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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】シリカ微粒子分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20240221BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240221BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240221BHJP
   C09K 3/14 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C01B33/141
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
C09K3/14 550D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020215220
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100932
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】俵迫 祐二
(72)【発明者】
【氏名】末吉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】向井 達也
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-072409(JP,A)
【文献】特開昭63-285112(JP,A)
【文献】特開2005-255457(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189610(WO,A1)
【文献】特開2018-168031(JP,A)
【文献】特表2008-523638(JP,A)
【文献】特開2021-134098(JP,A)
【文献】THOMASSEN et al.,Synthesis and Characterization of Stable Monodisperse Silica Nanoparticle Sols for in Vitro Cytotoxicity Testing,Langmuir,米国,2010年,Vol.26, No.1,p.328-335,doi.org/10.1021/la902050k
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/141
B24B 37/00
H01L 21/304
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1)および2)を満たし、炭素含有率が0.5質量%以下であるシリカ微粒子が溶媒に分散してなり、
SiO2濃度を4質量%に調整した後に30ccのチューブに25g充填し、10000Gで1時間遠心分離を行い、前記チューブから上澄み液を10g回収して、SiO2濃度とイオン性シリカ濃度とを測定して、SiO2濃度よりイオン性シリカ濃度を差し引いて求めた、板状異物含有量と相関する指標値が3700ppm以下である、シリカ微粒子分散液。
1)前記シリカ微粒子の窒素吸着法により測定した比表面積(SB)と、前記シリカ微粒子の次式[SC(m2/g)=6000/Dp(nm)・ρ]から求められる比表面積(SC)との比(SB/SC)が0.9~1.2の範囲にあること。
(但し、Dp:シリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真から測定して得られた平均粒子径(nm)、ρ:シリカの密度(g/ml)である。)
2)前記シリカ微粒子に含まれる下記金属成分のSiO2当たりの含有率が、何れも1ppm未満(金属換算)であること。
Cu、Ni、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Na、K、Pb、TiおよびZn
【請求項2】
前記シリカ微粒子分散液が、SiO2濃度40質量%に調整した後に、その300gを300mlのろ過ホルダーにセットした直径25mm、孔径0.5μmの親水性PTFEメンブレンフィルターに供給し、-0.078~-0.082MPaのろ過吸引圧でろ過したときに、その25g以上が通液するものである、請求項1に記載のシリカ微粒子分散液。
【請求項3】
下記工程1~工程4を含む、シリカ微粒子分散液の製造方法。
工程1:固形分濃度が1~6質量%である珪酸アルカリ水溶液に、塩酸、硝酸または硫酸からなるアルカリ金属塩の群から選ばれる少なくとも1つであるアルカリ金属の鉱酸塩を鉱酸濃度として300~10,000ppmとなるように加えて、15~75℃の温度範囲に調整し、希釈ケイ酸アルカリを得る工程。
工程2:工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後15℃~75℃の温度範囲に調整して加熱処理を行い、精製珪酸液(2a)を得る工程。
工程3:工程2で得られた前記精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を電気透析法にて50~200ppmの範囲に低減し、続いて強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換して、分子量が60~1,000の範囲におけるピーク強度比率(%)の合計が99%以上であり、分子量が60~10,000範囲での重量平均分子量が60~2,000である高純度珪酸液(3)を得る工程。
工程4:工程3で得られた前記高純度珪酸液(3)を、アルカリ存在下で粒子成長させて、シリカ微粒子分散液を得る工程。
【請求項4】
工程2が、工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、前記強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後、前記加熱処理を行って珪酸液(1)を得た後に、前記珪酸液(1)を更に強酸性イオン交換樹脂によってイオン交換して前記精製珪酸液(2a)を得る工程である、請求項に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記工程1における前記珪酸アルカリ水溶液に含まれる珪酸アルカリが珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3または4に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記工程1における前記アルカリ金属の鉱酸塩が、ナトリウム、カリウムおよびリチウムからなる群から選択される少なくとも1つと、塩酸、硝酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1つとの化合物であることを特徴とする、請求項3~5のいずれかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリカ微粒子分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、半導体シリコンウェハ等の電子材料の表面を平坦化する目的で、砥粒分散液を含む研磨剤を用いた研磨加工が行われている。該砥粒が金属不純物(例えば、Fe、Cr、Ni、Cu等)を含有する場合、金属不純物は、研磨加工時にシリコンウェハ表面あるいは内部に拡散して、シリコンウェハに表面欠陥を形成する可能性がある。また、金属不純物はシリコンウェハ中で不純物準位を形成し、半導体シリコンウェハが安定した性能を発揮できる期間に悪影響与える可能性がある。したがって、砥粒中の金属不純物の含有量をより低減する必要がある。
