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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】防水マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20240221BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H04R1/00 321
H04R1/02 108
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020122086
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018755
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】松下 勉
(72)【発明者】
【氏名】原野 博之
(72)【発明者】
【氏名】粟村 竜二
(72)【発明者】
【氏名】中西 賢介
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/045894(WO,A1)
【文献】特開2005-184422(JP,A)
【文献】特開2014-143674(JP,A)
【文献】特開2014-200024(JP,A)
【文献】特開2006-186848(JP,A)
【文献】特開2001-313990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の空間を前室と背室の二つに隔てる隔壁を含み、前記隔壁に前記前室と前記背室を連通する孔を含み、前記前室と前記背室の前記隔壁と対向する面に開口部を含むケースと、
前記前室の前記開口部を覆う防水振動膜と、
前記隔壁の背室側の面に取り付けられるマイクロホンユニットと、
前記背室の前記開口部を封止し、前記背室と外部の空間とを連通させる空気孔を含む封止部材を含み、
前記空気孔は、前記封止部材の中を複数回屈曲しながら延伸された孔である
防水マイクロホン。
【請求項2】
請求項1に記載の防水マイクロホンであって、
前記マイクロホンユニットは、前室側から背室側に、または背室側から前室側に貫通する小穴を含み、
前記孔は前記マイクロホンユニットに覆われる位置に設けられ、前記小穴と前記孔によって前記前室と前記背室を連通する通気経路が形成される
防水マイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
音響部品収納箱の防滴構造の従来技術として、例えば特許文献1がある。同文献の音響部品収納箱は、ケースに設けられた放声孔を、スピーカの防水形振動板と、防水パッキンで覆うように固定して、ケース内部の部屋を完全に水密、機密構造としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭53-039766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防水マイクロホンは、音響特性を十分に確保しようとして防水性、耐久性が不十分となるか、または、防水性、耐久性を十分に確保しようとして音響特性が不十分になるかの何れかの課題を抱えていた。
【0005】
そこで本発明では、音響特性と、防水性・耐久性を両立出来る防水マイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防水マイクロホンは、ケースと、防水振動膜と、マイクロホンユニットと、封止部材を含む。
【0007】
ケースは、内部の空間を前室と背室の二つに隔てる隔壁を含み、隔壁に前室と背室を連通する孔を含み、前室と背室の隔壁と対向する面に開口部を含む。防水振動膜は、前室の開口部を覆う。マイクロホンユニットは、隔壁の背室側の面に取り付けられる。封止部材は、背室の開口部を封止し、背室と外部の空間とを連通させる空気孔を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防水マイクロホンによれば、音響特性と、防水性・耐久性を両立出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の防水マイクロホンの概略断面図。
図2】実施例2の防水マイクロホンの概略断面図。
図3】実施例3の防水マイクロホンの概略断面図。
図4】実施例3の防水マイクロホンの4-4切断線における概略断面図。
図5】実施例3の変形例の防水マイクロホンの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
以下、図1を参照して実施例1の防水マイクロホンの構造を説明する。同図に示すように本実施例の防水マイクロホン1は、ケース11と、防水振動膜12と、マイクロホンユニット13と、封止部材14と、充填部材15を含む。なお、図1図3図5においてマイクロホンユニット13内部の構造は割愛した。
【0012】
<ケース11>
ケース11は、その内部の空間を前室111と背室116の二つに隔てる隔壁112を含む。隔壁112には、前室111と背室116を連通する孔113が形成される。また、前室111と背室116の隔壁112と対向する面に開口部がそれぞれ形成されている。なお、ケース11はアルミなどの金属製としてもよいし、樹脂製としてもよいし、他の素材でもよい。マイクロホンユニット13をECMとする場合には、ECMの基板が隔壁112に相当する。
【0013】
<防水振動膜12>
防水振動膜12は、前室111の開口部を覆う。防水振動膜12は、金属膜、テフロン膜、ラバー膜、フィルムなどでよい。金属膜、テフロン膜、ラバー膜、フィルムなどを振動板として使用し、その振動を内部のマイク(マイクロホンユニット13)で受信することができるため、音孔は省略される。なお、防水振動膜12は、腐食しにくい薄い金属または樹脂などの薄膜としてもよい。防水振動膜12の厚み、有効径、前室111の容積を変動させることにより、防水マイクロホン1の音響特性を調整することが出来る。
