(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波検査支援方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2021026000
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐東 佑子
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-137237(JP,A)
【文献】特開2018-061659(JP,A)
【文献】国際公開第2003/043501(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報を生成するプロトコル修正部と、
前記標準プロトコルが選択された場合に前記標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において前記標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定し、前記専用プロトコルが選択された場合に前記専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において前記専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定するプロトコル実行制御部と、
を含
み、
前記標準プロトコル情報は、前記標準プロトコルを構成する複数の工程に対応する前記複数の実行条件を設定するための複数の工程情報を含み、
前記複数の工程情報は、それぞれ、動作モードを含む複数のパラメータを含み、
前記プロトコル修正部は、
前記標準プロトコルを構成する各工程の実行中において、その工程に対応する工程情報に含まれるパラメータが検査者により修正された場合にその修正内容を記録し、
前記標準プロトコルの実行中において、前記検査者により前記複数の工程に対して工程が追加された場合にその追加内容を記録し、
前記標準プロトコルの実行終了時において、記録された前記修正内容及び前記追加内容に基づいて前記専用プロトコル情報を生成し、
前記標準プロトコルの実行終了時に生成される前記専用プロトコル情報には、前記特定の被検者の被検者情報が含まれ、且つ、前記標準プロトコルを構成する前記複数の工程の実行により前記特定の被検者から取得された複数の超音波画像が複数の参照画像として関連付けられる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において
、
前記プロトコル実行制御部は、前記専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において前記複数の参照画像を順次表示する参照画像表示制御部を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記プロトコル修正部は、前記専用プロトコル中の計測付き工程に対し、当該計測付き工程の実行により取得された計測値を関連付けておく計測値関連付け部を有し、
前記プロトコル実行制御部は、前記専用プロトコル中の計測付き工程の実行時に、当該計測付き工程に関連付けられた過去の1又は複数の計測値を表示する計測値表示制御部を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の超音波診断装置において、
前記計測値表示制御部は、過去の複数の計測値を計測値グラフとして表示する機能を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記専用プロトコルに対し、前記特定の被検者から時系列順で取得された複数の検査値を関連付けておく検査値関連付け部を含み、
前記プロトコル実行制御部は、前記専用プロトコルの実行に際し当該専用プロトコルに関連付けられた複数の検査値を表す検査値グラフを表示する検査値表示制御部を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報を生成する工程と、
前記標準プロトコルが選択された場合に、前記標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、前記標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定する工程と、
前記専用プロトコルが選択された場合に、前記専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、前記専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定すると共に、前記特定の被検者から取得された情報であって前記専用プロトコルに関連付けられた参照情報を表示する工程と、
を含
み、
前記標準プロトコル情報は、前記標準プロトコルを構成する複数の工程に対応する前記複数の実行条件を設定するための複数の工程情報を含み、
前記複数の工程情報は、それぞれ、動作モードを含む複数のパラメータを含み、
