(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20240221BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20240221BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/08 235
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020126727
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 貴幸
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-63714(JP,A)
【文献】特開2017-219666(JP,A)
【文献】特開2012-68409(JP,A)
【文献】特開2018-54687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/06
G03G 15/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して空隙を介して対向して配置された現像部材と、
前記現像部材に担持されている現像剤を前記静電潜像に付着させる現像電圧を前記現像部材に印加する電源回路と、
前記電源回路に
PWM信号を含む制御信号を供給することで前記電源回路を制御する制御手段と、
前記空隙に起因して前記像担持体と前記現像部材との間に生じる静電容量
に相関がある電気的特性を検知する検知回路と、を有し、
前記制御手段は、前記検知回路により検知された電気的特性に基づいて前記
PWM信号のデューティ比の変化パターンを決定し、決定された前記変化パターンにしたがって
前記PWM信号のデューティ比を変化させながら前記制御信号を前記電源回路に出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記
PWM信号のデューティ比の変化パターンと
前記電気的特性とを関連付けて予め記憶するパターン記憶手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記検知回路により検知された電気的特性に対応した前記
PWM信号のデューティ比の変化パターンを前記パターン記憶手段から読み出すことで、前記変化パターンを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記パターン記憶手段は、
前記電気的特性
が第一範囲にあるときの第一変化パターンを関連付けて記憶しており、
前記電気的特性
が第二範囲にあるときの第二変化パターンを関連付けて記憶しており、
前記電気的特性
が第三範囲にあるときの第三変化パターンを関連付けて記憶しており、
前記制御手段は、
前記検知回路により検知された電気的特性が前記第一範囲に
ある場合に、前記デューティ比の変化パターンを前記第一変化パターンに決定し、
前記検知回路により検知された電気的特性が前記第二範囲に
ある場合に、前記デューティ比の変化パターンを前記第二変化パターンに決定し、
前記検知回路により検知された電気的特性が前記第三範囲に
ある場合に、前記デューティ比の変化パターンを前記第三変化パターンに決定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検知回路により検知された前記電気的特性から前記変化パターンを演算することで、前記変化パターンを決定する演算手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電気的特性
を検知するべきイベントが発生すると、前記検知回路により
前記電気的特性を検知させ、検知された前記電気的特
性に基づいて前記変化パターンを決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記
イベントは、前記
検知回路により検知された電気的特性と、前記現像部材と前記像担持体との間の電気的特性との差
が所定値以上
になる前記画像形成装置におけるイベン
トであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記イベントは、
前記現像部材が交換されたこと、
前記画像形成装置が商用電源から電力を供給されて起動したこと、または、
前記
イベントが発生したとき以降に前記画像形成装置で形成された画像の枚数が所定枚数以上になったこと、のうちの少なくとも1つである、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電源回路は、
直流電圧を生成する直流電源と、
交流電圧を生成し、前記直流電圧に当該交流電圧を重畳することで前記現像電圧を出力する交流電源と、を有し、
前記交流電源は、前記
PWM信号のデューティ比に応じた振幅の交流電圧を生成することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記
PWM信号の周期は前記交流電圧の周期の1/30以上かつ1/10以下であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記検知回路により検知された複数の電気的特性の統計値を求め
、前記統計値に基づいて前記変化パターンを決定することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、所定のサンプリング周期ごとに前記検知回路から出力される前記電気的特性をサンプリングするように構成されており、
前記所定のサンプリング周期は、前記交流電圧の周期よりも短く、かつ、前記制御信号の周期よりも長いことを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記交流電源は、
前記制御信号を供給されるフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路を含む一次側回路と、
前記一次側回路に一次巻線が接続され、前記交流電圧を二次巻線に出力するトランスと、
