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特許7441203放射線撮像システム、放射線制御装置、放射線撮像システムの制御方法、放射線制御装置の制御方法、プログラム、および、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-20
(45)【発行日】2024-02-29
(54)【発明の名称】放射線撮像システム、放射線制御装置、放射線撮像システムの制御方法、放射線制御装置の制御方法、プログラム、および、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240221BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240221BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/42 500W
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021172654
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062593
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博史
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202034(JP,A)
【文献】特開2021-137255(JP,A)
【文献】特開2013-233420(JP,A)
【文献】特開2019-076219(JP,A)
【文献】特開2017-221328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0112535(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112738391(CN,A)
【文献】特開2013-244166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線を検出する放射線撮像装置と、前記放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置は、前記放射線撮像装置に入射する放射線の線量および前記線量を検出した時刻を含む線量情報を複数回にわたり前記放射線制御装置に出力し、
前記放射線制御装置は、
前記線量情報に基づいて、前記放射線撮像装置に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定し、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報と前記閾値線量との比較および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源を介して放射線の照射を制御し、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報に含まれる時刻と、当該線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項2】
前記放射線制御装置は、複数の前記線量情報のうち1つの線量情報に含まれる時刻と、前記1つの線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項3】
前記放射線制御装置は、複数の前記線量情報のうち2つ以上の線量情報に含まれる時刻と、前記2つ以上の線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項4】
前記放射線制御装置は、前記差が所定の閾値を超えた場合に、前記閾値線量を変更することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項5】
前記放射線制御装置は、複数の前記線量情報のうち予め設定されたタイミングで取得した線量情報に基づいて、前記閾値線量を変更することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項6】
前記放射線制御装置は、複数の前記線量情報のうち、前回、前記閾値線量が変更されてから所定の期間が経過したタイミングで取得した線量情報に基づいて、前記閾値線量を変更することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項7】
前記放射線制御装置は、前記到達線量が前記閾値線量に達する、または、時刻が前記閾値時刻に達する場合に、前記放射線源が放射線の照射を停止するように制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項8】
前記放射線制御装置は、前記線量情報および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源に放射線の照射を停止させる信号を送信することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項9】
前記放射線制御装置が、前記信号を送信してから前記放射線源が放射線の照射を停止するまでの時間に基づいて、前記閾値線量および前記閾値時刻のうち少なくとも一方を変更することを特徴とする請求項8に記載の放射線撮像システム。
【請求項10】
前記放射線制御装置と前記放射線源とが、有線通信によって通信可能に構成されていることを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像システム。
【請求項11】
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とが、無線通信によって通信可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項12】
前記放射線撮像装置の時刻と、前記放射線制御装置の時刻と、を同期させるための同期部をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項13】
前記同期部は、有線通信または無線通信によって、前記放射線撮像装置の時刻と前記放射線制御装置の時刻とを同期させるように構成されていることを特徴とする請求項12に記載の放射線撮像システム。
【請求項14】
前記同期部は、放射線が照射される前に前記放射線撮像装置の時刻と前記放射線制御装置の時刻とを同期させることを特徴とする請求項12または13に記載の放射線撮像システム。
【請求項15】
