(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】凍結管および凍結工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/115 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
E02D3/115
(21)【出願番号】P 2020145245
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粂川 政則
(72)【発明者】
【氏名】相馬 啓
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】佐野 夕薫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178529(JP,A)
【文献】特開2019-82049(JP,A)
【文献】特開2004-27683(JP,A)
【文献】特開2006-52604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0063391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロッドから構成されて削孔水を噴射しつつボーリング孔を削孔する削孔ロッドと、
削孔ロッド内に挿入され、中空で且つ先端が閉塞している冷媒供給管を有し、
削孔ロッドの先端近傍には絞り部が形成され、絞り部の内径は冷媒供給管が嵌合する寸法に設定され、冷媒供給管先端近傍の外周面は削孔ロッドの絞り部の内周面に対して摺動可能であり、且つ、冷媒供給管先端近傍の外周面には冷媒供給管先端近傍外周面と絞り部内周面との境界をシールするシール部が形成されており、
冷媒供給管の先端近傍には開口部が形成され、開口部は冷媒供給管先端が削孔ロッドの絞り部に嵌合した際における嵌合部よりも地上側の位置に設けられており、
削孔ロッドに冷媒供給管が挿入されていない場合には、削孔ロッドの全領域に削孔水流路が構成され、
削孔ロッドに冷媒供給管が挿入されている場合には、削孔ロッドの内周面と冷媒供給管の外周面の間の円環状空間であって、前記絞り部よりも地上側の領域により冷媒が地上側に戻る流路が構成されることを特徴とする凍結管。
【請求項2】
前記削孔ロッドの絞り部の地上側には地中側の内径寸法が小さくなるテーパーが形成された部分が設けられ、
冷媒供給管先端近傍の外周面におけるシール部と摺動する領域はテーパーが形成された部分よりも地中側に設けられている請求項1の凍結管。
【請求項3】
削孔時に、複数のロッドから構成された削孔ロッドの中空部を介して削孔水を噴射しつつボーリング孔を削孔する工程と、
凍結時には削孔ロッドを残存し、削孔ロッド内に冷媒供給管を挿入して、冷媒供給管の先端を削孔ロッドの先端近傍に設けられた絞り部に嵌合する工程と、
冷媒供給管の先端が削孔ロッド先端近傍の絞り部に嵌合した後に、冷媒供給管を介して冷媒を供給する工程を備え、
冷媒を供給する工程では、冷媒は冷媒供給管の先端近傍に設けた開口部から削孔ロッド内に流出し、削孔ロッドの内周面と冷媒供給管の外周面の間の円環状空間であって、前記絞り部よりも地上側の領域を流過して地上側に戻ることを特徴とする凍結工法。
【請求項4】
冷媒供給管の先端を削孔ロッドの絞り部に嵌合する工程では、削孔ロッドの絞り部に設けられ且つ地中側の内径寸法が小さくなるテーパーが形成された部分により、冷媒供給管の先端が案内され、
冷媒供給管の先端が削孔ロッドの絞り部に嵌合する際に、冷媒供給管先端近傍の外周面に設けられたシール部が削孔ロッドの絞り部の内周面に対して摺動し、
冷媒供給管の先端が削孔ロッドの絞り部に嵌合した後は、冷媒供給管先端近傍の外周面に設けられたシール部が、冷媒供給管先端近傍の外周面と絞り部の内周面との境界をシールする請求項3の凍結工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を凍結する凍結工法と、それに用いられる凍結管に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結工法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)では、削孔用ロッドを用いて凍結管を建て込むために削孔し、凍結管或いはマイクロチャンネル(断面形状が扁平な長尺の凍結管であって、内部に複数の微小管路が形成されている凍結管)を建て込み、漏気試験(冷媒の漏洩試験)を行って冷媒が漏洩しないことを確認した後に、凍結管に冷媒を供給して、冷媒の冷熱により凍結管周辺の地盤を凍結する。