を有することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記交流電源は前記フルブリッジ回路を有し、当該フルブリッジ回路は、
前記制御信号のうち第一駆動信号を供給されて動作する第一駆動回路と、
前記制御信号のうち第二駆動信号を供給されて動作する第二駆動回路と、
前記第一駆動回路により駆動される第一スイッチング素子および第三スイッチング素子と、
前記第二駆動回路により駆動される第二スイッチング素子および第四スイッチング素子と、を有し、
前記第一スイッチング素子のドレインは第一基準電圧を印加され、
前記第一スイッチング素子のゲートは前記第一駆動回路に接続され、
前記第一スイッチング素子のソースは前記第三スイッチング素子のドレインおよび前記トランスの前記一次巻線の一端に接続されており、
前記第三スイッチング素子のゲートは前記第一駆動回路に接続され、
前記第三スイッチング素子のソースは接地されており、
前記第二スイッチング素子のドレインは第二基準電圧を印加され、
前記第二スイッチング素子のゲートは前記第二駆動回路に接続され、
前記第二スイッチング素子のソースは、前記第四スイッチング素子のドレインおよび前記トランスの前記一次巻線の他端に接続されており、
前記第四スイッチング素子のゲートは前記第二駆動回路に接続され、
前記第四スイッチング素子のソースは接地されており、
前記第一スイッチング素子がオンになり、前記第三スイッチング素子がオフになり、前記第二スイッチング素子がオフになり、前記第四スイッチング素子がオンになることで、前記交流電圧の極性が第一極性となり、
前記第一スイッチング素子がオフになり、前記第三スイッチング素子がオンになり、前記第二スイッチング素子がオンになり、前記第四スイッチング素子がオフになることで、前記交流電圧の極性が第二極性となることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記検知回路は、
前記現像電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路の出力電圧のピークツーピーク値をホールドし、前記制御手段にピークツーピーク値を出力するホールド回路とを有することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記ホールド回路から出力される前記ピークツーピーク値に含まれる高周波成分を除去するローパスフィルタをさらに有することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記ローパスフィルタと前記制御手段との間でインピーダンス変換を行うボルテージフォロワ回路をさらに有することを特徴とする請求項
15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の現像器は、感光体に対向した現像スリーブに直流電圧と交流電圧とを重畳させて形成された現像電圧を印加することで、静電潜像に対するトナーの付着を促進させる。現像電圧の波形が歪むと、静電潜像が破壊されたり、意図しないリーク電流が発生したりしてしまう。
【0003】
特許文献1によれば、波形歪みが検知されると、波形歪みが小さくなるようにトランスに印加される駆動信号を調整することが提案されている。具体的には、時間軸上で駆動信号が、第1のオン期間、オフ期間、および第2のオン期間といった三つの区間に分けられ、三つの区間の割合が調整されることで、波形歪みが削減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、波形の測定結果に基づき第1のオン期間が調整された後で、第1のオフ期間および第2のオン期間が調整されなければならない。したがって、二つの調整処理が必要となるため、ある程度の調整時間が必要となってしまう。そこで、本発明は、現像電圧の調整処理に要する時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、たとえば、
静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体に対して空隙を介して対向して配置された現像部材と、
前記現像部材に担持されている現像剤を前記静電潜像に付着させる現像電圧を前記現像部材に印加する電源回路と、
前記電源回路にPWM信号を含む制御信号を供給することで前記電源回路を制御する制御手段と、
前記空隙に起因して前記像担持体と前記現像部材との間に生じる静電容量に相関がある電気的特性を検知する検知回路と、を有し、
前記制御手段は、前記検知回路により検知された電気的特性に基づいて前記PWM信号のデューティ比の変化パターンを決定し、決定された前記変化パターンにしたがって前記PWM信号のデューティ比を変化させながら前記制御信号を前記電源回路に出力することを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像電圧の調整処理に要する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0010】
<画像形成装置>
図1が示すように、画像形成装置100は電子写真方式でシートPに画像を形成する。画像形成装置100はプリンタ、複写機、複合機またはファクシミリ装置のいずれであってもよい。画像形成装置100はフルカラー画像を形成できるが、本発明の技術思想は、モノクロ画像を形成する画像形成装置にも適用可能である。
【0011】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて多色画像を形成するために、四つの画像像形成ステーションを有している。参照符号の数字の後に付されたa~dの文字はそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを示している。なお、各画像形成ステーションの構成に違いはないため、a~dの文字は以下の説明では省略される。
【0012】