前記標準プロトコルを構成する各工程の実行中において、その工程に対応する工程情報に含まれるパラメータが検査者により修正された場合にその修正内容が記録され、
前記標準プロトコルの実行中において、前記検査者により前記複数の工程に対して工程が追加された場合にその追加内容が記録され、
前記標準プロトコルの実行終了時において、記録された前記修正内容及び前記追加内容に基づいて前記専用プロトコル情報が生成され、
前記標準プロトコルの実行終了時に生成される前記専用プロトコル情報には、前記特定の被検者の被検者情報が含まれ、且つ、前記標準プロトコルを構成する前記複数の工程の実行により前記特定の被検者から取得された複数の超音波画像が複数の参照画像として関連付けられる、
ことを特徴とする超音波検査支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置及び超音波検査支援方法に関し、特に、順次実行される複数の工程からなる検査プロトコルに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査に際しては、通常、検査ガイドライン等で定められた手順に従って、一連の工程が順次実施される。例えば、腹部の超音波検査においては、各工程において、診断対象臓器における所定の断面が断層画像として表示される。各断層画像上において必要な計測が実施される。各工程の最後に、工程実行結果(断層画像、計測結果、所見等)がストアされる。
【0003】
一連の工程の実行過程において検査者を支援するために、超音波診断装置には、検査アシスト機能として、幾つかの検査プロトコルが用意されている。例えば、特定の検査プロトコルを選択した上で、それを実行させると、工程ごとに事前に設定された実行条件が自動的に設定される。また、その工程の実行中に、必要な計測が起動する。ストア操作が行われると、次の工程へ自動的に遷移する。検査プロトコルを構成する個々の工程は、画像観察の観点からビュー(View)とも呼ばれる。
【0004】
特許文献1には、被検者に対して同人にとって最適な検査プロトコルを適用する超音波診断装置が開示されている。最適な検査プロトコルは、当該被検者に対して適用された過去の検査プロトコルである。特許文献2には、ある検査プロトコルの実行中に新たな検査処理が実行された場合に当該新たな検査処理を分岐プロトコルとして登録する超音波診断装置が開示されている。特許文献3には、画像列に基づいて検査プロトコルを作成する超音波診断装置が開示されている。特許文献1~特許文献3には、汎用的な検査プロトコルから特定の被検者向けの検査プロトコルを生成し、それら2種類の検査プロトコルを併用する超音波診断装置は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-259614号公報
【文献】特開2020-141883号公報
【文献】特開2018-61659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々な被検者に対する超音波検査を支援する観点から、汎用的つまり標準的な検査プロトコルを用意しておく必要がある。その一方、標準的な検査プロトコルを用意しておくだけでは、超音波検査を十分に支援することができない。個々の工程において被検者に応じてパラメータが変更され、あるいは、異常発見時に新たな工程が追加されることもあるところ、そのようにカスタマイズされた検査プロトコルを再利用できれば、個々の被検者に対する次の超音波検査をより効率的に実行することが可能となる。
【0007】
本開示の目的は、被検者に応じて超音波検査をアシストできる超音波診断装置を提供することにある。あるいは、本開示の目的は、検査プロトコルの実行に際して過去の設定内容を活用できる仕組みを実現することにある。あるいは、本開示の目的は、検査プロトコルの利用に際して、汎用性と専用性とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る超音波診断装置は、標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報を生成するプロトコル修正部と、前記標準プロトコルが選択された場合に前記標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において前記標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定し、前記専用プロトコルが選択された場合に前記専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において前記専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定するプロトコル実行制御部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