ここで、半導体シリコンウェハ等の電子材料の表面を平坦化するための砥粒分散液として、シリカ微粒子分散液が広く使用されており、そのシリカ微粒子中の金属不純物含有量についても低減が求められている。
【0003】
金属不純物の含有量が低減され、高純度化されたシリカ微粒子(シリカ微粒子分散液)の製造方法として、テトラアルコキシシラン類を原料としてシリカ微粒子分散液を合成してなるシリカ微粒子分散液の製造方法と、水硝子(珪酸ナトリウム水溶液)を原料として使用するシリカ微粒子分散液の製造方法が知られている。
【0004】
前者のテトラアルコキシシラン類を原料としてシリカ微粒子分散液を合成してなるシリカ微粒子分散液の製造方法として、例えば、従来、特許文献1に記載の方法が提案されている。
特許文献1には、特定のアルコキシシランを加水分解した後、250℃以上で水熱処理してなる短繊維状シリカの製造方法が記載されている。具体的には、(i)水、有機溶媒および一般式:XnSi(OR)4-nで表されるアルコキシシランの1種または2種以上を含む混合溶液に、触媒を添加してアルコキシシランの加水分解反応を行い、10~30nmの粒径を有するシリカ微粒子を生成させた後、(ii)反応後の混合溶液から、未反応のアルコキシシラン、有機溶媒および触媒を除去して、シリカ微粒子の水分散液を作成し、(iii)該水分散液中のシリカ微粒子の固形分濃度が0.1~5重量%、アンモニア濃度が50~400ppmとなるように調整し、(iv)該水分散液を250℃以上の温度で水熱処理することを特徴とする短繊維状シリカの製造方法が記載されている。
【0005】
ここでテトラアルコキシシラン類は、水硝子に比して、金属不純物の含有量が低い。例えば、高純度のテトラエトキシシラン等は入手し易いので、それを原料として、高純度のシリカ微粒子分散液を得ることができる。また、テトラアルコキシシラン類を原料とした場合、シリカ微粒子分散液の製造工程の工数も比較的少なくて済むなどの利点がある。しかしながら、水硝子に比して、テトラアルコキシシラン類が水硝子に比して高価であること、係る製法で得られるシリカ微粒子の粒子密度が低いこと、研磨砥粒として使用した場合、研磨速度が比較的低速であること等の問題があった。
【0006】
他方、水硝子は、テトラアルコキシシラン類に比して安価であり、水硝子を原料として得られるシリカ微粒子は粒子密度が比較的高く、研磨砥粒として使用した場合、研磨速度が比較的高速であるなどの利点があるものの、水硝子を原料とするシリカ微粒子分散液の製法は、比較的工数が増え、より高純度化を図る場合は、さらにそのための処理が必要となるなどの問題があった。
【0007】
後者の水硝子(珪酸ナトリウム水溶液)を原料として使用するシリカ微粒子分散液の製造方法として、例えば、従来、特許文献2~5に記載の方法が提案されている。
特許文献2には、(a)濃度が0.5~7重量%であるアルカリ珪酸塩の水溶液を、強酸型陽イオン交換樹脂と接触させて脱アルカリすることにより珪酸液を調製し、(b)この珪酸液に酸を加え、pH2.5以下温度0~98℃の条件で珪酸液を酸処理し、(c)得られた酸性珪酸コロイド液中の不純物を分画分子量500~10000の限外濾過膜にて除去してオリゴ珪酸溶液を調製し、(d)このオリゴ珪酸溶液の一部にアンモニア又はアミンを加え、pH7~10で60~98℃の温度に加熱してヒールゾルを調製し、(e)このヒールゾルにオリゴ珪酸溶液の残部を、徐々に滴下してコロイド粒子を生長させることを特徴とする高純度シリカゾルの製造法が記載されている。
【0008】
特許文献3および特許文献4には、特定の工程(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)及び(h)からなる、30~50重量%のSiO2濃度を有し、シリカ以外の多価金属酸化物を実質的に含まない、かつ、コロイダルシリカの平均粒子径が10~30ミリミクロンである安定な水性シリカゾルの製造方法が記載されている。
【0009】
特許文献5には、陽極と陰極との間に、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に並べて構成した電気透析装置を用いて、珪酸アルカリ水溶液を電気透析して珪酸ゾルを製造するに際して、該珪酸アルカリ水溶液に両性イオンを添加することを特徴とする珪酸ゾルの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-61043号公報
【文献】特開昭61-158810号公報
【文献】特開平05-97422号
【文献】特開平04-002606号
【文献】特開2000-044224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように特許文献2には、アルカリ金属珪酸塩より得られた珪酸液に強酸を加えて加熱処理後に分画分子量500~10000の限外濾過膜でpH0.5~1.5の酸性液を補給しながら洗浄した後に純水を補給しながら洗浄を行い、更に必要に応じて陽イオン交換樹脂でイオン交換を行う方法が記載されている。
しかし、このような方法では濾水側へ金属イオンと一緒に珪酸液も排出されるため、収率が悪く実用的でない。また洗浄にも時間がかかり実用的でない。
【0012】
また、特許文献3および特許文献4には、アルカリ金属珪酸塩より得られた珪酸液に強酸を加えて加熱処理後に陽イオン交換、陰イオン交換、その後に望ましくは再度陽イオン交換を行い高純度の珪酸液を得る方法が記載されている。
しかし、強酸の除去をイオン交換樹脂で行う場合はpHの制御が難しく、局所的にpHが高い部分があるとゲルが生じて、得られる珪酸液にゲルが混入するため、最終的にシリカゾルの品質や安定性に悪影響を与える。
【0013】
さらに、特許文献5に記載の製造方法では、水硝子の希釈溶液から電気透析法で珪酸液を得るもので、更に陽イオン交換を行い、精製を行っている。この方法であるとpHがアルカリ性から酸性へ変化する過程でゲル化が起こり研磨材へ適用できるような安定なシリカ微粒子は得られない。また、水硝子を電気透析するため金属イオンの除去の効率が悪く高純度の珪酸液を得る事ができない。
【0014】
上記のように、従来、アルコキシシラン類に比べて安価な珪酸アルカリ(珪酸ナトリウム、珪酸カリウム)を原料として、高純度シリカ微粒子分散液を製造することができなかった。ここで高純度シリカ微粒子とは、Cu、Ni、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Na、K、Pb、TiおよびZnのSiO2当たりの含有率が、何れも5ppm未満(金属換算)であることを意味するものとする。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述のように、特に半導体デバイスの研磨用途に適用する研磨用砥粒分散液には、シリカ微粒子以外のゲル状物(シリカオリゴマーの凝集体)などの不安定な異物を含まないことが必須となる。そのためには、該シリカ微粒子分散液の製造原料となる珪酸液がゲルを含まないことが必要である。
そこで、本発明者は鋭意検討し、金属不純分を加熱下で酸リーチングする工程で、添加する酸の量を300~10,000ppmに設定することで、金属不純分のイオン化を促進し、珪酸のゲル化を防止することができることを見出した。
【0017】
また、陽イオン交換樹脂でイオン化した金属不純物を取り除くが、ここで過剰な酸が存在しているとアルカリ金属等はイオン交換樹脂より脱離し易くなり、その結果、珪酸液中に一部が残存してしまう。そこで、過剰な酸を除去してpHを2前後に調整し、アルカリ金属等がイオン交換樹脂より脱離しない条件で再イオン交換を行う必要があることを、本発明者は見出した。ここで、過剰な酸の存在は、粒子成長に悪影響(例:(1)粒子成長に必要なレベルのアルカリ性を維持できない、(2)過剰な酸のため塩濃度が高くなり、粒子成長の途中で凝集が生じる。)を及ぼす。
【0018】