前記同期部は、前記放射線制御装置の時刻に基づいて、前記放射線撮像装置の時刻を設定することを特徴とする請求項12乃至14の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項16】
放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御するための放射線制御装置であって、
前記放射線制御装置は、
前記放射線撮像装置から出力される前記放射線撮像装置に入射する放射線の線量および前記線量を検出した時刻を含む線量情報に基づいて、前記放射線撮像装置に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定し、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報と前記閾値線量との比較および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源を介して放射線の照射を制御し、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報に含まれる時刻と、当該線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更することを特徴とする放射線制御装置。
【請求項17】
放射線源から照射された放射線を検出する放射線撮像装置と、前記放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムの制御方法であって、
前記制御方法は、
前記放射線撮像装置に、前記放射線撮像装置に入射する放射線の線量および前記線量を検出した時刻を含む線量情報を前記放射線制御装置に出力させる工程と、
前記放射線制御装置に、
前記線量情報に基づいて、前記放射線撮像装置に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定させる工程と、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報と前記閾値線量との比較および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源を介して放射線の照射を制御させる工程と、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報に含まれる時刻と、当該線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更させる工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御するための放射線制御装置の制御方法であって、
前記制御方法は、
前記放射線撮像装置から出力される前記放射線撮像装置に入射する放射線の線量および前記線量を検出した時刻を含む線量情報に基づいて、前記放射線撮像装置に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定する工程と、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報と前記閾値線量との比較および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源を介して放射線の照射を制御する工程と、
前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報に含まれる時刻と、当該線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更する工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
コンピュータに請求項17または18に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像システム、放射線制御装置、放射線撮像システムの制御方法、放射線制御装置の制御方法、プログラム、および、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、放射線を検出するセンサを用いた放射線撮像装置が広く使用されている。こうした放射線撮像装置において、放射線撮像装置に入射する放射線をモニタし、放射線の照射開始や照射終了、放射線の積算照射量を検知することが知られている。特許文献1には、放射線撮像装置から出力される到達線量と到達線量を取得した時刻情報とを含む到達線量情報に基づいて、放射線の照射を制御するための放射線制御装置が放射線の照射を停止するタイミングを制御する放射線撮像システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-202034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線撮像装置から出力された到達線量情報を放射線制御装置が取得するまでの時間は、外来ノイズなどによる通信の遅延などによって変動しうる。放射線制御装置が到達線量情報を取得するまでの時間の変動が、放射線の照射の制御に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、放射線の照射の制御に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る放射線撮像システムは、放射線源から照射された放射線を検出する放射線撮像装置と、前記放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、前記放射線撮像装置は、前記放射線撮像装置に入射する放射線の線量および前記線量を検出した時刻を含む線量情報を複数回にわたり前記放射線制御装置に出力し、前記放射線制御装置は、前記線量情報に基づいて、前記放射線撮像装置に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定し、前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報と前記閾値線量との比較および前記閾値時刻に基づいて、前記放射線源を介して放射線の照射を制御し、前記閾値時刻を特定した後に取得した前記線量情報に含まれる時刻と、当該線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻と、の差に基づいて前記閾値線量を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、放射線の照射の制御に有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る放射線撮像システムの構成例を示す図。
図2図1の放射線撮像システムにおけるデータ通信の例を示す図。