実施形態に係る超音波検査支援方法は、標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報を生成する工程と、前記標準プロトコルが選択された場合に、前記標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、前記標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定する工程と、前記専用プロトコルが選択された場合に、前記専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、前記専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定すると共に、前記特定の被検者から取得された情報であって前記専用プロトコルに関連付けられた参照情報を表示する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、被検者に応じて超音波検査をアシストできる。あるいは、本開示によれば、検査プロトコルの実行に際して過去の設定内容を活用できる。あるいは、本開示によれば、検査プロトコルの利用に際して、汎用性と専用性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【
図4】複数の標準プロトコル管理テーブルを示す図である。
【
図5】複数の専用プロトコル管理テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、プロトコル修正部、及び、プロトコル実行制御部を有する。プロトコル修正部は、標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報を生成する。プロトコル実行制御部は、標準プロトコルが選択された場合に標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定し、専用プロトコルが選択された場合に専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件を順次設定する。
【0014】
上記構成によれば、プロトコル修正部により標準プロトコル情報が修正されて専用プロトコル情報が生成される。プロトコル実行時には、標準プロトコル及び専用プロトコルを選択し得る。新しい被検者に対しては標準プロトコルを適用し得る。専用プロトコルが生成されている被検者については、当該専用プロトコルを適用して超音波検査をより支援することが可能となる。
【0015】
標準プロトコルの修正に際しては、当該標準プロトコルを構成する複数の工程の実行過程で検査者により入力又は指定されるパラメータが用いられる。例えば、標準プロトコルにおいてデフォルト値として定められた診断深さが検査者により変更された場合に、変更後の診断深さが反映された専用プロトコルが生成される。
【0016】
実施形態において、プロトコル修正部は、専用プロトコルを構成する一連の工程に対し、それらの実行により取得された複数の超音波画像を複数の参照画像として関連付けておく参照画像関連付け部を有する。プロトコル実行制御部は、専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において複数の参照画像を順次表示する参照画像表示制御部を有する。この構成によれば、過去において特定の被検者から取得した複数の超音波画像を今回の超音波検査時に段階的に表示し得る。それらの超音波画像の参照により、プローブの位置及び姿勢の再現を容易に行える。また疾患部位の性状の変化を把握し易くなる。
【0017】
実施形態において、プロトコル修正部は、専用プロトコル中の計測付き工程に対し、当該計測付き工程の実行により取得された計測値を関連付けておく計測値関連付け部を有する。プロトコル実行制御部は、専用プロトコル中の計測付き工程の実行時に、当該計測付き工程に関連付けられた過去の1又は複数の計測値を表示する計測値表示制御部を有する。この構成によれば、過去において取得された計測値を参照しつつ今回の計測を実行できる。計測値を取得した時点でそれを過去の計測値と比較することも容易である。
【0018】
実施形態において、計測値表示制御部は、過去の複数の計測値を計測値グラフとして表示する機能を有する。この構成によれば、計測値の時間的な変化を把握し易くなる。
【0019】
実施形態に係る超音波診断装置は、専用プロトコルに対し、特定の被検者から時系列順で取得された複数の検査値を関連付けておく検査値関連付け部を含む。プロトコル実行制御部は、専用プロトコルの実行に際し当該専用プロトコルに関連付けられた複数の検査値を表す検査値グラフを表示する検査値表示制御部を有する。この構成によれば、検査値の時間的な変化を考慮して超音波検査を遂行できる。
【0020】
実施形態において、標準プロトコル情報は、標準プロトコルを構成する複数の工程を実行するための複数の工程情報を含む。プロトコル修正部は、複数の工程情報の内で修正対象となった工程情報の内容を修正する機能と、複数の工程情報に対して新しい工程情報を加える機能と、を含む。プロトコル修正部が、工程を削除する機能、工程をコピーする機能等を備えていてもよい。
【0021】