さらに、従来の酸の除去方法であるUF膜による洗浄法では、酸の除去工程に時間を要し、加えて珪酸液の収率が著しく悪化することを、本発明者は見出した。また、陰イオン交換樹脂を用いた場合、pH制御が困難であり、また陰イオン交換樹脂中で局所的にpHが高い部分が発生し、ゲルが生じ、珪酸液あるいは珪酸液を原料として生成したシリカ微粒子の安定性を低下させることを、本発明者は見出した。
そして、本発明者は、電気透析法を酸の除去に適用した場合、局所的なpH変化を伴うことなく、短時間で酸性イオンを効率良く除去できることを見出した。
【0019】
このように本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の[1]~[9]である。
[1]下記1)および2)を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液。
1)前記シリカ微粒子の窒素吸着法により測定した比表面積(SB)と、前記シリカ微粒子の次式[SC(m2/g)=6000/Dp(nm)・ρ]でから求められる比表面積(SC)との比(SB/SC)が0.9~1.2の範囲にあること。
(但し、Dp:シリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真から測定して得られた平均粒子径(nm)、ρ:シリカの密度(g/ml)である。)
2)前記シリカ微粒子に含まれる下記金属成分のSiO2当たりの含有率が、何れも1ppm未満(金属換算)であること。
Cu、Ni、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Na、K、Pb、TiおよびZn
[2]前記シリカ微粒子分散液が、SiO2濃度40質量%に調整した後に、その300gを300mlのろ過ホルダーにセットした直径25mm、孔径0.5μmの親水性PTFEメンブレンフィルターに供給し、-0.078~-0.082MPaのろ過吸引圧でろ過したときに、その25g以上が通液するものである、上記[1]に記載のシリカ微粒子分散液。
[3]SiO2濃度を4質量%に調整した後に30ccのチューブに25g充填し、10000Gで1時間遠心分離を行い、前記チューブから上澄み液を10g回収して、SiO濃度とイオン性シリカ濃度とを測定して、SiO濃度よりイオン性シリカ濃度を差し引いて求めた、板状異物含有量と相関する指標値が3700ppm以下である、上記[1]または[2]に記載のシリカ微粒子分散液。
[4]下記工程1~工程4を含む、シリカ微粒子分散液の製造方法。
工程1:固形分濃度が1~6質量%である珪酸アルカリ水溶液に、塩酸、硝酸または硫酸からなるアルカリ金属塩の群から選ばれる少なくとも1つであるアルカリ金属の鉱酸塩を鉱酸濃度として300~10,000ppmとなるように加えて、15~75℃の温度範囲に調整し、希釈ケイ酸アルカリを得る工程。
工程2:工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後15℃~75℃の温度範囲に調整して加熱処理を行い、精製珪酸液(2a)を得る工程。
工程3:工程2で得られた前記精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を電気透析法にて50~200ppmの範囲に低減し、続いて強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換して、分子量が60~1,000の範囲におけるピーク強度比率(%)の合計が99%以上であり、分子量が60~10,000範囲での重量平均分子量が60~2,000である高純度珪酸液(3)を得る工程。
工程4:工程3で得られた前記高純度珪酸液(3)を、アルカリ存在下で粒子成長させて、シリカ微粒子分散液を得る工程。
[5]工程2が、工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、前記強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後、前記加熱処理を行って珪酸液(1)を得た後に、前記珪酸液(1)を更に強酸性イオン交換樹脂によってイオン交換して前記精製珪酸液(2a)を得る工程である、上記[4]に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[6]前記工程1における前記珪酸アルカリ水溶液が3号珪酸アルカリの水溶液であることを特徴とする、上記[4]または[5]に記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[7]前記工程1における前記珪酸アルカリ水溶液に含まれる珪酸アルカリが珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、上記[4]~[6]のいずれかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
[8]前記工程1における前記アルカリ金属の鉱酸塩が、ナトリウム、カリウムおよびリチウムからなる群から選択される少なくとも1つと、塩酸、硝酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1つとの化合物であることを特徴とする、上記[4]~[7]のいずれかに記載のシリカ微粒子分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
従来のシリカ微粒子分散液の製造工程に、酸リーチングや電気透析のプロセスを加えることでゲル化を伴わずに高純度の珪酸液が得られて、研磨材へ適用可能な高品質(ゲルを含まず、そのために粒子の安定性が高く凝集し難い)で且つ高純度(金属不純物含有量が極めて低い)のシリカ微粒子が得られる。
また、従来の水硝子法の製造方法がそのまま適用できるため、粒子径、モルフォロジー制御により低コストで高研磨速度で且つ低欠陥の研磨粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】GPC測定に用いた保持時間と分子量の検量線図
図2】実施例1において得られた高純度珪酸液(3)のGPCによる分子量測定結果である。
図3】実施例1のシリカ微粒子分散液についての透過型電子顕微鏡写真である。
図4】比較例1のシリカ微粒子分散液についての透過型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例2のシリカ微粒子分散液についての透過型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例3で得られた高純度珪酸液(3)の透過型電子顕微鏡観察の結果である。
図7】比較例3において得られた高純度珪酸液(3)のGPCによる分子量測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について説明する。
本発明は、下記1)および2)を満たすシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液である。
1)前記シリカ微粒子の窒素吸着法により測定した比表面積(SB)と、前記シリカ微粒子の次式[SC(m2/g)=6000/Dp(nm)・ρ]から求められる比表面積(SC)との比(SB/SC)が0.9~1.2の範囲にあること。
(但し、Dp:シリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真から測定して得られた平均粒子径(nm)、ρ:シリカの密度(g/ml)である。)
2)前記シリカ微粒子に含まれる下記金属成分のSiO2当たりの含有率が、何れも1ppm未満(金属換算)であること。
Cu、Ni、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Na、K、Pb、TiおよびZn
このようなシリカ微粒子分散液を、以下では「本発明の分散液」ともいう。