感光体ドラム1はドラム状の像担持体である。帯電ローラ2は感光体ドラム1の表面を一様に帯電させる帯電手段である。露光装置3は一様に帯電した感光体ドラム1の表面に画像情報に応じたレーザー光Lを照射して静電潜像を形成する露光手段ないしは像形成手段である。現像器4は現像スリーブ41に担持されたトナーを静電潜像に付着させて現像してトナー画像を形成する現像手段である。現像スリーブ41には現像を促すための高圧の現像電圧が印加される。一次転写ローラ6は感光体ドラム1に担持されているトナー画像を中間転写ベルト5に転写する転写手段である。給紙カセット9は複数のシートPを収容する。給紙ローラ8は給紙カセット9から二次転写ローラ7へシートPを給紙する。二次転写ローラ7は中間転写ベルト5に担持されているトナー画像をシートPに転写する転写手段である。定着器10はとシートP上に転写されたトナー画像に熱と圧力を加えて定着させる定着手段である。
【0013】
<コントローラ>
図2が示すように、現像回路200は、現像器4aに現像電圧Voutを供給する電源回路である。現像回路200は、現像器4a~4dに対して一つずつ設けられている。四つの現像回路200の構成と動作を同じであるため、ここでは、現像器4aのための現像回路200だけが説明される。
【0014】
コントローラ基板250は、CPU251とメモリ252を有し、現像回路200を制御する。CPU251はメモリ252のROM領域に記憶されている制御プログラムを実行することで、現像回路200を制御する。たとえば、CPU251は、クロック信号Aclk1、Aclk2、Dclkなどを生成して現像回路200に出力する。また、CPU251は、現像スリーブ41aと感光体ドラム1aとの間の負荷容量(静電容量CL)の検知結果を示す検知電圧Vcl_snsに基づき、クロック信号Aclk1、Aclk2の波形パターンを決定する。波形パターンとは、時間の経過に伴いクロック信号Aclk1、Aclk2の波形に変化をもたらパターンである。波形パターンは変化パターンまたは駆動パターンと呼ばれてもよい。このように、本実施形態では、現像スリーブ41aと感光体ドラム1aとの間の電気的特性の測定結果に基づき波形パターンが即座に決定されるため、現像電圧Voutの調整時間が短縮される。
【0015】
現像回路200は、交流電源210、直流電源220および検知回路230を有している。直流電源220は、クロック信号Dclkにしたがった直流電圧Vdcを生成し、交流電源210に供給する。交流電源210は、クロック信号Aclk1、Aclk2にしたがった交流電圧Vacを生成する。生成された交流電圧Vacには、直流電圧Vdcが重畳されて、現像電圧Voutとして、現像スリーブ41aに印加される。検知回路230は、現像電圧Voutに基づき静電容量CLを検知し、静電容量CLを示す検知電圧Vcl_snsをCPU251に出力する。
【0016】
現像スリーブ41aと感光体ドラム1aとの間の距離dは、たとえば、数百umである。ここではuはマイクロを表す。電気的な等価回路を考えると、この距離dと静電容量CLとは相関している。
【0017】
CL=e・S/d (1)
ここで、eは誘電率である。Sは現像に寄与する現像スリーブ41aと感光体ドラム1aの各対向面積である。式(1)から分かる通り、距離dの変化は、静電容量CLの変化に相当する。したがって、距離dは、交流電圧Vacの波形に影響を及ぼす。距離dの変化によって生じる静電容量CLのばらつきは、たとえば、150pF以上かつ220pF以下である。
【0018】
交流電源210は、トランスT1と、一次側回路211とを有している。一次側回路211がトランスT1を駆動することで、矩形波の交流電圧Vacが発生する。
【0019】
一次側回路211は、フルブリッジ回路と、駆動回路212a、212bとを有している。フルブリッジ回路は、NMOSタイプのトランジスタなどのスイッチング素子Q1~Q4により構成されている。フルブリッジ回路の出力側は、トランスT1の一次巻線に接続されている。フルブリッジ回路の入力側は駆動回路212a、212bに接続されている。駆動回路212aは、クロック信号Aclk1にしたがって二つの駆動信号を生成し、スイッチング素子Q1、Q3をオン/オフする。駆動回路212bは、クロック信号Aclk2にしたがって二つの駆動信号を生成し、スイッチング素子Q2、Q4をオン/オフする。フルブリッジ回路には基準電圧Vccが印加されている。
【0020】
駆動回路212aは、クロック信号Aclk1がHigh状態であるときに、スイッチング素子Q1をオンにし、スイッチング素子Q3をオフにする。駆動回路212aは、クロック信号Aclk1がLow状態であるときに、スイッチング素子Q1をオフにし、スイッチング素子Q3をオンにする。駆動回路212bは、クロック信号Aclk2がHigh状態であるときに、スイッチング素子Q2をオンにし、スイッチング素子Q4をオフにする。駆動回路212bは、クロック信号Aclk2がLow状態であるときに、スイッチング素子Q2をオフにし、スイッチング素子Q4をオンにする。
【0021】
トランスT1に正の電圧を出力させるためには、クロック信号Aclk1がHigh状態になり、かつ、クロック信号Aclk2がLow状態になる。これにより、スイッチング素子Q1、Q4がオンとなり、スイッチング素子Q2、Q3がオフになる。その結果、トランスT1の一次巻線には、矢印Aの方向に電流が流れる。
【0022】
反対に、トランスT1に負の電圧を出力させるためには、クロック信号Aclk1がLow状態になり、かつ、クロック信号Aclk2がHigh状態になる。これにより、スイッチング素子Q1、Q4がオフとなり、スイッチング素子Q2、Q3がオンになる。その結果、トランツT1の一次巻線には、矢印Bの方向に電流が流れる。
【0023】
トランスT1の二次巻線の一端は現像スリーブ41aに接続されている。トランスT1の二次巻線の他端は、コンデンサC1、C2の直列回路に接続されている。トランスT1の動作電流が得られるように、コンデンサC1、C2の各インピーダンスは十分に低い。コンデンサC1、C2の直列回路の他端は接地電位AC_GNDに接続されている。
【0024】
コンデンサC1は、静電容量CLを検知するために、静電容量CLと、コンデンサC2とともに、容量分圧回路を形成している。本実施例では、コンデンサC1は、たとえば、0.068uFである。コンデンサC2は、たとえば、4700pFである。本実施例で示される電気的特性に関する数値はいずれも例示にすぎない。