実施形態に係る超音波検査支援方法は、第1工程、第2工程、及び、第3工程を有する。第1工程では、標準的な検査プロトコルである標準プロトコルを実行するための標準プロトコル情報を修正することにより、特定の被検者用の検査プロトコルである専用プロトコルを実行するための専用プロトコル情報が生成される。第2工程では、標準プロトコルが選択された場合に、標準プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、標準プロトコル情報に基づいて複数の実行条件が順次設定される。第3工程では、専用プロトコルが選択された場合に、専用プロトコルを構成する一連の工程を順次実行する過程において、専用プロトコル情報に基づいて複数の実行条件が順次設定され、これと共に、特定の被検者から取得された情報であって専用プロトコルに関連付けられた参照情報が表示される。
【0022】
上記構成によれば、被検者に応じて標準プロトコル又は専用プロトコルを選択し得る。専用プロトコルの選択時には過去の設定実績を基礎とした支援を行える。被検者に基づいて特定の専用プロトコルが自動的に選択されてもよい。被検者と検査部位(又は診療科目)の組み合わせに基づいて特定の専用プロトコルが自動的に選択されてもよい。各工程に対してプローブ位置情報等の他の情報が紐付けられてもよい。以下においては、場合により、標準プロトコル及び専用プロトコルを両者まとめて単にプロトコルと称する。
【0023】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置が示されている。この超音波診断装置は、医療機関に設置され、超音波検査に際して利用される医用装置である。
【0024】
プローブ10は、超音波の送受波を行うものである。プローブ10内には、複数の振動素子からなる振動素子アレイが設けられている。振動素子アレイにより超音波ビームが形成され、それが電子的に走査される。これによりビーム走査面が形成される。
【0025】
送受信部12は、送信時において振動素子アレイに対して複数の送信信号を並列的に供給し、受信時において振動素子アレイからの複数の受信信号に対して整相加算(遅延加算)を適用する。これによりビームデータが構成される。1回の超音波ビームの走査により1つの受信フレームデータが生成される。1つの受信フレームデータは電子走査方向に並ぶ複数のビームデータにより構成される。個々のビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。
【0026】
送受信部12から順次出力される受信フレームデータが画像形成部14へ順次入力される。画像形成部14は、DSC(デジタルスキャンコンバータ)を含む。DSCは、受信フレームデータ列から表示フレームデータ列を生成する。DSCは、座標変換機能、画素補間機能等を有する。1つの表示フレームデータが1つの断層画像データを構成する。
図1には、図示されていないが多様な超音波画像を形成する画像形成部が設けられている。
【0027】
表示処理部16は、画像合成機能、カラー処理機能等を有する。表示処理部16により表示器20に表示される表示画像が形成される。表示画像には、超音波画像が含まれる。超音波画像は、リアルタイム動作時において動画像であり、フリーズ状態において静止画像である。表示器20は、LCD、有機ELディスプレイ等により構成される。表示画像には、プロセッサ22において生成される各種の画像が含まれる。それらの中には、工程リスト画像、計測リスト画像、計測値グラフ、検査値グラフ等が含まれ得る。
【0028】
プロセッサ22は、プログラムを実行するCPUにより構成される。プロセッサ22は、超音波診断装置内の各構成要素の動作を制御しており、また、必要な情報処理を実行する。
図1おいては、プロセッサ22が発揮する複数の機能が複数のブロックにより表現されている。
【0029】
標準プロトコル実行制御部28は、標準プロトコルを定義した標準プロトコル情報に従って、標準プロトコルの実行を制御するものである。標準プロトコルは汎用的に使用されるプロトコルであり、それは順次実行される複数の工程により構成される。
【0030】
プロトコル修正部30は、標準プロトコル情報を修正することにより、専用プロトコルを定義する専用プロトコル情報を生成する。また、プロトコル修正部30は、専用プロトコル情報を修正することにより、別の専用プロトコル情報を生成する。専用プロトコルは、特定の被検者用のプロトコルであり、それは複数の工程により構成される。標準プロトコル及び専用プロトコルはいずれも検査プロトコルであり、それらの実体に相違はない。もっとも、標準プロトコルは、不特定の被検者のための汎用的、一般的なプロトコルであり、一方、専用プロトコルが特定の被検者のためのカスタマイズされたプロトコルである点において、両者は相違する。
【0031】
専用プロトコル実行制御部32は、専用プロトコルを定義した専用プロトコル情報に従って、専用プロトコルの実行を制御するものである。標準プロトコル実行制御部28と専用プロトコル実行制御部32の実体は同一である。
図1においては、2種類のプロトコルを区別するために、標準プロトコル実行制御部28と専用プロトコル実行制御部32が別々に表現されている。
【0032】