【0014】
<マイクロホンユニット13>
マイクロホンユニット13は、隔壁112の背室116側の面に取り付けられる。隔壁112の背室116側の面にはマイクロホンユニット13を支持する支持部材114が形成される。またマイクロホンユニット13の下部に孔115が形成される。マイクロホンユニット13は、一般的なECM,MEMSマイクロホンなどでよい。
【0015】
<封止部材14>
封止部材14は、背室116の開口部を封止し、背室116と外部の空間とを連通させる空気孔141を含む。空気孔141は、封止部材14の中を複数回屈曲しながら延伸された孔である。例えば同図に示すように空気孔141は、背室116に連通され、鉛直上方に延伸された第1鉛直延伸部1411、第1鉛直延伸部1411に接続されて水平方向に延伸された水平延伸部1412、水平延伸部1412に接続されて鉛直上方に延伸されて外部の空間に連通された第2鉛直延伸部1413を含んで形成される。空気孔141の内径を小さくし、上述のように複数回屈曲させて空気孔141の全長を長くすることにより、音響インピーダンスを大きくすることが出来、外部からの音の回り込みを防ぎ、内部の気圧変動に対応可能となる。また封止部材14には配線用孔142が形成される。
【0016】
<充填部材15>
配線用孔142はケーブルが挿通されたのち、充填部材15により充填され、密閉される。
【0017】
≪効果≫
前室111と背室116が外部の空間と連通することで、気温や高度の変化による圧力変動による防水振動膜12の異常変異を防止することが出来る。これにより、悪天候でも故障せず、劣化しにくい防水マイクロホン1を実現でき、例えば自動車の車外に取り付けるマイクロホンなどに応用できる。
【0018】
また、空気孔141により、音響インピーダンスが大きくすることが出来るため、マイクロホンユニット13の特性に与える影響を小さくすることが出来る。空気孔141の径を小さくして、図1に示した例のように、封止部材14内で複数回屈曲させることにより、防水性を損なわずに圧力変動に対応することが出来る。
【0019】
また本実施例の防水マイクロホン1は、隔壁112に孔113を設け、上述の封止部材14を用意するだけで実現できるため、既存のエレクトレットコンデンサーマイク等をそのまま流用することが出来、コストを削減することが出来る。
【実施例2】
【0020】
以下、図2を参照して実施例2の防水マイクロホンの構造を説明する。同図に示すように本実施例の防水マイクロホン2は、ケース21と、防水振動膜12と、マイクロホンユニット23と、封止部材14と、充填部材15を含み、実施例1と異なる構造を含む部品は、ケース21、マイクロホンユニット23のみである。以下、ケース21、マイクロホンユニット23の構造を説明する。
【0021】
<ケース21>
ケース21には、マイクロホンユニット23の下部であって、マイクロホンユニット23に覆われる位置に孔215が設けられている。孔215は実施例1における孔113に相当する役割を担う。従ってケース21には孔113は形成されない。
【0022】
<マイクロホンユニット23>
マイクロホンユニット23は、前室111側から背室116側に、または背室側116から前室111側に貫通する小穴231を含む。マイクロホンユニット23がMEMSマイクロホンである場合、マイクロホンユニット23の上面に小穴231を設ければ好適である。小穴231と孔215によって前室111と背室116を連通する通気経路(図の破線矢印)が形成される。
【0023】
≪効果≫
本実施例の防水マイクロホン2によれば、孔113を省略したため音の回り込みが発生せず、マイクロホンユニット23の特性に与える影響を小さくすることが出来る。
【実施例3】
【0024】
以下、図3図4を参照して実施例3の防水マイクロホンの構造を説明する。図3に示すように本実施例の防水マイクロホン3は、ケース21と、防水振動膜12と、マイクロホンユニット23と、封止部材34と、充填部材15を含み、実施例2と異なる構造を含む部品は、封止部材34のみである。以下、封止部材34の構造を説明する。
【0025】
<封止部材34>
封止部材34の側面(ケース21の内面と接触する面)には、空気孔341が形成される。空気孔341は、背室116と外部の空間とを連通させるように封止部材34の側面に鉛直方向に延伸された溝である(深さ10μm程度の溝、図3図4の341を参照)。図4に示すように、空気孔341を複数個所設けてもよい。
【0026】
[変形例]
以下、図5を参照して実施例3の変形例の防水マイクロホンの構造を説明する。図3に示すように本変形例の防水マイクロホン3Aは、ケース21と、防水振動膜12と、マイクロホンユニット23と、封止部材34Aと、充填部材15を含み、実施例3と異なる構造を含む部品は、封止部材34Aのみである。以下、封止部材34Aの構造を説明する。
【0027】
<封止部材34A>
本変形例の封止部材34Aは、背室116の開口部の縁面を覆うように形成されており(図5参照)、空気孔341Aは、封止部材34Aの側面および、背室116の開口部の縁面に接触する面に形成されたL字型を描く溝である。
【0028】
[その他の変形例]
図1図5に開示していない組み合わせである、例えばケース11と、マイクロホンユニット13と、封止部材34(または封止部材34A)とを組み合わせてもよい。
【0029】
≪効果≫
封止部材34(封止部材34A)に溝として空気孔341(空気孔341A)を形成したため、封止部材に穴を空ける場合と比べて微細な加工が可能であるため、屈曲部を設けなくても、防水性を損なわない。
【0030】
空気孔341(空気孔341A)を上記の形状としたため、封止部材34(封止部材34A)の成形時に溝を設けることが出来、後から穴を空ける場合と比べて工程を削減することが出来る。
【0031】
また、屈曲部のある空気孔を設けるためには、封止部材を複数のパーツに分割して成形する必要があるが、空気孔341(空気孔341A)を上記の形状とすれば一体に形成することが出来るため、コストを削減することが出来る。
図1
図2
図3
図4
図5