【0025】
検知回路230は、ピークホールド回路231、ローパスフィルタ232、およびボルテージフォロワ回路234を有している。ピークホールド回路231は、ダイオードD1、D2およびホールド用のコンデンサなどを有している。ピークホールド回路231は、コンデンサC1の両端に発生するAC電圧のピークツーピーク電圧(Vpp)をホールドする。コンデンサC1の両端に発生するVpp電圧は、以下の式で表される。
【0026】
Vpp =1000V×Cs/C1 (2)
ここでCsは直列に接続されたコンデンサC1、C2、CLの合成容量である。合成容量Csは、以下の式で表される。1000Vは現像電圧Voutのピークツーピーク値である。
【0027】
1/Cs =(1/C1)+(1/C2)+(1/CL) (3)
たとえば、静電容量CLが200pFと仮定されると、合成容量Csは(3)式より、約191pFと算出される。また、Vpp電圧は、(2)式から、1000V×191pF/0.68uF=2.81Vと算出される。Vpp電圧は、ピークホールド回路231に入力される。ピークホールド回路231は、入力電圧(Vpp電圧)をGND基準に持ちあげるためのダイオードD1と、入力電圧をピークホールドするためのダイオードD2とを有している。入力電圧は、2つのダイオードD1、D2の順方向電圧VFだけ降下して、ローパスフィルタ232へ出力される。順方向電圧VFが、たとえば、0.6Vと仮定されると、ピークホールド回路231から出力される電圧は、2.81V-0.6V×2=1.61Vとなる。
【0028】
ピークホールド回路231から出力される電圧は、ローパスフィルタ232に入力される。交流電圧Vacにオーバーシュートが発生すると、検知信号Vcl_snsにオーバーシュートの影響が及ぶ。よって、ローパスフィルタ232は、オーバーシュートに起因した高周波成分を入力電圧から除去する。ローパスフィルタ232は、抵抗とコンデンサなどのLC回路により構成されてもよい。
【0029】
ボルテージフォロワ回路234は、インピーダンス変換のために設けられている。これにより、入力電圧が微弱な電圧であっても、より正確な検知信号Vcl_snsが得られるようになる。ボルテージフォロワ回路234はオペアンプなどにより構成されてもよい。抵抗R1は、ピークホールド回路231およびローパスフィルタ232に含まれるコンデンサに蓄積された電荷を放電するプルダウン抵抗である。
【0030】
<現像電圧とクロック信号>
図3は現像電圧Voutと、クロック信号Aclk1、Aclk2との関係を示している。直流電圧Vdcは、-500Vと仮定されている。したがって、現像電圧Voutは、交流電圧Vacを-500Vだけオフセットした電圧となる。
図3が示すように、交流電圧Vacの正側振幅Vp(+)は500Vと仮定されている。負側振幅Vp(-)は500Vと仮定されている。よって、交流電圧Vacの振幅Vampは1000Vと仮定されている。
【0031】
交流電圧Vacの正側のデューティ比と負側のデューティ比はいずれも50%と仮定されている。交流電圧Vacの周期Tは100us(つまり、周波数f=10kHz)と仮定されている。
【0032】
図3が示すように、交流電圧Vacの極性が正であるときは、クロック信号Aclk1が動作区間にある。クロック信号Aclk2はオフ状態(Low状態)に固定されていることがわかる。逆に、交流電圧Vacの極性が負であるときは、クロック信号Aclk1はオフ状態(Low状態)に固定される。クロック信号Aclk2は動作区間にある。
【0033】
動作区間では、クロック信号Aclk1、Aclk2がオン状態(High状態)を常に維持しているとは限らない。
図3が示すように、クロック信号Aclk1、Aclk2はオン状態とオフ状態を繰り返すパルス信号となることがある。このように、クロック信号Aclk1、Aclk2はパルス幅変調(PWM)されてもよい。たとえば、PWMの周期Tpは5usである。
【0034】
図4(A)はクロック信号Aclk1、Aclk2がPWMされない場合の、現像電圧Voutを示している。
図4(B)はクロック信号Aclk1、Aclk2がPWMされる場合の、現像電圧Voutを示している。
【0035】
図4(A)が示すように、クロック信号Aclk1、または、クロック信号Aclk2が常にオン状態に維持されると、トランスT1のインダクタンス成分、巻線間容量、および、静電容量CLにより、共振現象が発生することがある。その結果、交流電圧Vacには、オーバーシュートが発生する。オーバーシュートは、意図しないリーク電流の発生と、それに伴う静電潜像の乱れをもたらす。よって、オーバーシュートは低減されなければならない。
【0036】
図4(B)が示すように、クロック信号Aclk1、および/または、クロック信号Aclk2の動作区間において、パルス幅が変調される。これにより、周期Tpのパルス区間で、任意の平均電圧が得られる。オーバーシュートが発生するタイミングで、オン期間を短くし、オフ期間を長くすることで、周期Tpあたりの平均電圧が低下する。これにより、交流電圧Vacのオーバーシュートが抑制される。
【0037】
オーバーシュートとは逆の現象として、交流電圧Vacの立ち上がり波形が緩やかになってしまうことがある。この場合、オン期間を長くし、オフ期間を短くすることで、周期Tpにおける平均電圧が増加される。その結果、立ち上り波形が急峻となる。
【0038】
このように、周期Tp内のオン期間(デューティ)を調整(PWM)することで、交流電圧Vacの立ち上りの傾きと立ち下りの傾きを制御することが可能となる。その結果、オーバーシュートが削減された現像電圧Voutが得られる。
【0039】
パルスの周期Tpが短いほど、交流電圧Vacの波形をより細かく調整することが可能となる。パルスの周波数fpは交流電圧Vacの周波数fより十分に高く設定される。本実施例で、たとえば、パルスの周期Tpは5us(周波数fp=200kHz)と仮定される。交流電圧Vacの周期Tは100usと仮定されている。この場合、交流電圧Vacの一周期Tには20個のパルス区間が存在する。
【0040】
<静電容量CLと検知信号Vcl_sns>
