(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】車両制御システム、車両制御方法、車両制御プログラム及び鍵収納ボックス
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20240221BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240221BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240221BHJP
【FI】
E05B19/00 E
E05B49/00 K
E05B19/00 J
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2020092557
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】519207882
【氏名又は名称】株式会社DeNA SOMPO Mobility
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】竹村 紀章
(72)【発明者】
【氏名】納家 寛人
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512630(JP,A)
【文献】特開2021-167151(JP,A)
【文献】特開2019-92011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0273534(US,A1)
【文献】特開2019-191049(JP,A)
【文献】特開2008-236358(JP,A)
【文献】特開2011-254634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 25/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置可能な鍵収納ボックスと、
前記鍵収納ボックスと通信可能な情報端末と、
を含み、
前記情報端末は、
ネットワークを介して認証装置によって認証を受けたことを条件として、前記認証装置によって指定された指定期間において、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を前記鍵収納ボックスに送信する通信部を有し、
前記鍵収納ボックスは、
前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部と、
前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替え可能な遮蔽部と、
前記情報端末から前記許可情報を受信する通信部と、
前記通信部が前記許可情報を受信したことを条件として、前記遮蔽部を前記遮蔽状態から前記非遮蔽状態に切り替える制御部と、
有する、車両制御システム。
【請求項2】
前記鍵は、前記車両から第1制御電波を受信可能であるとともに、前記車両のドア又はエンジンを制御するために前記第1制御電波と異なる周波数の第2制御電波を車両に送信可能であり、
前記遮蔽部は、前記第1制御電波を遮蔽する前記遮蔽状態と、前記第1制御電波を遮蔽しない前記非遮蔽状態とを切り替え可能である、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記鍵は、前記車両から前記第1制御電波を受信した後に、前記ドアを開錠させる情報又は前記エンジンを始動させるための情報を前記第2制御電波で前記車両に送信する、
請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記遮蔽状態の前記遮蔽部は、LF(Low Frequency)帯の前記第1制御電波を遮蔽し、UHF(Ultra High Frequency)帯の前記第2制御電波を遮蔽しない、
請求項2又は3に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記遮蔽部は、可動式のシールドを動作させることによって、前記遮蔽状態及び前記非遮蔽状態を切り替える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記遮蔽部は、前記制御電波を妨害する電波を発生させることによって、前記遮蔽状態及び前記非遮蔽状態を切り替える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記収納部は、内部に収納している前記鍵の取り出し可否を制御可能であり、
