(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20240221BHJP
G09G 3/3225 20160101ALI20240221BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20240221BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240221BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G09G3/20 624B
G09G3/20 611A
G09G3/20 621H
G09G3/20 623B
G09G3/20 623H
G09G3/3225
G09G3/36
H01L29/78 617S
H01L29/78 618B
(21)【出願番号】P 2020556357
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 IB2019059206
(87)【国際公開番号】W WO2020095142
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018211676
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018223687
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019014015
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】豊高 耕平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元晴
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-140496(JP,A)
【文献】特開2017-027012(JP,A)
【文献】特開2012-185328(JP,A)
【文献】特開2009-187024(JP,A)
【文献】特開2018-072822(JP,A)
【文献】特開2004-046054(JP,A)
【文献】特開2007-189699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0188290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0013421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
G09G3/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバ回路と、画素回路と、を有する表示装置であって、
前記ドライバ回路は、シフトレジスタ回路と、アンプ回路と、を有し、
前記画素回路は、前記アンプ回路から出力される第1のデータおよび第2のデータを加算して第3のデータを生成する機能を有し、
前記シフトレジスタ回路は、第1のトランジスタを有し、
前記アンプ回路は、第2のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタにおいて、一方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さがaの領域を有するとき、他方のトランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが0.9a以上1.1a以下の領域を有し、
前記画素回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、発光デバイスと、を有し、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、
前記第1のキャパシタの他方の電極は、前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は前記第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のキャパシタの一方の電極は、前記第6のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第6のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第7のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第7のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記発光デバイスの一方の電極と電気的に接続され、
前記発光デバイスの一方の電極は、前記第2のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、
前記第2のキャパシタの他方の電極は、前記第6のトランジスタのゲートと電気的に接続されている表示装置。
【請求項2】
ドライバ回路と、画素回路と、を有する表示装置であって、
前記ドライバ回路は、シフトレジスタ回路と、アンプ回路と、を有し、
前記画素回路は、前記アンプ回路から出力される第1のデータおよび第2のデータを加算して第3のデータを生成する機能を有し、
前記シフトレジスタ回路は、第1のトランジスタを有し、
前記アンプ回路は、第2のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタおよび前記第2のトランジスタにおいて、一方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さがaの領域を有するとき、他方のトランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが0.9a以上1.1a以下の領域を有し、
前記画素回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、液晶デバイスと、を有し、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、
前記第1のキャパシタの他方の電極は、前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第1のキャパシタの一方の電極は、前記第2のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、
前記第2のキャパシタの一方の電極は、前記液晶デバイスの一方の電極と電気的に接続されている表示装置。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2において、
前記第3のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第4のトランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続されている表示装置。
【請求項4】
請求項1
乃至請求項3のいずれか一項において、
前記画素回路が有するトランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、前記金属酸化物は、Inと、Znと、M(MはAl、Ti、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)と、を有する表示装置。
【請求項5】
請求項1
乃至請求項4のいずれか一項において、
前記ドライバ回路は、さらに、入力インターフェイス回路、シリアルパラレル変換回路、ラッチ回路、レベルシフト回路、PTL、デジタルアナログ変換回路、およびバイアス生成回路の中から選ばれる一つ以上の回路を有し、当該回路が有するトランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが0.9a以上1.1a以下の領域を有する表示装置。
【請求項6】
請求項1
乃至請求項5のいずれか一項に記載の表示装置と、カメラと、を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの動作方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【0003】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一態様である。また、記憶装置、表示装置、撮像装置、電子機器は、半導体装置を有する場合がある。
【背景技術】
【0004】
基板上に形成された金属酸化物を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。例えば、酸化亜鉛またはIn-Ga-Zn系酸化物を用いたトランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0005】
また、オフ電流が極めて低いトランジスタをメモリセルに用いる構成の記憶装置が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【文献】特開2011-119674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表示装置の画素にデータを供給するドライバは、ロジック部およびアンプ部を有し、それぞれの動作が適切となるように設計される。一般的にロジック部は高速かつ消費電力を抑える設計、アンプ部は高耐圧かつ高電圧を出力できる設計となる。そのため、1チップ内に構成の異なるトランジスタ等を配置する必要があり、作製工程が多く、コストアップの一要因となっている。
【0008】
また、ロジック部とアンプ部で電源電圧が異なるため、少なくとも2つ以上の電圧を出力する回路が必要となる。電圧の出力を単一化することができれば、電源回路などを単純化することができ、低コスト化も可能である。また、アンプ部の電源電圧を小さくすることができれば、ドライバ全体の消費電力を削減することができる。
【0009】
また、画素回路においては、データ電圧の振幅が小さくても表示デバイスを適切に動作させることができれば、消費電力の低減が望める。
【0010】
したがって、本発明の一態様では、低消費電力のドライバを備えた表示装置を提供することを目的の一つとする。または、低消費電力のドライバを備え、当該ドライバの出力電圧を画素で昇圧する表示装置を提供することを目的の一つとする。または、ソースドライバの出力電圧以上の電圧を表示デバイスに供給することができる表示装置を提供することを目的の一つとする。または、表示画像の輝度を高めることができる表示装置を提供することを目的の一つとする。
【0011】
または、低消費電力の表示装置を提供することを目的の一つとする。または、信頼性の高い表示装置を提供することを目的の一つとする。または、新規な表示装置などを提供することを目的の一つとする。または、上記表示装置の駆動方法を提供することを目的の一つとする。または、新規な半導体装置などを提供することを目的の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、低消費電力のドライバを備えた表示装置に関する。
【0014】
本発明の一態様は、ドライバ回路と、画素回路と、を有する表示装置であって、ドライバ回路は、シフトレジスタ回路と、アンプ回路と、を有し、画素回路は、アンプ回路から出力される第1のデータおよび第2のデータを加算して第3のデータを生成する機能を有し、シフトレジスタ回路およびアンプ回路には、同一の電源電圧が供給される構成を有する表示装置である。
【0015】
シフトレジスタ回路およびアンプ回路は、同一の電源回路が電気的に接続されている構成とすることができる。
【0016】
ドライバ回路に供給される電源電圧は、3.3V以下とすることができる。
【0017】
ドライバ回路は、さらに、入力インターフェイス回路、シリアルパラレル変換回路、ラッチ回路、レベルシフト回路、PTL(pass transistor logic)、デジタルアナログ変換回路、およびバイアス生成回路の中から選ばれる一つ以上の回路を有し、当該回路はシフトレジスタ回路およびアンプ回路と同一の電源電圧が供給される構成を有していてもよい。
【0018】
本発明の他の一態様は、ドライバ回路と、画素回路と、を有する表示装置であって、ドライバ回路は、シフトレジスタ回路と、アンプ回路と、を有し、画素回路は、アンプ回路から出力される第1のデータおよび第2のデータを加算して第3のデータを生成する機能を有し、シフトレジスタ回路は、第1のトランジスタを有し、アンプ回路は、第2のトランジスタを有し、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタにおいて、一方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さがaの領域を有するとき、他方のトランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが0.9a以上1.1a以下の領域を有する表示装置である。
【0019】
ドライバ回路は、さらに、入力インターフェイス回路、シリアルパラレル変換回路、ラッチ回路、レベルシフト回路、PTL、デジタルアナログ変換回路、およびバイアス生成回路の中から選ばれる一つ以上の回路を有し、当該回路が有するトランジスタは、ゲート絶縁膜の厚さが0.9a以上1.1a以下の領域を有することができる。
【0020】
画素回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第6のトランジスタと、第7のトランジスタと、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、発光デバイスと、を有し、第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、第1のキャパシタの他方の電極は、第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第1のキャパシタの一方の電極は、第6のトランジスタのゲートと電気的に接続され、第6のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第7のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第7のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、発光デバイスの一方の電極と電気的に接続され、発光デバイスの一方の電極は、第2のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、第2のキャパシタの他方の電極は、第7のトランジスタのゲートと電気的に接続された構成とすることができる。
【0021】
または、画素回路は、第3のトランジスタと、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、液晶デバイスと、を有し、第3のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第1のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、第1のキャパシタの他方の電極は、第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第4のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、第5のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、第1のキャパシタの一方の電極は、第2のキャパシタの一方の電極と電気的に接続され、第2のキャパシタの一方の電極は、液晶デバイスの一方の電極と電気的に接続された構成とすることができる。