図5は静電容量CLと検知信号Vcl_snsとの関係を示している。式(2)、および、式(3)より、静電容量CLと検知信号Vcl_snsは比例関係を有する。よって、CPU251は、検知信号Vcl_snsに基づき静電容量CLを取得することができる。比例関係を示す数式は、メモリ252に予め保存されており、CPU251により使用可能である。つまり、CPU251は、検知信号Vcl_snsに基づき静電容量CLを推定できる。
【0041】
メモリ252は、静電容量CLとクロック信号Aclk1、Aclk2の設定値とを関連付けを保持する制御テーブル(変換テーブル)を予め記憶している。この設定値は、クロック信号Aclk1、Aclk2の変化パターンに相当する。
【0042】
図6はメモリ252に保持されている制御テーブルの一例を示している。この例では、静電容量CLが三つの容量範囲に分類されている。各容量範囲には、クロック信号Aclk1、Aclk2の変化パターンが関連付けられている。変化パターンは、交流電圧Vacの1周期分(T=100us)における、クロック信号Aclk1、Aclk2のデューティ比を示している。この例では、交流電圧Vacの1周期が20個の区間に分割されているため、クロック信号Aclk1、Aclk2のそれぞれについて、20個の設定値が制御テーブルに記憶されている。このようにクロック信号ごとの変化パターンは20個の設定値を有している。
【0043】
静電容量CLの変動量が30pF程度であれば、トナー画像の品質は、設計上で想定された品質に維持される。そのため、静電容量の範囲の幅が30pFに設定されている。
【0044】
CPU251は、検知信号Vcl_snsに基づき、三つの変化パターンから一つの変化パターンを選択する。CPU251は、第1区間から第20区間まで、選択した変化パターンにしたがったクロック信号Aclk1、Aclk2を生成して出力する。本実施例では、第1区間から第10区間10は、正の交流電圧Vacが出力される区間である。第11区間から第20区間は、負の交流電圧Vacが出力される区間である。
【0045】
<CPUの機能>
図7はCPU251が制御プログラムを実行することで実現される機能を示している。これらの機能のうち一つまたは複数がASICまたはFPGAなどのハードウエア回路により実現されてもよい。ASICは特定用途集積回路の略称である。FPGAはフィールドプログラマブルゲートアレイの略称である。
【0046】
設定部701は、決定部702から出力または指定される変化パターンにしたがってクロック回路711、712にデューティ比(オン期間)を設定する。クロック回路711は、クロック信号Aclk1を生成する。クロック回路712は、クロック信号Aclk2を生成する。クロック回路713は、クロック信号Dclkを生成する。メモリ252のRAM領域は、検知信号Vcl_snsの測定結果752を保持している。決定部702は、メモリ252から読み出された測定結果752に基づいて制御テーブル751を参照し、変化パターンを決定する。たとえば、決定部702は、検知信号Vcl_snsから求められた静電容量CLに対応する変換パターンを制御テーブル751から取得してもよい。このように、決定部702は、測定結果752を変化パターンに変換する変換部として機能してもよい。
【0047】
サンプリング回路721は、検知信号Vcl_snsの電圧をサンプリングする回路(アナログデジタル変換回路)である。サンプリング回路721は、CPU251に設けられたAD変換ポートであってもよい。統計部703は、サンプリング回路721から出力されるサンプリング値を統計処理することで測定結果752を取得して、メモリ252に書き込む。なお、測定結果752の更新は、監視部704によって指示されてもよい。監視部704は、静電容量が大きく変化しそうなイベントを監視する。監視部704は、このようなイベントを検知すると、統計部703に測定結果752の更新を指示する。このようなイベントとしては、画像形成装置100が商用電源から電力を供給されて起動したこと、印刷枚数が所定枚数に達したこと、または、現像器4が交換されたこと、などである。印刷ジョブが投入されるたびに、測定結果752が更新されてもよい。しかし、所定のイベントが発生したときに、測定結果752が更新されることで、ユーザの待ち時間がさらに削減されるであろう。イベントは、測定結果752を更新するための更新条件または変化パターンを再選択するための再選択条件と呼ばれてもよい。
【0048】
<フローチャート>
図8はCPU251により実行される交流電圧Vacの波形制御を示すフローチャートである。CPU251は、印刷要求を受信すると、波形制御を開始する。
【0049】
S1でCPU251(監視部704)は所定のイベントが発生したかどうかを判定する。上述されたように、所定のイベントとは、前回測定された静電容量CLと比較して今回測定される静電容量CLが大きく変化している可能性があるようなイベントである。所定のイベントが発生していれば、CPU251は処理をS2に進める。所定のイベントが発生していなければ、CPU251は処理をS3に進める。
【0050】
S2でCPU251(監視部704)は、波形調整モードの実行を許可するために、フラグをオンにセットする。S3でCPU251(監視部704)は、現像電圧Voutの出力の開始が要求されたかどうかを判定する。現像電圧Voutの出力の開始が要求されると、CPU251は処理をS4に進める。
【0051】
S4でCPU251(監視部704)は、フラグがオンであるかどうかを判定する。フラグがオンであれば、CPU251は処理をS5に進める。フラグがオフであれば、CPU251は処理をS6に進める。
【0052】
S5でCPU251は波形調整モードを実行する。波形調整モードは、静電容量CLを測定し、測定結果752と変化パターンとを更新する処理である。その後、CPU251は処理をS7に進める。
【0053】
S6でCPU251(決定部702)は、メモリ252に保持されている測定結果752に基づき変化パターンを決定する。決定部702は、制御テーブル751を参照することで、測定結果752に対応する変化パターンを選択する。決定部702は、数式などを用いて、測定結果752から変化パターンを演算してもよい。設定部701は、選択された変化パターンにしたがってクロック回路711、712を制御し、クロック信号Aclk1,Aclk2を出力させる。CPU251は、クロック回路713を制御して所定のクロック信号Dclkを出力する。現像回路200は、クロック信号Aclk1,Aclk2、Dclkにしたがって現像電圧Voutを出力する。