プロトコル実行過程において、個々の工程の実行開始時に、当該工程に対して定められている実行条件が超音波診断装置に設定される。実行条件には、動作モード、診断深さ、送信周波数、送信繰り返し周期、ゲイン、等のパラメータが含まれる。動作モードには、Bモード、CFMモード、PWモード、等がある。計測付き工程の場合、一般に、フリーズ操作後に表示された静止画像上において計測が実行される。計測として、距離計測、面積計測、体積計測、インデックス演算、等が挙げられる。
【0033】
通常、ストア操作があった場合に、次の工程へ遷移する。動画像を表示している状態でストア操作があった場合には、動画像が保存され、静止画像を表示している状態でストア操作があった場合には、静止画像が保存される。保存された画像は、検査レポートの一部となる。通常、画像保存に伴って計測値やアノテーションも保存される。
【0034】
プロトコルの実行過程、具体的には個々の工程の実行時に、検査者により、必要に応じて、任意のパラメータを変更し得る。例えば、診断深さを変更し得る。そのような場合、当該プロトコルの実行終了時に、新たな専用プロトコルが生成される。これにより、次の超音波検査において新たな専用プロトコルを利用することが可能となる。ある工程の実行中に、動作モード等の基本パラメータが変更された場合、プロトコルの実行が一時的に中断され、事実上の新しい工程が追加的に実行される。その工程の完了後、プロトコルの実行が再開される。そのような場合にも、プロトコル修正部30により、当該プロトコルの実行終了時に、追加された工程を含む新たな専用プロトコルが生成される。
【0035】
プロトコル修正部30は、図示の構成例において、参照画像関連付け部34、計測値関連付け部36、及び、検査値関連付け部38を有する。参照画像関連付け部34は、個々の工程でストアされた画像を参照画像として当該工程に関連付けておくものである。計測値関連付け部36は、個々の工程で取得された計測値を当該工程に関連付けておくものである。検査値関連付け部38は、被検者から取得された検査値を専用プロトコルに関連付けておくものである。検査値として、身長、体重、BMI、血液分析結果等が挙げられる。各工程に対してプローブの位置情報が関連付けられてもよい。
【0036】
なお、本願明細書においては、超音波画像に対する計測により取得される値を計測値と称し、超音波検査以外の検査により取得される値を検査値と表する。すなわち、計測値は超音波計測値であり、検査値は非超音波計測値である。
【0037】
専用プロトコル実行制御部32は、図示の構成例において、参照画像表示制御部40、計測値表示制御部42、及び、検査値表示制御部44を有する。参照画像表示制御部40は、個々の工程の実行時に、当該工程に関連付けられている参照画像(前回の検査時に取得された超音波画像)を画面上に表示する制御を実行するものである。工程切り替え時に参照画像の内容も切り替わる。
【0038】
計測値表示制御部42は、個々の工程の実行時に、当該工程に関連付けられている計測値(前回の検査時に取得された計測値)を数値として表示するものである。当該構成に対して時系列順で複数の計測値が関連付けられている場合、それに基づいて計測値グラフが生成され、それを表示し得る。すなわち、計測値表示制御部42は、グラフ作成機能を有している。
【0039】
検査値表示制御部44は、プロトコルの実行時に、それに関連付けられている検査値を数値として表示するものである。当該プロトコルに対して時系列順で複数の検査値が関連付けられている場合、それに基づいて検査値グラフが生成され、それを表示し得る。すなわち、検査値表示制御部44は、グラフ作成機能を有している。
【0040】
記憶部26は、半導体メモリ、ハードディスク等により構成される。記憶部26には、標準プロトコル情報群46、及び、専用プロトコル情報群48が格納される。標準プロトコル情報群46は、複数の診断部位又は複数の診療科目にわたる複数の標準プロトコル情報により構成される。専用プロトコル情報群48は、複数の被検者にわたる複数の専用プロトコル情報により構成される。
【0041】
記憶部26には、標準画像群50、参照画像群52、計測値群54、及び、検査値群56も格納される。標準画像群50は、各標準プロトコルを構成する複数の工程の実行時に表示される複数の標準画像を含むものである。個々の標準画像は、他人の超音波画像、シェーマ図等により構成され、被検者本人から取得された画像ではない。
【0042】
参照画像群は、各被検者から取得された複数の超音波画像により構成される。今回のプロトコル実行過程で、前回のプロトコル実行過程で取得された一連の超音波画像が順次表示される。
【0043】
計測値群54は、各被検者から取得された複数の計測値により構成される。今回のプロトコル実行過程で、前回のプロトコル実行過程で取得された一連の計測値が順次表示される。上記のように数値表示に代えてグラフ表示も可能である。検査値群56は、各被検者から取得された複数の検査値により構成される。今回のプロトコル実行過程で、現在取得された又は過去に取得された検査値を表示し得る。上記のように数値表示に代えてグラフ表示も可能である。
【0044】
プロセッサ22には操作パネル24が接続されている。操作パネル24は、複数のスイッチ、複数のつまみ、キーボード、トラックボール等により構成される。
