(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ロックボルト打設装置およびこれを備えるロックボルト打設作業車並びにロックボルトの打設方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20240221BHJP
E21B 7/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
E21D20/00 X
E21B7/02
(21)【出願番号】P 2020122155
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】能代 泰範
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-096196(JP,A)
【文献】特開平11-101086(JP,A)
【文献】特開2020-094364(JP,A)
【文献】特表昭55-500388(JP,A)
【文献】国際公開第01/011193(WO,A1)
【文献】米国特許第05116164(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
E21B 1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロックボルトを収容するロックボルトマガジンと、ロックボルトの把持およびその開放が可能に構成されたセントラライザ装置と、該セントラライザ装置とは別個に自身を回動可能な第一の回動機構を有するガイドシェルと、該ガイドシェルに搭載された打設装置本体と、を備え、
前記打設装置本体は、前記第一の回動機構により前記ガイドシェルを回動させることで、前記ロックボルトマガジンに収容されたロックボルトを受け取る受取位置と、該受取位置で受け取ったロックボルトの軸線を前記セントラライザ装置の基準軸線上に位置させる打設位置と、に位置するように設けられたロックボルト受渡機構と、前記打設位置において
一のロックボルト孔の軸線に沿ってロックボルトを押し込むことで打設するロックボルト打設機構と、該ロックボルト打設機構で打設された状態の一のロックボルトの後端に他のロックボルトを接続するロックボルト接続機構と、を有することを特徴とするロックボルト打設装置。
【請求項2】
前記セントラライザ装置は、前記打設位置と、前記ロックボルトマガジンとは反対の側の退避位置と、に回動可能な第二の回動機構を有し、
前記退避位置にあっては、前記打設位置に位置した状態の前記打設装置本体との干渉が防止されるように構成されている請求項1に記載のロックボルト打設装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロックボルト打設装置を備えることを特徴とするロックボルト打設作業車。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロックボルト打設装置を用いて、一のロックボルト孔に対して複数のロックボルトを打設することを特徴とするロックボルトの打設方法。
【請求項5】
前記一のロックボルト孔に第一のロックボルトを打設する第一の打設工程と、
前記第一のロックボルトを打設後に、該第一のロックボルトの後端に第二のロックボルトを接ぎ足すロックボルト接続工程と、
前記ロックボルト接続工程で接続された状態の前記第一のロックボルトおよび前記第二のロックボルトを、前記一のロックボルト孔のより深い位置まで前記第一のロックボルトの先端が位置するように打設する第二の打設工程と、
を含むことを特徴とする請求項4に記載のロックボルトの打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロックボルトを打設する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックボルトは、トンネル施工、鉱山坑道掘削および補強土作業等の工事において、トンネル、坑道壁面および切土などの補強を目的として打設される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-144349号公報
【文献】特表平11-503800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、厚い軟弱地盤に対しては、一層の安定を図るために、一のロックボルト孔に対してより深い位置にまでロックボルトによる補強を施すことが望まれる。