前記制御部は、前記鍵収納ボックスの前記通信部が前記情報端末から前記許可情報を受信したことを条件として、前記収納部から前記鍵を取り出し可能にするように前記収納部を制御する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記鍵は、前記制御電波を送信又は受信するための操作部をさらに有し、
前記鍵収納ボックスは、前記鍵収納ボックスの前記通信部が前記情報端末から前記許可情報を受信したことを条件として、前記収納部に収納された前記鍵が有する前記操作部を操作する駆動部をさらに有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記鍵収納ボックスは、前記鍵収納ボックスの異常状態を検知する検知部をさらに有し、
前記制御部は、前記検知部が前記異常状態を検知した場合に、前記遮蔽部を前記非遮蔽状態から前記遮蔽状態に切り替える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項10】
前記情報端末の前記通信部は、前記指定期間の経過後の所定期間において、前記許可情報を前記鍵収納ボックスに送信する、
請求項
1から9のいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項11】
車両に設置可能な鍵収納ボックスと、
前記鍵収納ボックスと通信可能な情報端末と、
を含み、
前記情報端末は、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を前記鍵収納ボックスに送信する通信部を有し、
前記鍵収納ボックスは、
前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部と、
前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替え可能な遮蔽部と、
前記情報端末から前記許可情報を受信する通信部と、
前記鍵収納ボックスの異常状態を検知する検知部と、
前記通信部が前記許可情報を受信したことを条件として、前記遮蔽部を前記遮蔽状態から前記非遮蔽状態に切り替えるとともに、前記検知部が前記異常状態を検知した場合に、前記遮蔽部を前記非遮蔽状態から前記遮蔽状態に切り替える制御部と、
有する、車両制御システム。
【請求項12】
車両に設置可能な鍵収納ボックスであって、
前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部と、
前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替え可能な遮蔽部と、
情報端末から、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を受信する通信部と、
前記鍵収納ボックスの異常状態を検知する検知部と、
前記通信部が前記許可情報を受信したことを条件として、前記遮蔽部を前記遮蔽状態から前記非遮蔽状態に切り替える
とともに、前記検知部が前記異常状態を検知した場合に、前記遮蔽部を前記非遮蔽状態から前記遮蔽状態に切り替える制御部と、
を有する、鍵収納ボックス。
【請求項13】
情報端末が、
ネットワークを介して認証装置によって認証を受けたことを条件として、前記認証装置によって指定された指定期間において、車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部を有する鍵収納ボックスに、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を送信するステップと、
前記鍵収納ボックスが前記許可情報を受信したことを条件として、前記鍵収納ボックスが、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態から、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態に切り替えるステップと、
を有する、車両制御方法。
【請求項14】
コンピュータに、
車両の使用の可否を認証する認証装置に認証情報を送信するステップと、
前記認証情報を送信した後に、
ネットワークを介して前記認証装置から認証結果を受信するステップと、
前記車両を使用可能であることを示す前記認証結果を受信した場合に、
前記認証結果が示す前記認証装置によって指定された指定期間において、前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部を有する鍵収納ボックスに、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態から、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態に切り替えるための許可情報を送信するステップと、