係る従来技術は、削孔用ロッドを地盤に残存させ、地盤凍結の際は凍結管(外管)として作用する。そして凍結管の地中側端部近傍に弁機構、先端側部材を配置し、先端側部材に冷媒流路を設けて凍結管先端の領域まで凍結できる技術であり、有効である。
しかし、凍結管の地中側端部近傍に、複雑な構造の先端側部材及び弁機構を配置しなければならず、その分だけ凍結管の径寸法を大きくする必要がある。そのため、径寸法の大きな削孔ができる大型のボーリングマシンが必要である。
また、大口径の削孔をすることは、坑内等の限られた空間や、被圧水下では困難である。
それに加えて、孔径が大きいと凍結管の設置コストが高くなる。
【0003】
その他の従来技術として、切替弁を切り替えることにより、単一の内管を、圧力水供給管として使用し、或いは、冷媒供給管として使用する技術が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、かかる従来技術(特許文献3)では、切替弁、微小な貫通孔、通水孔を通過して圧力水を噴射しているので、切替弁、微小な貫通孔、通水孔を通過する度に圧力損失が生じ、圧力水の圧力が低下する。そのため、圧力水を噴射して削孔する工程における削孔効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-178529号公報
【文献】特開2019-82049号公報
【文献】特開2004-27683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ボーリング孔の径寸法を大きくする必要がなく、しかも、削孔の際に高圧水の圧力を低減させることがない凍結管と、それを用いた凍結工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の凍結管(10)は、
複数のロッドから構成されて削孔水(W)を噴射しつつボーリング孔(H)を削孔する削孔ロッド(1)と、
削孔ロッド(1)内に挿入され、中空で且つ先端が閉塞している冷媒供給管(2)を有し、
削孔ロッド(1)の先端近傍には絞り部(1A)が形成され、絞り部(1A)の内径は冷媒供給管(2)が嵌合する寸法に設定され、冷媒供給管(2)先端近傍の外周面は削孔ロッド(1)の絞り部(1A)の内周面に対して摺動可能であり、且つ、冷媒供給管(2)先端近傍の外周面には冷媒供給管(2)先端近傍外周面と絞り部(1A)内周面との境界をシールするシール部(2A)が形成されており、
冷媒供給管(2)の先端近傍には開口部(2B)が形成され、開口部(2B)は冷媒供給管(2)先端が削孔ロッド(1)の絞り部(1A)に嵌合した際における嵌合部よりも地上側の位置に設けられており、
削孔ロッド(1)に冷媒供給管(2)が挿入されていない場合には、削孔ロッド(1)の全領域に削孔水流路が構成され、
削孔ロッド(1)に冷媒供給管(2)が挿入されている場合には、削孔ロッド(1)の内周面と冷媒供給管(2)の外周面の間の円環状空間であって、前記絞り部(1A)よりも地上側の領域により冷媒(R)が地上側に戻る流路が構成されることを特徴としている。
【0007】
本発明の凍結管(10)において、前記削孔ロッド(1)の絞り部(1A)の地上側には地中側の内径寸法が小さくなるテーパー(1B)が形成された部分が設けられ、
冷媒供給管(2)先端近傍の外周面におけるシール部(2A)と摺動する領域はテーパー(1B)が形成された部分よりも地中側に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の凍結工法は、
削孔時に、複数のロッドから構成された削孔ロッド(1)の中空部を介して削孔水(W)を噴射しつつボーリング孔(H)を削孔する工程と、
