(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】結腸直腸癌の治療のための細菌及び細胞組成物並びにそれを有する患者の予後を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20240221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240221BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240221BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240221BHJP
G01N 33/50 20060101ALN20240221BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/282
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P37/04
G01N33/50 P ZNA
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2020524013
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2018079878
(87)【国際公開番号】W WO2019086540
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-12
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508061930
【氏名又は名称】アンスティテュ ギュスタブ ルシ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ロランス ジトボーゲル
(72)【発明者】
【氏名】マリア ポーラ ロベルティ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203217(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/089794(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/142605(WO,A1)
【文献】特表2016-539119(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106611094(CN,A)
【文献】Journal of Cancer,2017年09月20日,8(17) ,pp.3378-3395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
A61K 36/00-36/9068
A61K 38/00-38/58
A61K 39/00-39/44
A61L 15/00-33/18
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-99/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリシペロトリクス・トンシラルム(Erysipelothrix tonsillarum
)、エシリペラトクロストリジウム・ラモサム(Erysipelatoclostridium ramosum
)、及びバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis
)の1つ以上である生細菌
を含む結腸直腸癌(CRC)の治療への使用のための組成物であって、生きた細菌を回腸に送達出来る方法で投与され、オキサリプラチンベースの治療又は術前補助オキサリプラチンベースの治療を受ける患者に投与される、組成物。
【請求項2】
プレボテラ・コプリ(Prevotella copri
)、フェカリバクテリウム・プラウズニトジイ(Faecalibacterium prauznitzii
)、アリスチペス・オンデルドンキイ(Alistipes onderdonkii
)及びそれらの混合物から成る群から選択された細菌をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オキサリプラチンベースの治療と組み合せて、免疫治療法
を受ける患者に投与される、請求項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記免疫治療法がPD-1/PDL1遮断又は抗-Lag3 Abを用いた治療法である、請求項3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸癌の予後及び治療に関する。特に、本発明は、アポトーシスに屈した回腸腸細胞により誘発される抗原免疫応答における腸内微生物相の役割に関し、そして結腸直腸癌(CRC)を治療するための免疫原性組成物、並びにCRC進行を予測するためのシグネチャを提供する。
【背景技術】
【0002】
腸粘膜は、腸上皮細胞(IEC)、局所免疫及び微生物生態系の間の動物インターフェースである(1)。持続的な腸内細胞症は、明白な発癌につながる結腸直腸の炎症性病変の悪化の危険因子であり得る(2,3)。結腸直腸癌(CRC)の発生の主要段階にわたる微生物群集の分類学的足跡の変動は、発癌における腸生態系の異なる群集の役割を示している(4-6)。CRCは、食事、環境及び微生物暴露、及び宿主免疫性により影響された体細胞分子変化から生じる多因子工程の結果である(7)。腫瘍床内の腫瘍浸潤性Tリンパ球(TIL)の豊富さ、機能的能力及び地理的分布が、CRCの予後を決定する(8)。従って、エフェクター及びメモリーTh1/Tc1 Tリンパ球の活性化をもたらす自発的又は化学療法誘発性適応免疫応答が腫瘍の進行を抑制する(9-11)。CXCL13及びIL-21は、生存率と相関するT濾胞ヘルパー(TFH)/B細胞軸のための重要な要素である(12)。オキサリプラチン(OXA)は、CRCのために定期的に使用され、そして免疫原性細胞死(ICD)を誘発し、損傷関連分子パターン(DAMP)(例えば、カルレテイキュリン、HMGB1、ATP、アネキシンA1及びCXCL10を放出し(13-16)、従って、適応性免疫応答を誘発する。CRCにおけるTILの蓄積をもたらす腫瘍、宿主又は環境的手がかりはまだ解明されていない。以前の研究は、リンパ球浸潤がマイクロサテライト不安定性(MSI)に関連し、フレームシフト変異により生成される切断されたペプチドの生成をもたらすことを示している(17-20)。それらのネオ抗原は、免疫チェックポイント阻害剤と応答して、MSIhighCRCの患者の素因であり得る(21)。しかしながら、MSI陰性CRC患者の大多数の相対的免疫原性を説明するメカニズムは、オープンな難問のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、腸を減菌する広範囲の抗生物質が、結腸癌マウスモデルに対するOXAの効力を低め、抗菌ペプチドの糞便への放出を妨げることを観察し、このことは、OXAが同時に、腸及び腫瘍の両区画に影響を及ぼすことを示唆する。従って、彼らは、腸の微生物組成がCRCの治療におけるOXAの有効性に影響を及ぼすかどうかを決定した。
【0004】
彼らは、回腸の微生物相が死にかけている腸上皮細胞の寛容原性活性と免疫原性活性との間のバランスを決定することを見出した。結腸癌から保護する抗癌免疫応答は、Erysipelotrichaceae 及び Rikenellaceae科の回腸での存在に関連している。彼らはまた、低められた回腸免疫緊張が、Erysipelotrichaceae科の高レベル、腸間膜及び腫瘍リンパ節におけるTFH活性化、及び近位結腸癌患者における延長された無増悪生存と相関していることを示した。それらの発現は、腸内細菌相、局所免疫応答、及び結腸癌治療及び予後の間の新規関連性を明らかにし、そして本発明の基礎を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の側面によれば、本発明は、ソロバクテリウム(Solobacterium)属以外のエリシペロトリクス(Erysilotrichaceae)科の細菌、Rikenellaceae科の細菌、Negativicutes網(特に、の細菌、Selenomonadales及びAcidaminococales目)の細菌、Lactobacillales目の細菌、Bacteroides fragilis種の細菌、及びそれらの混合物から成る群から選択された、生細菌の結腸直腸癌(CRC)の治療への使用のための組成物に関する。それらの「免疫原性」細菌/共生菌は、免疫原性化学療法及び/又は免疫チェックポイント遮断薬と組合して、CRCの治療において経口アジュバントとして投与され得る。
【0006】
別の側面によれば、本発明は、
(i)上記のような「免疫原性共生菌」(すなわち、いくつかのErysipelotrichaceae、Rikenellaceae、Negativicutes、Lacotacillales、Bacteroides fragilis)を含む組成物と共に回腸エンテロイドをインキュベートする工程、及び(ii)前記回腸エンテロイドと、細胞死誘導剤とをインキュベートする工程を含む、CRCの治療のために有用な免疫原性エンテロイドを得るための方法に関する。
【0007】
CRCを有するか、又はCRCを発症する危険性を有する患者を治療するための抗癌ワクチンもまた、本発明の一部であり;そのようなワクチンは上記方法により得られる免疫原性エンテロイドを含む。
【0008】
本発明はまた、上記方法により得られた自己又は同種免疫原性エンテロイドにより充填された樹状細胞、又は免疫原性共生菌に暴露された自己又は同種一次腸上皮細胞と共に自己Tヘルパー細胞をインキュベートする、患者におけるCRCの治療のために有用なT濾胞ヘルパー細胞及び/又はTh1細胞を得るための方法にも関する。
【0009】
この方法により得られたT濾胞ヘルパー/ Th1細胞もまた、本発明の一部であり、患者における前記T濾胞ヘルパー/ Th1細胞の養子移入によるCRC治療へのそれらの使用も同様である。
【0010】
別の重要な観点によれば、本発明は、
(i)患者の回腸末端粘膜から得られたサンプルにおけるCD3E、AHR、GATA3、TBX21、BCL6、CD4、RORC、FOXP3、FOS、JUN、IL17A、IL27、IL10、IL23A及び IFNGから成る群から選択された1又は2以上の遺伝子についての発現レベルを評価し、そし、そして
(ii)前記患者における発現レベルと、対照の発現レベルとを比較することを含む、CRC患者の予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法に関する。
【0011】
本発明はまた、
(i)患者の回腸粘膜から得られたサンプル、又は少なくとも、患者からの糞便サンプルにおけるErysipelatoclostridium、Rikenellaceae、Bacteroides fragilis、Prevotella copri、Faecalibacterium prausnitzii、Negativicutes、Lactobacillales(特に、Enterococcus hirae)、及びSelenomonadalesから選択された1又は2以上の「免疫原性」細菌の存在についてインビトロで評価し、そして
(ii)Fusobacteriaceae科、Bacteroidaceae(前のBacteroides fragilisとわ異なる)、Tannerellaceae、Prevotellaceae、未分類のYS2、clostridium neonatale、未分類のLachnospiraceae, 未分類のRuminococcaceae、Blautia、Christensenella minuta、Bacteroides caccae、Corynebacterium amycolatum、Streptococcus gallolyticus、Bacillus circulans、Ruminococcus gnavus、未分類のPhascolarctobacterium、Bacteroides uniformis、及びCatabacter hongkongensisから成る群から選択された1又は2以上の「寛容原菌」の存在をインビトロで評価し、ここで(i)に記載される細菌の存在が良好な予後を示し、そして(ii)に記載される細菌の存在が不良な予後を示すことを含む、CRCの患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法にも関する。
【0012】
CRC患者の予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための他の方法もまた、回腸の免疫緊張(切断されたカスパーゼ3腸性腸上皮細胞の数、又は回腸の腸固有層又は回腸の腸固有層及び上皮内リンパ球における免疫細胞の数により決定される)に基づいて、又は患者からの血液サンプルにおけるB.fragilis特異的記憶CD4+Th1応答の分析に基づいて、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1-1】
図1は、回腸の免疫緊張がマウス及び患者における結腸癌の予後と相関することを示す。A.アバター応答者(aR)及びアバター非応答者(aNR)についての代表的な腫瘍成長曲線。時間の経過に伴って腫瘍サイズは、自然な腫瘍の成長(PBS、灰色)又はOXA処理後(黒色)についての平均±SEMとして表される。特定の病原体のない(SPF)対照の代表的な腫瘍増殖もまた示される。B.グラフは、OXA処理の1日当たりの腫瘍サイズの減少率として、OXA及びPBSグループを対比している。aR、aNR及びSPFは、それぞれ赤、青及び灰色のバーで表される。C.殺害時でのPBS及びOXA処理されたアバターにおける回腸及び結腸粘膜における免疫遺伝子転写体のqRT-PCR(21日目)。ANOVA *p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0014】
【
図1-2】D.OXA処理されたアバターグループの腫瘍排出リンパ(tdLN)における殺害時でのフローサイトメトリーにより決定された、回腸免疫遺伝子転写体とTH17及びTFHの割合との間のスピアマン相関。E.qRT-PCRにより定量化されたAHR及びBCL6の相対的発現。1つのドッドは1人の患者を表し、中央値及び四分位範囲が示されている。Mann Whitney p値は、ステージI-IIとIII-IVとの間の有意的な差異を決定することが示されている。F.42のステージIII-IV近位結腸腺癌(PCAC)患者(初期分析からのコホート1及び2)におけるKaplan Meierの進行までの時間(TTP)曲線及びログランクの単変量分析。コホートの中央値を適用すると、最良なカットオフ値を用いてのAHRについての結果が確認された。
【0015】
【
図1-3】G.手術時での回腸及び結腸免疫遺伝子転写(行)に応じたPCC患者(拡大されたコホート n=83、列)の凝集型階層クラスタリングを示すヒートマット及び樹状図。距離は、1-Pearson相関係数及びWard方法による凝集により測定された。臨床変数及び起源の組織は、それぞれ、上部及び側面境界のカラーコードにより示される。
【0016】
【
図1-4】H.回腸及び結腸における遺伝子発現のパターンを、クラスター1とクラスター2の個人間のLog2倍比として示すヒートマップ。Whitneg Uテスト:*p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001。I-J.83のPCC患者(I)又はステージIV転移性PCC患者(J)のみにおけるMantel Cox回帰テストにより分析されたパネルGからのクラスタリングに従って分離された、治療失敗までの時間(進行又は癌関連死)についてのKaplan Meier曲線。
