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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 3/08 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A61G3/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021146472
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039344
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 陽子
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061380(JP,A)
【文献】特表2019-524386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0356090(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017809(KR,A)
【文献】西独国特許出願公開第02826204(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/08
A61G 3/00
A61G 1/00
B66D 1/00
B66D 1/46
B66D 1/26
B60P 7/073
B60P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される固定対象を固定する固定装置であって、
前記固定対象と接続可能な長尺部材と、前記長尺部材の巻取りまたは前記長尺部材の引き出しが可能な巻取り装置を各々有し、前記固定対象に接続した状態の前記長尺部材を前記巻取り装置によって巻き取ることによって前記固定対象を固定する、複数の固定機構と、
複数の前記固定機構のうちいずれか1つの前記固定機構を操作可能に設定する設定部と、
操作可能に設定された所定の前記固定機構が所定動作を行っている最中に、他の前記固定機構を操作可能に設定するように前記設定部が操作された場合、前記所定の固定機構の前記所定動作の終了後に、前記他の固定機構を操作可能に設定する制御部と、を備えた固定装置。
【請求項2】
前記所定動作は、前記固定対象に接続された前記長尺部材に張力をかけることによって前記固定対象を固縛する固縛動作を含む、
請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記所定動作は、前記固定対象に接続された前記長尺部材への張力を緩めることによって固縛された前記固定対象の固縛を解除する固縛解除動作を含む、
請求項1または2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の固定機構が前記所定動作を行っている最中において前記設定部が操作されるたびに、当該操作を記憶し、前記所定動作の終了後に、最後の記憶における前記操作に基づいていずれかの前記固定機構を操作可能に設定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項5】
前記固定対象は、車椅子である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を乗り入れ可能な福祉車両には、車椅子を固定する固定装置が設けられている。固定装置は、例えば、車椅子に係合可能な係合部が設けられたベルト等の牽引部材をウインチ装置によって巻き取ることで、車椅子を車両に引っ張り上げて固定する(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1には、2つの車椅子を乗り入れ可能とした福祉車両が開示されている。この福祉車両には、2つの車椅子を固定するための機構として2つのウインチ装置が配置されており、操作するウインチ装置を選択できるように切り替えスイッチが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017―61381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウインチ装置を操作中であっても切り替えスイッチを操作可能であるため、所定のウインチ装置の動作途中に切り替えスイッチが操作されて他のウインチ装置が操作可能に切り替えられた場合、所定のウインチ装置は動作の途中で放置されるおそれがあった。
【0005】
本開示は、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で動作が放置されることを防止可能な固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
第1の態様にかかる固定装置は、車両に搭載される固定対象を固定する固定装置であって、複数の固定機構と、設定部と、制御部と、を備える。複数の固定機構は、長尺部材と、巻取り装置を各々有する。長尺部材は、固定対象と接続可能である。巻取り装置は、長尺部材の巻取りまたは長尺部材の引き出しが可能である。固定機構は、固定対象に接続した状態の長尺部材を巻取り装置によって巻き取ることによって固定対象を固定する。設定部は、複数の固定機構のうちいずれか1つの固定機構を操作可能に設定する。制御部は、操作可能に設定された所定の固定機構が所定動作を行っている最中に、他の固定機構を操作可能に設定するように設定部が操作された場合、所定の固定機構の所定動作の終了後に、他の固定機構を操作可能に設定する。
【0008】
これにより、所定の固定機構による所定動作が終了した後に、他の固定機構が操作可能に設定されるため、所定動作を途中で放置することなく終了することができる。このため、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で動作が放置されることを防止することができる。
【0009】
第2の態様にかかる固定装置は、第1の態様にかかる固定装置であって、所定動作は、固定対象に接続された長尺部材に張力をかけることによって固定対象を固縛する固縛動作を含む。
【0010】
これにより、所定の固定機構による固縛動作中に、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で固縛動作を放置することなく完了することができる。