【0022】
第3のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、第4のトランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に接続されていてもよい。
【0023】
画素回路が有するトランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、金属酸化物は、Inと、Znと、M(MはAl、Ti、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一態様を用いることで、低消費電力のドライバを備えた表示装置を提供することができる。または、低消費電力のドライバを備え、当該ドライバの出力電圧を画素で昇圧する表示装置を提供することができる。または、ソースドライバの出力電圧以上の電圧を表示デバイスに供給することができる表示装置を提供することができる。または、表示画像の輝度を高めることができる表示装置を提供することができる。
【0025】
または、低消費電力の表示装置を提供することができる。または、信頼性の高い表示装置を提供することができる。または、新規な表示装置などを提供することができる。または、上記表示装置の駆動方法を提供することができる。または、新規な半導体装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハッチングを異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
【0028】
また、回路図上では単一の要素として図示されている場合であっても、機能的に不都合がなければ、当該要素が複数で構成されてもよい。例えば、スイッチとして動作するトランジスタは、複数が直列または並列に接続されてもよい場合がある。また、キャパシタ(容量素子ともいう)を分割して複数の位置に配置してもよい場合がある。
【0029】
また、一つの導電体が、配線、電極および端子のような複数の機能を併せ持っている場合があり、本明細書においては、同一の要素に対して複数の呼称を用いる場合がある。また、回路図上で要素間が直接接続されているように図示されている場合であっても、実際には当該要素間が複数の導電体を介して接続されている場合があり、本明細書ではこのような構成でも直接接続の範疇に含める。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である表示装置について、図面を参照して説明する。
【0031】
本発明の一態様は、低消費電力のソースドライバ、およびデータを加算する機能を有する画素を有する表示装置である。ソースドライバは、ロジック部とアンプ部が同一の電源電圧で適切に動作する構成を有する。低消費電力で動作するロジック部の電源電圧を基準とするため、アンプ部が出力できる電圧は小さくなるが、ソースドライバ全体の消費電力を抑えることができる。
【0032】
また、当該画素は、第1のデータを保持する機能を有し、第1のデータに第2のデータを加算して第3のデータを生成し、第3のデータを表示デバイスに供給する機能を有する。したがって、ソースドライバから出力される電圧が小さくても画素で昇圧することができるため、表示デバイスを適切に動作させることができる。
【0033】
つまり、電源電圧の小さいソースドライバと昇圧動作が可能な画素とを組み合わせることにより、極めて消費電力の小さい表示装置を実現することができる。
【0034】
図1は、本発明の一態様の表示装置を説明する図である。表示装置は、画素アレイ11と、ソースドライバ20と、ゲートドライバ30を有する。画素アレイ11は、列方向および行方向に配置された画素10を有する。なお、配線は簡易的に図示しており、詳細は後述する。
【0035】
ソースドライバ20は、ロジック部21、アンプ部22を有する構成とすることができる。ロジック部21およびアンプ部22には、電源回路25が電気的に接続される。電源回路25は一つに限らないが、ロジック部21およびアンプ部22に供給する電圧は同一とすることができる。
【0036】
なお、ソースドライバ20およびゲートドライバ30は、COF(chip on film)法、COG(chip on glass)法、TCP(tape carrier package)法などによりICチップを外付けする方法を用いることができる。または、画素アレイ11と同一の工程を利用して作製されるトランジスタを用いて、画素アレイ11と同一基板上に作り込まれていてもよい。
【0037】
図1ではゲートドライバ30を画素アレイ11の片側に配置した例を示しているが、画素アレイ11を介して対向するように二つ配置し、駆動行を分割してもよい。
【0038】
画素10の具体例として、発光デバイスを有する画素の回路図を
図2に示す。画素10は、トランジスタ101と、トランジスタ102と、トランジスタ103と、トランジスタ104と、トランジスタ105と、キャパシタ106と、キャパシタ107と、発光デバイス108を有する。
【0039】
トランジスタ101のソースまたはドレインの一方は、キャパシタ106の一方の電極と電気的に接続される。キャパシタ106の他方の電極は、トランジスタ102のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ102のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ103のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。キャパシタ106の一方の電極は、トランジスタ104のゲートと電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの一方は、トランジスタ105のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの一方は、発光デバイス108の一方の電極と電気的に接続される。発光デバイス108の一方の電極は、キャパシタ107の一方の電極と電気的に接続される。キャパシタ107の他方の電極は、トランジスタ104のゲートと電気的に接続される。
【0040】
画素10が有する要素と各種配線との接続を説明する。トランジスタ101のゲートは、配線125と電気的に接続される。トランジスタ102のゲートは、配線126と電気的に接続される。トランジスタ103のゲートは、配線125と電気的に接続される。トランジスタ105のゲートは、配線127と電気的に接続される。
【0041】
トランジスタ101のソースまたはドレインの他方は、配線121と電気的に接続される。トランジスタ102のソースまたはドレインの他方は、配線122と電気的に接続される。トランジスタ103のソースまたはドレインの他方は、配線124と電気的に接続される。トランジスタ104のソースまたはドレインの他方は、配線123と電気的に接続される。トランジスタ105のソースまたはドレインの他方は、配線124と電気的に接続される。発光デバイス108の他方の電極は、配線129と電気的に接続される。
【0042】
配線125、126、127は、ゲート線としての機能を有し、ゲートドライバ30と電気的に接続することができる(
図1参照)。配線121、122はソース線としての機能を有し、ソースドライバ20と電気的に接続することができる。
【0043】
配線123、129は、電源線としての機能を有することができる。例えば、配線123には高電位を供給し、配線129には低電位を供給することで、発光デバイス108を順バイアス動作(発光)させることができる。
【0044】
配線124は、基準電位(Vref)が供給される機能を有することができる。例えば、“Vref”としては、0V、GND電位などを用いることができる。または、特定の電位を“Vref”としてもよい。
【0045】
ここで、トランジスタ101のソースまたはドレインの一方と、キャパシタ106の一方の電極と、キャパシタ107の他方の電極と、トランジスタ104のゲートを接続する配線をノードNMとする。トランジスタ102のソースまたはドレインの一方と、キャパシタ106の他方の電極と、トランジスタ103のソースまたはドレインの一方を接続する配線をノードNAとする。
【0046】
トランジスタ101は、ノードNMに配線121の電位を書き込む機能を有することができる。トランジスタ102は、ノードNAに配線122の電位を書き込む機能を有することができる。トランジスタ103は、ノードNAに基準電位(Vref)を供給する機能を有することができる。トランジスタ104は、ノードNMの電位に従って発光デバイス108に流す電流を制御する機能を有することができる。トランジスタ105は、ノードNMへのデータ書き込み時にトランジスタ104のソース電位を固定する機能、および発光デバイス108の動作のタイミングを制御する機能を有することができる。
【0047】
ノードNMは、ノードNAとキャパシタ106を介して接続されている。したがって、ノードNMをフローティング状態としたとき、ノードNAの電位変化分を容量結合で加算することができる。以下にノードNMにおける電位の加算について説明する。
【0048】
画素10では、まず、ノードNMに第1のデータ(重み:“W”)を書き込む。このとき、ノードNAには基準電位“Vref”を供給し、キャパシタ106には“W-Vref”を保持させる。次に、ノードNAをフローティングとし、ノードNAに第2のデータ(データ:“D”)を供給する。
【0049】
このとき、キャパシタ106の容量値をC106、ノードNMの容量値をCNMとすると、ノードNMの電位は、W+(C106/(C106+CNM))×(D-Vref)となる。ここで、C106の値を大きくし、CNMの値を無視できれば、C106/(C106+CNM)は1に近づき、ノードNMの電位を“W+D-Vref”とみなせる。
【0050】
したがって、“W”=“D”、“Vref”=0Vであって、C106がCNMに比べて十分に大きければノードNMの電位は“2D”に近づく。つまり、ソースドライバ20の出力の約2倍の電位となる第3のデータ(“2D”)をノードNMで生成できることになる。
【0051】
なお、“Vref”が“-W”または“-D”であれば、ノードNMの電位を“3D”に近づけることもできる。
【0052】
当該作用により、ソースドライバ20の出力電圧が小さくても画素10で必要な電圧を生成することができ、発光デバイス108を適切に動作させることができる。
【0053】
ノードNM、ノードNAは、保持ノードとして作用する。各ノードに接続するトランジスタを導通させることで、データを各ノードに書き込むことができる。また、当該トランジスタを非導通とすることで、当該データを各ノードに保持することができる。当該トランジスタに極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることでリーク電流を抑えることができ、各ノードの電位を長時間保持することが可能となる。当該トランジスタには、例えば、金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を用いることが好ましい。
【0054】
具体的には、トランジスタ101、102、103のいずれか、または全てにOSトランジスタを適用することが好ましい。または、画素10が有するトランジスタの全てにOSトランジスタを適用してもよい。また、リーク電流量が許容できる範囲で動作を行う場合は、Siをチャネル形成領域に有するトランジスタ(以下、Siトランジスタ)を適用してもよい。または、OSトランジスタおよびSiトランジスタを併用してもよい。なお、上記Siトランジスタとしては、アモルファスシリコンを有するトランジスタ、結晶性のシリコン(微結晶シリコン、低温ポリシリコン、単結晶シリコン)を有するトランジスタなどが挙げられる。
【0055】
OSトランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む酸化物半導体などであり、例えば、後述するCAAC-OSまたはCAC-OSなどを用いることができる。CAAC-OSは結晶を構成する原子が安定であり、信頼性を重視するトランジスタなどに適する。また、CAC-OSは、高移動度特性を示すため、高速駆動を行うトランジスタなどに適する。
【0056】
OSトランジスタは半導体層のエネルギーギャップが大きいため、数yA/μm(チャネル幅1μmあたりの電流値)という極めて低いオフ電流特性を示すことができる。また、OSトランジスタは、インパクトイオン化、アバランシェ降伏、および短チャネル効果などが生じないなどSiトランジスタとは異なる特徴を有し、信頼性の高い回路を形成することができる。また、Siトランジスタでは問題となる結晶性の不均一性に起因する電気特性のばらつきもOSトランジスタでは生じにくい。
【0057】
OSトランジスタが有する半導体層は、例えばインジウム、亜鉛およびM(Mはアルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジムまたはハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。In-M-Zn系酸化物は代表的には、スパッタリング法で形成することができる。または、ALD(Atomic layer deposition)法を用いて形成してもよい。
【0058】
In-M-Zn系酸化物をスパッタリング法で形成するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0059】
半導体層としては、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いる。例えば、半導体層には、キャリア密度が1×1017/cm3以下、好ましくは1×1015/cm3以下、さらに好ましくは1×1013/cm3以下、より好ましくは1×1011/cm3以下、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10-9/cm3以上の酸化物半導体を用いることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。当該酸化物半導体は、欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0060】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性および電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0061】
半導体層を構成する酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0062】
また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため、半導体層におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度(SIMSにより得られる濃度)を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
【0063】
また、半導体層を構成する酸化物半導体に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じてキャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における窒素濃度(SIMSにより得られる濃度)は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0064】