【0017】
【
図2-1】
図2は、結腸癌に対する回腸腸細胞の免疫原性細胞死における腸カスパーゼ3及び7の保護的役割を示す。 A-B.それぞれ、同系移植可能結腸癌、MC38(A)又はCT26(B)から保護するためにOXAに暴露されたか又は暴露されなかった、回腸又は結腸IECを用いてのナイーブC57BL/6J(A)又はBALB/c(B)マウスのワクチン接種。2~3のプールされた実験(右のパネル)の21日目での1つの代表的な実験及び腫瘍サイズを示す腫瘍成長曲線(左のパネル)。C.WT宿主を免疫化するための回腸IECドナーとして、WT同腹子又は遺伝的変異体、Casp3/7デルタIEC(左)又はRipkデルタIEC(左)を用いてのワクチン接種実験。代表的な実験からの腫瘍成長曲線が示されている。D.OXA(又はPBS)のi.p.処理の6時間後、結腸及び回腸粘膜における切断されたカスパーゼ3の陽性免疫組織化学染色の自動定量化。
【0018】
【
図2-2】E-F.WT宿主を免疫化するために中和抗体又は薬理学的阻害剤(F)により処理された回腸IECドナー(E)又はWT回腸IECとしてWT又は遺伝的変異体(パターン認識受容体[PRR]シグナル伝達経路又はDAMPが欠けている)を用いてのワクチン接種実験。プールされたいくつかの独立した実験の21日目での腫瘍サイズが示されている。G.Gasp3/7デルタIECのWT同腹子又は遺伝的変異体におけるOXA i.p. (又はPBS)により処理された腫瘍保有体における殺害時での腸間膜リンパ節(mLN)における生細胞のCD3+CD4+間のTFH細胞のフローサイトメトリー分析。1つの代表的な実験が示されている。ANOVA及びt検定の統計学的分析:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0019】
【
図2-3】H.OXA又はPBSにより処理されたVillin駆動カスパーゼ3/7遺伝子欠損(Casp3/7デルタIEC)又はカスパーゼ3/7フロックス対照同腹子における体表的実験でのMC38の腫瘍増殖動態。特定のソフトウェアによる双方向ANOVA(詳細については、方法を参照のこと)。I.Villin駆動カスパーゼ3/7遺伝子欠損(Casp3/7デルタIEC)又はカスパーゼ3/7フロックス対照同腹子における殺害での腫瘍床における種々のT細胞サブセット(CD3+、CD4+、CD8+、CD4+Foxp3+)のフローサイトメトリーによる決定。2つの実験のうち、1つの代表的な実験が同様の結果を示している。ANOVA及びt-検定統計学的分析:*p<0.05、**p<0.01。
【0020】
【
図2-4】J.術前補助化学療法なしで、又はその後のPCC回腸検体における切断されたカスパーゼ3についての免疫組織化学の代表的顕微鏡写真。スケールバーは50μmである。K.術前補助化学療法により処理された12人の患者と33人の未処理の患者の陰窩を選択するためのアルゴリズムを用いて、切断されたカスパーゼ3細胞の自動定量化の統計学的分析。中央値±6~95%が示されている。Mann Whitney U検定のp値が示されている。L.回腸陰窩切断カスパーゼ3(Kで決定された)の中央値に従って分離された、術前補助化学療法を受けたPPC患者における全生存のKaplan-Meier曲線。
【0021】
【
図3-1】
図3は、結腸癌に対する回腸腸細胞の免疫原性細胞死における回腸微生物相の補助的役割を示す。 A.WT宿主を免疫化するために回腸IECドナーとしてWT SPF又は無菌(GF)マウスを用いてのワクチン接種実験。3つのうち1つの代表的実験(6匹のマウス/グレープ)の平均腫瘍増殖曲線、類似する結果が得られる。B.致死量のMC38細胞に対して免疫化するためにPBS又はOXAに暴露された陰窩幹細胞由来のエンテロイドを用いてのナイーブC57BL/6Jマウスのワクチン接種実験、それぞれ6~10匹のマウスを含む4つのプールされた実験の21日目での腫瘍サイズ。各ドットは1匹のマウスを表す。C.Bにおけるのと同じ実験設定であるが、しかしPCAC患者から採取された回腸粘膜微生物相を追加して、ナイーブ宿主をワクチン接種する。回腸粘膜由来の微生物相のみ(左)及びOXA-IEC+同じ患者からの回腸粘膜由来の微生物相(右)により免疫化された動物における代表的な腫瘍増殖曲線(5匹/グループ)(C)。21日目での免疫化されたマウスと免疫化されていないマウスとの間の腫瘍サイズ減少率を示す10の試験されたサンプルからの結果(D)。
【0022】
【
図3-2】D.Bにおけるのと同じ実験設定であるが、しかしPCAC患者から採取された回腸粘膜微生物相を追加して、ナイーブ宿主をワクチン接種する。回腸粘膜由来の微生物相のみ(左)及びOXA-IEC+同じ患者からの回腸粘膜由来の微生物相(右)により免疫化された動物における代表的な腫瘍増殖曲線(5匹/グループ)(C)。21日目での免疫化されたマウスと免疫化されていないマウスとの間の腫瘍サイズ減少率を示す10の試験されたサンプルからの結果(D)。E.Dにおいて試験された患者からの回腸微生物相の培養分析による、応答者と非応答者との間の強化された細菌種の有意な差異。F.コホート1におけるそれらの免疫スコア(IS)に従ってのPCAC患者からの回腸微生物相におけるOTU1040の相対量。スチューデントt検定、*p<0.05。
【0023】
【
図3-3】G.細菌ファミリーと、回腸における転写因子の発現レベルとの間の有意なスピアマン相関(絶対rho>0.3)のrho値のヒートマップ、及びコホート1におけるErysipelotrichaceaeの相対的表現及びAHRの回腸発現の相関。H.
図3Gに示されるコホート1と同じ設定であるが、コホート2(初期コホート2 n=20)については、細菌ファミリーと、回腸における転写因子の発現レベルとの間の有意なスピアマン相関(絶対tho>0.3)についてのrho値のヒートマップ、及びコホート2におけるAHRの低い回腸発現に関連するErysipelotrichaceaeについての代表的なドットブロット。
【0024】
【
図3-4】I.この研究において「免疫原性回腸アポトーシス」に関連する3つの基準に見いだされる一般的な細菌分類ランクのVenn図(免疫スコア>2、中央値を下回るAHR回腸発現レベル、インビボ免疫特性[R])。J.患者の2つのコホートを用いて評価されるように、この研究の非「免疫原性回腸アポトーシス」に関連する3つの基準に見いだされる一般的な細菌分類ランクのVenn図(ワクチン接種実験におけるIS<2、中央値を超えるAHR回腸発現レベル、インビボでの非免疫化特性[NR])。
【0025】
【
図3-5】K-L.
図1Gに定義されるように、クラスター1とクラスター2のPCC患者に一致する科(K)及び種(L)レベルでの微生物相組成の違いを示すVolcanoプロット。Volcanoプロットは、83人の(拡大されたコホート)PCC患者の回腸粘膜に存在する各細菌ファミリー(A)又は種(B)について計算することで生成される:i)クラスター1とクラスター2における平均相対量(x軸)間の倍率(FR)のlog2:ii)相対量(y軸)に基づいて計算されたMann-Whitney U検定から得られるp値のco-log10。緑色のドットは、p<0.05で有意であるとみなされる(灰色のドット、p>0.05)。M.浸潤マージン(M)又は腫瘍の中心(CT)のCD3+及びCD8+ T細胞により定義される回腸細菌ファミリーとTIL組成との間のスピアマン相関係数を示すヒートマップ。有意な相関(*p<0.05)が示されている。N.切断されたアポトーシスカスパーゼ3(cCasp3)の密度は、クラスター1又はクラスター2におけるそれらの分離に従って、術前補助化学療法により処理されたPCC患者の回腸陰窩の下部で計算される(
図1G)。各クラスターに属する患者のパーセンテージは、cCAsp3が
図2Kに定義されるカットオフ値以上か又は以下である条件で示される。O-P.回腸陰窩におけるcCasp3+密度と、自己回腸における細菌ファミリーとの間のSpearman相関。各ドットは1人のPCC患者を表す。実線及び点線は、それぞれ、回帰線及び95%の信頼区間を示す。
【0026】
【
図3-6】Q.免疫スコアグループ間で異なって存在する回腸種を表すために、効果サイズ測定と組合された線形判別分析(LDA)(1=不良な予後;3=良好な予後)。LefSeplotsは、Python2.7により生成され、そしてLDAスコア≧2を有するすべての種が示されている。R.Mantel Cox回帰分析を用いて分析され、及びCutoff Finder法を用いて最良なカットオフ値で分析された、70人のPCC患者における手術時での回腸粘膜におけるBacteroides fragilisの相対量に従って分離された、治療失敗までの時間(進行又は癌関連死)についてのKaplan Meier曲線。
【0027】
【
図4】
図4は、糞便微生物相のシグネチャが回腸微生物のシグネチャと相関することを示す。 A.クラスター1とクラスター2との間で異なって存在する糞便種を表すために効果サイズ測定と結合された線形判別分析(LDA)。LEfSeplotsがPython2.7により生成され、そしてLDAスコア≧2を有する全での種が示されている。回腸種との共通点は、矢印で示されている。B.糞便細菌ファミリーと、浸潤マージン(IM)又は腫瘍の中心(CT)のCD3+及びCD8+ T細胞により定義されるTIL組成との間のSpearman相関係数を示すヒートマップ。有意な相関(*p<0.05)が示されている。回腸ファミリーとの共通点は矢印で示されている。
【0028】
【
図5-1】
図5は、腸内細菌症の状態でオキサリプラチン抗癌効果を回復するAlistipes sp.及びErysipelotrichaceaeの補償効果を示す。A-C.MC38を注射され、そして枯渇抗CD4+及び抗-CD8+Absの不在(B)又は存在(C)下で、OXA ip.処理の前後1日(A)で10
9cfuの生存Erysipelothrix tonsillarum 又は Solobacterium mooreiの経口強制により処理されたATB治療SPFマウス。21日目での腫瘍サイズ(2つの実験プール)(B)及び腫瘍増殖(1つの代表的な実験の)(C)。D-E.aNRにおいて実行された細菌補償。ANOVA統計学:*p<0.05。F-G.エンテロイドを用いてのナイーブマウスの免疫化(3Aにおけるのと同じ設定)、これにより、OXA処理されたエンテロイドが同時に、生存(又は低温殺菌された)細菌に暴露され、そしてs.c.免疫化の前、ATBにより中和されている。グラフは、腫瘍増殖(1つの実験の)を示す(G)。
【0029】
【
図5-2】H.コホート1における診断時での転移発生に従っての主要な細菌ファミリーのヒートマップ。有意なファミリーはスチューデントt検定のラベル(*)が付けられる。I.転移を伴うか又は伴わないPCAC患者における回腸内容物におけるErysipelotrichaceaeの相対量。*p<0.05スチューデントt検定。
【0030】
【
図6】
図6は、PCAC患者(コホート1)における癌免疫スコアに従っての回腸微生物相を示す。 回腸微生物相のMiSeq 16S rRNA遺伝子分析による、高免疫スコア(IS 2-4)と低免疫スコア(IS 0-1)の腫瘍を有する患者からの回腸粘膜における富化された細菌種の有意な差。カイ二乗検定のp値が示されている。
【0031】
【
図7】
図7は、オキサリプラチン及び抗-PD-1抗体により構成される組み合わせレジメンの抗癌効果を改善するB.fragilis及びErysipelotrichaceaeに属する細菌の免疫原性効果を示す。 A.実験設定:抗-PD-1抗体と組合してのOXA腹腔内治療の1日前及び後、scMC38を注射され、そして10
9cfuの生存細菌の経口強制投与により処理されたSPFマウス(グラフに列挙される:A. onder: Alistipes onderdonkii、B. frag: Bacteroides fragilis、C. ramosum: Erysipelatoclostridium ramosum、D. invisus: Dialister invisus、P. clara: Prevotella clara)。B.経時的な腫瘍サイズの平均±SEMとして表される腫瘍増殖曲線、6匹のマウス/グループ、1つの代表的実験が示される。Anova統計:*p<0.05、**p<0.01。C.実験終了時での腫瘍のないマウスの割合(1つの代表的な実験が示されている)。
【0032】
【
図8】
図8は、免疫原性細菌及び細胞死誘導剤OXALIPLATINUMにより処理されたHIECに暴露された樹状細胞を用いてのCD4ナイーブT細胞のTh1細胞への分化を示す。A-C.単球由来のDCが、PBS又はOXA(A)及びB.fragilis(B)又はP.clara(C)に暴露されたHIEC-6を負荷され、そしてその後、ナイーブCD4+T細胞と共に7日間、共インキュベートされた。インキュベーションの最後で、上清液を、ELISAによりIFN-γの存在について評価した。6人の健康なボランティアのWilcxon対比較、各ドットは1人のドナーを表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
現テキストにおいては、以下の一般的な定義が使用される:
結腸直腸癌:
本明細書において、結腸癌又は腸癌としても知られている結腸直腸癌(CRC)は、結腸又は直腸(大腸の一部)からの任意の種類及び任意の段階の癌を指す。近位結腸癌又は近位結腸腺癌(PCAC)は、その解剖学的位置により定義されるCRCの特定の形である。
【0034】
治療:
本明細書において使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」及び「治療する(treating)」とは、癌の進行の遅延、重症度の低下及び/又は期間を指し;例えば、CRCの場合、1又は2以上の治療薬の投与に起因する、生活の質の改善及び/又は生存性の増加を指す。この用語はまた、本明細書においては、CRCを有さないが、しかしこの病状を発症するリスクがある個体(MSIhigh個体)に投与される予防的治療を指す。
【0035】
抗癌ワクチン:
本明細書において、「抗癌ワクチン(anticancer vaccine)」とは、たぶん、他の治療、例えばオキサリプラチンによる治療に関連して、癌に対する免疫応答を誘発するためにCRCを有する患者(治療ワクチン)、又はCRCを有さないが、しかしこの病理の発症のリスクがある個人(予防ワクチン)のいずれかに投与され得る免疫原性組成物を指す。
【0036】
他の定義が、必要に応じて以下に特定されるであろう。
【0037】
以下の実験部分において記載されるように、本発明者らは、特定の細菌の投与が腸内毒素症を補償し、そして結腸直腸癌の動物モデルにおいて化学療法の抗癌効果を改善できることを実証した。従って第1の側面によれば、本発明は、以下から成る群から選択された生細菌を含む組成物の結腸直腸癌(CRC)の治療への使用に関する:
(i)Solobacterium属のものを除く、Erysipelotrichaceae科の細菌、
(ii)Rikenellaceae科の細菌、
(iii)Negativicutes網の細菌
(iv)Selenomonadales及びLactobacillales目の細菌
(v)Bacteroides fragilis種の細菌。
【0038】
特定の実施形態によれば、本発明は、以下から成る群から選択された細菌を含む組成物の結腸直腸癌、(CRC)の治療への使用に関する:
(i)Solobacterium属のものを除く、Erysipelotrichaceae科の細菌、
(ii)Rikenellaceae科の細菌、及び
それらの混合物.]
