(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】二重加圧容器および吐出製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/62 20060101AFI20240221BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B65D83/62
B65D1/02 111
(21)【出願番号】P 2020128730
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢
(72)【発明者】
【氏名】菅原 信也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英俊
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150119(JP,A)
【文献】特開平09-267876(JP,A)
【文献】特開2020-019570(JP,A)
【文献】特開2020-019522(JP,A)
【文献】実開昭64-026293(JP,U)
【文献】実開平02-133456(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/62
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部容器と内部容器とからなる容器本体と、
その容器本体の開口を密封する蓋体とからなり、
前記内部容器に原液が密封され、前記外部容器と内部容器の間に加圧剤が密封される二重加圧容器であって、
前記外部容器および内部容器が、それぞれ首部と、その首部の下端から下方にいくにしたがって外向きに拡がり、外周部が略水平に張り出す肩部と、肩部の外周部から屈曲して下方に延びる胴部と、胴部の下端を閉じる底部とを備えており、
前記蓋体から下方に向かって内部容器の胴部を貫通する穿孔突起が延びている、
二重加圧容器。
【請求項2】
前記穿孔突起が内部容器の中心軸からずれた位置に設けられている請求項1記載の二重加圧容器。
【請求項3】
前記穿孔突起の下端が、前記内部容器の肩部の外周部を基準線として、内部容器の高さの-10%~+5%の範囲にある、請求項1または2記載の二重加圧容器。
【請求項4】
前記内部容器の肩部の外周部近辺と胴部の上部のなす角度が100~130°である請求項1~3のいずれかに記載の二重加圧容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の二重加圧容器と、前記内部容器に充填された原液と、外部容器と内部容器の間に充填された加圧剤とからなる、吐出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重加圧容器および吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部容器と内部容器とからなる容器本体と、その容器本体の開口を密封する蓋体とからなり、前記内部容器に原液が密封され、前記外部容器と内部容器の間に加圧剤が密封される二重加圧容器が記載されている。この二重加圧容器は、バルブを備えた吐出部材を装着することにより、バルブを操作して原液を吐出することができる。そして
図2Cには、蓋体の下面に設けられた、内部容器の原液がなくなって収縮したときに内部容器を貫通するスパイク15eが開示されている。このものは原液がなくなったとき、スパイクが内部容器の肩部を貫通するので、内部容器と外部容器の間に密封されていた加圧剤を外部に排出することができる。
【0003】
特許文献2には、噴射バルブの下部外周部位に、内筒(内部容器)の内壁に向けて傾斜する先鋭突起が設けられてなるエアゾール容器が開示されている。先鋭突起は斜め下向きに拡がるように4本設けられている。このものも原液を吐出した後、先鋭突起が内筒を破るので、加圧剤を外部に吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-19570号公報
【文献】特開平9-267876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の二重加圧容器は、原液を吐出した後、内部容器が上向きに変形することにより、スパイクの先端が内部容器の首部から肩部にかけて当接する。しかし首部や肩部は肉厚であるため、穿孔は必ずしも確実でない。特許文献2の先鋭突起は斜め下を向いているので、穿孔はある程度確実であり、さらに先鋭突起を高くすることにより、ガス排気率を高くできるとされている(特許文献2の表1参照)。しかし原液を充分に吐出する前に穿孔するため、原液の残量率が高くなる傾向がある。