【0045】
図2には、標準プロトコル情報の一例が示されている。標準プロトコル情報58は、標準プロトコルの実行を制御するに際して必要となる情報である。標準プロトコルは複数の工程からなり、標準プロトコル情報58は複数の工程に対応した複数の工程情報60を含む。個々の工程情報60は、工程番号62、工程名64、実行条件66、標準画像ポインタ68、等を含む。実行条件66は、工程動作を定義する複数のパラメータにより構成される。標準画像ポインタ68は、当該工程に関連付けられた標準画像70を特定するリンク情報であり、それは例えばURLである。各工程の実行開始時に、当該工程に関連付けられた標準画像が表示される。標準画像と超音波画像とを比較しながら、プローブの位置及び姿勢を調整し得る。
【0046】
任意の工程の実行途中において、いずれかのパラメータを変更し得る。例えば、診断深さを変更し得る。
図2において、検査者により修正された複数のパラメータが複数のボックス72により囲まれている。例えば、特定のパラメータが変更後のパラメータ74に置き換えられ(符号74Aを参照)、標準プロトコルが修正される。但し、登録されている標準プロトコルそれ自体の内容は維持される。
【0047】
任意の工程の実行途中において、動作モードが変更された場合、あるいは、他の基本的なパラメータが変更された場合、標準プロトコルの実行が一時的に中断し、事実上の追加工程が実施される。符号78は追加工程に対応する工程情報78が示されており、その工程情報78は、工程番号62a、工程名64a、実行条件66a、標準画像ポインタ68a、等を含む。追加工程で超音波画像がストアされた場合にそれが参照画像として管理される。標準画像ポインタ68aは、標準画像の所在を特定する情報である。符号76は、追加工程が差し込まれた位置を示している。
【0048】
プロトコル修正部により、パラメータ修正や工程追加が管理及び記録される(符号80を参照)。それらの情報に基づいて、現在、超音波検査を行っている被検者のための専用プロトコルが生成される。
【0049】
図3には、専用プロトコル情報の一例が示されている。専用プロトコル情報88は、専用プロトコルの実行を制御するに際して必要となる情報である。専用プロトコルは、複数の工程からなり、専用プロトコル情報88は、複数の工程に対応した複数の工程情報90を含む。個々の工程情報90は、工程番号92、工程名94、実行条件96、参照画像ポインタ98、計測履歴100、等を含む。実行条件96は、工程動作を定義する複数のパラメータにより構成される。参照画像ポインタ98は、当該工程に関連付けられた参照画像(前回の検査時に取得された画像)102を特定するリンク情報であり、それは例えばURLである。各工程の実行開始時に、当該工程に関連付けられた参照画像が表示される。参照画像と超音波画像とを比較しながら、プローブの位置及び姿勢を調整し得る。また、参照画像を参考にしつつ超音波画像の読影(経過観察を含む)を行える。
【0050】
専用プロトコル情報を修正することも可能である。複数のボックス104で囲まれた複数のパラメータはそれぞれ修正されたパラメータである。例えば、パラメータ106が元のパラメータに差し替えられる(符号106Aを参照)。工程追加が行われてもよい。
【0051】
専用プロトコル情報88には、被検者情報、及び、検査情報が関連付けられる(符号108を参照)。被検者情報は、ID、氏名、性別、年齢、検査部位等を含む。検査情報は、超音波検査以外の検査で取得された検査値群により構成される。
【0052】
図4には、標準プロトコル情報群110の管理例が示されている。例えば、複数の診療科目に対応した複数のテーブル112が構成され、個々のテーブル112によって複数の標準プロトコルが管理される。図示の例では、個々の標準プロトコルについて、ID、標準プロトコル名、及び、ポインタが管理されている。ポインタによって標準プロトコル情報の所在が特定される。
【0053】
図5には、専用プロトコル情報群114の管理例が示されている。ここでは、複数の被検者に対応した複数のテーブル115が構成されている。個々のテーブル115によって複数の専用プロトコルが管理される。図示の例では、個々の専用プロトコルについて、ID、専用プロトコル名、被検者情報、検査情報、及び、ポインタが管理されている。ポインタによって専用プロトコル情報の所在が特定される。このようなテーブル115を構成しておくことにより、被検者ごとに、同人に対して適用可能な1又は複数の専用プロトコル情報を迅速に特定することが可能となる。
【0054】
図6には表示例が示されている。
図6の示すレイアウトは一例であり、状況やニーズに対応した多様なレイアウトを採用し得る。
【0055】
表示画像117には、超音波画像116が含まれる。超音波画像116は例えば断層画像である。特定のプロトコルが選択されると、特定のプロトコルの内容を示す工程リスト118が表示される。工程リスト118は、複数の工程に対応した複数の工程表示120により構成される。現在実行中の工程120Aに対応する工程表示が識別表示される。計測リスト122には、現在実行中の工程に対して定義された1又は複数の計測を特定する情報(計測名等)が表示される。計測値表示欄123には、取得された計測値が表示される。