【0039】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は、Erysipelatoclostridium、 Erysipelothrix 及び/又は Turicibacter属からの生細菌を含む。
【0040】
別の特定の実施形態によれば、組成物は、Erysipelothrix tonsillarum、Erysipelatoclostridium ramosum、Alistipes onderdonkii、及びそれらの混合物から成る群から選択された生細菌を含む。
【0041】
本発明を実施する場合、組成物はまた、Prevotella copri、Bacteroides (特に Bacteroides fragilis)、Faecalibacterium (特にFaecalibacterium prauznitzii)、及びそれらの混合物から成る群から選択された細菌も含むことができる。組成物に都合良く含まれ得る他の細菌は、Propionibacterium acnes、Eggerthella lenta及びStreptococcus anginosusを含む。組成物に都合良く含まれ得るさらなる他の細菌は、S. dentisani (
図3Qを参照のこと)、Enterococcus hirae 及び Ruminococcus faecis(
図4Aにおけるクラスター1に関連する)を含む。
【0042】
本発明によれば、組成物は好ましくは、抗癌化学療法、例えばオキサリプラチンベースの療法及び/又は免疫療法、例えばPD-1封鎖及び抗-Lag3 Abをまた受ける患者に投与される。好ましい実施形態によれば、患者は、術前補助化学療法及び/又は免疫療法、例えば術前補助キサリプラチンベースの療法及び/又はPD-1封鎖及び/又は抗-Lag3 Abを受ける。他方では、患者は、アジュバントオキサリプラチンベースの治療及び/又はPD-1封鎖及び/又は抗-Lag3 Abを受けることができる。従って、本発明はまた、免疫原性化学療法及び/又は免疫チェックポイント遮断薬、例えば抗-PD1 Ab、抗―PDL1 Ab及び抗-Lag3 Abと組合して、CRCの治療におけるアジュバントとして免疫原性細菌(例えば、上記に列挙されたもの)を投与するためにも関する。
【0043】
下記実験部分に示されるように、本発明者らは、回腸の腸区画に存在する細菌が、結腸直腸癌の進行及び化学療法に対するCRC患者の応答において重要な役割を果たすことを実証した。従って、上記方法を実施する場合、組成物は好ましくは、生細菌の回腸への送達を可能にする手段で処方され、そして/又は投与される。例えば、カプセル封入された凍結乾燥細菌が経口投与され得る。
【0044】
以下の実験部分に示される別の側面によれば、本発明は、下記工程:
(i)上記のような細菌組成物と回腸エンテロイドとをインキュベートする工程、及び、
(ii)前記回腸エンテロイドを、細胞死誘発剤(CDI)と共にインキュベートする工程、
を含む、CRCの治療のために有用な免疫原性エンテロイドを得るための方法に関する。
【0045】
上記方法は、自己又は異種回腸エンテロイドを用いて実施され得る。そのようなエンテロイドは、例えばSatoなど.(Nature 2009)により記載されるように、末端の回腸の新鮮な(最良)又は凍結された回腸生検から出発して、腸幹細胞に由来することができる。この方法に使用され得るCDIの例は、オキサリプラチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、又はFOLFIRI、FOLFOXなどの当業者に周知の任意の他の免疫原性細胞死誘発剤又は組み合わせである。
【0046】
より正確には、上記方法は、オキサリプラチン又は別のICD誘発剤の添加の前1時間、生存共生体(上記組成物に存在する)と共に、自己又は同種回腸エントロイドをまずインキュベートすることにより実施され得;次に、抗生物質が、生菌を殺し、そしてワクチンの皮下又は皮内接種を可能にするために1時間、添加される。
【0047】
本発明によれば、CRCを治療するために有用な免疫原性エンテロイドはまた、以下の工程:
(i)TLR2 / TLR4アゴニスト、IL-1Rアゴニスト、抗CD73抗体及び抗CD39抗体から成る群から選択された少なくとも1つの化合物と共に回腸エンテロイオをインキュベートする工程、及び
(ii)前記回腸エンテロイド又は腸細胞を、細胞死誘発剤(CDI)と共にインキュベートする工程、を含む方法によっても入手され得る。
【0048】
上記方法を実施する場合、当業者は、工程(i)に使用される化合物を選択し、それにより、それらはエンテロイドによるIL-1及び/又はATP放出を高める。
【0049】
本発明はまた、上記方法のいずれかにより得られた免疫原性エンテロイドを含む、CRCを有するか、又はCRCの発症のリスクのある患者を治療するための抗癌ワクチンにも関する。そのような抗癌ワクチンは、好ましくは皮下又は皮内投与のために処方され、そして自己又は同種免疫原性エンテロイドを含むことができる。
【0050】
本発明の抗癌ワクチンの特定の実施形態によれば、ワクチンはDNA修復機構に変異を有するエンテロイドを含む。実際、そのようなエンテロイド(自己由来又は異種由来のいずれかで使用される)は、有利な免疫原性特性を有する。本発明の抗癌ワクチンの特定の実施形態によれば、ワクチンはまた、DNA修復機構に変異を有さないエンテロイドを含む。実際、そのようなエンテロイド(自己由来又は異種由来のいずれかで使用される)は、MSS腫瘍(低い変異負荷を有する)に対して有利な免疫原性特性を有する。
【0051】
先行して、臨床検査が疑わしいRCRの初期徴候を示す場合、及び/又は個人の遺伝的背景又は家族歴が、この個人がマイクロサテライト不安定性(MSI)を有することを示唆する場合、その個人は「CRCの発症のリスクがある」と見なされる。(CRCを有する患者のための)治療的ワクチン接種に加えて、予防的抗癌ワクチン接種は、MSIhigh個人、すなわち遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)症候群(3-5%)、DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAMなど)における変異、家族性大腸腺腫症(APC又はMYH2遺伝子変異)、例えばGardner又はTurcot症候群(1%)、及びhMLH1 MMR遺伝子メチル化を伴う散発性CRCを有する個人に確かに有利に提案され得る。
【0052】
本発明はまた、患者におけるCRCの治療のために有用である、T濾胞ヘルパー細胞及び/又はTh1細胞へのナイーブT細胞のエクスビボ分化の方法にも関する。本発明のこの側面によれば、この方法は、自己又は同種免疫原性エンテロイド、例えば上記方法の1つにより得られたそれらにより充填された樹状細胞、又は自己又は同種一次腸上皮細胞と共に、自己Tヘルパー細胞をインキュベートすることを含む。
【0053】
上記方法により得られたT濾胞ヘルパー細胞及び/又はTh1細胞は、CRCの治療又は予防のために有利に使用され得る。本発明のこの側面によれば、それらのT濾胞ヘルパー細胞及び/又はTh1細胞は、患者に養子移入される。本発明のこの側面は、MSIhigh個人、すなわち遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌(HNPCC)症候群(3-5%)、DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAMなど)における変異、家族性大腸腺腫症(APC又はMYH2遺伝子変異)、例えばGardner又はTurcot症候群(1%)、及びhMLH1 MMR遺伝子メチル化を伴う散発性CRCを有する個人、並びにMSS腫瘍を有する患者(低い突然変異負担の)におけるCRCの治療又は予防のために特に有用である。
【0054】
別のその側面によれば、本発明は、
(i)患者の回腸末端粘膜から得られたサンプルにおけるCD3E、AHR、GATA3、TBX21、BCL6、CD4、RORC、FOXP3、FOS、JUN、IL17A、IL27、IL10、IL23A及び IFNGから成る群から選択された1又は2以上の遺伝子についての発現レベルを評価し、そし、そして
(ii)前記患者における発現レベルと、対照の発現レベルとを比較し、ここでその結果が患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを提供することを含む、CRC患者の予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法(回腸免疫スコアに基づく)に関する。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、CD3E、AHR、GATA3、TBX21、BCL6から成る群から選択された1又は2以上の遺伝子についての発現レベルは、工程(i)において評価される。
【0056】
この方法は、浸潤マージン又は腫瘍コアにおけるCD3、CD8 Tリンパ球による腫瘍浸潤が中間である場合、腫瘍免疫スコアIS2(Galen/Pages)の場合に予後の生成のために特に役立つ。
【0057】
上記方法の実施の場合、当業者は、同じ技術を用いて、列挙された遺伝子の発現レベルを評価することを条件に、以下の実験部分に記載されるカットオフ値を使用することができる。そのような閾値の例(下記表2に示される)は、以下の通りである:
CD3E: 63.77;
TBX21: 0.7149;
GATA3: 40.38
AHR:349.1
RORC: 44.38
IL17A: 0.5202
FOXP3: 0.3871
IL27: 0.352
FOS: 10.54。
【0058】
上記方法においては、対照の発現レベル以上のCD3E、AHR、GATA3、TBX21、RORC、IL17A、FOXP3、IL27 及び/又は FOSの発現レベルは、予後不良(進行までの時間が短い)を示す。
【0059】
他方では、全てのそれらの遺伝子の発現レベルを用いて、全体的な分子シグネチャを生成し、ここで対照の発現レベル以上の全体的な遺伝子発現は、予後不良(進行までの時間が短い)を示す。そのような場合、熟練した生物統計学者は、関連する閾値を決定するために、日常的な分析を実施するであろう。
【0060】
特定の実施形態によれば、上記方法は、術前補助キサリプラチンベースの治療の後に収集されたサンプル中の列挙された遺伝子の少なくとも1つの発現レベルを評価することにより実施される。
【0061】
さらに別の側面によれば、本発明は、
(i)患者の回腸粘膜から得られたサンプルにおけるErysipelotrichaceae(特に、Erysipelatoclostridium、Erysipelothrix及びTuricibacter属の)、Rikenellaceae(特に、Alistipes onderdonkiiの)、Prevotella copri、Bacteroides(特に、Bacteroides fragilis)、Faecalibacterium (特に、Faecalibacterium prausnitzii)、Negativicutes、Selenomonadales及び Lactobacillalesから選択された1又は2以上の細菌の存在について評価し、そして
(ii)患者の回腸粘膜から得られたサンプルにおける未分類のYS2、clostridium neonatale、未分類のLachnospiraceae、未分類のRuminococcaceae、Blautia、Christensenella minuta、Bacteroides caccae、Corynebacterium amycolatum、Streptococcus gallolyticus、Bacillus circulans、Ruminococcus gnavus、未分類のPhascolarctobacterium、Bacteroides uniformis、Catabacter hongkongensis、Fusobacteriaceae、Bacteroides fragilis を除くBacteroidaceae 、Tannerellaceae 及びPrevotellaceaeから成る群から選択された1又は2以上の細菌の存在を評価し、ここで(i)に記載される細菌の存在が良好な予後を示し、そして(ii)に記載される細菌の存在が不良な予後を示すことを含む、CRCの患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法に関する。
【0062】
他方では、上記方法は、患者から糞便における列挙される細菌の存在を評価することにより実施され得る。
【0063】
上記方法の特定の実施形態によれば、Erysipelotrichaceae(特に、Erysipelatoclostridium、Erysipelothrix及びTuricibacter属の)、Rikenellaceae(特に、Alistipes onderdonkiiの)、Prevotella copri、未分類のBacteroides、及び未分類のFaecalibacteriumから成る群から選択された1又は2以上の細菌の存在は、工程(i)において評価され、そして未分類のYS2、clostridium neonatale、未分類のLachnospiraceae、未分類のRuminococcaceae、Blautia、Christensenella minuta、Bacteroides caccae、Corynebacterium amycolatum、Streptococcus gallolyticus、Bacillus circulans、Ruminococcus gnavus、未分類のPhascolarctobacterium、Bacteroides uniformis及びCatabacter hongkongensisから成る群から選択された1又は2以上の細菌の存在は、工程(ii)において評価される。
【0064】
近位結腸癌の場合、(i)に列挙された細菌の存在がTIL富化近位結腸癌(IS 2-3-4)を示し、そして(ii)に列挙された細菌の存在がTIL陰性近位結腸癌(IS 0-1)を示す。