【0006】
本発明は原液がほぼ全量吐出された後に加圧剤の排出が始まり、しかも内部容器の穿孔および加圧剤の排出がより確実な二重加圧容器および吐出製品を提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二重加圧容器11、11A、11Bは、外部容器13と内部容器14とからなる容器本体16と、その容器本体16の開口を密封する蓋体15とからなり、前記内部容器14に原液Cが密封され、前記外部容器13と内部容器14の間に加圧剤Pが密封される二重加圧容器であって、前記外部容器13および内部容器14がそれぞれ首部13d、14dと、その首部13d、14dの下端から下方にいくにしたがって外向きに拡がり、外周部が略水平に張り出す肩部13c、14cと、肩部13c、14cの外周部(境界部13c1、14c1)から屈曲して下方に延びる胴部13b、14bと、胴部13b、14bの下端を閉じる底部13a、14aとを備えており、前記蓋体15から下方に向かって内部容器14の胴部14bを貫通する穿孔突起17cが延びていることを特徴としている。
【0008】
このような二重加圧容器11、11A、11Bにおいては、前記穿孔突起17cが内部容器14の中心軸からずれた位置に設けられているものが好ましい。また、前記穿孔突起17cの下端17eが、前記内部容器14の肩部14cの外周部(境界部14c1)を基準線として、内部容器14の高さ(100%)の-10%~+5%の範囲にあるものが好ましい。さらに前記内部容器14の肩部14cの外周部近辺と胴部14bの上部のなす角度θ1が100~130°であるものが好ましい。前記内部容器14の肩部14cの外周部近辺と水平面のなす角度θ2が5~30°であるものが好ましい。
【0009】
本発明の吐出製品11aは、前述のいずれかの二重加圧容器11、11A、11Bと、前記内部容器14に充填された原液Cと、外部容器13と内部容器14の間に充填された加圧剤Pとからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二重加圧容器は、外部容器と内部容器の肩部の外周部近辺が略水平に張り出しているので、内部容器内の原液が少なくなると、内部容器の肩部はほとんど変形しないが胴部は扁平に潰され、胴部の上部は肩部の外周部を起点として上向きに折れ曲がるように変形する。そして原液がほとんどなくなると、胴部の上部が上方に持ち上げられ、穿孔突起に強く押し付けられて孔があく。それにより外部容器と内部容器の間の加圧剤を排出することができる。
【0011】
ブロー成形で製造した内部容器の場合は、胴部は肩部よりも延ばされて薄肉になるため、穿孔突起をより確実に貫通させやすい。消費者はバルブを操作したときに噴射剤(ガス)が噴射されることで使い終わりが分かる。さらに外部容器が合成樹脂の場合は、内圧がなくなり、潰れやすくなるので、一層、使い終わりがわかりやすい。バルブ着脱タイプの二重加圧容器では、噴射剤(ガス)が抜けているので、バルブを外す際にも原液の吹き出しがなく、安全に付け替えることができる。
【0012】
このような二重加圧容器において、前記穿孔突起が内部容器の中心軸からずれた位置に設けられている場合は、内部容器をより確実に穿孔して加圧剤を排出することができる。また、前記穿孔突起の下端が、前記肩部の外周部を基準線として、内部容器の高さ(100%)の-10%~+5%の範囲にある場合は、胴部の上部が充分上昇してから穿孔突起が内部容器の胴部を貫通する。そのため、穿孔が一層確実で、しかも内部容器内に残存する原液をほとんどなくすことができる。
【0013】
前記内部容器の肩部の外周部近辺と胴部の上部のなす角度が100~130°である場合は、肩部の外周部の剛性が高くなり、胴部の上向きに折れ曲がる起点を一層確実に肩部の外周部とすることができる。
【0014】
本発明の吐出製品は、前述の二重加圧容器を用いているので、前述と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の吐出製品の一実施形態を吐出部材と共に示す断面図である。
【
図2】
図1の吐出製品に用いる二重加圧容器の断面図である。
【
図4】
図1の吐出製品に用いる吐出部材の一例を示す断面図である。
【
