IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチバン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自着性粘着テープロール体 図1
  • 特許-自着性粘着テープロール体 図2
  • 特許-自着性粘着テープロール体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】自着性粘着テープロール体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240221BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240221BHJP
   C09J 125/08 20060101ALI20240221BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/08
C09J125/08
B32B27/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020568104
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001287
(87)【国際公開番号】W WO2020153226
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019010676
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】小出 真輝
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-076287(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076332(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/126158(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/122287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状基材と、テープ状基材の片面に直接又は他の層を介して設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープ部材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であって、
前記粘着剤層は、スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂と、を含有し、
前記粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素系樹脂を含有し、
前記テープ状基材は、前記粘着剤層が設けられた面の反対側の面に、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmであると共に、十点平均粗さ(Rz)で20~40μmである微細凹凸構造を有する
ことを特徴とする、自着性粘着テープロール体。
【請求項2】
前記微細凹凸構造は、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.0~4.0μmである、請求項1に記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項3】
前記粘着剤層は、スチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーと、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーと、を含有する、請求項1又は2に記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項4】
前記粘着剤層中の、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーの質量(El)とスチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーの質量(Eh)との比(El/Eh)が、2.0以下である、請求項1~3のいずれかに記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項5】
前記粘着剤層中の粘着付与樹脂全体に対して、脂環族飽和炭化水素系樹脂の占める割合が50~95質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項6】
前記粘着テープ部材が、前記テープ状基材と、インク層と、プライマー層と、前記粘着剤層と、がこの順番で積層された積層体である、請求項1~5のいずれかに記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項7】
植物誘引用である、請求項1~6のいずれかに記載の自着性粘着テープロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自着性粘着テープロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
自着性粘着テープは、通常の粘着テープと同様に粘着剤層と基材層とを有する粘着テープであり、例えば、生野菜類、生花類、書類、新聞、雑誌等の各種物品を結束することに特化した粘着テープである(例えば、特許文献1等)。
【0003】
自着性粘着テープの使用方法は、通常、以下の通りである。自着性粘着テープの自着面(粘着剤層面)が結束する物品(被結束物)を向くように自着性粘着テープで被結束物の外周を覆い、その後粘着テープの自着面同士を合掌貼りすることで、被結束物の結束を行う。
【0004】
自着性粘着テープは、被結束物への糊残り等の影響を小さくし、且つ、十分な結束性を達成するために、粘着剤面同士の粘着力(自着力)が高く、タック性が低い、という粘着特性を有することが求められる。
【0005】
また、自着性粘着テープは、通常、長尺の自着性粘着テープを巻き取り形成された自着性粘着テープロール体として販売されている。更に、このような自着性粘着テープロール体の使用を補助するための専用の器具も検討されている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-161962号公報