【0065】
上記方法を実施するために使用され得るサンプルの例は、回腸粘膜の政権、回腸の新鮮な粘膜関連細菌バイオフィルム生検又は回腸粘液、並びに回腸組成の代用マーカーそして使用され得る糞便微生物相である。
【0066】
下記実験部分に開示されるように、本発明はまた、
(i)免疫組織化学により回腸陰窩の切断カスパーゼ3陽性腸上皮細胞(Casp3+IEC)の数をインビトロで評価し、そして
(ii)前記患者の回腸陰窩におけるCasp3+IECの数と、回腸陰窩におけるCasp3+IECの対照数とを比較し、ここで前記患者の回腸陰窩における多数のCasp3+IECの存在が良好な予後を示すことを含む、CRCを有する患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法にも関する。
【0067】
本発明はまた、
(i)マーカーCD3、CD4及びBCL6についての免疫組織化学による回腸腸固有層及び上皮内リンパ球におけるの免疫細胞をインビトロ定量分析し、そして
(ii)前記患者の回腸腸固有層及び上皮内リンパ球における免疫細胞の数と、対照数とを比較し、ここで回腸における高い数の免疫細胞の存在が悪い予後を示すことを含む、CRCを有する患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法にも関する。
【0068】
本発明の別の側面は、患者からの血液サンプル中のB. fragilis特異的記憶CD4+Th1応答をインビトロ分析し、そしてそれを対照に比較し、ここでB. Fragilisに対する高い記憶Th1応答の存在が良好な予後を示すことを含む、CRCを有する患者についての予後及び/又はサブタイプシグネチャを生成するための方法にも関する。
【0069】
本発明の他の特徴はまた、本発明の枠内で実施され、そしてその範囲を制限することなく、必要とされる実験支持を提供する生物学的アッセイに続く説明の過程で明らかになるであろう。
【実施例】
【0070】
材料及び方法
マウス:
全てのマウス実験は、Gustave Roussy Cancer Campusの動物設置で実施され、ここで動物は特定の無菌状態で飼育されるか、又は無菌及びFMT実験のためにアイソレーターに維持された。
【0071】
全ての動物実験を、フランス及びヨーロッパの法規制に準じて実施した。地元の制度委員会は、すべてのマウス実験を承認しました(許可番号:2014-071-1124 及び2017-020-8964)。雌のC57BL/6J及びBALB/cを、それぞれ、Harlan (France)及びJanvier (France)から購入した。生後7~14週のマウスを使用した。無菌C57BL / 6Jマウス及びIl1ab-/-、Il18-/-、Cd39-/-、Myd88-/-、Tlr2 / 4-/-及びTlr9-/-(すべてC57BL / 6Jの遺伝的背景)、及び同じ繁殖区域からWT同胞子をCDTA(Cryopreservation、Distribution、Typage et Archivage、Orleans、France)での施設から得た。
【0072】
Casp3FL/FL; Casp7FL/FL; Villin-Cre Tg (カスパーゼ3/カスパーゼ7 IEC double KO) 及び RIPK3-/-; NntMut/Mut (Rip3k KO)をDr. Peter Vandenabeeleから購入し、そしていくつかの実験は、VIB-UGent Center for Inflammation Research, Ghent, Belgiumの動物施設で行われた。カスパーゼ-3FL/FL及びカスパーゼ-7FL/FLマウスはそれぞれ、International Mouse Phenotyping Consortium (IMPC)からのESクローンHEPDO716_4_G05及びEPD0398_5_E02 (C57BL/6N)を用いて生成された。ネオマイシン選択カセットは、FLPe削除マウスを用いて除いた(22)。腸管特異的標的化は、Villin Creマウスとの交配により達成された(23)。
【0073】
抗生物質治療:
マウスの減菌飲料水に加えられるバンコマイシン(0.25mg/ml)を伴って又は伴わないで、アンピシリン(1mg/ml)、ストレプトマイシン(5mg/ml)及びコリスチン(1mg/ml)(Sigma-Aldrich)を含む抗生物質溶液(ATB)により、マウスを処理した。溶液及びボトルはそれぞれ、3回及び週当たり1度、交換された。抗生物質の活性を、COS(5%羊血液を含むコロンビア寒天)プレート上で0.1g/mlで、BHI+15%グリセロール再懸濁された糞便ペレットを、好気性及び嫌気性条件下で37℃で48時間、培養することにより毎週確認した。ATB治療の期間は、実験設定に基づいてわずかに異なった。手短に言えば、ATBによりオキサリプラチンの有効性を妥協するためには、マウスを、腫瘍移植の前2週間、そして実験を通して継続的に処理した。ATB治療を、代償実験においては、オキサリプラチン注射の48時間前に中断した。
【0074】
腫瘍チャレンジ及び腫瘍モデルの治療:
MC38の皮下モデル:
同系C57BL/6Jマウスに、1 × 106個の MC38細胞を皮下移植し、そして腫瘍サイズが20~30mm2である場合、10mg/kgのオキサリプラチン又はビークル(PBS)により腹腔内処理した。処理グループ及び非処理グループにおける共生腸内細菌相の組成は、同時収容により共同で維持された。腫瘍サイズは、キャリパーを用いて3日ごとに定期的にモニターされた。
【0075】
示された実験においては、T細胞枯渇を、抗CD4及び抗CD8 mAb(GK1.5及び53-6.72;20μg/マウス)、又はそれぞれのアイソタイプ対照(LTF-2A3)(すべての抗体はBioxcellからである)による腹腔内処理により行った。枯渇処理は、OXAの4日前に開始され、そして7日ごとに同じ用量で反復された。
【0076】
PD-1封鎖を、抗PD-1 mAb(RMP1-14、200μg/マウス)又はそれぞれのアイソタイプ対照(2A3)(すべての抗体はBioxcellからである)による腹腔内処理により実証した。
【0077】
IEC収穫のための腸の解離:
回腸及び/又は結腸を収集し、脂肪組織、パイエル板および糞便を除去した。腸を縦方向に切り、次に横方向に細かく切ってチューブにした。断片を20 mlのIEC培地(PBS、5%のFCS、5 mMの EDTA及び1 mMの DTT)が入った新しい50 mlチューブに移し、ボルテックスし、37℃で15分間振とうした。細胞懸濁液を新しいチューブに収集し、細胞ストレーナー(100μm)で濾過し、遠心分離してPBSに再懸濁し、使用するまで氷上で保存しました。
【0078】
エンテロイド培養:
以前に説明されているように(24)、以下の変更を伴って、生後8~12週のC57BL/6Jマウスの回腸から陰窩を単離し、そして富化した。手短に言えば、洗浄された回腸片を、陰窩キレート化緩衝液(PBS中、2mMのEDTA)において氷上で30分間、インキュベートした。陰窩キレート化緩衝液の除去に続いて、断片を、10%FCSを含むPBSにより3度、激しくすすぎ、そして70μmの細胞ストレーナー(BD Bioscience)を通してろ過した。陰窩をペレット化し、Advanced DMEM/F12 (ADF) (Invitrogen)により洗浄し、1mlのMatrigel成長因子還元基底膜マトリックス(Corning)に再懸濁し、そして50μlの液滴を24ウェルプレートにピペットで移した。陰窩を、以下を含むADFによりオーバーレイした:100 U / mLのペニシリンGナトリウム、100μg/ mLの硫酸ストレプトマイシン、2 mMの L-グルタミン、10 mM のHEPES、1x N2サプリメント、1x B27サプリメント、50 ng / mL のmEGF、100 ng / mLの mNoggin (Peprotech, Hamburg, Germany)、N-アセチルシステイン(Sigma)(特に指定のない限り、Invitrogenの試薬)、及びR-Spondin-1トランスフェクトHEK 293T細胞の10%ならし培地。
【0079】
腸から単離されたIECによる免疫化:
ドナーマウスを、オキサリプラチン(10mg/kg)により6時間、腹腔内処理し、腸細胞死を誘発した。対照動物を、ビークル(PBS)のみにより処理した。処理グループ及び非処理グループにおける共生腸内微生物相の組成は、同時収容により同期維持された。治療の最後で、マウスを安楽死させ、そして回腸を採取し、IECを単離した。次に、100万個のIECを、受容体マウスの左側腹に皮下注射した。この手段は、7日後に1度、反復された。腫瘍チャレンジを、最後の免疫化の7日後に右側腹部に行い、この用量により、ナイーブマウス、MC38 (1 × 106個の 細胞)、 MCA205 (0.8×106個の 細胞)、 CT26 (1 × 106個の 細胞)及び4T1 (0.3 × 106 個の 細胞)において100%の腫瘍発生率を得る。
【0080】
示される実験において、IECを、100mMのピリドキサールリン酸-6-アゾ(ベンゼン-2,4-ジスルホン酸)四ナトリウム塩水和物(PPADS、Sigma)、200 μMの 2,4-ジニトロフェノール(DNP、Sigma)、又はビークルにより、4℃で20分間、前処理した。処理された細胞を、注射の前、冷PBCにより3度、洗浄し、又はIECを、中和抗HMGB1 Ab(ab18256、Abcam)、抗カルレティキュリンAb(NB600-101、Novus Biologicals)又はウサギIgGアイソタイプコントロール(NBP2-24891、Novus Biologicals)と共に、注射当たり10μgで共注射した。
【0081】
エンテロイドからのIECによる免疫化:
エンテロイドを、10μg/mlのオキサリプラチンにより3時間、処理した。IECを、アジュバントとしての患者サンプルから収穫された低温殺菌回腸粘液と共に混合し、受容体マウスの左側腹部に皮下注射した(106個の細胞)。この手順は、7日後、1度反復された。腫瘍チャレンジが、最後の免疫化の7日後、右側腹部上に行った。
【0082】
Alistipes onderdonkii, Erysipelatoclostridium ramosum単離物を、ワクチン接種実験に使用される患者からの回腸粘液から当研究所で単離した。エンテロイドを、106個の細菌/mlの存在下で、10μg/mlのオキサリプラチンにより3時間、処理した。細菌を、1時間のゲンタマイシン処理により殺し、そして免疫化を上記のようにして実施した。
【0083】
FMT実験:
凍結された糞便サンプルを解凍し、そして十分にボルテックスした。大きな粒状物質を、重力により沈降した。200μlの上清液を、強制経口投与により単回投与した。さらに、追加の100μlを、各動物の毛に局所的に適用した。得られるノトバイオートマウスを、照射された食物及びオートクレーブ処理された水を備えた陽圧式アイソレーターで維持した。FMTの2週間後、腫瘍細胞を皮下注射し、そしてマウスを上記のようにして、オキサリブラチン又はビークル(PBS)により処理した。
【0084】
専用の共生種による腸内コロニー形成:
Erysipelothrix tonsillarum 及びSolobacterium mooreiは、Prof. Ivo Gomperts Boneca, Institut Pasteur, Franceにより提供された。Bacteroides fragilis、Alistipes onderdonkii、Erysipelatoclostridium ramosum、Dialister invisus、 Paraprevotella clara単離物を、ワクチン接種実験で使用される患者からの回腸粘液から当実験室において単離した。嫌気性ジュネレーター(Biomeriux)を用いて創造された好気性又は嫌気性雰囲気下で37℃で24~72時間、COSプレート上で、種を増殖した。ATB前処理マウス又はGF C57BL/6Jマウスのコロニー形成を、PBSに1×109個の細菌を含む懸濁液100μlを強制経口投与することにより実施した。強制細菌飼養の場合、109個のCFU/mlの懸濁液が、蛍光分光光度計(Eppendorf)を用いて、600nmの波長で測定された1の光学密度で得られた。最初に、オキサリプラチンによる治療の24時間前、及び次に、治療の24時間後及び72時間後、3回の細菌強制経口投与を各マウスに対して行った、コロニー形成の有効性を、糞便を培養することにより確認した。
【0085】
最初の強制経口投与の48時間後、糞便ペレットを収穫し、そしてBHI+15%グリセロールに0.1g/mlで再懸濁した。糞便の連続希釈液をCOSプレート上にプレートし、そして好気性及び嫌気性条件下で37℃で48時間インキュベートした。48時間後、単一のコロニーを分離し、そしてグラム染色を実施した。特定細菌の同定を、Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionisation Time of Flight (MALDI-TOF)質量分析計(Andromas, Beckman Coulter, France)を用いて行った。
【0086】
培養学的分析:
ワクチン接種実験のために使用される回腸粘液の細菌多様性を、培養学アプローチを用いて調査した(25,26)。
【0087】
各サンプルを、好気性及び嫌気性培養ボトルに接種した。続いて、液体培養物の10倍連続希釈液を、5%羊血液富化コロンビア寒天培地(bioMerieux, Marcy l’Etoile, France)上にプレートし、そして好気性条件下で48時間、好気性条件下で1週間、それぞれインキュベートした。得られたコロニーを、継代培養し、そしてMatrix-Assisted Laser Desorption/Ionisation Time of Flight質量分析計 (MALDI-TOF)質量分析計(MALDI-TOF MS, Microflex, Bruker Daltonics, Bremen, Germany)も用いて定期的に同定した(27)。