図5】
図1の吐出製品の使用後の状態を吐出部材と共に示す断面図である。
【
図7】本発明の吐出製品のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
始めに
図1を参照して本発明の二重加圧容器を用いた吐出装置の概略を説明する。
図1に示す吐出装置10は、二重加圧容器11と、吐出部材12と、二重加圧容器11に充填された原液Cおよび加圧剤(プロペラント)Pとからなる。二重加圧容器11に原液Cと加圧剤Pを充填したものが吐出製品11aである。吐出製品11aと吐出部材12は組み立て前のセット品として(
図1参照)、あるいは半分組み立てた未開封の状態で販売される。吐出製品11aは吐出部材12と共に販売されるほか、交換用として単独でも販売される。吐出部材12についても単独で販売されることがある。
図5は原液を吐出した後の吐出装置10を示している。
【0017】
図1および
図2に示すように、前記二重加圧容器11は外部容器13と、その内部に収容されている可撓性を有する内部容器14と、外部容器13と内部容器14を封止する蓋体15と、蓋体15の下面に取り付けた穿孔部材17とからなる。バルブやポンプは備えていない。内部容器14の内部は原液Cを充填する原液収容室Scであり、外部容器13と内部容器14の隙間の空間は加圧剤Pを充填する加圧剤収容室Spである。それらは蓋体15によって封止されている。
【0018】
外部容器13はブロー成形によって成型したものであり、底部13aと、その外周から連続する略円筒状の胴部13bと、その上端から連続する肩部13cと、その上端から上向きに突出する厚肉円筒状の首部13dとからなる。首部13dの外周には雄ねじ13eが形成されている。首部13dの上端面13fは蓋体15を固着できるように略平坦にしている。また、上端面13fに超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くしてシールポイントをつくるための環状突起(
図2の符号13g参照)を設けている。
【0019】
肩部13cは、首部13dの下端から下向きに延び、下にいくにしたがって次第に薄くなりながら外向きに拡がり、外周部近辺で略水平に張り出している。胴部13bは、肩部13cの外周部から下向きに屈曲し、下方に延びている。胴部13bの上部では下向きに拡がり、下部は略円筒状である。外部容器13の胴部13bは上部および下部とも厚さ0.3~1.5mm程度、とくに0.4~1.3mm程度である。肩部13cの厚さは外周部近辺で0.4~1.7mm程度、とくに0.6~1.5mm程度であり、湾曲して首部に連続する部位13c2では厚さ2~3mm程度とかなり厚くされている。首部13dの厚さは2~3mm程度である。
【0020】
前記外部容器の肩部13cの外周部近辺と胴部の上部のなす角度θ1は100~130°程度である。また、肩部13cの外周部近辺の水平面に対する角度θ2は、5~30°程度と、ほぼ水平に張り出している。そのため、特許文献1の外部容器に比して急角度で屈曲している。
【0021】
図2に示すように、内部容器14も外部容器13と同様に、底部14a、胴部14b、肩部14cおよび首部14dからなる。内部容器14の首部14dの外面は外部容器13の首部13dの内面に密着している。内部容器14の首部14dの内面は滑らかな円筒面である。内部容器14の首部14dの上端には、外部容器13の首部13dの上端面13fに係合するフランジ14fを設けている。また、首部の上端面に、超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くしてシールポイントをつくるための環状突起14gを設けている。
【0022】
内部容器14のフランジ14fの下面には、半径方向に延びる加圧剤充填用の横溝14hが形成されている。さらに内部容器14の首部14dの外周面には、その横溝14hと連続する縦溝14iが形成されている。縦溝14iは内部容器14の首部14dの上部に形成されており、首部14dの上部は縦溝14iを除き、外部容器13の首部13dの内周面と嵌合している。
【0023】
後述するように、外部容器13および内部容器14は2層ブロー成形で成形しており、加圧剤を充填していない状態では
図2に示すように、内部容器14の胴部14bおよび肩部14cの外面は外部容器13の胴部13bおよび肩部13cの内面にほぼ密着している。あらかじめ成形した外部容器13の内面を型として内部容器14をブロー成形してもよい。底部14aの厚さは0.3~2mm程度、胴部14bの厚さは0.2~0.5mm程度、肩部14cの厚さは外周部近辺で0.3~1mm程度、首部14dの厚さは1~3mm程度である。