そこで、本発明は、一のロックボルト孔に対してより深い位置にまでロックボルトによる補強を施すことが可能な、ロックボルト打設装置およびこれを備えるロックボルト打設作業車並びにロックボルトの打設方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置は、複数のロックボルトを収容するロックボルトマガジンと、ロックボルトの把持およびその開放が可能に構成されたセントラライザ装置と、該セントラライザ装置とは別個に自身を回動可能な第一の回動機構を有するガイドシェルと、該ガイドシェルに搭載された打設装置本体と、を備え、前記打設装置本体は、前記第一の回動機構により前記ガイドシェルを回動させることで、前記ロックボルトマガジンに収容されたロックボルトを受け取る受取位置と、該受取位置で受け取ったロックボルトの軸線を前記セントラライザ装置の基準軸線上に位置させる打設位置と、に位置するように設けられたロックボルト受渡機構と、前記打設位置において前記一のロックボルト孔の軸線に沿ってロックボルトを押し込むことで打設するロックボルト打設機構と、該ロックボルト打設機構で打設された状態の一のロックボルトの後端に他のロックボルトを接続するロックボルト接続機構と、を有することを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るロックボルト打設作業車は、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置を備えることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るロックボルトの打設方法は、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置を用いて、一のロックボルト孔に対して複数のロックボルトを打設することを特徴とする。
本発明によれば、一のロックボルト孔に対して、複数本のロックボルトを相互に接続してより深い位置にまで打設できる。そのため、より深い位置までロックボルトによる補強を施すことが可能になる。
【0007】
ここで、通常の工法として、一本物の長尺ロックボルトで施工する場合もあるものの、長尺な故に大きなスペースを必要とし、その取り回しが大変になるという問題がある。また、通常、複数本のロックボルトを相互に接続する場合、一本目のロックボルトの打設が終了した時点で、補助作業者が、次のロックボルトを手で持って打設位置付近に行き、手作業で、一本目のロックボルト後端に二本目のロックボルト先端を接続する方法が考えられる。しかし、ロックボルトの打設位置付近は落石のおそれがあるため、極力、人を近づかせない措置をとることが望ましい。
【0008】
これに対し、本発明によれば、第一のロックボルトの後端に、第二のロックボルトを機械(つまり、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置)によって接ぎ足すので、ロックボルトの打設位置付近に人が近づくことなく、ロックボルト接続工程を含むロックボルトの打設作業を安全に、効率良く且つ確実に施工できる。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、本発明によれば、より深い位置にまでロックボルトによる補強を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様に係るロックボルト打設作業車の一実施形態の説明図であって、同図(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図2】本発明の一態様に係るロックボルト打設装置の一実施形態の説明図であって、同図(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図3】ロックボルトマガジンに収容されたロックボルトを受け渡す打設装置本体の受渡機構の動作説明図(a)~(h)である。
【
図4】
図1に示すロックボルト打設作業車によるロックボルト打設作業の説明図(a)~(g)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0012】
本実施形態のロックボルト打設作業車は、例えばトンネル工事等でロックボルトを打設するために、さく孔作業および打設作業に使用される作業車両である。
図1に示すように、本実施形態のロックボルト打設作業車10は、前後に走行用の車輪7、8およびアウトリガ9を有する走行可能な台車1を備える。
台車1には、車体前側の上部にオペレータキャビン6が設けられ、車体後側の上部に駆動部2が設けられている。オペレータキャビン6は、ロックボルト孔のさく孔およびそのロックボルト孔へのロックボルト打設に必要な作業を行うための操作部(不図示)を有する。
【0013】
台車1は、車体の左右前側部から前方に張り出す二基のブーム3A、3Bを有する。各ブーム3A、3Bは、いずれも旋回、起伏および伸縮が可能に構成されている。本実施形態では、一方(同図での台車1右側)のブーム3Bがさく孔用とされ、他方((同図での台車1左側)のブーム3Aが打設用とされている。