【0054】
S7でCPU251は、前回の波形調整モードの実行時における印刷枚数と現在の印刷枚数との差である印刷枚数が閾値以上かどうかを判定する。CPU251は、印刷枚数(画像形成枚数)をカウントし、メモリ252に保持するものとする。印刷枚数が閾値以上であれば、CPU251は処理をS5に進め、波形調整モードを再度実行する。一方で、印刷枚数が閾値以上でなければ、CPU251は処理をS8に進める。閾値は、実験またはシミュレーションによって決定され、たとえば、1000枚である。
【0055】
S8でCPU251(監視部704)は、現像電圧Voutの停止が要求されたかどうかを判定する。たとえば、印刷ジョブにより指定されたすべての画像の形成が完了したり、印刷ジョブの中止が指示されたりすると、現像電圧Voutの停止が要求される。現像電圧Voutの停止が要求されていなければ、CPU251は処理をS4に進める。現像電圧Voutの停止が要求されていれば、CPU251は処理をS9に進める。
【0056】
S9でCPU251(設定部701)は、クロック信号Aclk1、Aclk2、Dclkの出力を停止するようクロック回路711、712、713に指示する。クロック信号Aclk1、Aclk2、Dclkの出力が停止されると、現像回路200は、現像電圧Voutの出力を停止する。S10でCPU251(監視部704)は、フラグを0にリセットする。
【0057】
図9は上述されたステップS5を詳細に示している。S11でCPU251(決定部702)はメモリ252に記憶されている静電容量CLの測定結果752に基づき変化パターンを決定する。設定部701は、決定部702により決定された変化パターンに基づき、クロック回路711、712を制御する。これにより、交流電源210が交流電圧Vacを生成する。クロック回路711も並行してクロック信号Dclkを直流電源220に供給する。これにより、直流電源220は所定の直流電圧Vdcを出力する。
【0058】
S12でCPU251(統計部703)はサンプリング回路721を制御して検知電圧Vlc_snsのサンプリングを開始する。なお、サンプリングは、現像電圧Voutが安定したタイミングで開始される。たとえば、CPU251は、交流電圧Vacの出力開始から一定時間(例:100ms)が経過したかどうかを判定する。交流電圧Vacの出力開始から一定時間(例:100ms)が経過していれば、CPU251は、交流電圧Vacの振幅Vampが目標電圧(例:1000V)に安定したと判定する。サンプリング回路721は、CPU251により設定された所定のサンプリング周期(例:20us)にしたがって、N個のサンプリング値を取得する。Nは、たとえば、5であってもよい。Nは、交流電圧Vacの周期Tをサンプリング周期で除算することで求められる。
【0059】
S13でCPU251(統計部703)は検知信号Vcl_snsのサンプリング値から静電容量CLを演算する。たとえば、統計部703のN個のサンプリング値の統計値(例:平均値)を演算してもよい。統計値は、新たな静電容量CLの測定結果752となる。
【0060】
S14でCPU251(統計部703)は、古い測定結果752に対して新しい静電容量CLの測定結果752を上書きすることで、測定結果752更新する。さらに、CPU251(決定部702)は更新された測定結果752に対応する変化パターンを決定する。決定部702は、新たに決定された変化パターンを設定部701に設定する。設定部701は、新たな変化パターンにしたがってクロック回路711、712を制御する。これにより、現像電圧Voutに含まれる交流電圧Vacの波形が調整される。
【0061】
S15でCPU251はフラグをオフにリセットする。S16でCPU251は検知信号Vcl_snsのサンプリングを停止し、波形調整モードを終了する。
【0062】
図10は、現像器4aの交換に起因して静電容量CLが変動した事例を示している。ここでは静電容量CLが180pFから150pFに変化したと仮定されている。
【0063】
時刻t0で交流電圧Vacの出力が開始されている。時刻t0より前に、現像器4aが交換され、フラグはすでにオンにセットされている。そのため、時刻t0で波形調整モードの実行が開始される。メモリ252に保持されている静電容量CLの測定結果752は180pFのままである。CPU251は、交流電圧Vacの出力を開始するよう要求されると、180pFに適した変化パターンPAを選択して、クロック信号Aclk1、Aclk2の出力を開始する。直流電圧Vdcも並行して出力されている。
【0064】
交流電圧Vacの出力が開始されると、検知信号Vcl_snsの電圧も上昇を始める。とりわけ、時刻t0、t1、t2と時間が経過するにつれて、この電圧が上昇する。
【0065】
時刻10は、交流電圧Vacの出力開始から一定時間が経過したタイミングである。時刻t10から時刻t12までの区間T2では、交流電圧Vacが安定している。このとき、交流電圧Vacについての振幅Vampは1000Vに維持されている。一方で、検知信号Vcl_snsも安定する。検知信号Vcl_snsの電圧は0.94Vで安定する。0.94Vを静電容量CLに換算すると、これは150pFに相当する。
【0066】
区間T2では、交流電圧Vacの波形にオーバーシュートが見られる。これは現像器4aが交換されたことに起因している。つまり、実際の容量負荷CLは150pFであるが、クロック信号Aclk1、Aclk2の変化パターンが過去の測定結果(180pF)に基づき選択されているからである。
【0067】