【0011】
第3の態様にかかる固定装置は、第1または第2の態様にかかる固定装置であって、所定動作は、固定対象に接続された長尺部材への張力を緩めることによって固縛された固定対象の固縛を解除する固縛解除動作を含む。
【0012】
これにより、所定の固定機構による固縛解除動作中に、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で固縛解除動作を放置することなく完了することができる。
【0013】
第4の態様にかかる固定装置は、第1~第3のいずれかの態様の固定装置であって、制御部は、所定の固定機構が所定動作を行っている最中において設定部が操作されるたびに、当該操作を記憶し、所定動作の終了後に、最後の記憶における操作に基づいていずれかの固定機構を操作可能に設定する。
【0014】
これにより、設定部を繰り返し操作した場合には、操作した回数分だけ設定処理を行うため、動作が遅くなる可能性があるが、本態様では、最後の操作に基づく処理だけ実行されるため、動作が遅くなることを低減することができる。
【0015】
第5の態様にかかる固定装置は、第1~第4のいずれかの態様の固定装置であって、固定対象は、車椅子である。
【0016】
これにより、所定の固定機構による車椅子に対する所定動作が終了した後に、他の固定機構が操作可能に設定されるため、所定動作を途中で放置することなく終了することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で動作が放置されることを防止可能な固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示にかかる実施の形態の固定装置が車両に配置された状態を模式的に示す斜視図。
図2】本開示にかかる実施の形態の固定装置が車両に配置された状態を示す平面模式図。
図3】本開示にかかる実施の形態の固定装置によって車椅子が固定されている状態を示す図。
図4】本開示にかかる実施の形態の固定装置の制御構成を示すブロック図。
図5】本開示にかかる実施の形態の固定装置の制御動作を示すフロー図。
図6】本開示にかかる実施の形態の固定装置の制御動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本開示にかかる実施の形態の固定装置について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(固定装置1の概要)
図1は、本実施の形態の固定装置1が車両200に配置された状態を模式的に示す斜視図である。図2は、固定装置1が車両200に配置された状態を示す平面模式図である。
【0021】
固定装置1は、車両200に搭載される固定対象を固定する。本実施の形態では、固定対象の一例として車椅子を例に挙げて説明する。
【0022】
車両200は、図1に示すように、後部ドア201と、後部ドア201によって開閉される後部202と、を有している。図1では、後部ドア201が開かれて後部202が車両200の外側に開放されている。
【0023】
本実施の形態の固定装置1は、後部202の床面に配置されている。固定装置1は、2つの車椅子300を車両200に固定する。固定装置1は、2つの固定機構10を有している。2つの固定機構10は、それぞれ一対の固定用のベルト部材31を有しており、ベルト部材31の先端に設けられたフック32が車椅子300の前側の左右のフレーム301に係止される。
【0024】
スロープ203は、車椅子300を車両200に昇降させるためのものである。スロープ203は車両200の後部に繋がるように配置される。スロープ203は、車両200の外側の地面に向かって下方に傾斜するように設けられている。図1では、車椅子300は、車両200に対してスロープ203を挟んで地面に載置されている。スロープ203は、車椅子300が通過可能に構成され、車椅子の種類に応じて材質、幅および長さが適宜設定される。
【0025】
図1に示す状態からベルト部材31が巻き取られることで車椅子300はスロープ203上を上昇して車両200内の後部202に引き上げられる。
【0026】
(固定装置1)
本実施の形態の固定装置1は、後部202の床面に配置されている。固定装置1は、2つの車椅子300を車両200の床面に固定することができる。
【0027】
固定装置1は、図2に示すように、2つの固定機構10(図1参照)と、操作部11(図1参照)と、制御部12(図4参照)と、リレー切り替え装置14と、を備える。固定機構10の各々が、車椅子300を固定する。図3は、固定機構10によって車椅子が固定されている状態を示す図である。
【0028】
操作部11は、作業者によって操作される複数のスイッチを有する。作業者による操作部11の操作によって制御部12はリレー切り替え装置14を制御し、いずれか一方の固定機構10を操作可能に設定でき、操作可能に設定した固定機構10を動作できる。制御部12は、操作部11の操作に基づいて、固定機構10を制御し、記憶部13によって、詳しくは後述するが、一方の固定機構10が固縛動作または固縛解除動作を行っている最中に、他方の固定機構10を操作可能に設定しようとして切り替えスイッチ51を切り替えた場合、その切り替えた履歴を記憶する。
【0029】
(固定機構10)
2つの固定機構10は、同様の構成である。2つの固定機構10を区別する必要がある場合には、固定機構10a、10bと記載し、区別する必要がない場合には、固定機構10と記載する。図2では、固定機構10a、10bは、点線で囲まれて示されている。なお、図1図2および後述する図4では、固定機構10(10a)、固定機構10(10b)と示す。
【0030】
固定機構10aは、図2に示すように、後部202の出口近傍に配置されており、固定機構10bは、固定機構10aよりも前側に配置されている。
【0031】
2つの固定機構10a、10bの各々は、図1に示すように、2つのウインチ部21と、固定部22と、を有する。図3に示すように、2つのウインチ部21と固定部22によって一台の車椅子300が車両200に固定される。なお、本実施の形態では、車椅子300を車両200へ乗降させる際に左右の安定性を向上するためにウインチ部21が2個設けられているが、ウインチ部21の数は1個であってもよい。
【0032】
(ウインチ部21)
