(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】水処理方法および水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240221BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240221BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240221BHJP
C02F 1/56 20230101ALI20240221BHJP
【FI】
C02F1/44 D
C02F1/44 A
B01D21/01 102
B01D21/01 105
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
(21)【出願番号】P 2020076538
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 徹
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314974(JP,A)
【文献】特開2005-007354(JP,A)
【文献】特開2017-077525(JP,A)
【文献】特開平11-169851(JP,A)
【文献】特開2003-300074(JP,A)
【文献】特開2005-118608(JP,A)
【文献】特開2019-126784(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044312(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038537(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103880206(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22;61/00-71/82
C02F 1/44
B01D 21/01
C02F 1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理工程と、
前記無機凝集処理工程で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過工程と、
前記膜の逆洗を行う逆洗工程と、
前記逆洗工程で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理工程と、
前記高分子凝集処理工程で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離工程と、
前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過工程の前段に返送する返送工程と、
を含
み、
前記返送工程において、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理工程または前記無機凝集処理工程の前段に返送することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の水処理方法であって、
前記返送工程で返送する前記固液分離水の返送流量に基づいて前記無機凝集処理工程における前記無機凝集剤の添加量を制御することを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の水処理方法であって、
前記高分子凝集剤は、ノニオン性高分子凝集剤または弱アニオン性高分子凝集剤であることを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、
前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、
前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、
前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、
前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、
前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、
を備え
、
前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の水処理装置であって、
前記返送手段により返送する前記固液分離水の返送流量に基づいて前記無機凝集処理手段における前記無機凝集剤の添加量を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の水処理装置であって、
前記高分子凝集剤は、ノニオン性高分子凝集剤または弱アニオン性高分子凝集剤であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置の改造方法であって、
前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、
前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、
前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、
を設け
、
前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送することを特徴とする処理装置の改造方法。
【請求項8】
懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置からの水を回収する水回収装置であって、
前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、
前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、