凍結時には削孔ロッド(1)を残存し、削孔ロッド(1)内に冷媒供給管(2)を挿入して、冷媒供給管(2)の先端を削孔ロッド(1)の先端近傍に設けられた絞り部(1A)に嵌合する工程と、
冷媒供給管(2)の先端が削孔ロッド(1)先端近傍の絞り部(1A)に嵌合した後に、冷媒供給管(2)を介して冷媒(R)を供給する工程を備え、
冷媒(R)を供給する工程では、冷媒(R)は冷媒供給管(2)の先端近傍に設けた開口部(2B)から削孔ロッド(1)内に流出し、削孔ロッド(1)の内周面と冷媒供給管(2)の外周面の間の円環状空間であって、前記絞り部(1A)よりも地上側の領域を流過して地上側に戻ることを特徴としている。
【0009】
本発明の凍結工法において、
冷媒供給管(2)の先端を削孔ロッド(1)の絞り部(1A)に嵌合する工程では、削孔ロッド(1)の絞り部(1A)に設けられ且つ地中側の内径寸法が小さくなるテーパー(1B)が形成された部分により、冷媒供給管(2)の先端が案内され、
冷媒供給管(2)の先端が削孔ロッド(1)の絞り部(1A)に嵌合する際に、冷媒供給管(2)先端近傍の外周面に設けられたシール部(2A)が削孔ロッド(1)の絞り部(1A)の内周面に対して摺動し、
冷媒供給管(2)の先端が削孔ロッド(1)の絞り部(1A)に嵌合した後は、冷媒供給管(2)先端近傍の外周面に設けられたシール部(2A)が、冷媒供給管(2)先端近傍の外周面と絞り部(1A)の内周面との境界をシールすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上述の構成を具備する本発明によれば、削孔に際して用いられる削孔ロッド(1)がそのまま凍結管(10)の外管として用いられる。そのため、削孔後、凍結工程を実行する以前に、削孔ロッド(1)を引き抜く必要がなく、その分の労力、コストを節減して、工期を短縮することができる。
【0011】
また、削孔に際して用いられる削孔ロッド(1)がそのまま凍結管(10)の外管となるため、凍結管(10)の内管が挿入可能な外管の口径と同一のボーリング孔(H)を削孔すれば良く、凍結管(10)の内管として管状部材を用いれば、ボーリング孔(H)の孔径をさらに小径化することが出来る。
本発明では、ボーリング孔(H)の孔径を小径化出来るので、大型のボーリングマシンが不要となり、坑内等の限られた空間や被圧水下の削孔が容易となり、凍結管(10)の設置コストを低減することが出来る。
【0012】
さらに、ボーリング孔(H)の削孔時には内管(2)は外管(1:或いは削孔ロッド)に挿入されていないため、削孔ロッド(1)の中空部には、先端の絞り部(1A)以外に圧力損失が生じる構造が存在しないため、削孔時に用いられる高圧水の圧力が低減することはない。そのため、圧力水(W)を噴射してボーリング孔(H)を削孔する工程において、削孔効率が低下してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】削孔水を噴射してボーリング孔を削孔する工程を示す工程図である。
【
図2】ボーリング孔の削孔後に削孔ロッドを外管として、外管内に冷媒供給用の内管を挿入する工程を示す工程図である。
【
図3】冷媒を供給して周辺地盤を凍結する凍結工程を示す工程図である。
【
図4】
図3の符号Aで示す箇所の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1には地盤Gにボーリング孔Hを削孔する工程が示されており、削孔ロッド1は、所定長さの中空ロッド(定尺ロッド)を複数本接続して構成されている。そして削孔ロッド1は地盤G中に残置されて、後述の凍結工程では凍結管10を構成する。
削孔ロッド1の地中側先端部には削孔用ビット4が設けられている。また、削孔ロッド1の先端近傍(先端部より地上側の部分)には絞り部1Aが設けられている。絞り部1Aは、後述する冷媒供給管2(内管、
図1では図示しない)を保持する機構である。
図1において、符号5は、削孔ロッド1を駆動してボーリング孔Hを削孔する掘削機械を示している。この掘削機械5は、従来公知の物を使用することが出来る。
【0015】
図1で示す削孔工程では、削孔ロッド1の地中側先端より高圧の削孔水Wを噴射しつつ、削孔用ビット4により施工領域の地盤Gを切削してボーリング孔Hを削孔する。
削孔水Wは、地上側の図示しない供給源から供給される。