【文献】特許第6226880号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自着性粘着テープにおいては、対象とする被結束物の種類によって必要とする自着結束性(自着力及び自着保持力)が異なることから、様々な用途に対応するためには、より低いタック性とより高い自着結束性の両方を達成する必要がある。
【0008】
また、特許文献2等で開示された器具を使用する場合、器具にセットされた自着性粘着テープの粘着面が器具と接触した状態となるため、テープの繰り出しを阻害しないために、タック性をより低くすることが求められる。更に、この器具を操作する作業者に対する、一回結束する毎の負担を軽くするために、自着性粘着テープロール体における自着性テープの巻戻し性(解きほぐし性)を低く(軽く)する必要があった。
【0009】
そこで本発明は、高い自着結束性、低いタック、低い巻戻し性、の全てを兼ね備える自着性粘着テープロール体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題のもと鋭意研究を行い、特定のテープ状基材と、特定の粘着テープ部材と、を組み合わせることで上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)本発明は、
テープ状基材と、テープ状基材の片面に直接又は他の層を介して設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープ部材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であって、
粘着剤層は、スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂と、を含有し、
粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素系樹脂を含有し、
テープ状基材は、粘着剤層が設けられた面の反対側の面に、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μmであると共に、十点平均粗さ(Rz)で10~50μmの微細凹凸構造を有する
ことを特徴とする、自着性粘着テープロール体である。
(2)前記微細凹凸構造は、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.0~4.0μmであると共に、十点平均粗さ(Rz)で20~40μmであってもよい。
(3)前記粘着剤層は、スチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーと、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーとを含有してもよい。
(4)前記粘着剤層中の、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーの質量(El)とスチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーの質量(Eh)との比(El/Eh)が2.0以下であってもよい。
(5)前記粘着剤層中の粘着付与樹脂全体に対して、脂環族飽和炭化水素系樹脂の占める割合が50~95質量%であってもよい。
(6)前記粘着テープ部材が、前記テープ状基材と、インク層と、プライマー層と、前記粘着剤層と、がこの順番で積層された積層体であってもよい。
(7)前記自着性粘着テープロール体は、植物誘引用であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い自着結束性、低いタック、低い巻戻し性、の全てを兼ね備える自着性粘着テープロール体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る自着性粘着テープロール体100の概念側面図を示す。
図2図2は、本実施形態に係る粘着テープ部材110の概念側面図を示す。
図3図3は、本実施例に係る自着保持力の試験方法の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図1図2を参照しつつ、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
【0015】
<<<<自着性粘着テープロール体100>>>>
自着性粘着テープロール体100は、粘着テープ部材110を、軸芯120を芯としてロール状に巻回して形成されている(図1)。
【0016】
自着性粘着テープロール体100において、ロール径や粘着テープ部材110の巻き数等は適宜変更可能である。
【0017】
軸芯120の材料および形状は、特に限定されず、自着性粘着テープロール体100の用途等に応じて適宜変更可能である。更には、自着性粘着テープロール体100は、軸芯120を有さないロール体(いわゆる芯無しタイプ)であってもよい。
【0018】
以下、粘着テープ部材110について詳述する。
【0019】
<<<粘着テープ部材110>>>
粘着テープ部材110は、テープ状基材111と、テープ状基材111の片面に設けられた粘着剤層114と、を有する積層体である。
【0020】
更に、図2に示されるように、テープ状基材111と粘着剤層114との間には、別の層が介在されていてもよい。この別の層として、インク層112およびプライマー層113であることが好ましい。より詳細には、粘着テープ部材110は、図2に示されるように、テープ状基材111と、インク層112と、プライマー層113と、粘着剤層114とがこの順番で積層された積層体であることが好ましい。
【0021】
<<テープ状基材111>>
テープ状基材111の、粘着剤層114が設けられている面の反対側の面(図2におけるテープ状基材表面111a)には、微細凹凸構造が設けられている。自着性粘着テープロール体100においては、テープ状基材表面111aと、粘着剤層114の表面(粘着剤層表面114a)と、が接触するように巻回されている。その結果、テープ状基材表面111aに設けられた微細凹凸構造が粘着剤層表面114aに転写される。即ち、自着性粘着テープロール体100から引き出された粘着テープ部材110も、同様の微細凹凸構造を有することとなる。粘着剤層表面114aに所定の微細凹凸構造を転写させることによって、所定の成分を有する着剤層114の被着体への接触面積が低減され、低タック性が実現されるとともに、粘着剤層114同士が圧着された際には凹凸構造が潰れるため、粘着剤層114を形成する粘着剤由来の強い粘着力(自着性)が発揮される。