前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、
を備え
、
前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送することを特徴とする水回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含む被処理水の膜ろ過処理を行う水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の水需要の高まりから、排水を回収再利用する要求が増えてきている。排水からの水回収率は高いほど望ましく、除濁膜を用いて懸濁物質を含む被処理水を膜ろ過処理する場合に除濁膜を定期的に逆洗して排出される逆洗排水に対しても、例えば、特許文献1のように、固液分離処理を行い得られた固液分離水を膜ろ過して再利用する方法が取られることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、逆洗排水に対して固液分離処理を行い得られた固液分離水を膜ろ過して再利用する方法では、固液分離を十分に行うことができず、水回収率を高めることができない場合がある。本発明の目的は、懸濁物質を含む被処理水の膜ろ過処理を行う水処理において水回収率を高めることができる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理工程と、前記無機凝集処理工程で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過工程と、前記膜の逆洗を行う逆洗工程と、前記逆洗工程で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理工程と、前記高分子凝集処理工程で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離工程と、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過工程の前段に返送する返送工程と、を含み、前記返送工程において、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理工程または前記無機凝集処理工程の前段に返送する、水処理方法である。
【0007】
前記水処理方法において、前記返送工程で返送する前記固液分離水の返送流量に基づいて前記無機凝集処理工程における前記無機凝集剤の添加量を制御することが好ましい。
【0008】
前記水処理方法において、前記高分子凝集剤は、ノニオン性高分子凝集剤または弱アニオン性高分子凝集剤であることが好ましい。
【0009】
本発明は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、を備え、前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送する、水処理装置である。
【0011】
前記水処理装置において、前記返送手段により返送する前記固液分離水の返送流量に基づいて前記無機凝集処理手段における前記無機凝集剤の添加量を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0012】
前記水処理装置において、前記高分子凝集剤は、ノニオン性高分子凝集剤または弱アニオン性高分子凝集剤であることが好ましい。
【0013】
本発明は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置の改造方法であって、前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、を設け、前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送する、処理装置の改造方法である。
【0014】
本発明は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、前記無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、前記膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置からの水を回収する水回収装置であって、前記逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、前記高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、を備え、前記返送手段は、前記固液分離水の少なくとも一部を、前記無機凝集処理手段または前記無機凝集処理手段の前段に返送する、水回収装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、懸濁物質を含む被処理水の膜ろ過処理を行う水処理において水回収率を高めることができる水処理方法および水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】比較例1で用いた水処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<水処理装置および水処理方法>
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0019】
図1に示す水処理装置1は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段として、無機凝集槽12と、無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段として、膜ろ過装置14と、膜の逆洗を行う逆洗手段として、処理水槽16と、逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段として、高分子凝集槽20と、高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段として、固液分離装置22と、を備える。水処理装置1は、被処理水を貯留する被処理水槽10、逆洗排水を貯留する逆洗排水槽18を備えてもよい。水処理装置1は、無機凝集処理、膜ろ過処理、逆洗を繰り返す装置である。