図1において、削孔ロッド1に供給された削孔水(矢印W1)は矢印W1で示されており、削孔ロッド1の中空部を流過して(矢印W2)、削孔ロッド1の地中側先端部に供給される(矢印W3)。
削孔水Wは高圧で供給され、多大な圧力損失を生じることなく、地盤G中に噴射(矢印W4)される。
【0016】
高圧の削孔水W4は、削孔ロッド1の先端の削孔用ビット4に形成された図示しない噴射口から地盤Gに噴射され、噴射された削孔水W4は、掘削されているボーリング孔Hの内周面と削孔ロッド1の外周面との間の概略円環状の隙間を流れ(矢印W5)、地上側に戻る。
削孔ロッド1の地中側先端近傍には、主に冷媒供給管2(
図2~
図4参照)を保持する絞り部1Aおよびブレ止め部材等が設けられている。
そのため、地上側の供給源から削孔ロッド1に供給された高圧の削孔水Wは、大きな圧力損失を生じることなく、削孔ロッド1先端の(図示しない)噴射口から噴射される。そのため、高効率でボーリング孔Hを削孔することが出来る。
【0017】
ボーリング孔Hを削孔した後、
図2に示す様に、削孔ロッド1を地盤中に残存させた状態で、削孔ロッド1の中空部に、冷媒供給管2を挿入する。
冷媒供給管2としては、例えば、継ぎ目のないコイルドチューブを使用することが出来る。ただし、複数のロッドを繋ぎ合わせて冷媒供給管2を構成することも可能である。
冷媒供給管2は中空で且つ先端(挿入時における地中側先端)が閉塞している。冷媒供給管2については、
図3、
図4を参照して後述する。
削孔ロッド1に冷媒供給管2を挿入すると、冷媒供給管2の地中側先端は削孔ロッド1の地中側先端近傍に設けられた絞り部1Aに嵌合して、当該嵌合した状態に保持される。
削孔ロッド1に冷媒供給管2を挿入した状態については、
図3、
図4を参照して後述する。
【0018】
削孔ロッド1に冷媒供給管2を挿入した後、
図3で示す様に、冷媒供給管2に冷媒Rを供給して凍結管10の周辺地盤Gを凍結する(凍結工程)。
図3において、削孔ロッド1の中空部に挿入された冷媒供給管2の先端近傍は、削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合している。
削孔ロッド1の絞り部1Aを含む凍結管10(削孔ロッド1、冷媒供給管2)の地中側先端近傍(
図3で「符号A」の領域)の詳細を示す
図4と、
図3を参照して、凍結工程を説明する。
削孔ロッド1の絞り部1Aの内径は冷媒供給管2が嵌合出来る様に、冷媒供給管2の外径寸法と概略同寸法に設定されている。そのため、冷媒供給管2先端近傍の外周面は削孔ロッド1の絞り部1Aの内周面に対して摺動可能である。
また、冷媒供給管2先端近傍の外周面にはシール部2A(
図4)が形成されており、冷媒供給管2先端近傍の外周面と削孔ロッド1の絞り部1Aの内周面との境界をシールしている。
シール部2Aのシール材(例えばOリング)の材料としては、冷媒に対して耐性があり、且つ、使用される冷媒を確実にシール出来る性質を有する材料であれば、特に限定は無い。ここで、シリコン系ゴムは安価であるが、冷媒が二酸化炭素である場合には早期に劣化してしまう。しかしながら、一度だけの使用(複数回再利用することを想定しない場合)であれば、二酸化炭素冷媒を用いる凍結工法についてもシリコン系ゴム製のOリングを採用することが出来る。
【0019】
図4において、削孔ロッド1の絞り部1Aの地上側には、地中側に向かうに連れて内径寸法が小さくなるテーパー1Bが形成されている。削孔ロッド1のテーパー1Bは、削孔ロッド1の絞り部1Aに冷媒供給管2を嵌入する際に、円滑に案内する機能を有している。
図4を参照して後述するが、削孔ロッド1には突起面1Pが形成され、削孔ロッド1の中心軸に対して冷媒供給管2の中心軸を整合して、偏芯(ブレ)を防止する様に構成されており、削孔ロッド1の絞り部1Aに冷媒供給管2が嵌入した際に、削孔ロッド1の突起面1Pに対応する箇所に径寸法が大きい拡径部2Cが接する様に構成されている。
【0020】
冷媒供給管2の地中側先端が絞り部1Aにより保持された状態(
図4の状態)では、シール部2Aは、削孔ロッド1のテーパー1Bよりも地中側に位置している。