【0088】
失敗した定期同定の場合、コロニーを、16S rRNAを配列決定することにより同定した。
【0089】
リアルタイム定量的PCR分析による腸管免疫遺伝子発現の特徴付け:
腸管生検からの生RNAを、RNeasy Mini Kit (Qiagen)により抽出し、そして次に、ランダムプライマー(Promega, Charbonnieres, France)及びデオキシヌクレオシド三リン酸組、PCRグレード(Roche Diagnostics, Meylan, France)の存在下でSuperScript III Reverse Transcriptase and the RNaseOUT(登録商標) Recombinant Ribonuclease Inhibitor (Life Technologies, Saint Aubin, France)を用いてcDNAに逆転写した。cDNAを、7500 Fast Real Time PCR system (Applied Biosystems)を用いて、Universal Master Mix II (Invitrogen)を用いたTaqMan(登録商標)Gene Expression Assayによるリアルタイム定量的PCR(RT-qPCR)によって分析した。2-デルタCt法により、ベータ2ミクログロブリンのハウスキーピング遺伝子の発現に対して正規化した。
【0090】
全てのプライマーは、aqMan(登録商標) Gene Expression Assay (Thermo Fischer)からであった。マウスプライマー:B2m (Mm00437762_m1)、 Muc2 (Mm00458299_m1)、Cd3e (Mm01179194_m1)、 Cd4 (Mm00442754_m1)、 Tbx21(Mm00450960_m1)、Ifng(Mm Mm01168134_m1)、 Rorc (Mm01261022_m1)、Il17a (Mm00439618_m1)、Foxp3 (Mm00475162_m1)、il10 (Mm01288386_m1)、 Gata3 (Mm00484683_m1)、 Il27 (Mm00461162_m1)、Il23a (Mm00518984_m1)、 Bcl6 (Mm00477633_m1),Ahr (Mm00478932_m1)、 Fos (Mm00487425_m1),JUN (Mm00495062_s1)。ヒトプライマー:B2Mプライマー : B2M 順方向: 5‘-GATGAGTATGCCTGCCGTGT-3’ (配列番号 1); B2M 逆方向 5‘-AATTCATCCAATCCAAATGCG-3’ (配列番号 2); B2M プローブ 5‘-(6FAM)AACCATGTGACTTTGTCACAGCCCAA(TAM)-3’ (配列番号 3)、 CD3E (Hs01062241_m1)、 CD4 (Hs01058407_m1)、 TBX21 (Hs00894392_m1)、 IFNG (Hs00989291_m1)、 RORC (Hs01076112_m1)、IL17A (Hs00174383_m1)、 FOXP3 (Hs01085834_m1)、 IL10 (Hs00961622_m1)、GATA3 (Hs00231122_m1)、IL27 (Hs00377366_m1)、IL23A (Hs00372324_m1)、BCL6 (Hs00153368_m1)、 AHR (Hs00169233_m1)、 FOS (Hs04194186_s1)、 JUN (Hs01103582_s1)。
【0091】
フローサイトメトリー分析:
腫瘍排出リンパ節(tdLN)及び脾臓を、FMTモデルについて実験の最後に収穫した。腸間膜リンパ節(mLN)を、腸管免疫学分析ために、オキサリプラチン治療の3日後は収穫した。リンパ節及び脾臓を、RPMI培地下で破砕し、そしてその後、100μmの細胞ストレーナーを通して濾過した。
【0092】
IEC懸濁液を、上記のようにして、3洗浄解離方法によりエンテロイドから入手した。
【0093】
全ての場合、200個の細胞を、膜染色の前、精製された抗マウスCD16/CD32(クローン93;eBioscience)と共に4℃で20分間、プレインキュベートした。
【0094】
細胞内染色に関して、Foxp3染色キット(eBioscience)を使用した。死細胞は、Live / Dead Fixable Yellow死細胞染色キット(Life Technologies)を使用して除外した。
【0095】
表現型検査のために使用される抗マウス抗体(及びクローン)は、以下の通りである:CD3e (145-2C11)、CD4 (GK1.5)、CD8a (53-6.7)、CD45 (30-F11)、FOXP3 (FJK-16s)、 CXCR3 (FAB1685P)、 CCR6 (140706)、 CCR9 (W-1.2)、 PD-1 (29F.1A12)、ICOS (11-9942-82) 、CXCR5 (2G8)、 CD19 (1D3)、iA/iE (2G9)、CD11(登録商標) (N418)、 CD103 (2E7)、 CD86 (GL1)、 FOXP3 (FJK-16s)、TNFa (MP6-XT22)、 (BD Pharmingen, BioLegend, R&D and eBioscienceから)。ストレプタビジンPE、アネキシンV-APC及びヨウ化プロピジウム(PI)は、BD Pharmingenからのものである。
【0096】
サンプルを、Cyan ADP9色サイトメーカー(Beckman Coulter)又は13色Cytoflex(Beckman Coulter)に基づいて取得し、そして分析を、FlowJoソフトウェア (Tree Star, Ashland, OR, USA)により実施した。
【0097】
切断されたカスパーゼ3発現の免疫組織化学的染色:
FFPE腸切片を脱パラフィンし、そして一連の段階的アルコール及び蒸留水により再水和した。抗原回復を、98℃の水浴において0.01Mのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0g、Diapath)により30分間、切片を前処理することにより実施した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、切片を、3%水素ペルオキシダーゼ(シャープS202386, DAKO)により10分間、処理することにより阻害した。切片を、IHC/ISH Super Blocking (シャープPV6122, LeicaBiosystem)により10分間、ブロックした。一次ポリクローナルウサギ抗体(Ab)、すなわち切断されたカスパーゼ3(Asp 175)(シャープ9661, Cell Signalling, 1μg/mL)を、1時間インキュベートし、続いて二次Ab、すなわちPowerVision Poly-HRP anti-Rabbit IHC Detection Systems (シャープPV6114, LeicaBiosystem)を20分間インキュベートした。ペルオキシダーゼを、Di Amino Benzidine-peroxidase substrate kit (DAKO)により検出し、そしてMayerのヘマトキシリンで対比染色した。
【0098】
画像を、スライドスキャナZeiss Axio Scan.Z1 (対物 Plan-Apochromat 20x/0.8, 3CCD camera Hitachi HV-F202SCL)により全体のスライド画像として取得し、そしてZeiss Zen 2 liteソフトウェアからFIFF画像としてエクスポートした。WSIを、Visiopharm Integrator System (VIS) (Visiopharm A/S, Denmark)において開発されたアルゴリズムを用いて処理した。
【0099】
ヒト組織分析に関して、QuPathソフトウェアを用いた(37)。関心領域(ROI)は、各WSIにおけるアルゴリズムと手の両方によって陰窩において定義された。それらのROI内の全細胞及び切断されたカスパーゼ3陽性細胞を定量化し、そして陽性の切断されたカスパーゼ3細胞の比率、及び切断されたカスパーゼ3陽性細胞の細胞密度を計算した。
【0100】
回腸におけるAHR、CD4及びCD3発現についての免疫蛍光染色、スキャン及び分析:
多重染色に関しては、ホルマリン固定された、パラフィン包埋回腸組織の厚さ3μmの切片を、自動免疫染色装置(DISCOVERY ULTRA, Ventana, IGR)により染色した。95℃で64分間のEDTA緩衝液(pH8.0)における熱誘発抗原回復を実施しを実施した。一次モノクローナルマウス抗-ヒトAHR抗体(SantaCruz, A-3, 0.5μg/mL)を、RTで1時間、スライド上に適用し、続いて、ビオチンを含まないペルオキシダーゼ検出システムのDiscovery UltraMap抗マウスHRP (Ventana, #760-4313)を用いて検出した。AHRの可視化を、TSA蛍光団システムDiscovery Rhodamine 6G キット (Ventana, #760-244)を用いて達成した。100℃での10分間のクエン酸緩衝液(pH6.0)における熱誘発抗原回復を実施した。次に、スライドを、一次モノクローナルウサギ抗ヒトCD抗体(Spring, SP35, 0.5μg/mL)上で37℃で1時間インキュベートし、Discovery UltraMap 抗ウサギ HRP (Ventana, #760-4315)により検出し、そしてDiscovery Cy5キット (Ventana, #760-238)により可視化した。上記のようにして、クエン酸緩衝液を用いての加熱工程を実施した。次に、スライドを、一次ポリクローナル抗体ヒトCD3抗体(DAKO, #A0452, 3μg/mL)上で37℃で10時間インキュベートし、Discovery UltraMap 抗ウサギ HRP (Ventana, # 760-4315)により検出し、そしてDiscovery FAM キット (Ventana, # 760-243)により可視化した。クエン酸緩衝液を用いての加熱工程の後、次に核を、Spectral DAPI (Perkin Elmer, FP1490, 1:10)により可視化した。
【0101】
蛍光分析:
図に示される画像は、スライドスキャナーZeiss Axio Scan.Z1 (対物 Plan-Apochromat 20x/0.8, 3CCD camera Hitachi HV-F202SCL)を用いてスライド全体の画像(WSI)として得、そしてTIFF画像として、Zeiss Zen 2 liteソフトウェアからエクスポートした。WSIのいくつかを、Visiopharm Integrator System (VIS) (Visiopharm A/S, Denmark)により開発されたアルゴリズムを用いて処理した。DAPI強度に閾値を適用することにより、各WSIについてのROIを定義し、そして次に、AHR平均蛍光強度を、それらのROIにおいて測定した。
【0102】
16S rRNA遺伝子配列決定及び分析:
配列決定:メタゲノムコミュニティの特徴付けを、超可変領域の増幅及び配列決定を通して実施した。gDNA抽出、ライブラリー調製及び配列決定を、コホート1についてはGATC Biotech AG (Konstanz, Germany)及びコホート2についてはGenoscreen(Lille、France)で行われた。増幅を、コホート1及び2について可変領域V3-V5及びV3-V4をそれぞれ両端に有する保存領域を標的とする領域特徴的プライマーを用いて実施した。配列決定を、Illumina MiSeq技法により実施した。
【0103】
分析:全読み取りを、長さ(コホート1については最小長=250bp及びコホート2については300bp)及び品質(両コホートについては最小品質=20)についてフィルター処理し、そしてキメラについて調べた。コホート1については合計7,951,772の読み取り(平均54、839の読み取り/サンプル;n=145のサンプル)及びコホート2については、1,691,549の読み取り(平均14、838の読み取り/サンプル;n=114のサンプル)を得た。高品質の読み取りをプールし、そしてQIIMEからのUCLUSTソフトウェアによる97%類似性閾値に基づいて、運用分類単位(OTU)にグループ分けした。ファイロタイプ富化性及び多様性の推定値を、希薄化されたOTU表(コホート1についてn=4,000の読み取り及びコホート2についてn=2,000の読み取り)に基づいてShannon及びSimpson指数を用いて計算した。シングルトンを除去し、そして各OTUの系統分類を、Ribosomal Database Project分類法を用いて行い、そして門レベルから種レベルまで実行した。
【0104】
15の新規の事例が追加された拡張コホートの分析に関しては、上記のように、コホート1と同じ方法で、コホート2からの全てのサンプルの配列決定及び分析を再実行した。
【0105】
統計言語Rバージョン3.1.3を、データの可視化のために、及び細菌属(ade4ライブラリー)でのMonte-Carloランク検定に関連する存在量ベースの主成分分析(PCA)及びクラス間PCAを実行するために使用した。微生物相の組成に対する異なる臨床パラメーターの影響を解読するために、機器変数として異なる臨床因子を用いての主成分分析を、各個人についての異なる細菌の分類群の存在量に基づいて計算した。それらのクラス間PCAは、個人の微生物相間の多様性を表示する類型を表し、そして定性的変数(例えば、臨床パラメーター)間で観察される変動を最大化する変数(細菌ファイロタイプ、又は属など)の組み合わせの強調を可能にするのに適切である。それらのクラス間PCAに基づいて、微生物相プロファイルの異なる臨床因子間のリンクの統計学的p値を、Monte-Carloランク検定(1000回の反復)を用いて評価した。
【0106】
培養学及び16Sデータ分析:
各細菌分類群に関して、平均頻度を、所定の変動(ワクチン接種実験に対応する応答、免疫スコア、AhRレベル)に従って定義された2つのグループにおいて計算した。相対的頻度差を、種を富化するか、又は枯渇するかを決定するために、各種について計算した。相対的頻度差の統計学的有意性を、補正されていないカイ2乗検定を用いて、異なるグループにおける各分類群の割合を比較して決定した。
【0107】
OXA及び共生生物に暴露されたヒト腸上皮細胞で満たされた自己DCによるTナイーブ細胞分化の誘発:
CD14+細胞を、健康なドナーから得られたPBMCから単離した(Miltenyi Kit)。単球を、培養培地にGM-CSF及びIL-4を6日間、加えることによりDCに分化した。6日目、未成熟DCを収集し、そしてアポトーシス性腸上皮細胞で満たした。
【0108】
アポトーシスIEC細胞の調製に関して、HIEC-6細胞(ATCC)を、細菌により1時間、OXAにより3時間、及びATBにより1時間処理し、そして次に、ONのままにした。次の朝、アポトーシス細胞を収穫し、PBSにより3度、洗浄し、そしてDC培養液に添加した。
【0109】
ナイーブCD4 T細胞を、各実験(Miltenyi Kit)で一致したドナーから単離し、そしてDC-IEC培養物に10:1の比で添加した。最終共培養物を、6日間インキュベートした。6日目に、抗-CD3及び抗-CD28 mAbを培養物に添加した。24時間のインキュベーションの後、上清液を、ELISA(Biolegen)によりIFNgについてアッセイした。
【0110】
統計学:
データ分析及び表現を、統計環境R、Microsoft Excel (Microsoft Co., Redmont, WA, USA) 又はPrism 5 (GraphPad, San Diego, CA, USA)のいずれかにより実施した。腫瘍増殖を、専用ソフトウェア(https://kroemerlab.shinyapps.io/TumGrowth)を用いて分析した。手短に言えば、データを、前処理された腫瘍表面を記録するために適用される線形混合効果モデリングにゆだねた。p値を、腫瘍の成長勾配及び切断(対数スケール)の両者が対象グループ間で異なるかどうかを試験することにより計算した。FMT実験においては、各FMTのOXAの有効性間の比較は、各FMT処理マウスのOXA-PBSと対照的な処理間の推定勾配から誘導される。コントラストを、治療日当たりの腫瘍サイズの%改善率として解釈されるように変換した。全ての報告された検定は両側検定であり、そしてp値<0.05で有意であるとみなされた。生存曲線を、Kaplan-Meier生成物制限法を用いて推定した。一変量又は多変量分析を、Cox回帰モデルで実行し、p値<0.05は、有意であるとみなされる。
【0111】
階層的クラスターリングが、距離1-Pearson相関係数及びWardの凝集法により行われた。統計及びグラフィックスを、Rソフトウェア及びGraphPad Prism v7.03を用いて実施した。全ての検定は両面であり、そしてp値<0.05が統計学的に有意であると見なされた。
【0112】
実施例1:進行PCAC患者の予後における回腸粘膜の免疫及び微生物状態の重要性:
腸を殺菌する広範囲の抗生物質は、C57BL/6Jマウスに皮下(S.C.)移植されたMC38結腸癌に対するOXAの効果を低め(28)(ゲータを示されていない)、そして抗菌ペプチドの糞中への放出を妨げる(データは示されていない)、このことは、OXAが付随して、腸及び腫瘍の両区画に影響を与えたことを示唆している。それらの観察に基づいて、大腸の微生物組成がMC38腫瘍の治療におけるOXAの効果に影響を及ぼすかどうかを分析した。我々は、12人の近位結腸腺癌(PCAC)患者から収集されたヒト結腸内容物を、無菌(GF)マウスの腸に定着させ、そして3週間後、MC38 s.c.接種した。患者の糞便の大部分(8/12)は、特定の病原菌のない(SPF)条件下で飼育された通常のマウスに観察される効力(以降、「アバター応答者(aR)」と呼ばれる)に匹敵するOXAの抗腫瘍効果をもたらしたが、4人の患者の糞便はこの免疫原性化学療法に対する完全な耐性を誘発した(「アバター非応答者(aNR)」)(
図1A-B)。さらにOXAに応答して、aRは、aNRに比較して(データは示されていない)、Tbx21、Bcl6、Il27、Gata3及び Ahrの低発現により定義される回腸TH1/TFH免疫トーンの低下を示したが、しかしIl17、Rorc、Il10及びFoxp3 mRNAsでは示さなかった。逆に、aRとaNRとの間の結腸粘膜におけるそれらの免疫遺伝子の発現パターンに有意な差は存在しなかった(データは示されていない)。並行して、TH17細胞(CD4
+CCR6
+CXCR3
-として定義される)に有意な低下が存在し、ところが活性化されたTFH細胞(CD4
+CXCR5
hiPD1
hiとして定義される)は、腫瘍排出リンパ節(tdLN)に選択的に蓄積し、aRにおけるCD8/Treg脾臓比率は上昇したが、しかしaRNにおいてはそうではなかったことが付随された(データは示されていない)。重要なことには、tdLN TH17細胞は、回腸Ahr遺伝子発現と正に相関し(そして、他の回腸免疫マーカーとは相関しない)、ところがtdLN TFHはOXA後の回腸Bcl6遺伝子発現と負の相関が存在した(
図1D)。
【0113】
このデータの可能な臨床関連性を調査するために、健康な回腸及び結腸粘膜(癌の部位から離れている)における免疫遺伝子の発現と、2人の独立したコホートにおいてPCACの手術を受けた138人の抗生物質ナイーブ患者から収集された回腸、結腸及び糞便の検体の微生物群とを関連付けた。臨床的に関連するパラメーターと微生物分類群との間のクラスター化ロバスト性のクラス間主成分分析及びMonte Carloランク検定p値は、回腸微生物相が結腸粘膜又は結腸内容物からの微生物相よりも診断での転移と密接して関連していることを明らかにした(データは示されていない)。この分析は、2つの独立した患者シリーズ(n=63及びn=20)で実施された。アバターマウスに示されるように、AHR及びBCL6(及びある程度、CD4)のより高い回腸(大腸ではない)発現が、初期段階と比較して、予後不良(ステージIII-IVのPCAC患者に観察された(
図1E)。抗生物質ナイーブステージIII-IVのPCAC患者のコホートに対する分析に集中する場合、AHR、TBX21、CD3E及び GATA3の高い回腸(しかし、結腸ではない)の個々の発現レベルが、進行までの短い時間と関連していた(
図1F,表1)。
【0114】
【表1】
PCAC:近位結腸腺癌;TTP:進行までの時間
【0115】
この最初の分析は、進行した疾患(ステージIII-IV)を有する患者の分離を可能にした。
【0116】
次に、研究に15の新しい事例(拡張コホート)を追加し、すべての患者(ステージIII~IVだけではない)に、現在適用され得る、パラメーターの分類の増加をもたらした(表2)。
【0117】
【表2】
PCAC:近位結腸腺癌;TTP:進行までの時間
【0118】
さらに、グローバルな遺伝子シグネチャの分析が、監視されていない階層的なクラスタリングにより、患者の良好な(クラスター1)又は不良な(クラスター2)予後への分離を可能にした(
図1G)。クラスター1においては、免疫関連のmRNA(FOS、RORC、ILA17A、INFG、IL23A、FOXP3、CD3E、IL27、GATA3、BLC6、CD4、AHR、TBX21、IL10 及びJUN)は、回腸においては一般的に発現は少なく、ところがクラスター2においては、それらの回腸mRNAはより高いレベルで発現される傾向があった(
図1G)。驚くべきことには、健康な回腸及び結腸粘膜における免疫遺伝子の転写プロファイルの鏡像が存在した(
図1H)。クラスター1の患者は、回腸シグネチャがクラスター2に分類された個人よりも、治療が失敗するまでの良好な時間(進行又は癌関連死亡)を示した(
図1I)。このリスクの層別化は、ステージIVのPCC転移患者の生存を予測したので(
図1J)、分析されたコホート(コホート2が20の新しい事例により拡大された)、化学療法による前処理の有無、治療センター、腫瘍ステージ及びMSIステータスとは無関係であった(
図1G)。
【0119】
患者の予後に影響を及ぼす回腸における局所免疫パラメーターを、さらに、回腸上皮(EP)又は固有相(LP)内の全(CD3+)及びCD4+Tリンパ球、並びに切断された腫瘍の湿潤性辺縁におけるCD8+T細胞の免疫蛍光に基づく検出により検証した。この分析は、圧倒的な反相関の驚くべき観察を明らかにした(データは示されていない)。特に、TILとLP細胞との間の反相関は、TFH細胞に対して特に協力であった。従って、重度のT細胞湿潤腫瘍は、その回腸がT細胞をほとんど含まない傾向がある患者において発生する。
【0120】
それらの相関的な多面的分析((i)腸の位置、(ii)微生物の組成、及び(iii)免疫関連遺伝子発現プロファイルを含む)に基づいて、回腸粘膜は進行したPCAC患者の予後を厳密に決定する(その免疫状態を及び微生物状態の両者が非常に重要である)、腸の区画を表すことができることが推定された。
【0121】
実施例2:結腸癌に対する回腸腸細胞の免疫原性細胞死における腸カスパーゼ-3及び-7の保護的役割-回腸IECによるワクチン接種:
次に、OXA-(又はPBS-)処理された同系同腹子から収穫された正常(非悪性)回腸IECにより構成されたワクチンを用いて、ナイーブC57BL/6J又はBALB/cマウスを免疫化した。7日間間隔での2回のs.c.免疫化の後、C57BL/6Jマウスを、同系MC38結腸癌細胞(又は結腸癌とは抗原的に異なる無関係なMCA205肉腫)の致死量で対側横腹部に注射し、そしてBALB/cマウスの対側横腹部に同系のCT26結腸癌細胞(又は同系の4T1乳房腫瘍)を注射した。
【0122】
最初に、回腸(結腸ではない)IECが、肉腫又は乳癌細胞ではなく、結腸癌による腫瘍攻撃に対する部分的保護を与えたことが観察された(
図2A-B)。
【0123】
第二に、OXAによりインビボ前処理されたマウスからのIECは、未処理のIECよりも結腸癌増殖に対する保護においてより効率的であった(
図2A-B)。
【0124】
第三に、OAに暴露された回腸粘膜が、アポトーシスを廃止する条件付きのIEC特異的カスパーゼ3/カスパーゼ7ノックアウトマウス(IEC特異的ビリンプロモーターの制御下で発現されたCreリコビナーゼにより駆動されるCasp3/7
ΔIEC)から単離された場合、MC38細胞に対するそれらの免疫力は失われた(
図2C)。対照的に、Ripk3(Ripk3
ΔIEC)の欠乏は、WXA処理された回腸腸細胞の免疫原性に影響を及ぼさず(
図2C)、回腸IECの免疫原性におけるRIPK3依存性ネクロートシスの役割ではなく、アポトーシスの役割を強調している。
【0125】
興味深いことには、インビボでのカスパーゼ3のアポトーシス関連の切断を引き起こすOXAの能力は結腸IECよりも回腸においてより顕著であった(
図2D)。さらに、結腸IECは、細胞周期への進入を刺激した、ムチン生成杯細胞及びMuc2 mRNA発現の匹敵する損失にもかかわらず、DXA後の低められた増殖を示す傾向があった(回腸IECは高いKi67発現を維持した)(データは示されていない)。
【0126】
OXAによる幹細胞由来の小腸エンテロイドの処理が、カルレティキュリン細胞表面暴露で頂点に達する用量依存性アポトーシスを誘発したことがインビボで確認された(29)(データは示されていない)。次に、回腸IECのOXA誘発細胞死中に放出される種々のDAMPの生物学的関連性を試験するためにCd39、 Myd88、 Tlr2/Tlr4、Tlr9、 Il1αβ 又はIl18欠損同系動物に由来する回腸OXA暴露IEC、又は免疫原性細胞死(ATP、カルレティキュリン及びHMGB1)に通常関連するDAMPが抗体又は薬理ブロッカーにより中和されている回腸OXA暴露wt IECにより、ナイーブ野生型(WT)C57BL/6Jマウスを免疫化した。TLR2/4又はIL-1Rシグナル伝達経路が抑制された場合、又はATP放出が阻害されるか、又はプリン作動性P2受容体がブロックされた場合、野生型回腸IECの免疫原性が損なわれたか(
図2E-F)、まだカルレティキュリン又はHMGB1には依存しなかった。注目すべきことには、有糸分裂的に活性なLgr5
+腸幹細胞は、IECの免疫原性には不要であった(データは示されていない)。
【0127】
さらに、腸のカスパーゼ3及び7の欠如は、天然の腫瘍進行加速の最高潮に達する、tdLNにおける低められたCD3
+ T細胞をもたらした(データは示されていない)。腸カスパーゼ3及び7は、樹状細胞のOXA誘発トラッフィッキング(データは示されていない)及びOXA後の腸間膜リンパ節(mLN)における活性化されたTHF(
図2G)、並びにOXAの抗腫瘍効果(
図2H)及び腫瘍床におけるTIL蓄積(
図2I)のために必要とされた。
【0128】
局所的に進行した患者においては、術前補助化学療法が手術の前に行われ、腫瘍又は健康組織の種々のパラメーターに対する細胞毒性物質の効果の推定を可能にする。近位結腸癌患者の回腸における活性化されたカスパーゼ3の免疫組織化学的検出が、主に陰窩において、OXAベースの術前補助化学療法が、局所IECアポトーシスを誘発したことを確認した(
図2J、K)。中央値を越える回腸陰窩カスパーゼ3活性化は、術前補助化学療法の恩恵を受けている患者における全生存率の向上に関連する傾向があり、このことは、このパラメーターが正の予後値を有することを示唆している(
図2L)。
【0129】
実施例3:結腸癌に対する回腸腸細胞の免疫原性細胞死における回腸微生物相の補助的役割:
アバターマウスにおける回腸微生物相の潜在的な関連性及び患者における転移の進行に興味がそそられるので(
図1)、特定の無菌条件(SPF)下で発生されたマウスから収穫された回腸IECの相対的免疫原性を、無菌(GF)の施設での飼育されたそれらの相対的免疫原性とを比較することにより、微生物関連分子パターン(MAMP)の役割を分析した。注目すべきことには、OXAに暴露された回腸GF-IECは、回腸SPF-IECに比較して、MC38に対する免疫化に失敗した(