また、本発明の分散液に含まれるシリカ微粒子を「本発明のシリカ微粒子」ともいう。
【0023】
また、本発明は、下記工程1~4を含む、シリカ微粒子分散液の製造方法である。
工程1:固形分濃度が1~6質量%である珪酸アルカリ水溶液に、塩酸、硝酸または硫酸からなるアルカリ金属塩の群から選ばれる少なくとも1つであるアルカリ金属の鉱酸塩を鉱酸濃度として300~10,000ppmとなるように加えて、15~75℃の温度範囲に調整し、希釈ケイ酸アルカリを得る工程。
工程2:工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後15℃~75℃の温度範囲に調整して加熱処理を行い、精製珪酸液(2a)を得る工程。
工程3:工程2で得られた前記精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を電気透析法にて50~200ppmの範囲に低減し、続いて強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換して、分子量が60~1,000の範囲におけるピーク強度比率(%)の合計が99%以上であり、分子量が60~10,000範囲での重量平均分子量が60~2,000である高純度珪酸液(3)を得る工程。
工程4:工程3で得られた前記高純度珪酸液(3)を、アルカリ存在下で粒子成長させて、シリカ微粒子分散液を得る工程。
このようなシリカ微粒子分散液の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0024】
本発明の分散液は、本発明の製造方法によって得ることが好ましい。
【0025】
<本発明の分散液>
本発明の分散液について説明する。
【0026】
<比表面積(SB)>
本発明の分散液に含まれる本発明のシリカ微粒子の比表面積(SB)は、次に説明する窒素吸着法により測定される比表面積を意味するものとする。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、100℃で40分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積(SB)を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
本発明において比表面積(SB)は、特に断りがない限り、このような方法で測定して得た値を意味するものとする。
【0027】
<比表面積(SC)>
本発明の分散液に含まれる本発明のシリカ微粒子の比表面積(SC)は、シリカ系微粒子を球体と仮定して算出する比表面積であり、SC(m2/g)=6000/Dp(nm)・ρから算出される。
ここでρは、シリカの密度(g/ml)である2.2である。
また、式中のDpは、シリカ微粒子の透過型電子顕微鏡写真から測定して得られた平均粒子径(nm)であり、具体的には、次の方法によって求めるものとする。
初めに、超純水を添加して固形分濃度を0.01%に調整したシリカ微粒子を試料台に一滴たらし、その後、乾燥し、観察対象試料を作成した。次に、透過型電子顕微鏡を用いて観察対象試料(シリカ微粒子の乾燥品)を倍率10万倍~30万倍で写真撮影して得られる写真投影図において、粒子の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とする。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線が粒子の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)とする。そして、長径(DL)と短径(DS)との幾何平均値を求め、これをシリカ微粒子の粒子径とする。
このようにして100個以上のシリカ微粒子について幾何平均粒子径を測定し、それらの個数平均値を算出し、得られた値をシリカ微粒子の平均粒子径(nm)とする。
【0028】
上記のようにして求められる比表面積(SB)と比表面積(SC)との比(SB/SC)が0.9~1.2の範囲にあり、1.0~1.1の範囲にあることが好ましい。
【0029】
本発明のシリカ微粒子に含まれるCu、Ni、Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Na、K、Pb、TiおよびZnの金属成分は、SiO2当たりの含有率が、何れも1ppm未満(金属換算)である。
したがって、例えば半導体デバイスの製造工程において、半導体シリコンウェハ等の電子材料の表面を平坦化する目的で、本発明の分散液を含む研磨剤を用いて研磨加工を行った場合に、シリコンウェハに表面欠陥を形成し難く、また、金属不純物が要因となってシリコンウェハ中で不純物準位を形成して半導体シリコンウェハを不安定にすることも生じ難い。
【0030】
なお、本発明のシリカ微粒子に含まれる上記金属成分の含有率は、次のようにして測定するものとする。また、いずれの含有率もシリカdryベースの値とする。すなわち、次の方法によってSi含有量を測定した後、SiO2含有量を算出し、得られたSiO2に対する濃度として、各々の金属成分の含有率を求める。
・Si:シリカ微粒子分散液に1000℃灼熱減量(1000℃に保持した炉内に十分な時間保持することで水分を蒸発させ、揮発成分を揮発させ、残分の酸化を十分に進行させる処理を意味するものとする)を行い秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求める。
・Na及びK:原子吸光分光分析
・Ag、Al、Ca、Cr、Fe、Mg、Pb、TiおよびZn:ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)
・Cu及びNi:GASS(グラファイト炉原子吸光光度計)
【0031】
本発明のシリカ微粒子は、炭素を実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、本発明のシリカ微粒子における炭素含有率は0.5質量%以下であることが好ましい。この炭素含有率は、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
ここで本発明のシリカ微粒子に含まれる炭素の含有率は、固形分濃度を3質量%に調整した0.3gの本発明のシリカ微粒子を150℃で乾燥させた後、炭素硫黄分析装置の高周波炉で燃焼し、燃焼生成物のCO、CO2を赤外吸収方式によって検出して求めるものとする。
【0032】
本発明の分散液は、その分散溶媒の量を調整することでSiO2濃度を40質量%に調整した後に、その300gを300mlのろ過ホルダーにセットした直径25mm、孔径0.5μmの親水性PTFEメンブレンフィルターに供給し、-0.078~-0.082MPaのろ過吸引圧でろ過したときに、その25g以上が通液するものであることが好ましく、35g以上が通液するものであることがより好ましい。
このような本発明の分散液は、シリカ微粒子以外のゲル状物(シリカオリゴマーの凝集体)などの不安定な異物をほぼ含まないため、半導体デバイスの研磨用途等に適用しやすいからである。
【0033】
本発明の分散液は、珪酸アルカリを原料として調製されたものであることが好ましい。
また、珪酸アルカリは、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
本発明の分散液は、SiO2濃度を4質量%に調整した後に30ccのチューブに25g充填し、10000Gで1時間遠心分離を行い、前記チューブから上澄み液を10g回収して、SiO濃度とイオン性シリカ濃度とを測定して、SiO濃度よりイオン性シリカ濃度を差し引いて求めた指標値が3700ppm以下のものであることが好ましい。
【0035】
ここで、SiO濃度とイオン性シリカ濃度との測定方法について説明する。
初めに、本発明の分散液を超純水にて希釈して4質量%に調整し、30ccのチューブに各25g充填して10000Gで1時間遠心分離を行い、各チューブより上澄み液を10g回収する。そして、回収した上澄み液のSiO濃度をICPにて測定する。