さく孔用のブーム3Bの先端にはガイドシェル5Bが傾動可能に支持されている。ブーム3Bには、ガイドシェル5Bを所定方向に移動可能にするために、同調回路を有する油圧駆動機構が設けられている。また、ブーム3Bには、ガイドシェル5Bを自在に旋回させるための旋回用アクチュエータが設けられ、ブーム3Bの移動とともに、ガイドシェル5Bをトンネル内の所定の空間位置に移動可能になっている。
【0014】
本実施形態のロックボルト打設作業車10は、台車1の右前側部から前方に張り出すブーム3Bには、ドリフタ4Bを含むさく孔装置50が装備されている。さく孔装置50は、ロックボルト孔をさく孔により穿孔するための装置である。
さく孔装置50は、ガイドシェル5Bの先端側に、フートパット25Bおよびセントラライザ17Bがそれぞれ装着されている。ガイドシェル5Bには、公知の油圧式のドリフタが、さく孔用のドリフタ4Bとして搭載され、穿孔時、ガイドシェル5B上をフィードされる。
【0015】
なお、さく孔装置50は、穿孔用ロッド18先端のビットでロックボルト孔を穿孔可能に構成され、通常のドリルジャンボ等の作業車両に搭載されるさく孔装置と同様のものである。そのため、詳細な説明は省略する。
一方、本実施形態では、車体の左前側部から前方に張り出すブーム3Aには、ロックボルト打設装置30が装備されている。本実施形態のロックボルト打設装置30は、台車1左側のブーム3A先端にマウントブラケット37が装備され、このマウントブラケット37に、ガイドシェル5A、セントラライザ装置17A、ドリフタ4A等により構成される打設装置本体、および、ロックボルトマガジン40が搭載されている。
【0016】
詳しくは、
図2に示すように、本実施形態のロックボルト打設装置30は、打設用のブーム3Aの先端に固定されるマウントブラケット37を有する。ブーム3Aには、マウントブラケット37を所定方向に移動可能にするために、同調回路を有する油圧駆動機構が設けられている。
また、ブーム3Aには、マウントブラケット37を自在に旋回させるための旋回用アクチュエータが設けられ、ブーム3Aの移動とともに、マウントブラケット37をトンネル内の所定の空間位置に移動可能になっている。
【0017】
マウントブラケット37をベースとして、スイングブラケット38がピン31を支軸として、このピン31まわりに、不図示のアクチュエータの駆動によって回動可能に連結されている。
スイングブラケット38には、ガイドシェル5Aが固定され、スイングブラケット38と一体で回動される第一の回動機構が構成されている。ガイドシェル5A上には、ボルトクランプ35が装備された打設用のドリフタ4Aが搭載され、打設時に、ドリフタ4Aがガイドシェル5A上をフィードされる。
【0018】
マウントブラケット37には、ガイドシェル5Aの先端側の位置に、フートパット25A、および、ロックボルト接続工程でロックボルトを保持する開閉式のセントラライザ装置17Aが搭載されている。セントラライザ装置17Aは、スイングブラケット38とは別個に回動可能な第二の回動機構を介して、セントラライザブラケット32の先端側に装着されている。
本実施形態では、セントラライザブラケット32の基端部は、マウントブラケット37に対してピン31と同軸の支軸まわりで打設位置と退避位置とに回動可能に構成されている。これにより、スイングブラケット38によるガイドシェル5Aの第一の回動機構とは別個の回動機構として、マウントブラケット37に対してセントラライザ装置17Aを支軸まわりで打設位置Dと退避位置Nとに回動可能に支持する第二の回動機構が構成されている。
【0019】
マウントブラケット37には、更に、ロックボルトマガジン40が自身中心まわりに回転可能に搭載されている。ロックボルトマガジン40には、所定長のロックボルトB1、B2が格納される。ロックボルトB1、B2は、接続スリーブSを介して相互の継ぎ足しを行えるようになっている(
図4参照)。
打設用のドリフタ4Aは、ロックボルトB1、B2を打設するロックボルト打設機構として機能するとともに、ロックボルトB1、B2相互を接続するロックボルト接続機構としても機能する。この点において通常のさく岩機と同様の構成である。
【0020】
つまり、ドリフタ4Aの回転機構と送り機構とを利用して、ロックボルトB1、B2のねじ込みが可能なロックボルト接続機構が構成され、二本目のロックボルトB2を、打設途中の一本目のロックボルトB1の後端に継ぎ足し可能になっている。
また、ドリフタ4Aの回転機構、送り機構および打撃機構を利用して、ロックボルトB1、B2の打設が可能なロックボルト打設機構が構成される。また、ガイドシェル5A上のドリフタ4Aに装備された可撓型の上記ボルトクランプ35により、第一の回動機構との協働によりロックボルト受渡機構が構成されている。
【0021】
これにより、本実施形態の打設装置本体は、ロックボルト打設機構により、ドリフタ4Aから打設用ロッド21を介して、接続されているロックボルトB1、B2に打撃力と回転力を伝達すると共に、送り機構でドリフタ4Aに送り力を付与してロックボルト孔にロックボルトB1、B2を打設可能になっている。