また、半導体層を構成する酸化物半導体に水素が含まれていると、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸化物半導体中に酸素欠損を形成する場合がある。酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0065】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、欠陥をドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価する場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0066】
よって、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0067】
また、半導体層は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、c軸に配向した結晶を有するCAAC-OS(C-Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0068】
非晶質構造の酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0069】
なお、半導体層が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、または積層構造を有する場合がある。
【0070】
以下では、非単結晶の半導体層の一態様であるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0071】
CAC-OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0072】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0073】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OS(CAC-OSの中でもIn-Ga-Zn酸化物を、特にCAC-IGZOと呼称してもよい。)とは、インジウム酸化物(以下、InOX1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、InX2ZnY2OZ2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、ガリウム酸化物(以下、GaOX3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、GaX4ZnY4OZ4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInOX1、またはInX2ZnY2OZ2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0074】
つまり、CAC-OSは、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0075】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO3(ZnO)m1(m1は自然数)、またはIn(1+x0)Ga(1-x0)O3(ZnO)m0(-1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0076】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa-b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0077】
一方、CAC-OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC-OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。したがって、CAC-OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0078】
なお、CAC-OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0079】
なお、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0080】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC-OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0081】
CAC-OSは、例えば基板を意図的に加熱しない条件で、スパッタリング法により形成することができる。また、CAC-OSをスパッタリング法で形成する場合、成膜ガスとして、不活性ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、および窒素ガスの中から選ばれたいずれか一つまたは複数を用いればよい。また、成膜時の成膜ガスの総流量に対する酸素ガスの流量比は低いほど好ましく、例えば酸素ガスの流量比を0%以上30%未満、好ましくは0%以上10%以下とすることが好ましい。
【0082】
CAC-OSは、X線回折(XRD:X-ray diffraction)測定法のひとつであるOut-of-plane法によるθ/2θスキャンを用いて測定したときに、明確なピークが観察されないという特徴を有する。すなわち、X線回折測定から、測定領域のa-b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0083】
また、CAC-OSは、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう。)を照射することで得られる電子線回折パターンにおいて、リング状に輝度の高い領域(リング領域)と、該リング領域に複数の輝点が観測される。したがって、電子線回折パターンから、CAC-OSの結晶構造が、平面方向、および断面方向において、配向性を有さないnc(nano-crystal)構造を有することがわかる。
【0084】
また、例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、GaOX3が主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0085】
CAC-OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC-OSは、GaOX3などが主成分である領域と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0086】
ここで、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域は、GaOX3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。したがって、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0087】
一方、GaOX3などが主成分である領域は、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaOX3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0088】
したがって、CAC-OSを半導体デバイスに用いた場合、GaOX3などに起因する絶縁性と、InX2ZnY2OZ2、またはInOX1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0089】
また、CAC-OSを用いた半導体デバイスは、信頼性が高い。したがって、CAC-OSは、様々な半導体装置の構成材料として適している。
【0090】
なお、
図2に示す画素10の回路構成は一例であり、例えば、
図3Aに示すように、発光デバイス108の一方の電極を配線123と電気的に接続し、発光デバイス108の他方の電極をトランジスタ104のソースまたはドレインの他方と電気的に接続してもよい。
【0091】
または、
図3Bに示すように、トランジスタ104のソースまたはドレインの一方と発光デバイス108の一方の電極との間にトランジスタ109を設けてもよい。トランジスタ109を設けることで、発光のタイミングを任意に制御することができる。また、
図3A、
図3Bに示す構成を組み合わせてもよい。
【0092】
また、
図3Cに示すように、トランジスタ105と接続される配線124には回路40を電気的に接続することができる。回路40は、基準電位(V
ref)の供給源、トランジスタ104の電気特性を取得する機能、および補正データを生成する機能の一つ以上を有することができる。
【0093】
また、
図4に示すように、垂直方向(ソース線(配線121、122)が延在する方向)に隣り合う2画素でゲート線(配線125)を共通とする構成としてもよい。
図4は、n行m列目(n、mは1以上の自然数)に配置される画素10[n,m]、およびn+1行m列目に配置される画素10[n+1,m]を説明する図である。
【0094】
画素10[n,m]のトランジスタ102のゲートは、配線125[n+1]と電気的に接続される。配線125[n+1]には、画素10[n+1,m]のトランジスタ101のゲートおよびトランジスタ103のゲートが電気的に接続される。
【0095】
画素10[n+1,m]のトランジスタ102のゲートは、配線125[n+2]と電気的に接続される。図示はしていないが、配線125[n+2]には、画素10[n+2,m]のトランジスタ101のゲートおよびトランジスタ103のゲートが電気的に接続される。
【0096】
本発明の一態様の画素10では、第1のデータ(重み)の書き込みおよび第2のデータ(データ)の書き込みの2回の書き込み動作がある。重みおよびデータは異なるソース線から供給されるため、垂直方向に隣り合う2画素において、一方の画素のデータ書き込みのタイミングと、他方の画素の重み書き込みのタイミングを重ねることができる。したがって、それらの動作を行うトランジスタのゲートが接続されるゲート線を共通とすることができる。
【0097】
2画素間でゲート線を共通とすることで、1画素につきゲート線を3本から実質2本に減らすことができ、画素の開口率を上げることができる。また、ゲートドライバの動作を簡略化することができる。また、充放電が必要なゲート配線が減るため、消費電力も削減することができる。
【0098】
次に、
図4に示すゲート線を共通化した2画素の動作を
図5に示すタイミングチャートを用いて説明する。以下に行う説明は、画素10の動作によりソースドライバの出力するデータ電位の約2倍のデータ電位を表示デバイスに供給する動作の例である。
【0099】
当該動作説明においては、高電位を“H”、低電位を“L”で表す。また、画素10[n,m]に供給する重みを“W1”、画像データを“D1”、画素10[n+1,m]に供給する重みを“W2”、画像データを“D2”とする。”Vref”としては、例えば0V、GND電位または特定の電位を用いることができる。
【0100】
また、配線123には高電位が常時供給され、配線129には低電位が常時供給され、配線124には基準電位(Vref)が常時供給されていることとする。なお、動作に支障がなければ、これらの電位が供給されていない期間があってもよい。
【0101】
なお、ここでは電位の分配、結合または損失において、回路の構成や動作タイミングなどに起因する詳細な変化は勘案しない。また、キャパシタを用いた容量結合による電位の変化は、当該キャパシタと、接続される要素との容量比に依存するが、説明を明瞭にするため、ノードNMの容量値は十分に小さい値に仮定する。
【0102】
時刻T1から時刻T2にかけて、配線121には“W1”が供給される。
【0103】
時刻T1に配線125[n]の電位を“H”、配線127[n]の電位を“H”とすると、画素[n,m]において、トランジスタ103が導通し、ノードNA[n,m]の電位は“Vref”となる。当該動作は、後の加算動作(容量結合動作)を行うためのリセット動作である。
【0104】
また、トランジスタ101が導通し、ノードNM[n,m]に配線121[m]の電位が書き込まれる。当該動作は、画素10[n,m]における重みの書き込み動作であり、ノードNM[n,m]に電位“W1”が書き込まれる。また、トランジスタ105が導通し、トランジスタ104のソース電位が“Vref”となる。したがって、トランジスタ104が導通状態となっても、発光デバイス108は発光しない。
【0105】
時刻T2から時刻T3にかけて、配線121には“W2”が供給され、配線122には“D1”が供給される。
【0106】
時刻T2に配線125[n]の電位を“L”、配線127[n]の電位を“H”、配線125[n+1]の電位を“H”、配線127[n+1]の電位を“H”とすると、トランジスタ101が非導通となる。この時点では、ノードNM[n,m]には“W1”が保持される。また、キャパシタ106には、“W1-Vref”が保持される。
【0107】
そして、トランジスタ103が非導通、トランジスタ102が導通となり、ノードNA[n,m]の電位は配線122[m]の電位“D1”となる。このとき、キャパシタ106とノードNM[n,m]の容量比に応じた“(D1-Vref)’”がノードNM[n,m]に付加される。当該動作は画素10[n,m]における加算動作であり、ノードNM[n,m]の電位は“W1+(D1-Vref)’”となる。このとき、“Vref”=0であれば、ノードNM[n,m]の電位は、“W1+D1’”となる。
【0108】
このとき、トランジスタ104のソース電位は“Vref”であり、トランジスタ104のソース電位が安定した状態で、ノードNM[n,m]に電位“W1+D1’”を書き込むことができる。
【0109】
また、画素[n+1,m]において、トランジスタ103が導通し、ノードNA[n+1,m]の電位は“Vref”となる。当該動作は、後の加算動作(容量結合動作)を行うためのリセット動作である。
【0110】
また、トランジスタ101が導通し、ノードNM[n+1,m]に配線121[m]の電位が書き込まれる。当該動作は、画素10[n+1,m]における重みの書き込み動作であり、ノードNM[n+1,m]に電位“W2”が書き込まれる。また、トランジスタ105が導通し、トランジスタ104のソース電位が“Vref”となる。したがって、トランジスタ104が導通状態となっても、発光デバイス108は発光しない。
【0111】
時刻T3から時刻T4にかけて、配線122には“D2”が供給される。
【0112】
時刻T3に配線127[n]の電位を“L”、配線125[n+1]の電位を“L”、配線127[n+1]の電位を“H”、配線125[n+2]の電位を“H”とすると、画素10[n,m]において、トランジスタ105が非導通となり、ノードNM[n,m]の電位に応じてトランジスタ104から発光デバイス108に電流が流れ、発光デバイス108が発光する。
【0113】
また、画素10[n+1,m]において、トランジスタ103が非導通、トランジスタ102が導通となり、ノードNA[n+1,m]の電位は配線122[m]の電位“D2”となる。このとき、キャパシタ106とノードNM[n+1,m]の容量比に応じた“(D2-Vref)’”がノードNM[n+1,m]に付加される。当該動作は画素10[n+1,m]における加算動作であり、ノードNM[n+1,m]の電位は“W2+(D2-Vref)’”となる。このとき、“Vref”=0であれば、ノードNM[n+1,m]の電位は、“W2+D2’”となる。
【0114】
このとき、トランジスタ104のソース電位は“Vref”であり、トランジスタ104のソース電位が安定した状態で、ノードNM[n+1,m]に電位“W1+D2’”を書き込むことができる。
【0115】