【0022】
より詳細には、テープ状基材表面111aには、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μm(または0.5超5.0μm未満)の微細凹凸構造が設けられている。微細凹凸構造の粗さをこの範囲とすることにより、本発明の効果を実現することが可能である。本発明の効果をより高めるためには、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.0~4.0μm(または1.0超4.0μm未満)であることが好ましい。更には、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、十点平均粗さ(Rz)で10~50μmであることが好ましく、十点平均粗さ(Rz)で20~40μmであることがより好ましい。この表面粗さは、より具体的には、以下の方法によって測定できる。
小坂研究所製のSurfcoder ET4000Aを用いて、以下の条件で片方の面を測定する。
測定力:30μN
Xピッチ:4.00μm
Yピッチ:4μm
Z測定倍率:10000
X送り速さ:0.5mm/sec
低域カット:0.8mm
高域カット:R+W
レベリング:最小二乗法
【0023】
微細凹凸構造は、公知の加工方法、例えば、梨地加工、サンドブラスト加工およびヘアーライン加工等によって形成することが可能であるが、緻密な凹凸構造を形成可能という点で、微細凹凸構造を梨地加工によって形成することが好ましい。
【0024】
テープ状基材111の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂などで形成したプラスチックフイルム、クレープ紙、和紙、不織布などが挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。また、テープ状基材111は、複数の層からなる積層体であってもよい。更に、テープ状基材111が複数の層からなる積層体である場合、粘着剤や接着剤からなる層が介在されていてもよい。
【0025】
テープ状基材111の材料としては、プラスチックフィルムであることが好ましい。
【0026】
テープ状基材111の厚みは、特に限定されないが、例えば、50~100μm、好ましくは60~80μmとすればよい。
【0027】
また、テープ状基材111は、テープ状基材111の背面(テープ状基材表面111a)側に、背面処理剤が適用されたものであってもよい。このような背面処理剤としては、公知慣例のものを使用可能であり、例えば、長鎖アルキル系の背面処理剤等が挙げられる。
【0028】
<<インク層112>>
インク層112は、通常、テープ状基材111表面(テープ状基材111の粘着剤層114側の表面)に直接着色(印字等を含む。)されることで形成された層であるが、所定の着色剤によって着色されたフィルム等で形成されていてもよい。
【0029】
<<プライマー層113>>
プライマー層113は、例えば、国際公開第2014/126158号に記載されたものとすることができる。
【0030】
<<粘着剤層114>>
粘着剤層114は、スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂と、を含有する粘着剤組成物によって形成される。また、粘着剤層114は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0031】
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等が挙げられる。また、これらは一部が変性されていてもよい。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0032】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーのみを含む形態、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーのみを含む形態、高スチレン含有エラストマーおよび低スチレン含有エラストマーを含む形態、のいずれであってもよいが、高スチレン含有エラストマーおよび低スチレン含有エラストマーを含む形態であることが好ましい。
【0033】
高スチレン含有エラストマーのスチレン含有量は、20質量%超40質量%以下であることが好ましく、25質量%~35質量%であることがより好ましい。
【0034】
低スチレン含有エラストマーのスチレン含有量は、14質量%~20質量%であることが好ましく、16質量%~18質量%であることがより好ましい。
【0035】
粘着剤層中の、低スチレン含有エラストマーの含有量(El)と高スチレン含有エラストマーの含有量(Eh)との比(El/Eh)が、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。
【0036】
粘着剤層114中のスチレン系エラストマーの含有量は、55.5~62.5質量%であることが好ましく、60.0~62.5質量%であることがより好ましい。
【0037】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂としては、特に限定されず、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。本発明の効果を高めるために、粘着付与樹脂として脂環族飽和炭化水素系樹脂を使用することが好ましい。
【0038】
粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素系樹脂とテルペン系樹脂またはスチレン系樹脂のいずれか一種以上とを含むことが好ましく、これらを全て含むことが好ましい。
【0039】
脂環族飽和炭化水素系樹脂は、軟化点が、90~140℃であることが好ましく、120~140℃であることがより好ましい。
【0040】
テルペン系樹脂は、軟化点が、80~130℃であることが好ましく、110~120℃であることがより好ましい。
【0041】
スチレン系樹脂は、軟化点が、100~140℃であることが好ましく、110~130℃であることがより好ましい。
【0042】
粘着付与樹脂全体に対する脂環族飽和炭化水素系樹脂の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、50~95質量%(具体的には、50~93.9質量%)であることがより好ましく、60~80質量%であることが特に好ましい。