さらに、本実施形態の打設装置本体は、ロックボルト接続機構により、ドリフタ4Aの回転および送りを利用して、ロックボルトB1、B2のねじ込みが可能であり、特に、二本目のロックボルトB2を、打設途中状態の一本目のロックボルトB1の後端に継ぎ足し可能になっている。
【0022】
本実施形態のロックボルト打設装置30では、打設装置本体を構成するドリフタ4Aに、ガイドシェル5Aの長手方向に沿って延びる打設用ロッド21が、その基端側を回転可能に挿着される。打設用ロッド21の先端には、後述するロックボルトマガジン40から供給される、所定長のロックボルトB1、B2がスリーブSを介して順に接続される。
特に、本実施形態のロックボルト打設装置30では、台車1左側のガイドシェル5A先端側に配置されたセントラライザ装置17Aが、ロックボルトB1、B2の先端部を、ロックボルト孔Hの軸線CXと同軸上に位置する基準軸線CBにて、ロックボルトB1、B2の把持およびその開放が可能になっている(
図4参照)。
【0023】
ここで、本実施形態のロックボルト打設装置30では、上記ロックボルトマガジン40が、ガイドシェル5Aの左側部に並行して設けられる。ロックボルトマガジン40は、ジョイント式ロックボルトBJ(
図4(f)参照)を構成する各ロックボルトB1,B2を、打設装置本体を構成するドリフタ4Aに供給するための装置であり、複数のロックボルトB1,B2を収容するマガジン本体41を備える。
【0024】
マガジン本体41は、ロックボルトB1、B2の両端部を支持するように設けられ、不図示のマガジン駆動モータの駆動によって、自身中心軸まわりに所定角度の回転をするようになっている。そして、打設装置本体は、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5A自体が第一の回動機構により回動されることによって、ロックボルトマガジン40に収容されたロックボルトB1、B2を順に、ロックボルト受渡機構を構成する可撓型のボルトクランプ35によって受け渡し可能になっている。
【0025】
これにより、本実施形態のロックボルト打設装置30は、厚い軟弱地盤に対して、ロックボルト孔Hの所要打設長が一本目のロックボルトB1の長さよりも長く必要な場合に、打設作業の際に、複数のロックボルトB1、B2相互の継足しを行えるようになっている。そのため、一のロックボルト孔Hに対して、より深い位置にまで複数のロックボルトB1,B2による補強を施すことを可能としている。
これにより、本実施形態のロックボルト打設作業車10は、岩盤に対して、台車1右側のさく孔装置50によって形成されたロックボルト孔H内に、台車1左側のロックボルト打設装置30によって、複数のロックボルトB1、B2を順に継ぎ足しつつ押し込むことで、複数のロックボルトB1、B2を繋いだジョイント式ロックボルトBJ(
図4(f)参照)として打設可能になっている。
【0026】
以下、本実施形態のロックボルト打設作業車10を用いたロックボルトの打設作業について、
図3および
図4を参照しつつ説明する。
複数のロックボルトB1,B2の一連の打設作業を行なって、トンネルTの内周壁WにロックボルトBを打設する際は、まず、打設位置の近傍にロックボルト打設作業車10を移動させ、前後のアウトリガ9を張り出して台車1の安定を確保する。
次いで、台車1右側のさく孔装置50によってロックボルト孔Hを基準軸線CB上で穿孔する。ロックボルト孔Hを穿孔する際は、台車1の右前側部から前方に張り出す穿孔用のブーム3Bを移動させ、同ブーム3Bのガイドシェル5BをトンネルTの内周壁Wに対向させ、ロックボルト孔Hの必要な位置に位置決めする。
【0027】
次いで、トンネルTの内周壁Wに、ブーム3B先端のガイドシェル5B先端側のフートパット25Bの外側面を当接させて着岩状態とし、穿孔用のドリフタ4Bを駆動して穿孔用ロッド18を回転させつつ、ガイドシェル5B上でドリフタ4Bをフィードして、所定長のロックボルト孔Hを穿孔する。穿孔作業は、オペレータがオペレータキャビン6内で制御する。
これにより、穿孔用ロッド18先端のビットでロックボルト孔Hの穿孔を行なうことができる。ロックボルト孔Hの穿孔が終わると、穿孔用のブーム3Bを短縮してブーム3Bのガイドシェル5Bを下げるとともに、これに替えて、台車1の左前側部から前方に張り出す打設用のブーム3Aを所望位置に伸長し、同ブーム3Aのマウントブラケット37を持ち上げて、ロックボルト打設装置30をロックボルト孔Hの近傍に移動させる。
【0028】
ここで、ロックボルトマガジン40のマガジン本体41には、少なくとも、一本目のロックボルトB1と、二本目のロックボルトB2と、が予め装填されている。打設時は、打設用のドリフタ4A自体の回動による受渡し駆動をし、
図3(a)および