時刻T4に配線127[n+1]の電位を“L”、配線125[n+2]の電位を“L”とすると、画素10[n+1,m]において、トランジスタ105が非導通となり、ノードNM[n+1,m]の電位に応じてトランジスタ104から発光デバイス108に電流が流れ、発光デバイス108が発光する。
【0116】
上記動作において、W1=D1またはW2=D2であって、ノードNMの容量がキャパシタ106の容量よりも十分に小さい場合は、“W1+D1’”は“2D1”に近い値、“W2+D2’”は“2D2”に近い値となる。したがって、ソースドライバの出力するデータ電位の約2倍のデータ電位を表示デバイスに供給することができる。
【0117】
ここまで、画素10には発光デバイスを用いる例を説明したが、液晶デバイスを用いてもよい。
図6Aは、表示デバイスに液晶デバイスを用いた画素10の回路図である。液晶デバイス110の一方の電極はノードNMと電気的に接続され、液晶デバイス110の他方の電極は配線130と電気的に接続される。また、キャパシタ107の他方の電極は配線131と電気的に接続される。
【0118】
なお、配線130および配線131は、電気的に接続されていてもよい。配線130、131は電源を供給する機能を有する。例えば、配線130、131は、GNDや0Vなどの基準電位や任意の電位を供給することができる。
【0119】
トランジスタ103のソースまたはドレインの他方と接続される“V
ref”を供給するための配線には、
図6Bに示すように配線131を用いることができる。または、配線130を用いてもよい。
【0120】
また、
図6Cに示すようにキャパシタ107を省いた構成としてもよい。前述したように、ノードNMと接続するトランジスタにOSトランジスタを用いることができる。OSトランジスタはリーク電流が極めて小さいため、保持容量として機能するキャパシタ107を省いても表示を比較的長時間維持することができる。また、トランジスタの構成に限らず、フィールドシーケンシャル駆動のように、高速動作で表示期間を短くできる場合にもキャパシタ107を省くことは有効である。キャパシタ107を省くことで開口率を向上させることができる。または、画素の透過率を向上させることができる。
【0121】
また、液晶デバイスを用いた場合でも、
図4と同様に垂直方向の2画素でゲート線を共通とすることができる。
図7に示すように、液晶デバイスを用いた場合は、2画素間でゲート線を共通とすることで、1画素につきゲート線を2本から実質1本に減らすことができる。ノードNMで電位を加算する動作の説明は、発光デバイスを用いた場合の動作を参照することができる。
【0122】
また、本発明の一態様の画素10においては、
図8に示すように、トランジスタにバックゲートを設けた構成としてもよい。
図8では、バックゲートがフロントゲートと電気的に接続された構成を示しており、オン電流を高める効果を有する。または、バックゲートが定電位を供給できる配線と電気的に接続された構成であってもよい。当該構成では、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。
【0123】
また、本発明の一態様の画素10においては、
図9に示すように、ソース線を1本とする構成としてもよい。画素10では、重みとデータを異なるタイミングで書き込むため、それらを供給するソース線を共通とすることができる。
【0124】
図10A、
図10B、
図10Cは、表示デバイスに発光デバイスを用いたときの画素10のレイアウト図の一例である。
図10Aは、トランジスタおよび容量素子の配置および構成を説明する図であり、ゲート配線、半導体層(金属酸化物層)、ソース-ドレイン配線までの積層を示している。
【0125】
トランジスタ101乃至105はトップゲート型のセルフアライン構造で、バックゲートを有する。当該バックゲートは、ゲート配線としても機能する。キャパシタ106、107はゲート配線と同一の工程で形成される導電層、バックゲートのゲート絶縁膜と同一工程で形成される絶縁層、トランジスタの半導体層(金属酸化物層)と同一工程で形成される導電層(導電性金属酸化物層)で構成される。
【0126】
当該導電性金属酸化物層は、トランジスタのソース領域およびドレイン領域と同様に、金属酸化物層に不純物などを導入することでキャリア濃度を高めて形成することができる。なお、キャパシタの一方の電極として作用する導電性金属酸化物層は、抵抗値にばらつきが生じやすく、金属層ほど抵抗が低くないため、重ねて形成するソース-ドレイン配線と同一の工程で形成される導電層と導通させて配線の機能を補助することが好ましい。
【0127】
図10Bは、
図10Aの積層上に配線層(ソース配線および電源線)を設けた構成を示している。
図10Cは、
図10Bの積層上に画素電極111を設けた構成を示している。発光デバイスは、画素電極111を一方の電極とし、対向するコモン電極との間に設けられる発光層などで構成することができる。
【0128】
次に、本発明の一態様のソースドライバ20について説明する。
図11Aは、従来のソースドライバを説明するブロック図であり、
図11B、
図11Cは、トランジスタのチャネル長方向の断面を説明する図である。ソースドライバは、ロジック部およびアンプ部を有する。ロジック部21には、回路21_1乃至21_n(nは2以上の自然数)が設けられる。アンプ部22には、回路22_1乃至22_m(mは2以上の自然数)が設けられる。なお、ソースドライバにはそれ以外の回路を設けることもできる。
【0129】
回路21_1乃至21_nとしては、例えば、入力インターフェイス回路、シリアルパラレル変換回路、シフトレジスタ回路、ラッチ回路などを設けることができる。
【0130】
回路22_1乃至22_mとしては、例えば、レベルシフト回路、PTL、アンプ回路などを設けることができる。
【0131】
ロジック部21には、シフトレジスタ回路などの高速動作が必要な回路が含まれる。そのため、
図11Bに示すように、ロジック部21を構成するトランジスタ151のゲート絶縁膜の厚さ(t
GI)は、比較的薄い膜厚aで構成される。また、Pelgrom Plotで示されるように、ゲート絶縁膜が比較的薄いトランジスタでは動作のばらつきが少ないため、トランジスタのチャネル長(L)は比較的短い、長さcにすることができる。したがって、低電圧動作が可能で、ロジック部21の消費電力は比較的小さい。
【0132】
一方、アンプ部22には、アンプ回路などの比較的高い電圧を出力する回路が含まれる。高い電圧を出力するには、ゲート電圧を高める必要がある。そのため、
図11Cに示すように、アンプ部22を構成するトランジスタ152のゲート絶縁膜の厚さ(t
GI)は、比較的厚い膜厚b(a<b)で構成し、耐圧を高める必要がある。また、Pelgrom Plotで示されるように、ゲート絶縁膜が比較的厚いトランジスタでは動作のばらつきが大きいため、トランジスタのチャネル長(L)は比較的長い、長さd(c<d)とし、出力のばらつきを低減させる必要がある。
【0133】
以上の説明の通り、ロジック部21とアンプ部22では、トランジスタの構成が異なる。特にゲート絶縁膜の厚さが異なるトランジスタが1チップ中(または同一基板上)に混在すると作製工程が増加し、コストアップの要因となる。
【0134】
また、ロジック部とアンプ部では電源電圧が異なる。したがって、
図11Aに示すように、例えば、ロジック部21には低電圧を出力する電源回路25aが接続され、アンプ部22には高電圧を出力する電源回路25bが接続される。このように複数の電圧を出力する回路構成は、コストアップの一要因となる。
【0135】
なお、
図11B、
図11Cでは、シリコン基板に形成したフィン型トランジスタを例示したが、プレーナー型またはSOI型であってもよい。または、絶縁基板上に設けられ、チャネル形成領域に単結晶シリコンまたは多結晶シリコンを有するトランジスタであってもよい。または、絶縁基板上に設けられ、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタであってもよい。いずれのトランジスタであっても上述の課題を有する。
【0136】
図12Aは、本発明の一態様のソースドライバ20を説明するブロック図であり、
図12B、
図12Cは、トランジスタのチャネル長方向の断面を説明する図である。ソースドライバ20内に設ける回路の種類は、
図11Aに示した従来のソースドライバと同様にロジック部21、アンプ部22およびその他の回路を有することができる。
【0137】
本発明の一態様のソースドライバ20は、少なくともアンプ部22にも低電圧を出力する電源回路25aを接続する点が従来のソースドライバと異なる。ソースドライバ20が有する回路全てに電源回路25aを接続してもよい。または、ソースドライバ20が有する回路全てが同一の低電圧で動作できる構成としてもよい。
【0138】
図12B、
図12Cに示すように、アンプ部22に用いるトランジスタもロジック部21と同じように、ゲート絶縁膜が薄く、チャネル長の短いトランジスタを用いることができる。したがって、アンプ部22の消費電力を低減させることができる。
【0139】
また、同様のトランジスタは、ソースドライバ20が有するデジタルアナログ変換回路およびバイアス生成回路などにも用いることができる。したがって、ソースドライバ20全体の消費電力を極めて小さくすることができる。
【0140】
また、ロジック部21およびアンプ部22が有するトランジスタに同じ厚さのゲート絶縁膜を用いることができるため、製造工程を大幅に削減することができ、製造コストを削減することができる。
【0141】
また、従来のソースドライバでは必要であったアンプ部22用の電源回路25bを設ける必要がなくなることから、前述したコストアップの要因を排除することができる。なお、ソースドライバ20と接続される電源回路25aは複数であってもよい。
【0142】
上述したロジック部21が有するトランジスタおよびアンプ部22が有するトランジスタに同じ厚さのゲート絶縁膜を用いることは、製造工程における大きな利点である。ここで、同じ厚さとは、作り分けをしない結果の厚さを示すものである。
【0143】
ソースドライバ20が有するトランジスタの設計ルールが数nm乃至数百nmのとき、ゲート絶縁膜の厚さは、例えば、数nm乃至数十nmである。または1nm以下の場合もある。このような膜厚のレベルでは、ゲート絶縁膜が設けられる下地の凹凸の影響を受け、同一工程で作製しても一定のばらつきが生じる。それらは、断面TEM観察などで確認することができる。
【0144】
上記を考慮し、ソースドライバ20において、ロジック部またはアンプ部の一方が有するトランジスタのゲート絶縁膜の厚さがaの領域を有し、他方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、0.8a以上1.2a以下の領域を有する場合、本発明の一態様のようにゲート絶縁膜の作り分けはしていないと見なすことができる。より安定した工程を用いれば、一方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さがaの領域を有し、他方のトランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、0.9a以上1.1a以下の領域を有するように作製することもできる。
【0145】
以上が本発明の一態様のソースドライバ20の説明である。ソースドライバ20が有するロジック部およびアンプ部は、例えば、3.3V以下で動作させることができる。このように、当該ソースドライバ20は、低消費電力動作が可能であるが、その出力電圧は小さいため、通常の画素では適切に表示デバイスを動作させることが困難である。当該ソースドライバ20と、先に説明した画素10を組み合わせることで、極めて消費電力の小さい表示装置を実現することができる。
【0146】
また、画素数が4K2K、8K4Kまたはそれ以上の高精細の表示装置であって、表示部が大型であるほど消費電力を低減する効果は大きくなる。画素数が多いほど1フレーム期間における書き込み回数が多く、表示部のサイズが大きいほどソース線の充放電に費やす電力が高いため、低電圧動作の効果が顕著に現れる。
【0147】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0148】
(実施の形態2)
本実施の形態では、液晶デバイスを用いた表示装置の構成例と、発光デバイスを用いた表示装置の構成例について説明する。なお、本実施の形態においては、実施の形態1で説明した表示装置の要素、動作および機能の説明は省略する。
【0149】
本実施の形態で説明する表示装置には、実施の形態1で説明した画素を用いることができる。なお、以下に説明する走査線駆動回路はゲートドライバ、信号線駆動回路はソースドライバに相当する。信号線駆動回路には、実施の形態1で説明したソースドライバを用いることができる。
【0150】
図13A乃至
図13Cは、本発明の一態様を用いることができる表示装置の構成を示す図である。
【0151】
図13Aにおいて、第1の基板4001上に設けられた表示部215を囲むようにして、シール材4005が設けられ、表示部215がシール材4005および第2の基板4006によって封止されている。
【0152】
図13Aでは、走査線駆動回路221a、信号線駆動回路231a、信号線駆動回路232a、および共通線駆動回路241aは、それぞれがプリント基板4041上に設けられた集積回路4042を複数有する。集積回路4042は、単結晶半導体または多結晶半導体で形成されている。共通線駆動回路241aは、実施の形態1に示した配線123、124、129、130、131などに規定の電位を供給する機能を有する。
【0153】
走査線駆動回路221a、共通線駆動回路241a、信号線駆動回路231a、および信号線駆動回路232aに与えられる各種信号および電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018を介して供給される。
【0154】
走査線駆動回路221aおよび共通線駆動回路241aが有する集積回路4042は、表示部215に選択信号を供給する機能を有する。信号線駆動回路231aおよび信号線駆動回路232aが有する集積回路4042は、表示部215に画像データを供給する機能を有する。集積回路4042は、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に実装されている。
【0155】
なお、集積回路4042の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング法、COF法、COG法、TCP法などを用いることができる。
【0156】
図13Bは、信号線駆動回路231aおよび信号線駆動回路232aに含まれる集積回路4042をCOG法により実装する例を示している。また、駆動回路の一部または全体を表示部215と同じ基板上に一体形成して、システムオンパネルを形成することができる。
【0157】
図13Bでは、走査線駆動回路221aおよび共通線駆動回路241aを、表示部215と同じ基板上に形成する例を示している。駆動回路を表示部215内の画素回路と同時に形成することで、部品点数を削減することができる。よって、生産性を高めることができる。
【0158】
また、
図13Bでは、第1の基板4001上に設けられた表示部215と、走査線駆動回路221aおよび共通線駆動回路241aと、を囲むようにして、シール材4005が設けられている。また表示部215、走査線駆動回路221a、および共通線駆動回路241aの上に第2の基板4006が設けられている。よって、表示部215、走査線駆動回路221a、および共通線駆動回路241aは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示デバイスと共に封止されている。
【0159】
また、
図13Bでは、信号線駆動回路231aおよび信号線駆動回路232aを別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部を別途形成して実装してもよい。また、