【0036】
次に、分離膜付遠沈管(例えば、Sartorius Biolab製 VIVASPIN VS2001:分離膜分画分子量10000)に上記で得られた上澄み液を入れ、蓋をし、この遠沈管を4500Gにて90分遠心分離を行う。この遠心処理により、溶媒(溶媒に溶解した成分を含む)が、分離膜を通過して遠沈管下部に回収され、シリカゾルから溶媒が分離される。遠沈管下部に回収された溶媒について、イオン性シリカ濃度をモリブデン反応にて定量する。
【0037】
なお、モリブデン反応によるイオン性シリカ濃度の定量方法は以下の通りである。
1)300mlビーカーに水200mlを取りHClでpH=1に合わせる。
2)試料として、前記遠沈管下部に回収された溶媒1gをはかりとり、300mlビーカーに移す。
3)再度pH=1に合わせる。
4)10%モリブデン酸アンモニウム10mlを加えて混合する。
5)250mlメスフラスコに移し、250mlに合わせる。
6)20分放置後、420nm波長にて透過率を測定する。
7)透過率を吸光度に換算し、検量線よりイオン性シリカ濃度を求める。計算式は以下の通りである。
イオン性シリカの濃度(ppm)=SiO2(mg)×1000/試料(g)×1000000
8)同様に空試験(試料液に10%モリブデン酸アンモニウムを添加していないもの)を
行い、補正する。
【0038】
次に、ICPによって測定された上澄み液中のSiO濃度から、モリブデン反応にて定量したイオン性シリカ濃度を差し引いたものを板状異物の濃度(ppm)とする。
【0039】
このようにして測定したSiO濃度とイオン性シリカ濃度との差(SiO濃度(ppm)-イオン性シリカ濃度(ppm))の値が、板状異物含有量と相関が高いことを、本発明者は見出した。
本発明者が測定して求めたSiO濃度、イオン性シリカ濃度および板状異物の含有量との関係を表すデータを表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す「電子顕微鏡によって測定された板状異物の個数」は、次のようにして測定した。
初めに、本発明の分散液を超純水にて希釈して4質量%に調整し、30ccのチューブに各25g充填して7500Gで5時間遠心分離を行い、各チューブより上澄み液を10g回収した。
次に、MERCK社製アイソポアフィルター(フィルター孔径2.0μm、25mmφと同フィルター孔径0.8μm、13mmφ)をスウィネクスフィルターホルダーに各々装着して、上澄み液5gをシリンジで5mlとり、まず2μmフィルターでろ過し、ろ過通過液を0.8μmフィルターでろ過した後に、超純水10mlでフィルターを洗浄した。
次に、洗浄したフィルターをベンコットンを敷いたシャーレに取り出し、60分乾燥させた。乾燥後、フィルターを1.5mm×3mmにカットしてSEMの試料台に両面テープで固定して蒸着を行った。
そして、SEMにて試料片3mmに対して横方向に13分割して5000倍で観察を行い、板状異物の個数を数えた。
【0042】
このようにして測定した板状異物の個数と、SiO濃度よりイオン性シリカ濃度を差し引いて求めた指標値は、表1に示すように、極めて高い相関があることを本発明者は見出した。
そして、その指標値が3700ppm以下であると、本発明の分散液に含まれる板状異物の含有量も低くなることを、本発明は見出した。
【0043】
本発明の分散液は分散溶媒として、水及び/又は有機溶媒を含む。この分散溶媒として、例えば純水、超純水、イオン交換水のような水を用いることが好ましい。さらに、本発明の分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、pH調整剤及びpH緩衝剤からなる群より選ばれる1種以上を添加することで研磨スラリーとして好適に用いられる。
【0044】
また、本発明の分散液を備える分散溶媒として、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2-ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、3,4-ジヒドロ-2H-ピランなどのエーテル類;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2-ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-オクチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。これらを水と混合して用いてもよい。
【0045】
本発明の分散液に含まれる固形分濃度は0.3~50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0046】
<本発明の製造方法>
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、下記の工程1から工程4を含むことを特徴とする。
【0047】
<工程1>
本発明の製造方法が備える工程1では、初めに、固形分濃度が1~6質量%である珪酸アルカリ水溶液を用意する。
ここで珪酸アルカリ水溶液に含まれる珪酸アルカリの種類は特に限定されないものの、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムおよび珪酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、珪酸ナトリウムおよび/または珪酸カリウムであることがより好ましい。
【0048】
また、工程1において珪酸アルカリ水溶液は、3号珪酸アルカリの水溶液であることが好ましい。
【0049】
珪酸アルカリ水溶液の分散溶媒は水であれば特に限定されず、イオン交換水や純水であることが好ましい。
珪酸アルカリ水溶液の固形分濃度は従来公知の方法によって調整することができる。
【0050】
工程1では、珪酸アルカリ水溶液へ塩酸、硝酸または硫酸からなるアルカリ金属塩の群から選ばれる少なくとも1つであるアルカリ金属の鉱酸塩を加える。
このようなアルカリ金属の鉱酸塩として、塩酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩酸カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムが挙がられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0051】
このようなアルカリ金属の鉱酸塩は、温度を調整した珪酸アルカリ水溶液へ加える量は、加えた後の溶液の鉱酸濃度が300~10,000ppmとなる量とする。
なお、鉱酸濃度は塩の濃度から求めるものとする。例えば鉱酸塩が塩酸塩である場合、溶液中のCl濃度を測定して鉱酸濃度を算出して求める。同様にして鉱酸塩が硝酸塩、硫酸塩である場合、NO3濃度、SO4濃度を測定して鉱酸濃度を算出して求める。
以下において鉱酸濃度はこのような方法によって求める値とする。
【0052】
その後、更に温度を15~75℃の温度範囲に調整する。なお、温度範囲については、50~75℃の範囲が更に好ましい。
【0053】
このような工程1によって、希釈ケイ酸アルカリを得る。
【0054】
<工程2>
工程2では、工程1で得られた希釈ケイ酸アルカリを、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後15~75℃で加熱処理を行い、精製珪酸液(2a)を得る。
【0055】
ここで工程2は、工程1で得られた前記希釈ケイ酸アルカリを、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、その後、前記加熱処理を行って珪酸液(1)を得た後に、前記珪酸液(1)を更に強酸性イオン交換樹脂によってイオン交換して前記精製珪酸液(2a)を得る工程であることが好ましい。