を実行させる、
車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御するための車両制御システム、車両制御方法、車両制御プログラム及び鍵収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人が貸し出す車両を他の個人が一時的に借りて利用する個人間カーシェアリングのサービスが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、個人間カーシェアリングでは、貸し手が借り手に車両の鍵を対面で受け渡す必要があったため、貸し手及び借り手の双方に手間が掛かるという問題があった。鍵の受け渡しを不要にするために鍵を車両に置いておくと、貸し出しが許可されていない人が車両を利用してしまうおそれがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、一例として、貸し手が借り手に対して対面で鍵を受け渡すことなく車両を安全に貸し出せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の車両制御システムは、車両に設置可能な鍵収納ボックスと、前記鍵収納ボックスと通信可能な情報端末と、を含み、前記情報端末は、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を前記鍵収納ボックスに送信する通信部を有し、前記鍵収納ボックスは、前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替え可能な遮蔽部と、前記情報端末から前記許可情報を受信する通信部と、前記通信部が前記許可情報を受信したことを条件として、前記遮蔽部を前記遮蔽状態から前記非遮蔽状態に切り替える制御部と、有する。
【0007】
前記鍵は、前記車両から第1制御電波を受信可能であるとともに、前記車両のドア又はエンジンを制御するために前記第1制御電波と異なる周波数の第2制御電波を車両に送信可能であり、前記遮蔽部は、前記第1制御電波を遮蔽する前記遮蔽状態と、前記第1制御電波を遮蔽しない前記非遮蔽状態とを切り替え可能であってもよい。
【0008】
前記鍵は、前記車両から前記第1制御電波を受信した後に、前記ドアを開錠させる情報又は前記エンジンを始動させるための情報を前記第2制御電波で前記車両に送信してもよい。
【0009】
前記遮蔽状態の前記遮蔽部は、LF(Low Frequency)帯の前記第1制御電波を遮蔽し、UHF(Ultra High Frequency)帯の前記第2制御電波を遮蔽しなくてもよい。
【0010】
前記遮蔽部は、可動式のシールドを動作させることによって、前記遮蔽状態及び前記非遮蔽状態を切り替えてもよい。
【0011】
前記遮蔽部は、前記制御電波を妨害する電波を発生させることによって、前記遮蔽状態及び前記非遮蔽状態を切り替えてもよい。
【0012】
前記収納部は、内部に収納している前記鍵の取り出し可否を制御可能であり、前記制御部は、前記鍵収納ボックスの前記通信部が前記情報端末から前記許可情報を受信したことを条件として、前記収納部から前記鍵を取り出し可能にするように前記収納部を制御してもよい。
【0013】
前記鍵は、前記制御電波を送信又は受信するための操作部をさらに有し、前記鍵収納ボックスは、前記鍵収納ボックスの前記通信部が前記情報端末から前記許可情報を受信したことを条件として、前記収納部に収納された前記鍵が有する前記操作部を操作する駆動部をさらに有してもよい。
【0014】
前記鍵収納ボックスは、前記鍵収納ボックスの異常状態を検知する検知部をさらに有し、前記制御部は、前記検知部が前記異常状態を検知した場合に、前記遮蔽部を前記非遮蔽状態から前記遮蔽状態に切り替えてもよい。
【0015】
前記情報端末の前記通信部は、ネットワークを介して認証装置によって認証を受けたことを条件として、前記許可情報を前記鍵収納ボックスに送信してもよい。
【0016】
前記情報端末の前記通信部は、前記認証装置によって指定された指定期間において、前記許可情報を前記鍵収納ボックスに送信してもよい。
【0017】
前記情報端末の前記通信部は、前記指定期間の経過後の所定期間において、前記許可情報を前記鍵収納ボックスに送信してもよい。
【0018】
本発明の第2の態様の鍵収納ボックスは、車両に設置可能な鍵収納ボックスであって、前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態と、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替え可能な遮蔽部と、情報端末から、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を受信する通信部と、前記通信部が前記許可情報を受信したことを条件として、前記遮蔽部を前記遮蔽状態から前記非遮蔽状態に切り替える制御部と、を有する。