【0024】
内部容器14の首部14dの内面は上端開口部から下方に向かって徐々に細くされ、肩部14cに連続している。肩部14cは外側に向かって湾曲しながら拡がり、外周部では略水平に張り出している。胴部14bは肩部14cから下向きに屈曲して下向きに延び、下端は底部14aで閉じられている。肩部14cの外周部近辺と胴部14bの上部のなす角度θ1は100~130°程度である。肩部14cの外周部近辺の水平面に対する角度θ2は、5~30°程度と、ほぼ水平に張り出している。そのため、特許文献1の内部容器に比して急角度で屈曲している。
【0025】
外部容器13および内部容器14はいずれも合成樹脂製、とくにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製であり、たとえば外部容器用のプリフォームの中に内部容器用のプリフォームを入れ、肩部13c、14cより下側を同時にブロー成形することにより製造することができる。とくに所定形状のプリフォームをインジェクション成形し、ついでブロー成形するインジェクション・ブロー成形法が好ましい。外部容器13内で内部容器14をブロー成形したり、金型内で同時にブロー成形することにより、外部容器13と内部容器14は、首部13d、14dを除いてほぼ同一の形状に成形することができる。外部容器13は厚肉にして耐圧性をもたせており、内部容器14は薄肉にして可撓性ないし可壊性をもたせている。
【0026】
図3Aに示すように、前記蓋体15は内部容器14の首部14d内に挿入される有底筒状の封止部15aと、その上端に連続する環状のフランジ15bと、封止部15aの底部15cの上面から上向きに突出する嵌合筒部15c1と、底部15cの下面から下向きに突出する取り付け筒部15c2とからなる。封止部15aの底部15cのうち、嵌合筒部15c1より内側の部分15c3は、外側の部分よりいくらか上に設けられており、その内側の部分15c3の中央に被開封部15dが設けられている。被開封部15dは、後述する開封部27で開封しやすくするため、環状の薄肉部あるいは環状溝などの弱め線15fで囲んでいる。この実施形態では、弱め線15fはV溝で形成している。また、破り易くするため、被開封部15dの上面に肉厚にした受圧部15gを設けて撓みにくくしている。フランジ15bの外周部15b1は外部容器13の上端面13fに当接するため、下向きに屈曲している。フランジ15bの上面外周部には、超音波溶着のときの振動伝達範囲を制御するための切り欠き15b2を形成している。
【0027】
底部15cの内側の部分15c3を封止部15aの下端より少し上に設けているのは、底部15c全体の剛性を高めて弱め線15fの破断を容易にするためである。さらに内側の部分15c3の下面からその周囲、すなわち嵌合筒部15c1の下端の内周に相当する部位にかけて、補強リブ15c4を設けることにより、底部15cの剛性を一層高めている。
【0028】
嵌合筒部15c1の内周面は、被開封部15dを開封する際に原液が漏出しないように、バルブ21のシール部材28と当接してシールを形成するため滑らかな円筒面にすることが好ましく、下に向かって縮径されるテーパー状としてもよい。蓋体15のフランジ15bは、原液Cや加圧剤Pの充填後、超音波溶着、レーザー溶着、高周波溶着などによって外部容器13の首部13dの上端面13fおよび内部容器14の首部14dの上端面14eに固着され、同時に封止される。
【0029】
蓋体15の材料は外部容器13や内部容器14との熱接合性が高い熱可塑性樹脂が用いられ、溶着で固着する場合は外部容器13や内部容器14と同じ材料を用いることが好ましい。蓋体15は、溶着するほか、接着剤で接着してもよい。蓋体15で原液収容室Scと加圧剤収容室Spを封止すると共に、内部容器14または外部容器13のいずれか、あるいは両方に固着することにより、内容物(原液C、加圧剤P)を長期間安全に、漏れないように保管しておくことができる。
【0030】
穿孔部材17は、原液を吐出し終わったときに内部容器14を穿孔して内部容器14と外部容器13の間の加圧剤Pを放出するためのものである(
図5参照)。この実施形態では、
図3B、