2つのウインチ部21は、車椅子300の幅方向に互いに間隔を空けて後部202に設けられている。ウインチ部21は、後部202のフロア上に配置されている。
【0033】
各々のウインチ部21は、図1に示すように、ベルト部材31と、フック32と、巻取り装置30と、有する。ベルト部材31は巻取り装置30から繰り出される。巻取り装置30は、ベルト部材31の巻き取りまたは送り出し(引き出しともいう)を行う。
【0034】
フック32は、ベルト部材31の先端に配置されている。フック32は、図1および図3に示すように、車椅子300の前側の左または右のフレーム301に係止可能である。
【0035】
図4は、本実施の形態の固定装置1の制御構成を示すブロック図である。巻取り装置30は、フック32(図1参照)と、ドラム33と、モータ34と、クラッチ35と、回転センサ36と、ロック部37と、を有する。
ドラム33は、車両200の床面に固定されたフレームに回転可能に支持されている。ドラム33には、ベルト部材31が巻き回されている。ドラム33を第1方向に回転することによって、ベルト部材31がドラム33に巻き取られ、第1方向と反対の第2方向に回転することによってベルト部材31がドラム33から送り出される。
【0036】
モータ34は、ドラム33を回転駆動する。モータ34の回転駆動によって、ベルト部材31の巻き取り、または送り出しが行われる。
【0037】
クラッチ35は、モータ34の回転駆動をドラム33に伝達、またはモータ34からドラム33への回転駆動の伝達を遮断する。
【0038】
回転センサ36は、ドラム33の回転方向と回転速度を検出する。回転センサ36は、例えばホール素子を用いることができる。回転センサ36は、ドラム33の側面に対向して配置されている。ドラム33の側面には、回転軸を中心とした周方向に沿って回転センサ36側にN極およびS極が交互に向くように磁石が配置されている。ドラム33の回転に伴って径方向と周方向の磁場成分が交互に発生する。回転センサ36は、2方向の磁場成分の変化に応じて90度位相差の2つのパルス信号を生成し、制御部12に出力する。制御部12は、2つのパルス信号に基づいて、ドラム33の回転方向と回転速度を検出する。
【0039】
ロック部37は、ドラム33の第1方向(ベルト部材31を巻き取る方向)への回転は可能にし、ドラム33の第2方向(ベルト部材31を送り出す(引き出す)方向)への回転をロックする。ロック部37としては、例えば、ドラム33の回転軸に固定され、ドラム33とともに回転するギヤと、ギヤの歯の間に嵌合可能な嵌合部材と、嵌合部材をギヤの歯の間から出し入れするソレノイドと、を備えた構成が挙げられる。ギヤと嵌合部材はラチェット機構を構成しており、嵌合部材がギヤの歯の間に配置された状態では、ドラム33の第1方向にギヤは回転できるが、ドラム33の第2方向には嵌合部材の干渉によってギヤは回転できない。また、ソレノイドに通電されていない状態では、嵌合部材がギヤの歯の間に嵌り込んでおり、ドラム33の第2方向への回転がロックされる。ソレノイドに通電することによって、嵌合部材がドラム33とともに回転するギヤの歯の間から離間し、ドラム33の第2方向への回転のロックを解除することができる。
【0040】
(固定部22)
固定部22は、図1および図3に示すように、一対のベルト部材41と、一対のフック42と、を有する。ベルト部材41は、所定の長さを有している。フック42は、ベルト部材41の先端に配置されている。フック42は、図3に示すように、車椅子300の車輪302に係止しても良いし、車椅子300の後部又は車輪302に設けられた図示しないフレームに係止しても良い。
【0041】
(操作部11)
操作部11は、作業者によって操作される複数のスイッチを有する。操作部11は、図1に示すように、車両200の後部202に配置されている。操作部11は、第1操作部分11aと、第2操作部分11bと、を有する。第1操作部分11aは、図1に示すように、車両200の後部202の側面等に固定されている。第2操作部分11bは、コードが接続されており、作業者が手に把持して移動可能に構成されている。これにより、車椅子300を車両200に乗せる際に、作業者が車椅子300を押しながら、把持した操作部11を操作して固定機構10を作動できる。また、操作部11は、制御部12と有線で接続してもよいが、無線で接続してもよい。
【0042】
操作部11は、図4に示すように、切り替えスイッチ51(設定部の一例)と、入スイッチ52と、出スイッチ53と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55と、を有する。作業者が、操作部11の各々のスイッチを操作すると、操作したスイッチから信号が制御部12に送信され、制御部12は、スイッチに応じて固定機構10aまたは固定機構10bに動作指示を行う。なお、切り替えスイッチ51(設定部の一例)と、入スイッチ52と、出スイッチ53と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55は、第1操作部分11aと第2操作部分11bに適宜分けて配置されている。例えば、車椅子300を動かしながら操作できるように、入スイッチ52と出スイッチ53が、第1操作部分11aに配置されており、切り替えスイッチ51と、固縛スイッチ54と、固縛解除スイッチ55が、第2操作部分11bに配置されていてもよい。また、第1操作部分11aと第2操作部分11bのいずれか一方だけ設けられていてもよいし、更に、別にスイッチが配置された操作部が設けられていてもよい。
【0043】
(切り替えスイッチ51)
切り替えスイッチ51は、固定機構10aを操作可能に設定する場合と、固定機構10bを操作可能に設定する場合と、固定機構10a、10bのいずれも操作可能に設定しない場合と、を切り替える。なお、固定機構10aを操作可能に設定する場合は、固定機構10aを選択する場合ともいえ、固定機構10bを操作可能に設定する場合は、固定機構10bを選択する場合ともいえ、固定機構10a、10bのいずれも操作可能に設定しない場合は、固定機構10a、10bのいずれも選択しない場合ともいえる。
【0044】