【0019】
本発明の第3の態様の車両制御方法は、情報端末が、車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部を有する鍵収納ボックスに、前記車両のドア又はエンジンの制御を許可するための許可情報を送信するステップと、前記鍵収納ボックスが前記許可情報を受信したことを条件として、前記鍵収納ボックスが、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態から、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態に切り替えるステップと、を有する。
【0020】
本発明の第4の態様の車両制御プログラムは、コンピュータに、車両の使用の可否を認証する認証装置に認証情報を送信するステップと、前記認証情報を送信した後に、前記認証装置から認証結果を受信するステップと、前記車両を使用可能であることを示す前記認証結果を受信した場合に、前記車両のドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する鍵を内部に収納可能な収納部を有する鍵収納ボックスに、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送されない遮蔽状態から、前記収納部の内部と外部との間で前記制御電波が伝送される非遮蔽状態に切り替えるための許可情報を送信するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一例として、貸し手が借り手に対して対面で鍵を受け渡すことなく車両を安全に貸し出せるようにできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る車両制御システムの概要を説明するための図である。
【
図2】鍵収納ボックスの構成を説明するための模式図である。
【
図4】鍵収納ボックスの遮蔽部を遮蔽状態から非遮蔽状態に切り替える処理を説明するための模式図である。
【
図5】車両のドア又はエンジンを制御する処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[車両制御システムの概要]
図1は、本実施形態に係る車両制御システムSの概要を説明するための図である。車両制御システムSは、車両Cのドアの解錠やエンジンの始動を制御するシステムである。車両制御システムSは、例えば、貸し手が所有する車両Cを借り手に貸し出すために利用される。以下では、車両Cの貸し出しを受けて利用する借り手をユーザという。車両制御システムSは、鍵収納ボックス1と、車両Cの鍵2と、情報端末3と、認証装置4とを備える。車両制御システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。鍵収納ボックス1と情報端末3とは、例えば近距離無線通信を用いてデータを送受信することができる。
【0024】
鍵収納ボックス1は、内部に車両Cの鍵2を収納可能な装置である。鍵収納ボックス1は、車両Cの内部に設置される。鍵収納ボックス1は、本実施形態では一例として車両Cのグローブボックス内に設置される。鍵収納ボックス1は、内部に収納された鍵2が送受信する制御電波が伝送されない遮蔽状態と、制御電波が伝送される非遮蔽状態とを切り替えることができる。これにより、鍵収納ボックス1は、車両Cのドア又はエンジンの制御可否を切り替えることができる。
【0025】
鍵収納ボックス1は、車両Cが使用されていない間に遮蔽状態になる。したがって、例えば車両Cのシェアリングが開始される前は、車両Cのドア又はエンジンが制御されず、不正に車両Cが使用されることを防止できる。一方、鍵収納ボックス1は、情報端末3から所定のデータ(例えばシェアリングが許可されていることを示す許可情報)を受信すると、非遮蔽状態に切り替わる。非遮蔽状態においては、鍵2が、ドア又はエンジンを制御するボディコントロールモジュール(BCM)等の車載コンピュータC1との間で制御電波を送受信することができるので、車両Cのドア又はエンジンが制御可能になり、ユーザが車両Cを利用することが可能になる。鍵収納ボックス1の詳細な構造については、
図2を用いて後述する。
【0026】
鍵2は、車両Cのドア又はエンジンを制御するための制御電波を送信又は受信する、通信機能を有する鍵である。鍵2は、車載コンピュータC1に対して直接制御電波を送受信し、又はアンテナやレシーバを介して車載コンピュータC1に対して制御電波を送受信する。
【0027】