図3A)。OXA処理された幹細胞由来の小腸エンテロイド(微生物の生体系を欠いている)は、未処理のエンテロイドに比較して、MC38の進行を実際に加速し、このことは、それらが寛容原性であったことを示唆する(
図3B)。全体として、それらの発現は、従来の化学療法に暴露された回腸IECが、広範囲の抗生物質がMC38に対するOXAの有効性を重度に影響を及ぼしたという事実と一致して、好ましい微生物相の不在下で保護的な抗癌免疫応答を誘発できなかったことを示唆している(28)。回腸微生物相が局所IECの免疫原性の特性を回復できることを直接的に示すために、PCAC患者から収穫された10の異なる回腸粘膜生態系により、寛容性OXA感作回腸エンテロイドを補足した(
図3C-D)。それらの10の回腸生態系のうち6つのみが、負の対照、すなわちナイーブな非免疫マウス、OXA処理されたエンテロイドによってのみ免疫化されたマウス、又はエンテロイドを含まない回腸粘膜微生物相により免疫化されたマウスに対して、相対的な抗癌保護を回復できた(
図3D)。
【0130】
回腸IECの免疫原性の終焉に関与する細菌分類群を同定するために、種々の技術的アプローチ(Mi-Seq 16S rRNA遺伝子アンプリコン配列決定及び培養学)、及び3つの戦略(回腸の免疫トーン、腫瘍免疫スコア及びインビボワクチン接種の調査)を使用した。最初に、6つの応答(R)及び4つの非応答(NR)回腸粘膜における回腸粘膜関連微生物相の遺伝子アンプリコンの16Sアンプリコン配列決定に結合された培養学分析(25)(
図3D)は、R間での共有される特性、例えばErysipelotrichaceae、(Erysipelatoclostridium属、
図3E)及びRikenellaceae(Alistipes onderdonkii、
図3E)科メンバーの過剰表現を表した。注目すべきことには、Faecalibacteriumはまた、それらの10の患者由来の粘膜における16Sアンプリコン配列決定により確認されるように、(寛容原性に対して)回腸粘膜の免疫化においても過剰に存在した(データは示されていない)。第二に、PCAC患者の免疫スコアと、回腸粘膜関連微生物相の16Sアンプリコン配列決定とを整列する相関研究は、好ましい(IS>2)対陰惨な(IS0-1)免疫スコアを表すPCAC患者の回腸微生物相を比較する非常に少数の分類学的単位を明らかにした(10)。それらの分類群は、Bacteroidales目からの種、Rikenellaceae科、コホート1(n=33 PCAC、
図3F及び
図6)におけるAlistipes shahii、及びコホート2(n=17 PCAC、p=0.03)における未分類のBacteroidalesと<93%の相同性を示すOTU1040を含んだ(データは示されていない)。最後に、16Sアンプリコン配列決定における細菌組成についてのクラスター形成の堅牢性のクラス間主成分分析、Monte Carloランク検定p値は、AHR
lowの回腸粘膜とAHR
highの回腸粘膜との間に有意な変異を明らかにしたので(データは示されていない)、未分類の Erysipelotrichaceae、未分類の Rikenellaceae 及び未分類の Faecalibacteriumが、低AHR mRNA発現と関連していたことを再び見出した(
図3G、及びデータは示されていない)。注目すべきことには、寛容原性回腸粘膜に関連する両基準、すなわち高いAHR発現レベル及び低い免疫スコアを用いて回復された一般的な細菌種はBacteroides uniformis、 Ruminococcus gnavus及び未分類の Pharscolarctobacteriumであり(
図3I-J);それらの共生体は良好な予後と負の相関があった。回腸粘膜におけるErysipelotrichaceae, Rikenellaceae 及びFaecalibacteriumの相対的優勢が、低い局所免疫トーン及び腫瘍床における細胞毒性Tリンパ球の豊富さを予測し、両ともPCAC予後に影響を及ぼすと結論付けている(
図3H)。
【0131】
次に、回腸微生物相がそれらの回腸免疫遺伝子発現(拡大されたコホート)に従って分類された患者を分離できるかどうかを試験した。科の細菌のレベルで、Volcanoプロットは、クラスター1の患者(クラスター2の患者よりも良好な予後を有する)における、Erysipelotrichaceaeの過剰、及びNegativicutes網(例えば、Acidaminococcaceae、Selenomonadales unclass.)の科/目の過剰を強調する傾向があった(
図3K)。種レベルで、クラスター1と比較して、不良な予後を有するクラスター2患者のおける経口Prevotella spp. (P.oralis、 P・oryzae)に有意な富化が存在した(
図3L)。逆に、好ましいクラスター1(クラスター2と比較して)において富化された唯一の細菌は、Bacteroides fragilis であった(
図3L)。
【0132】
Spearman相関マトリックスは、特定の細菌科と、浸潤性辺縁(IM)で又は腫瘍の中心部(CT)においてCD3+及びCD8+ Tリンパ球による腫瘍の浸潤との関連を示唆している(
図3M)。ここでも、Negativicutes網(例えば、Veillonellaceae)に属する科はまた、腫瘍の浸潤性辺縁におけるCD3+及びCD8+T細胞浸潤物の密度と正の関係があり、ところがFusobacteraceaeの回腸における比率は、腫瘍の中心部におけるCD3+及びCD8+T細胞浸潤物の密度と負の相関があった。
【0133】
興味深いことには、回腸陰窩における切断されたカスパーゼ3陽性IECの頻度は、術前補助化学療法の後のクラスター患者においてよりもクラスター1において有意に高かった(
図3N)。非術前補助患者の回腸微生物相において、アポトーシス陰窩細胞の頻度は、Erysipelotrichaceaeの比率と正の関係を示したが(
図3O)、しかしFusobacteriaceaeとは負の関係を示した(
図3P)。従来の術前補助療法を伴っての患者(n=12)又はそれを伴わないでの患者(n=30)の両方において得られたそれらの関連性は微生物相、IECアポトーシス、及び回腸内の局所免疫性間の機能的関連を示唆している。免疫スコアとの関連での回腸細菌のさらなる分析は、Lactobacillales目(Streptococci及びEnteroccoci)からのいくつかの種及び免疫スコアグループ3(良好な予後)間の正の関連性を明らかにした(
図3Q)。治療失敗までの時間に対しての最良なリスク層別化の細菌は、Bacteroides fragilisであった(
図3R)。
【0134】
注目すべきことには、糞便の微生物相が分析される場に見いだされたいくつかの共通点(
図4A-B)は、回腸免疫性にとって重要ないくつかの微生物バイオマーカーが結腸区画に見出され得ることを示唆する。同様に、糞便微生物組成物は、回腸組成物の代用物として使用され得る。
【0135】
実施例4:Alistipes sp.及びErysipelotrichaceaeの投与が腸内細菌症の状態でオキサリプラチン抗癌効果を回復する
その後、それらの科のいくつかの代表的な単離物の強制経口投与によりaNRマウスにおける腸内細菌相を補償することにより、応答患者におけるErysipelotrichaceae 及びRikenellaceaeの相対的過剰発現と、回腸粘膜の免疫原性アポトーシスとの間の因果関係を確立しようとした。これは、治療設定でのOXA投与の前、又は予防実験でのワクチンによる免疫化の前に行われた。注目すべきことには、Erysipelothrix tonsillarum(Erysipelotirichaceae科からの別の細菌であるSolobacterium mooreiを除く)は、ATB-(
図5A-C)又はFMT-誘発された腸内毒素症(
図5D-E)の状況下で、T細胞依存性態様での確立されたMC38癌に対するOXA介在性抗癌効果を改善した。さらに、免疫原性回腸粘膜から培養された、Alistipes onderdonkii (Rikenellaceae 科に属する)及びErysipelatoclostridium ramosum(
図3E)は、OXA処理されたエンテロイドを免疫原性にするのに効果的であり、従ってそれらのMC38癌増殖制御効果を増強し(
図5F-G)、ところが、同じ(及び混合された)低温殺菌された細菌はそうすることができなかった。最後に、回腸粘膜におけるErysipelotrichaceaeの低い相対量は、48人のPCAC患者のコホートにおいて診断での転移を示すリスクの増加と関連した(
図5H-I、データは示されていない)。
【0136】
実施例5:Bacteroides fragilis 及びErysipelotrichaceaeの投与は、腸内エビオシスの状態におけるOXA及び抗PD-1の組み合わせの抗癌効果を改善する
次に、PD1遮断(単独で又はOXAと併用)に対して応答しなかった結腸癌が、上記で特定された適切な「免疫原性回腸共生体」への暴露の後、応答体になることができたかどうかを検討した。従って、それらの科のいくつかの代表的な単離物の強制経口投与によるマウスにおける完全な(SPF)微生物相を補償することにより、良好な予後患者におけるErysipelotrichaceae 及び Bacteroides fragilisの相対的過剰発現と、回腸粘膜の免疫原性アポトーシスとの間の因果関係を確立した。これは、治療設定におけるOXA投与の前に行われた。注目すべきことには、Erysipelatoclostridium ramosum及び Bacteroides fragilisは、確立されたMC38癌に対するOXA+抗PD-1 Ab介在性抗癌効果を改善し、ところがPrevotella clareは、そうすることができず、OXA+PD1 Abの効果を悪化さえさせた(
図7A-B)。
【0137】
実施例6:腸上皮細胞に対するTh1細胞のエクスビボ生成
次に、いくつかの個体が、CRCから保護することができるそれらの陰窩及び/又は共生体の自己幹細胞に対する記憶及び保護Th1免疫応答をすでに有するかどうかの分析を試みた。DCが、T細胞をTh1細胞に分化させるために、免疫原性IEC+/-細菌を負荷した後、ナイーブCD4+ T細胞に暴露されるエクスビボ共培養工程を確立した。これは、以前にBacteroides Fragilis及びOXAに暴露された場合にのみ免疫原性にされた同種IEC(ヒト細胞系HIEC-6からの)を充填された樹状細胞と、自己Tヘルパー細胞とをインキュベートすることにより行われたが、しかしそれらはOXAのみで、又は寛容性細菌Paraprevotella charaにより処理された場合は異なります(
図8)。この方法により得られたTh1細胞は、CRCの治療又は予防のために有利に使用され得る。
【0138】
議論:
全体として、それらの発見は、微生物相が回腸免疫トーンを指示し、そしてアポトーシスに屈した回腸腸細胞により誘発された抗癌免疫応答を形作ることを説明している。回腸IECのカスパーゼ3/7依存性アポトーシス細胞死、TFH/TH1(免疫原性)免疫応答に対してTH17(寛容原性)のバランスをとるMAMPを生成する細菌生態系の局所存在においてのみ、いくつかのDAMP(ATP、IL-1)及び機能的TLR2/4細胞自律的シグナル伝達の放出に結び付く、腸間膜LNにおける一般的な腸細胞抗原に対する免疫応答を誘発する。注目すべきことには、抗癌免疫応答を誘発するために必要とされる腸のアポトーシスは、CALR及びHMGB1を必要としないので、免疫原性細胞死(ICD)(腫瘍内で発生する)とは機構的に異なる。回腸アポトーシスに応答して、CD103- CD11c+ MHC クラス II+ DCが、腸間膜及び腫瘍排出LNにおいて活性化されたTFHを拡張するために動員される。OXA後の回腸のCCL25発現レベルの平行減少に関連する回腸粘膜の低められた免疫トーンを考慮すると(示されていない)、mLN化学療法の後に活性化されたTFHが、腫瘍微小環境へのそれらの移行を好む、炎症を起こした腸に由来したと推測するのは魅力的である。それらの発見は、化学療法により処理されたいくつかの癌患者に観察されたように、自己免疫性大腸炎に関連し、そして抗生物質により都合よく抑制され得る自己反応性T細胞依存性抗癌免疫性の理論的可能性を高める(30-32)。腸又は腸間膜LNにおける抗原提示細胞による共生体及びそれらのTLRリガンドと共にアポトーシス細胞の潜在的な同時食細胞区分化が、自己及び非自己ペプチドの両方がMHCクラスII分子に同時に負荷される機会を提供する(33)。
【0139】
この研究は、回腸微生物相を利用し、そして結腸癌抗原に対する自己寛容を破壊する新規の細菌アジュバントを考案するための新規の道を切り開く。
【0140】
それらの発見は、腸内微生物相、局所免疫応答及び結腸癌予後の間の新規関連性を明らかにする。それらのデータに基づいて、いくつかの前提を議論することができる。最初に、外科医は、消化管の最も抗原性の高い部分、すなわち回腸の最後の10cm部分、それ以外の場合、免疫原性アポトーシスを受け、そして高い免疫原性の自然の住民/アジュバント(回腸粘膜関連微生物相)でコロニー形成する部分を切除するために、右側結腸癌は、より悪い予後を有することが推測できる。結果的に及び第二に、自己反応性、及び/又は結腸腫瘍幹細胞との分子模倣が、長期保護免疫性の誘発を可能にするので、右側結腸癌の術前補助化学療法が、アジュバント設定で投与される化学療法よりもより有益であり得る。弟三に、DNAミスマッチ修腹に遺伝的欠陥を有する患者からのilei (例えば、Hereditary Non Polyposis Colorectal Cancer (HNPCC)に記載されていもの)は、アポトーシス(少なくとも、特定の化合物で)を受ける傾向が高い可能性があり(34-35)、そして従って、IEC由来の自己抗原に対するより強い保護免疫応答を誘発する。弟四に、原核生物のDNAミスッチ修復機構(例えば、MutS及びMutL)及びMSH1の相同体(36)も有する回腸粘膜関連の細菌は、回腸IECの免疫原性の調節に役割を果たす可能性がある。
【0141】
