業製;マクロゴール6000SP)11g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)5g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)19g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.45gを精製水750gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、比較例のフィルムコーティング錠を得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
<試験例1>
(評価方法)
実施例1~3及び比較例1で得られた錠剤を各々5錠ずつ遮光した容器にとり、メタノール/水混液(4:1)を加え、時々振り混ぜながら超音波処理を行った後、メタノール/水混液(4:1)を加えて100mLとした。この液を遠心分離し、上澄液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めのろ液5mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、メタノール/水混液(4:1)を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行った。それぞれの液の各々のピーク面積を自動積分法により測定した。結果を表3に示す。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:237nm)
カラム:内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ ィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相A:リン酸二水素ナトリウム二水和物3.1gを水1000mLに溶かし、薄め たリン酸(1→10)を加えてpH3.0に調整する。
移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
移動相C:液体クロマトグラフィー用メタノール
移動相の送液:移動相A、移動相B及び移動相Cの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示す通り、ヒドロキシプロピルセルロース(実施例1)、プロピレングリコール(実施例2)、クエン酸トリエチル(実施例3)をフィルムコーティング層に含むフィルムコーティング錠は、マクロゴール6000(比較例1)をフィルムコーティング層に含むフィルムコーティング錠よりも有効成分に由来する類縁物質量(N-ホルミル体)は少ない傾向を示し、総類縁物質量の増加量においても少ない傾向を示した。
【実施例4】
【0058】
流動層造粒コーティング装置(フロイント産業社製;NFLO-15)にアジルサルタン1500g、D-マンニトール(ロケットジャパン製:ペアリトール50C)5910g、トウモロコシデンプン(日本食品化工製;日食局方コンスターチ)900g及び結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)375gを投入し混合後、水8325gにヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製;HPC-L)337.5g、マクロゴール6000(日油製:マクロゴール6000P)337.5gを溶解させた結合液で造粒・乾燥を実施した。上述した工程を1バッチとし、この工程を2バッチ分製造した。得られた2バッチ分の造粒・乾燥品(アジルサルタン層)を、スクリーン径813μmのコーミル(パウレック社製;QC-197S)にて整粒し、バッチ混合した。得られた整粒品18720gに、結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)1800g、部分アルファー化デンプン(旭化成製;PCS PC-10)1800g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製;ステアリン酸マグネシウム 植物性)180gを加えてV型混合機(徳寿工作所製;V-60)にて混合し、打錠用混合品(アジルサルタン層)を得た。
【0059】
流動層造粒コーティング装置(フロイント産業社製;NFLO-5)にアムロジピンベシル酸塩519.75g、D-マンニトール(ロケットジャパン製:ペアリトール50C)3485.25g、トウモロコシデンプン(日本食品化工製;日食局方コンスターチ)525g及び結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)225gを投入し混合後、水2850gにヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製;HPC-L)150gを溶解させた結合液で造粒・乾燥した。上述した工程を1バッチとし、この工程を2バッチ分製造した。得られた2バッチ分の造粒・乾燥品(アムロジピンベシル酸塩層)を、スクリーン径813μmのコーミル(パウレック社製;QC-197S)にて整粒し、バッチ混合した。得られた整粒品9810gに、結晶セルロース(旭化成製;セオラスUF-711)1050g、部分アルファー化デンプン(旭化成製;PCS PC-10)1050g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製;ステアリン酸マグネシウム 植物性)90gを加えてV型混合機(徳寿工作所製;TCV-30)にて混合し、打錠用混合品(アムロジピンベシル酸塩層)を得た。
【0060】
打錠用混合品(アジルサルタン層)及び打錠用混合品(アムロジピンベシル酸塩層)ロータリー式打錠機(菊水製作所製;AQUA 08552L2K1)にて1層目質量150mg、2層目質量80mg、1錠質量230mg、錠径Φ8.0mmの素錠を得た。
【0061】
得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)66g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製;HPC-L)13.2g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)6.0g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)22.8g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.54gを精製水880gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、本発明のフィルムコーティング錠を得た。
【実施例5】
【0062】
実施例4で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)66g、プロピレングリコール(ADEKA製;局方プロピレングリコール)13.2g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)6.0g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)22.8g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.54gを精製水880gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、フィルムコーティング錠を得た。
【実施例6】
【0063】
実施例4で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)66g、クエン酸トリエチル(森村商事製;シトロフレックス2 SC-60)13.2g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)6.0g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)22.8g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.54gを精製水880gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、本発明のフィルムコーティング錠を得た。
【0064】
≪比較例2≫
実施例4で得られた素錠に、ヒプロメロース(信越化学工業製;TC-5R)66g、マクロゴール6000(日油製;マクロゴール6000P)13.2g、酸化チタン(フロイント産業製;FG)6.0g、タルク(松村産業製;クラウンタルク)22.8g、黄色三二酸化鉄(癸巳化成製;黄色三二酸化鉄)0.54gを精製水880gに溶解・分散して調製したフィルムコーティング溶液を、コーティング機(パウレック社製;DRC-300)を用いて、1錠質量9mgまで噴霧し、比較例のフィルムコーティング錠を得た。
【0065】
実施例4で製造された素錠の成分及び配合量を表4に、実施例4~6、比較例2で得られたフィルムコーティング錠のフィルムコーティング部の成分及び配合量を表5に示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
<試験例2>
試験例1と同様の操作により、実施例4~6及び比較例2で得られたフィルムコーティング錠について、試験を行った。結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
表6に示す通り、ヒドロキシプロピルセルロース(実施例4)、プロピレングリコール(実施例5)、クエン酸トリエチル(実施例6)をフィルムコーティング層に含むフィルムコーティング錠剤は、マクロゴール6000(比較例2)をフィルムコーティング層に含むフィルムコーティング錠よりもN-ホルミル体(アムロジピンベシル酸塩由来の類縁物質)の増加量を抑制し、総類縁物質量においても増加量を抑制した。