鍵2は、ユーザによる操作を受け付ける操作部21(スイッチ等)を有する。鍵2は、例えば、操作部21の操作が行われると、車載コンピュータC1に制御電波を送信する。車載コンピュータC1は、鍵2から制御電波を受信したことを条件として、車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。
【0028】
また、鍵2は、車両Cに設けられた操作部C2(例えば、車両Cの外部に設けられたドアスイッチ、車両Cの内部に設けられたエンジンスイッチ)の操作に応じて車両Cのドア又はエンジンを制御するシステム(いわゆるスマートエントリ)に利用される装置であってもよい。この場合に、車載コンピュータC1は、例えば、操作部C2が操作されると、鍵2に第1制御電波を送信する。鍵2は、車載コンピュータC1から第1制御電波を受信したことを条件として、さらに車載コンピュータC1に第2制御電波を送信する。車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、操作部C2が操作されたことに応じて車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。
【0029】
情報端末3は、ユーザが所持する、スマートフォン、タブレット端末等の携帯通信端末である。情報端末3においては、ユーザが車両Cを使用するための操作画面が表示される。情報端末3は、例えば、ドアを開錠するための操作画面、ドアを閉錠するための操作画面、及びエンジンを始動するための操作画面を表示する。
【0030】
ユーザが車両Cの使用を開始する場合、ユーザがドアを開錠するための操作画面を操作することにより、車両Cの使用の可否を認証する認証装置4に認証情報を送信する。情報端末3は、認証情報を送信した後に、認証装置4から認証結果を受信する。情報端末3は、車両Cを使用可能であることを示す認証結果を受信した場合に、車両Cのドアを開錠するための操作情報を鍵収納ボックス1に送信する。当該操作情報を受信した鍵収納ボックス1が、所定の部材を動作させて鍵2の所定のボタンを操作することにより、鍵2が第2制御電波を車載コンピュータC1に送信し、車載コンピュータC1がドアを開錠する。
【0031】
認証装置4は、情報端末3の認証をするコンピュータである。認証装置4は、情報端末3から受信したID(Identification)、パスワード等の認証情報に基づいて、情報端末3のユーザが車両Cを利用可能であるか否かを判定する。そして認証装置4は、ユーザが車両Cを利用可能であると判定した場合に車両Cを利用可能な指定期間を示す認証結果を情報端末3に送信する。情報端末3は、認証結果が示す指定期間において、鍵収納ボックス1に対して車両Cのドア又はエンジンの制御を開始するための許可情報を送信し、ユーザに車両Cを利用可能にする。
【0032】
[車両制御システムの構成]
図2(a)、
図2(b)は、鍵収納ボックス1の構成を説明するための模式図である。
図2(a)は、鍵収納ボックス1を正面から見た際の鍵収納ボックス1の外観を模式的に表している。
図2(b)は、鍵収納ボックス1を側面から見た際の鍵収納ボックス1の内部構造を模式的に表している。
図2(c)は、例示的な遮蔽部12の構造を模式的に表している。鍵収納ボックス1は、収納部11と、遮蔽部12と、通信部13と、制御部14と、検知部15と、駆動部16とを有する。
【0033】
収納部11は、鍵2を内部に収納可能な箱状体である。収納部11は、内部に収納された鍵2を、所定の支持構造(クリップ等)によって固定する。収納部11の正面側に設けられた遮蔽部12が扉として構成されており、制御部14が遮蔽部12を開放又は閉鎖するように制御することによって、収納部11は、内部に収納している鍵2の取り出し可否を切り替え可能である。制御部14が遮蔽部12を開放することによって収納部11から鍵2が取り出し可能となり、制御部14が遮蔽部12を閉鎖することによって収納部11から鍵2が取り出し不可能となる。
【0034】
遮蔽部12は、通信部13が情報端末3から許可情報を受信したことに応じて、収納部11の内部と外部との間で鍵2が送受信する制御電波の伝送可否を切り替えることができる。すなわち、遮蔽部12は、収納部11の内部と外部との間で制御電波が伝送されない遮蔽状態(すなわち、制御電波が遮蔽される遮蔽状態)と、収納部11の内部と外部との間で制御電波が伝送される非遮蔽状態(すなわち、制御電波を透過させる非遮蔽状態)とを切り替え可能である。
【0035】