操作可能とは、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55が操作された場合に、スイッチ操作に合わせて固定機構10が動作することである。例えば、切り替えスイッチ51によって固定機構10aが操作可能に設定されている場合には、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55が操作されると、固定機構10aが動作する。また、切り替えスイッチ51によって固定機構10bが操作可能に設定されている場合には、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、または固縛解除スイッチ55が操作されると、固定機構10bが動作する。
【0045】
なお、切り替えスイッチ51は、固定機構10aを操作可能に設定する場合の位置と、固定機構10bを操作可能に設定する場合の位置と、いずれも操作可能に設定しない場合の位置の3つの位置をとるレバー状のスイッチであってもよいし、それぞれの場合に対応する釦状のスイッチが設けられていてもよい。また、3つの場合が、押下するたびに切り換えられる釦状のスイッチが設けられていてもよいし、3つの場合が、液晶ディスプレイに表示されており、それらを選択する表示が行われてもよい。また、固定機構10aまたは固定機構10bのいずれが操作可能に設定されているかを示すランプが設けられていてもよいし、液晶ディスプレイに表示されていてもよい。
【0046】
(入スイッチ52)
入スイッチ52は、固定機構10aまたは固定機構10bにベルト部材41を巻き取る巻取り動作を行わせるためのスイッチである。入スイッチ52が作業者によって操作されると、ロック部37によるドラム33のロックが解除され、クラッチ35が動作してモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34が回転されることによってドラム33も回転し、ベルト部材31がドラム33に巻き取られる。入スイッチ52が操作されている間(例えば、押下されている間)、ドラム33が第1方向に回転してベルト部材31が巻き取られる。入スイッチ52の操作を停止すると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、ベルト部材31の巻き取り動作も停止する。
【0047】
入スイッチ52は、例えばスロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202に乗せる際に使用される。車椅子300を車両200に乗せる際には、固定機構10aまたは固定機構10bの2つのウインチ部21のドラム33から引き出されたベルト部材31の先端のフック32が、車椅子300の左右のフレーム301に係止される。次に、作業者が、車椅子300を押すとともに、入スイッチ52を操作することによって、ベルト部材31がドラム33に巻き取られ、スロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202に乗せることができる。
【0048】
(出スイッチ53)
出スイッチ53は、固定機構10aまたは固定機構10bにベルト部材41を送り出す送り出し(引き出し)動作を行わせるためのスイッチである。出スイッチ53が作業者によって操作されると、ロック部37によるドラム33のロックが解除され、クラッチ35が動作してモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34の回転によってドラム33が第1方向と反対の第2方向に回転し、ベルト部材31がドラム33から送り出される。出スイッチ53が操作されている間(例えば、押下されている間)、ドラム33が回転してベルト部材31が送り出される。出スイッチ53の操作を停止すると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、ベルト部材31の送り出し動作も停止する。
【0049】
出スイッチ53は、例えばスロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202から地面に降ろす際に使用される。車椅子300を車両200に降ろす際には、固定部22のフック42による車椅子300の係止(図3参照)を解除する。次に、作業者が、車椅子300を引き出すとともに、出スイッチ53を操作することによって、ベルト部材31がドラム33から送り出され、スロープ203を介して車椅子300を車両200の後部202から降ろすことができる。
【0050】
なお、出スイッチ53は、モータ34を回転させずにロック部37によるドラム33のロックのみを解除してベルト部材41を引き出し可能な状態にするだけでもよい。
【0051】
(固縛スイッチ54)
固縛スイッチ54は、固定機構10aまたは固定機構10bに固縛動作(所定動作の一例)を行わせるスイッチである。固縛動作は、車両200の後部202に引き上げた車椅子300が車両200の走行によって動かないように、ベルト部材31、41に張力をかけることによって車椅子300を固縛する動作である。
【0052】
具体的には、入スイッチ52の操作によって車両200の後部202上に車椅子300が引き上げられた後、固定部22の2つのフック42が車椅子300の左右の車輪302に係止される。その後、固縛スイッチ54を操作することによってクラッチ35が動作されてモータ34の回転駆動がドラム33に伝達される状態となる。そして、モータ34が回転されてドラム33が回転し、ベルト部材31がドラム33に巻き取られる。ベルト部材31、41に張力がかかることによってドラム33が回転できなくなると、モータ34の回転が停止され、クラッチ35が動作してモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態となる。これにより、ドラム33の回転が停止し、固縛動作が完了する。なお、ロック部37によってドラム33の第2方向への回転がロックされているため、モータ34の回転を停止してもベルト部材31が緩まない。
【0053】
これによって車椅子300が車両200に固定され、車両200が走行した場合でも安定した状態を保つことができる。なお、回転センサ36によって所定時間の間、ドラム33が回転していないことが検出された場合に、制御部12はベルト部材31に固縛に必要なテンションがかかったと判定し、モータ34の停止と、クラッチ35による駆動伝達の遮断を行う。このように、制御部12がモータ34の停止まで行うため、入スイッチ52および出スイッチ53と異なり、固縛スイッチ54は操作し続ける必要はなく、1回操作するだけでよい。
【0054】
(固縛解除スイッチ55)