CPU251は、時刻t10で検知信号Vcl_snsのサンプリングを開始する。CPU251は、20usのサンプリング周期で5つのサンプリング値を取得する。CPU251は、5つのサンプリング値の平均値を求める。平均値は、150pFである。CPU251は、測定結果752を、180pFから150pFに更新する。その結果、CPU251は、新しい変化パターンとして、変化パターンPBを選択する。時刻t12で変化パターンがPAからPBに更新されている。時刻t12以降で、CPU251は、変化パターンPBにしたがったクロック信号Aclk1、Aclk2を交流電源210へ出力する。区間T3では、交流電圧Vacに含まれていたオーバーシュートが区間T2よりも低減されている。
【0068】
このように、本実施例によれば、現像器4aの静電容量CLに基づき適切な波形パターンが速やかに決定される。よって、波形調整のための待ち時間が削減される。
【0069】
ここでは、現像電圧Voutを分圧するために、コンデンサCL、C1、C2からなる容量分圧回路が採用されているが、これは一例に過ぎない。たとえば、コンデンサC1は、現像電圧Voutに相関した現像電流を検知する電流検知抵抗に置換されてもよい。この場合、検知信号Vcl_snsは、電流検知抵抗に生じる電圧を示す。なお、現像電流も静電容量CLに相関している。
【0070】
交流電源210には、トランスT1を駆動するためフルブリッジ回路が採用されている。しかし、同等の機能を有するハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路が採用されてもよい。
【0071】
上述の実施例では、交流電圧Vacの正の振幅および負の振幅は平衡状態であった。正の振幅が出力される期間のデューティ比と負の振幅が出力される期間のデューティ比も平衡状態であった。これは一例にすぎず、不平衡状態が採用されてもよい。たとえば、正の振幅は40%であり、負の振幅は60%であってもよい。この場合、正の振幅に関するデューティ比は60%であり、負の振幅に関するデューティ比は40%であってもよい。
【0072】
図11は交流電圧Vacの正の振幅と負の振幅との関係を不平衡状態にした場合の交流電源210を示している。
図11が示すように、正負の振幅を不平衡状態にする場合、正側の基準電圧Vcc1と負側の基準電圧Vcc2とが必要となる。正側の基準電圧Vcc1はスイッチング素子Q1のドレインに接続されている。負側の基準電圧Vcc2はスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。つまり、基準電圧Vcc1と負側の基準電圧Vcc2との比がA:Bとなる。なお、正の振幅のデューティ比と、負の振幅のデューティ比との比はB:Aとなるように、クロック信号Aclk1とクロック信号Aclk2とが調整される。
【0073】
あるいは、
図2に示された共通の基準電圧Vccが採用された場合でも不平衡状態は達成可能である。クロック信号Aclk1のデューティ比と、クロック信号Aclk2のデューティ比とを調整することで、正負の振幅の不平衡状態が達成されてもよい。
【0074】
本実施例では、予めメモリ252に記憶されている制御テーブル751に基づいて、変化パターンが決定されたが、これは一例に過ぎない。検知信号Vcl_snsの測定結果752を入力とし、複数の設定値の集合体である変化パターンを出力とする数式、または関数が採用されてもよい。
【0075】
<実施例から導き出される技術思想>
[観点1]
感光体ドラム1は静電潜像が形成される像担持体の一例である。現像スリーブ41aは像担持体に対して空隙を介して対向して配置された現像部材の一例である。現像回路200は、現像部材に担持されている現像剤を静電潜像に付着させる現像電圧Voutを現像部材に印加する電源回路の一例である。コントローラ基板250およびCPU251は、電源回路に制御信号(例:クロック信号Aclk1、Aclk2)を供給することで電源回路を制御する制御手段として機能する。検知回路230は電気的特性を検知する。電気的特性とは、空隙に起因して像担持体と現像部材との間に生じる静電容量、または、現像電圧を現像部材に印加することで流れる電流(交流の現像電流)である。CPU251および決定部702は、検知回路により検知された電気的特性を制御信号のデューティ比の変化パターンに変換してもよい。つまり、CPU251および決定部702は、検知された電気的特性に基づいて制御信号のデューティ比の変化パターンを決定する。CPU251は、決定された変化パターンにしたがって時間の経過とともにデューティ比を変化させながら制御信号を電源回路に出力する。このように、静電容量CLなどの電気的特性を変化パターン(駆動パターン)に変換することで、現像電圧の調整処理に要する時間が従来よりも短縮される。
【0076】
[観点2]
メモリ252および制御テーブル751は、制御信号のデューティ比の変化パターンと、像担持体と現像部材との間の電気的特性とを関連付けて予め記憶するパターン記憶手段の一例である。決定部702は、検知回路により検知された電気的特性に対応した制御信号のデューティ比の変化パターンをパターン記憶手段から読み出す。これにより、検知回路により検知された電気的特性から変化パターンが決定されてもよい。なお、制御テーブル751は、実験またはシミュレーションによって作成され、画像形成装置100が工場から出荷される際にメモリ252のROM領域に格納される。
【0077】
[観点3]
図6が示すように、制御テーブル751は、第一範囲(例:CL<170pF)の電気的特性に対して第一変化パターンを関連付けて記憶していてもよい。制御テーブル751は、第二範囲(例:170pF=<CL<200pF)の電気的特性に対して第二変化パターンを関連付けて記憶していてもよい。第三範囲(例:200pF=<CL<230pF)の電気的特性に対して第三変化パターンを関連付けて記憶していてもよい。決定部702は、検知回路により検知された電気的特性が第一範囲に属する場合に、第一変化パターンを出力する。決定部702により変化パターンが第一変化パターンに決定される。決定部702は、検知回路により検知された電気的特性が第二範囲に属する場合に、第二変化パターンを出力する。つまり、決定部702により変化パターンが第二変化パターンに決定される。決定部702は、検知回路により検知された電気的特性が第三範囲に属する場合に、第三変化パターンを出力する。つまり、決定部702により変化パターンが第三変化パターンに決定される。ここでは、3つの範囲が採用されているが、範囲の数は2以上であればよい。