図3図1の放射線撮像システムに用いられる放射線撮像装置の外観の例を示す図。
図4図3の放射線撮像装置の構成例を示す図。
図5図1の放射線撮像システムの動作例を示すフロー図。
図6図1の放射線撮像システムの放射線の照射制御の例を示す図。
図7図1の放射線撮像システムの放射線の照射制御の例を示す図。
図8図1の放射線撮像システムの放射線の照射制御の例を示す図。
図9図1の放射線撮像システムの放射線の照射制御の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
図1~9を参照して、本実施形態による放射線撮像システムの構成および動作について説明する。図1には、本実施形態の放射線撮像システム1000の構成例が示されている。放射線撮像システム1000は、例えば、病院内での放射線画像の撮像時において使用され、その機能的な構成として、放射線撮像装置1001、制御装置1002、放射線源1003、線源制御装置1004、LAN1005(院内LAN)、放射線制御装置1006を含む。
【0012】
放射線撮像装置1001は、放射線源1003から照射され、被験者を透過した放射線を検出する。放射線撮像装置1001によって検出された放射線に基づいて、放射線画像が撮像される。制御装置1002は、機能構成として、通信を制御する通信制御部1021と、制御装置1002の全体的な動作を制御する制御部1022と、を含む。制御装置1002の制御部1022は、例えば、放射線撮像装置1001に対して、撮像条件の設定や動作制御の設定などを行うための設定情報を生成し、制御装置1002の通信制御部1021は、放射線撮像装置1001に対して、撮像条件の設定、動作制御の設定などを行うための設定情報を送信する。
【0013】
放射線撮像装置1001は、制御装置1002に、例えば、設定された撮像条件の設定や動作制御の設定に基づいて撮像した画像情報や到達線量などを送信する。撮像条件の設定や動作設定などの情報の入力、出力を可能とするための、入力デバイスとして、制御装置1002は、例えば、マウス、キーボードを保持し、出力デバイスとしてディスプレイ1023などを備えうる。
【0014】
放射線源1003は、例えば、放射線を発生させるために電子を高電圧で加速し、陽極に衝突させる放射線管とロータを備えている。放射線源1003から照射された放射線は、被験者に照射される。放射線撮像装置1001は、被験者を透過した放射線を検出し放射線画像を形成するための信号を生成する。
【0015】
放射線制御装置1006は、放射線撮像装置1001から出力される、放射線撮像装置1001に入射する放射線の線量および放射線撮像装置1001のセンサータイマー228によって計測される時刻の情報(タイマー情報)を含む線量情報を取得する。放射線制御装置1006は、詳しくは後述するが、線量情報などの情報に基づいて、放射線源1003を介して放射線の照射を制御する照射制御信号を線源制御装置1004に出力する。
【0016】
図2は、放射線撮像システム1000の各装置間におけるデータ通信の例を示す図である。放射線撮像装置1001は、例えば、無線通信部および有線通信部の2つの通信部を含みうる。放射線撮像装置1001は、2つの通信部を使用して制御装置1002の通信制御部1021や放射線制御装置1006の通信制御部1061と通信可能に構成される。制御装置1002と放射線撮像装置1001との間のデータ通信2001では、撮像条件の設定、動作制御の設定、画像情報の転送、到達線量などの情報が伝送される。放射線制御装置1006と放射線撮像装置1001との間のデータ通信2000では、上述した放射線撮像装置1001に入射する線量の情報や線量を検出した時刻の情報を含む線量情報などが伝送される。データ通信2000において、放射線撮像装置1001は、無線通信部を使用して放射線制御装置1006の通信制御部1061と通信可能に構成されていてもよい。放射線制御装置1006は、取得した線量情報に基づいて線源制御装置1004に照射制御信号などの情報を出力する。つまり、放射線制御装置1006と線源制御装置1004との間のデータ通信2003では、照射制御信号などが伝送される。図2に示すデータ通信において、線量情報は、放射線源1003から放射線撮像装置1001へ照射され、放射線撮像装置1001へ到達した線量を示す。
【0017】
放射線制御装置1006から線源制御装置1004に伝達される照射制御信号は、放射線の照射を停止するための停止信号(照射停止信号)と放射線を照射するため照射信号(非照射停止信号)の2つを含みうる。放射線制御装置1006は、停止信号および照射信号の双方、または、一方の信号の出力を制御することによって、線源制御装置1004を介して、放射線源1003からの放射線の照射および停止を制御することが可能である。
【0018】
例えば、停止信号と照射信号との一方の信号の出力を制御する例として、放射線照射中において、放射線制御装置1006は、照射信号を出力し、放射線の照射を停止する際に、放射線制御装置1006は、照射信号の出力を停止する。また、例えば、放射線照射中において、放射線制御装置1006は、停止信号の出力を停止し、放射線の照射を停止する際に、放射線制御装置1006は、停止信号を出力する。このように、照射信号または停止信号の出力と出力の停止とを切り替えることによって、放射線制御装置1006は、線源制御装置1004における放射線の照射または照射停止を制御することができる。
【0019】
また、照射信号および停止信号の双方の信号の出力を制御する例として、放射線制御装置1006は、線源制御装置1004に対して放射線照射中においては、照射信号を出力するとともに停止信号の出力を停止する。また、放射線の照射を停止する際に、放射線制御装置1006は、線源制御装置1004に対して照射信号の出力を停止するとともに停止信号を出力する。このように、照射信号および停止信号の双方の信号の出力を切り替えることによって、放射線制御装置1006は、線源制御装置1004を介した放射線源1003における放射線の照射または照射停止を制御することができる。
【0020】
放射線撮像装置1001が通信を行うための構成として有する有線通信部は、情報伝達のための経路であり、例えば、所定の取り決めを持つ通信規格、RS232CやUSB、イーサネット(登録商標)などの規格を用いたケーブル接続によって、情報の通信を可能にする。また、放射線撮像装置1001が通信を行うための構成として有する無線通信部は、同様に情報伝達のための経路であり、例えば、通信用ICなどを備える回路基板を含む。無線通信部は、不図示のアンテナと電気的に接続され、無線電波を用いて通信を実施する。通信用ICなどを備える回路基板は、アンテナを介して無線LANに基づいたプロトコルの通信処理を行うことが可能である。無線通信の周波数帯、規格や方式は、特に限定されるものではなく、NFC(Near field radio communication)、Bluetooth(登録商標)などの近接無線やUWB(Ultra Wide band)などの方式を使用してもよい。また、無線通信部は、複数の無線通信の方式で通信可能な構成を有し、適宜、適当な方式を選択して通信を行ってもよい。