図13Cに示すように、信号線駆動回路231aおよび信号線駆動回路232aを表示部215と同じ基板上に形成してもよい。
【0160】
また、表示装置は、表示デバイスが封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む場合がある。
【0161】
また、第1の基板上に設けられた表示部および走査線駆動回路は、トランジスタを複数有している。当該トランジスタとして、実施の形態1で示したSiトランジスタまたはOSトランジスタを適用することができる。
【0162】
周辺駆動回路が有するトランジスタと、表示部の画素回路が有するトランジスタの構造は同じであってもよく、異なっていてもよい。周辺駆動回路が有するトランジスタは、全て同じ構造のトランジスタであってもよく、2種類以上の構造のトランジスタを有していてもよい。同様に、画素回路が有するトランジスタは、全て同じ構造のトランジスタであってもよく、2種類以上の構造のトランジスタを有していてもよい。
【0163】
また、第2の基板4006上には入力装置4200を設けることができる。
図13A乃至
図13Cに示す表示装置に入力装置4200を設けた構成はタッチパネルとして機能させることができる。
【0164】
本発明の一態様のタッチパネルが有する検知デバイス(センサ素子ともいう)に限定は無い。指やスタイラスなどの被検知体の近接または接触を検知することのできる様々なセンサを、検知デバイスとして適用することができる。
【0165】
センサの方式としては、例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。
【0166】
本実施の形態では、静電容量方式の検知デバイスを有するタッチパネルを例に挙げて説明する。
【0167】
静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式等がある。また、投影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用いると、同時多点検知が可能となるため好ましい。
【0168】
本発明の一態様のタッチパネルは、別々に作製された表示装置と検知デバイスとを貼り合わせる構成、表示デバイスを支持する基板および対向基板の一方または双方に検知デバイスを構成する電極等を設ける構成等、様々な構成を適用することができる。
【0169】
図14A、
図14Bに、タッチパネルの一例を示す。
図14Aは、タッチパネル4210の斜視図である。
図14Bは、入力装置4200の斜視概略図である。なお、明瞭化のため、代表的な構成要素のみを示している。
【0170】
タッチパネル4210は、別々に作製された表示装置と検知デバイスとを貼り合わせた構成である。
【0171】
タッチパネル4210は、入力装置4200と、表示装置とを有し、これらが重ねて設けられている。
【0172】
入力装置4200は、基板4263、電極4227、電極4228、配線4237、配線4238および配線4239を有する。例えば、電極4227は配線4237または配線4239と電気的に接続することができる。また、電極4228は配線4238と電気的に接続することができる。FPC4272bは、配線4237、配線4238および配線4239の各々と電気的に接続する。FPC4272bにはIC4273bを設けることができる。
【0173】
または、表示装置の第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設けてもよい。第1の基板4001と第2の基板4006との間にタッチセンサを設ける場合は、静電容量方式のタッチセンサのほか、光電変換素子を用いた光学式のタッチセンサを適用してもよい。
【0174】
図15A、
図15Bは、
図13B中でN1-N2の鎖線で示した部位の断面図である。
図15A、
図15Bに示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC4018が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。また、
図15A、
図15Bでは、電極4015は、絶縁層4112、絶縁層4111、および絶縁層4110に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。
【0175】
電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電層から形成され、配線4014は、トランジスタ4010、およびトランジスタ4011のソース電極およびドレイン電極と同じ導電層で形成されている。
【0176】
また、第1の基板4001上に設けられた表示部215と走査線駆動回路221aは、トランジスタを複数有しており、
図15A、
図15Bでは、表示部215に含まれるトランジスタ4010、および走査線駆動回路221aに含まれるトランジスタ4011を例示している。なお、
図15A、
図15Bでは、トランジスタ4010およびトランジスタ4011としてボトムゲート型のトランジスタを例示しているが、トップゲート型のトランジスタであってもよい。
【0177】
図15A、
図15Bでは、トランジスタ4010およびトランジスタ4011上に絶縁層4112が設けられている。また、
図15Bでは、絶縁層4112上に隔壁4510が形成されている。
【0178】
また、トランジスタ4010およびトランジスタ4011は、絶縁層4102上に設けられている。また、トランジスタ4010およびトランジスタ4011は、絶縁層4111上に形成された電極4017を有する。電極4017はバックゲート電極として機能することができる。
【0179】
また、
図15A、
図15Bに示す表示装置は、キャパシタ4020を有する。キャパシタ4020は、トランジスタ4010のゲート電極と同じ工程で形成された電極4021と、絶縁層4103と、ソース電極およびドレイン電極と同じ工程で形成された電極と、を有する例を示している。キャパシタ4020の構成はこれに限定されず、その他の導電層および絶縁層で形成されていてもよい。
【0180】
一般に、表示装置の画素部に設けられるキャパシタの容量値は、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。キャパシタの容量値は、当該キャパシタと電気的に接続されるトランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
【0181】
表示部215に設けられたトランジスタ4010は表示デバイスと電気的に接続する。
図15Aは、表示デバイスとして液晶デバイスを用いた液晶表示装置の一例である。
図15Aにおいて、表示デバイスである液晶デバイス4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、および液晶層4008を含む。なお、配向膜として機能する絶縁層4032、絶縁層4033が液晶層4008を挟持するように設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031は液晶層4008を介して重畳する。
【0182】
液晶デバイス4013として、様々なモードが適用された液晶デバイスを用いることができる。例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、VA-IPSモード、ゲストホストモード等が適用された液晶デバイスを用いることができる。
【0183】
また、本実施の形態に示す液晶表示装置にノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置を適用してもよい。垂直配向モードとしては、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0184】
なお、液晶デバイスは、液晶の光学変調作用によって光の透過または非透過を制御する素子である。液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。液晶デバイスに用いる液晶としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0185】
図15Aでは、縦電界方式の液晶デバイスを有する液晶表示装置の例を示したが、本発明の一態様には、横電界方式の液晶デバイスを有する液晶表示装置を適用することができる。横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層4008に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性を示す。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良または破損を軽減することができる。
【0186】
また、スペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極層4030と第2の電極層4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0187】
また、必要に応じて、ブラックマトリクス(遮光層)、着色層(カラーフィルタ)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板および位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。また、上記バックライトおよびサイドライトとして、マイクロLEDなどを用いてもよい。
【0188】
図15Aに示す表示装置では、第2の基板4006と第2の電極層4031の間に、遮光層4132、着色層4131、絶縁層4133が設けられている。
【0189】
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層に用いる材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0190】
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。遮光層および着色層は、例えば、インクジェット法などを用いて形成することができる。
【0191】
また、
図15A、
図15Bに示す表示装置は、絶縁層4111と絶縁層4104を有する。絶縁層4111および絶縁層4104として、不純物元素を透過しにくい絶縁層を用いる。絶縁層4111と絶縁層4104でトランジスタの半導体層を挟むことで、外部からの不純物の浸入を防ぐことができる。
【0192】
また、表示装置に含まれる表示デバイスとして発光デバイスを用いることができる。発光デバイスとしては、例えば、エレクトロルミネッセンスを利用するELデバイスを適用することができる。ELデバイスは、一対の電極の間に発光性の化合物を含む層(「EL層」ともいう。)を有する。一対の電極間に、ELデバイスのしきい値電圧よりも大きい電位差を生じさせると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光性の化合物が発光する。
【0193】
ELデバイスとしては、例えば、有機ELデバイスまたは無機ELデバイスを用いることができる。なお、発光材料に化合物半導体を用いるLED(マイクロLEDを含む)を用いることもできる。
【0194】
有機ELデバイスは、電圧を印加することにより、一方の電極から電子、他方の電極から正孔がそれぞれEL層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に当該有機化合物は発光する。このようなメカニズムから、このような発光デバイスは、電流励起型の発光デバイスと呼ばれる。
【0195】
なお、EL層は、発光性の化合物以外に、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)などを有していてもよい。
【0196】
EL層は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法などの方法で形成することができる。
【0197】
無機ELデバイスは、その素子構成により、分散型無機ELデバイスと薄膜型無機ELデバイスとに分類される。分散型無機ELデバイスは、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機ELデバイスは、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光デバイスとして有機ELデバイスを用いて説明する。
【0198】
発光デバイスは発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタおよび発光デバイスを形成し、当該基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出(トップエミッション)構造や、基板側の面から発光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)構造や、両面から発光を取り出す両面射出(デュアルエミッション)構造の発光デバイスがあり、どの射出構造の発光デバイスも適用することができる。
【0199】
図15Bは、表示デバイスとして発光デバイスを用いた発光表示装置(「EL表示装置」ともいう。)の一例である。表示デバイスである発光デバイス4513は、表示部215に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光デバイス4513の構成は、第1の電極層4030、発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、この構成に限定されない。発光デバイス4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光デバイス4513の構成は適宜変えることができる。
【0200】
隔壁4510は、有機絶縁材料、または無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0201】
発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0202】
発光デバイス4513の発光色は、発光層4511を構成する材料によって、白、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、または黄などとすることができる。
【0203】
カラー表示を実現する方法としては、発光色が白色の発光デバイス4513と着色層を組み合わせて行う方法と、画素毎に発光色の異なる発光デバイス4513を設ける方法がある。前者の方法は後者の方法よりも生産性が高い。一方、後者の方法では、前者の方法よりも色純度の高い発光色を得ることができる。後者の方法に加えて、発光デバイス4513にマイクロキャビティ構造を付与することにより色純度をさらに高めることができる。
【0204】
なお、発光層4511は、量子ドットなどの無機化合物を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0205】
発光デバイス4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031および隔壁4510上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC(Diamond Like Carbon)などを形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、およびシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように、外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0206】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル系樹脂、ポリイミド、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、充填材4514に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0207】