固縛解除スイッチ55は、固定機構10aまたは固定機構10bに固縛解除動作(所定動作の一例)を行わせるスイッチである。固縛解除動作は、固縛状態におけるベルト部材31、41への張力を緩めることによって、車椅子300の固縛を解除する動作である。
【0055】
具体的には、固縛解除スイッチ55が操作されると、制御部12がロック部37によるドラム33のロックを解除し、固定解除動作を終了する。これによって、作業者は、ベルト部材31を引き出すことができる。固縛解除スイッチ55も固縛スイッチ54と同様に、1回操作するだけで固縛解除動作が終了するまで行われる。
【0056】
なお、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、および固縛解除スイッチ55の全部または一部は、オン・オフが可能なレバー状のスイッチであってもよいし、押下するたびに切り換えられる釦状のスイッチでもよいし、液晶ディスプレイに表示されていてもよい。
【0057】
(制御部12、記憶部13)
制御部12は、プロセッサを含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、操作部11の操作による入力を受けて、プログラムに従って固定機構10a、10bの制御のための処理を実行する。記憶部13は、例えば前記プロセッサに内蔵される内部レジスタである。或いは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリおよび/またはROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリも含まれ、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶部13は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶部13は、固定機構10a、10bを制御するプログラムおよびデータを記憶している。具体的には、記憶部13は、固定機構10a、10bに巻き取り動作、送り出し動作、固縛動作、および固縛解除動作を行わせるプログラムおよびデータを記憶している。記憶部13は、いずれか一方の固定機構10が固縛動作または固縛解除動作を行っている場合に、作業者が他方の固定機構10を操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を一方の固定機構10から他方の固定機構10に切り替えたとき、切り替えスイッチ51を切り替えた履歴(切替履歴)を記憶する。
【0058】
制御部12は、入スイッチ52の操作信号を受信すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とする。そして、制御部12は、操作信号を受信している間、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させてベルト部材31を巻き取る。入スイッチ52の操作信号の受信が停止すると、制御部12は、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止させてドラム33の回転を停止して、ロック部37を動作させてドラム33のロックを行い、巻取り動作を終了する。
【0059】
制御部12は、出スイッチ53の操作信号を受信すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とする。そして、制御部12は、操作信号を受信している間、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させて、ベルト部材31をドラム33から送り出す。そして、出スイッチ53の操作信号の受信が停止すると、制御部12は、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止させてドラム33の回転を停止して、ロック部37を動作させてドラム33のロックを行い、送り出し動作を終了する。
【0060】
制御部12は、固縛スイッチ54の操作信号を受信すると、クラッチ35を動作してモータ34の駆動をドラム33に伝達可能な状態とし、モータ34を駆動することによってドラム33を回転させてベルト部材31を巻き取る。そして、所定時間、ドラム33の回転が回転センサ36によって検出されない場合、制御部12は、ベルト部材31に固縛に必要な張力がかかりドラム33の回転が停止したと判断し、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とする。そして、制御部12は、モータ34を停止して固縛動作を終了する。
【0061】
制御部12は、固縛解除スイッチ55の操作信号を受信すると、ロック部37を動作させてドラム33のロックを解除し、固縛解除動作を終了する。
【0062】
具体的には、制御部12は、固定機構10bから固定機構10aに選択を切り替えるような切り替えスイッチ51の操作信号(切り替えスイッチ51で固定機構10aを選択した際に出力される信号)を受信した場合、固定機構10bにおいて固縛動作または固縛解除動作を行っている最中か否かを判断する。制御部12は、固定機構10bから固定機構10aに切り替えるような切り替えスイッチ51の操作信号を受信した際に、固定機構10bにおいて固縛動作または固縛解除動作が行われていると判断した場合には、固定機構10bにおける固縛動作または固縛解除動作が終了した後に、固定機構10aを操作可能に設定する。制御部12は、固定機構10bから固定機構10aに選択を切り替えるような切り替えスイッチ51の操作信号を受信した際に、固定機構10bにおいて固縛動作または固縛解除動作が行われていると判断した場合には、固定機構10aに切り替えたという切り替えスイッチ51の履歴(切替履歴)を記憶部13に記憶する。
記憶する切替履歴は、操作信号を受信した度に上書きされても良いし、各操作切替内容がそれぞれ保存されていても良い。
【0063】
また、制御部12は、固定機構10bから固定機構10aに選択を切り替えるような切り替えスイッチ51の操作信号(切り替えスイッチ51で固定機構10aを選択した際に出力される信号)を受信した際に、固定機構10bにおいて固縛動作または固縛解除動作が行われていないと判断した場合には、すぐに固定機構10aを操作可能に設定する。なお、制御部12が固定機構10aから固定機構10bへの切り替え信号を受信した場合も上記と同様である。
【0064】
(リレー切り替え装置14)