鍵2は、車両Cの操作部C2が操作された場合に、車載コンピュータC1から第1制御電波を受信する。第1制御電波は、LF(Low Frequency)帯の電波であり、例えば、100kHz以上200kHz以下の周波数の電波である。鍵2は、車載コンピュータC1から第1制御電波を受信したことを条件として、車載コンピュータC1に第2制御電波を送信する。第2制御電波は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波であり、例えば、300MHz以上400MHz以下の周波数の電波である。車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。
【0036】
遮蔽状態の遮蔽部12は、第2制御電波(UHF帯の電波)を遮蔽せずに(すなわち、第2制御電波を透過させ)、第1制御電波(LF帯の電波)を遮蔽することが望ましい。遮蔽部12は、第1制御電波を遮蔽することにより、車両C内に鍵2が位置している状態であっても、第三者が車両Cの操作部C2を操作したとしても、ドアが開錠されたり、エンジンが始動したりすることを防ぐことができる。一方、遮蔽部12が第2制御電波を遮蔽しないことで、ユーザが情報端末3においてドアを開錠するための操作をした場合に、鍵2が第2制御電波を車載コンピュータC1に送信するので、車両Cを使用可能なユーザがドアを開錠することができる。
【0037】
このような構成は、例えば車両Cに忘れ物をしたことに気付いたユーザが忘れ物を取るために車両Cのドアを開錠する必要がある場合に好適である。ユーザが忘れ物を取るためにドアを開錠することを可能にするとともに、ユーザが車両Cのエンジンを始動できないようにするために、情報端末3は、例えば車両Cの使用可能時間が終了した後には許可情報を送信せず(すなわち、鍵収納ボックス1を遮蔽状態のままとし)、ドアを開錠するための操作情報のみを送信する。なお、上記の構成においては遮蔽部12が第2制御電波を遮蔽する必要がないため、遮蔽部12の構造を簡略化することができる。
【0038】
遮蔽部12は、一例として、電波遮断シールドである。遮蔽部12は、
図2(c)に例示した可動式のシールドを動作させることによって遮蔽状態及び非遮蔽状態を切り替える。遮蔽部12は、例えば、重ねられた2枚の網状のシールドを有する。各シールドは、金属等の導電性の素材によって構成されている。遮蔽部12は、2枚のシールドの少なくとも一方を面方向に移動させることによって、2枚のシールド(網)が形成する穴の大きさを変更し、遮蔽可能な電波の周波数を調整することができる。このような構成において、遮蔽部12は、第2制御電波を遮蔽せずに第1制御電波を遮蔽するように2枚のシールドの少なくとも一方を面方向に移動させることによって、遮蔽状態及び非遮蔽状態を切り替える。
【0039】
遮蔽部12は、ここに示した具体的な方法に限られず、その他既知の方法によって遮蔽状態及び非遮蔽状態を切り替えてもよい。例えば遮蔽部12は、第2制御電波を妨害せずに第1制御電波を妨害する妨害電波(ジャミング電波)を発生させることによって、遮蔽状態及び非遮蔽状態を切り替えてもよい。
【0040】
通信部13は、情報端末3と近距離無線通信を行うための通信インターフェースである。制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、遮蔽部12、通信部13、検知部15及び駆動部16との間で情報を授受することによって制御を行う。
【0041】
検知部15は、鍵収納ボックス1の異常状態を検知する。検知部15は、例えば、鍵収納ボックス1に対して大きな振動が加えられたこと等を異常状態として検知し、検知結果を制御部14に通知する。
【0042】
駆動部16は、通信部13が情報端末3から許可情報を受信したことを条件として、収納部11に収納された鍵2が有する操作部21を操作する。駆動部16は、例えば、モータを用いて棒状部材を移動させることによって操作部21を押下する。
【0043】
鍵収納ボックス1は、駆動部16に代えて、鍵2を電気的に制御してもよい。この場合に、鍵2は、電気回路によって制御部14と電気的に接続される。制御部14は、通信部13が情報端末3から許可情報を受信したことを条件として、鍵2が有する操作部21が操作された場合に出力される電気信号を、電気回路を介して鍵2に与える。これにより、鍵収納ボックス1は、鍵2に対して物理的な操作を行うよりも確実に鍵2から制御電波を送信させることができる。
【0044】
図3は、情報端末3のブロック図である。
図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図3に示したもの以外のデータの流れがあってよい。
図3において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図3に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0045】