従って、定義された遺伝子マップを用いて結腸癌患者からの回腸エンテロイドのバイオバンクを生成することは有用である。原核生物と真核生物のミスマッチ修復機構、粘膜免疫性及び発癌の間の生物学的リンクを確立することが、将来の鍵となるであろう。
【0142】
参考文献:
1. C. L. Sears, W. S. Garrett, Microbes, microbiota, and colon cancer. Cell Host Microbe. 15, 317-328 (2014).
2. T. Irrazabal, A. Belcheva, S. E. Girardin, A. Martin, D. J. Philpott, The multifaceted role of the intestinal microbiota in colon cancer. Mol. Cell. 54, 309-320 (2014).
3. A. Belcheva, A. Martin, Gut microbiota and colon cancer: the carbohydrate link. Mol. Cell. Oncol. 2, e969630 (2015).
4. W. Chen, F. Liu, Z. Ling, X. Tong, C. Xiang, Human intestinal lumen and mucosa-associated microbiota in patients with colorectal cancer. PloS One. 7, e39743 (2012).
5. J. Geng, H. Fan, X. Tang, H. Zhai, Z. Zhang, Diversified pattern of the human colorectal cancer microbiome. Gut Pathog. 5, 2 (2013).
6. G. Nakatsu et al., Gut mucosal microbiome across stages of colorectal carcinogenesis. Nat. Commun. 6, 8727 (2015).
7. H. Tjalsma, A. Boleij, J. R. Marchesi, B. E. Dutilh, A bacterial driver-passenger model for colorectal cancer: beyond the usual suspects. Nat. Rev. Microbiol. 10, 575-582 (2012).
8. J. Galon, W.-H. Fridman, F. Pages, The adaptive immunologic microenvironment in colorectal cancer: a novel perspective. Cancer Res. 67, 1883-1886 (2007).
9. K. Nosho et al., Tumour-infiltrating T-cell subsets, molecular changes in colorectal cancer, and prognosis: cohort study and literature review. J. Pathol. 222, 350-366 (2010).
10. F. Pages et al., Effector memory T cells, early metastasis, and survival in colorectal cancer. N. Engl. J. Med. 353, 2654-2666 (2005).
11. P. Salama et al., Tumor-infiltrating FOXP3+ T regulatory cells show strong prognostic significance in colorectal cancer. J. Clin. Oncol. Off. J. Am. Soc. Clin. Oncol. 27, 186-192 (2009).
12. G. Bindea et al., Spatiotemporal dynamics of intratumoral immune cells reveal the immune landscape in human cancer. Immunity. 39, 782-795 (2013).
13. A. Sistigu et al., Cancer cell-autonomous contribution of type I interferon signaling to the efficacy of chemotherapy. Nat. Med. 20, 1301-1309 (2014).
14. M. Obeid et al., Calreticulin exposure dictates the immunogenicity of cancer cell death. Nat. Med. 13, 54-61 (2007).
15. F. Ghiringhelli et al., Activation of the NLRP3 inflammasome in dendritic cells induces IL-1beta-dependent adaptive immunity against tumors. Nat. Med. 15, 1170-1178 (2009).
16. L. Apetoh et al., Toll-like receptor 4-dependent contribution of the immune system to anticancer chemotherapy and radiotherapy. Nat. Med. 13, 1050-1059 (2007).
17. J. Alexander et al., Histopathological identification of colon cancer with microsatellite instability. Am. J. Pathol. 158, 527-535 (2001).
18. S. Ogino et al., Lymphocytic reaction to colorectal cancer is associated with longer survival, independent of lymph node count, microsatellite instability, and CpG island methylator phenotype. Clin. Cancer Res. Off. J. Am. Assoc. Cancer Res. 15, 6412-6420 (2009).
19. J. Shia et al., Value of histopathology in predicting microsatellite instability in hereditary nonpolyposis colorectal cancer and sporadic colorectal cancer. Am. J. Surg. Pathol. 27, 1407-1417 (2003).
20. D. Tougeron et al., Tumor-infiltrating lymphocytes in colorectal cancers with microsatellite instability are correlated with the number and spectrum of frameshift mutations. Mod. Pathol. Off. J. U. S. Can. Acad. Pathol. Inc. 22, 1186-1195 (2009).
21. D. T. Le et al., PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency. N. Engl. J. Med. 372, 2509-2520 (2015).
22. C. I. Rodriguez et al., High-efficiency deleter mice show that FLPe is an alternative to Cre-loxP. Nat. Genet. 25, 139-140 (2000).
23. B. B. Madison et al., Cis elements of the villin gene control expression in restricted domains of the vertical (crypt) and horizontal (duodenum, cecum) axes of the intestine. J. Biol. Chem. 277, 33275-33283 (2002).
24. T. Sato et al., Single Lgr5 stem cells build crypt-villus structures in vitro without a mesenchymal niche. Nature. 459, 262-265 (2009).
25. J.-C. Lagier et al., Current and past strategies for bacterial culture in clinical microbiology. Clin. Microbiol. Rev. 28, 208-236 (2015).
26. J.-C. Lagier et al., Culture of previously uncultured members of the human gut microbiota by culturomics. Nat. Microbiol. 1, 16203 (2016).
27. P. Seng et al., Ongoing revolution in bacteriology: routine identification of bacteria by matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry. Clin. Infect. Dis. Off. Publ. Infect. Dis. Soc. Am. 49, 543-551 (2009).
28. N. Iida et al., Commensal bacteria control cancer response to therapy by modulating the tumor microenvironment. Science. 342, 967-970 (2013).
29. L. Galluzzi, L. Zitvogel, G. Kroemer, Immunological Mechanisms Underneath the Efficacy of Cancer Therapy. Cancer Immunol. Res. 4, 895-902 (2016).
30. D. Y. Aksoy et al., Diarrhea in neutropenic patients: a prospective cohort study with emphasis on neutropenic enterocolitis. Ann. Oncol. Off. J. Eur. Soc. Med. Oncol. 18, 183-189 (2007).
31. L. Nesher, K. V. I. Rolston, Neutropenic enterocolitis, a growing concern in the era of widespread use of aggressive chemotherapy. Clin. Infect. Dis. Off. Publ. Infect. Dis. Soc. Am. 56, 711-717 (2013).
32. J. Andreyev et al., Guidance on the management of diarrhoea during cancer chemotherapy. Lancet Oncol. 15, e447-460 (2014).
33. J. M. Blander, R. Medzhitov, Toll-dependent selection of microbial antigens for presentation by dendritic cells. Nature. 440, 808-812 (2006).
34. F. A. Sinicrope, DNA mismatch repair and adjuvant chemotherapy in sporadic colon cancer. Nat. Rev. Clin. Oncol. 7, 174-177 (2010).
35. J. M. Park, S. Huang, D. Tougeron, F. A. Sinicrope, MSH3 Mismatch Repair Protein Regulates Sensitivity to Cytotoxic Drugs and a Histone Deacetylase Inhibitor in Human Colon Carcinoma Cells. PLoS ONE. 8 (2013), doi:10.1371/journal.pone.0065369.
36. M. Banasik, P. Sachadyn, Conserved motifs of MutL proteins. Mutat. Res. Mol. Mech. Mutagen. 769, 69-79 (2014).
37. Bankhead P, Loughrey MB, Fernandez JA, Dombrowski Y, McArt DG, Dunne PD, McQuaid S, Gray RT, Murray LJ, Coleman HG, James JA, Salto-Tellez M, Hamilton PW. QuPath: Open source software for digital pathology image analysis. Sci Rep. 2017 Dec 4;7(1):16878
【配列表】