図3Cに示すように、円板状の基部17aと、その上面から突出する、蓋体15の取り付け筒部15c2の内面と嵌合する上筒部17bと、基部17aの下面から突出する針状ないし棒状の穿孔突起17cとからなる。基部17aの中央には原液Cを通すための通路17dが形成されている。基部17aおよび上筒部17bは、穿孔突起17cを支持する構造として機能する。後述するように穿孔突起17cの下端17eを肩部14cと同程度の高さにするため、穿孔突起17cは長くなりがちである。そのため、基部17aおよび上筒部17bで穿孔突起17cを支持し、撓みを抑制するのが好ましい。上筒部17b内の空間は、被開封部15dが開封されて下方に折り曲げられたとき、あるいは脱落したときに被開封部15dを収容する空間となる。
【0031】
穿孔突起17cは、下端に向かって細くされており、内部容器14を穿孔するため、下端17eは尖っている。穿孔突起17cは通常は断面円形とするが、角形など、他の形状でもよい。内部容器14の胴部に引き裂き易い方向がある場合は、その方向に応じて半径方向または円周方向に長い切り刃状の下端17eとすることもできる。
図5に示すように原液吐出後の内部容器14の変形は不定形であるので、穿孔突起17cは複数本、互いに間隔をあけて設けるのが好ましい。
図3Cの場合は2本設けている。穿孔突起17cは、内部容器14の中心軸から外れた位置に配置されている。それにより
図5のように内部容器14の胴部14bの壁同士が中央部で出会うように重なったときでも、穿孔突起17cは比較的平坦に持ち上げられた胴部14bを穿孔することができる。
【0032】
穿孔突起17cの下端17eの高さ方向の位置は、内部容器14の肩部14cと同程度の高さとする。すなわち、下端17eの位置を低くすると胴部14bの穿孔がより確実になるが、早めに穿孔することになり、残留する原液Cが多くなる。他方、下端17eの位置を高くすると原液Cの残量を少なくできる半面、穿孔の確実性が低下する。そのため、屈曲の起点となる肩部14cの外周部(境界部14c1)を基準線(
図5の符号L)として、内部容器14の高さ(底面から上端面14eまでの高さ)の-10%(
図5の符号Ld)~+5%(
図5の符号Lu)の範囲にあるようにするのが好ましい。それにより内部容器14の胴部14bが変形して上昇したとき、穿孔突起17cでより確実に穿孔することができ、しかも原液Cの残量を少なくできる。
【0033】
穿孔部材17は、材料のリサイクルのし易さの観点から、内部容器14や外部容器13と同一の材料、たとえばポリエチレンテレフタレートなどから形成するのが好ましい。しかし内部容器14をより確実に穿孔するため、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイドなどの硬質の合成樹脂やステンレスなどの金属から形成してもよい。この実施形態では穿孔部材17は蓋体15と別個に構成されているが、蓋体15と一体成型することもできる(
図6A、
図6B参照)。ただし別個に成型するほうが、成型が容易であり、金型もシンプルになる。
【0034】
穿孔部材17は、
図2に示すように、あらかじめ蓋体15と結合して一体にしておく。取り付け筒部15c2と上筒部17bは、蓋体15の超音波溶着のときの振動で外れないように、レーザー溶着、熱溶着、接着剤などによる接合で確実に固着しておく。なお、取り付け筒部15c2と上筒部17bのいずれかに係合突起を設け、他方にその係合突起と係合する係合溝を設け、超音波溶着のときの振動で外れないようにしてもよい。
【0035】
図2の二重加圧容器11の内部容器14に原液Cを充填し、蓋体15を被せ、アンダーカップ充填などで外部容器13と内部容器14の間の加圧剤収容室Spに加圧剤Pを充填した後、蓋体15のフランジ15bを容器本体16に超音波溶着することにより、吐出製品11aが得られる。その状態では、
図1のように内部容器14が加圧剤Pによって圧縮され、胴部14bが収縮する。しかし内部容器14の肩部14cは、前述のように剛性が高いため変形せず、外部容器13の肩部13cと内部容器14の肩部14cの間にはほとんど隙間が生じない。
【0036】
原液Cとしては、洗顔剤、洗浄剤、入浴剤、保湿剤、クレンジング剤、日焼け止め、化粧水、シェービング剤、脱毛剤、制汗剤、殺菌消毒剤、害虫忌避剤などの皮膚用品、トリートメント剤、スタイリング剤、染毛剤などの頭髪用品などの人体用品、ホイップクリームなどの食品、消臭剤、芳香剤、殺虫剤、防虫剤、花粉除去剤、殺菌消毒剤などの家庭用品などである。但し、これらの用途に限られるわけではない。
【0037】