図4(a)に示すように、一本目のロックボルトB1をロックボルトマガジン本体41から取り出し、打設用のドリフタ4Aの打設用ロッド21に接続する。
詳しくは、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、
図3(a)に示すように、まず、第一の回動機構により、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aを支持しているスイングブラケット38を、ピン31を中心として同図右まわりに回動させて受取位置Uにガイドシェル5Aを位置させる。
【0029】
次いで、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、ロックボルトマガジン40のマガジン本体41を自身中心軸まわりで同図左まわりに回転させて、マガジン本体41内に格納されている第一のロックボルトB1をマガジン本体41の受渡位置Wに位置させるとともに、受取位置Uに位置しているガイドシェル5A上のドリフタ4Aに装備されたロックボルト受渡機構を構成するボルトクランプ35に受け渡す。これにより、第一のロックボルトB1がボルトクランプ35にセットされる。
【0030】
次いで、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、
図3(b)に示すように、第一の回動機構により、スイングブラケット38を、ピン31を支軸としてピン31を中心として同図左まわりに回動させて、第一のロックボルトB1をロックボルトマガジン40のマガジン本体41から取り出す。
さらに、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、
図3(c)に示すように、第一の回動機構により、スイングブラケット38を、ピン31を支軸としてピン31を中心として同図左まわりに更に回動させ、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aを基準軸線CB上の打設位置Dに位置させる。
【0031】
これと同時に、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、第二の回動機構により、セントラライザブラケット32を、ピン31を支軸として同図右まわりに回動させてセントラライザ装置17Aを基準軸線CB上の打設位置Dに位置させる。これにより、第一のロックボルトB1の軸心が、ロックボルト孔の軸線CXの軸心と一致した打設位置Dに保持される。
そして、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、
図4(b)に示すように、打設用のドリフタ4Aを基準軸線CB上で前進させて、ドリフタ1の打撃と送りとを利用して、一本目のロックボルトB1をロックボルト孔Hに打設する(第一の打設工程)。この状態で、第一のロックボルトB1の後端が、孔口よりも数センチ程度突出した状態になるまで挿入する。
【0032】
以下、ロックボルトマガジン40のマガジン本体41から二本目のロックボルトB2をドリフタ4A側に受け渡し、一本目のロックボルトB1の後端に追加して打設する動作およびその作用効果について説明する。
まず、ロックボルト打設作業車10のオペレータは、
図4(c)に示すように、一本目のロックボルトB1の後端を、基準軸線CB上に位置しているセントラライザ装置17Aでクランプし、打設用のドリフタ4Aを基準軸線CB上で後退させてドリフタ4Aから一本目のロックボルトB1の後端を切り離す。
【0033】
この際、オペレータは、
図3(d)に示すように、セントラライザ装置17Aによって第一のロックボルトB1の後端を保持した状態を維持しつつ、第一の回動機構により、スイングブラケット38をピン31を支軸として、セントラライザ装置17Aとは別個に回動可能に設けられたガイドシェル5Aを、ピン31を中心として同図右まわりに回動させ、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aをロックボルトマガジン40の受取位置Uに向かわせる。
【0034】
これと同時に、オペレータは、反力を打ち消してセントラライザブラケット34を打設位置に安定した状態で位置させるべく、第二の回動機構により、セントラライザブラケット34を、ピン31を支軸として同図左まわりに僅かに回動させる。
さらに、
図3(e)に示すように、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aを支持しているスイングブラケット38を、第一の回動機構により、ピン31を中心として同図右まわりに回動させて受取位置Uにガイドシェル5Aを位置させる。
【0035】
次いで、オペレータは、マガジン駆動モータを駆動して、ロックボルトマガジン40のマガジン本体41を自身中心軸まわりで同図左まわりに回転させて、マガジン本体41内に格納されている、追加する第二のロックボルトB2をマガジン本体41の受渡位置Wに位置させ、第一のロックボルトB1と同様に、ガイドシェル5A上のボルトクランプ35に対向するクランプ位置まで移動させる。