【0021】
放射線撮像装置1001は、例えば可搬式のカセッテ式のフラットパネルディテクタ(FPD:Flat Panel Detector)であってもよい。図3は、可搬型の放射線撮像装置1001の外観構成を例示的に示す図である。放射線撮像装置1001は、電源投入あるいは遮断を受け付けるための電源ボタン1007、電源供給のためのバッテリ部1008、コネクタ接続部1009を含みうる。バッテリ部1008は、取り外し可能に構成されていてもよい。バッテリ部1008に含まれるバッテリの本体は、バッテリ充電器(充電装置)などによって充電可能に構成されている。
【0022】
放射線撮像装置1001は、制御装置1002とケーブル1010を使用して接続可能であり、コネクタ接続部1009を介してケーブル1010を接続可能である。ケーブル1010にて放射線撮像装置1001と制御装置1002とが接続されると、例えば、放射線撮像装置1001は、有線通信部を使用した通信に切り替わる。これに応じて、図2に示されるような、放射線撮像装置1001と制御装置1002との間の情報の伝達が、有線通信によって実行される。また、接続形態によらず、放射線撮像装置1001において使用する通信部は、ユーザの操作によって制御装置1002から切り替え可能であってもよい。
【0023】
図4は、本実施形態の放射線撮像装置1001の構成例を示す図である。放射線撮像装置1001は、複数の行および複数の列を構成するように撮像領域100に配列された複数の画素を有する。複数の画素は、顕出した放射線に基づいて放射線画像を取得するための複数の画素101と、放射線源1003から照射された放射線の線量を検出する線量検出用の画素121(検出部とも呼ばれうる)と、を含む。画素101は、放射線を電気信号に変換する変換素子102と、列信号線106と変換素子102との間に配置されたスイッチ103とを含む。線量検出用の画素121も画素101と同様に、放射線を電気信号に変換する変換素子122と、検知信号線125と変換素子122との間に配置されたスイッチ123とを含む。
【0024】
変換素子102および変換素子122は、放射線を光に変換するシンチレータと、光を電気信号に変換する光電変換素子と、を含みうる。シンチレータは、例えば、撮像領域100を覆うようにシート状に形成され、複数の画素101、121によって共有されてもよい。また、変換素子102および変換素子122は、放射線を直接に電気信号に変換する変換素子であってもよい。
【0025】
スイッチ103およびスイッチ123は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。本実施形態では、多結晶シリコンを用いたTFTが、スイッチ103、123として用いられる。
【0026】
放射線撮像装置1001は、複数の列信号線106および複数の駆動線104を備える。それぞれの列信号線106は、撮像領域100における複数の列のうちの1つの列に対応しうる。それぞれの駆動線104は、撮像領域100における複数の行のうちの1つの行に対応する。ここで、「列」は、図4における縦方向を示し、「行」は、図4における横方向を示す。それぞれの駆動線104は、駆動部221によって駆動信号が供給される。
【0027】
変換素子102の主電極のうち一方の電極は、スイッチ103の主電極のうち一方の電極に接続され、変換素子102の他方の電極は、バイアス線108に接続される。ここで、バイアス線108は、列方向に延びていて、列方向に配列された複数の変換素子102の他方の電極に共通に接続される。バイアス線108には、電源部226からバイアス電圧Vsが供給される。1つの列を構成する複数の画素101のスイッチ103の主電極のうち他方の電極は、対応する1つの列信号線106に接続される。1つの行を構成する複数の画素101のスイッチ103の制御電極は、対応する1つの駆動線104に接続される。
【0028】
複数の列信号線106は、読出部222に接続される。ここで、読出部222は、複数の検知部132、マルチプレクサ134、アナログデジタル(AD)変換器136を含みうる。複数の列信号線106のそれぞれは、読出部222の複数の検知部132のうち対応する検知部132に接続される。1つの列信号線106が、1つの検知部132に対応する。検知部132は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ134は、複数の検知部132を所定の順番で選択し、選択した検知部132から出力される信号をAD変換器136に供給する。AD変換器136は、供給されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0029】
変換素子122の主電極のうち一方の電極は、スイッチ123の主電極のうち一方の電極に接続され、変換素子122の他方の電極は、バイアス線108に接続される。スイッチ123の主電極のうち他方の主電極は、検知信号線125に電気的に接続される。スイッチ123の制御電極は、駆動線124に電気的に接続される。放射線撮像装置1001は、複数の検知信号線125を備えうる。1つの検知信号線125には、1または複数の線量検出用の画素121が接続されうる。駆動線124は、駆動部241によって駆動される。1つの駆動線124には、1または複数の線量検出用の画素121が接続されうる。
【0030】
検知信号線125は、読出部242(AEC読出部とも呼ばれうる)に接続される。読出部242は、複数の検知部142、マルチプレクサ144、AD変換器146を含みうる。複数の検知信号線125のそれぞれは、読出部242の複数の検知部142のうち対応する検知部142に接続されうる。1つの検知信号線125が、1つの検知部142に対応する。検知部142は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ144は、複数の検知部142を所定の順番で選択し、選択した検知部142から出力される信号をAD変換器146に供給する。AD変換器146は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0031】
読出部242のAD変換器146の出力は、信号処理部224に供給され、信号処理部224によって処理される。信号処理部224は、読出部242のAD変換器146の出力に基づいて、放射線撮像装置1001に照射される放射線の情報を出力する。
【0032】