【0043】
粘着付与樹脂全体に対するテルペン系樹脂の含有量が、15~50質量%であることが好ましく、25~40質量%であることがより好ましい。
【0044】
粘着付与樹脂全体に対するスチレン系樹脂の含有量が、1.0~12.0質量%であることが好ましく、5.0~8.0質量%であることがより好ましい。
【0045】
粘着剤層114中の粘着付与樹脂の含有量は、37.5~44.5質量%であることが好ましく、37.5~40.0質量%であることがより好ましい。
【0046】
<その他の成分>
その他の成分としては、公知の添加剤、例えば、充填剤、酸化防止剤、着色剤、軟化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、老化防止剤などが挙げられる。また、その他の成分として、スチレン系エラストマー以外の粘着成分(例えば、スチレン系エラストマー以外のゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等)を含んでいてもよい。
【0047】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、亜鉛華(酸化亜鉛)、けい酸アルミニウム、シリカ、タルク、けい藻土、けい砂、軽石粉、スレート粉、雲母粉、アルミニウムゾル、アルミナホワイト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、単結晶チタン酸カリ、カーボン繊維、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、リサージ、鉛丹、鉛白、水酸化カルシウム、活性化水酸化カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0048】
自着性粘着テープにおいては、通常、充填剤を高配合とすることで、低タック性や高自着性を達成している。しかしながら、本発明においては、充填剤を低配合量としても、低タック性や高自着性を達成できる。
【0049】
具体的には、粘着剤層114中、充填剤の配合量を、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0質量%等とすることができる。また、充填剤を配合することで自着性粘着テープの性能を向上させることが可能であるが、その場合、粘着剤層114中、充填剤の配合量を、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上等とすればよい。
【0050】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄などが挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0051】
(着色剤)
着色剤としては、無機系、有機系何れでもよく、これらは、目的とする発色となるように添加されればよい。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0052】
(軟化剤)
軟化剤としては、石油系軟化剤、植物系軟化剤、液状ゴム、液状粘着付与樹脂、合成可塑剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0053】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等がある。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0054】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p-フェニレンジアミン系化合物、その他のアミン系化合物、アミン化合物混合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0055】
粘着剤層114の厚みは、特に限定されないが、例えば、10~40μm、好ましくは20~30μmとすればよい。
【0056】
<<<自着性粘着テープロール体の製造方法>>>
自着性粘着テープロール体100の製造方法としては特に限定されず、公知の手法により製造可能である。自着性粘着テープロール体100の製造方法の一例を以下に述べる。
【0057】
先ず、粘着剤層114を構成する原料に、必要に応じて有機溶媒等を加えて調製された粘着液と、少なくとも片面に微細凹凸構造が設けられたテープ状基材111と、を準備する。
【0058】
次に、テープ状基材111の微細凹凸構造が設けられた面とは反対の面に、印刷処理、プライマー処理を順次行い、インク層112およびプライマー層113を形成する。
【0059】
次に、プライマー層113の上に、アプリケーター等を用いて粘着液を塗布する。その後、例えば100℃で3分間の乾燥を行って、プライマー層113上に粘着剤層114が設けられた粘着テープ部材110を得る。
【0060】
最後に、この粘着テープ部材110を、軸芯120の外周に沿って巻回させていき、自着性粘着テープロール体100を製造することができる。
【0061】
<<<自着性粘着テープロール体100の用途>>>
自着性粘着テープロール体100は、低いタック性、高い自着結束性、低い巻戻し性を有するため、種々の用途に使用することができる。例えば、生野菜類、生花類、書類、新聞、雑誌等の各種物品を結束するための粘着テープとして用いることができる。また、該粘着剤を布などを基材として含浸塗布、或いは両面にスプレー塗布等して乾燥、巻き取り、裁断してテープロール状にし、粘着包帯、スポーツ用固定テープ、スポーツ用滑り止めテープ等としても用いることができる。
【0062】
自着性粘着テープロール体100は、低いタック性を有するため野菜の成長を阻害しないため野菜の誘引用として好ましく使用することができる。更には、自着性粘着テープロール体100は、高い自着結束性を有するため、高荷重が求められる結束用として好ましく使用することができる。例えば、野菜の誘引用とした中でも、トマト等の誘引用とすることが好ましい。キュウリやブドウ等の誘引を行う場合、自着性粘着テープの耐荷重として最大500g程度を想定すれば十分であり、従来の自着性粘着テープでも対応可能であった。しかしながら、トマト等の誘引においては、自着性粘着テープの耐荷重として最大1000g程度の高荷重を想定しなければならない場合があった。本発明に係る自着性粘着テープロール体100は、低いタック性と、高い自着結束性を有するため、このような高荷重となる野菜の誘引にも十分に対応可能である。