情報端末3は、通信部31と、表示部32と、操作部33とを有する。通信部31は、鍵収納ボックス1と近距離無線通信を行うとともに、認証装置4とインターネット等の通信ネットワークを介して通信を行うための通信インターフェースである。表示部32は、情報を表示可能な液晶ディスプレイ等を含む。操作部33は、人間による操作を受け付け可能なボタン、スイッチ、タッチパネル等を含む。
【0046】
情報端末3は、予め記憶部に記憶された車両制御プログラムを実行することによって、認証装置4にID、パスワード等の認証情報を送信するステップと、認証装置4に認証情報を送信した後に、認証装置4から認証結果を受信するステップと、を実行する。さらに情報端末3は、認証装置4から車両Cを使用可能であることを示す認証結果を受信した場合に、鍵収納ボックス1に、遮蔽状態から遮蔽状態に切り替えるための許可情報を送信するステップを実行する。
【0047】
[車両制御システムが実行する処理]
以下、本実施形態に係る車両制御システムSが実行する処理を説明する。
図4は、鍵収納ボックス1の遮蔽部12を遮蔽状態から非遮蔽状態に切り替える処理を説明するための模式図である。ユーザが車両Cの利用を開始していない状態では、鍵収納ボックス1の遮蔽部12が遮蔽状態にあるため、収納部11に収納された鍵2は、車載コンピュータC1から送信される第1制御電波(LF帯の電波)を受信不可能である。
【0048】
この状態では、車両Cの操作部C2(例えば、ドアスイッチ、エンジンスイッチ)が操作されたとしても、鍵2が第1制御電波に応じて車載コンピュータC1に第2制御電波(UHF帯の電波)を送信することがない。これにより、車両制御システムSは、車両Cの利用が開始されていない場合に、ユーザ又は第三者が勝手に車両Cのドアを開錠し、又はエンジンを始動することを防ぐことができる。
【0049】
ユーザが車両Cの利用を開始する際に、情報端末3の通信部31は、ID、パスワード等の認証情報の入力を受け付ける。情報端末3は、入力された認証情報を認証装置4に送信する。認証装置4は、情報端末3から受信した認証情報に基づいて、情報端末3のユーザが車両Cを利用可能であるか否かを判定する。そして認証装置4は、ユーザが車両Cを利用可能であると判定した場合に、車両Cを利用可能な指定期間を示す認証結果を情報端末3に送信する。車両Cを利用可能な期間は、ユーザが指定した期間であってもよく、車両Cの貸し手が設定した期間(スケジュール)に基づいて決定されてもよい。
【0050】
情報端末3の通信部31は、認証結果が示す指定期間において、鍵収納ボックス1に対して車両Cのドア又はエンジンの制御を開始するための許可情報を送信する。許可情報は、鍵収納ボックス1の遮蔽部12を遮蔽状態から非遮蔽状態に切り替えることを鍵収納ボックス1に指示する情報である。
【0051】
また、通信部31は、指定期間の経過後であっても、所定期間(例えば、5分間)において、許可情報を鍵収納ボックス1に送信してもよい。これにより、車両制御システムSは、例えば、予約期間が終了した後に車両C内にユーザが忘れ物をした場合であっても、ユーザが車両Cから忘れ物を取り出すことを可能にできる。
【0052】
鍵収納ボックス1において、通信部13は、情報端末3から許可情報を受信する。制御部14は、通信部13が情報端末3から許可情報を受信したことを条件として、遮蔽部12を遮蔽状態から非遮蔽状態に切り替える。これにより、収納部11に収納された鍵2は、車載コンピュータC1から送信される第1制御電波を受信可能になる。
【0053】
制御部14は、例えば、検知部15が鍵収納ボックス1に対して大きな振動が加えられたこと等の異常状態を検知した場合に、非遮蔽状態にある遮蔽部12を遮蔽状態に切り替える。さらに制御部14は、検知部15が異常状態を検知した場合に、アラームを鳴らし、周囲に注意喚起をしてもよい。これにより、車両制御システムSは、例えば車両Cにユーザとは異なる第三者が侵入して鍵収納ボックス1を開けようとした場合に、遮蔽部12を自動的に遮蔽状態に切り替えることによって、第三者が車両Cの操作部C2を操作したとしても、エンジンが始動することを防ぐことができる。
【0054】
図5(a)~
図5(c)は、車両Cのドア又はエンジンを制御する処理を説明するための模式図である。車両制御システムSは、
図5(a)~
図5(c)に示した3つの方法のうち1つ又は複数の方法によって車両Cのドア又はエンジンの制御を可能にする。
【0055】
図5(a)は、情報端末3において行われた操作に応じて車両Cのドア又はエンジンを制御する方法を表している。情報端末3は、認証装置4から認証を受けた後、表示部32上にドア又はエンジンを制御するための操作領域(ボタン、アイコン等)を表示する。情報端末3は、操作部33においていずれかの操作領域が選択する操作が行われた場合に、ドア又はエンジンを制御するための操作が行われたことを示す操作情報を、鍵収納ボックス1に送信する。