信号処理部224は、画素121が照射された放射線に応じて生成した電気信号に基づいて、画素121へ入射した放射線の線量の情報を取得する。信号処理部224は、画素121の検出結果にデジタル信号処理を施した信号を生成してもよい。信号処理部224は、生成した信号に基づいて、例えば、放射線撮像装置1001に対する放射線の照射の開始を検出してもよいし、放射線の照射線量や積算照射量(到達線量)を演算するように構成されていてもよい。また、信号処理部224は、取得した画素121へ入射した放射線の線量の情報を放射線制御装置1006に伝送し、放射線制御装置1006で、放射線の照射線量や積算照射量(到達線量)を取得してもよい。
【0033】
制御部225は、駆動部221、駆動部241および読出部222、242のそれぞれの動作を制御する。さらに、制御部225は、センサータイマー228が設けられている。センサータイマー228は、信号処理部224が、放射線撮像装置1001の画素121に入射する線量を検出した際の時刻を計測する。制御部225は、信号処理部224から画素121に入射した放射線の線量の情報を取得し、センサータイマー228から時刻の情報を取得する。ここで、線量の情報をXi、時刻の情報をTiとし、両者の組合せを有する情報を線量情報Diとする。制御部225は、放射線撮像装置1001の画素121に入射する線量Xiと線量Xiを検出した時刻Tiを有する線量情報Di(Ti、Xi)を生成する。
【0034】
放射線撮像装置1001は、放射線制御装置1006および制御装置1002との通信を実施するための通信部227を含む。通信部227は、有線通信部と無線通信部との2つの通信部を有していてもよい。通信部227は、制御部225から出力された情報を、有線通信部または無線通信部を用いて、放射線制御装置1006および制御装置1002に送信することが可能である。例えば、通信部227は、制御部225によって生成された線量情報Di(Ti、Xi)を放射線制御装置1006に出力する。制御部225は、信号処理部224から一定時間ごとに検出された線量Xiの情報を取得し、線量情報Di(Ti、Xi)を生成し、生成した線量情報Diを、通信部227を介して、放射線制御装置1006に出力する。
【0035】
放射線制御装置1006の発生制御部1062は、受信した線量情報Di(Ti、Xi)に対して、線量情報を前記放射線制御装置が取得した時刻Ti’を付記し、線量情報Di’(Ti、Ti’、Xi))を生成する。線量情報Di’を生成するために、放射線制御装置1006は、制御タイマー1063を含む。制御タイマー1063は、放射線制御装置1006における時刻の情報を計測する。また、放射線制御装置1006は、制御タイマー1063の時刻の情報と、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻の情報と、を同期させるための同期部1064を含みうる。同期部1064は、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻の情報に基づいて、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻を設定してもよい。同期部1064は、放射線撮像装置1001の通信部227と無線通信または有線通信によって時刻の情報を通信可能に構成されていてもよい。本実施形態では、同期部1064は、放射線撮像装置1001の通信部227と無線通信を実施するものとする。
【0036】
放射線撮像装置1001の制御部225は、通信部227の受信状態を監視し、タイマー情報の受信があった場合に、受信したタイマー情報に基づいてセンサータイマー228の時刻を設定する。センサータイマー228の時刻が、タイマー情報に基づいて設定されることによって、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻とセンサータイマー228の時刻とが同期する。同期部1064は、放射線を照射し放射線撮像装置1001において放射線画像の撮像を開始する前に、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻と、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻と、を同期させる。ここで、時刻の同期とは、制御タイマー1063の時刻とセンサータイマー228の時刻とを同じ時刻にすることに限られることはなく、2つの時刻の間には所定の差分があってもよい。上述の時刻Tiと時刻Ti’との間の遅延が取得できれば、制御タイマー1063の時刻とセンサータイマー228の時刻との同期は、どのような形態であってもよい。放射線撮像装置1001における放射線画像の撮像に先だって時刻の同期を実施することによって、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻と放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻との相対的な時刻のずれを抑制することが可能になる。
【0037】
図1では、放射線制御装置1006が同期部1064を有する構成例を説明したが、放射線撮像装置1001が同期部を有する構成してもよい。また、同期部1064が、放射線制御装置1006および放射線撮像装置1001とは独立して、放射線撮像システム1000に配されていてもよい。放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻と、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻と、の同期がとれる形態であれば、いかなる形態であってもよい。
【0038】
放射線制御装置1006の発生制御部1062は、画素121に入射した放射線の線量Xiと線量Xiを検出したときの時刻Tiとの線量情報Di(Xi、Ti)に基づいて、放射線撮像装置1001(画素121)に入射する到達線量が予め設定された閾値線量に到達する閾値時刻を特定する。具体的には、発生制御部1062は、放射線撮像装置1001の通信部227から出力された、線量情報Di(Ti、Xi)の線量Xi、時刻Ti、および、放射線制御装置1006が線量情報Diを受信した時刻Ti’に基づいて、放射線撮像装置1001に入射する到達線量が閾値線量Yに到達する閾値時刻Teを算出する。次いで、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、制御タイマー1063によって得られる時刻が、閾値時刻Teに到達するまで放射線源1003から放射線の照射が行われるように、線源制御装置1004に対して照射制御信号を出力するように制御を行う。
【0039】