【0063】
また、自着性粘着テープロール体100は、低タック性、低い巻戻し性を有するため、特許第6226880号等に開示された自着性粘着テープ専用の器具にセットする自着性粘着テープロール体として好ましく使用することができる。
【実施例
【0064】
〔実施例1~14:表1~表3〕
エラストマー比率として「低スチレンSIS(スチレン含有量:16質量%、日本ゼオン社製クインタック3433N)」20重量部、「高スチレンSIS(スチレン含有量:25質量%、旭化成社製アサプレンATN521)」80重量部で固定して、配合する粘着付与樹脂「テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製:YSレジンPX1150N)」、「脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製:アルコンP140)」、「スチレン樹脂(三井化学社製:FTR2120)」、「スチレン樹脂(三井化学社製:FTR2140)」の各配合部数を変えたゴム系粘着剤を数種類用意した。
【0065】
片面に微細凹凸構造(算術平均粗さ(Ra)2.9μm、十点平均粗さ(Rz)29.7μm、梨地加工面)を有する厚さ70μmのCPPフィルムを準備した。CPPフィルムの微細凹凸構造を有する面の反対側面に、インク層(着色層)、プライマー層を順次形成した。プライマー層の上に粘着剤層の厚みが30μmになるように塗布して、幅11mmの粘着テープを作成した。粘着剤層にフイルムの梨地加工面が触れるように巻取り、幅11mmの粘着テープロール体を作成した。
【0066】
〔実施例15~18、比較例1~2:表4〕
以下の粘着テープロール体により、微細凹凸構造が粘着特性へ及ぼす影響を確認した。片面に各種条件の梨地加工面を有する厚さ70μmのCPPフィルムを準備した。前記実施例1~14と同様に粘着剤塗布面にインク層(着色層)、プライマー層を順次形成した。プライマー層の上に実施例6の粘着剤を粘着剤層の厚みが30μmになるように塗布して、幅11mmの粘着テープを作成した。粘着剤層にフイルムの梨地加工面が触れるように巻取り、幅11mmの粘着テープロール体を作成した。
【0067】
〔プローブタック試験〕
23℃・50%RHの条件下、実施例及び比較例のテープ(幅11mm)を試験片とし、ASTM D2979に準じて、プローブタック試験を行った。具体的には、試験片をウエイトリングにたるみの無いようにはり付け、直径5mmの円柱プローブを試験片の粘着面に0.98±0.001N/cmの荷重を接触速さ10±0.1mm/秒で、1.0±0.01秒間接触させた後、接触速さと同じ速度でプローブを粘着面から垂直方向に引き剥がすのに要する力(N/5mmφ)を測定した。
【0068】
〔自着保持力の試験(23℃、50%RH)〕
以下の方法に従って、自着保持力の試験を行った。採取した試験片(幅11mmの粘着テープ)を粘着剤面を内側として、試験片が伸びたり、気泡が入らないように粘着剤面同士を貼り合わせる。貼り合わせ長さは100mm以上とする。次に試験片の上から、2kg圧着ローラーを用い、圧着速度毎分約300mmで一往復圧着し、20~40分間放置する。その後、図3に示すように、試験片の一端を固定し、他方の一端に分銅を掛ける。分銅を掛ける前には、貼り合わせ部分を約5mm引き剥がし、境界部分をマジック等で印を付ける。規定時間後に分銅を掛けた状態で、ズレ距離(マジック等の印間)をノギスにより読み取る。
【0069】
〔低速巻戻し力の試験(23℃、50%RH)〕
23℃・50%RHの条件下、JIS Z 0237―2009に準じて、低速巻戻し力の試験を行った。最適な低速巻戻し力は0.05~0.70N/11mmである。低速巻戻し力が上限値を超えると、テープ引出しに負荷が掛かり、作業し難くなる。より具体的には、特許第6226880号等に開示された自着性粘着テープ専用の結束機を使用した場合に不具合が生じ易い。一方、低速巻戻し力が下限値を割ると、テープを引出す際に、不用意に引出されてテープ本体が解けてしまうことがある。
【0070】
〔印刷適性:印刷面外観〕
目視で次の基準で判定する。
○:ムラがなく優美な外観を有する
△:目立つムラではないが、均一な外観にやや欠ける
×:ムラがあり均一な外観に欠ける
【0071】
(結果)
上記各試験の結果を表1~表4に記載した。
【0072】
(考察)
表1~表3に基づき、配合する粘着付与樹脂「テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製:YSレジンPX1150N)」、「脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製:アルコンP140)」、「スチレン樹脂(三井化学社製:FTR2120)」、「スチレン樹脂(三井化学社製:FTR2140)」の最適な配合部数を確認した。その中で、表2の実施例6が最も目標値に近い特性を有するものであった。また、スチレン樹脂に関して、軟化点の高いFTR2140を配合した系は、FTR2120を配合した系より全体的にやや劣る傾向となった。
【0073】
表4によれば、微細凹凸構造の粗さが所定範囲でない粘着テープを使用した場合、発明の効果を奏しないことが確認できる。また、実施例16が最も目標に近い特性を有するものであった。
【0074】
なお、実施例1~14に関しても低速巻戻し力の測定を行ったところ、実施例15~18同様に最適な低速巻戻し力の範囲となることが確認できた。
【0075】
更に、粘着剤層中の高スチレンSISの含有量(Eh)と低スチレンSISの含有量(El)との関係について確認した。具体的には、El:Eh=100:0、80:20、60:40、40:60、20:80、0:100とし検討を行った。その結果、El:Eh=60:40(El/Eh=1.5)、40:60(El/Eh=0.67)、20:80(El/Eh=0.25)、0:100(El/Eh=0)とした場合に、プローブタックおよび自着保持力に特に優れる傾向があることが確認された。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【符号の説明】
【0080】
100 自着性粘着テープロール体
110 粘着テープ部材
111 テープ状基材
111a テープ状基材表面
112 インク層(着色層)
113 プライマー層
114 粘着剤層
114a 粘着剤層表面
120 軸芯

図1
図2
図3