【0056】
ここで強酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸基を有するイオン交換を意味するものとする。従来、スルホン酸基を有しない酸性イオン交換樹脂は存在するが、これは本発明の製造方法における強酸性陽イオン交換樹脂には該当しない。強酸性陽イオン交換樹脂は全pH領域で解離するため、全pH領域でイオン交換能があるのに対して、それ以外のイオン交換樹脂、例えば、交換基としてカルボン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂は酸性側では解離しないため、イオン交換能がなく、本発明の製造方法には適さない。
【0057】
イオン交換は従来公知の方法によって行うことができる。例えば、従来公知の強酸性陽イオン交換樹脂を充填したカラムに希釈ケイ酸アルカリや珪酸液(1)を通液させることでイオン交換することができる。
ここで、通液速度は、例えば空間速度が2~18となる通液速度とすることが好ましく、カラムの形状や大きさによるが、空間速度は上記範囲内で、比較的高い通液速度とする事が好ましい。
【0058】
また、予めイオン交換水又は純水中に強酸性陽イオン交換樹脂を加えて攪拌させながら希釈ケイ酸アルカリを加えたり、珪酸液(1)に強酸性陽イオン交換樹脂を加え、撹拌することによってもイオン交換することができる。
【0059】
このような酸処理を行って精製珪酸液(2a)を得る。
<工程3>
本発明の製造方法が備える工程3では、上記の工程2によって得られた精製珪酸液(2a)を電気透析法に供して、精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を50~200ppmの範囲に低減する。
【0060】
ここで従来公知の電気透析法を適用することができる。例えば、精製珪酸液(2a)を従来公知の電気透析装置を用いて電気透析を行う。透析膜として、カチオン膜/アニオン膜を用いることが好ましい。
精製珪酸液(2a)の液温を20℃以下(好ましくは10~15℃程度)に調整した後に、精製珪酸液(2a)を電気透析に供することが好ましい。
精製珪酸液(2a)を電気透析に供すれば、これに含まれる鉱酸濃度は低下する。よって、必要に応じて繰り返し電気透析を行えば、精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を50~200ppmの範囲に低減することができる。ここで精製珪酸液(2a)に含まれる鉱酸濃度を50~100ppmの範囲に低減することが好ましい。
【0061】
また、本願では、工程3において、精製珪酸液(2a)が電気透析により鉱酸濃度が50~200pmの範囲となった段階の珪酸液を「脱酸珪酸液」と呼ぶことがある。「脱酸珪酸液」は、工程3における強酸性陽イオン交換樹脂でのイオン交換を行う前の段階の珪酸液である。
【0062】
コロイダルシリカには安定な分散状態を保つことができるpH領域がある。具体的にはpH9~11付近のアルカリ側において安定する。また、pHが11を超えるとシリカ粒子が溶解し得る。そして、逆に酸性側のpH3以下は準安定領域であり、pH4~6付近は最も不安定でゲル化が進行する。精製珪酸液(2a)が10~15℃である場合、pHは2以下であると考えられるが、これを電気透析に供することでpHが上昇しすぎると不安定領域に達し、ゲル化してしまう。そこで、精製珪酸液(2a)を電気透析に供する際には、鉱酸濃度を50~200ppmの範囲に低減する。鉱酸濃度を低くしすぎてpHが上昇してしまうことを防止するためである。また、精製珪酸液(2a)はモノマーではなくオリゴマーの形態を取っていて、電気二重層を形成して安定化されると考えられる。この場合、適度な量の陰イオンが(例えば塩素イオン)が存在しないと、電気二重層が広がりすぎて、オリゴマー同士の電気二重層が重なり合って、相互作用のため増粘し易くなり、その結果、凝集する可能性があると考えられる。このような観点からも、鉱酸濃度は50~200ppmとすることが好ましい。
【0063】
このようにして精製珪酸液(2a)を電気透析に供し、鉱酸濃度を50~200ppmの範囲に低減した後、強酸性陽イオン交換樹脂によってイオン交換し、高純度珪酸液(3)を得る。
ここで脱酸珪酸液を強酸性陽イオン交換樹脂によって処理してイオン交換する方法は特に限定されず、工程1において珪酸アルカリ水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂によって処理してイオン交換する方法と同様であってよい。
【0064】
<工程4>
本発明の製造方法が備える工程4では、上記の工程3によって得られた高純度珪酸液(3)をアルカリ存在下で粒子成長させて、シリカ微粒子分散液を得る。
【0065】
高純度珪酸液(3)に加えるアルカリとしては、望ましくはアンモニア水溶液が挙げられる。
ここでpHが10~10.7となるようにアルカリを高純度珪酸液(3)へ加えることが好ましい。
【0066】
粒子成長させる方法として、高純度珪酸液(3)の一部にアルカリを加えて、核粒子を形成した後、そこへ別の高純度珪酸液(3)を連続的又は断続的に添加するビルドアップ方法が好ましい。
【実施例
【0067】
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0068】
初めに、実施例及び比較例における各測定方法及び試験方法の詳細について説明する。
各実施例及び比較例について、以下の各測定結果及び試験結果を第3表~第5表に記す。
【0069】
<シリカ微粒子の平均粒子径の測定>
前述の方法によって、各実施例および比較例にて得られたシリカ微粒子の平均粒子径を求め、比表面積(SC)を算出した。シリカ微粒子(シリカ)の密度(ρ)は、前述の通りとした。
なお、透過型電子顕微鏡として、株式会社日立製作所製、超高分解能走査電子顕微鏡・型番S-5500を用いた。
【0070】
<比表面積(SB)の測定>
前述の方法によって、各実施例および比較例にて得られたシリカ微粒子の比表面積(SB)を測定した。
なお、表面積測定装置として、マウンテック社製社製、装置名Macsorb-1220)を用い、BET法を用いて測定した。窒素の吸着量からBET1点法により比表面積(SB)を算出した。
【0071】
<SiO2含有量の測定>
シリカ微粒子分散液におけるSiO2含有量について、シリカ微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い秤量し、得られたものの全てがSiO2であるとして、その含有量を求めた。なお、ここでシリカ微粒子分散液の固形分濃度も求めることができる。
【0072】
<不純物濃度の測定>
各実施例および比較例にて得られたシリカ微粒子分散液のAl、Na、K、Cu、Fe、Ti、Ni、Mg、Ca、Cr、Zn、Ag、Pbの含有率(シリカdryベース)を測定した。
なお、測定装置として、原子吸光分光分析(日立製作所社製、Z-2310)、
ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析、SII製、SPS5520)、GASS(グラファイト炉原子吸光光度計、Varian,Inc製AA-240Z)を用いた。
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。シリカ微粒子分散液の約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3ml、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlとする。この溶液でNa、Kは原子吸光分光分析装置(日立製作所社製、Z-2310)で測定する。次に、100mlにおさめた溶液から分液10mlを20mlメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、Al、Fe、Ti、Mg、Ca、Cr、Zn、Ag、PbについてICPプラズマ発光分析装置(SII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。同様にCu、NiについてGASS(グラファイト炉原子吸光光度計、Varian,Inc製AA-240Z)にて測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、固形分質量に対する各成分の含有率を求めた。