シール材4005には、ガラスフリットなどのガラス材料や、二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、シール材4005に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0208】
また、必要であれば、発光デバイスの射出面に偏光板、または円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0209】
また、発光デバイスをマイクロキャビティ構造とすることで、色純度の高い光を取り出すことができる。また、マイクロキャビティ構造とカラーフィルタを組み合わせることで、映り込みが低減し、表示画像の視認性を高めることができる。
【0210】
表示デバイスに電圧を印加する第1の電極層および第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、および電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0211】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0212】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、またはその合金、もしくはその金属窒化物から一種以上を用いて形成することができる。
【0213】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、または、アニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0214】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0215】
なお、
図16に示すように、トランジスタやキャパシタが高さ方向に重なる領域を有するようなスタック構造としてもよい。例えば、駆動回路を構成するトランジスタ4011およびトランジスタ4022を重ねて配置すれば、狭額縁の表示装置とすることができる。また、画素回路を構成するトランジスタ4010、トランジスタ4023、キャパシタ4020などが一部でも重なる領域を有するように配置すれば開口率や解像度を向上させることができる。なお、
図16では
図15Aに示す液晶表示装置にスタック構造を応用した例を示しているが、
図15Bに示すEL表示装置に応用してもよい。
【0216】
また、画素回路において、電極や配線に可視光に対して透光性の高い導電膜を用いることで、画素内の光の透過率を高めることができ、実質的に開口率を向上させることができる。なお、OSトランジスタを用いる場合は半導体層も透光性を有するため、さらに開口率を高めることができる。これらは、トランジスタ等をスタック構造としない場合においても有効である。
【0217】
また、液晶表示装置と発光装置を組み合わせて表示装置を構成してもよい。
【0218】
発光装置は表示面の逆側、または表示面の端部に配置される。発光装置は表示デバイスに光を供給する機能を有する。発光装置は、バックライトとも呼ぶことができる。
【0219】
ここで、発光装置は、板状またはシート状の導光部(導光板ともいう)と、異なる色の光を呈する複数の発光デバイスを有することができる。当該発光デバイスを導光部の側面近傍に配置すると、導光部側面から内部へ光を発することができる。導光部は光路を変更する機構(光取り出し機構ともいう)を有しており、これにより、発光装置は表示パネルの画素部に光を均一に照射することができる。または、導光部を設けず、画素の直下に発光装置を配置する構成としてもよい。
【0220】
発光装置は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の発光デバイスを有することが好ましい。さらに白色(W)の発光デバイスを有していてもよい。これら発光デバイスとして発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いることが好ましい。
【0221】
さらに、発光デバイスは、その発光スペクトルの半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)が、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である、極めて色純度の高い発光デバイスであることが好ましい。なお、発光スペクトルの半値全幅は、小さければ小さいほどよいが、例えば1nm以上とすることができる。これにより、カラー表示を行う際に、色再現性が高い鮮やかな表示を行うことができる。
【0222】
また、赤色の発光デバイスは、発光スペクトルのピーク波長が、625nm以上650nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。また、緑色の発光デバイスは、発光スペクトルのピーク波長が、515nm以上540nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。青色の発光デバイスは、発光スペクトルのピーク波長が、445nm以上470nm以下の範囲内に位置する素子を用いることが好ましい。
【0223】
表示装置は、3色の発光デバイスを順次点滅させるとともに、これと同期させて画素を駆動し、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行うことができる。当該駆動方法は、フィールドシーケンシャル駆動とも呼ぶことができる。
【0224】
フィールドシーケンシャル駆動では、鮮やかなカラー画像を表示することができる。また、滑らかな動画像を表示することができる。また上記駆動方法を用いることで、1つの画素を複数の異なる色の副画素で構成する必要がなく、1つの画素の有効反射面積(有効表示面積、開口率ともいう)を大きくできるため、明るい表示を行うことができる。さらに、画素にカラーフィルタを設ける必要がないため、画素の透過率を向上させることもでき、さらに明るい表示を行うことができる。また、作製工程を簡略化でき、作製コストを低減することができる。
【0225】
図17A、
図17Bは、フィールドシーケンシャル駆動が可能な表示装置の断面概略図の一例である。当該表示装置の第1の基板4001側にはRGB各色の発光が可能なバックライトユニットが設けられる。なお、フィールドシーケンシャル駆動では、RGB各色の時分割発光で色を表現するため、カラーフィルタは不要となる。
【0226】
図17Aに示すバックライトユニット4340aは、画素の直下に拡散板4352を介して発光デバイス4342が複数設けられた構成である。拡散板4352は、発光デバイス4342から第1の基板4001側に射出された光を拡散し、表示部面内の輝度を均一化する機能を有する。発光デバイス4342と拡散板4352との間には、必要に応じて偏光板を設けてもよい。また、拡散板4352は不要であれば設けなくてもよい。また、遮光層4132を省いた構成としてもよい。
【0227】
バックライトユニット4340aは、発光デバイス4342を多く搭載することができるため、明るい表示が可能となる。また、導光板は不要であり、発光デバイス4342の光の効率を損ないにくい利点がある。なお、必要に応じて発光デバイス4342に光拡散用のレンズ4344を設けてもよい。
【0228】
図17Bに示すバックライトユニット4340bは、画素の直下に拡散板4352を介して導光板4341が設けられた構成である。導光板4341の端部には発光デバイス4342が複数設けられる。導光板4341は、拡散板4352とは逆側に凹凸形状を有し、導波した光を当該凹凸形状で散乱して拡散板4352の方向に射出することができる。
【0229】
発光デバイス4342は、プリント基板4347に固定することができる。なお、
図17Bでは、RGB各色の発光デバイス4342が重なるように図示しているが、奥行方向にRGB各色の発光デバイス4342が並ぶように配置することもできる。また、導光板4341において、発光デバイス4342とは反対側の側面には、可視光を反射する反射層4348を設けてもよい。
【0230】
バックライトユニット4340bは、発光デバイス4342を少なくすることができるため、低コストかつ薄型とすることができる。
【0231】
また、液晶デバイスには、光散乱型液晶デバイスを用いてもよい。光散乱型液晶デバイスとしては、液晶と高分子の複合材料を有する素子を用いることが好ましい。例えば、高分子分散型液晶デバイスを用いることができる。または、高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal))素子を用いてもよい。
【0232】
光散乱型液晶デバイスは、一対の電極で挟まれる樹脂部の3次元ネットワーク構造中に液晶部が設けられた構造である。液晶部に用いる材料としては、例えばネマティック液晶を用いることができる。また、樹脂部としては光硬化樹脂を用いることができる。光硬化樹脂は、例えば、アクリレート、メタクリレートなどの単官能モノマー、ジアクリレート、トリアクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレートなどの多官能モノマー、または、これらを混合させた重合性化合物を用いることができる。
【0233】
光散乱型液晶デバイスは液晶材料の屈折率の異方性を利用し、光を透過または散乱させることにより表示を行う。また、樹脂部も屈折率の異方性を有していてもよい。光散乱型液晶デバイスに印加される電圧に従って液晶分子が一定方向に配列するとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差が小さくなる方向が発生し、当該方向に沿って入射する光は液晶部で散乱されることなく透過する。したがって、光散乱型液晶デバイスは当該方向からは透明な状態に視認される。一方で、印加される電圧に従って液晶分子の配列がランダムとなるとき、液晶部と樹脂部の屈折率の差に大きな変化が生じないため、入射する光は液晶部で散乱される。したがって、光散乱型液晶デバイスは視認の方向を問わず不透明の状態となる。
【0234】
図18Aは、
図17Aの表示装置の液晶デバイス4013を光散乱型液晶デバイス4016に置き換えた構成である。光散乱型液晶デバイス4016は、液晶部および樹脂部を有する複合層4009、第1の電極層4030、ならびに第2の電極層4031を有する。フィールドシーケンシャル駆動に関する要素は、
図17Aと同じであるが、光散乱型液晶デバイス4016を用いる場合は、配向膜および偏光板が不要となる。なお、スペーサ4035は球状の形態で図示しているが、柱状であってもよい。
【0235】
図18Bは、
図17Bの表示装置の液晶デバイス4013を光散乱型液晶デバイス4016に置き換えた構成である。
図18Bの構成では、光散乱型液晶デバイス4016に電圧を印加しないときに光を透過し、電圧を印加したときに光を散乱させるモードで動作する構成とすることが好ましい。当該構成とすることで、ノーマル状態(表示をさせない状態)で透明な表示装置とすることができる。この場合は、光を散乱させる動作を行ったときにカラー表示を行うことができる。
【0236】
【0237】
図19Aは、第1の基板4001が導光板としての機能を有する構成である。第1の基板4001の外側の面には、凹凸形状を設けてもよい。当該構成では、導光板を別途設ける必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。また、当該導光板による光の減衰もなくなるため、発光デバイス4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0238】
図19Bは、複合層4009の端部近傍から光を入射する構成である。複合層4009と第2の基板4006との界面、および複合層4009と第1の基板4001との界面での全反射を利用し、光散乱型液晶デバイスから外部に光を射出することができる。複合層4009の樹脂部には、第1の基板4001および第2の基板4006よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0239】
なお、発光デバイス4342は表示装置の一辺に設けるだけでなく、
図19Cに示すように対向する二辺に設けてもよい。さらに、三辺または四辺に設けてもよい。発光デバイス4342を複数の辺に設けることで、光の減衰を補うことができ、大面積の表示デバイスにも対応することができる。
【0240】
図19Dは、発光デバイス4342から射出される光がミラー4345を介して表示装置に導光される構成である。当該構成により表示装置に一定の角度からの導光を行いやすくなるため、効率良く全反射光を得ることができる。
【0241】
図19Eは、複合層4009上に層4003および層4004の積層を有する構成である。層4003および層4004の一方はガラス基板などの支持体であり、他方は無機膜、有機樹脂のコーティング膜またはフィルムなどで形成することができる。複合層4009の樹脂部には、層4004よりも屈折率が大きい材料を用いる。また、層4004には層4003よりも屈折率が大きい材料を用いる。
【0242】
複合層4009と層4004との間には一つ目の界面が形成され、層4004と層4003との間には二つ目の界面が形成される。当該構成により、一つ目の界面で全反射されず通り抜けた光を二つ目の界面で全反射させ、複合層4009に戻すことができる。したがって、発光デバイス4342が射出する光を効率良く利用することができる。
【0243】
【0244】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0245】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示した各トランジスタに置き換えて用いることのできるトランジスタの一例について、図面を用いて説明する。
【0246】
本発明の一態様の表示装置は、ボトムゲート型のトランジスタや、トップゲート型トランジスタなどの様々な形態のトランジスタを用いて作製することができる。よって、既存の製造ラインに合わせて、使用する半導体層の材料やトランジスタ構造を容易に置き換えることができる。
【0247】
〔ボトムゲート型トランジスタ〕
図20A1は、ボトムゲート型のトランジスタの一種であるチャネル保護型のトランジスタ810のチャネル長方向の断面図である。
図20A1において、トランジスタ810は基板771上に形成されている。また、トランジスタ810は、基板771上に絶縁層772を介して電極746を有する。また、電極746上に絶縁層726を介して半導体層742を有する。電極746はゲート電極として機能できる。絶縁層726はゲート絶縁層として機能できる。
【0248】
また、半導体層742のチャネル形成領域上に絶縁層741を有する。また、半導体層742の一部と接して、絶縁層726上に電極744aおよび電極744bを有する。電極744aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能できる。電極744bは、ソース電極またはドレイン電極の他方として機能できる。電極744aの一部、および電極744bの一部は、絶縁層741上に形成される。
【0249】