図4において、冷媒供給管2の先端近傍であって、削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合している部分(すなわちシール部2A)よりも地上側の位置に、開口部2Bが形成されている。明確には図示されていないが、開口部2Bは、冷媒供給管2の円周方向に等間隔に4箇所形成されている。図示の実施形態においては、開口部2Bは、開口面積を大きくするため、円形でなく楕円形として形成されている。
図3、
図4に示す状態(削孔ロッド1に冷媒供給管2が挿入されている状態)において、削孔ロッド1の内周面と冷媒供給管2の外周面の間には円環状空間が形成されている。この円環状空間は、削孔ロッド1の絞り部1Aよりも地上側の領域に形成され、冷媒供給管2により地中側先端部近傍に供給された冷媒Rは、地上側に戻る際に当該円環状空間を流過する。
【0021】
図2で説明した冷媒供給管2を削孔ロッド1に嵌合する工程では、
図3、
図4で示す様に、冷媒供給管2の地中側先端はテーパー部1Bに案内されて、円滑に削孔ロッド1の絞り部1Aに挿入され、嵌合する。
冷媒供給管2の地中側先端が削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合する際に、冷媒供給管2先端近傍の外周面に設けられたシール部2Aのシール材(Oリング)が削孔ロッド1の絞り部1Aの内周面に対して摺動する。
そして、冷媒供給管2が削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合した後は、冷媒供給管2のシール部2Aのシール材が絞り部1Aの内周面によって押圧されることにより、冷媒供給管2先端近傍の外周面との境界がシールされ、当該境界を介して冷媒Rが削孔ロッド1の外部に漏洩することが防止される。
【0022】
図3、
図4で示す工程では、削孔ロッド1に冷媒供給管2を挿入し、絞り部1Aに冷媒供給管2を嵌合させた状態で、地上側の図示しない冷媒供給源から冷媒供給管2に冷媒Rを供給する(R1)。冷媒は、例えば液化二酸化炭素(CO2)であってもブラインであっても良く、特に限定はない。
冷媒Rは、冷媒供給管2の中空部を流過し(R2)、冷媒供給管2の先端近傍の開口部2Bから削孔ロッド1の中空部内に流出する(R3)。
その後、冷媒Rは、削孔ロッド1の内周面と冷媒供給管2の外周面の間の円環状空間(絞り部1Aよりも地上側の領域)を流過して地上側に戻る(R4)。冷媒Rが円環状空間を流過して地上側に戻る際(R4)に、削孔ロッド1を介して周辺領域の地盤Gに冷熱を放出し、周辺の地盤Gを凍結する。
地上側に戻った冷媒Rは、削孔ロッド1に設けられた排出口1Cを介して、図示しない熱交換装置等に送られる(R5)。
【0023】
図3において、符号7は、削孔ロッド1と冷媒供給管2の中心軸を整合させる(芯合わせする)ためのセントラライザーを示している。セントラライザー7は、削孔ロッド1に挿入される冷媒供給管2の中心軸を削孔ロッド1の中心軸に整合させる機能を有する部材である。セントラライザー7により、冷媒供給管2の地中側先端が削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合し易くなる。そして、冷媒供給管2を削孔ロッド1の中心に設置することで、供給された冷媒は冷媒供給管2の中心軸の周辺を均等に流れるので、削孔ロッド1周辺の土壌に偏りなく均一に冷熱が供給されて、冷却効果が偏りなく発揮される。
【0024】
図4では、削孔ロッド1内に冷媒供給管2を挿入した状態における地中側端部近傍を示している。削孔ロッド1の地中側先端部近傍の絞り部1Aには中空部1Rが形成されており、冷媒供給管2の地中側先端は中空部1Rに嵌合している。そして、冷媒供給管2のシール部2Aのシール材(O-リング)は中空部1Rの内周面により押圧されており、以て、冷媒供給管2の外周面と中空部1Rの内周面との境界をシールしている。
絞り部1Aは外径の大きな円筒形と外径の小さな円筒形を接続した形状であり、外径の大きな円筒形には中空部1Rが形成され、外径の小さな円筒形には細径の流路1Sが形成されている。
細径の流路1Sの端部は逆止弁機能(図示なし)を備えており、当該逆止弁は、非削孔時に地盤中から異物が削孔ロッド1の中に侵入するのを防止する機能を有している。
【0025】
冷媒供給管2の地中側先端部も、冷媒供給管2の管材とは別体に構成されており、いわゆる「キャップ状」に形成されている。