その際に、放射線撮像装置1001と放射線制御装置1006との間の無線通信の環境の変化などによって、放射線撮像装置1001と放射線制御装置1006との通信が不安定になる可能性がある。例えば、放射線撮像装置1001から出力される線量情報Diの時刻Tiと、放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’にずれが生じてしまう場合がある。その場合、閾値線量Yと、実際の線量情報Diから取得される到達線量の情報と、の関係が適切でなくなる可能性がある。このため、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、線量情報Diに含まれる時刻Tiと、線量情報Diを放射線制御装置1006が取得した時刻Ti’と、の差に基づいて閾値線量Yを変更、補正する。これによって、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、線源制御装置1004に対して適切なタイミングで照射制御信号を出力することが可能になる。つまり、放射線撮像システム1000において、放射線の照射の制御性が向上しうる。
【0040】
ここで、図5を用いて、放射線撮像システム1000の動作フローとして、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻と放射線撮像装置1001のセンサータイマー228の時刻とを同期させる同期処理の流れを説明する。ユーザの操作などによって放射線制御装置1006が動作を開始すると(S500)、S501において、放射線制御装置1006の制御タイマー1063が時刻の計測を開始する(カウント開始)。次いで、S502において、同期時刻待ち処理が行われる。同期時刻とは、制御タイマー1063のカウント開始後に所定の時刻が経過した時刻をいう。放射線制御装置1006の制御タイマー1063は、カウント開始後の経過時刻を計測して、カウント開始後に所定の時刻が経過した時刻(同期時刻)の到達していない場合(S502のNo)、同期時刻に到達するまで待機する。同期時刻になると(S502のYes)、放射線制御装置1006は、処理をステップS503に進める。
【0041】
S503において、放射線制御装置1006の同期部1064は、制御タイマー1063により計測された時刻に基づくタイマー情報を取得する。同期部1064は、制御タイマー1063によって計測された時刻の情報を取得し、S504において、通信制御部1061の制御のもと、制御タイマー1063から取得したタイマー情報(制御タイマー1063の時刻の情報)を放射線撮像装置1001に出力する。S504におけるタイマー情報の送信処理は、放射線撮像装置1001におけるタイマー情報の受信の有無にかかわらず、同期時刻になるたびに実行される。
【0042】
次に、放射線撮像装置1001における動作について説明する。ユーザの操作などによって放射線撮像装置1001が動作を開始すると(S505)、S506において、放射線撮像装置1001のセンサータイマー228が、時刻の計測を開始する(カウント開始)。次いで、S507において、放射線撮像装置1001の制御部225は、通信部227によるタイマー情報の受信の有無を監視し、タイマー情報の受信待ちの状態で待機する。タイマー情報が未受信の場合(S507のNo)、放射線撮像装置1001の制御部225は、待機状態を継続する。タイマー情報が受信された場合(S507のYes)、制御部225は、処理をS508に進める。S508において、制御部225は、通信部227で受信されたタイマー情報を取得する。タイマー情報が取得されると、S509において、制御部225は、取得したタイマー情報に基づいてセンサータイマー228の時刻を設定する。センサータイマー228の時刻が、タイマー情報に基づいて設定されることによって、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻とセンサータイマー228の時刻とが同期する。
【0043】
S509において、センサータイマー228の時刻が放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻と同期すると、処理はS507に戻り、タイマー情報の受信待ちの状態で待機する。以後、同様にタイマー情報を受信した場合(S507のYes)、放射線撮像装置1001の制御部225は、通信部227で受信したタイマー情報に基づいてセンサータイマー228の時刻を設定する(S509)。これによって、放射線制御装置1006の制御タイマー1063の時刻とセンサータイマー228の時刻とが、精度よく同期しうる。
【0044】
放射線制御装置1006の制御タイマー1063は、放射線制御装置1006の電源ONとともに動作時間のカウントを開始し、時刻の計測を行いうる。同期部1064は、制御タイマー1063によって計測された時刻に基づくタイマー情報を取得する。同期部1064は、通信制御部1061の制御のもと、タイマー情報を、同期時間として、例えば、数μsごとに放射線撮像装置1001に送信してもよい。同期部1064が通信制御部1061を用いてタイマー情報を送信するタイミング(同期時間)は、任意に設定可能である。
【0045】
放射線撮像装置1001の制御部225は、例えば、同期時間ごとに、線量情報Di(Ti、Xi)を、通信部227を介して、放射線制御装置1006に送信する。放射線制御装置1006の発生制御部1062は、放射線撮像装置1001から送信される到達線量情報Di(Ti、Xi)に基づいて、線源制御装置1004に対する照射制御信号の出力を制御することが可能である。
【0046】
次に、図6(a)~6(c)を用いて放射線制御装置1006において線量情報Diの時刻Tiと放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’にずれ(差)が生じた場合の補正方法および放射線の照射制御について説明する。
【0047】
放射線撮像装置1001は、所定のタイミング(例えば、上述のように同期時間ごと。)で線量情報Di(Ti、Xi)を順次出力し、発生制御部1062は、取得した時刻Ti’を追加した線量情報Di’(Ti、Ti’、Xi)を、放射線制御装置1006内の記憶部(不図示)に記憶している。放射線撮像装置1001は、線量情報Diを複数回にわたり放射線制御装置1006に出力し、放射線制御装置1006は、複数の線量情報Di’を記憶部に記憶しうる。図6(a)は、放射線制御装置1006の記憶部に記憶されている線量情報Di’(Ti、Ti’、Xi)の例を示す図である。それぞれの線量情報Di’には、放射線撮像装置1001において線量Xiを検出した時刻Tiと、放射線制御装置1006の発生制御部1062が線量情報Diを受信した時刻Ti’と、が、線量Xiに対応付けられた状態で記憶されている(i=1、2、・・・m)。また、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、到達線量の閾値線量Yを記憶部に記憶している。放射線の照射を停止させるための閾値線量Yは、ユーザが任意に設定することが可能であり、撮像方法や撮像部位、撮像条件などに応じて変更が可能である。