【0078】
[観点4]
決定部702は、検知回路により検知された電気的特性から変化パターンを演算することで、変化パターンを決定する演算手段として機能してもよい。決定部702の演算能力が高く、メモリ252の記憶容量に余裕がない場合、この変換手法は有効であろう。
【0079】
[観点5]
CPU251および監視部704は、電気的特性の検知条件(例:イベントの発生)が満たされているかどうかを判定する判定手段として機能する。メモリ252は、検知条件が満たされたことにより検知回路により検知された電気的特性(例:測定結果752)を記憶する特性記憶手段として機能する。決定部702は、特性記憶手段に記憶されている電気的特性に基づいて変化パターンを決定する。画像形成を実行するたびに、電気的特性を検知すると、ユーザの待ち時間が増加する。よって、予め検知された電気的特性を利用することで、ユーザの待ち時間が削減される。
【0080】
[観点6、7]
検知条件は、特性記憶手段に記憶されている電気的特性と、現像部材と像担持体との間の電気的特性との差を所定値以上とさせる可能性がある画像形成装置のイベントが発生したことであってもよい。
図6に関連して説明されたように、所定値は、たとえば、30pFであってもよい。つまり、所定値は、制御テーブル751における各範囲の幅に一致していてもよい。イベントは、現像部材(現像器4a)が交換されたことであってもよい。イベントは、画像形成装置100が商用電源から電力を供給されて起動したことであってもよい。イベントは、過去に検知条件が満たされたとき以降に画像形成装置で形成された画像の枚数が所定枚数以上になったことであってもよい。所定枚数は、たとえば、1000枚であってもよい。
【0081】
[観点8、9]
電源回路として機能する現像回路200は、直流電圧を生成する直流電源220と、交流電圧を生成し、直流電圧に当該交流電圧を重畳することで現像電圧を出力する交流電源210と、を有してもよい。交流電源210は、制御信号のデューティ比に応じた振幅の交流電圧を生成する。制御信号の周期Tpは、交流電圧の周期Tの1/30以上かつ1/10以下であってもよい。
【0082】
[観点10]
統計部703は、検知回路により検知された複数の電気的特性の統計値を求める統計手段として機能する。決定部702は、統計値(例:平均値)に基づき変化パターンを決定するように構成されていてもよい。
【0083】
[観点11]
CPU251およびサンプリング回路721は、所定のサンプリング周期ごとに検知回路から出力される電気的特性をサンプリングするように構成されていてもよい。所定のサンプリング周期は、たとえば、交流電圧Vacの周期Tよりも短く、かつ、制御信号の周期Tpよりも長くてもよい。
【0084】
[観点12、13]
交流電源
210は、一次側回路211と、一次側回路211に一次巻線が接続され、交流電圧を二次巻線に出力するトランスT1と、を有する。一次側回路211は、制御信号を供給されるフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路またはプッシュプル回路を含む。交流電源
210がフルブリッジ回路を有する場合、当該フルブリッジ回路は、次の回路要素を有してもよい。駆動回路212aは、制御信号のうち第一駆動信号を供給されて動作する第一駆動回路の一例である。駆動回路212bは、制御信号のうち第二駆動信号を供給されて動作する第二駆動回路の一例である。
図2が示すように、スイッチング素子Q1、Q3は第一駆動回路により駆動される第一スイッチング素子および第三スイッチング素子の一例である。スイッチング素子Q2、Q4は、第二駆動回路により駆動される第二スイッチング素子および第四スイッチング素子の一例である。第一スイッチング素子のドレインは第一基準電圧(例:Vcc、Vcc1)を印加されてもよい。第一スイッチング素子のゲートは第一駆動回路に接続されてもよい。第一スイッチング素子のソースは第三スイッチング素子のドレインおよびトランスT1の一次巻線の一端に接続されてもよい。第三スイッチング素子のゲートは第一駆動回路に接続されていてもよい。第三スイッチング素子のソースは接地されていてもよい。第二スイッチング素子のドレインは第二基準電圧(例:Vcc、Vcc2)を印加されてもよい。第二スイッチング素子のゲートは第二駆動回路に接続されていてもよい。第二スイッチング素子のソースは、第四スイッチング素子のドレインおよびトランスT1の一次巻線の他端に接続されていてもよい。第四スイッチング素子のゲートは第二駆動回路に接続されていてもよい。第四スイッチング素子のソースは接地されていてもよい。第一スイッチング素子がオンになり、第三スイッチング素子がオフになり、第二スイッチング素子がオフになり、第四スイッチング素子がオンになることで、交流電圧Vacの極性が第一極性(例:正)となる。第一スイッチング素子がオフになり、第三スイッチング素子がオンになり、第二スイッチング素子がオンになり、第四スイッチング素子がオフになることで、交流電圧Vacの極性が第二極性(例:負)となる。
【0085】
[観点14―17]
検知回路230は、現像電圧を分圧する分圧回路(例:コンデンサC1など)を有してもよい。検知回路230は、分圧回路の出力電圧のピークツーピーク値をホールドし、制御手段にピークツーピーク値を出力するホールド回路(ピークホールド回路231)を有してもよい。ホールド回路と制御手段(例:コントローラ基板250)との間に、ピークツーピーク値に含まれる高周波成分を除去するローパスフィルタ232が設けられてもよい。この高周波成分は、現像電圧Voutに生じるオーバーシュートに起因して発生する。つまり、ローパスフィルタ232を設けることで、より正確に、静電容量CLを測定することが可能となる。ローパスフィルタ232と制御手段との間で、インピーダンス変換を行うボルテージフォロワ回路234が接続されていてもよい。これにより、微小な検知信号Vcl_snsであっても精度よく検知することが可能となる。
【0086】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【符号の説明】
【0087】
1:感光体ドラム、41:現像スリーブ、200:現像回路、251:CPU