これにより、受取位置Uに位置しているガイドシェル5A上のボルトクランプ35に第二のロックボルトB2が受け渡されて、第二のロックボルトB2がボルトクランプ35にセットされる。
【0036】
次いで、オペレータは、ガイドシェル5A上のボルトクランプ35で二本目のロックボルトB2を保持したら、
図3(f)に示すように、スイングブラケット38を、第一の回動機構により、ピン31を支軸として同図左まわりに回動させて、第二のロックボルトB2をロックボルトマガジン本体41から取り出す。
さらに、オペレータは、
図3(g)に示すように、スイングブラケット38を、第一の回動機構により、ピン31を支軸として同図左まわりに更に回動させ、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aを、基準軸線CBがロックボルト孔の軸線CXと同軸上の打設位置Dに位置させる。
【0037】
オペレータは、これと同時に、反力を打ち消してセントラライザブラケット34を打設位置Dに位置させるべく、第二の回動機構により、セントラライザブラケット34を、ピン31を支軸として同図右まわりに僅かに回動させてセントラライザ17を打設位置Dに保持する。
これにより、第二のロックボルトB2の軸心が第一のロックボルトB1の軸心と一致した、基準軸線CBがロックボルト孔の軸線CXと同軸上の位置に保持される。この状態で、セントラライザ装置17Aによって第一のロックボルトB1の後端を保持したままで、ロックボルト接続機構によりロックボルトを継ぎ足す。
【0038】
すなわち、オペレータは、
図4(e)に示すように、ロックボルト接続機構により、打設作業用のドリフタ4Aの回転および送りを利用してねじ込み及びねじ切りを行い、接続すべきロックボルトB2の先端を、打設途中の一本目のロックボルトB1の後端にスリーブSを介して継ぎ足す。
一本目のロックボルトB1の後端に二本目のロックボルトB2の先端を接続することにより、一体となったジョイント式ロックボルトBJが構成される(ロックボルト接続工程)。
【0039】
次いで、第一のロックボルトB1の後端に第二のロックボルトB2の先端を接続したら、オペレータは、セントラライザ装置17Aによる把持を開放し、ロックボルト打設機構により、ドリフタ4Aの打撃と送りとを利用して、第一のロックボルトB1とともに第二のロックボルトB2を挿入する。
つまり、
図4(e)から(f)に示すように、打設用のドリフタ4Aを前進させて、ジョイント式ロックボルトBJをロックボルト孔Hに押し込むことで、ロックボルト孔Hのより深い位置まで、第一のロックボルトB1の先端が位置するように打設する(第二の打設工程)。
【0040】
ここで、第二のロックボルトB2の後端には、
図3(h)に示すように、ロックプレート63およびロックナット64が予め装着されている。ロックプレート63は矩形状の板部材であり、通常、一辺が十数センチ程度の大きさがある。ロックプレート63は、孔口に密着するまで内周壁に押し込まれる。そのため、このサイズのロックプレート63がセントラライザ装置17Aに干渉しないようにしつつ、セントラライザ装置17Aの位置を通過して前方に押し込む必要がある。
【0041】
これに対し、本実施形態では、
図3(h)および
図4(e)に示すように、セントラライザ装置17Aは、第二の回動機構の駆動により、ロックボルトマガジン40とは反対側の退避位置Nに回動可能なので、ロックボルト接続工程でのロックプレート63やドリフタ4Aの各部とのセントラライザ装置17Aとの干渉も防止できる。
これにより、
図4(e)~(g)に示すように、ドリフタ4Aを前進させても、ロックプレート63は、退避位置Nのセントラライザ装置17Aに干渉することなく、第一のロックボルトB1とともに第二のロックボルトB2を挿入し、ロックプレート63が孔口に着岩するまで内周壁に押し込むことができる。
【0042】
ロックプレート63およびロックナット64でジョイント式ロックボルトBJを固定し、モルタル等の定着剤による仕上げ施工を施して長尺なジョイント式ロックボルトBJが打設され、ロックボルト打設作業が完了する。
ロックボルト孔Hへのジョイント式ロックボルトBJの挿入が終わると、次のロックボルト孔Hの位置までロックボルト打設装置30を移動させる。以下、同様の打設作業を繰り返して、所定数のジョイント式ロックボルトBJの打設を行う。
【0043】
このようにして、本実施形態のロックボルト打設装置30を備えるロックボルト打設作業車10は、厚い軟弱地盤層に対して、複数のロックボルトB1,B2を接続して深く打設する場合における、複数のロックボルトB1,B2の接ぎ工程を確実に行える。