図4において、キャップ状の別体部分を符号「20」で表示しており、本明細書では「キャップ状先端部20」と記載する場合がある。
冷媒供給管2のキャップ状先端部20には、開口部2Bの下方に拡径部2C、テーパー2E、及び地中側先端にはテーパー2Dが形成されている。
削孔ロッド1と嵌合した際に、削孔ロッド1の突起面1Pに対応する箇所には拡径部2Cが位置し、テーパー1Bに対応する箇所にはテーパー2Eが位置する。
テーパー2D、2Eは、冷媒供給管2のキャップ状先端部20を、確実に、削孔ロッド1のテーパー1Bの中心の孔内に案内して挿入させるために設けられている。
テーパー2Eは、削孔ロッド1のテーパー1Bに座着して、冷媒供給管2の軸方向位置を保持する機能を有している。
【0026】
削孔ロッド1のテーパー1Bに対応する箇所にはテーパー2Eが形成され、キャップ状先端部20の地中側先端にテーパー2Dが形成されているため、冷媒供給管2を確実に削孔ロッド1のテーパー1Bの中心の孔内に侵入させることが出来る。また、冷媒供給管2を挿入する最終段階において、地上から冷媒供給管2を、絞り部1A内に所定の距離分だけ摺動させながら強く押し込むことになる。その際、突起面1P及び拡径部2Cが形成されていないと、拡径部2Cに相当する領域付近にブレ(削孔ロッド1と冷媒供給管2の偏寄)が生じやすく、その結果、削孔ロッド1の中心軸に対して冷媒供給管2の中心軸は整合せずに偏芯する。係る偏芯によりシール部2Aのシール材(O-リング)は偏芯して押圧されるため、シール材(O-リング)に不要な偏心力が作用し、破損しやすくなる。このブレ(削孔ロッド1と冷媒供給管2の偏寄)を防止するために、削孔ロッド1の突起面1Pに対応して、冷媒供給管2の開口部2B下方に拡径部2Cが接する構造となっている。
図4において、冷媒供給管2における楕円形の開口部2Bは、冷媒供給管2の円周方向に1箇所以上複数箇所(図示の実施形態では4箇所)設けられている。
【0027】
図示の実施形態によれば、ボーリング孔削孔に際して用いられる削孔ロッド1をそのまま地盤凍結工程で凍結管10の外管として用いている。そのため、削孔後、凍結工程の施工以前に、削孔ロッド1を引き抜く必要がなく、その分の労力、コストを節減して、工期を短縮することが出来る。
また、削孔に際して用いられる削孔ロッド1をそのまま凍結管10の外管とするため、凍結管10の内管が挿入可能な外管の口径と同一のボーリング孔Hを削孔すれば良く、さらに冷媒供給管2(内管)として管状部材のコイルドチューブを用いるので、ボーリング孔Hの孔径を小径化することが出来る。
ボーリング孔Hを小径化することが出来るので、図示の実施形態によれば大型のボーリングマシンが不要となり、坑内等の限られた空間や被圧水下の削孔が容易となり、凍結管10の設置コストを低減することが出来る。
【0028】
さらに、ボーリング孔Hの削孔時には冷媒供給管2(内管)は削孔ロッド1(外管)に挿入されていないため、削孔ロッド1の中空部には、地中側先端近傍の絞り部1A以外に圧力損失部分が存在しない。そのため、削孔時に用いられる高圧削孔水Wの圧力が低減することはなく、高圧削孔水Wを噴射してボーリング孔Hを削孔する工程において、削孔効率が低下してしまうことが防止される。
【0029】
加えて、図示の実施形態によれば、削孔ロッド1内に冷媒供給管2を挿入してシール部2A(例えばO-リング)が削孔ロッド1の絞り部1Aに嵌合した後は、冷媒供給管2を介して冷媒Rを供給する工程においては、シール部2Aが削孔ロッド1との境界をシールするため、当該境界から冷媒Rが漏洩することが防止出来る。
また、削孔ロッド1の絞り部1Aの地上側に隣接してテーパー1Bが形成されているため、削孔ロッド1の絞り部1Aに冷媒供給管2を挿入する際、円滑に案内することが出来る。
【0030】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0031】
1・・・削孔ロッド
1A・・・絞り部
1B・・・テーパー
1P・・・突起面
2・・・冷媒供給管(コイルドチューブ)
2A・・・シール部
2B・・・開口部
2C・・・拡径部
10・・・凍結管
20・・・キャップ状先端部
H・・・ボーリング孔
R・・・冷媒
W・・・削孔水