絶縁層741は、チャネル保護層として機能できる。チャネル形成領域上に絶縁層741を設けることで、電極744aおよび電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744aおよび電極744bの形成時に、半導体層742のチャネル形成領域がエッチングされることを防ぐことができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。
【0250】
また、トランジスタ810は、電極744a、電極744bおよび絶縁層741上に絶縁層728を有し、絶縁層728の上に絶縁層729を有する。
【0251】
半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、電極744aおよび電極744bの、少なくとも半導体層742と接する部分に、半導体層742の一部から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料を用いることが好ましい。半導体層742中の酸素欠損が生じた領域はキャリア濃度が増加し、当該領域はn型化し、n型領域(n+領域)となる。したがって、当該領域はソース領域またはドレイン領域として機能することができる。半導体層742に酸化物半導体を用いる場合、半導体層742から酸素を奪い、酸素欠損を生じさせることが可能な材料の一例として、タングステン、チタン等を挙げることができる。
【0252】
半導体層742にソース領域およびドレイン領域が形成されることにより、電極744aおよび電極744bと半導体層742の接触抵抗を低減することができる。よって、電界効果移動度や、しきい値電圧などの、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができる。
【0253】
半導体層742にシリコンなどの半導体を用いる場合は、半導体層742と電極744aの間、および半導体層742と電極744bの間に、n型半導体またはp型半導体として機能する層を設けることが好ましい。n型半導体またはp型半導体として機能する層は、トランジスタのソース領域またはドレイン領域として機能することができる。
【0254】
絶縁層729は、外部からのトランジスタへの不純物の拡散を防ぐ、または低減する機能を有する材料を用いて形成することが好ましい。なお、必要に応じて絶縁層729を省略することもできる。
【0255】
図20A2に示すトランジスタ811は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ810と異なる。電極723は、電極746と同様の材料および方法で形成することができる。
【0256】
一般に、バックゲート電極は導電層で形成され、ゲート電極とバックゲート電極で半導体層のチャネル形成領域を挟むように配置される。よって、バックゲート電極は、ゲート電極と同様に機能させることができる。バックゲート電極の電位は、ゲート電極と同電位としてもよいし、接地電位(GND電位)や、任意の電位としてもよい。また、バックゲート電極の電位をゲート電極と連動させず独立して変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0257】
電極746および電極723は、どちらもゲート電極として機能することができる。よって、絶縁層726、絶縁層728、および絶縁層729は、それぞれがゲート絶縁層として機能することができる。なお、電極723は、絶縁層728と絶縁層729の間に設けてもよい。
【0258】
なお、電極746または電極723の一方を、「ゲート電極」という場合、他方を「バックゲート電極」という。例えば、トランジスタ811において、電極723を「ゲート電極」と言う場合、電極746を「バックゲート電極」と言う。また、電極723を「ゲート電極」として用いる場合は、トランジスタ811をトップゲート型のトランジスタの一種と考えることができる。また、電極746および電極723のどちらか一方を、「第1のゲート電極」といい、他方を「第2のゲート電極」という場合がある。
【0259】
半導体層742を挟んで電極746および電極723を設けることで、更には、電極746および電極723を同電位とすることで、半導体層742においてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ811のオン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が高くなる。
【0260】
したがって、トランジスタ811は、占有面積に対して大きいオン電流を有するトランジスタである。すなわち、求められるオン電流に対して、トランジスタ811の占有面積を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、トランジスタの占有面積を小さくすることができる。よって、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0261】
また、ゲート電極とバックゲート電極は導電層で形成されるため、トランジスタの外部で生じる電界が、チャネルが形成される半導体層に作用しないようにする機能(特に静電気などに対する電界遮蔽機能)を有する。なお、バックゲート電極を半導体層よりも大きく形成し、バックゲート電極で半導体層を覆うことで、電界遮蔽機能を高めることができる。
【0262】
また、バックゲート電極を、遮光性を有する導電膜で形成することで、バックゲート電極側から半導体層に光が入射することを防ぐことができる。よって、半導体層の光劣化を防ぎ、トランジスタのしきい値電圧がシフトするなどの電気特性の劣化を防ぐことができる。
【0263】
本発明の一態様によれば、信頼性の良好なトランジスタを実現することができる。また、信頼性の良好な半導体装置を実現することができる。
【0264】
図20B1は、
図20A1とは異なる構成のチャネル保護型のトランジスタ820のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ820は、トランジスタ810とほぼ同様の構造を有しているが、絶縁層741が半導体層742の端部を覆っている点が異なる。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した開口部において、半導体層742と電極744aが電気的に接続している。また、半導体層742と重なる絶縁層741の一部を選択的に除去して形成した他の開口部において、半導体層742と電極744bが電気的に接続している。絶縁層741の、チャネル形成領域と重なる領域は、チャネル保護層として機能できる。
【0265】
図20B2に示すトランジスタ821は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ820と異なる。
【0266】
絶縁層741を設けることで、電極744aおよび電極744bの形成時に生じる半導体層742の露出を防ぐことができる。よって、電極744aおよび電極744bの形成時に半導体層742の薄膜化を防ぐことができる。
【0267】
また、トランジスタ820およびトランジスタ821は、トランジスタ810およびトランジスタ811よりも、電極744aと電極746の間の距離、および電極744bと電極746の間の距離が長くなる。よって、電極744aと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。また、電極744bと電極746の間に生じる寄生容量を小さくすることができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現できる。
【0268】
図20C1は、ボトムゲート型のトランジスタの1つであるチャネルエッチング型のトランジスタ825のチャネル長方向の断面図である。トランジスタ825は、絶縁層741を用いずに電極744aおよび電極744bを形成する。このため、電極744aおよび電極744bの形成時に露出する半導体層742の一部がエッチングされる場合がある。一方、絶縁層741を設けないため、トランジスタの生産性を高めることができる。
【0269】
図20C2に示すトランジスタ826は、絶縁層729上にバックゲート電極として機能できる電極723を有する点が、トランジスタ825と異なる。
【0270】
図21A1乃至
図21C2にトランジスタ810、811、820、821、825、826のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0271】
図21B2、
図21C2に示す構造では、ゲート電極とバックゲート電極とが接続され、ゲート電極とバックゲート電極との電位が同電位となる。また、半導体層742は、ゲート電極とバックゲート電極で挟まれている。
【0272】
ゲート電極およびバックゲート電極のそれぞれのチャネル幅方向の長さは、半導体層742のチャネル幅方向の長さよりも長く、半導体層742のチャネル幅方向全体は、絶縁層726、741、728、729を間に挟んでゲート電極およびバックゲート電極に覆われた構成である。
【0273】
当該構成とすることで、トランジスタに含まれる半導体層742を、ゲート電極およびバックゲート電極の電界によって電気的に取り囲むことができる。
【0274】
トランジスタ821およびトランジスタ826のように、ゲート電極およびバックゲート電極の電界によって、チャネル形成領域が形成される半導体層742を電気的に取り囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded channel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0275】
S-channel構造とすることで、ゲート電極およびバックゲート電極の一方または双方によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に半導体層742に印加することができるため、トランジスタの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタを微細化することが可能となる。また、S-channel構造とすることで、トランジスタの機械的強度を高めることができる。
【0276】
〔トップゲート型トランジスタ〕
図22A1に例示するトランジスタ842は、トップゲート型のトランジスタの1つである。電極744aおよび電極744bは、絶縁層728および絶縁層729に形成した開口部において半導体層742と電気的に接続する。
【0277】
また、電極746と重ならない絶縁層726の一部を除去し、電極746と残りの絶縁層726をマスクとして用いて不純物を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合(セルフアライメント)的に不純物領域を形成することができる。トランジスタ842は、絶縁層726が電極746の端部を越えて延伸する領域を有する。半導体層742の絶縁層726を介して不純物が導入された領域の不純物濃度は、絶縁層726を介さずに不純物が導入された領域の不純物濃度よりも小さくなる。よって、半導体層742は、絶縁層726と重なる領域であって、電極746と重ならない領域にLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成される。
【0278】
図22A2に示すトランジスタ843は、電極723を有する点がトランジスタ842と異なる。トランジスタ843は、基板771の上に形成された電極723を有する。電極723は、絶縁層772を介して半導体層742と重なる領域を有する。電極723は、バックゲート電極として機能することができる。
【0279】
また、
図22B1に示すトランジスタ844および
図22B2に示すトランジスタ845のように、電極746と重ならない領域の絶縁層726を全て除去してもよい。また、
図22C1に示すトランジスタ846および
図22C2に示すトランジスタ847のように、絶縁層726を残してもよい。
【0280】
トランジスタ842乃至トランジスタ847も、電極746を形成した後に、電極746をマスクとして用いて不純物を半導体層742に導入することで、半導体層742中に自己整合的に不純物領域を形成することができる。本発明の一態様によれば、電気特性の良好なトランジスタを実現することができる。また、本発明の一態様によれば、集積度の高い半導体装置を実現することができる。
【0281】
図23A1乃至
図23C2にトランジスタ842、843、844、845、846、847のチャネル幅方向の断面図をそれぞれ示す。
【0282】
トランジスタ843、トランジスタ845、およびトランジスタ847は、それぞれ先に説明したS-channel構造である。ただし、これに限定されず、トランジスタ843、トランジスタ845、およびトランジスタ847をS-channel構造としなくてもよい。
【0283】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0284】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る表示装置を用いることができる電子機器として、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像記憶装置または画像再生装置、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を
図24に示す。
【0285】
図24Aはデジタルカメラであり、筐体961、シャッターボタン962、マイク963、スピーカ967、表示部965、操作キー966、ズームレバー968、レンズ969等を有する。表示部965に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0286】
図24Bは携帯データ端末であり、筐体911、表示部912、スピーカ913、操作ボタン914、カメラ919等を有する。表示部912が有するタッチパネル機能により情報の入出力を行うことができる。表示部912に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0287】
図24Cは携帯電話機であり、筐体951、表示部952、操作ボタン953、外部接続ポート954、スピーカ955、マイク956、カメラ957等を有する。当該携帯電話機は、表示部952にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部952に触れることで行うことができる。また、筐体951および表示部952は可撓性を有し、図示するように折り曲げて使用することができる。表示部952に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0288】
図24Dはビデオカメラであり、第1筐体901、第2筐体902、表示部903、操作キー904、レンズ905、接続部906、スピーカ907等を有する。操作キー904およびレンズ905は第1筐体901に設けられており、表示部903は第2筐体902に設けられている。表示部903に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0289】
図24Eはテレビであり、筐体971、表示部973、操作ボタン974、スピーカ975、通信用接続端子976、光センサ977等を有する。表示部973にはタッチセンサが設けられ、入力操作を行うこともできる。表示部973に本発明の一態様の表示装置を用いることで、様々な画像の表示を行うことができる。
【0290】
図24Fはデジタルサイネージであり、大型の表示部922を有する。デジタルサイネージは、例えば、柱921の側面に大型の表示部922が取り付けられる。表示部922に本発明の一態様の表示装置を用いることで、表示品位の高い表示を行うことができる。
【0291】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0292】
本実施例では、本発明の一態様に関わるトランジスタおよび表示装置を試作した結果について説明する。