加圧剤Pとしては窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスなどの圧縮ガスが好ましい。加圧剤により二重加圧容器内の圧力を0.2~1.0MPa(25℃、ゲージ圧)、とくに0.3~0.8MPa(25℃、ゲージ圧)にするのが好ましい。また、外部容器13の容量は30~500mlであることが好ましい。内部容器(原液収容室Sc)14の容量は20~300ml程度が好ましい。加圧剤収容室Spの容量は10~200ml程度が好ましい。
【0038】
上記のように、二重加圧容器11は部品数が少なく、バルブのような動作する部位がないので、安価に製造することができる。そして消費者が持ち運んだり、流通業者が配送したりするときに安全である。また、万一、外部容器13にひびが入っても、加圧剤Pが漏れるだけで原液Cは漏れない。そのため一層安全である。
【0039】
前述のように、吐出製品11aは
図4に示す吐出部材12と組み合わせて使用される。吐出部材12は、外部容器13の首部13dの雄ねじ13eと螺合するキャップ(装着部)20と、そのキャップ20によって保持されるバルブホルダ18と、そのバルブホルダ18によって保持されるバルブ(弁)21と、バルブ21のステム22に装着される操作ボタン(操作部)23とからなる。キャップ20は有底筒状で、内周面に雌ねじが形成されている。バルブホルダ18は、バルブ保持部18aと、バルブ保持部18aの上端から内側に延びる環状のラバー押さえ18bと、外側に拡がるフランジ18cとを備えている。押し下げ操作式の操作ボタン23に代えてトリガー操作式のレバー付き操作ボタンを採用することもできる。
【0040】
バルブ21は、有底筒状のハウジング24と、その内部に上下移動自在に収容されるステム22と、そのステム22を上向きに付勢するバネ25と、ハウジング24の上端とバルブ保持部18aの上底面の間に介在されるステムラバー26とからなる公知の基本構造を有する。さらにハウジング24の下部は下向きに細くなる略円錐状にされ、その下端は略円柱状の開封部27とされている。さらにハウジング24の下部外周にOリングなどのシール部材28が装着されている。シール部材28は、開封時および開封後に蓋体15の嵌合筒部15c1の内周面とハウジング24の間をシールするものである。
【0041】
この吐出部材12では、ハウジング24の下端が略円錐状の突起からなる開封部27とされている。開封部27には、開封後にハウジング24内と内部容器14内とを連通する連通孔24aおよび縦溝24bが形成されている。連通孔24aおよび縦溝24bは1カ所でよいが、複数設けることもできる。
【0042】
前記吐出製品11aと吐出部材12は、流通、販売時に、キャップ20を外部容器13に取り付けて、緩く螺合して仮に結合しておく。それにより、購入した消費者は容易に開封操作をすることができる。この状態では、シール部材28は嵌合筒部15c1の内面に当接していない。吐出製品11aと吐出部材12を組み立てずにセットとして販売、流通することもある。
【0043】
使用者が吐出装置10を購入して使用する場合、まずキャップ20をねじ込む。それによりシール部材28が蓋体15とハウジング24の間をシールする。ついでキャップ20をさらにねじ込むと、ハウジング24の開封部27の下端27aが蓋体15の被開封部15dを突き破り、ハウジング24内と内部容器14内である原液収容室Scとを連通する(
図5参照)。
【0044】
被開封部15dが破られたとき、あけられた穴の内周と開封部27の外周の隙間から原液Cが漏れる場合がある。しかし嵌合筒部15c1とハウジング24の間はシール部材28でシールされているので、原液Cは嵌合筒部15c1内に留まり、外部に漏れることがない。また、内圧がハウジング24を押し上げるように作用するが、キャップ20と外部容器13とが螺合しているので、吐出部材12の飛び出しが抑制される。
【0045】
原液収容室Sc内の原液Cは内部容器14を介して加圧剤Pによって加圧されているので、使用者がステム22に取り付けた操作ボタン23を押すと、ステム22が下降してステムラバー26が撓み、ステム孔が開き、内部容器14内の原液Cが開封部27、ハウジング24、ステム22および操作ボタン23を経由して外部に吐出される。押すのをやめるとステム22が上昇し、吐出が停止する。加圧剤Pを充填している加圧剤収容室Spは閉じられ、外部や原液収容室Scと連通していないので、加圧剤Pは外部に漏れない。
【0046】