本実施形態のロックボルト打設装置30を備えるロックボルト打設作業車10によれば、ロックボルト供給装置であるロックボルトマガジン40を有するので、ロックボルトの打設位置付近に人が近づくことなく、複数のロックボルトB1、B2の接ぎ工程を含むジョイント式ロックボルトBJの打設作業を安全に効率良く、且つ確実に施工できる。また、ロックボルト打設装置30自体もコンパクトに構成できるので、省スペース化に寄与する。
【0044】
特に、本実施形態のロックボルト打設装置30にあっては、上述したように、一のロックボルト孔の軸線CX上に位置する基準軸線CB上でのロックボルトB1、B2の把持およびその開放が可能に構成されたセントラライザ装置17Aと、このセントラライザ装置17Aとは別個に回動可能な第一の回動機構を有するガイドシェル5Aと、ガイドシェル5Aに搭載された打設装置本体4Aと、を備える構成である。
つまり、本実施形態のロックボルト打設装置30によれば、ドリフタ4Aを搭載したガイドシェル5Aを単独で回動する第一の回動機構を備えており、第一の回動機構は、ドリフタ4Aを含む打設装置本体を、支軸まわりで打設位置Dとロックボルトマガジン40との受取位置Uとに回動可能なので、複数のロックボルトB1、B2を受け渡し可能とし、複数のロックボルトB1、B2を相互に接続しつつより深い位置にまで打設できる。
【0045】
ここで、例えば特許文献2に開示されるように、ロックボルト孔軸線CXに対し、ドリフタを搭載したガイドシェル自体を回動させる装置も知られている。しかし、同文献記載の装置の場合、ロックボルトの把持・解放を行うセントラライザ装置もガイドシェル上に一体で搭載されている。
そのため、仮に同文献記載の装置の採用をロックボルト打設装置として、一のロックボルト孔に対してより深い位置にまで複数のロックボルトによる補強を施そうとしても、ガイドシェル自体を回動させると、ドリフタと共にセントラライザ装置も回動してしまう。そのため、同文献記載の装置では、打設された一本目のロックボルトの保持状態を維持できない。よって、一本目のロックボルト後端に二本目のロックボルト先端を接続することは不可能である。
【0046】
これに対し、本実施形態のロックボルト打設装置30によれば、ドリフタ4Aを含む打撃装置本体とセントラライザ装置17Aとは、それぞれを個別に回動可能に支持する第一の回動機構と第二の回動機構とによって支持されているので、ドリフタ4Aをマガジン本体41の受取位置Uに回動させても、セントラライザ装置17Aを打設位置Dに位置させたままの状態で一本目のロックボルトB1の保持状態を維持できる。そのため、ロックボルト接続工程で一本目のロックボルトB1を保持した状態を維持したままドリフタ4Aを回動させることができるのである。
さらに、本実施形態のロックボルト打設装置30によれば、セントラライザ装置17Aは、第二の回動機構により退避位置Nに回動可能なので、ロックボルト接続工程からその後の打設工程でのドリフタ4Aやジョイント式ロックボルトBJ(特に、ロックプレート63およびロックナット64)との干渉も防止できる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のロックボルト打設装置30およびこれを備えるロックボルト打設作業車10によれば、ロックボルトの打設位置付近に人が近づくことなく、複数のロックボルトB1,B2の接ぎ工程を含むジョイント式ロックボルトBJの打設作業を安全に効率良く、且つ確実に施工できる。
なお、本発明に係るロックボルト打設装置並びにこれを備えるロックボルト打設作業車は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態では、
図1では、ロックボルト孔Hを穿孔するためのドリフタ4Bと、ロックボルト打設装置を構成するドリフタ4Aと、を別個のブーム3B、3Aにそれぞれ装備している例を示したが、これに限らず、さく孔装置50用と、ロックボルト打設装置30用と、を一体型として装備してもよい。
また、本発明に係るロックボルト打設作業車の構成についても、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。例えば、作業車は、トンネル工事におけるロックボルトの打設作業を行うための車両であれば、ドリルジャンボ等の種々の作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 台車
2 駆動部
3A、3B ブーム
4A、4B ドリフタ
5A、5B ガイドシェル
6 オペレータキャビン
7,8 車輪
9 アウトリガ
10 作業車(ロックボルト打設作業車)
17A、17B セントラライザ
18 穿孔用ロッド
21 打設用ロッド
25 フートパット
30 ロックボルト打設装置
40 ロックボルトマガジン
41 マガジン本体
50 さく孔装置
BJ ジョイント式ロックボルト
B1、B2 ロックボルト
CB 基準軸線
CX ロックボルト孔軸線
H ロックボルト孔
S スリーブ
T トンネル
W 内周壁