【0293】
<トランジスタ特性>
【0294】
図25Aは、表示装置の製造工程と共通する工程で作製したOSトランジスタ(W/L=3μm/6μm)のI
D-V
G特性(Vds=0.1V、10V)である。また、
図25Bは、OSトランジスタ(W/L=6μm/2μm)のI
D-V
G特性(V
ds=0.1V、10V)である。トランジスタ特性はノーマリーオフであり、オフ電流は測定機器の測定下限以下の値であった。OSトランジスタは、チャネル長が2μm以下であれば、一般的な低温ポリシリコン(Low Temperature Polycrystalline Silicon、以下LTPS)トランジスタと同程度の電流能力を示す。
【0295】
<EL画素回路>
図26Aに、表示素子として発光デバイスを用いた画素の回路図を示す。画素回路には、1個のトランジスタ(M4)と1個のキャパシタ(CW)で構成されるメモリ回路を設けており、画素回路全体として、5個のトランジスタ(M1乃至M5)と、2個のキャパシタ(CW、CS)と、発光デバイス(OLED)を有する構成とした。また、全てのトランジスタにフロントゲートと電気的に接続するバックゲートを設けた。画素回路が有する要素は、ゲート線(GL1乃至GL3)、ソース線(SL、SLW)、電源線(ANODE、CATHODE)、基準電位線(V0)の少なくとも一つと電気的な接続を有する。また、画素回路は、いくつかの要素が接続されるnode Aおよびnode Bを有する。詳細は、
図2の説明を参照することができる。
【0296】
OSトランジスタは、その極めて小さいリーク電流特性から、1個のトランジスタと1個のキャパシタでメモリ回路として機能させることができる。そのため、LTPSトランジスタを適用した場合に比べ、少ない要素数でメモリ回路を画素に組み込むことができる。また、当該メモリ回路はアナログ値を保持することができる。
【0297】
次に、
図26Bに示すタイミングチャートに従った駆動方法について簡単に説明する。重み(V
w)を書き込む期間と表示データ(V
data)を書き込む期間は異なるタイミングとした。なお、タイミングチャート内に示すnは画素の行数を示し、nは1以上の自然数である。
【0298】
<重み(Vw)の書き込み>
まず、ゲート線GL1を高電位とし、トランジスタM4、M5を導通させてnode Aに基準電位線(V0)から供給される基準電位V0を書き込む。また、node Bにソース線SLWに供給される電位(Vw)を書き込む。
【0299】
<表示データ(Vdata)の書き込み>
次に、ゲート線GL1を低電位、ゲート線GL2を高電位とし、node Aにソース線SLに供給される電位(Vdata)を書き込む。このとき、node B(トランジスタM2のゲート)の電圧Vgは、(Cw(Vw-V0)+Cs(Vw-V0)+Cw・Vdata)/(Cw+Cs)となる。なお、CwはキャパシタCWの容量値、CsはキャパシタCSの容量値である。
【0300】
ここで、V0=0Vであれば、Vg=Vw+(Cw/(Cw+Cs))・Vdataとなる。したがって、Vw>(Cs/(Cw+Cs))・Vdataであれば、ソースドライバの出力よりも大きな電圧を画素に印加できることになる。
【0301】
<液晶画素回路>
図27Aに、表示素子として液晶デバイスを用いた画素の回路図を示す。画素回路には、EL画素回路と同様に1個のトランジスタ(M4)と1個のキャパシタ(CW)で構成されるメモリ回路を設けている。画素回路全体として、2個のトランジスタ(M1、M4)と、2個のキャパシタ(CW、CS)と、液晶デバイス(LC)を有する構成とした。また、全てのトランジスタにフロントゲートと電気的に接続するバックゲートを設けた。画素回路が有する要素は、ゲート線(GL1、GL2)、ソース線(SL、SLW)、基準電位線(TCOM、CSCOM)のいずれかの少なくとも一つと電気的な接続を有する。また、画素回路は、いくつかの要素が接続されるnode Aおよびnode Bを有する。詳細は、
図6Aの説明を参照することができる。なお、EL画素回路と共通する要素には共通の符号を用いている。
【0302】
次に、上記液晶画素回路の駆動方法について簡単に説明する。
【0303】
<重み(Vw)の書き込み>
まず、ゲート線GL1、GL2を高電位とし、トランジスタM1、M4を導通させてnode Aにソース線SLに供給される電位(基準電位Vr)を書き込む。また、node BにSLWに供給される電位(Vw)を書き込む。
【0304】
<表示データ(Vdata)の書き込み>
次に、ゲート線GL1を低電位、ゲート線GL2を高電位とし、M4のみを非導通としてnode Aにソース線SLに供給される電位(Vdata)を書き込む。このとき、キャパシタCWの容量結合によりnode Bの電位は、(Cw(Vw-Vr)+(Cs+Clc)・(Vw-Vr)+Cw・Vdata)/(Cw+Cs+Clc)となる。なお、Clcは、液晶デバイスLCの容量値である。
【0305】
node Bの電位は、Cwと(Cs+Clc)との比にも依存するが、当該式によりVdataよりも大きな電位とすることができる。すなわち、ソースドライバから供給されるVdataよりも大きい電位を液晶デバイスLCに印加することができる。
【0306】
<ソースドライバ>
前述した効果を利用すると、EL画素回路において、電圧Vgとして最大5Vの電圧が必要な場合、ソースドライバの出力電圧は、5Vよりも小さな値とすることができる。電圧Vgは、キャパシタCWとキャパシタCSの容量比にも依存するが、ソースドライバの出力電圧は、例えば3.3Vでも十分となる。
【0307】
また、液晶画素回路において、node Bで最大5Vの電圧が必要な場合、ソースドライバの出力電圧は、5Vよりも小さな値とすることができる。node Bの電圧は、キャパシタCWとキャパシタCS+液晶デバイスLCの容量比にも依存するが、ソースドライバの出力電圧は、例えば3.3Vでも十分となる。
【0308】
当該効果は、ソースドライバが有するアンプ回路の耐圧上限の低減にもつながる。上述したEL画素回路を利用することで、ソースドライバのアンプ回路は、5Vの耐圧を持つテクノロジで構成する必要がなくなり、3.3Vの耐圧を持つテクノロジで構成すればよいことになる。また、上述した液晶画素回路を利用することで、ソースドライバのアンプ回路は、10V以上の耐圧を持つテクノロジで構成する必要がなくなり、10V以下の耐圧を持つテクノロジで構成すればよいことになる。
【0309】
ソースドライバを
図28に示すブロック図の構成とし、各ブロックの消費電力を見積もるシミュレーションを5Vテクノロジおよび3.3Vテクノロジを想定して行った。想定したパネルは、スマートフォンサイズのパネルであり、画素数は1080×1920である。なお、シミュレーションにはSilvaco社のSmartspiceを使用した。
【0310】
なお、パネルの動作条件は、表示部の30%を書き換える場合を想定した。また、ソースドライバのロジック部等の構成は共通とし、アンプ回路のみトランジスタサイズを変更した場合を想定した。
【0311】
図29AにEL画素回路に適用するソースドライバの消費電力の見積もり比較結果を示す。画素回路Aは、従来の画素回路(トランジスタ×3+キャパシタ×1、
図26Aにおいて、トランジスタM1、M3およびキャパシタCWを有さない構成)の想定であり、5Vテクノロジのアンプ回路を有するソースドライバの消費電力を示している。画素回路Bは、前述した本発明の一態様の画素回路(トランジスタ×5+キャパシタ×2、
図26Aの構成)の想定であり、3.3Vテクノロジのアンプ回路を有するソースドライバの消費電力を示している。
【0312】
図29Aに示すように、画素回路Bを用い、かつ適切なテクノロジのソースドライバを用いることで消費電力を大きく削減できることがわかった。ソースドライバの消費電力の大半を占めるアンプ回路に、低電圧用のテクノロジを適用できることが大きく消費電力を下げられる理由である。また、レベルシフト回路の消費電力は、電源電圧に依存する。したがって、本発明の一態様の画素回路を用いることで、ソースドライバを低消費電力化できることがわかった。
【0313】
図29Bに液晶画素回路に適用するソースドライバの消費電力の見積もり比較結果を示す。画素回路Cは、従来の画素回路(トランジスタ×1+キャパシタ×1、
図27Aにおいて、トランジスタM1およびキャパシタCWを有さない構成)およびソースドライバを想定したときの消費電力を示している。また、画素回路Dは、本発明の一態様の画素回路および適切なテクノロジのソースドライバを想定したときの消費電力である。なお、画素回路Dとしては、より低消費電力の見込める動作が行える
図27Bに示す画素回路(トランジスタ×3+キャパシタ×2)を用いた。
図29Bに示す結果より、EL画素回路に適用するソースドライバの結果と同様に、本発明の一態様の画素回路を用いることで、ソースドライバを低消費電力化できることがわかった。
【0314】
図26Aに示す画素回路は、上述した画素回路B(トランジスタ×5+キャパシタ×2)に相当するが、画素回路A(トランジスタ×3+キャパシタ×1)としての動作も可能である。ここで、
図26Aに示す画素回路を有したパネルを試作し、画素回路Aとして動作させた場合(Aモード)と、画素回路Bとして動作させた場合(Bモード)の消費電力を実測した結果を説明する。なお、ソースドライバには、5Vテクノロジを用いている。
【0315】
表示画像には、全白、チェッカー(白黒格子)、自然画(シマウマの画像)の3種類を用いた。また、AモードとBモードで発光デバイス(OLED)の輝度を揃え、消費電力が同じになるようにした。
【0316】
図30に、それぞれの画像を表示したときの消費電力の比較結果を示す。消費電力は、発光デバイスの消費電力、ソースドライバの消費電力およびゲートドライバの消費電力を加算した値である。このうち、上述したように発光デバイスの消費電力は、Aモード、Bモードともに同じである。ゲートドライバの消費電力は、駆動するゲート線が一つ多いBモードのほうが大きくなるが、ソースドライバの消費電力より1桁小さいため、消費電力の比較結果に与える影響は軽微である。
【0317】
各表示における消費電力の差は、実質的にソースドライバの消費電力の差そのものということができ、Bモードで動作することにより消費電力を低減できることがわかった。すなわち、本発明の一態様の画素回路は、従来の画素回路より低消費電力で動作できることが確かめられた。
【0318】
<EL表示パネル>
表1に、試作したEL表示パネルの仕様を示す。ゲートドライバは、OSトランジスタで画素回路と同じ基板上に設けた。発光デバイスには白色タンデム型の有機ELデバイスを使用し、カラーフィルタによりカラー化する方式を採用した。
図32Aは、試作したEL表示パネルの表示結果である。
【0319】
【0320】
<液晶表示パネル>
表2に示す仕様の液晶表示パネルを試作した。ゲートドライバは、OSトランジスタで画素回路と同じ基板上に設けた。ソースドライバには-4V乃至+4Vまで出力できるICチップを使用した。FFSモードの液晶材料を用い、
図31Aに示すように飽和電圧が10Vとなる条件で試作した。この電圧はソースドライバの出力電圧より高いため、従来の画素回路では液晶デバイスを飽和動作させることができない。
【0321】
【0322】
液晶デバイスに印加した電圧とパネルの輝度の関係を従来の画素回路Xと本発明の一態様の画素回路Yで比較した結果を
図31Bに示す。本発明の一態様の画素回路Yの昇圧機能により、ソースドライバの出力以上の電圧を液晶デバイスに印加できていることが確認できた。
図32Bは、試作した液晶表示パネルの表示結果である。低出力のソースドライバを用いても液晶デバイスに十分な電圧を印加することができるため、高輝度の表示をさせることができた。
【0323】
OSトランジスタの極めて小さなオフリーク特性を利用し、画素内にメモリ回路を搭載した有機EL表示パネルおよび液晶表示パネルを試作した。メモリに重みを保持させることで、ソースドライバの出力以上の電圧を画素内で生成することができるため、ソースドライバの出力電圧を下げられることが確認された。また、当該効果によって、ソースドライバを構成するトランジスタの耐圧を下げることが可能となること、およびソースドライバの消費電力の低減できることが見積もられた。
【0324】
本発明の一態様の画素回路は、OSトランジスタのみで構成することができる。また、特殊な製造工程もなく、マスク枚数を増加させることもない。また、OSトランジスタの製造工程は、LTPSトランジスタの製造工程よりもマスク枚数を減らすことができ、製造工程の面でもOSトランジスタを表示パネルに適用することは優位といえる。
【符号の説明】
【0325】
10:画素、11:画素アレイ、20:ソースドライバ、21:ロジック部、21_n:回路、21_1:回路、22:アンプ部、22_m:回路、22_1:回路、25:電源回路、25a:電源回路、25b:電源回路、30:ゲートドライバ、40:回路、101:トランジスタ、102:トランジスタ、103:トランジスタ、104:トランジスタ、105:トランジスタ、106:キャパシタ、107:キャパシタ、108:発光デバイス、109:トランジスタ、110:液晶デバイス、111:画素電極、121:配線、122:配線、123:配線、124:配線、125:配線、126:配線、127:配線、129:配線、130:配線、131:配線、151:トランジスタ、152:トランジスタ、215:表示部、221a:走査線駆動回路、231a:信号線駆動回路、232a:信号線駆動回路、241a:共通線駆動回路、723:電極、726:絶縁層、728:絶縁層、729:絶縁層、741:絶縁層、742:半導体層、744a:電極、744b:電極、746:電極、771:基板、772:絶縁層、810:トランジスタ、811:トランジスタ、820:トランジスタ、821:トランジスタ、825:トランジスタ、826:トランジスタ、842:トランジスタ、843:トランジスタ、844:トランジスタ、845:トランジスタ、846:トランジスタ、847:トランジスタ、901:筐体、902:筐体、903:表示部、904:操作キー、905:レンズ、906:接続部、907:スピーカ、911:筐体、912:表示部、913:スピーカ、914:操作ボタン、919:カメラ、921:柱、922:表示部、951:筐体、952:表示部、953:操作ボタン、954:外部接続ポート、955:スピーカ、956:マイク、957:カメラ、961:筐体、962:シャッターボタン、963:マイク、965:表示部、966:操作キー、967:スピーカ、968:ズームレバー、969:レンズ、971:筐体、973:表示部、974:操作ボタン、975:スピーカ、976:通信用接続端子、977:光センサ、4001:基板、4003:層、4004:層、4005:シール材、4006:基板、4008:液晶層、4009:複合層、4010:トランジスタ、4011:トランジスタ、4013:液晶デバイス、4014:配線、4015:電極、4016:光散乱型液晶デバイス、4017:電極、4018:FPC、4019:異方性導電層、4020:キャパシタ、4021:電極、4022:トランジスタ、4023:トランジスタ、4030:電極層、4031:電極層、4032:絶縁層、4033:絶縁層、4035:スペーサ、4041:プリント基板、4042:集積回路、4102:絶縁層、4103:絶縁層、4104:絶縁層、4110:絶縁層、4111:絶縁層、4112:絶縁層、4131:着色層、4132:遮光層、4133:絶縁層、4200:入力装置、4210:タッチパネル、4227:電極、4228:電極、4237:配線、4238:配線、4239:配線、4263:基板、4272b:FPC、4273b:IC、4340a:バックライトユニット、4340b:バックライトユニット、4341:導光板、4342:発光デバイス、4344:レンズ、4345:ミラー、4347:プリント基板、4348:反射層、4352:拡散板、4510:隔壁、4511:発光層、4513:発光デバイス、4514:充填材