【0073】
<Cl濃度の測定>
各実施例および比較例にて得られた高純度珪酸液(3)のCl含有率(シリカdryベース)を測定した。
具体的には、初めに、シリカ微粒子分散液からなる試料20g(固形分20質量%に調整したもの)にアセトンを加え100mlに調整し、この溶液に、酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で電位差滴定法(京都電子製:電位差滴定装置AT-610)にて分析を行う。
別途ブランク測定として、アセトン100mlに酢酸5ml、0.001モル塩化ナトリウム溶液4mlを加えて0.002モル硝酸銀溶液で滴定を行った場合の滴定量を求めておき、試料を用いた場合の滴定量から差し引き、試料の滴定量とした。そして、前述の方法で求めた固形分の質量に基づいて、固形分質量に対するClの含有率を求めた。
【0074】
<濁度測定>
濁度の測定方法について説明する。
試料を蒸留水で希釈して、SiO2濃度を3.0質量%に調整した。次に10mmの石英セルに移し、分光光度計で波長500nmの吸光度を測定した。
そして、得られた吸光度によって、その試料の濁度を評価した。
【0075】
<ろ過性評価>
濾過性の評価方法について説明する。
[1]シリカ微粒子分散液の評価
300mlのろ過ホルダーにフィルター(ADVANTEC製、親水性PTFEタイプメンブレンフィルターH050A025A)をセットして減圧容器にはめ込んだ。
そして、真空ポンプを起動させて圧力が-0.078~-0.082MPaになるように圧力調整弁で調整した後、SiO2濃度を40質量%に調整した試料(シリカ微粒子分散液)300gをろ過ホルダーに入れ、減圧を解放して、通液した量を測定した。
[2]高純度珪酸液(3)の評価
300mlのろ過ホルダーにフィルター(ADVANTEC製、親水性PTFEタイプメンブレンフィルターH050A025A)をセットして減圧容器にはめ込んだ。
そして、真空ポンプを起動させて圧力が-0.078~-0.082MPaになるように圧力調整弁で調整した後、SiO2濃度を4.6質量%に調整した試料(珪酸液)300gをろ過ホルダーに入れ、減圧を解放して、通液した量を測定した。
【0076】
<研磨評価>
各実施例および比較例にて得られたシリカ微粒子を純水で0.23質量%に希釈して、アンモニアにてpHを調整したものを研磨液とした。
研磨用基板としてシリコンウエハを用い、研磨装置(ナノファクター(株)製、NF300)にセットし、研磨パッドとしてSUBA600を用いて、基板加重15kPa、テーブル回転速度30rpm、スピンドル速度30rpmで、上記研磨液を250ml/分の速度で供給しながらシリコンウエハの研磨を1分間行った。その後、純水にて洗浄し風乾した。その後、研磨用基板の重量減を測定し研磨速度を算出した。
【0077】
<板状異物評価法1:電子顕微鏡による個数測定>
シリカゾルを超純水にて希釈して4質量%、100gに調整し、30ccのチューブに各25g充填して7500Gで5時間遠心分離を行い、各チューブより上澄み液を10g回収した。
次に、孔径2.0μm、25mmφのフィルターと、孔径0.8μm、13mmφのフィルター(いずれもMERCK社製、アイソポアフィルター)を用意し、スウィネクスフィルターホルダーに各々装着して、上澄み液5gをシリンジで5mlとり、まず2.0μmフィルターでろ過し、ろ過通過液を0.8μmフィルターでろ過した後に、超純水10mlでフィルターを洗浄した。
次に、洗浄したフィルターをベンコットンを敷いたシャーレに取り出し、60分乾燥させた。乾燥後、フィルターを1.5mm×3mmにカットしてSEMの試料台に両面テープで固定して蒸着を行った。
そして、SEMにて試料片3mmに対して横方向に13分割して5000倍で観察を行い、板状異物の個数を数えた。
【0078】
<板状異物評価法2:シリカ濃度測定による定量法>
前述の方法によって、SiO濃度とイオン性シリカ濃度とを測定して、SiO濃度よりイオン性シリカ濃度を差し引いて、板状異物含有量の指標値求めた。
なお、分離膜付遠沈管として、Sartorius Biolab製 VIVASPIN VS2001(分離膜分画分子量10000)を用いた。
【0079】
<重量平均分子量とピーク強度比率の測定>
重量平均分子量を、以下のGPC測定法にて測定した。
測定カラム:東ソー製α-2500
溶離液:超純水
サンプル濃度:0.35質量%
注入量:300μl
測定温度:30℃
1)分子量が8000、1000、400、62であるエチレングリコールまたはポリエチレングリコールを用意し、これを検量線溶液としてカラムに注入して保持時間を測定し、各分子量の保持時間より検量線を求めた。そして、検量線を用いて、保持時間を分子量に換算した。
図1に保持時間と分子量の検量線を示す。
2)各ピークの強度をピーク強度の合計値で割り、それぞれのピークのピーク強度比率(Ni)を求めた。
3)縦軸にピーク強度比率(Ni)を横軸に分子量(Mi)をプロットして、分子量の分布曲線を求めた。
図2に実施例1の分子量の分布曲線を示す。
4)分子量60~10,000の範囲における重量平均分子量:Σ(Mi2・Ni)/ΣMi・Niを求めた。
5)分子量60~1000の範囲でのピーク強度比率の合計値を求めた。
表2に4)、5)の計算例を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
<実施例1>
[工程1]
3号ケイ酸ナトリウムを純水で希釈して、5質量%の希釈品を10kg調整し、NaClを49.4g(Clで3000ppm相当)添加して攪拌し溶解させて、次いで液温を60℃まで加温して、希釈ケイ酸ナトリウムを得た。
【0082】
[工程2]
次に、得られた希釈ケイ酸ナトリウム1700mlの強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学製:SK 1B)を充填したカラムに空間速度=9で通液し、その後、60℃の恒温槽に浸漬して液温が60℃を保持するように1.0時間加熱処理を行い、4.6質量%の珪酸液(1)を9.5kg得た。
次に、珪酸液(1)を、さらに1700mlの強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学製:SK 1B)を充填したカラムに空間速度=3で通液して、4.4%質量の精製珪酸液(2a)を9kg得た。
【0083】
[工程3]
次に、精製珪酸液(2a)を10℃まで冷却した後に、これを電気透析装置の脱塩室に500ml供給して10Vで電気透析を行い、電導度が0.9ms/cmに低下するまで透析を行った。以上の操作を10回実施して、鉱酸濃度が80ppmに調整された4.4質量%の電気透析後の精製珪酸液(2b)を4.7kgを得た。
ここで、使用した電気透析装置は、(株)アストム製、マイクロアシライザーS3を用いた。また、透析膜の構成はカチオン膜/アニオン膜とした。
その後、電気透析後の精製珪酸液(2b)を1700mlの強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学製:SK 1B)を充填したカラムに空間速度=3で通液して、4.3質量%の高純度珪酸液(3)を4.0kg得た。
得られた高純度珪酸液(3)について、前述のGPC測定法による分子量測定を行った。結果を第3表~第5表に示す。また、測定された分子量分布を図2に示す。
【0084】
[工程4]