【0048】
放射線制御装置1006の発生制御部1062は、放射線撮像装置1001(画素121)へ入射する放射線の線量Xiと時刻Tiとを含む線量情報Diに基づいて、放射線撮像装置1001に入射する到達線量が予め設定された閾値線量Yに到達する予測時刻である閾値時刻Teを特定することが可能である。閾値時刻Teの特定には、図6(b)に示されるように、複数の線量情報Diを用いた最小二乗法による直線近似などが用いられうる。
【0049】
放射線制御装置1006の発生制御部1062は、閾値時刻Teを特定した後に取得した線量情報Diと閾値線量Yとの比較および閾値時刻Teに基づいて、放射線源1003を介して放射線の照射を制御することができる。つまり、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、線量情報Diから得られる到達線量が閾値線量Yに達する、または、制御タイマー1063の時刻が閾値時刻Teに達する場合に、放射線源1003が放射線の照射を停止するように制御することができる。
【0050】
次に、図6(c)を用いて、無線環境の変化などによって、例えば、放射線撮像装置1001と放射線制御装置1006との通信が不安定になり、放射線撮像装置1001から線量情報Diの時刻Tiと放射線制御装置1006が線量情報Diを取得する時刻Ti’にずれが生じた場合について説明する。放射線撮像装置1001から出力された線量情報Diの時刻Tiと放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’の差が、所定の閾値を超えた場合、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、閾値線量Yを変更する。具体的には、閾値時刻Teを特定した後(例えば、最初に閾値時刻Teを特定した後であってもよい。)に取得した放射線撮像装置1001から出力された線量情報Dmの時刻Tmと、放射線制御装置1006が線量情報Dmを取得した時刻Tm’と、の差(遅延時間(Tm’-Tm))が一定の時間以上になった場合、閾値線量Yを算出する際に用いた近似直線の傾きαと、遅延時間(Tm’-Tm)と、から閾値変化量α(Tm’-Tm)を算出する。次いで、設定されていた閾値線量Yから閾値変化量α(Tm’-Tm)を減算した{Y-α(Tm’-Tm)}を新たな閾値線量Y’として設定する。放射線制御装置1006の発生制御部1062は、線量情報Diから得られる到達線量が閾値線量Y’に達する、または、制御タイマー1063の時刻が閾値時刻Teに達する場合に、放射線の照射状態から照射停止状態にするように、線源制御装置1004に対する出力信号を変更する。
【0051】
放射線撮像システム1000において実行される放射線画像の撮像方法は、例えば、以下の処理ステップを有する。まず、放射線源1003から照射された放射線の線量Xiが、放射線撮像装置1001の画素121を用いて検出される。この線量Xiと線量Xiを検出した時刻Tiを含む線量情報Diは、放射線制御装置1006に伝達される。放射線制御装置1006の発生制御部1062は、伝達された線量情報Diに基づいて、放射線撮像装置1001に入射する到達線量(積算線量)が閾値線量Yに到達する閾値時刻Teを取得する。発生制御部1062は、放射線制御装置に入射する到達線量と閾値線量Yとの比較、または、制御タイマー1063によって計測される時刻と閾値時刻Teとの比較に基づいて、放射線源1003からの放射線の照射を制御する。
【0052】
ここで、遅延時間とは、上述のように放射線撮像装置1001と放射線制御装置1006との間の通信に起因する遅延に限られることはない。例えば、放射線撮像装置1001において線量情報Diを生成してから、通信部227を介して出力するまでに、放射線撮像装置1001の動作に負荷が掛かるなど、線量情報Diを出力するまでに遅延する可能性がある。同様に、放射線制御装置1006において、線量情報Diを受信してから、発生制御部1062で線量情報Di’を生成するまでに遅延が発生する可能性がある。これらの可能性を考慮し、放射線撮像装置1001から出力された線量情報Dmの時刻Tmと、放射線制御装置1006が線量情報Dmを取得した時刻Tm’と、の差(遅延時間(Tm’-Tm))が所定の閾値を超えた場合に、閾値線量Yを変更してもよい。
【0053】
本実施形態で用いられているセンサータイマー228および制御タイマー1063は、時刻をカウントするカウンターに限定されるものではなく、実時刻を計測する構成でもよい。また、本実施形態において、放射線制御装置1006と制御装置1002とが独立した装置であるとして説明したが、放射線制御装置1006と制御装置1002とは、一体の構成であってもよい。
【0054】
次に、閾値線量Yの変更の方法の変形例について説明する。図6(a)~6(c)を用いた説明において、放射線制御装置1006は、複数の線量情報Diのうち1つの線量情報Dmに含まれる時刻Tmと、1つの線量情報Tmを放射線制御装置1006が取得した時刻Tm’と、の差に基づいて閾値線量Yを変更することを説明した。しかしながら、放射線制御装置1006は、複数の線量情報Diのうち2つ以上の線量情報Diに含まれる時刻Tiと、2つ以上の線量情報Diを放射線制御装置1006が取得した時刻Ti’と、の差に基づいて閾値線量Yを変更してもよい。つまり、複数の線量情報Diの各々の遅延時間の平均時間を用いて閾値線量Yの補正を行ってもよい。図7を用いて、複数の線量情報Di’の各々の遅延時間の平均時間を用いる場合について説明する。
【0055】
放射線撮像装置1001から出力された線量情報Diの取得時刻Tiと放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’との間に一定以上の差(遅延時間)が発生したとする。この場合、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、各々の線量情報Diに含まれる時刻Tiの情報および放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’から、平均の遅延時間Taveを算出する。Taveは例えば下記の式(1)のように表される。
Tave={(T1’-T1)+(T2’-T2)+(T3’-T3)+…+(Tm’-Tm)}/m ・・・ (1)
【0056】
さらに、発生制御部1062は、近似直線の傾きαと平均の遅延時間Taveとから閾値変化量αTaveを算出する。次いで、設定されていた閾値線量Yから閾値変化量を減算した(Y-αTave)を新たな閾値線量Y’として記憶部に記憶する。
【0057】