【0020】
図1の水処理装置1において、被処理水槽10の被処理水入口には、配管36が接続されている。被処理水槽10の出口と無機凝集槽12の入口とは、ポンプ24を介して、配管38により接続されている。無機凝集槽12の出口と膜ろ過装置14の一次側の入口とは、ポンプ26を介して、配管40により接続されている。膜ろ過装置14の二次側の透過水出口と処理水槽16の入口とは、配管42により接続されている。膜ろ過装置14の処理水出口には、配管44が接続されている。処理水槽16の逆洗水出口と配管42の途中とは、ポンプ28を介して、配管46により接続されている。膜ろ過装置14の一次側の逆洗排水出口と逆洗排水槽18の入口とは、配管48により接続されている。逆洗排水槽18の出口と高分子凝集槽20の入口とは、ポンプ30を介して、配管50により接続されている。高分子凝集槽20の出口と固液分離装置22の入口とは、配管52により接続されている。固液分離装置22のスカム出口には、配管54が接続され、固液分離水出口には、配管56が接続されている。配管56の途中と被処理水槽10の固液分離水入口とは、固液分離水の少なくとも一部を膜ろ過手段の前段に返送する返送手段である配管58により接続されている。無機凝集槽12の無機凝集剤入口には、無機凝集剤添加手段として無機凝集剤添加配管60が接続されている。高分子凝集槽20の高分子凝集剤入口には、高分子凝集剤添加手段として高分子凝集剤添加配管62が接続されている。無機凝集槽12、高分子凝集槽20には、モータ等の回転駆動手段および撹拌羽根等を有する撹拌手段として撹拌装置32,34がそれぞれ設置されている。
【0021】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0022】
懸濁物質を含む被処理水は、配管36を通して必要に応じて被処理水槽10に貯留された後、ポンプ24によって配管38を通して無機凝集槽12へ送液される。無機凝集槽12において、無機凝集剤添加配管60を通して無機凝集剤が添加されて無機凝集処理が行われる(無機凝集処理工程)。撹拌装置32によって無機凝集槽12内の液が撹拌されてもよい。
【0023】
無機凝集処理工程で得られた無機凝集水は、ポンプ26によって配管40を通して、膜ろ過装置14の一次側へ送液される。膜ろ過装置14において、無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理が行われて透過水が得られる(膜ろ過工程)。膜ろ過処理で得られた透過水は、膜ろ過装置14の二次側から配管42を通して処理水槽16へ送液され、貯留される。透過水の一部は、配管44を通して処理水として排出され、必要に応じてさらに逆浸透膜処理、紫外線(UV)照射処理、活性炭処理等が行われて回収される。
【0024】
膜ろ過処理の進行に伴い、膜ろ過装置14の膜の表面には懸濁物質等が堆積し、ろ過抵抗が発生する場合がある。膜ろ過装置14の膜の洗浄が必要になった場合、膜の逆洗が行われる。透過水の少なくとも一部は、逆洗水として、ポンプ28によって配管46、配管42を通して、膜ろ過装置14の二次側から導入され、一次側から排出されて、膜の逆洗が行われる(逆洗工程)。この場合、処理水槽16、ポンプ28、配管46、配管42が逆洗手段として機能することになる。逆洗工程で得られた逆洗排水は、膜ろ過装置14の一次側から配管48を通して逆洗排水槽18へ送液され、必要に応じて貯留される。逆洗工程は、例えば定期的に、例えば20~30分から2~3時間に一度行われる。逆洗工程が終了後、無機凝集処理工程および膜ろ過工程へ戻ればよい。
【0025】
逆洗工程で得られた逆洗排水は、ポンプ30によって配管50を通して高分子凝集槽20へ送液される。高分子凝集槽20において、高分子凝集剤添加配管62を通して高分子凝集剤が添加されて高分子凝集処理が行われる(高分子凝集処理工程)。撹拌装置34によって高分子凝集槽20内の液が撹拌されてもよい。
【0026】
高分子凝集処理工程で得られた高分子凝集水は、配管52を通して固液分離装置22へ送液される。固液分離装置22において、高分子凝集水について例えば加圧浮上等の固液分離処理が行われて固液分離水が得られる(固液分離工程)。固液分離処理で得られたスカムは、配管54を通して排出される。固液分離処理で得られた固液分離水は、配管56を通して排出される。
【0027】
固液分離水の少なくとも一部は、配管58を通して、膜ろ過装置14の前段である例えば被処理水槽10に返送される(返送工程)。固液分離水の少なくとも一部は、膜ろ過装置14(膜ろ過工程)の前段に返送されればよく、無機凝集槽12(無機凝集処理工程)に返送されてもよいし、配管38や配管40へ返送されてもよい。返送手段は、固液分離水の少なくとも一部を、無機凝集槽12または無機凝集槽12の前段に返送することが好ましい。すなわち、返送工程において、固液分離水の少なくとも一部は、無機凝集槽12または無機凝集槽12の前段に返送されることが好ましい。
【0028】
本発明者らは、膜ろ過装置14の逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行い、沈殿、加圧浮上等によって固液分離した固液分離水の一部または全量を、膜ろ過装置14(膜ろ過工程)の前段に返送することによって、懸濁物質を含む被処理水の膜ろ過処理を行う水処理において水回収率を高めることができることを見出した。
【0029】
逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行い、固液分離することによって、固形分の濃縮倍率を高く取ることができるので、汚泥を高濃度で排出することができ、系外に排出される水の量を少なくすることができ、水回収率を高めることができる。また、逆洗排水に凝集剤を添加して固液分離処理を行い、固液分離水について、再度、膜処理を行う場合、凝集剤として高分子凝集剤を使用すると、固液分離水中に残留する高分子凝集剤によって膜が閉塞する可能性がある。固液分離の後段に砂ろ過を追加する方法も考えられるが設備が大きくなる。本実施形態では、さらに、固液分離した液の部分(固液分離水)は、無機凝集槽12(無機凝集処理工程)または無機凝集槽12(無機凝集処理工程)の前段に返送されて再度、無機凝集剤が添加されることによって、固液分離水に残存する高分子凝集剤が無機凝集剤によって凝集され、固液分離水に残存する高分子凝集剤による膜の閉塞を抑制しつつ、清澄な水を回収し、さらに水回収率を高くすることができる。無機凝集槽12(無機凝集処理工程)または無機凝集槽12(無機凝集処理工程)の前段に返送せずに、無機凝集処理を行い、膜ろ過をさらに行う場合に比べて、さらなる無機凝集槽が不要となる。
【0030】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置によって、水回収率を例えば95%以上に、好ましくは99%以上に高めることができる。
【0031】
無機凝集処理手段および高分子凝集処理手段としては、凝集反応を行うものであればよく、例えば、反応槽を備えるものでも、反応槽と凝集反応槽とを備えるものでよく、特に限定されず、公知の構成のものを用いればよい。
【0032】
無機凝集剤としては、無機凝集処理に用いることができる無機凝集剤であればよく、特に制限はない。無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。用いる無機凝集剤の種類は、例えば、処理対象の被処理水の性状等に応じて選択すればよい。
【0033】
無機凝集剤の添加量は、処理対象の被処理水の懸濁物質等の濃度や後段で添加する高分子凝集剤の量等によって変わるが、例えば5~200mg/Lの範囲であり、好ましくは5~50mg/Lの範囲である。
【0034】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置において、返送工程で返送する固液分離水の返送流量に基づいて無機凝集処理工程における無機凝集剤の添加量を制御することが好ましい。これによって、膜ろ過装置14における膜の閉塞をより抑制することができる。例えば、返送する固液分離水の返送流量に基づいて無機凝集剤の添加量を制御する制御手段として制御装置を設けて、配管58等に流量計等の返送流量測定手段を設置し、制御装置と、流量計、および無機凝集剤の添加量を調整するポンプ等とを電気的接続等により接続し、制御装置によって、流量計で測定された返送流量に基づいてポンプ等を制御して、無機凝集剤の添加量を制御してもよい。
【0035】
高分子凝集剤としては、高分子凝集処理に用いることができる有機高分子凝集剤であればよく、特に制限はない。高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤またはカチオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム、キトサン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびポリアミジン等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。用いる高分子凝集剤の種類は、例えば、処理対象の被処理水の性状等に応じて選択すればよい。
【0036】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置は、高分子凝集剤として、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等の除濁膜の閉塞が発生しやすいノニオン性高分子凝集剤またはアニオン性高分子凝集剤、特にノニオン性高分子凝集剤または弱アニオン性高分子凝集剤を用いる場合に好適に適用される。
【0037】
本明細書において、ノニオン性高分子凝集剤は、コロイド等量値(凝集剤中に含まれるコロイド物質の荷電量)が-1.0meq/g以上、+1.0meq/g未満の範囲であり、弱アニオン性高分子凝集剤は、コロイド等量値が-2.0meq/g以上、-1.0meq/g未満の範囲であり、中アニオン性高分子凝集剤は、コロイド等量値が-3.5meq/g以上、-2.0meq/g未満の範囲であり、強アニオン性高分子凝集剤は、コロイド等量値が-3.5meq/g未満であり、カチオン性高分子凝集剤は、コロイド等量値が+1.0meq/g以上である。コロイド等量値は、滴定等の方法により測定することができる。
【0038】
高分子凝集剤の添加量は、逆洗排水の懸濁物質等の濃度によって変わるが、例えば0.5~5mg/Lの範囲であり、好ましくは1~2mg/Lの範囲である。
【0039】
無機凝集処理工程および高分子凝集処理工程においてpH調整剤を用いてpH調整が行われてもよい。pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ等が挙げられる。pHは、例えば、4~11の範囲に調整すればよい。pHは、例えば、無機凝集槽12、高分子凝集槽20に設置されたpH測定手段であるpH計によって測定される。
【0040】
無機凝集処理および高分子凝集処理における液温度は、特に制限はなく、例えば、15~35℃の範囲である。粘性等によって分離性が変わるため、液温度はできるだけ一定になるように調整することが望ましい。
【0041】
膜ろ過装置14の膜としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等の除濁膜等を用いることができる。
【0042】
固液分離装置22としては、例えば、加圧浮上処理、沈殿分離等が挙げられる。沈殿分離は、特に限定されるものではないが、例えば、沈殿槽を用いた自然沈殿処理、スラッジブランケット型の沈殿槽等が挙げられる。設置面積が小さい等の点から、加圧浮上処理が好ましい。
【0043】
処理対象である被処理水は、懸濁物質等を含む水であり、特に限定されるものではないが、例えば、河川水、湖沼水、地下水、し尿、下水、半導体工場排水等の工業排水等が挙げられる。また、被処理水には、その他、無機物、イオン等が含まれていてもよい。本実施形態に係る水処理方法および水処理装置は、被処理水(例えば、半導体工場排水等の工業排水等)を処理して得られる処理水を一次純水として利用するような設備に適用することもできる。