内部容器14内の原液Cが外部に吐出されて少なくなってくると内部容器14が収縮していく。内部容器14はブロー成形により成形されているため、首部14dの下端から肩部14cは胴部14bよりも肉厚である。また、外部容器13の肩部13cと内部容器14の肩部14cはほぼ密着しており、隙間がほとんどない。さらに肩部14bは外周部が略水平に張り出しており、胴部14bは肩部14bの外周部から屈曲して下方に延びている。これらのことから、原液Cの吐出に伴い胴部14bが大きく収縮しても、胴部14bと肩部14cの境界部14c1は、屈曲状態が環状に連続するため、変形しにくい。
【0047】
そのため、内部容器14が収縮していくときも肩部14cはほとんど変形せず、境界部14c1を起点として、胴部14bの上部、とくに肩部14cの近辺が上向きに押し上げられる。また、胴部14bと底部14aが密着して、胴部14bと底部14aが上向きに押し上げられる。原液をほぼ全量吐出すると、
図5に示すように、内部容器14は胴部14bの壁同士が密着し、扁平になる。最終的には、胴部14bの上部が穿孔突起17cに対してほぼ直角に押圧され、下端17eによって自動的に穿孔される。それにより、バルブ21を通じて加圧剤収容室Sp内の加圧剤Pを外部に放出することができる。
【0048】
この状態では原液Cが出なくなるため、使用者は原液Cを使い切ったことが分かるが、加圧剤Pが放出されることにより、外部容器13の内圧が減少し、張りがなくなる。そして外部容器13を強く握るだけで容易に弾性変形するようになる。そのため、使用者は原液を使い切ったことを一層明瞭に知ることができる。この状態でキャップ20を外部容器13から取り外す。二重加圧容器11は、加圧剤Pとして圧縮ガスを使用しているため、原液Cがなくなると圧力は0.01~0.2MPa(ゲージ圧)程度に低くなるが、穿孔部材17によって外部容器13内の加圧剤Pを安全に放出することができる。その後、使用者は外部容器13を押しつぶして減容し、廃棄することができる。なお、取り外した吐出部材12は新しい二重加圧容器11に装着して再利用する。
【0049】
つぎに
図6Aおよび
図6Bを参照して二重加圧容器の他の実施形態を説明する。
図6Aの二重加圧容器11Aは、蓋体15と穿孔部材17を一体にしたものであり、蓋体15の下面に支持筒部17b1が設けられ、支持筒部17b1の下端から下方に向かって針状ないし棒状の穿孔突起17cが突出している。この実施形態でも穿孔突起17cは蓋体15の中心線からずれている。穿孔突起17cは複数本設けるのが好ましく、この実施形態では
図5Bに示すように等間隔で4本設けている。他の点は
図1の二重加圧容器11と実質的に同一であるので、同一部位に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
支持筒部17b1は、環状に連続しており、剛性が高い。さらに支持筒部17b1の下端内周には、いくらか内側に突出する環状の内周突条17fが形成されている。それにより支持筒部17b1の剛性がさらに高くなる。内周突条17fは省略することもできる。内周突条17fの内径は、封止部15aの底面を形成する金型を抜き取ることができる程度とする。支持筒部17b1を設けずに蓋体15の下面に直接穿孔突起17cを設けることもできる。しかし穿孔突起17cの先端位置が肩部14cの外周部近辺であることもあって、細長い穿孔突起17cでは剛性が低くなりがちである。そのため、支持筒部17b1を設けるのが好ましい。支持筒部17b1の内周面に上下方向に延びる補強リブを設けてもよい。補強リブは放射状に設けるのが好ましく、嵌合筒部15c1の底部の補強リブ15c4と連続させてもよい。
【0051】
上記のように構成される二重加圧容器11Aは、穿孔部材17が蓋体15と一体にされているので、蓋体15を容器本体16(外部容器13と内部容器14)に超音波溶着するとき、振動で脱落する心配がない。原液Cがなくなったときに内部容器14の胴部14bが変形して上昇し、穿孔突起17cによって穿孔される点は、
図5の二重加圧容器11と同様である。
【0052】
図7に示す二重加圧容器11Bは、
図1の二重加圧容器11と同様に、蓋体15と穿孔部材17を別部品としており、さらに蓋体15の下面と穿孔部材17の上面の間の空間に封止部材19を上下移動自在に収容している。蓋体15の下面には、円筒状の取り付け筒部15c2と、その取り付け筒部15c2の上端内面に設けられる環状段部15c5とを備えている。そして穿孔部材17の上筒部17bは
図1の場合よりも短くされ、上筒部17bの上面と環状段部15c5の間に隙間が設けられている。
【0053】