リレー切り替え装置14は、制御部12と2つの固定機構10a、10bとの間に配置されている。リレー切り替え装置14は、切り替えスイッチ51の操作に基づく制御部12の制御により、2つの固定機構10a、10bのうちいずれか一方を動作可能にする。ユーザによって切り替えスイッチ51が操作され、制御部12が切り替えスイッチ51の変化を検出すると、制御部12は、リレー切り替え装置14を制御して、切り替えられた方の固定機構10にリレーを切り替える。これにより、切り替えられた方の固定機構10が動作可能に設定される。
【0065】
<動作>
次に、本実施の形態の固定装置1の制御動作について説明する。
【0066】
図5および図6は、固定装置1の制御動作を説明するフロー図である。なお、図に記載の(i)と(ii)において、図5に記載のフローと図6に記載のフローは繋がっている。
【0067】
はじめに、ステップS10において、制御部12は、固定機構10aを選択(固定機構10aを操作可能に設定)している最中であるか否かを判定する。この判定は、制御部12が受信した切り替えスイッチ51からの操作信号に基づいて判定することができる。
【0068】
固定機構10aを操作可能に設定している場合、ステップS11において、作業者によって固縛スイッチ54が操作されると、制御部12は、固縛スイッチ54の操作信号を受信する。
【0069】
固縛スイッチ54の操作信号を受信すると、ステップS12において、制御部12は、固定機構10aのクラッチ35を作動させてモータ34の駆動がドラム33に伝達する状態にして、モータ34を回転する。これにより、モータ34の回転に伴ってドラム33が回転して固縛動作が開始する。
【0070】
次に、ステップS13において、制御部12は、固縛動作が完了したか否かを判定する。制御部12は、回転センサ36によるドラム33の回転の検出に基づいてドラム33の回転が停止したと判断すると、クラッチ35を動作させてモータ34からドラム33への回転駆動の伝達が遮断された状態とし、モータ34を停止して固縛動作を終了する。すなわち、制御部12は、ドラム33の回転が停止したと判断してから、クラッチを動作してモータ34を停止する指示を行った後に、固縛動作が完了したと判断する。なお、例えば回転センサ36が上述したホール素子の場合、回転センサ36からのパルス信号を所定時間の間受信しなかったときに、制御部12は、ドラム33の回転が停止したと判断する。
【0071】
ステップS13において、固縛動作が完了していないと判定された場合、制御は、ステップS14に進む。
【0072】
ステップS14において、制御部12は、切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたか否かを判定する。切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたと判定されない場合、制御はステップS13に戻り、固縛動作が完了したか否かの判定が行われる。一方、切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたと判定された場合、制御はステップS15に進む。
【0073】
そして、ステップS15において、制御部12は、記憶部13の切替履歴に、固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を挿入する。
【0074】
次に、ステップS16において、制御部12は、切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたかを判定する。切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたと判定されない場合、制御はステップS13に戻り、固縛動作が完了したか否かの判定が行われる。一方、切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたと判定された場合、制御はステップS17に進む。
【0075】
そして、ステップS17において、制御部12は、記憶部13の切替履歴に、固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を挿入する。ここで、制御部12は、固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を、ステップS15において固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴に上書きして記憶部13に記憶する。このため、ステップS15における固定機構10bへの切り替えの履歴は記憶部13から消去され、ステップS17における固定機構10aへの切り替えの履歴が記憶部13に存在する。
【0076】
ステップS13において固縛動作が完了したと判定されるまで、ステップS14~S17が繰り返される。なお、切り替えスイッチ51の切り替え履歴は、固定機構10aに切り替える操作または固定機構10bに切り替える操作が行われる毎に上書きして記憶部13に記録される。そして、ステップS13において、制御部12は、固縛動作が完了したと判定すると、制御はステップS18に進む。
【0077】
ステップS18において、制御部12は、切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が記憶部13に存在するか否かを判定する。この切り替えの履歴は、固定機構10aまたは固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴である。切り替えた履歴が存在しない場合、制御は終了する。一方、切り替えた履歴が存在する場合、制御はステップS19に進む。
【0078】
ステップS19において、制御部12は、固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が記憶部13に存在するか否かを判定する。固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が存在しない場合には、制御は終了する。
【0079】
一方、固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が存在する場合、ステップS20において、制御部12は、固定機構10bを操作可能に設定する。そして、ステップS21において、制御部12は、履歴を消去し、制御が終了する。
【0080】