【0056】
専用プロトコルの実行過程においては、各工程の実行開始時から、当該工程に関連付けられた参照画像124が表示される。それは同一の被検者から取得された同種の超音波画像である。それを参照しながらプローブの位置及び姿勢を調整し得る。また、それを参照しながら、超音波画像116の内容を評価し得る。
【0057】
また、専用プロトコルの実行過程においては、各工程の実行中に、必要に応じて、計測値グラフ126を表示し得る。計測値グラフ126は、同一の被検者から取得された時系列順の複数の計測値を示すものである。1つの計測値しか有しない場合、計測値が数値として表示されてもよいし、今回取得される計測値と共にグラフとして表示されてもよい。
【0058】
また、専用プロトコルの実行過程においては、各工程の実行中に、必要に応じて、検査値グラフ128を表示し得る。検査値グラフ128は、同一の被検者から取得された時系列順の複数の検査値を示すものである。1つの検査値しか有しない場合、計測値が数値として表示される。複数の検査値グラフが表示されてもよい。表示画像117の下部には、ストアされた複数の超音波画像を表す複数のサムネイル画像130が含まれる。
【0059】
図7には、計測値グラフが例示されている。計測値グラフ126Aは、複数の計測値a~dにより構成される。横軸は時間軸であり、縦軸は計測値の大きさを示している。計測値a~cは、過去に取得されたものであり、計測値dは現時点で取得されたものである。このように計測値グラフ126Aに今回取得された計測値dを反映させることにより、経過観察をより行い易くなる。符号132は、計測値dのプロットにより伸びたグラフ部分を示している。
【0060】
図8及び
図9を用いて、超音波診断装置の動作例を説明し、また、実施形態に係る超音波検査支援方法について整理する。
【0061】
S10では、被検者ID等が入力され、それらが受け付けられる。S12では、プロトコル種別が検査者により選択される。具体的には、標準プロトコル又は専用プロトコルが選択される。S14では、選択されたプロトコル種別が判定される。標準プロトコルが選択された場合、S16において、標準プロトコルリストが表示される。専用プロトコルが選択された場合、S18において、専用プロトコルリストが表示される。S20において、検査者により、特定のプロトコルが選択される。
【0062】
被検者IDに対応付けられた専用プロトコルを一意に特定できる場合、S10の工程後に当該専用プロトコルが自動的に選択されてもよい。被検者IDと他の情報(例えば検査部位情報)の組み合わせに基づいて、専用プロトコルが自動的に選択されてもよい。
【0063】
S20では、選択された特定のプロトコルの実行が開始される。具体的には、先頭の工程から順番に工程が順次実行される。それを示すのがS24である。ここでは、k=1,2,3,・・・であることを前提として、第k工程が実行される。その際にパラメータの修正があれば(S26)、それが記録され、また、追加的に工程が実行されれば(S28)、その内容が記録される。
【0064】
S30においては、最終工程の実行が完了したか否かが判断される。未実行の工程が残留している場合、S24が繰り返し実行される。S32において、修正内容が反映された新たしい専用プロトコルを登録するか否かについての問い合わせに対して、検査者がYESを選択した場合、S34で、新たな専用プロトコルが作成され、それが登録される。S32において、検査者がNOを選択した場合、新たな専用プロトコルの登録は見送られる。
【0065】
新たな専用プロトコルが登録されても、元のプロトコル(標準プロトコル、専用プロトコル)は維持される。よって、バージョンの異なる複数の専用プロトコルが生成され得る。バージョンアップに際し、計測値や検査値が引き継がれる。
【0066】
図9には、上記S24の一部について具体例が示されている。図示の内容は、専用プロトコルを前提とするものである。S40では、プロトコル実行制御部により、超音波診断装置に実行条件が設定される。S42で、参照画像を表示すると判断された場合、S44で参照画像が表示される。S46で、計測値グラフを表示すると判断された場合、S48で計測値グラフが表示される。S50で、検査値グラフを表示すると判断された場合、S52で検査値グラフが表示される。各表示要素の表示の有無をフラグ等で事前に指定しておけばよい。
【0067】
上記実施形態によれば、プロトコル修正部により標準プロトコル情報が修正されて専用プロトコル情報が自動的に生成される。その上で、プロトコル実行時に、標準プロトコル及び専用プロトコルを選択し得る。すなわち、新しい被検者に対しては標準プロトコルを適用し得る。専用プロトコルが生成されている被検者については、当該専用プロトコルを適用して超音波検査をより支援することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
22 プロセッサ、26 記憶部、28 標準プロトコル実行制御部、30 プロトコル修正部、32 専用プロトコル実行制御部、46 標準プロトコル情報群、48 専用プロトコル情報群。