リービッヒ冷却管を付けた10Lステンレス製容器に、純水272gと高純度珪酸液(3)79gと入れて攪拌混合した。次いで15質量%のアンモニア水128gを添加して10分間攪拌混合した。次いで83℃まで昇温して30分間加熱熟成した。次いで高純度珪酸液(3)を添加速度2.5g/分で合計で2203g添加した。この時に0.3質量%のアンモニア水を添加速度1.2g/分で合計で1113gを同時に添加した。
高純度珪酸液(3)と0.3質量%のアンモニアの添加が終了した後に液温83℃を保持したまま60分間加熱熟成した。その後に液温を40℃以下まで冷却してシリカ微粒子分散液を得た。その後、さらに限外濾過膜(旭化成製SIP1013)にて11質量%まで濃縮し、加えて、ロータリーエバポレータにて30.5質量%まで濃縮したシリカ微粒子分散液を得た。
【0085】
このようにして得られたシリカ微粒子分散液について、透過型電子顕微鏡観察、BET法比表面積測定、濁度測定、濾過量測定、研磨試験を実施した。結果を第3表~第5表に示す。また、透過型電子顕微鏡観察の結果を図3に示す。
【0086】
<実施例2>
実施例1では工程2において珪酸液(1)を得た後、強酸性陽イオン交換樹脂による処理に供し、精製珪酸液(2a)について工程3にて電気透析に供したが、実施例2では工程2において珪酸液(1)について強酸性陽イオン交換樹脂による処理に供さず、工程3にて電気透析に供した。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0087】
<実施例3>
実施例1では、希釈した3号ケイ酸ナトリウムにNaClを49.4g(Clで3000ppm相当)添加したが、実施例3ではNaClを10.7g(Cl 650ppm相当)添加した。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0088】
<実施例4>
実施例1では、希釈した3号ケイ酸ナトリウムにNaClを49.4g(Clで3000ppm相当)添加したが、実施例4ではNaClを164.7g(Clで10,000ppm相当)添加した。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0089】
<比較例1>
(敷水液の調整)
純水692gとメタノール462gを混合して敷水液を調整した。
(添加液Aの調整)
メタノール4885gとTEOS(テトラエトキシシラン)2571gを混合して添加液Aを調整した。
(添加液Bの調整)
純水7625gと29質量%のアンモニア水64.5gを混合して添加液Bを調整した。
【0090】
次に、リービッヒ冷却管を付けた20Lのステンレス容器に敷水液1154gを入れて200rpmで攪拌を開始して、65℃まで昇温した。
次いで上記の敷水液に対し、添加液Aと添加液Bを同時に添加開始した。
ここで、添加液Aは添加速度3.4g/分で合計7456g添加を行った。
また、添加液Bは添加速度3.5g/分で合計7690g添加を行った。
添加終了後に液温65℃で3時間熟成を行った。
【0091】
次に限外濾過膜にて6.7Lまで濃縮した。次いでロータリーエバポレータにてシリカ濃度15質量%まで濃縮してシリカ微粒子を得た。そして、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
また、透過型電子顕微鏡観察を図4に示す。
【0092】
<比較例2>
(種粒子の調製)
純水962gと25質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)4.3gを混合して敷水液を調整した。
リービッヒ冷却管を付けた5Lのステンレス容器に敷水液の全量を入れて200rpmで攪拌を開始して、80℃まで昇温した。
次いで上記の敷水液に対し、TMOS(テトラメトキシシラン)491gを4時間かけて添加した。
添加終了後に液温80℃で3時間熟成を行った。
次いで10Lのロータリーエバポレータに上記熟成品を入れて、同量の純水を添加して生成したメタノールを純水と溶媒置換した。最終的にシリカ濃度15質量%まで濃縮して種粒子となるシリカ微粒子を得た。透過型電子顕微鏡観察により、粒子径は19nmであった。
【0093】
(粒子調製)
上記で得た種粒子430gに純水4950gを加えてシード液を調製した。
リービッヒ冷却管を付けた10Lのステンレス容器にシード液の全量を入れて200rpmで攪拌を開始して、80℃まで昇温した。
次いで80℃を保持しながらTMOS514gと0.5質量%のTMAH222gを4時間かけて同時添加した。
添加終了後に液温80℃で3時間熟成を行った。
次いで10Lのロータリーエバポレータに上記熟成品を入れて、同量の純水を添加して生成したメタノールを純水と溶媒置換した。最終的にシリカ濃度15質量%まで濃縮してシリカ微粒子を得た。
そして、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
また、透過型電子顕微鏡観察を図5に示す。
【0094】
<比較例3>
実施例1では、希釈した3号ケイ酸ナトリウムを液温60℃に加熱した後にNaClを49.4g(Clで3000ppm相当)添加したが、比較例3では希釈した3号ケイ酸ナトリウムを液温10℃に加熱した後にNaClを1.3g(Cl 80ppm相当)添加した。
また、実施例1で行われた工程2および工程3について、比較例3では行わなかった。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
さらに板状異物の電子顕微鏡観察の結果を図6に示す。
【0095】
また、比較例3において得られた高純度珪酸液(3)について、GPCによる分子量測定を行った。結果を第3表~第5表に示す。
また、測定された分子量分布を図7に示す。
【0096】
<比較例4>
実施例1では、工程3にて電気透析による処理を行ったが、比較例4では代わりに陰イオン交換樹脂を用いた処理を行った。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0097】
<比較例5>
実施例1では、3号ケイ酸ナトリウムを純水で希釈して、5質量%の希釈品を10kg調整して液温60℃まで加熱したが、比較例5では液温10℃とした。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0098】
<比較例6>
実施例1では、工程3にて電気透析による処理を行ったが、比較例6ではこの電気透析による処理を行わなかった。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
なお、過剰な塩酸の存在のため、粒子成長工程は実施できなかった。
【0099】
<比較例7>
実施例1では、希釈した3号ケイ酸ナトリウムにNaClを49.4g(Clで3000ppm相当)添加したが、比較例7では希釈した3号ケイ酸ナトリウムにNaClを1.3g(Cl 80ppm相当)添加した。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
なお、高純度珪酸液(3)がゲル化したため、一部の測定が不可であった。
【0100】
<比較例8>
実施例1では、3号ケイ酸ナトリウムを純水で希釈して、5質量%の希釈品を10kg調整して液温60℃まで加熱したが、比較例8では液温85℃まで加熱した。
そして、これら以外については実施例1と同様の処理を施して、得られたシリカ微粒子分散液について実施例1と同様の測定等を行った。結果を第3表~第5表に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の分散液に含まれるセリア系微粒子は不純物を含まないので、本発明の分散液を含む研磨用砥粒分散液は、半導体基板、配線基板などの半導体デバイスの表面の研磨に好ましく用いることができる。具体的には、シリカ膜が形成された半導体基板の平坦化用として好ましく用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7