次に、ステップS10において、固定機構10aを操作可能に設定している最中でないと判定された場合について説明する。
【0081】
ステップS10において、固定機構10aを操作可能に設定している最中でないと判定された場合、制御はステップS22に進む。
【0082】
ステップS22において、制御部12は、固定機構10bを操作可能に設定している最中であるか否かを判定する。この判定は、制御部12が受信した切り替えスイッチ51からの操作信号に基づいて判定することができる。ステップS22において、固定機構10bが操作可能に設定されていない場合は、切り替えスイッチ51が固定機構10a、10bのいずれも選択していないとして制御は終了する。
【0083】
一方、ステップS22において、固定機構10bが操作可能に設定されている場合には、制御はステップS23に進む。
【0084】
そして、ステップS23において、作業者によって固縛スイッチ54が操作されると、制御部12は、固縛スイッチ54の操作信号を受信する。
【0085】
固縛スイッチ54の操作信号を受信すると、ステップS24において、制御部12は、固定機構10bのクラッチ35を作動させてモータ34の駆動がドラム33に伝達する状態にして、モータ34を回転する。これにより、モータ34の回転に伴ってドラム33が回転して固縛動作が開始する。
【0086】
次に、ステップS25において、制御部12は、固縛動作が完了したか否かを判定する。ステップS25において、固縛動作が完了していないと判定された場合、制御は、ステップS26に進む。
【0087】
ステップS26において、制御部12は、切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたか否かを判定する。切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたと判定されない場合、制御はステップS25に戻り、固縛動作が完了したか否かの判定が行われる。一方、切り替えスイッチ51が固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えられたと判定された場合、制御はステップS27に進む。
【0088】
そして、ステップS27において、制御部12は、記憶部13の切替履歴に、固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を挿入する。
【0089】
次に、ステップS28において、制御部12は、切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたかを判定する。切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたと判定されない場合、制御はステップS25に戻り、固縛動作が完了したか否かの判定が行われる。一方、ステップS28において、切り替えスイッチ51が固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えられたと判定した場合、制御はステップS29に進む。
【0090】
そして、ステップS29において、制御部12は、記憶部13の切替履歴に、固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を挿入する。ここで、制御部12は、固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴を、ステップS27において固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴に上書きして記憶部13に記憶する。このため、ステップS27における固定機構10aへの切り替えの履歴は記憶部13から消去され、ステップS29における固定機構10bへの切り替えの履歴が記憶部13に存在する。
【0091】
ステップS25において固縛動作が完了したと判定されるまで、ステップS26~S29が繰り返される。なお、切り替えスイッチ51の切り替え履歴は、固定機構10aに切り替える操作または固定機構10bに切り替える操作が行われる毎に上書きして記憶部13に記録される。そして、ステップS25において、固縛動作が完了したと判定すると、制御は、ステップS30に進む。
【0092】
そして、ステップS30において、制御部12は、切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が記憶部13に存在するか否かを判定する。この切り替えの履歴は、固定機構10aまたは固定機構10bを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴である。切り替えた履歴が存在しない場合、制御は終了する。一方、切り替えた履歴が存在する場合、制御はステップS31に進む。
【0093】
ステップS31において、制御部12は、固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が記憶部13に存在するか否かを判定する。固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が存在しない場合には、制御は終了する。
【0094】
一方、固定機構10aを操作可能に設定するように切り替えスイッチ51を切り替えた履歴が存在する場合、ステップS32において、制御部12は、固定機構10aを操作可能に設定する。そして、ステップS33において、制御部12は、履歴を消去し、制御が終了する。
【0095】
図5および図6では、切り替えスイッチ51を切り替えたときに、切り替え前の一方の固定機構10が固縛動作を行っている場合、固縛動作が完了した後に他方の固定機構10を操作可能に設定することについて説明したが、固縛動作に限らず固縛解除動作についても同様である。
【0096】
切り替えスイッチ51を切り替えたときに切り替え前の固定機構10が固縛解除動作を行っている場合について、図5および図6を用いて説明する。ステップS11、S23において、制御部12が固縛解除スイッチ55の操作信号を受信すると、ステップS12、S24において、制御部12は、ロック部37によるドラム33のロックを解除する。ステップS13、S25では、制御部12は、ロック部37によるドラム33のロックが解除されたか否かを判定する。例えばロック部37に指令信号を送信してから所定時間が経過したことによって、ロックが解除されたと判定されてもよい。