本実施形態において、最初の線量情報D1(T1、T1’、X1)から最新の線量情報Dm(Tm、Tm’、Xm)までのすべての情報を用いて、平均の遅延時間Taveを算出したが、使用する情報は任意に選択されてもよい。すなわち、一定以上の遅延時間が発生したタイミングからさかのぼった任意の回数分のデータを使用してもよいし、平均の遅延時間Taveを算出するための所定の遅延時間を設定し、設定された遅延時間以上の遅延が発生した情報のみを用いてもよい。
【0058】
閾値線量Yの変更の方法のさらに別の方法について説明する。上述の実施形態において、一定以上の遅延時間が発生した場合に閾値線量Yの補正を行っているが、これに限られることはない。例えば、放射線制御装置1006は、線量情報Diを取得するごとに閾値線量Yの変更を行ってもよい。図8(a)~8(c)を用いて、放射線制御装置1006が線量情報Diを受信するごとに閾値線量Yの変更を行う場合について説明する。
【0059】
図8(a)に示されるように、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、放射線撮像装置1001からの最初の線量情報D1を取得した後に、線量X1、時刻T1、および、放射線制御装置1006が線量情報D1を取得した時刻T1’を用いて、閾値線量Yを特定する。さらに、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、特定する際に用いた近似直線の傾きαと遅延時間(T1’-T1)とから閾値変化量α(T1’-T1)を算出する。次いで、閾値線量Yから閾値変化量を減算した{Y-α(T1’-T1)}を新たな閾値線量Y1として記憶部に記憶する。
【0060】
次に、図8(b)に示されるように、放射線制御装置1006の発生制御部1062は、放射線撮像装置1001からの次の線量情報D2を取得した後、線量X2、時刻T2、および、放射線制御装置1006が線量情報D2を取得した時刻T2’を用いて、閾値線量の再補正を行う。具体的には、近似直線の傾きαと遅延時間(T2’-T2)から閾値変化量α(T2’-T2)を算出する。次いで、閾値線量Y1から閾値変化量を減算した{Y1-α(T2’-T2)}を新たな閾値線量Y2として記憶部に記憶する。すなわち、図8(c)に示されるように、n回目の線量情報Dnを取得した際の閾値線量Ynは、Yn=Ym-α(Tn’-Tn)(ここで、m=n-1)と表される。
【0061】
本実施形態において、放射線制御装置1006が線量情報Diの取得するごとに閾値線量Yを補正する方法を説明したが、補正を行うタイミングは任意のタイミングでよい。例えば、放射線制御装置1006は、複数の線量情報Diのうち予め設定されたタイミングで取得した線量情報Diに基づいて、閾値線量Yを変更してもよい。また、例えば、放射線制御装置1006は、複数の線量情報Diのうち、前回、閾値線量Yが変更されてから所定の期間が経過したタイミングで取得した線量情報Diに基づいて、閾値線量Yを変更してもよい。
【0062】
閾値線量Yの変更は、発生制御部1062が放射線の照射状態から照射停止状態にするように、線源制御装置1004に対して出力する照射制御信号を変更してから、実際に放射線源1003からの放射線照射が停止するまでの時間を考慮してもよい。図1に示されるように、放射線制御装置1006、線源制御装置1004、および、放射線源1003は、ケーブルなどを用いた有線にて接続され、信号の送受信が行われる。つまり、放射線制御装置1006と放射線源1003とが、有線通信によって通信可能に構成されている。この場合、発生制御部1062が放射線の照射状態から照射停止状態にするように、線源制御装置1004に対する信号を送信し、線源制御装置1004が信号を受信するまでの時間Txは放射線撮像システム1000ごとに固有の値となりうる。また、線源制御装置1004が信号を受信してから、放射線源1003が放射線照射を停止するまでの時間Tyは、放射線撮像システム1000ごと、撮像手技ごと、撮像条件ごとに固有の値となりうる。すなわち、放射線制御装置1006が、上述のように、線量情報Diおよび閾値時刻Teに基づいて、放射線源1003に放射線の照射を停止させる信号を送信してから、放射線源1003が放射線の照射を停止するまでの時間(Tx+Ty)は、放射線撮像システム1000、撮像手技、撮像条件に応じて固有の値になりうる。そこで、放射線制御装置1006は、放射線の照射を停止させる信号を送信してから放射線源1003が放射線の照射を停止するまでの時間(Tx+Ty)に基づいて、閾値線量Yおよび閾値時刻Teのうち少なくとも一方を変更してもよい。閾値線量Yの補正を行う際に、時間(Tx+Ty)を考慮することによって、過剰な放射線の照射をより抑制することが可能となる。
【0063】
具体的には、まず、放射線制御装置1006の発生制御部1062が、線源制御装置1004に対する照射制御信号を変更してから、実際に放射線源1003からの放射線の照射が停止するまでの時間(Tx+Ty)を撮像前までに取得しておく必要がある。時間(Tx+Ty)は、放射線撮像システム1000の設置時などに実際に測定してもよいし、工場出荷前など事前に測定してもよい。また、制御装置1002などに、予めデータベースとして登録しておき、そのデータベースから参照してもよい。
【0064】
次に、放射線撮像装置1001から出力された線量情報Diの時刻Tiと放射線制御装置1006が線量情報Diを取得した時刻Ti’に一定以上の遅延時間が発生した場合、発生制御部1062は閾値線量Yを変更する。上述のように、閾値線量Yを特定する際に用いた近似直線の傾きαと遅延時間(Tm’-Tm)とに追加して、放射線撮像システム1000、撮像手技、撮像条件などに応じて固有の時間(Tx+Ty)から、閾値変化量{α(Tm’-Tm-Tx-Ty)}が算出される。次いで、設定されていた閾値線量Yから閾値変化量を減算した{Y-α(Tm’-Tm-Tx-Ty)}が、新たな閾値線量Y’として記憶部に記憶され、設定される。さらに、発生制御部1062は、予測時刻として閾値時刻Te’(Te’=Te-Tx―Ty)を算出する。このように、放射線制御装置1006が、放射線の照射の停止を判定してから放射線源1003が放射線の照射を停止するまでの時間を考慮することによって、放射線撮像システム1000において、放射線の照射の精度がさらに向上する。
【0065】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0066】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0067】
1000:放射線撮像システム、1001:放射線撮像装置、1006:放射線制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9