【0044】
被処理水の懸濁物質濃度は、例えば、10~10000mg/Lの範囲である。得られる処理水の懸濁物質濃度は、例えば、0.1~10mg/Lの範囲である。
【0045】
<処理装置の改造方法>
無機凝集処理手段と膜ろ過手段と逆洗手段とを備える処理装置を改造して、上記水処理装置の構成としてもよい。
【0046】
本実施形態に係る処理装置の改造方法は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置の改造方法であって、逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、固液分離水の少なくとも一部を、膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、を設ける、処理装置の改造方法である。返送手段は、固液分離水の少なくとも一部を、無機凝集処理手段または無機凝集処理手段の前段に返送することが好ましい。
【0047】
例えば、
図1に示すように、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集槽12と、無機凝集槽12で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過装置14と、膜の逆洗を行う逆洗手段である処理水槽16、ポンプ28、配管46、配管42等と、を備える処理装置に、逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集槽20、高分子凝集槽20で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離装置22、固液分離水の少なくとも一部を膜ろ過装置14の前段に返送する返送手段として配管58等を設けて、処理装置を改造すればよい。返送手段は、固液分離水の少なくとも一部を、無機凝集槽12または無機凝集槽12の前段に返送することが好ましい。
【0048】
<水回収装置>
無機凝集処理手段と膜ろ過手段と逆洗手段とを備える処理装置に、水回収装置を追加して上記水処理装置の構成としてもよい。
【0049】
本実施形態に係る水回収装置は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集処理手段と、無機凝集処理手段で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過手段と、膜の逆洗を行う逆洗手段と、を備える処理装置からの水を回収する水回収装置であって、逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集処理手段と、高分子凝集処理手段で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離手段と、固液分離水の少なくとも一部を、膜ろ過手段の前段に返送する返送手段と、を備える。返送手段は、固液分離水の少なくとも一部を、無機凝集処理手段または無機凝集処理手段の前段に返送することが好ましい。
【0050】
例えば、
図1に示すように、水回収装置は、懸濁物質を含む被処理水に無機凝集剤を添加して無機凝集処理を行う無機凝集槽12と、無機凝集槽12で得られた無機凝集水について膜を用いて膜ろ過処理を行って透過水を得る膜ろ過装置14と、膜の逆洗を行う逆洗手段である処理水槽16、ポンプ28、配管46、配管42等と、を備える処理装置からの水を回収する水回収装置であり、逆洗手段で得られた逆洗排水に高分子凝集剤を添加して高分子凝集処理を行う高分子凝集槽20、高分子凝集槽20で得られた高分子凝集水について固液分離処理を行って固液分離水を得る固液分離装置22、固液分離水の少なくとも一部を、膜ろ過装置14の前段に返送する返送手段として配管58等を備える。返送手段は、固液分離水の少なくとも一部を、無機凝集槽12または無機凝集槽12の前段に返送することが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
図1に示す水処理装置を用いて、下記の処理条件で通水試験を行った。固液分離処理で得られた固液分離水(加圧浮上処理水)の全量を被処理水槽に返送した。得られた処理水の懸濁物質濃度は、1mg/Lであった。また、水回収率は、約99%であった。
【0053】
[処理条件]
被処理水:下水二次処理水(懸濁物質濃度=20mg/L)
無機凝集剤:塩化第二鉄
無機凝集剤添加量:100mg/L
被処理水流量:460L/h
除濁膜:UNV-3003(旭化成製、UF膜)
逆洗頻度:28分に1回
逆洗水量:18L/minで30秒間
逆洗排水量:42L/h
高分子凝集剤:オルフロック ON-1H(オルガノ製、ノニオン性高分子凝集剤、コロイド等量値が-1.0meq/g程度)
高分子凝集剤添加量:2mg/L
【0054】
<比較例1>
比較例として、
図2に示す水処理装置を用いた。
図2に示す水処理装置3は、被処理水槽100、無機凝集槽102、膜ろ過装置104、処理水槽106、逆洗排水槽108を備え、逆洗排水をそのまま排水して処理を行った。得られた処理水の懸濁物質濃度は、1mg/Lであった。また、水回収率は、約90%であった。
【0055】
【0056】
このように、逆洗排水を再回収することによって、システムとしての水回収率を高めることができた。
【0057】
以上の通り、実施例の水処理装置および水処理方法によって、懸濁物質を含む被処理水の膜ろ過処理を行う水処理において水回収率を高めることができた。
【符号の説明】
【0058】
1,3 水処理装置、10,100 被処理水槽、12,102 無機凝集槽、14,104 膜ろ過装置、16,106 処理水槽、18,108 逆洗排水槽、20 高分子凝集槽、22 固液分離装置、24,26,28,30 ポンプ、32,34 撹拌装置、36,38,40,42,44,46,48,50,52,54,56,58,60,62 配管。