【0097】
これによって、切り替えスイッチ51を切り替えたときに切り替え前の一方の固定機構10が固縛解除動作を行っている場合には、固縛解除動作の完了後に、他方の固定機構10を操作可能に設定するように制御することができる。
なお、固縛動作および固縛動作解除が完了すると固定機構10は待機状態となる。双方の固定機構10が待機状態のときに、切り替えスイッチ51を操作しても切り替え履歴は記憶されない。
【0098】
(特徴等)
本実施の形態の固定装置1では、制御部12は、操作可能に設定された所定の固定機構10が固縛動作または固縛解除動作を行っている最中に、他の固定機構10を操作可能に設定するように操作部11の切り替えスイッチ51が操作された場合、所定の固定機構10の固縛動作または固縛解除動作の終了後に、他の固定機構10を操作可能に設定する。
【0099】
これにより、所定の固定機構10による固縛動作または固縛解除動作が終了した後に、他の固定機構10が操作可能に設定されるため、固縛動作または固縛解除動作を途中で放置することなく終了することができる。このため、操作可能な固定機構10の切り替え操作が行われた場合でも、途中で動作が放置されることを防止することができる。
【0100】
本実施の形態の固定装置1では、制御部12は、所定の固定機構10が固縛動作または固縛解除動作を行っている最中において操作部11の切り替えスイッチ51が操作されるたびに、当該操作を記憶し、固縛動作または固縛解除動作の終了後に、最後の記憶における操作に基づいていずれかの固定機構10を操作可能に設定する。
【0101】
これにより、操作部11の切り替えスイッチ51を繰り返し操作した場合には、操作した回数分だけ設定処理を行うため、動作が遅くなる可能性があるが、本実施の形態では、最後の操作に基づく処理だけ実行されるため、動作が遅くなることを低減することができる。
【0102】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0103】
(A)
上記実施の形態では、固定装置1は、2つの固定機構10a、10bを有しているが、2つに限らなくてもよく、例えば、3つ以上の固定機構が設けられていてもよい。
【0104】
(B)
上記実施の形態では、ウインチ部21はベルト部材31を有しているが、長尺部材であればベルト部材に限らなくてもよく、ワイヤまたはチェーン等であってもよい。
【0105】
(C)
上記本実施の形態では、ベルト部材31の車椅子300への接続の一例として、ベルト部材31の先端に配置されたフック32のフレーム301への係止を例に挙げて説明しているが、これに限らなくてもよい。例えばフレーム301に嵌合するような嵌合部材がベルト部材31の先端に設けられ、嵌合部材がフレーム301に嵌合することによってベルト部材31が車椅子300に接続されていてもよい。また、ベルト部材31を車椅子300に直接結んでもよく、要するに、ベルト部材31を固定対象である車椅子300に接続できさえすればよい。
【0106】
(D)
上記実施の形態では、制御部12は、回転センサ36によってドラム33の回転の停止を検出しているが、これに限らず、例えばテンションセンサ等を配置し、ベルト部材31が所定のテンションの値以上になった場合に、ドラム33の回転が停止していると判断してもよい。また、回転センサ36に代えて、または回転センサ36とともに、モータ34の電流値を観測する電流センサを設け、電流値が所定閾値以上になった場合に、ドラム33の回転が停止したと判断してもよい。
【0107】
(E)
上記実施の形態では、固定部22のベルト部材41の長さは固定であるが、ウインチ部21のようにドラムに巻き回されていてもよい。ドラムは、モータによって回転されてもよいし、ベルト部材41を巻き取る方向に付勢手段が設けられていてもよい。これらの場合、固定部22のドラムには、固縛の際にドラムの回転をロックするロック機構を設ける方が好ましい。また、ロック機構を設ける場合、制御部12が制御を行ってもよい。
【0108】
(F)
上記実施の形態では、切り替えスイッチ51による切り替えの履歴を記憶部13に上書きで記憶しているが、切り替えスイッチ51の切り替えの履歴を全て記憶して、最新の切替履歴からステップS19とステップS31の判断が行われてもよい。
【0109】
(G)
上記実施の形態では、ロック部37は、ドラム33のベルト部材31を巻き取る方向への回転は可能にし、ドラム33のベルト部材31を引き出す方向への回転をロックすると説明したが、ロック部37は、ドラム33の双方への回転をロックしてもよい。この場合、固縛動作の際、ステップS12、S24においてモータ34を回転する前に、ロック部37によるドラム33のロックを解除すればよい。また、ステップS13、S25において制御部12は、モータ34の停止後に、ロック部37によってドラム33のロックを行って固縛動作を終了すればよい。
【0110】
(H)
また、上記実施の形態では、操作部11に、入スイッチ52、出スイッチ53、固縛スイッチ54、固縛解除スイッチ55および切り替えスイッチ51が設けられているが、入スイッチ52および出スイッチ53は設けられていなくてもよい。入スイッチ52および出スイッチ53の代わりに、手動でベルト部材31を巻き取るまたは引き出すことが可能な構成が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示の固定装置は、操作可能な固定機構の切り替え操作が行われた場合でも、途中で動作が放置されることを防止可能な効果を有し、車椅子の車両への乗降補助装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0112】
1 :固定装置
2 :車両
10、10a、10b :固定機構
11 :操作部
12 :制御部
13 :記憶部
21 :ウインチ部
22 :固定部
30 :巻取り装置
31 :ベルト部材
32 :フック
33 :ドラム
34 :モータ
35 :クラッチ
36 :回転センサ
37 :ロック部
41 :ベルト部材
42 :フック
51 :切り替えスイッチ
52 :入スイッチ
53 :出スイッチ
54 :固縛スイッチ
55 :固縛解除スイッチ
200 :車両
201 :後部ドア
202 :後部
203 :スロープ
300 :車椅子
301 :フレーム
302 :車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6