封止部材19は、上筒部17bの上面と環状段部15c5の間に上下動自在に収容される円板状の基部19aと、その基部19aの上に設けられる円板部19bと、その円板部の19bの上面中央から突出する突起19cとからなる。基部19aの外周面と蓋体の取り付け筒部15c2の内周面との間には、原液Cを通す隙間が設けられている。円板部19bは環状段部15c5の内部に上下動自在に収容されており、円板部19bの外周面と環状段部15c5の内面の間にも原液Cを通す隙間が設けられている。突起19cは、吐出部材が取り付けられたときに開封部の下端27aによって押し下げられて封止部材19と蓋体15との間で原液が通る隙間を確保する。
【0054】
基部19aの外周部の上面と環状段部15c5の下面の間は、封止部材19が下降しているとき(
図7の状態)は原液を通す隙間が形成され、封止部材19が上昇したときは密接して原液Cを通さない平滑度としている。
【0055】
このように構成される二重加圧容器11Bでは、吐出部材12を取り付けたときは、
図5のように開封部27が被開封部15dを押し下げており、それによって封止部材19も下降状態が維持される。そのため、使用者は操作ボタン23を操作して原液Cを吐出することができる。原液Cを使い切ると、
図5の二重加圧容器11と同様に穿孔突起17cによって穿孔されて加圧剤が外部に排出される点は同じであり、キャップ20を外して新たな吐出製品11aと交換すればよい。
【0056】
原液Cが残っている状態で誤ってキャップ20を取り外したり緩めたりした場合は、残っている原液Cが噴出しようとする。しかし封止部材19が上昇し、基部19aの外周部の上面と環状段部15c5の下面の間を閉じるので、原液Cの飛び散りを防止できる。誤ってキャップ20を緩めたり取り外したりしたことに気づいた使用者が再びキャップ20を締めると、バルブ21が嵌合筒部15c1を塞ぐと共に、開封部27が下降して封止部材19を押し下げる。それにより再び使用できる状態に戻る。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々の変形を行うことができる。前記実施形態では、蓋体は内部容器と外部容器の両方に溶着しているが、いずれか一方に固着し、他方とは単にOリングなどで封止(シール)するだけでもよい。また、超音波溶着以外に高周波やレーザーによる熱溶着、接着剤による接着などを採用してもよい。前記実施形態では、内部容器と外部容器を同時にブロー成形して製造するとしているが、成形した外部容器の中で、内部容器をブロー成形してもよい。外部容器はアルミニウムやブリキなどの金属製であってもよい。
【0058】
前記実施形態ではバルブを備えた吐出部材をキャップの回転で吐出製品に取り付けるようにしているが、係合やカシメなどで取り付けるようにしてもよい。さらに吐出製品を交換するようにしているが、本発明の二重加圧容器は、バルブを有する従来の二重エアゾール製品における内部容器の穿孔の構造として採用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 吐出装置
11 二重加圧容器
11a 吐出製品
12 吐出部材
C 原液
P 加圧剤
13 外部容器
13a 底部
13b 胴部
13c 肩部
13c1 境界部
13c2 湾曲して首部に連続する部位
13d 首部
13e 雄ねじ
13f 上端面
13g 環状突起
θ1 肩部の外周部近辺と胴部の上部のなす角度
θ2 肩部の水平面に対する角度
14 内部容器
14a 底部
14b 胴部
14c 肩部
14c1 境界部
14d 首部
14e 上端面
14f フランジ
14g 環状突起
14h 横溝
14i 縦溝
Sc 原液収容室
Sp 加圧剤収容室
15 蓋体
15a 封止部
15b フランジ
15b1 外周部
15b2 切り欠き
15c 底部
15c1 嵌合筒部
15c2 取り付け筒部
15c3 内側の部分
15c4 補強リブ
15d 被開封部
15f 弱め線
15g 受圧部
16 容器本体
17 穿孔部材
17a 基部
17b 上筒部
17c 穿孔突起
17d 通路
17e 下端
18 バルブホルダ
18a バルブ保持部
18b ラバー押さえ
18c フランジ
20 キャップ
21 バルブ
22 ステム
23 操作ボタン
24 ハウジング
24a 連通孔
24b 縦溝
25 バネ
26 ステムラバー
27 開封部
27a 下端
28 シール部材
11A 二重加圧容器
17b1 支持筒部
17f 内周突条
11B 二重加圧容器
15c5 環状段部
19 封止部材
19a 基部
19b 円板部
19c 突起