【0056】
鍵収納ボックス1において、通信部13が情報端末3から操作情報を受信したことを条件として、駆動部16は、当該操作情報が示す操作に対応する鍵2の操作部21(すなわち、ドアを開錠するためのスイッチ、又はエンジンを始動するためのスイッチ)を操作する。鍵2は、操作部21の操作に応じて、車載コンピュータC1にドア又はエンジンのどちらかを制御することを示す第2制御電波を送信する。車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。これにより、車両制御システムSは、情報端末3の操作に応じて車両Cのドア及びエンジンの制御を行うことができ、ユーザの利便性を向上できる。
【0057】
また、鍵2は、車両Cのドア又はエンジンの制御に限らず、車両Cを探索(いわゆる、カーファインディング)するための第2制御電波を送信してもよい。鍵2は、例えば、車両Cのランプを点灯させたり車両Cのクラクションを鳴動させたりするための第2制御電波を送信するための操作を受け付ける操作部21を有する。鍵収納ボックス1が、情報端末3が送信した車両Cを探索するための操作情報を受信すると、駆動部16が当該操作部21を操作することにより、鍵2は第2制御電波を送信する。この場合に、車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、車両Cのランプを点灯させ、又は車両Cのクラクションを鳴動させる。これにより、車両制御システムSは、利用可能な車両Cをユーザに認識させることができる。
【0058】
図5(b)は、車両Cの操作部C2において行われた操作に応じて車両Cのドア又はエンジンを制御する方法を表している。車両Cに設けられた操作部C2は、操作が行われたことを示す操作信号を車載コンピュータC1に送信する。車載コンピュータC1は、操作が行われた操作部C2(例えば、ドアスイッチ又はエンジンスイッチ)に応じて、鍵2にドア又はエンジンのどちらかを制御することを示す第1制御電波を送信する。
【0059】
鍵2は、車載コンピュータC1から第1制御電波を受信したことを条件として、車載コンピュータC1にドア又はエンジンのどちらかを制御することを示す第2制御電波を送信する。車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。これにより、車両制御システムSは、鍵収納ボックス1が非遮蔽状態に遷移した後であれば、車両Cが備えるスマートエントリシステムを利用して簡便に車両Cのドア及びエンジンの制御を行うことができる。
【0060】
図5(c)は、鍵収納ボックス1から取り出された鍵2において行われた操作に応じて車両Cのドア又はエンジンを制御する方法を表している。鍵収納ボックス1において、制御部14は、通信部13が情報端末3から許可情報を受信したことを条件として、遮蔽部12を開放するように制御する。これにより、収納部11から、内部に収納された鍵2が取り出し可能になる。
【0061】
ユーザは、
図5(a)又は
図5(b)の方法によって車両Cのドアを開錠し、鍵収納ボックス1から鍵2を取り出す。鍵収納ボックス1から取り出された鍵2は、ユーザによる操作部21の操作を受け付ける。鍵2は、操作部21の操作に応じて、車載コンピュータC1にドア又はエンジンのどちらかを制御することを示す第2制御電波を送信する。車載コンピュータC1は、鍵2から第2制御電波を受信したことを条件として、車両Cのドアを開錠し、又は車両Cのエンジンを始動する。これにより、車両制御システムSは、鍵2を持ち運び可能にでき、ユーザの利便性を向上できる。
【0062】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る車両制御システムSによれば、車両Cに設置された鍵収納ボックス1は、借り手であるユーザが有する情報端末3から送信された許可情報に基づいて、内部に収納した鍵2が送受信する車両Cのドア又はエンジンを制御するための制御電波の伝送可否を切り替えることによって、借り手であるユーザによる車両Cの利用可否を切り替える。このような構成により、車両制御システムSは、貸し手が借り手に対して対面で鍵を受け渡すことなく安全に車両を貸し出せるようにできる。また、鍵収納ボックス1は車両C内に設置することで利用可能となり、車載コンピュータC1の改造を必要としないため、個人である貸し手の車両Cに導入することが容易である。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0064】
S 車両制御システム
1 鍵収納ボックス
11 収納部
12 遮蔽部
13 通信部
14 制御部
15 検知部
16 駆動部
3 情報端末
31 通信部
32 表示部
33 操作部
4 認証装置